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 LEE 読者との座談会の様子

 住友林業は12月6日、女性の視点を商品開発やサービスなどに生かすため、組織を横断した女性プロジェクトチームを立ち上げたと発表した。

 プロジェクトチームは、2013 年3 月に住宅事業本部で住宅の商品、インテリア、販売、部材、施工、人財などの開発に関わる各部の担当と、住宅設備機器の製造などを行う住友林業クレストの収納部材の担当をメンバーとして発足。6 月にリビング空間の収納力と快適性を両立する収納提案「こまま(comama)」を提供。10月には、全国の支店から選ばれた営業・設計・生産・総務・インテリア担当社員もメンバーとして加え、総勢36 名で本格始動した。

 本格始動の第一弾として、12月7日発売の女性誌「LEE」(集英社発行)で、木の家の良さを子育て世代の女性に知ってもらうコラボレーション企画「きれいを未来につなぐ木の家」の連載(全4回)を始める。

 同社はこれまでも女性社員が中心となり、家事や子育ての負担を軽減する生活提案型商品「mamato(ママト)」などを提案してきたが、今後継続的に女性の視点を生かした商品や部材の開発を推進し、サービスなどのソフト面の提案力を強化するのが目的。

「ピンク」一色 住林の新商品「mamato (ママト) 」発表会(2011/6/2)

 

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「(仮称)新日比谷プロジェクト」完成予想図

 三井不動産は12月6日、千代田区有楽町一丁目の「三信ビルディング」(昭和5年竣工)および「日比谷三井ビルディング」(昭和35年竣工)の跡地を一体開発する「(仮称)新日比谷プロジェクト」が同日、都市計画決定されたと発表した。

 計画地は、日比谷公園、日生劇場や宝塚劇場、スカラ座・みゆき座などの劇場・映画館、帝国ホテル東京などに隣接するとともに、国際的なビジネス拠点である大手町・丸の内・有楽町地区、官公庁が集積する霞が関地区などにも近接。
 同社は、この立地条件を最大限に活かし日比谷地区を日本橋地区に続く都心におけるスマートシティ第2 弾として進化させ、東京の都市再生に貢献できる街づくりを推進する。

 計画では最新のBCP 性能を備えたオフィス、都心の賑わいを醸成する商業施設などを主要用途とした大規模複合ビルを建設するとともに、計画地内のオープンスペースと隣接する千代田区の広場を一体的に整備することにより、まちの中心に約4,000 ㎡の広場空間「(仮称)日比谷ゲートプラザ」を創出する。

 敷地面積は約10,700 ㎡、建物は地上35階建て、地下4階。2014年度に着工し、2017年度に竣工予定。

 「ECO ONE(エコワン)」など「エコプロダクツ2013」に初出展

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「ECO ONE(エコワン)」
 

 リンナイが12月12日(木)~14日(土)、東京ビッグサイトで開催される日本最大級の環境展示会である「エコプロダクツ2013」に初出展する。

 「HYBRID ECO LIFE(ハイブリッド・エコライフ)」がテーマで、電気とガスを利用する掃除用効果で環境性、経済性、快適性に優れた世界初のハイブリット給湯・暖房システム「ECO ONE(エコワン)」など3つの製品技術を紹介する。

 「ECO ONE(エコワン)」は2010年に発売した商品で、電気のヒートポンプで少ない電気量で効率よく湯を沸かし、ガスでいつでも利用できる十分な給湯を実現した。ヒートポンプと高効率給湯器を組み合わせた家庭用給湯・暖房システムは世界初。家庭で使われるエネルギー効率は、ラインナップを広げることで一次エネルギー効率は従来の107%から現在は業界最高レベルの125%を達成したという。一次エネルギーとは、石油・石炭・天然ガスなどの自然界にあるエネルギーのことで、この一次エネルギーを電気やガスに変えて利用している。投入した一次エネルギー量に対しどれだけのお湯を得られたかを比率で示したのが「給湯器における一次エネルギー効率」と呼ぶ。

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 この「ECO ONE(エコワン)」もいいが、記者は同社製のガスコンロとIHヒーターの両方が利用できるハイブリット調理台をトーヨーキッチンで見てから忘れられず、その後どうなっているのか聞きたくて問い合わせた。

 同社担当者によると、ガスも電気も利用できるハイブリット調理台は海外のメーカーが以前から発売しているが、わが国ではガスコンロは過熱防止や消し忘れ消化機能などを盛り込んだSIセンサーを平成20年4月から装備しなければならなくなり、海外製品はわが国から撤退したという。

 リンナイが開発したハイブリット調理台は、横幅が30㎝×3枚ユニット=90㎝とスペースも取り、それだけ価格も高くなるので一般にはなかなか普及しないのだという。また、もともとガス会社と連携してきたため、電気(IH)は扱いづらいという背景もあるようだ。

 しかし、ガスもIHも併用できたらいいと思うユーザーは相当いるはずだ。小型のハイブリット調理台が開発されたら大ヒットするのではないか。

 東京建物グループは12月3日、恒例のグループ記者懇親会を行い、佐久間一社長は、今後の不動産市場は実体経済が回復するかどうかにかかっており、労働力不足を補うには女性の社会進出の促進、外国人労働力の受け入れなどが必要と語った。また、同社グループとしては環境・省エネ・快適性を盛り込んだサービスの提供を追求していくと述べた。

 佐久間社長はまず不動産市場や経済などについて、「ムードはいいがマンション市場も個人の収入が増えるなど実体経済がきちんと回復することが必要」と語った。

 さらに、生産人口の減少についても触れ、「団塊世代のリタイアによる労働人口減少に対して、生産性をたゆまなく上げていくには、諸外国より劣っている女性の社会進出を促すことが必要だ。また、海外の人を雇用するのが重要だが、介護士の試験で『嚥下』を読ませるような規制を緩和しなければならない。第三の矢と成長戦略がないと安定的な成長はない」と話した。

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 この種の大手デベロッパーの懇親会の場で女性の社会進出や外国人労働者の受け入れについて語ったのは佐久間社長がおそらく初めてだ。記者は佐久間社長が女性の社会進出に触れたのに興味を持った。

 同社こそもっとも女性の登用を図る土壌があると思ったからだ。もともと同社の社風はゆったりとしていて記者は好きなのだが、マンションの販売現場でも女性の視点で企画されているものが少なくない。

 業界を先駆けて防災グッズ・倉庫などを備えたのは、阪神大震災のとき学生だった女性社員・田所照代さんの提案がきっかけだった。その田所さんもメンバーの一人になっている同社の働く女性による商品開発プロジェクト「Bloomoi /ブルーモワ」のプロジェクトリーダー・野口真利子さんはずっと若いときに「気合と根性」で一級建築士の資格を取得している。同社広報担当の鈴木清由里さんは不動産鑑定士だ。

 記者は住宅・不動産業界などの会社約50社が参加しているRBA野球大会を23年間取材しているが、東京建物や東京建物不動産販売はこのところずっと下位に低迷している。ようやくここ2年ぐらいは上昇機運にあるが、このような女性の活躍を見聞すると、全然釣り合わない。この会社は間違いなく「女性上位」にあると思う。

 佐久間社長に「もっと女性を登用すべき」と話したら、佐久間社長は「うちの女性社員の比率は3割ぐらいで管理職は2人しかいないが、将来は楽しみ。鍵は女性を登用する部長クラスの手腕にある」と答えた。

 同社が不動産会社ではまだない「なでしこ銘柄」(住宅会社では積水ハウスが指定されている)や「ダイバーシティ経営企業100選」に選ばれるよう期待したい。

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「オーベルグランディオ横浜鶴見」完成予想図

 大成有楽不動産、京浜急行電鉄、菱重エステート、長谷工コーポレーション、ナイスの5社は12月4日、横浜市鶴見区の大規模マンション「オーベルグランディオ横浜鶴見」(全553戸)の供給第1号街区となる「アリーナテラス」(180戸)の販売を12月7日から開始すると発表した。

 鶴見駅から徒歩7分に立地する全3街区の総開発面積約2万㎡超。「人と地域で緑をつなぐ共創の住まい」がコンセプトで、建物の高さを7階建てに抑え、入居者間の良好なコミュニティ形成を図ることを目的に街区ごとに組成される管理組合をつなぐ「共同コミュニティ委員会」を設置する。また、新しいコミュニティ支援プログラム「マチトモ」プロジェクトを立ち上げ、地域の団体・企業と共に新しい子育て支援・交流支援、多世代交流を実現することを目指す。

 1期の販売戸数は102戸、価格は3,820万~6,020万円、専有面積は66.49~82.68㎡。14日(土)まで申し込みが受け付けられる。

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今回分譲街区の外観(完成予想図)

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講義する鯉沼教授(帝京大で)

 三菱地所グループの三菱地所リアルエステートサービス(旧・三菱地所住宅販売)、三菱地所ホームの社長を務め、三菱地所顧問兼京葉土地開発社長を最後に2010年4月に退職し、2011年4月から帝京大学経済学部経営学科教授を務める鯉沼宏治氏(69)の講義を聴講し、歓談させていただく機会に恵まれた。

 不動産会社から大学の教授になったのは現在、テレビのコメンテーターとして活躍されている東京都市大学教授・涌井史郎氏しか記者は知らない。涌井教授は東急不動産グループの石勝エクステリアの社長を務めていた。

 なぜ大学教授になったのか。鯉沼氏は「リタイアしたら気ままに暮らそうと思っていたら、知人から「実業界で経験を積まれた方を求めている大学がある。社会の現場が求めている人材を育てるお手伝いをする気はないかと話を持ち掛けられた。女房に相談したら、『まだのんびり引退する歳でもないでしょ』と勧められ、これも何かの縁だと思って決断した」と教授を引き受ける経緯を語った。

 「自分が学生のときは、勉強より遊び優先の不真面目なほうだった。1回90分、年間90回も何を話せばいいんだろうかと正直不安でしたね。でも、やる以上はいい加減なことはできないので必死に準備しましたよ。これほど力を入れて勉強したのは初めての経験じゃないかなぁ。最初は戸惑ったが、そのうちに90分では足りなくなった。単に企業戦略の講義だけでなく、実社会では、あらかじめ決まった正解はないという事を前提にして、自立した人間として求められる教養的なものにも学生の関心を高めるために、その時々のニュースを話題にするようにもしたし、質疑応答やグループディスカッション形式の授業も増やし学生と双方向型の授業ができるようになった。この前は憲法改正と安全保障問題についても議論した」とこれまでの講義を振り返る。

 鯉沼氏は1944年生まれ。横浜国大を卒業後、1967年4月、三菱地所に入社。2000年6月に同社取締役兼三菱地所住宅販売(現・三菱地所リアルエステートサービス)社長、2003年4月、同社取締役常務執行役員兼三菱地所ホーム社長、2004年6月、同社取締役専務執行役員兼三菱地所ホーム社長、2008年、三菱地所顧問兼京葉土地開発社長に就任した。来年3月で帝京大学教授も定年で退職する。

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 16:30~18:00の鯉沼教授の「企業戦略」の講義を聴講した後、ロードサイドのレストランで話を聞いた。鯉沼教授は車を運転するのでノンアルコール、遠慮などしたことのない記者は日本酒。

 鯉沼教授は次のように思い出を語った。「大学を卒業して、就職するなら身近で夢があり形として残る不動産か建設に決めていた。最初に試験を受けたのが三菱地所。中田(乙一)専務(当時。のちに社長)から面接を受けたが、あの頃の就職試験はおおらかでしたね。当時の地所は発展途上にあり、知名度も今ほど高くありませんでしたが、株をやっている叔父から『いい会社に入った』と褒められた」 

 「戦後復興から高度成長期の丸の内の再開発は区分所有法などの法制度も萌芽期で、建設資金の調達もままならない時代。賃料とは別に地所で独自に発案した建設協力金を募って事業を進めていた」 

 「(1974年の)三菱重工ビル爆破事件では、重工ビルの担当責任者として、現場保全をかたくなに主張する捜査陣に対して『我々もお客さんの財産を守る責任がある』などと丁々発止のやりとりをして業務再開に取り組んだ。割れた2,700枚のガラスを旭硝子さんやゼネコンが協力して集めてくれたのはうれしかった」

 「再建を託された三菱地所ホームでは、『うちの売りは何だ』と徹底して社員と議論して、その後のエアロテックの商品戦略につなげた。なかでも一番重視したことは、住宅は『お客様の大切な人生をお預かりする仕事』との想いを、社員一人一人が共有することでCSR活動にも取り組んだこと」

 鯉沼教授の話がはずめばはずむほど記者の酒も進んだ。5杯は飲んだはずだ。取材メモの最後には「退職したら地球一周する…来年7月にピースボートに乗船、横浜から出港して10月に横浜に戻ってくる」「ハワイ-中米-南米-アフリカ-スペイン-黒海-トルコ-エジプト-スリランカ-東南アジア」

 「(奥さんに)お前、どうする? 」「3カ月も狭い船の中はいや」などと文字がのた打ち回っている。(つまり、奥さんには断られたのか、もっと広い部屋を取れと言われたのか…メモには○○○万円と料金も書いてあるので2人一緒なのは間違いない?)
 鯉沼教授の第3の人生にボン・ヴォヤージュ!

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 先週の大京・近鉄不動産「ライオンズ港北ニュータウンローレルコート」の記者発表会で、同業の記者が次のような質問をした。

 「地下を含め7階建てのマンションにしては工期が非常に長い。何か理由があるのか」と。

 この質問に記者も驚いた。マンションの完成時期はユーザーにとってもっとも重要な要素だが、われわれ記者は全くと言っていいほど気にかけない。一般的なマンションは、階数に基礎工事などの3カ月分を足したのが工期だという認識があるぐらいだ。最初は質問した記者の意図が全然わからなかった。

 すぐ配布された資料で確認した。竣工予定は2015年8月24日とあった。記者発表会当日の時点で工期は20カ月ぐらいあるではないか(正確には着工は今年10月だから22カ月)。

 この質問に同社商品企画部担当副部長・中山雄生氏は、概ね次のように答えた。「通常はこの程度のマンションなら15カ月ぐらいかもっと早く竣工できるが、工期を長くとることで施工会社も余裕をもって職人を手配できる。工期を長くしてコストがアップしたわけではない。事前の検査もそれだけ十分できる」と。

 つまり、22÷15=1.5。通常より1.5倍の工期をかけてもコストアップにならないということは、それだけ職人不足は深刻な状態にあるということだ。このようなケースは今後激増するのではないか。

 飯田グループホールディングス代表取締役会長・飯田一男氏が平成25 年11 月29 日(金)死去した。享年75歳。故人の遺志により葬儀は近親者のみで執り行う。後日「お別れの会(仮称)」を執り行うが、日時・場所などは未定。

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 グループ全体で売上高が住宅・不動産業界で5番目の9,075億円、主力の建売住宅の販売戸数は29,459戸というガリバー企業にまで成長させた方だ。最近は体調を崩されていたのは関係者を通じて聞いていた。

 平成21年に一建設がジャスダックに上場したとき、コメントを取ろうとご自宅までうかがったが、家族の方から「もう一線から退いておりますので」とお会いすることも出来なかったのが心残りだ。ご冥福をお祈りしたします。

建売住宅のガリバー企業誕生 飯田グループホールディングス(2013/11/2)

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「子育てママの理想の家」

 ポラスグループの中央グリーン開発は11月29日、地域の子育てママさんの提案をそのまま建設・販売する「子育てママの理想の家」4棟が完成したのに伴い報道陣向けに公開した。

 「理想の家」は、今年1月、地域の子育てママを支援する活動を行なっているNPO法人子育てパレットと同社グループが協働で立ち上げた「子育てママの理想の家をつくろう」プロジェクトによるもの。4月のコンペティションによって4作品を選定。当初の予定では6名の審査員によって選ばれた最優秀プラン「Give&Take」のみをモデルハウスとして建設されることになっていたが、他の3チームも「建築に値する」と判断されて全棟を建設することになったもの。11月16日から販売されている。

 挨拶した中央グリーン開発事業部長・戒能隆洋氏は「全206棟のうち169棟を供給し151棟を販売することができた。2年間で完売する当初計画通りに進捗している。今回の『理想の家』を始め補助事業の太陽光・HEMSなどを採用した住宅を供給して販売スピードを加速させていきたい」と話した。

 今回公開されたモデルハウス4棟のうち最優秀の「Give&Take」(土地面積約96㎡、建物面積約96㎡、価格4,080万円)が販売済み。戒能氏は「このプランはもっとも条件が悪かったにも関わらず、プランの良さが評価された」と提案者を称えた。

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 記者は、最初のコンペティションを取材したとき、小さな子どもの声を含めてにぎやかな模様をストレートに伝えて顰蹙を買った。改めて関係者にお詫びしたい。

 実際の建物が完成したのを見て、「子育てママ」の問題は、単にママの置かれている問題だけでなくパパの立場、就労条件、地域とのコミュニティの問題など様々な問題が建物に反映されていると感じた。以下、ママさんやパパ、デベロッパーの商品企画担当者、営業マンにも参考になるはずなので、思ったままを紹介する。不愉快な表現があるとすれば、すべて記者の責任であることをお断りする。

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「Give&Take」の提案者(左から加藤さん、宮下さん)

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 Bチームの「Give&Take」モデルハウスが「花丸」だ。ハウスメーカーやデベロッパーの発想の域を飛びぬけていた。記者がもっとも評価したのは主寝室から梯子ではなく階段でつながっているロフト「パパのくつろぎ空間」。ロフトにこもって仕事ができるし、布団を持ち込めば一人寝もできる。もちろん酒もタバコも吸える。企画した宮下さんは「みんなに聞いたら、男の人ってこもりたがるのよね」と話した。当たり! 世の男性は押入れや段ボール箱にこもった経験は必ずあるものだ。子宮願望といってよい。これを巧に取り込んだ。(関係ないが安部公房の「箱男」もお勧め)

 対面キッチン&リビングとつながった1階の段差リビングもいい。小上がりのステップを3段、高さ約60センチにしたのがミソだ。

 この種の段差リビングはポラスも他社もよく提案するが、高さはせいぜい40~50センチだ。60センチにしたのは「結婚当時の写真とか子どもの記録、捨てたくない思い出がつまったガラクタ、季節の入れ替えものなど何でも収納したい」(宮下さん)というのがその理由。高さが低いと作業がしづらく、まるまる収納スペースにできないのは容易に想像がつく。これは、ポラスの住宅は1階の天井高を2.7メートルにしているから実現したプランでもある。2.6mだと60センチの高さを確保したら、段差リビングは居室にならない(建基法では居室の天井高は2.1メートル)。

 このほか、玄関と連結している土間収納はプロがよくやる提案だ。巨大パントリーもいい。

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左から段差リビング、階段つきパパの空間、土間収納

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 Cチームの「私たちの理想の家ストーリー」が「三重丸」。出隅入隅などを多用してコストをまったく考慮していないのがいい。圧巻は2階の提案だ。主寝室は8.9畳大、その隣には小さな子どもを想定した5.2畳大の洋室がオープンになっており、さらに親子はもちろん夫婦のコミュニケーションの場ともなるサンルーム&多目的空間が提案されている。一体として利用すれば20畳大の空間が実現する。これはすごい! 

 多目的空間については「折りたためるカウンターの反対側は、狭いながらもパパ専用のスペース。家族が寝たあとでも眠りを妨げることなく読書をしたり持ち帰った仕事を片付けたりができます。ママが反対側に座って洗濯をたたんだり…すれば夫婦の会話も自然に生まれます…」とあった。

 「子育て」は「働くママ」の問題だし「夫婦関係」の問題だ。さらにいえば近隣住民とのコミュニケーションの問題かもしれない。このCチームは30坪の住宅に夫婦の空間として2階のほとんど全てを提案しているのが素晴らしい。1階キッチン隣の勝手口、玄関サイドの納戸の提案もいい。

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「私たちの理想の家ストーリー」を提案した坂本さん(写真は左からサンルームと不思議な空間、主寝室と子ども部屋)

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 Aチームの「~家族が楽々HAPPYスマートライフ♪~」、Dチームの「つながる家族繋がる時間」は、ポラスの住宅とそん色ないが、強烈にアピールしたBやCと比較するとコンペ作品として物足りなさを感じた。

 Aチームのプランの玄関・框・ホールの提案は消化不良。アピールしたいことをもっと明確にしたらよかったのではないか?

 中2階のPAPAスペースももう一工夫が欲しい。広さは1メートル四方。机とパソコンがセットされていた。ここに夫なり妻なり子どもが「こもって」何かやるだろうか。疎外感を味わうだけではないか。Bチームのプランのように自らの意思で入るのと、追いやられて入るのとではまったく意味が異なってくる。

1階の約3畳大のリビングに面した階段下畳コーナーも狙いはいいが、空間の高さは約130センチ。子どもが成長したらどういうペースになるのか、居室としても使えない。

 Dチームのプランは、「子育てママ」の主張が強すぎる感がある。1階の洗面室に隣接した日当たりのもっともよいところに「ママコーナー」を設置し、その一方で、北側の1畳大もないところに「パパの秘密基地コーナー」を設置していた。これには正直驚いた。パパがかわいそうだ。

 ところがどうだ。この理不尽なプランの感想をわが社の働く女性に聞いたら、「このプランはよく理解できる。パパのものなんか捨てたくてしようがない。置いてもらえるだけでありがたいと思うべき」と痛烈な答えが返ってきた。

 プロジェクトのWeb人気投票ではAチームが21.8%、Bチームが28.4%、Cチームが19.6%、Dチームが30.2%の支持を集めたそうだ。つまり、もっともママの主張を盛り込んでいたこのDチームのプランが一番ママに人気があったということだ。これは、子育てママに非協力的なパパ社会に対するママの趣意返し、倍返しではないかと考えてしまった。

◇        ◆     ◇

 家事労働をどう考えるかを聞くため、「食洗機」についてコンペ参加者に聞いた。

 「私は食洗機が欲しい」

 「食洗機はいらない。食器洗いは苦にならない」

 「旦那に食洗機欲しいと話したら『お前、専業主婦だろ、それぐらいやれよ』と言われた。来春から私も働くようになるから、買ってもらえそう」

 「えっ、食洗機付いていないの? 私は三人家族で食器洗いにかける時間は10~15分」

 「食洗機は最初から付かないと聞いていた」

 別の子育てママ3人に聞いた。

 「食洗機は必需品。ルンバもそう」(2人。そのうち階段を上り降りするルンバが開発されるのではないか)

 「うちは旦那が夜遅いから食事は娘と二人。食器洗いは10分で済む。ディスポーザーはあるととても便利」

 記者は子育てママ、働くママにとって食洗機は必需品だと思う。最近は価格の上昇で食洗機をオプションにするところが増えているが、一次取得層の住宅こそ標準化すべきだ。家事労働の価値を理解できない商品企画担当や営業マンは失格。売れるものも売れなくなってしまう。

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 この企画が発表されたとき、どうせママさんたちは販促のための〝客寄せパンダ〟になるのだろうと思った。プレゼンもほとんど聞いていなかった。

 ところが、ママさんたちのプランを盛り込んだ上棟式を取材して、考えを改めた。ポラスは真剣に入居者とともに地域とのコミュニティ形成に取り組んでいた。スタッフも入居者も汗だくになりながらイベントを楽しんでいた。

 そして今回。4つのプランをすべて見た。B、Cとも素人の域を超えていた。AとDはB、Cと比較するとややインパクトに欠けていたが、思いはひしひしと伝わってきた。各チームともキッチン、収納、浴室などには力を注いでいた。それだけ現状の住宅は子育てママや働くママの希望する住宅とかけ離れているということだ。

 現段階で4プランのうち売れているのはBプランというのも納得だ。供給サイドは〝売れない〟リスクを恐れて万人受けするプランにするが、Bプランはそうではないことを実証した。

 今回の経験でポラスは供給サイドと消費者の間には少なからずずれがあることを学んだはずだ。潜在的なニーズも把握したはずだ。今後、どのように商品企画に生かしていくか楽しみだ。 

ポラス 優秀賞モデルハウス上棟式に150組・450人が参加(2013/9/2)

ポラス 「子育てママの理想の家」コンペ大会(2013/4/26)

 法廷では「どのような答えが返ってくるか分からない質問はしてはならない」というのは弁護士の鉄則だそうだが、われわれ記者も同様だ。懇親会や記者発表会ではいつもそれを心がけている。

 その意味で、記者は昨年も今年も掟破りの質問を敢えて行なった。住宅金融支援機構が11月29日行った恒例のプレスセミナー・懇親会の場で、リスク管理債権について質問したことだ。当然のことながら昨年は明快な答えが返ってこなかった。そのような質問が飛ぶことなど機構は予測していなかったはずだ。それでも質問したのは、機構もそうだが同業の記者にもこの問題について考えて欲しかったからだ。機構に対する質問というより、同業の記者に向けて発した質問だった。

 今回も同じ質問をした。質問は概ね次の通り。「私は、住宅ローン債権は優良債権だと思うし、それを前提としてお聞きしたい。リスク管理債権のうち、既往債券は償還が増え、不良債権が沈殿し濃縮されていくのでのリスク債権比率が高まっていくのは理解できるが、額としては2兆円もあるのは由々しき問題。買取債権のリスク債権比率は金額的には1,000億円しかないが、今後どんどん積みあがっていく。機構は健全なリスク債権比率をどの程度に設定しているのか」

 質問の背景にあるのは、ローン審査の選別融資(厳格化)の問題だ。審査を厳しくすれば不良債権は減るだろうが、その一方で中・低所得者のマイホームの夢がしぼむ。いわば両刃の剣だ。記者は旧公庫から機構に移行してから、審査の厳格化が進み、時計の針でいえば右から左へと振り切った状態にあると考えており、振り戻し、つまり中・低所得者のマイホームの夢をしぼませてはならないという考えがあるからだ。

 今年も機構側からたいした答えは返ってこないだろうと思いつつ、あるいはしっかりした答えが返ってくるのではという期待もあった。融資のプロが同じ轍を踏むとは思えなかったからだ。

 答えは期待以上だった。同機構経営企画部長・池谷(いけのや)文雄氏は、質疑応答の大半の時間を割いて次のように説明した。平成24年度末のリスク管理債権比率は7.47%で、金額は約2兆円。このうち半分は(債務者の再建、支援を目的とした金利の減免、利息の支払猶予など)支払い条件の緩和を行なったもので、この方たちの約7割は7年後には正常に戻っている。既往債権の回収は順調に進んでおり、買取債権のリスク管理債権は、まだ始まったばかりで、7年後当たりに増えだし10年後から安定した数値で推移するというものだ。

 民間のリスク管理債権比率については、都銀が1.9%、地銀が2.94%、第2地銀が3.81%、信金などが4.87%で、機構の7.47%は決して低くないことを明らかにした。池谷氏は「システマティックな融資を行なってきた旧公庫の反省を踏まえ、『貸さない親切』をわれわれは学んだ。以前と比べ確かに厳格化は進んでいる」と話した。

◇     ◆   ◇

 記者は、支払い条件緩和者の7割が正常に戻ると聞いたのがうれしかった。機構は以前のように(貸した金を返せというような)督促状を何度も送りつけるようなことはしないで、今年度からは(デフォルト化しない事前相談の)「ご案内」の送付、カウンセリングなどキメ細かな対応を行なっているそうだ。

 池谷氏は、民事再生法の住宅ローン特約を利用することも勧めた。住宅ローン特約とは一定の要件を満たせば、競売にかけられずに返済期間を延長してもらえるものだ。

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 機構のリスク管理債権が約2兆円もあることは重大な問題だ。人数にしたら数万人に上るはずだ。何とか救済する方法はないものかと頭をひねるが、妙案はない。バブルが崩壊してほぼ一貫して資産デフレが続いているのがこうした悲惨な事態を招いている最大の要因だ。

 しかし、記者は「買う勇気」をとくに一次取得者には持って欲しいと思う。賃貸住宅は基本性能、居住性能も分譲より比べようもないほど劣っているし、ばかばかしい「賃貸か分譲か」などのマスコミの記事など読まないでいただきたい。「賃貸か分譲か」の選択肢があるのは富裕層だけだ。しっかり生活設計、資金計画を練ってチャレンジして欲しい。

 マンション管理組合には、大規模修繕や建物の耐震化の工事を無担保で融資する「マンション共用部分リフォーム融資」を積極的に利用して欲しい。建て替えは一部の条件のいいものを除き絶望的だと思う。

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 平成24年度決算では2,000億円余の当期総利益を計上し、2期連続で黒字となったことなどから、宍戸信哉理事長の機嫌がすこぶるよかった。東南アジアからわが国の住宅金融システムについての問い合わせが殺到していることも明かした。そのうちにシステム丸ごと輸出できるのではないか。

 

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