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、「住まい手からみる木造住宅の未来」シンポジウム(ヤクルトホールで)

髙田・京大大学院教授 「平成の京町家団地」紹介

 日本ぐらし館木の文化研究会(委員長:髙田光雄京都大学大学院教授)とJAHBnet(主宰:宮沢俊哉アキュラホーム社長)は3月18日、「住まい手からみる木造住宅の未来」と題する第3回シンポジウムを行なった。会場にはほぼ満席の約420人が集まった。

 主題解説を行なった髙田教授は、わが国は木の文化国ではあるが、木材自給率は27%にとどまっており、山が荒れ災害の危険が増大しており、木造住宅は6割にのぼっているとはいえ、その多くはプレカットでできており、現状は木の文化の継承・発展にはなっていないと指摘。自然と街と人がつながっている京都の町家の例を紹介しながら、日本の居住文化を住まい手の視点から考えるべきと問題提起したうえ、「住まい手が住まいに働きかける価値とも言うべき『住みごたえ』『住み心地』『住みこなし』が重要」と述べた。

 続いて基調講演を行なった居住環境学が専門の檜谷美恵子・京都府立大学大学院教授は、社会経済環境の変化によって狭小住宅団地などでは空き家が進み、高齢者向けのサービス付き高齢者住宅のニーズが高まっていること、子育てファミリーは十分な広さの住居を確保できていないことなどから、コレクティブハウスやシェアハウスなどの共助、協同する住まいが注目されると話した。

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髙田氏

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 シンポジウムでは髙田氏がコーディネーターを務め、檜谷氏、京都大学大学院教授・鉾井修一氏、同・林康裕氏、京都工芸繊維大学大学院准教授・矢ケ崎善太郎氏、木村工務店 大工棟梁・木村忠紀氏、京都庭園研究所 庭師・比地黒義男氏がそれぞれの立場から「手を入れること」の重要性を語り合った。以下、主な声を紹介する。

鉾井氏 開いたり閉じたりする空間を確保することで暑さや寒さに対応することが重要

林氏 メンテフリーを売りものにする住宅があるが、これは住まい手から働きかける機会を奪うもの。メンテしやすい構造、装置をつくるべき

矢ケ崎氏 世界最古の木造住宅である法隆寺はなんども手入れされてきた。手を入れることで長持ちさせる技を大工は持っていた。庭は贅沢ではなく必要であったから設けた。公私をまぎらす、環境をあやふやにし、グラデーションのように深まっていく機能を備えている

木村氏 いまの消費者は「住みこなす」ということを知らない。私は賢い消費者をつくることが建築を育てると思っています。木造の家は手入れをしっかりすればそんなに潰れません

比地黒氏 庭は心を癒すところ。木を1本植えることが庭づくりの基本。最近の樹木剪定は枝もない丸く刈り込むことしか考えないが、すかし技術などを使えは気持ちいい風を取り込むことができる

檜谷氏 家政学はもともと男性の学問。もっと男性も参加してほしい(これに対して髙田氏は「京の町家の保全は女性が担っている」と苦笑い)

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 シンポジウムはそれぞれ専門の立場から各氏が話され課題が示された。木造住宅の一層の充実を願う記者にとっては、やや論議が散漫になり深まりに欠けたのが残念だったが、髙田氏が話題提供として「平成の京町家 東山八坂通」を紹介されたのに注目した。

 八坂神社、建仁寺にも近く、八坂通から少し入ったところで、全体敷地面積は約1,100㎡で、建基法86条の一団地認定を受けた区分所有方式の8戸の木造2階建てだ。共用の庭のほか専用の庭もあり、建物は土間、縁側を設け引き戸を多用することで風通しのいい造りとなっており、2戸連棟だが「けらば」(切妻側の意匠)を残すことなどを条件に戸別の建て替えも可能だという。

 首都圏ではほとんど見かけなくなったが、建て方はかつて昭和50~60年代にたくさん供給された「タウンハウス」に似ている。共有の「コモン」スペースを持ち、専用の「庭」もある低層住宅だ。

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「平成の京町家・東山八坂通」(株式会社ゼロ・コーポレーション提供)

 

職人の技は無形の文化財 「日本ぐらし館木の文化研究会」第2回シンポ(2013/4/8)

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「セントラルレジデンス調布ステーションコート」完成予想図

 京王線調布駅前の再開発マンション住友不動産「セントラルレジデンス調布ステーションコート」を見学した。整備が進む駅前広場に面した一等地のマンションだ。

 物件は、京王線調布駅から徒歩2分、調布市布田4丁目に位置する16階建て全190 戸(事業協力者住戸29 戸含む)。専有面積は41.71~82.47㎡。価格は未定。竣工予定は平成27年1月。施工は清水建設。

 マンションは、京王線の地下化に伴う市の駅前広場整備事業を中心とした街づくり方針に沿って建設されるもので、公益施設・商業・業務施設からなる複合開発。地下に市の自転車置場が設置され、3階までは業務・商業施設となる。

 建物は、北側コーナーにガラスカーテンウォールを配し、全体的に落ち着いたモノトーンの素材・色調を採用し、白い縦ラインのアクセントを入れることで端正な表情にしているのが特徴。住宅部分は4階からで、70㎡が中心、その他41㎡のコンパクトタイプや54㎡の小家族向けタイプが約4割。一部の住戸は、足元から天井近くまで設置した大型窓「ダイナミックパノラマウインドウ」を採用している。

 販売を担当する同社住宅分譲事業本部首都圏営業所主任・長嶋史和氏は、「3月1日から予約で見学を受け付けているが、毎週土日に設けた各日の予約枠18組はほぼ満席。分譲を待ち望んでいた方が多い。私がこれまで15年間担当したマンションの中でこの物件が一番立地がいい。府中?桜上水? 負けません。仙川? 予算的に難しい方は仙川を検討されると思います」と話した。

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 調布は、記者が結婚して最初に住んだ街。京王線沿線の中ではもっともポテンシャルの高い街だった。最近は伊勢丹が進出した府中に押され気味だったが、京王線の地下化にともなう整備計画の進行によって再び輝きを取り戻しつつある。線路だったところに京王電鉄が商業・業務ビルを3棟を計画しているが、現段階で詳細は不明。

 マンションでもっとも気になるのが価格だ。長嶋氏は「南向きの価格の高いところから分譲する予定で、70㎡台で6,000万円台の後半」としか話さなかったが、府中にも桜上水にも負けないということからおのずと単価は推測される。

 徒歩5分圏には大型商業施設や市役所、図書館、コンサートホールが揃っている。単身者・DINCSを含め申し込みが殺到するかもしれない。

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外観

 平成26年の地価公示が発表された。全国的には住宅地、商業地とも依然として下落をしているものの下落率は縮小傾向を継続。三大都市圏では、住宅地の約2分の1の地点が上昇、商業地の約3分の2の地点が上昇。その一方で、地方圏では住宅地、商業地ともに約4分の3の地点が下落。大都市圏と地方圏の地域格差は解消されないどころかむしろ拡大していることが地価公示も裏付けた。

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 別表  Book1.pdf  は、平成26年と平成16年の大都市圏を除く人口が10万人以上の市の住宅地の平均価格を比較したものだ。

比較可能な市は全国で103市あり、唯一平均地価が上昇しているのは滋賀県草津市だ。10年前は1㎡あたり98,400円だったのが、今年は106,000円と7.7%上昇している。

 どうして草津市が上昇しているのか。地元・大津市の不動産会社ラフィナータ・山田幸秀社長は、「草津市は京都、大阪への通勤圏。快速で京都へは20分、大阪は50分。住環境もいい。急激に地価が上昇しているという印象はないが、ジワジワと上昇しているのは間違いない。大手も軒並み進出しており、激戦地となっている」と話した。

 パナソニックなどの大手企業や立命館大学などの大学も進出し、利便性が高まっているという。

 他は悲惨だ。下落率が10%以下なのは札幌市の5.5%、福岡市の5.6%、那覇市の7.6%、仙台市の8.6%、浦添市の8.6%のみ。他は鳥取市の56.3%、小樽の53.2%、秋田市の52.8%と半値以下になったところも3市ある。40%以上下落は約3割の30市にのぼる。

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 2020年のオリンピック開催効果もあり前年の860,000円から954,000円と10.9%上昇した東京都中央区勝どき3-4-18の平成16年地価公示は680,000円だった。10年間に40%の上昇だ。

 大都市圏の一部がこの10年間で40%地価が上昇し、その逆に地方都市では40%も地価は下落し、底這い状態が続いているということだ。

 

 

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「首都大学東京リーディングプロジェクト最終成果報告会」(都庁で)

 首都大学東京と東京都は3月17日、大都市東京の課題解決に向けた取り組み「首都大学東京リーディングプロジェクト最終成果報告会」を行い、同大学都市環境学部特任教授・山本康友氏が「新省エネ東京仕様開発提示プロジェクト研究」について、同大学都市環境学部特任教授・青木茂氏が「リファイニング研究開発プロジェクト研究」について、同大学理事・上野淳氏が「郊外型都市賦活更新プロジェクト研究」についてそれぞれ報告した。

 山本氏は、今年1月に竣工した都有施設の事例を紹介。IT技術の採用はもちろん、再生可能エネルギーの導入、地中熱利用ヒートポンプ、木材の利用、壁面緑化など現状で最高水準の省エネと省エネ仕様で整備したと話した。今後、計測データを蓄積して検証するとしている。

 青木氏は、これまで手掛けてきたリファイニング建築事例を紹介。リファイニングを行う際は、既存建物が建てられてから現在までの約30年を一区切りに、今後2度の再リファイニングを想定しトータルで120年使用できるよう考えるべきで、構造的には耐震性はもちろんだが、コンクリートや鉄筋の劣化を十分調査すべきと強調した。意匠も外観は30年ごとに見直し、内観は5~10年ごとに手を入れるべきとした。さらに用途についても時代の変化に沿うよう変更を加えることが建築物の長寿命化につながると語った。

 今後の課題として、技術の伝承、雇用の促進、耐震診断のデータベース化、現行法との矛盾の解消、教育の重視などをあげた。

 上野氏は、多摩ニュータウンの賦活について、「世界的に稀有な事例」である公園・緑地をペディストリアンで結ぶ緑のネットワークや歩車分離の街づくりをどう継承していくかが鍵だと語った。また、高齢化やバリアの解消などの課題はあるが、多様な主体が主役になる街づくりを行なえば未来都市・多摩ニュータウンには大きな可能性があると力説した。

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 最近は、マンションだけでなく他の分野の取材も増やしているが、それぞれ一つひとつがみんなつながっていることが見えてくる。こんがらかったタコ糸をほぐしたように、知恵の輪を解いたときのように、あるいは「カチリ」と音がして玉手箱の鍵か開いたときの、極上の酒が五臓六腑にしみわたる快感だ。これが取材の楽しさだ。

 例えば、今回の取材で言えば青木氏の「30×4=120年ターム」説。これは単に建築だけでなく、サステイナブル社会の構築と結びつく。上野氏が力説した街全体をペディストリアンで結ぶ緑のネットワークの価値は、もう一度再認識する必要がありそうだ。

 山本氏が紹介した「新省エネ東京仕様開発提示プロジェクト」はまだオープンになっていない施設で、都は一般公開も含めて検討するとしている。

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 上野氏が「書いてもいい」と仰ったから書く。昨日記事にもした「サードプレイス」の「福祉亭」は上野氏もよく利用されているようで、「私は福祉亭に焼酎のボトルをキープしている。どなたでも寺田さん(理事)に言って飲んでもらっても結構」「福祉亭にはお世話になってきたから、(恩返しの意味か)施設のスタッフになるか、調理人として雇ってもらうかしたい」と話した。

 上野氏の調理人としての腕前がどんなものかは不明だが、先生の話がただで聞けるとなれば「福祉亭」の価値は倍化する。学生さんなどの若者も大挙して押しかけるのではないか。

 

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「Brillia 狛江Farm&Garden」完成予想図

 東京建物がモデルルームをオープンした「Brillia 狛江Farm&Garden」のモデルルームを見学した。現段階で価格は未定だが、周囲は第一種低層住居専用地域だけに人気を呼ぶ可能性は十分と見た。

 物件は、小田急小田原線狛江駅から徒歩8 分、狛江市中和泉3 丁目に位置する5階建て全39戸。専有面積は60.28~90.40㎡、価格は未定。入居予定は平成26 年11 月下旬。設計・監理はコモン・リンク一級建築士事務所。施工は南海辰村建設。

 敷地の東側は道路に面しているが、それほど交通量は多くなく、敷地南側も西側も用途地域は第一種低層住居専用地域。典型的な「狛江」の住宅街だ。

 39戸という小規模物件の特性を活かし、居住者の顔が分かる「食べられる景観」をテーマにした「コモンファーム(菜園)」や「コモンガーデン(庭園)」を設置しているのが特徴。また、バルコニーには花台とスロップシンクを設けている。

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 取材した段階では価格は公表されなかったが、記者の想定内に収まるのではないかとみている。

 面白いのは、住戸プランは多くが東向きで、バルコニーに花台を設けていることだ。住戸の外廊下側に花台を設置している例はたくさんあるが、バルコニー側に設置しているのは見たことがない。しかし、バルコニーにプランターを設置するマンション居住者はたくさんいる。これは歓迎されるはずだ。

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「コモンガーデン」(左)と「コモンファーム」

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港区「芝の家」

 日本建築学会の建築計画委員会に属する「ライフスタイル小委員会」が3月13日に行なった公開研究会「もうひとつの居場所(サードプレイス)をどこに持つ? 」を取材した。

 同委員会は、少子高齢社会における家族と住まいの現状と課題を共有し、これからのライフスタイルに対応した住宅・地域の在り方を検討することを目的に設けられているもので、この日は港区の「芝の家」を見学し、多摩ニュータウンの「福祉亭」、墨田区の「コレクティブハウスかんかん森」の事例が紹介され、「自宅」や「職場」などの居場所以外の「もう一つの居場所」の今後の可能性などが話しあわれた。

 研究会では、同委員会主査の湘北短期大学准教授・大橋寿美子氏が、「家族機能が弱体化した少子高齢社会では、人と人のつながりが希薄になっている。もう一つの居場所としてのサードプレイスは3.11以降、より一層重要性が増している。孤独や孤立からの開放、生きがいにつながる可能性を探るのが、この研究会の目的」と、概要について説明した。

 「芝の家」は2008年、港区と慶應大学とが連携して設けられた芝3丁目のコミュニティ拠点。民間のオフィスを賃借しているもので、大人から子どもまで年間1万近くの利用者がある。事業費は年間950万円。

 慶應大学特任講師・坂倉杏介氏は、「緩やかなつながりを求める人が多い。単体ではなく、いろいろな組織と連携して自主的で多様な取り組みがインフォーマルな『共』をつくり出す」と語った。

 「福祉亭」は、多摩ニュータウンのUR賃貸空き店舗を利用してNPO法人福祉亭が2003年から運営している施設で、飲食提供のほか、高齢者支援事業、街づくり事業などを行なっている。これまで100近いテレビ、新聞、雑誌などに取り上げられており、認知度は全国区になった。

 福祉亭の理事・寺田美恵子氏は、「セーフティネットの網を広げているつもりだが、漏れることもある。初期投資、立ち上げ支援、運営補助の仕組みが大切。近隣には株式会社方式も含めて、同じような施設が4カ所でき、激戦地になってきた。売上げは年間約800万円。トータルで約900万円。補助金は60万円しかない」と笑った。

 「かんかん森」は2003年、わが国初のコレクティブハウスとして誕生。人員構成は0歳~88歳まで48名。子どもが13名、大人が35名。夫婦7組、単身女性16名、単身男性5名という構成だ。

 居住者でコレクティブハウスの社長・坂元良江氏は、「誕生してから10年以上が経過したが、毎年子どもが生まれ居住者の自主管理、自主運営は発展している。コモンスペースは時には居酒屋状態になることもあるが、週に2~3回のコモンミール(食事当番)は作る人のレベルも上がってきており、レベルの高い食事が提供できている」と話した。

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「芝の家」

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 「サードプレイス」は、アメリカの都市社会学者Ray Oldenburg氏の著作「The Great Good Place」(1997年)の邦訳で、「ファーストプレイス」である自宅、「セカンドプレイス」である職場などとは別の居酒屋、カフェ、本屋、図書館など情報・意見交換の場、地域活動の拠点として機能する概念のことだ。
 
 このようなサードプレイスは、普通の人にとってはごく当たり前の施設だ。ことさら「サードプレイス」として注目されるのは、家庭も職場も自分の拠りどころではなくなっていることの証左なのだろう。無縁社会、格差社会、パワハラ、ワーキングプア、パラサイト・シングル、ネットカフェ難民…およそ20年前にはそんな言葉すらなかった深刻な問題が生起し、日常茶飯となっている。

 ならば「サードプレイス」はこれらの問題を解決してくれる万能薬になるか問えば、答えは「ノー」だろう。万病に効く処方箋はないし、「サードプレイス」に過大な期待をかけるのは酷だ。性急に成果を求めない緩やかで多様なつながりを辛抱強く続けることしかないのではないか。

 次は、数年前からナイスが取り組んでいる「住まいるCafé」を紹介する。住宅の売買・仲介店舗を地域の居住者に開放したCSR活動だ。

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大橋氏

 「サードプレイス」を取材しながら、これは社会的弱者にとってこそ必要な施設ではないかとずっと考えていた。

 そうした社会的弱者に対して、社会学者の上野千鶴子氏が近著「女たちのサバイバル作戦」(文春新書)で心強いメッセージを送っている。少し長いが、以下に紹介する。

 「日本の女のこれからを思うと、サステイナブルよりサバイバル、の方が切実だとわたしは思えます。たとえ日本が『沈没』して難民になっても、亡命してでも、どこででも生き延びていけるスキルを身につけてほしい、と思うようになりました」「自分のことは自分で。他人とは関係ない。集団で活動するのはうざいし、ださい――こういうメンタリティがネオリベ的感性です。ネオリベは強者と弱者を生みますが、問題は、弱者も強者と同じメンタリティを共有していることです。強者はつるむ必要がありません。ですが弱者は弱者だからこそ、つるむ理由があります」「制度も政治も変えられないかもしれないけれど、自分の周囲を気持ちよく変えることは自分と仲間の力でできるかもしれない」

 「たとえ目の前の問題がただちに解決できなくとも、たった今の苦しみを共有してくれるひとたちがいることで、困難にへこたれないでいられる、問題に立ち向かう元気がもらえる――そうやって女たちは生き延びてきた…傷の舐めあい――と揶揄する人がいました。それでけっこう。傷ついた者たちは、傷を舐めあう必要がありました。女性はその必要があったからこそ、つながりをつくってきました」

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左から坂倉氏、寺田氏、坂元氏

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「コレド室町3」エントランス(乃村工藝社・小坂竜氏によるアート。ツガやスギ、ヒノキなどと石、タイルなどを組み合わせた壁、床は芸術品)

 三井不動産は3月20日、日本橋再生計画の第二弾「コレド室町2」「コレド室町3」を開業する。開業に先立つ17日、開業記者会見・内覧会を行い、数百人の報道陣が詰めかけた。

 「日本橋再生計画」は、伝統ある老舗など街の文化を残し、水と緑の賑わいを甦らせ、新たな街の魅力を創っていく、「残しながら、蘇らせながら、創っていく」をコンセプトに再開発を進めているもの。

 「コレド室町2」「コレド室町3」は、再開発の第一弾ともいうべき「コレド日本橋」(2004年竣工)、「日本橋三井タワー」(2005年竣工)、「コレド室町」(2010年竣工)に次ぐもの。今後も「室町三丁目」「室町一丁目」「日本橋一丁目」「日本橋二丁目」「八重洲二丁目北街区」「八重洲二丁目中地区」など再開発計画が目白押しで、面的な再開発が進められる。

 新しく開業する「コレド室町2」「コレド室町3」には、外国人コンシェルジュによるインフォメーション・ガイドツアー(日本橋案内所)を開始するほか、和のおもてなしレンタルスペース「橋楽亭/囲庵(COREDO 室町)」を設置。外国人が無料でインターネットを利用できるWi-Fiを整備する。

 記者会見に臨んだ同社飯沼喜章副社長は、「今回のコレド室町2とコレド室町3の開業と日本橋三井タワーのリニューアルオープンは、江戸の往時の賑わいを取り戻す再生プロジェクトの一環であり、今後も日本橋の新たな魅力を発信し続けていく」と話した。

 年間の来街者は1,700万人、売上高は110億円を見込む。

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「コレド室町2」(スーパーポテト代表・杉本貴志氏のアート。石器質タイルの組み合わせが妙)

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 マンションブランドなら100も200も価値判断ができるが、飲食・ファッションなどの商業施設はさっぱり分からない。しかし、三菱地所が進める「丸の内再構築」と同社の「日本橋再生」は明らかに街づくりのコンセプトが異なるぐらいは素人目にも分かる。

 三菱地所は「世界でもっともインタラクションが活発な街」を掲げ、アジアの国際拠点都市としてグローバル化に取り組んでいる。仲通りにはティファニー、エルメス、バカラ、プラダなど世界的ブランドと流行を発信する国内のセレクトショップが軒を連ねる。20年前は土曜、日曜日となるとほとんど人通りが途絶えた「過疎」はいまでは日本一の賑わいのある街変わった。

 一方の「日本橋」は前面に「お江戸日本橋」を打ちだしている。桜、祭り、着物、茶道などのイベント積極的に行い、店舗も榮太樓、にんべん、木屋、小津和紙、鶴屋吉信、千疋屋などわれら団塊世代にもなじみのある店が多い。

 両社が狭いエリアで競り合ってどうなるのかという心配もあるが、おそらくこのコンセプトの違いで住み分けができ、相乗効果となってより賑わいを増すのだろう。両社のこれからの投資額はそれぞれ数千億円、双方では1兆円を間違いなく突破する。

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「コレド室町2」(杉本氏のタイル文様をふんだんに用いた店舗デザイン)  

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「これど室町3」(小坂氏のツガを用いた壁)

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「橋楽亭/囲庵(COREDO 室町3)」と日本橋 芳町の売れっ子芸妓さん「おもちゃ」さん

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小坂氏のアートな壁(石とツガ、ヒノキ、スギの組み合わせ)

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左は「牡蠣場 北海道厚岸」(生カキは1ピース290円から。記者が食べたのは590円。1年を通じて生カキが食べられるのは厚岸のみとか)。右は本物の出汁を販売する「茅乃舎」

三井不動産 ビルも賃貸も億ション並み「和」盛り込んだ「日本橋再生」(2014/1/29)

 

 

 

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「蔵のある街づくりプロジェクト」 曳家工事中の蔵

 ポラスグループの戸建分譲住宅事業を展開する中央住宅は3月14日、江戸時代に建築されたといわれる商家の蔵を保存・改修し、蔵を核とした住まい手、地域住民、企業が一体となってライフスタイルを提案するコーポラティブ方式の「蔵のある街づくりプロジェクト」を行なうと発表した。曳家作業を報道陣に公開した。

 現地の用途地域は近隣商業地域だが、一戸建てや中層の建築物が中心の住宅街。蔵は油屋を営んでいた商家の4棟あったものの一つ。御影石の土台にそのまま石・木材・土・漆喰塗りの家を載せたもので、重さは、現在の一般的な木造住宅の3倍以上の約90~100トン。「ボンコ」(意味は不明)と呼ばれていたもので、宝蔵として使用されていた。

 記者発表会に臨んだ同社・品川典久社長は、「用地取得したのは昨年の9月。当初は更地にしてすべて分譲戸建てにしようと考えたが、歴史的建造物の蔵を壊すのはあまりにも無神経。地域の方々と協議を重ね、蔵や古材、灯籠なども残してプロジェクトに賛同していただける人に分譲することに決めた。コーポラティブでの分譲は初めてだが、当社の理念である〝より豊かで、楽しく、幸せ〟な住宅づくりに合致するもの」と語った。

 「蔵」の推定築年数は約150年。屋根は瓦葺き、外壁は漆喰塗りの木造2階建て延べ床面積48.96㎡(14.8坪)。

 「蔵のある街づくりプロジェクト」は、東武スカイツリーライン越谷駅から徒歩5分、越谷市越ヶ谷三丁目の近隣商業地域(建ぺい率80%、容積率200%)に位置する敷地面積644.51㎡。販売予定価格は1億9,800万円(蔵の改修費、曳家工事費含む)。5月末までに購入希望者がない場合は建売住宅にする予定。

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扉の部分(左)と「うだつ」のあった部分(縦長のやや白く見える部分)

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 記者はこの日の前日(13日)、日本建築学会の公開研究会「もうひとつの居場所(サードプレイス)をどこに持つ? 」を取材した。「サードプレイス」とは、「ファーストプレイス」の自宅、「セカンドプレイス」の職場などの居場所のほかに、緩やかなコミュニティを形成する居場所のことで、同学会がその現状や可能性を探る研究を行なっている。

 研究会では、「コレクティブハウスかんかんの森」の居住者で、企画・運営しているコレクティブハウスの代表取締役・坂元良江氏から話も聞いた。

 コレクティブハウスとコーポラティブハウスは異なるが、居住者が良好なコミュニティを形成する意味では同じだ。連日にわたってこの取り組みを取材できたのはラッキーだった。

 蔵そのものは、田舎の実家にも残っているし、古い街にはまだまだたくさんあるはずだ。しかし、江戸時代に建てられたものとなるとそうないはずだ。曳家工事を担当している創業100年近くの野口組の4代目社長から説明を聞き、当時の建築技術の高さや、火災に備える工夫、豪商の暮らしぶりを学ぶことができた。

 例えば「うだつ(梲)」。われわれは「うだつがあがらない」という諺しか知らないが、「うだつ」とは防火壁のことで、この蔵には高さ5m、幅2mの巨大な「うだつ」があったという。蔵の重さにも驚愕した。野口社長によると、構造はRC造に匹敵するという。土と石(御影石、大谷石など)と木材(スギ、ケヤキがほとんどだそうだ)でRC造と同じ強度の建築物を江戸の職人・大工が造ったというのが嬉しいではないか。土台と柱の間には柱がずれないように、イチョウ形のなまりが使用されていたのにも驚いた。補強材には金具が使われていた。壁の厚さは腰壁部分で45cmもあるという。

 いったい、どうしてこのような頑丈な蔵を建てる必要があったのか。この蔵は、野口社長によると「ボンコ」(意味不明)と呼ばれ、母屋と繋がっていたことや、「宝蔵」として使用されていたことなどから推測すると、きっと売り上げ台帳、金銭などの貸借契約書、衣服などが収納されていたのではないか。

 このほか「米蔵」が2棟、「味噌蔵」が1棟あったというから、かなりの豪商だったのだろう。火災のときは、壁に味噌を塗ったとも言われる。火災に遭っても守るべきものをしっかり守った江戸時代の建築技術と知恵がここにある。

 このプロジェクトにどのような人が参加するのか、蔵はどのように利用するのかを考えるとワクワクする。ポラスはクリーンヒットを放った。このプロジェクトがどのようになっていくのかを見届けたい。

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敷地内にあった石など(左)と蔵に用いられていた金具

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「この鉛が使われていたんです」と説明する野口社長(左)と記者団の質問に答える品川社長(右端)

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蔵の中

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商品外観

 三井不動産レジデンシャルは3月12日、同社が供給する都市型戸建て「ファインコート」の全戸に東京ガスが販売する家庭用燃料電池「エネファーム」を標準採用すると発表した。

 現在、標準化を決定しているのは「ファインコート砧」(9戸)と「(仮称)国分寺市日吉町四丁目計画」(27戸)を含めた29 物件605 戸。同社はこれまで「ファインコート大塚」や大規模スマートタウン「ファインコートFujisawa SST」など8 物件131戸に「エネファーム」を採用した実績がある。

 標準化によって首都圏で年間約700~800 戸を供給することになり、家庭のCO2 排出量を年間でブナを主体とする天然林約198ha~226ha 分(東京ドーム約42~48個分)に相当する約910~約1040 トンを削減できるとしている。

 「エネファーム」は都市ガスから取り出した水素を空気中の酸素と化学反応させて発電し、発電した電気は家庭内で利用。その際に出る熱も給湯に利用します。電気をつくる場所と使う場所が同じであるため送電ロスがなく、また発電時に出る熱を無駄なく活用できる環境にやさしいシステム。

 昨日(3月12日)、日本リージャスから京都の貸事務所オープンのニュースリリースが送られてきた。「モバイル・ワーク」は間違いなく増加するとは考えてはいるが、よく分からない部分もあるので、リリースをほとんど「コピー&ペースト」で紹介する。

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 「多様化する働き方を支援する先進的なワークプレイス・ソリューションプロバイダーの世界最大手企業、リージャス(本社:ルクセンブルク)は、アジア太平洋地域で300番目の節目となるビジネスセンターを、日本の大都市のひとつであり、歴史と観光で全世界的に有名な『京都』の中心部『河原町御池』に開設します」

 「日本におけるリージャスは1998年に、東京に2つのビジネスセンターを開設後、現在では北は札幌から南は福岡まで50拠点以上を運営」「日本の50拠点、世界の100ヵ国1800拠点を超えるネットワークを活用することにより…アジア太平洋地域さらには世界中にビジネス拠点を拡大することが容易に可能」

 「リージャスのグローバル調査では、日本の経営者や経営幹部の68%は、フレキシブル・ワーキングは生産性を大きく向上させると考えています。さらに、調査会社IDCによると、モバイル・ワーキングを実践するビジネスマンは、2015年までに日本の労働人口の65%の総計3,860万人に及ぶと推定され、日本を除くアジア太平洋地域では8億3,800万人に上ると推定されています」

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 記者はずいぶん前、六本木ヒルズにある同社の貸事務所「リージャス六本木」で働く人を取材したことがある。昨年は東急不動産の会員制サテライトオフィス「Business-Airport(ビジネスエアポート)」も見学した。素晴らしい施設だと思った。

 「モバイル・ワーク」は間違いなく増えると思う。ジェンダー研究の第一人者、上野千鶴子氏によれば「フレックスレイバー(柔軟な労働)」は世界的な潮流だというし、上野の近著「女たちのサバイバル作戦」(文春新書)では次のように書かれている。興味深いので紹介する。

 「問題は誰にとって『フレックスか』? にあります。日本では使用者側が、自分たちのつごうにとって『フレックス』、すなわち使い捨て自由の労働力として、フレックス化を推進してきました。

 他方、労働者にとって『フレックス』であれば、フレックス労働は歓迎されてもよい働き方です。そもそも九時から五時までの『定型的労働』とは、誰が決めたのでしょうか。少子化対策先進国では、定型的労働と子育てとは両立しない、という経験則があります。事実、フレックス労働を採用した社会は、どこも出生率があがっています」

 続けて上野氏は、フレックス労働が不利な働き方にならないよう、「同一労働・同一賃金」や差別的な日本型雇用慣行やルールを改めるべきと主張。目指すべきはユニバーサルデザインと同様、「男女を問わずどんな状態や属性の人にとっても働きやすい『ユニバーサル就労』」だという。

 「モバイル・ワーク」「フレックスレイバー」は、子育て世代にもっとも適した働き方ではないか。これらが定着すれば、もっとマンションは売れる。

 

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