2020年東京オリンピック スポンサーによる収入見込みは9億米ドル 竹田理事長
東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会は9月4日(現地時間)、アルゼンチン・ブエノスアイレスで行なった記者会見の概要をまとめ発表した。
竹田恆和招致委員会理事長は、「東京での開催は、若者にとって新しい刺激をもたらすとともに、革新的なマーケティングモデルも示される。スポンサーシップによる収入見込みは9億3200米ドルで、これは日本企業がいかにオリンピック・パラリンピックを支援したいと思っているかの表れとなる」などと語った。
また、張富士夫氏(日本体育協会会長/トヨタ自動車名誉会長)は、「東京での開催が実現すれば、ビジネスという側面だけではなく、日本、アジア、そして世界にスポーツの価値を広めることに貢献できるという点からも、多くの日本企業が国内スポンサーに集まると確信している」と話した。
地揚げから30年 坪330万円のマンションに再生「Tomihisa Cross」
野村不動産のすごさを見た 「第九」に「1000のイゴコチ」
野村不動産(事業比率41%)、三井不動産レジデンシャル(同35%)、積水ハウス(同14%)、阪急不動産(同10%)の4社JV再開発マンション「Tomihisa Cross」の記者発表会が9月5日、現地の近くで行なわれた。敷地面積は約2.5ha、山手線内の最高層となる55階建てタワーマンション(1,093戸、非分譲住戸含む)をはじめ、賃貸住宅、ペントハウス住宅を含めると全1,230戸の規模で、大型スーパー、認定子ども園、区の防災倉庫なども備えた大規模複合物件となる。
物件は、東京メトロ丸ノ内線新宿御苑駅から徒歩5分、新宿区富久町に位置する全1,093戸。専有面積は36.22~120.65㎡、価格は未定だが、最多価格帯は6,800万円台、坪単価は330万円前後になる模様。設計・監理は久米設計、施工は戸田建設・五洋建設。
現地は、昭和60年代の前半に激しい地上げが行なわれたエリアの一角で、1990年に地元住民らが「まちづくり研究会」を立ち上げ、早大の支援などを受けながら計画を進めてきた。2008年に野村不動産を中心に4社が参加組合員として事業に参画した。「産・官・学・民」が街づくりを配信するプロジェクトでもある。
商品企画に当たっては、〝世界一のイゴコチ〟を目指し、2013年から「Tokyoイゴコチ論争」を開始し、WEBやアンケート、座談会を通じ約10万件もの声を集め、その寄せられたアイデアを1000個の「イゴゴチ」にまとめて公表している。
建物は地震の揺れを低減させる制震柱と、強風による揺れを軽減する粘性ダンパー・プレースを組み合わせた「デュアル制震構造」となっている。
住戸プランは22階以上が無償のプランセレクトと有償のオーダーチョイスを、27階以上は間取りの一部を自由に変更できる有償のゾーンオーダーを、43階以上は水回り以外の部分の位置が変更できるオーダーメイドが、46階以上は隣接する2つの住戸を一つに合わせられる2戸連結が、49階以上は水回りを含めた部分を含めたプレミアムオーダーメイドが受けられるのが特徴。
春から物件告知を開始し、これまで問い合わせは1万件を突破し、来場者は約3,500件に達している。第1期分譲は9月中旬で、500戸近い戸数を供給するという。オーダーメイドの要望は約150件あり、今後も増加するようだ。億ションは23戸だが、一挙に販売する模様だ。2戸連結についても20件ぐらい検討している人がいるという。地権者のほとんどは65歳以上のようだが、数は未公表だった。
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記者にとっても感慨深いマンションだ。記者はバブル発生前から10年間ぐらい新宿御苑で勤務しており、周辺の飲み屋はほとんど網羅した。現地のある靖国通りの北側のほうは道も狭く、雑多な街だったのでほとんど行かなかったが、それでも地上げ(地上げの関係者は、その土地の権利を引き剥がすという意味で『地揚げ』という言葉を使っていた)については富久町から新宿ゴールデン街、西新宿を取材して歩いた。
地揚げ前は坪200万円もしなかった土地がバブルの絶頂期には坪2,000万円に暴騰し、道路付けに必要な要の土地は坪1億円で売買されていた。国土法の規制区域や監視区域制度を守る地揚げ屋などほとんどいなかった。無法地帯と言ってもよかった(最上恒産が告発されたのはずっと先だ)。
そんな虫食いとなった土地が30年経過して立派なマンションになる。隣接地では10年ぐらい前、同じ再開発マンションを近鉄不動産が分譲したが坪単価は260万円ぐらいだったはずだ。
なぜこれほどまで再開発に時間がかかったのか。関係者が地権者の数を公表しなかったことに、欲と傷の深さが凝縮されているように思った。余談だが、藤圭子さんが地揚げの舞台となったマンションで自殺されたが、記者は地揚げに翻弄された新宿の飲み屋を歌った曲が一番好きだった。
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驚いたことがある。シアターで「第九」の第4楽章がBGMとして流れたのだ。長い記者生活の中で「威風堂々」は何回か経験したことがあるが、第九が流れたシアターなど寡聞にして記憶がない。
幸運にして、この第九を採用することを提案したスタッフの一人、野村不動産住宅事業本部営業企画部営業企画課の佐々木まどかさん(さん付けがぴったりの若い方)に話を聞くことができた。佐々木さんは「私はここで生まれて育ちました。日本一のイゴコチのいいマンションにふさわしい、自信が持てるマンションにぴったりだと思って第九を選びました」と話した。
この言葉に同社のすごさを感じた。あの雑多な街をよくぞ「日本一イゴコチのいい街」としてアピールし、第九をイメージ戦略として採用したものだ。一挙に500戸近くを供給することなど信じられない。「1000のイゴコチ」を詳細に紹介したリーフレットは新聞紙の大きさで全8ページ、コート紙が使用されているので重さは138グラムあった。同社の「桜上水」もこれまた坪330万円ぐらいになるのではないか。
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比較にはならないが、見学会の帰り、御苑の駅前で一建設の「プレシス新宿御苑」(32戸)のモデルルームも見学した。新宿駅から徒歩4分、または新宿三丁目駅から徒歩2分で、坪単価は350万円。4月末から分譲開始されており、残りは1戸。購入者は単身者やDINKSだそうだ。
モデルルーム
東京建物他「BrilliaTower 池袋」わずか7週間で全322戸が完売
池袋駅圏では記録的な売れ行き
「BrilliaTower 池袋」完成予想図
東京建物と首都圏不燃建築公社は9月3日、豊島区本庁舎との一体超高層マンション「BrilliaTower 池袋」(全432戸、分譲戸数322戸)を9 月2 日に全戸契約完売したと発表した。4月にモデルルームをオープンして以来3 千組超の来場者を集め、最高18 倍、平均2.7 倍の競争倍率となり、7 月13 日の第1期分譲から約7 週間で全戸完売となった。
契約者の年齢は、40歳代~50歳代が全体の約50%を占め、家族数は2人が約40%、3人が約25%。職業は会社員が約30%、医師が約17%、会社役員が約15%。
物件の専有面積は31.25~161.26㎡、価格は3,398万~2億998万円(最多価格帯7,800万円台)。
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人気にはなると思っていたが、わずか7週間で完売するとは驚きだ。これまで池袋駅圏でタワーマンションはかなり分譲されているが、300戸超がこれほど速く完売したのは過去に例がない。
単価は記者発表されたとき坪330万円前後とはじいた。物件の質としては最高レベルだが、やはり池袋駅圏で立地、アクセスなどを考えるとこの単価が上限で、近隣物件も苦戦していることからはじき出した単価だった。坪320万円なら即日完売するとみていた。
しかし、実際はもっと高く最終的には340万円ぐらいになったのではないか。億ションはそれほど多くないはずだが、それでもこれほど速く完売したのは初めてだ。
やはり区庁舎との一体開発で、東池袋駅直結、長期優良住宅、耐震性能などに加え、隈研吾氏がデザインを監修したというのも人気を呼んだ要因だろう。大胆な壁面緑化やせせらぎを建物の外周にめぐらすなど、民間のマンションでは考えられないような贅沢な造りが評価されたのだろう。「区庁舎一体」「隈研吾」ブランドが信じられないような人気を呼んだということか。記者発表のとき、隈氏のデザイン監修は「坪当たり10~15万円の価値」があると書いたが、大変失礼なことを書いた。この人気ぶりからすればもっと高い。
明日は「富久町」の記者発表会があるし、来週には「桜上水」の発表会もある。強気な価格設定になるのは間違いない。
「サステナブル・コミュニティ研究会」セミナーに200人
実証実験の知見を社会に還元し、人材育成、SC検定などにも取り組む
「サステナブル・コミュニティ研究会」セミナー(秋葉原コンベンションセンター)
挨拶するアドバイザリーボードの浅見泰司・東大大学院教授
三井不動産レジデンシャル、三井不動産住宅サービス、外部団体、有識者からなるアドバイザリーボードで構成される「サステナブル・コミュニティ研究会」は9月3日、「コミュニティ力が創る新しい暮らし~集合住宅から暮らしが変わる~」をテーマにセミナーを行ない、これまでの実証実験の報告と今後の活動について報告した。約200人が参加し、関心の高さをうかがわせた。
同研究会は、東日本大震災後の集合住宅のあり方として、住民同士の共助や地域住民との連携による持続可能な地域づくりが重要として2011年7月に発足。サステナブル。コミュニティ(SC)指標を作成し、新築マンションや既存マンションを対象に実証実験を行なってきた。
SC施策はコミュニケーションの深化に効果があると報告された一方で、必ずしもコミュニティに対する関心・意識が高くないことから「懇親会」+「防災訓練」など住民の関心の高いテーマにイベントを工夫する必要があるとした。また、居住者の自主的な活動を支えるコーディネータの育成や、キーマンが承認・応援されるような環境づくりも重要であることなどが報告された。
今後は居住者内部で得られた知見を地域に還元することも必要とし、管理組合向け人材育成セミナーやSC検定などを行なっていくとした。
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驚いたのは参加者の多さだった。会場となった秋葉原コンベンションホールは満席となった。集まるのは三井不動産の関係者や報道陣ぐらいではないかという予想は外れた。
驚いたのは参加者の数だけではなく、その属性にも驚いた。勤務先が不動産業というのは8.9%で、建設業、コンピュータ・情報通信、製造業、サービス業の4業種がそれぞれ14.6~10.4%と不動産業を上回った。官公庁も4.6%あった。商社マンやコンサルタント、弁護士などの参加もあった。企業規模は1万人以上が13.9&を占め、1,000人以上が約34%に達した。職種でも経営者・管理職、専門職が60%近くにのぼった。役職では会長・社長が11.1%もあった。
マンションのコミュニティ形成についてはここ数年関心が高まっており、同研究会のほかにも国交省の「マンション管理の新たなルールづくり検討会」、マンション管理業協会の「マンション長寿命化協議会」などでも活発な論議が行なわれてきた。今回の参加者の多さは主催者サイドの動員力もあるのだろうが、官民の取り組みの成果であり、われわれが考えている以上にマンションのコミュニティ形成に大きな関心が寄せられている証左だ。
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興味深い報告もあった。三井不動産レジデンシャル市場開発部 商品企画グループ兼総務部環境推進室主管・川路武氏が先進的な事例として紹介したもので、「柏の葉キャンパスシティ」のマンションでは、こどもが生まれたときやサークル・ボランティア活動、上下階の交流会などへ町会からコミュニティ支援として祝い金や助成金が支給されるというものだ。これはこれからの地域連携を考える意味で参考になる。
また、基調講演を行なった英国王立芸術大学院のへレン・ハムリン・センター・フォー・デザイン シニアリサーチフェロー ジュリア・カセム氏は「イギリスにはマンションは少なく、人生をケアするシステム、選択肢が協会やチャリティなどを通じて行なわれている」と話した。わが国には大きな影響力のある協会などは存在しないが、かつては冠婚葬祭や町内会がその役割を果した。昔のままというわけにはいかないだろうが、現代に即した新しいデザインを考える必要がありそうだ。
左からパネルディスカッションのモデレータを務めた日経エコロジー編集長・谷口徹也氏、パネリストの明海大教授・齊藤広子氏、三井不動産住宅サービス マンション管理本部業務推進部 業務推進課課長代理・木村貴一氏
ひだりから川路氏、ジュリア・カセム氏
三井不動産 「三井のすまいモール」3号店
武蔵小杉に来年4月オープン
「三井のすまいのモール」武蔵小杉店 位置図
三井不動産9月2日、同社の住まいのワンストップサービス店舗「三井のすまいモール」3号店の「武蔵小杉店」を来年4月中旬にオープンすると発表した。「すまいモール」は、
「新築・中古」「所有・賃貸」「建て替え・リフォーム」などあらゆる住まいに関するニーズにワンストップで応える施設で、2012 年4 月に目黒、同年11 月に横浜にオープンして以来、累計約7,000
組の来場者がある。
「武蔵小杉」店は、東急東横線・目黒線武蔵小杉駅から徒歩1分。出店会社は三井不動産レジデンシャル、三井不動産リアルティ、三井ホーム、 三井不動産リフォーム。店舗面積は約125坪。
また、「すまいモール」の開設と同時に開始したメンバーシップサービス「すまいLOOP」の利用者も増加しており、会員数は約10万人にを突破した。サービス提供店舗・施設数は約350カ所に拡大した。
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3号店の武蔵小杉店は当初から予定されており、いよいよ来年に開設することが決まった。武蔵小杉はマンション供給ラッシュが続いており、その中でも同社がもっとも供給量が多い。今後も駅周辺で2,000戸超(他社とのJV含む)を供給する。坪単価も10年前は220万円だったのが、最近の駅近では300万円近くになっている。晴海や豊洲、川崎などを凌ぐ単価水準だ。
「住んでみたい街」3位 脅威の売れ行き野村不動産「武蔵小杉」
ポラス 中央グリーン開発 「子育てママの理想の家をつくろう!」コンペ
優秀賞モデルハウス上棟式に150組・450人が参加
「パレットコート六町」で行なわれた上棟式イベント
ポラスグループの中央グリーン開発は8月31日、先に同社が行なった「子育てママの理想の家をつくろう!」コンペ大会で最優秀賞に輝いたプランのモデルハウス上棟式イベントを、現在分譲中の足立区の戸建て団地「パレットコート六町」で行なった。入居者や近隣の親子連れなど150組・約450人が集まり、餅撒きや日曜大工体験、交流会、マルシェなどを楽しんだ。
コンペ大会は、地元の「NPO子育てパレット」と共同で立ち上げたプロジェクトで、「パレットコート六町」を舞台に9人の現役ママが 4 チームに分かれ「子育てママの理想の家」づくりに挑戦、プロの設計士の手を借りながら最優秀賞を競うもの。最優秀賞には1階を「華」に見立て、おもてなしの空間とし、2階を「癒」のプライベート空間とした「Give &Take」を提案した宮下記子さんと加藤圭さんのチームが受賞。このプランを団地内に建設して、モデルハウスとして利用されたのち建売住宅として分譲される。完成は11月の予定。
「パレットコート六町」
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別の用件があったので、駆けつけたときには上棟式は終わっていた。上棟式といえば、記者が小さい頃などは「餅撒き」が楽しみだった。上棟した建物の上に大工さんや施主が上り、紅白のもちや〝ご縁がありますように〟という意を込めて5円玉などの小銭(われわれの時代には1円玉もあった。つまり1円がキャラメル代になったので流通していた。10円玉もまれにあった)が撒かれた。拾うのは主に子どもだが、集落の大人もみんな集まった。
このほか、葬式でも運動会の玉入れの籠のようなものから小銭が撒かれ、子どもたちが拾い集めた。結婚式では石ころや材木を道路上に置き、お嫁さんが通れないように「垣」をしたものだ。垣を先導役が取り除くのだが、艱難辛苦を乗り越えて嫁いでいくようような願いが込められていたのだろう。このように冠婚葬祭は村のコミュニティを支えていた。こどもはこのような行事を通じて社会を理解していった。例えば葬式の小銭撒きでも、世帯主などの大黒柱が亡くなった場合は撒かれなかったから、子どもでもその家の死者の位置を知ることができた。小銭の額でお金持ちか貧乏かを判断したものだ。経済を学び、不平等社会を学んだ。
いまはこのような行事はほとんど行なわれなくなっただろう。ポラスでも上棟式で餅や小銭を撒くケースは皆無ではないが非常に少ないという。
コンペ大会の責任者、ポラスグループの中央グリーン開発取締役事業部長・戒能隆洋氏は「これまで分譲した158棟のうち127棟が入居済み・契約済み。街並みが整ってきたことで成約スピードもあがってきた。8月は11戸が成約できた。このようなイベントを行なうことで地域コミュニティが形成されることが嬉しい。商品開発にも生かしていきたい」と話した。
地元のフラダンスのサークルも参加 日曜大工の体験コーナー
マンションの売れ行き バブリーな様相
7月の住宅着工 前年同月比二ケタ、11カ月連続増加
国土交通省は8月30日、平成25年7月の新設住宅着工戸数をまとめ発表。総戸数は前年同月比12.0%増、11カ月連続増加の84,459戸となった。内訳は持家が31,475戸(前年同月比11.1%増、11カ月連続増)、貸家が31,012戸(同19.4%増、5カ月連続増)、分譲住宅が21,361戸(同4.3%増、3か月連続増)。分譲住宅の内訳はマンションが9,977戸(同0.6%増、3か月連続増)、一戸建住宅が11,305戸(同8.4%増、11か月連続増)。
首都圏マンションは、東京都が2,762戸(前年同月比37.3%減)、神奈川県が602戸(同63.5%減)、埼玉県が627戸(同283.9%)、千葉県が526戸(同54.7%増)。
今回の結果について国交省は「リーマンショックを受けた大幅な下落(平成21 年度)以降、緩やかな持ち直しの傾向が続いてきたが、このところ、消費マインドの改善等もあり、堅調に推移している」としている。
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マンションの着工戸数は過去最高だった平成2年度は約24.8万戸(首都圏は約8.9万戸)で、バブル崩壊後の最高記録は平成17年度の約23.1万戸(首都圏は約12.5万戸)だ。最近の首都圏マンションは平成23年度が約69,000戸、24年度が約72,000戸で、今年度も前年度並みになると予想される。過去最高だった平成17年度にもバブル期の水準にも届かないので、決して多いわけではない。消費増税の駆け込み需要を見越した着工であり、市場の回復を反映した数字だ。
バブル期は首都圏近郊の各県でリゾートマンションが約1万戸ぐらい着工されていたし、価格が桁違いだったことを別にして戸数そのものに限ってみれば、単身者・DINKS需要が劇的に増加している現在の市場構造からすれば、やや東京都に集中しすぎている傾向はあるが、最近の着工戸数を吸収する力は市場には十分あると見る。
戸数はともかく、もう一つ注視しなければならないのは売れ行きと価格上昇だ。民間の調査機関の調べによると、マンションの売れ行きを計る月間契約率(その月内に分譲されたマンションが月末までに何%売れたかを示すデータ)は80%を越えている。デベロッパーは「売れ残り」の印象をさけるため全体の供給戸数を数回に分けて供給する(期分け)するのが一般的になっているので、高い水準をマークするのは当然だが、それにしてもこのところの売れ行きはバブリーな様相を呈している。月間契約率が80%台というのはバブル期なみの数値だ。坪単価が300万円前後の都心部や準都心部のタワーマンションが数百戸単位で飛ぶように売れている。郊外部の一次取得層向けの物件も総じて好調だ。流れに乗り遅れまいとする消費性向が見て取れる。これは異常だ。
好調な市場を背景に、この秋分譲のマンションが軒並み価格アップするのも懸念材料だ。1年前の相場と比べ少なくとも1割、立地条件の恵まれたものは2割は上昇すると見ている。消費増税の対応策としてローン減税や現金給付も予定されているが、建築費上昇・価格アップで対応策は吹っ飛ぶ。記者は都心・準都心部で坪単価250万円、郊外で坪単価200万円が一般的なサラリーマンの取得限界とみているが、いまは限界点に近づいている。
消費増税がどうなるか分からないが、2020年の東京オリンピック招致が決まれば9分9厘実施が決定されるのではないか。消費を促す、サラリーマンの住宅取得能力を引き上げる具体策を打ち出して欲しい。そうでないと、所得格差の拡大が広がりマンション市場もいびつな市場になる。都心部も郊外部も、大手も中小もバランスよく売れるのが健全な市場だ。
ランドプラン評価され「高度許可」を取得 東急電鉄他「ドレッセ二子新地」
坪単価は隣接のモリモト「二多摩川」より1万円安い坪240万円
「ドレッセ二子新地」
東急電鉄(事業比率66%)、三井不動産レジデンシャル(同33%)、長谷工コーポレーション(同1%)が9月中旬に分譲予定の「ドレッセ二子新地」を見学した。敷地面積約16,000㎡の工場跡地に建設中の全434戸の大規模物件で、坪単価は240万円。多摩川を挟んだ二子玉川駅圏では坪単価は300万円をはるかに突破しており、その比較からして割安感があり、若いDINKS・ファミリーを中心に人気を呼びそうだ。
物件は、東急田園都市線二子新地駅から徒歩6分(二子玉川駅から徒歩14分)、川崎市高津区二子1丁目に位置する15階建て全434戸。今回分譲(戸数未定)の専有面積は58.17~93.91㎡、予定価格は3,800万円台~7,600万円台(最多価格帯4,700万円台)、坪単価は240万円。竣工予定は平成26年12月下旬。施工は長谷工コーポレーション。販売代理は東急リバブル、三井不動産レジデンシャル、東急ライフィア。
現地はサンジェルマンのパン工場跡地。敷地面積約16,000㎡の広大な敷地を生かしたランドスケープデザインが最大の特徴だ。敷地全周にわたり敷地境界線から10m以内に建物を建てない、通常より厳しい日影規制をかける、25%を越える緑化率を確保する、敷地にいに認可保育所を設置するなど地域へ貢献する計画が市の「高度許可」が認められたため、建物の高さ制限20mが45mに緩和されている。「高度許可」を得たのは2008年の条例改正以降3件目。
敷地内には14,000本を越える樹木を配し、生物多様性にも配慮して樹種を選び、ハンモック、スウィングベンチ、井戸ポンプなど子どもの遊び場も設置している。
建物は南向きを中心に3棟構成で、サンジェルマンのパン生地の提供を受けた「ベーカリーカフェ」、木づかい運動に参加する「ブックラウンジ」なども設ける。住戸プランは3戸1、4戸1エレベータを採用した両面バルコニータイプも用意。モデルルームは東急電鉄が「青葉台」の万で試験的に採用して好評だった「つながリビング」を採用している。床は直床だが、その代わり天井高は2600ミリを確保している。
第1期では200戸ぐらいの供給を予定しているようで、人気を呼びそうだ。
中庭
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このマンションは必ず見学しようと思っていた。モリモトが昨年、隣接地でマンションを分譲しており、そのときすでに東急電鉄がマンションを分譲する旨の看板がかかっており、敷地の外周部にはケヤキなどの巨木が敷地の外周部に植わっていた。既存樹を生かせば素晴らしいマンションになると期待していた。
その巨木は残念ながらマンション建設のために伐採されたようだが、空地率を70%確保して新たな植栽計画により緑化を図っているのが評価できる。
来場者の50%以上は35歳以下のDINKS・ファミリーというのも納得できる。歩く人は少ないようだが、隣駅の二子玉川まで歩こうと思えば歩けるのも魅力だろう。何しろ、現在分譲中の東急不動産「ブランズ二子玉川」が坪360万円であるように、二子玉川駅圏は駅近なら坪単価は350万円を突破する。玉川高島屋など商業施設が集積した急行停車駅と各駅停車駅、世田谷区と川崎市の違いとはいえ、坪で100万円の差は大きい。二子新地は若い女性に人気があるそうだが、実利を重視するのは賢明な選択だと思う。
単価設定はやや強気のような気がするが、今秋分譲は軒並み価格アップしているので納得だ。モリモトは241万円だったが瞬く間に売れた。それより規模が大きく、共用施設が充実しているのだからこの設定になったのだろう。
モデルルーム リビング
大京 戸建てブランド「アリオンテラス」に期待
「アリオンテラス妙蓮寺」はひな壇造成の全9戸
「アリオンテラス妙蓮寺」
大京の戸建てブランド「アリオンテラス」第4弾の「アリオンテラス妙蓮寺」を見学した。妙蓮寺駅から10m以上はあると思われる坂を上り下りしなければならない難点はあるが、現地は南傾斜のひな壇形状で価格もリーズナブルなものになりそうだ。
物件は、東急東横線妙蓮寺駅から徒歩 9分、横浜市区松見町三丁目に位置する全9区画。土地面積は100.10~185.94㎡、建物面積は95.22~104.12㎡、価格は未定。建物は2×4工法2階建て、施工は東急ホームズ、8月に竣工済み。
現地は、妙蓮寺駅から高低差で10m以上はあると思われる坂の頂上の鎌倉街道まで数分歩き、さらに同じぐらいの坂を下ったひな壇造成地。高低差は約6m。一番低いところの建物でも道路面より約2mの擁壁の上に建てられている。
敷地面積を平均約38坪確保し、「アリオンテラス」シリーズでは初の街区を見守る防犯カメラを設置しているのが特徴。大京オリジナルの設備も標準採用している。
◇ ◆ ◇
「アリオンテラス」は2011年に第一弾「横濱山手」(7戸、施工イトーピアホーム)に分譲されて以来、昨年分譲の「蘆花公園」(8戸、施工イトーピアホーム)、「西新井」(3戸、施工ポラス)に次いで今回が4物件目。記者が見学するのは「蘆花公園」に次いで2件目だ。
もちろん、見学の目的は、マンションで実績豊富な同社がどのような都市型戸建てで競争が激化している市場に挑もうとしているのかを知るためだ。
結論から言えば、駅からの坂が相当きつい難点を除けば、価格は6,000万円ぐらいに収まりそうなので、追い風の市場もあるので完売までそれほど時間はかからないとみた。
一つ二つ、注文をつけるとすれば、〝大京の戸建て〟をもっとアピールすべきだと思う。設備・機器に関してはマンションに採用している「ライオンズ リビング ラボ」は十分差別化ができていると思うが、外観デザインや植栽計画、間取りプランはまだまだ不十分だ。〝これは素敵〟というものを盛り込まないと勝てないと思う。
今回の物件でも、ひな壇造成はいいが、擁壁の壁面が勝りがちだ。植栽計画によって和らげることもできたのではないか。間取り・プランでは、玄関・ホールが狭く、LDとは幅60cm、高さ1.8mの引き戸によって隔てられているのだが、玄関-ホール-リビングと一体的な空間として演出すべきではないかと思った。壁一杯に親子ドアにでもすれば〝これは素敵〟になるはずだ。
まだ4物件目の段階で厳しいことを言うようだが、一つひとつが勝負だ。現段階ではブランド力はないに等しい。他のデベロッパーの2倍、3倍の努力をしないと勝ち残れない。近く同社は「三鷹」で近鉄不動産と共同で分譲するという。楽しみにしたい。
リビング
3社共同で家具転倒防止商品を開発
三菱地所レジデンス、野村不動産、東京建物「スーパータック フィットMTN」
「スーパータック フィットMNT」
三菱地所レジデンス、野村不動産、東京建物の3社は8月28日、共同でマンションの家具転倒防止器具「スーパータック フィットMNT」を開発したと発表した。北川工業の協力のもとで約100回の加振実験を行い、その知見を基に商品開発を行うことにしたもので、マンションデベロッパーが共同して新たな商品開発の研究・監修をするという取組みは業界初。
実験に用いた家具転倒防止器具のサンプルには、家具頂部で家具側の固定パーツに「粘着ゲル」、壁側の固定パーツに「粘着ゲルまたはビス」を採用。固定パーツを「耐震バンドまたはプラスチック製アーム」で連結し、家具の足元の手前側には「滑り止め器具」を取り付けた。
実験の結果、震度7相当の地震でも家具転倒の危険性を低減させるためのデータを集めたという。
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マンションの家具転倒防止については、三井不動産レジデンシャルが一昨年の12月、新たな防災基準を設け、家具転倒防止対策も発表した。住戸内壁面に家具転倒防止下地を設置するほか、大型テレビなどにも対応できるよう上下二段の転倒防止下地を設置し、戸境壁についても上下二段に転倒防止下地を設置するというものだった。
記者は、三井不動産レジデンシャルが「画期的」な家具転倒防止策を打ち出したことで、他社も対応を迫られると思ったが、それが今回の開発につながったのだろうと考える。
「粘着ゲル」は壁クロスやコンクリート壁に取り付けるのだろうが、はがれないのか心配だが、三菱地所の広報は「下塗りのシーラーに工夫が凝らされているので大丈夫」とし、「それほど強力なゲルなら間違って手にくっついた場合、はがれなくなるのでは」との問いに対しては「私も試してみたがはがれる。事故につながることはない」と太鼓判を押した。
三菱地所レジデンスは来年1月以降に引き渡す物件で1住戸につき1セットと「水性シリコン下塗りシーラー」を無償配布する。東京建物は「詳細は決まっていないが、年内には採用したい」としている。野村不動産も「近いうちに採用していく」と話している。