旭化成ホームズ 「宇田川町住宅」建て替え竣工見学会
「アトラス渋谷公園通り」完成予想図
角を矯めて牛を殺すことにならないか総合設計制度改正
旭化成ホームズは10月29日、渋谷区の「宇田川町住宅」の建て替え事業「アトラス渋谷公園通り」が竣工したのに伴い、報道陣向けに見学会を行った。
物件は、渋谷駅から徒歩5分、渋谷区宇田川町3の敷地面積約870㎡の商業地域に位置する13階建て49戸(店舗1)。専有面積は約33~104㎡。坪単価は420~430万円。
従前建物は、昭和36年に竣工した東京都住宅供給公社が分譲した店舗併用マンションで、地下1~3階を同公社が所有、住戸(約58㎡)は4~7階で全16戸。エレベータはなし。
平成15年から建て替えの計画が進められたが、合意形成ができず検討がストップ。同18年、有志が同社の建て替えセミナーに参加したことがきっかけで再び建て替えの検討が始まり、同21年6月、同社が事業協力者としてプレゼンを行った3社の中から選定された。同22年9月、全員同意で建て替え決議を行い、同年12月、組合員全員が再取得することが決まった。
同社は当初、建基法案と総合設計案を提示したが、平成22年に都の総合設計制度改正が行われることになっており、適用の可否、容積率の割り増し、公開空地の確保や非住宅面積の制限が厳しくなることなど上に伸ばすメリットがなくなったとして断念した。
また、同社は、権利者が17人と少ないことから、複数の議決権を持つ権利者が建て替え決議に大きな影響を及ぼすこと、商業立地の店舗併存マンションは更地での売却、商業ビルへの建て替えのほうが「最有効活用」となる場合が少なくないこと、テナントとの交渉に時間がかかるなどの課題もあると説明した。
エントランス
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計画は聞いていたが、坪単価420~430万円で分譲済みとは知らなかった。同じ公社住宅の建て替えマンションとして話題を集めた「渋谷美竹」より少し遅れて分譲された。こちらは「公園通り」に面しており、隣は東武ホテル、その先は渋谷区役所、NHKなどがある一等地。記者は坪単価500万円でも売れるのではないかと思った。リーマンショック前では坪500万円のマンションが近くで分譲されており、高額を除き人気になった。
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総合設計制度を活用しなかったというのも驚いた。都は平成22年に同制度を改正。単に公開空地の面積の確保だけでなく、緑化率などの質や住宅の質、環境性能などが問われるようになった。
今回のマンションは敷地面積が小さく要綱が改正される前で、その概要が明確でなかったために同制度の活用を見送ったようだ。しかし、総合設計制度は良好な街づくり、住宅供給を促すための制度だ。権利者が基準法を選択したほうがいいと判断される要綱改正は、制度の趣旨からしていかがなものか。
都の総合設計制度の適用案件は毎年20~30件あったが、要綱が改正されたあとの平成23年度も24年度もそれぞれ3件しかないのは気になる。角を矯めて牛を殺すことにならないのか。
屋上テラス
日本土地建物 船橋のシェアハウス賃料は51,000円から
日本土地建物が千葉県船橋市で開発を進めている全85戸の大型シェアハウスの名称が「シェアリーフ西船橋グレイスノート」と決まり、賃料も51,000円/室~83,000円/室(別途共益費18,000円)と決まった。
リビング・ダイニング、多目的ルームのほか、音楽スタジオを3室設置するなど共用施設を充実させているのが特徴。個室は9.6畳大が基準で、最大15.8畳大。入居募集開始は来年1月から。入居開始は3月上旬。
旭化成ホームズ 坪単価で測れない価値あり「NEXT HEBEL HAUS」
「NEXT HEBEL HAUS 新大地」(左)と「NEXT HEBEL HAUS CUBIC(キュービック)」
旭化成ホームズは10月28日、静岡県富士市の同社住宅総合技術研究所で戸建て住宅の新商品発表会を開き、低層戸建住宅用の躯体システム「鉄骨軸組ハイパーフレーム構法」の優れた構造性能を最大限に生かした内部空間の縦方向へのプラン自由度を高め、新たに開発した外装部材やインテリアを備えた「NEXT HEBEL HAUS(ネクストヘーベルハウス)」シリーズを平成25年11月1日(金)から発売すると発表。
同時に、「NEXT HEBEL HAUS」を盛り込んだ陸屋根タイプの「NEXT HEBEL HAUS CUBIC(キュービック)」と寄棟屋根タイプの「NEXT HEBEL HAUS 新大地」を新たにラインアップに加え、関東、東海、関西、山陽、九州北部で販売していくと発表した。同社の主力商品にする考えだ。
「NEXT HEBEL HAUS」は、コストアップ要因を企業努力で抑えながら「鉄骨軸組ハイパーフレーム構造」の強化を図り、1階の階高を16cm高くする仕様を導入するとともに、2階の床を約80cm下げた中間層に設置する「クロスフロア」を実現。住空間の自由度を飛躍的に高め、インテリア・エクステリアを進化させたのが特徴。2~3年かけて開発してきた。平成25年度の販売目標は3,000棟。
「NEXT HEBEL HAUS CUBIC」は、大都市圏の狭小敷地の子育てファミリーをメインターゲットに置いた商品で、「クロスフロア」を採用することで、4層にも5層にも見える豊かな住空間を提案している。コンセプトモデルの延床面積は118.16㎡(35.8坪)。本体価格は2,930万(税抜き価格)。平成25年の販売目標は150棟。
発表会に臨んだ同社取締役兼副社長執行役員・池田英輔氏は、「2~3年前から開発を進めてきたもので、これまでやってきたことをてんこ盛りにした商品」と語り、同社技術本部商品開発部長・加藤明氏は、「設計の自由度を高め小さくても豊かな空間を実現したことと、インテリア・エクステリアのアイテムを増やしたことの2つの進化を遂げた商品」と特徴を語った。
池田氏
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報道陣に公開された「NEXT HEBEL HAUS 新大地」は広さ約60坪。新商品の特徴であるダウンフロア400ミリ、クロスフロア、勾配屋根などを駆使して2.7m・3.2m・5.2mなどの天井高を提案した5層住宅だ。外観に木目調軒天やルーバースクリーン、キャノピーを採用し、住戸内も床・壁・天井に無垢材をふんだんに用いた「ウッディモダン」を提案している。それこそ「てんこ盛り」のモデルハウスだ。
「カフェミックス キッチン」(左)と「キッズピット」
「パパボックス」
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記者が注目したのは「NEXT HEBEL HAUS CUBIC」だ。これまで軸組工法や2×4工法による中2階や2層吹き抜け空間の提案はたくさん見てきた。鉄骨住宅の同社の提案もこれまで見てきたものと大差はないだろうと高を括っていた。
ところが、従来のものとは全く異なっていた。従来の中2階はどちらかといえば閉じられた空間を中2階に設置したものが多かった。
今回の提案は閉じられた空間でもあるが、上下階やスキップフロアの隣り合う住空間との一体利用を想定したものだ。「個室を最小限に抑えている」ためもあり、床面積にして20坪の空間が0坪ぐらいの空間に見える。3.2mの天井高を実現した「クロスフロアのリビング」が上層階のダイニングキッチンや下層階の子ども部屋ともつながっているのには驚いた。新たに加えられたインテリアスタイルの「カフェミックス」も需要層のニーズにマッチした提案だと思う。
一つだけ注文をつけるとすれば、外観だ。「キュービック」は合理的な住宅に違いないが、内部空間が素晴らしいだけに外観も魅せるものにしたほうがいいのではと思った。
クロスフロア空間
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われわれ記者は戸建てであろうとマンションであろうと、すぐ坪単価で価値を判断する。今回のプロトタイプの「NEXT HEBEL HAUS CUBIC」は約83万円で、約36坪で2,930万円だ。しかし、先にも書いたようにこの商品は坪単価で測れない価値がある。3層~4層の住空間があるからだ。
もう一つ、この坪単価と関連することだが、間取り表示について。記者はあまり間取り表示を重視しない。基本的には居住面積だ。居住面積が間取りを決定付けるからだ。その意味で、今回の商品は○LDKとして表示ても意味がない。DK表示の物差しを超える価値がある。
ちなみに建基法でいう「居室」とは天井高が2.1m以上で、採光と換気について一定の基準を満たさなければならないが、広さについての規定はない。マンション業界などは自主規制として4.5畳大以上を「居室」としたときがあった。
腰窓付きのクロスフロアで住宅の特徴を話す担当者(上階のダイニングキッチンから写す)
建設労働者不足率 9月は前月の2.1%から2.5%へと拡大 国交省調査
国土交通省は10月25日、9月10日~20日の建設労働需給調査結果をまとめ発表。全国の8職種の過不足率は8月の2.1%の不足から9月は2.5%の不足と0.4ポイント不足幅が拡大。特に鉄筋工(建築)の不足率が5.8%と大きくなっている。型枠工(建設)も不足率は3.9%(8月は3.1%)と拡大している。
今後の労働者の確保に関する見通しについては、翌々月(11月)は「困難」と「やや困難」の合計が36%で、対前年同月比12.9ポイントの上昇。
また、10月1~5日現在の主要建設資材の価格動向については、異形棒鋼、H形鋼は“やや上昇”、その他の資材は“横ばい”で、需給動向については全ての資材が“均衡”となっている。
三井不動産 東武東上線エリア最大級の商業施設「(仮称)ららぽーと富士見」着工
イメージ図
三井不動産は10月25日、埼玉県富士見市のリージョナル型ショッピングセンター「(仮称)ららぽーと富士見」を着工したと発表した。
東武東上線エリア最大級の規模で、敷地面積は約152,000 ㎡、延床面積約185,000 ㎡、店舗面積約80,000 ㎡の4 階建て(店舗部分は3 階建て)。店舗数は約300 店、駐車場台数約4,600 台を予定。開業は2015年春の予定。施設は富士見市のシティゾーンに位置し、富士見川越バイパス(国道254号)に接している。
三菱地所 賃貸マンション2015年まで4,500戸供給
「PARK HABIO恵比寿」
三菱地所は10月23日、同社の賃貸マンション「PARK HABIO(パークハビオ)」の竣工物件「PARK HABIO恵比寿」の見学会を行った。
「PARK HABIO」は、都心の駅近好立地の物件に絞り込み、分譲マンションと同様の耐震性・耐久性・セキュリティなどを確保し、三菱地所グループのバリューチェーンを活かした事業で、2004年にスタート。2009年からは世帯構成の変化に対応し単身者・DINKS向けにシフト。賃料にして12万~19万円/坪の物件を中心に企画。計画中の物件を含め2015年8月までに53棟、約4,500棟を供給する。
事業スキームは、用地取得・企画を同社賃貸住宅事業部が、企画・設計・品質管理を三菱地所レジデンス・三菱地所設計が、インテリアデザインをメックデザインインターナショナルが、リーシング・PMを三菱地所ハウスネットが、管理を三菱地所コミュニティが、アセットマネジメントを三菱地所投資顧問がそれぞれ担当。
これまで竣工した34棟のうち29棟は売却済みで、そのうちの約半数は三菱地所投資顧問が運営する日本オープンエンド不動産投資法人に売却している。
挨拶した同社賃貸住宅事業部長・坂口泰之氏は、「投資家、エンドユーザーにも高い評価を得ており、稼働率は90%を超えている。分譲・注文などとのバリューチェーンを強化していきたい」と語った。
「恵比寿」は、恵比寿駅から徒歩3分の14階建て全109戸。住戸面積は25.04~50.30㎡。募集賃料は13.5万~28.1万円/月。
坂口部長
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賃貸住宅のことはよく分からないが、キッチンの天板にクォーツストーンが採用されており、キッチン下収納の内引き出しがソフトクローズ機能付きだったのには驚いた。
分譲マンションでクォーツストーンを標準装備しているのは坪単価にして200万円以下はまずないはずだ。内引き出しをソフトクローズにしているのは茶碗などが割れないようにするためだという。「ピクチャーレールはオプションか」と聞いたら、「賃貸にオプションはありません」と笑われてしまった。床は直床だが、天井は2重天井。同業の大手は2重床、直天井にしているケースが多いという。間口を3m以上確保しているのも〝こだわり〟だそうだ。
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投資家は年金や金融機関が中心で、投資家の期待利回りは4.5%ぐらいとのことだった。他の不動産投資商品と比べ利回りは低いようだが、長期・安定投資としては都心部の賃貸住宅は投資リスクも小さいだろうから、4.5%という利回りはむしろ高いと考える。「麻布狸穴」(84戸)の現場を見たときはびっくりした。
リビング(ベッドが横に置けるのが〝ミソ〟だそうだ)
プレ協「エコアクション2020」12年度実績で考えたこと
「木材の管理体制」はなぜ重要か「緑化配慮」は進んでいるか
プレハブ建築協会は10月24日、環境行動計画「エコアクション2020」の2012年度の実績について報告した。
報告では、太陽光発電システムや家庭用燃料電池の普及が進んだこと、国の補助金制度、固定買取価格制度などの支援策があったことから、2012年度に供給した戸建ての居住段階でのCO2排出量は2010年度比14.2%減の2,004㎏-CO2/戸となり、太陽光発電システム設置戸建ての供給率は61.7%(前年比3.3ポイント増)となっており、かなり成果をあげていることが分かった。
また、既存住宅の居住段階でのCO2排出量削減では、太陽光発電システム設置工事件数は12,776件(前年比18.4%増)となり、生産段階でのCO2排出量は供給床面積当たり30.8㎏/㎡(同1.5%減)となった。
「エコアクション2020」は、「低炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現に向けて数値目標を掲げて取り組んでいるもので、標準的な戸建てでは2020年までにZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)実現を目指すほか、生産・施工におけるCO2排出量を2010年比で10%削減などを掲げている。
調査対象となっているのは会員会社の10社で、10社の戸建て供給戸数は67,119戸、低層集合住宅66,393戸。
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ニュースリリースには「自然共生社会の構築」と題して、「会員各社は、木材調達方針(ガイドライン)を策定し、サプライチェーンの協力を得ながら、トレーサビリティや、合法性の確認や持続可能性の評価を行う体制を確立する等、持続可能な木材の利用を推進している。管理体制を規定している会員会社は6社である」としている。
記者は、この「管理体制を規定しているのは6社」に興味を持った。合法性(コンプライアンス)は当然のことだし、食材ほどではないにしろ「トレーサビリティ(追跡可能性)」が重要なのは論を待たないと思った。問題が生じた時、コンプライアンス、アカウンタビリティ、トレーサビリティは3点セットではないのか。家庭の主婦は肉も野菜も「トレーサビリティ」(産地・生産者表示)が欠けていたらまず買わない。
調査対象となっている10社は、わが国、つまり世界を代表する大手(系)ハウスメーカーが過半を占めている。にもかかわらず木材の管理体制を規定していないところが4社もあるのが信じられなかった。管理体制など確立しなくても、木材は石油化学製品などで覆い隠されるから問題がないのだろうか。輸入材だろうが国産材だろうが品質に差はないのだろうかと考えてしまった。昔の大工さんは生産地や樹種はもちろん部位によって使い分けたというではないか。
協会の関係者に聞いたら管理体制はもちろん重要で「今年度中にはもう1社加わって7社になる予定」とのことだった。「管理体制とは何ぞや」をきちんと説明(アカウンタビリティ)しないといけないのではないか。
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もう一つは、同じ「自然共生社会の構築」の項目で、「地域の生態系の保全に配慮した住宅地の推進」についてだ。リリースには、2012年度に会員各社が分譲した建売住宅4,654戸(前年比780戸増)のうち「CASBEE戸建新築」の基準に基づいて緑化に配慮して分譲した建売住宅が1,935戸(前年比2921戸)、供給率にして前年とほぼ同じ41.6%であることが報告された。
この比率が高いのか低いのかの判断材料はないが、各社の大都市圏と地方圏の供給比率から類推して、地方圏では緑化配慮住宅はかなり進んでいるが、大都市圏ではまだまだ遅れていることが容易に想像できる。緑化の推進は大都市圏こそ重要だ。来年は大都市圏と地方圏の圏域別の取り組み状況を明らかにして欲しい。
消費者が木材の管理体制の有無に関心を持ち、緑化配慮住宅に価値を見いだすような市場を形成するためにもプレ協は先頭に立って啓蒙すべきだろう。森林・林業の再生は待ったなしではないか。
「70㎡でも75~80㎡と同様の居住性能」 住友不動産「武蔵小杉」販売へ
モデルルーム
住友不動産は10月24日、武蔵小杉の大規模免震マンション「シティタワー武蔵小杉」の記者発表・見学会を行い、11 月2 日(土)にマンションギャラリーをオープン、事前案内会を開始すると発表した。
物件は、東急東横線・目黒線武蔵小杉駅から徒歩4 分、またはJR横須賀線・湘南新宿ライン武蔵小杉駅から徒歩4 分、川崎市中原区中丸子に位置する53階建て全800戸。専有面積は55.23~72.35㎡、竣工予定は平成28 年1 月中旬。設計・施工は前田建設工業。
物件の特徴は、①“武蔵小杉センターゾーン”の大型開発ファイナルステージ「新丸子東3 丁目南部地区」に立地②東急線、JR 横須賀・湘南新宿ラインの「武蔵小杉」駅両方から徒歩4 分③大型商業施設「アリオ武蔵小杉(仮称)」に隣接④〝日本初〟のダイナミックパノラマウィンドウ+アウトフレーム工法を実現⑤水回りを含む間取りとインテリアカラーが無償で選択できる「カスタムオーダーマンション」対応――など。「周辺に多い白やベージュとは一線を画した縦ラインを強調したダークグレー」の外観も特徴だ。
発表会に臨んだ同社住宅分譲事業本部神奈川事業部長・雲見隆行氏は、特徴について「第三世代のタワーマンション」であることを強調した。同氏によると、「第一世代は従来の思考に基づく高さを競うタワー型」とし、「第二世代は、第一の商品企画の反省に基づきピクチャーウインドウの採用により眺望を重視する進化型」と説明。そして「第三世代とは、眺望重視をさらに発展させ、住戸の間取りに工夫を加え、防災も充実させたもの」とと定義づけした。「自慢のタワーマンション」とも語った。
現在まで問い合わせは5,000件を超えている。第1期分譲は来春。価格は公表されなかった。
外観
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記者が注目したのは「第三世代のタワーマンション」というコンセプトだ。免震もアウトフレームも珍しくはないが、同社は「我が国初」として「ダイナミックパノラマウィンドウ+アウトフレーム工法」を紹介した。専有面積は最大でも72㎡しかなく、中心は70㎡だが、「アウトフレームとワイドスパン(約12m)を採用することで廊下面積を少なくし、専有面積(壁心)に含まれる壁の面積を少なくすることで実質的に75~80㎡ぐらいのマンションと同じ居住空間が確保できた」という点だ。
比較するものによって異なってくるが、これはその通りだ。間口の狭いマンションなどは廊下面積だけで畳2畳分(約3.3㎡)は違ってくる。廊下がないマンションは味気ないが、専有面積圧縮型には効果がある。大きな間取りタイプをなくしたのは、武蔵小杉のマーケットを考えてのことだろう。
これが奏功するかどうか注目だ。
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もう一つは、どうでもいいことかもしれないが、発表会に参加した記者の数だ。約40人が集まった。さいきん、大型の共同事業マンションではこれぐらいの人数が集まるが、同社1社単独マンションでこれほどたくさん記者が詰めかけたマンションは少ないはずだ。同社に聞いたら「豊洲かワールドシティクラスと同様で過去最多かもしれない」ということだった。
最近、三井不動産レジデンシャルが新川崎駅前のタワーマンションの見学会を行ったが、台風の影響もあってか記者の数は20人ぐらいだった。「武蔵小杉」と「新川崎」はかなり単価差があるが、競合するかどうか。住友不動産の物件の単価は「新川崎」とは坪30万円ぐらい高く、野村不動産の280万円を超える285万円ぐらいになると予測したがどうか。
参考までに。言うまでもないことだが、「新川崎」と今回の「武蔵小杉」の記者の数の差は物件そのものとは全然関係ない。記者も含めて質が問われる時代だ。
「リニア、圏央道は広域連携を進める絶好の機会」明星大・西浦教授
西浦教授
「何もしなければ座して死を待つばかり」と警告
明星大学教授で多摩ニュータウン学会の筆頭理事、多摩市の多摩ニュータウン再生検討会議の委員などを務める西浦定継氏が10月20日、調布市などが後援する「東京都多摩地区生涯学習インストラクターの会」で「広域で人口減少に対応する方策は? 多摩地域の広域計画を考える」と題する講演を行った。西浦教授は「広域連携」を以前から主張されており、リニアが橋本に停まることの決定をみてどのような発言をされるか興味があったので受講した。
稲城、多摩、町田、八王子、相模原の各市の多摩圏域の現在の人口は約181万人で、2050年には148万人に、2070年には111万人へ減少すると予想されている。西浦教授は「何もしなければ人口は坂道をすべり落ちるように減る。言葉は悪いが、座して死を待つしかない」としながらも、「多摩圏域のポテンシャルは極めて高い。努力すればオセロゲームのように一挙に黒から白に好転する可能性も秘めている」と、各市が行政の枠を超えて連携する必要性を訴えた。
具体的には将来にわたりリスクを軽減する都市の構築へ向けての戦略が必要とし、公共施設をシェアすべきという。空き家・空き地対策も重要で、限界集落などは移住を促す方策もやむを得ないとした。
その一方で、リニアの橋本停車、圏央道の開通は大きな可能性を秘めると強調。「リニアが開業すれば品川から橋本まで10分。橋本は名古屋、関西方面への玄関口となる。企業や研究所の誘致も可能になる。圏央道の開業によって中央道ともつながることになり、さらに多摩モノレールの八王子や町田への延伸、横田基地の利用なども考えると、地域ブランドを確立する絶好の機会」と語った。
西浦教授はまた、米国のデトロイト、クリーブランド、ピッツバーグなどのかつての工業都市が衰退する一方で、成長し続けているポートランドとその周辺都市の大都市圏について紹介。
ポートランドの大都市圏には3つの郡と25の都市があり、人口は約130万人。各郡や各都市にそれぞれ首長はいるが、それとは別に直接民主制で選ばれる地域政府の存在が大きく、クラスター状のコンパクトシティが形成されているという。自転車専用レーンを設けた公共交通システム、森林保全などでも成果を上げていると、西浦教授は話した。
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わが国でも住民投票で自治体の首長や議員を罷免できる制度がある。また、原発施設、ごみ処理場などの嫌悪施設の建設是非を問う住民投票が行なわれるが、これらは首長や議会に対して圧力をかけることは出来ても法的決定権を持っていいないのが現状ではないか。
ポートランドのように住民投票によって大都市圏の憲法とも言うべき「住民憲章」が設けられているのは驚きだ。
わが国ではあり得ない制度だろうが、土地所有者の声が街づくりに反映できるようにしたり、投票権者に在勤者や外国人居住者にも門戸を広げ、さらに20歳以上という年齢制限も引き下げたりして、住民の声が行政に届くようにすべきだと思う。議員にしたくない候補者に対しては「拒否」権投票が出来るようにすれば、選挙の投票率は高まるはずだ。
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東京-名古屋間を40分で結ぶリニアの開業予定は2027年だから随分遠い将来のことだが、停車駅となる橋本を中心に多摩エリアの住宅開発などがどうなるか予測してみた。
橋本は、JR橋本駅すぐの相原高校に駅舎ができる。近接するイオンの商業施設はドル箱になるはずだ。マンションの単価は現在、駅近で180万円ぐらいだが、調布と同じぐらいの300万円くらいになるかもしれない。周辺エリアの地価が高騰するのは間違いない。京王や小田急が津久井方面への延伸を打ち出すかもしれない。相模線や八高線の輸送力増強も図られるはずだ。町田、相模大野などの小田急線沿線の住宅需要も高まるはずだ。問題は、橋本にはホテル機能がないことだ。イベントなどは品川などの都心に奪われそうだ。
八王子市もリニアや圏央道の開業によって大きな恩恵を受ける。石森孝志市長は市のホームページで「本市は経済、文化などあらゆる面において”多摩のナンバーワン”であり、多摩地域の牽引役として相応しい真の多摩のリーディングシティを目指している」「私の大きな目標の一つに『中核市への移行』があります。実現すれば東京都初となり、子育て、高齢者、環境、都市計画、景観行政など様々な分野で独自の取組みが可能となる」と、都市間競争に打ち勝つ意欲を見せている。
わが街、多摩市はどうか。どうも相模原市や八王子市の攻勢にたじたじの観がしないではない。デパートもホテルもコンサートホールもあり、丸善もブックオフもある。大学もある。絶滅危惧種の野草も咲く。ポテンシャルはどこにも負けないと思うが、マンションの分譲単価は200万円が大きな壁になっている。
立川、町田、調布、府中などに多摩市は全然勝てない。日野市も豊田駅前で再開発が行なわれている。都市間競争に敗れる前に各市に連携を働きかけ、キャスティングボードを握って欲しいと思う。「多摩ニュータウン学会」も装いを新たにし、「多摩メガロポリス推進協議会」とでもしたらどうだろう。
国交省「省CO2先導事業」に採択 ポラス「大宮ヴィジョンシティ みはしの杜」
「大宮ヴィジョンシティみはしの杜」
調整区域であるために実現した全戸150㎡以上の敷地
ポラスグループのボラスタウン開発と中央住宅が11月8日から分譲を開始する分譲戸建て「大宮ヴィジョンシティみはしの杜」を見学した。国交省の「平成25年度第1回住宅・建築物省CO2先導事業」に採択された物件で、全戸が敷地面積150㎡以上のレベルの高い住宅だ。
物件は、JR大宮駅からバス10分徒歩3分、さいたま市大宮区三橋に位置する全125区画の団地。土地面積は150.24~175.50㎡、建物面積は111.23~117.79㎡、価格は未定だが3,000万円台の後半から5,000万円ぐらいになる模様。建物は木造軸組工法2階建て。第1期は24戸で、来年5月にかけて順次販売する予定。現在、200組以上の事前反響がある。
全体で4件採択された先導事業の中で同社のプロジェクトは、CO2削減の取り組みは当然ながら、ライフスタイルに応える幅広い選択肢を提案した街づくり、1区画150㎡以上という区画割、エネルギーの「見える化」を一歩進めて顧客の自発的な活動によりコミュニケーションツールとして機能するよう提案しているのが評価された。流体解析により近くの川や公園の冷気を取り込むパッシブランドデザイン、環境やエコに関する体験学習プログラムも用意されている。
同社オリジナルの「ヴィジョンHEMS」を開発し、単なるエネルギーの「見える化」だけでなく、クラウド型としているために定期メンテナンス案内、植栽管理サポート、イベントの発信など居住者間のコミュニティ形成に役立つよう仕掛けられているのが特徴。18区画のゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)を設置するほか、全戸に家庭菜園スペース「ポタジェ」も設けられる。
モデルハウスは「可変の家」「素足の家」「フレンチハウス」の3タイプで、それぞれが125戸に計画的に配置される。
購入者がSo-netの〝世界最速〟下り最大2Gbpsの超高速通信「NURO(ニューロ)光」を契約すると、「ヴィジョンHEMS」へアクセスが便利なタブレット端末がプレゼントされる。
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同社の分譲戸建てはたくさん見学しているので詳細は省くが、一言でいえばかゆいところに手が届く気配りがなされている。1階の天井高2700ミリ、階段ステップ16段、電動シャッター、暖房機能付き洗面室、脱衣棚、食洗機などが標準装備。オープン外構のランドデザインもいい。この価格帯からして極めてレベルが高い。
モデルハウスは「フレンチハウス」のデザインがいい。女性が企画したもので、アーチ型の下がり壁を採用し、さりげなくニッチを設けたり、アンティーク家具をアクセントに置いたりした見せ方が巧みだ。「可変の家」はステンレスカウンターのシステムキッチンが素晴らしい。「素足の家」はやや懲りすぎ。杉板壁は凹凸などつけないで、自然のままがいいと思う。
左から「フレンチハウス」「可変の家」
「素足の家」
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同社の団地の敷地は、登記簿上の地目は「宅地」で、用途地域は「市街化調整区域」だ。この一角だけが調整区域で、周囲はマンションや戸建てが建つ市街化区域だ。
調整区域は原則として住宅は不可の地域のことだ。どうして、同社の分譲戸建てが建築可能になったのか。長くなってしまうが、「調整区域の開発」について勉強する意味もあるので少し紹介する。
今回の開発が許可されたのは、都市計画法34条14号の規定によるものだ。同項には「都道府県知事が開発審査会の議を経て、開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがなく、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認める開発行為」となっている。また、同法11号には、「市街化区域に隣接し、又は近接し、かつ、自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域であっておおむね五十以上の建築物(市街化区域内に存するものを含む。)が連たんしている地域のうち…」とある。これは2001年に廃止された同法43条の「既存宅地」制度に似た条項で、「都道府県の条例で定めるもの」となっている。
ところが、さいたま市にはそのエリアを指定する条例がないために、条例が必要でない14号を適用した。長期にわたって宅地として利用されてきたのが開発許可となった大きな理由の一つで、1区画当たり最低面積が150㎡以上となっているのも市の調整区域での宅地開発基準に基づくものだ。
かつて埼玉県では同法34条1号を利用した花屋、八百屋、雑貨屋などの「店舗」が年間で数百戸も〝分譲〟されたことがあるが、最近は規制が厳しくなりそのような店舗は激減している。例外的に「コンビニ」の建設が許可されるケースは増えているようだ。
調整区域開発の参考になるプロジェクトだ。
参考までにある県の「34条1号店舗」として許可されるものを紹介する。織物・衣服・身の回り品小売業、飲食料品小売業、書籍・文具などの小売業、一般飲食店(料亭を除く)、洗濯・理容・美容・浴場業(あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師の施術所)など。風俗営業は不可。管理上必要なものは休憩室、湯沸室、更衣室、シャワー室、便所などで、その規模は20平方メートル以下-となっている。店舗併用住宅は、既存住宅を改造する場合は許可される場合もある。
オープン外構 洗面室の脱衣棚とタオル掛け