「住宅取得の夢の実現へ」知恵を絞る 不動産流通経営協会(FRK)・榊理事長
不動産流通経営協会 懇親会(ホテルオークラで)
榊氏
不動産流通経営協会(FRK)は5月31日、定時総会後の懇親会を開いた。
冒頭、同協会・榊真二理事長(東急リバブル社長)は、「平成30年度の税制改正に際しましては、住宅土地税制などの期限延長のほか、当協会が長年要望してまいりました、宅建業者による買取再販事業に際しての不動産取引税の減額措置の敷地への適用などを実現していただきました。
この制度改正は、売買価格に占める割合が高い既存住宅の取引の活性化に大きく寄与するものと期待している」と税制改正を評価し、昨今の不動産流通市場については「平成29年度の首都圏におけるレインズデータを見ますと、成約件数は約6万9千件と、前年度比2%減少の水準に留まったものの、平均成約件数はマンション、戸建て、土地ともに前年度を上回っております。
一言で言えば、取引件数が高い水準を維持している中で、価格も堅調に推移している状況と申せましょう。本年4月以降の市況についても、昨年度に続き税制改正や低金利政策の下支えなどにより、概ね順調に推移していくものと考えております。
本年度の4月には、改正宅建業法が全面施行され、建物状況調査がスタートしたところでありますが、この新たな仕組みは、既存住宅に対する消費者の信頼を高め、流通市場を活性化するうえで、大きな効果が期待されるところでございます。
当協会も、その担い手である宅建業者が混乱して消費者に不便をかけることのないよう、現場の意見を吸い上げるとともに、行政、業界関係者としっかり情報共有しながら、定着を図ってまいりたいと考えております」と述べた。
また、不動産流通市場の活性化、円滑化を進めるための重要な活動として、「政策提言」と「調査研究」に取り組んでいるとし、「当協会におきましても、昨年度、米国において不動産テックビジネスがどのように成長し、それらが不動産取引上で、どのような使われ方をしているのか、つぶさに見聞してまいりました。
一方、近年、不動産流通市場を取り巻く社会・経済環境も大きく変化し、消費者のライフスタイルや価値観などが多様化していく中で、消費者が期待するレベルも益々多様化・高度化してきております」とし、これまで実施した「住宅市場ポテンシャル調査」や「ひとり住まいの持ち家ニーズ調査」結果などを踏まえ、「『住宅取得という夢の実現』をお手伝いすることを使命とする不動産流通業といたしましても、こうした潜在的なニーズをどのように顕在化させていくか、さらには多様化するお客さまのニーズにどのようにお応えするのか、会員の皆様とともに知恵を絞ってまいります」と述べた。
最後に、「消費者にとって 不動産取引が、分かりやすく、安心し、満足していただけるものとなるよう、不動産取引の透明性をさらに高め、不動産流通の発展と内需の拡大に全力で取り組んでまいります」と締めた。
続いて、来賓として登壇した国土交通省 土地・建設産業局長・田村計氏は、「国土交通省は平成28年度から小さなインプットで大きなアウトプットが得られる生産性革命を推進しているが、今年はさらに進化、深める年にしたい」として、コンパクトシティ、人手不足対策、スポンジ化、都心部の余剰駐車場活用、ストック活用、山林取引の透明性などについて言及した。
乾杯の音頭を取った同協会副理事長・田中俊和氏(住友不動産販売社長)は、「インスペクション制度がスタートしたが、現場は混乱なく、いいスタートが切れた。既存住宅の魅力を発信し、前に進めたい」などと語った。
田村氏(左)と田中氏
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目的・理由は明かせないが、懇親会の途中、会場を抜け出しホテルにA4の文章4枚のコピーをお願いした。費用は172円。スーツのポケットをまさぐり、手のひらに糖尿の薬とともに数個の100円玉のほか50円玉、10円玉、1円玉を示し、払おうとした。ところが、1円玉は1個しかなく、171円を差し出し、「1円まけてもらえないか」と頼んだら認めてくれた。
ホテルオークラに料金を値切ってまけてもらったことがなによりも嬉しかった。記者は何が嫌かと言えば、ポケットに小銭がジャラジャラと入っていることで、何が嬉しいかと言えば、小銭が過不足なく料金として払えることだ。
ある男性は「ホスピタリティを考えたら、当たり前のこと」と話したが、記者はそうではないと思う。余分の金を払ってでもサービスの提供を受けようと考えさせるのが本物のプロだ。手数料の値引きを売りにするような宅建業者は疑ってかかるべきだ。
コピーを取ったことで、1円まけてもらったことで、どこよりも早く榊氏の挨拶をほぼ完ぺきにホームページにアップすることができた。
知の富者か情の賢者か 「姉妹ではありません。国交省の先輩後輩」アキュラ伊藤氏
住宅リフォーム・紛争処理支援センター専務理事 後藤隆之氏(左)とアキュラホーム住生活研所所長・伊藤圭子氏
5月24日(木)行われた日本木造住宅産業協会(木住協)懇親会で拾ったコメント。
◇ ◆ ◇
ある広報マンから「国交省の伊藤住宅局長とアキュラホームの伊藤さんは姉妹」と聞かされ、びっくりした軽薄短小、直情径行、軽佻浮薄の記者はアキュラホーム住生活研究所所長・伊藤圭子さんに迫った。「お二人は姉妹か」と。
そんな質問をいつもされるのか、伊藤さんは「違います。国交省の先輩後輩です」と、紛争処理の後藤氏に助けを求めた。
だれだ!そんなデマを流布したのは。それにしても同姓の京大卒で国交省の先輩後輩、美形であり、姿かたちも声も瓜二つだ。性格は少し違うようで、伊藤局長は知の富者、伊藤さんは情の賢者か。
伊藤局長
木造建築物は不遇・暗黒の50年か、進化の50年か 木住協の懇親会で考えたこと(2018/5/26)
木造建築物は不遇・暗黒の50年か、進化の50年か 木住協の懇親会で考えたこと
木住協の懇親パーティー(明治記念館で)
市川氏
日本木造住宅産業協会(木住協)は5月24日、定時総会を開き、平成30年度事業計画の重要事項として、支部未設置地域への支部設置を促進し、地域貢献の強化を目指すほか、災害時の木造応急仮設住宅の供給に向けて都道府県と協定締結を促進すること、21回目を迎える「小学生作文コンクール」のテーマを「木のあるくらし」に変更し、新たに外務省の後援を得て内外に「木」の持つ可能性の追求と普及啓発に取り組んでいくことなどを決めた。
同協会会長・市川晃氏(住友林業社長)は総会後の記者会見で、「ストック型社会の潮流に乗り遅れないように進め、住生活産業が国内経済をけん引することにつなげたい。住宅以外でも公共建築物や商業施設などの中大規建築物の『木質化』の波が起きている。2020年東京オリンピックに向けた大規模施設の建築計画も相次いでおり、『木』にとって大きなチャンスだ。『木』は唯一再生可能な資源であり、オリンピックなどの世界的イベントで日本の『木材先進性』を世界にアピールする絶好の機会」などと述べた。
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総会後の懇親会で考えさせられる発言があった。冒頭、挨拶に立った市川会長は木・木材の優位性を述べたうえで、「でも鉄やコンクリのほうが強いと言われる。こうした誤解を解く意味でも、もう一度木の文化・技術を体系的に整理し、新たな木造建築物の時代に向け努力していく」と語った。
この挨拶を受けて登壇した来賓の国土交通省・伊藤明子住宅局長は、昭和34年に日本建築学会が「木造禁止」を決議したことを紹介し、「それ以来、木造住宅は不遇な時代が続いている」と述べた。
さらに、乾杯の音頭を取った同協会副会長・平田恒一郎氏(ナイス社長)は、伊藤氏の話を引き継ぐ形で「暗黒の50年」と形容した。
伊藤氏が紹介した「木造禁止」について日本建築学会は2010年、「(伊勢湾台風の被害を受けた昭和34年の)決議は建築物の火災、風水害の防止を目的として、特に危険の著しい地域に対する建築制限のひとつとして『木造禁止』を提起したもの」「決議前後の状況と切り離されて『木造禁止』だけが一人歩きしますと、『木造禁止』の意味および本会の活動に対する誤解を招くことになります」と文書で公表している。
伊藤氏(左)と平田氏
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伊藤氏と平田氏がどうしてこの「木造禁止」に言及したのかその意図がよく分からないが、今国会に上程されている建築基準法の一部改正が成立すれば、耐火構造とすべき木造建築物の対象が見直され、耐火構造以外でも木材のあらわしが可能となることを念頭に置いたものと思われる。
木造ファンの記者は以前から建基法の耐火・防火規制が強すぎる、あらわしを可能にすべき、どうして鉄やコンクリと同じ土俵(各種の規制)で相撲を取らせるのかなどと主張してきた。「燃えてもいいのか」などと言われると黙るしかないのだが、木は日本の文化だ。全てを合理性で判断する物差し(建基法)はは改めるべきだと思う。
その意味で、建基法の改正は当然のことだと思うが、一方で「不遇の時代」「暗黒の50年」という認識には違和感を覚える。
着工戸数が漸減し、木造住宅が鉄やコンクリにどんどん侵食されてはいるが、その一方でツーバイフォーは年々戸数もシェアも伸ばしている。市川氏が社長を務める住友林業は、ヒノキ造りの住宅なら右に出るものはいないと記者は思う。積水ハウスも木造シャーウッドが健闘しており、強化することを打ち出した。平田氏は「暗黒の50年」と話したが、同社は慶大と共同で木造実験棟を建設し、CLTやハイブリット建築に力を注いでいる。同協会副会長・中内晃二郎氏が社長を務めるポラスも木質ハイブリッド構造ビルや木造建築物先導モデル「ポラス建築技術訓練校」を建設した。分譲戸建て市場では圧倒的な存在感を示している。理事・宮沢俊哉氏が社長のアキュラホームは先日、わが国で初と思われるCLTによるモデルハウスを完成させた。
このように見ると、木造住宅が「不遇の、暗黒の50年」の環境下に置かれてきたというのは事実だろうが、他方では、あるハウスメーカー広報マンが語ったように「木造進化の50年」でもある。
市川氏は「『木』にとって大きなチャンス」と力を込めた。このチャンスを生かせないのなら「不遇の時代」「暗黒の50年」は永遠に続くのではないか。木住協と会員会社の真価が問われる。
懇親会に出席していた東洋大学名誉教授・上杉啓氏(82)は、この問題について「木造が一気に使えなくなったのはその通り。プレハブメーカーが鉄やコンクリに努力してきたという一面もある。車の両輪のようにうまくかみ合うべき。そのことより、わたしは木が十分育ったのに赤字になるので伐れない、さらに、伐った後の50年、100年先を見据えたロングビジョンがないのが問題だと思う」と森林・林業の将来を憂慮した。
上杉氏
平田氏(左)は「ヒグラシ(日暮清社長)からコグレ(小暮)です」と次期すてきナイスグループ社長に就任する小暮博雄氏を紹介していた
明治記念館の素晴らしい庭園(上)とガス室のような狭い喫煙所(以前は庭園を眺めながら吸えた)
酸欠状態にはならないものの、立錐の余地もない上の喫煙所と大差ない懇親会会場
東急不動産など 沖縄の本格的リゾート ハイアット リージェンシー瀬良垣 8月開業
「ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄」
東急不動産、NTT都市開発、ミリアルリゾート ホテルズの3社は5月21日、沖縄・瀬良垣島のホテル「ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄」を8月21日(火)に開業し、宿泊予約を6月1日(金)から開始すると発表した。
同ホテルは3社が共同で設立した瀬良垣ホテルマネジメントが運営する、沖縄本島とリゾートホテルが一本の橋で繋がるユニークなロケーションが特徴のディスティネーションホテルとして開業する。
沖縄県国頭郡恩納村瀬良垣に位置する全344室。料飲施設はセラーレ(オールデイダイニング、イタリアンダイニング) スペシャリティレストラン シラカチ (炉端、鮨、鉄板焼、日本料理) ラウンジ&バーなど、その他スパ、フィットネスセンター、屋外・屋内プール、宴会場、チャペル(瀬良垣島教会)など。
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最近は宿泊特化型のホテルばかりで、久々に本物のリゾートホテルのニュース・リリースに接する。記者は三重県出身だから、もちろんピンは鳥羽国際から志摩観光、エクシブ鳥羽、タラサ志摩、志摩スペイン村からキリはビジネスホテル、かんぽの宿、民宿、真冬に暖房が故障し震え上がった旅館まで結構経験しているが、本格的なリゾートホテルはよく知らない。
東急不動産によると、ADR(平均客室単価)は4~5万円というからいいホテルに違いない。海は大好きだが、暑いのはたまらないし、泳ぐのは大浴場で十分だ。ベッドでサメのような深海魚になるのはかつて昔。
「最早、後発でない」「嫌悪施設でもない」 三井不 ロジスティクス本部長・三木氏
三木氏
「もはや、後発ではない。嫌悪施設ではない」-三井不動産は5月21日、ロジスティクス事業記者説明会を開き、常務執行役員ロジスティクス本部長・三木 孝行氏(58)が次のように約1時間40分にわたり熱く語った。
「2012年4月に事業参入して7年目を迎えたが、当初10人足らずだったスタッフは60人体制になり、稼働施設は18棟、開発中は14棟、総施設数は32棟、総延べ床面積約270万㎡、累計総投資額は約4,800億円に達した。そのうち12物件を投資法人へ分譲し、資産規模約1,000億円のポートフォリオを形成。当初は嫌悪施設を作るのかと思ったが、当社の強みである街づくりをコンセプトにし、オフィス・商業事業のノウハウを投入し、他社と競合しない相対取り引きで優良物件を仕入れてきた結果がこのような数値になった。もはや嫌悪施設ではなく、後発でもない。これからはイノベーションを起こし、切磋琢磨し、他のデベロッパー系の同業とも情報交換し、業界の発展に寄与し、さらに海外進出も視野にトライしたい」
「三井不動産ロジスティクスパーク船橋(MFLP船橋)」
「三井不動産ロジスティクスパーク茨木」
「三井不動産ロジスティクスパーク茨木」エントランス
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このロジスティクス事業に関する記者説明会に出席するのは3度目か。集まった記者の数は40~50人か。数自体はそれほど多くもないが、三木氏のパワフルでひたすら前を向く姿勢に触発されたのか、質問者は10人を突破した。予定時間は1時間と知らされていたが、発表会後の個別取材を含めると約1時間45分にわたった。
門外漢の記者は三木氏の話にただただ圧倒され、必死にメモをするのがやっとだった。ロジスティクスが何たるか分かりもしないで質問するのもためらわれ、ずっと黙っていた(質問者もたいした質問は出なかったように思うが)。
会見後、一つだけ聞いた。「三木さんのそのパワーの源は何ですか」と。三木氏は、やや間をおいて「何ですかね。三井の体質じゃないですか」と話した。
-待ってましたとばかり「わたしの知る限り、この部署には東大野球部の肥田さんと巨漢の溝口さん、(巨人を蹴った)志村さんが在籍していました。三木さんも体育会系? 」と畳み込んだが、「確かに。(体育会系は)多いですね。こっちもそう(と隣のがっしりした男性を指し示した)。わたし? わたしは、たいしたことはやっていません」と返ってきた。
その男性とは体重85キロの慶大ラグビー部出身だった。同じ部署にはサッカーやアメフト経験者など5~6人が所属しているという。三木氏は弓道(求道ではない)をやっていたそうだ。
同事業が急成長したのは、三木氏が何度も語ったように、同社のブランド力、街づくりやオフィス・商業施設のノウハウ、その人脈を最大限に生かしたからだと考えるが、人の2~3倍の体力がある(野球は馬鹿じゃできません)体育会系のスタッフをそろえたからではないかと記者は推測する。そんなに的を外していないはずだ。
少し、三木語録を紹介しておく。「この事業は立地、街なか、駅近、仕様、快適がキーワード」「これまでやってきたことは間違っていなかった。あそこ(同社の船橋Ⅰ)で働きたいという人が本当にいたんです」
「人が大事。人間が働くことで価値を見出す。機械は補助」「子育て環境、スポーツクラブ、スケート場、マシンにトライしたい」「物流に革命を起こしたいという経営者が多い、物流コストを以下に下げるかが生産性を向上させる肝」「市場規模は2020年にはコンビニを、そしてその先にはスーパーを超える」「この業界はまだまだ伸びしろがある」
「相対で取り引きした優位性を企画に反映した」「『茨木』のエントランスは『パークマンション』を手掛けたデザイナーに頼んた」「(茨木)世界に類がない従業員の働きやすい環境、施設として評価された」「従業員向けの様々な共用施設は日本初の取り組み」
「(免震構造を採用したのは)なにより人の命、大事な商品を守ること」「(羽田は)二度と手に入らない土地」「(川崎や立川立飛は)物流としてはあり得ない土地」「地域貢献のため、従業員のため、テナントのため」…。
「三井不動産インダストリアルパークス羽田」
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この日、新たに開発すると発表したのは次の4物件。
-「三井不動産ロジスティクスパーク広島Ⅰ(MFLP広島Ⅰ)」広島県広島市2019年8月竣工予定
-「三井不動産ロジスティクスパーク横浜港北(MFLP横浜港北)」神奈川県横浜市2019年10月竣工予定
-「三井不動産ロジスティクスパーク立川立飛(MFLP立川立飛)」東京都立川市2020年2月竣工予定
-「三井不動産ロジスティクスパーク船橋Ⅲ(MFLP船橋Ⅲ)」千葉県船橋市2021年秋竣工予定
10年計画で収益の柱に 「自由を愛し、自然体」郵政不・岩崎社長 空手初段も取得
岩崎氏
今年4月2日付で設立された日本郵政不動産の社長・岩崎芳史氏(日本郵政代表執行役副社長=75歳)にインタビューした。岩崎氏は、野村不動産ホールディングスの買収騒動は日本郵政として一切発表していないこと、日本郵政グループ全体の約2.7兆円の不動産のうち、比較的規模の大きな利活用が見込める物件は今後10年程で底をつくと想定していること、その間に新会社をデベロッパーとして郵政グループの収益の柱に育てること、健康には全く問題がなく、6年前に始めた空手で奥さんと一緒に初段の認定を受けたこと、酒やたばこ、ギャンブルとも無縁で、〝こよなく自由を愛し、自然体〟が人生観であることなどを語った。
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-野村不動産ホールディングスの買収騒動は、NHKが第一報を報じました。(NHK経営委員長代行を務めた)岩崎さんが仕掛け人ではありませんか
「全くそうではありません。この問題は日本郵政として一切発表していません。縁談とか破談とか話題が先行したということです」
-郵政グループ全体の2.7兆円の不動産も話題になっていますが
「2.7兆円の話は、額が独り歩きしているようです。あくまでこれはグループ全体の不動産で、他の会社と同じように事業を行うための土地と建物の合計額。内訳は土地が1.5兆円、建物が1.2兆円です。本業の郵政事業はユニバーサルサービスの提供を法律で義務づけられていますので、サービス低下を招くような土地利用はできません。その中で、比較的規模の大きな利活用が見込める物件は今後10年程で底をつくのではないかと想定しています。
郵便事業は、かつては鉄道輸送だったのがトラック輸送に代わりました。昨年、地域区分局(いわゆる物流センター)を全国のインターチェンジの近くに12カ所新しく整備しました。郵便物の区分業務や集配機能を集約することで生産性を向上させるという施策ですが、不動産目線として集約後に空いてくるスペースを有効活用しようということです。その事例の先端的なものとして『JPタワー』『JPタワー名古屋』『KITTE博多』などがあります。
また、社宅跡地を活用し、この10年間で分譲住宅、賃貸住宅も展開してきました。今後は、保育施設や高齢者施設といった、より社会的意義の高い開発を積極的に展開していこうと考えています。この1年間で保育施設と高齢者施設として10カ所弱事業化することを決めました。両方をミックスしたものも考えています」
-NTT都市開発がそのような方向を目指していますが
「NTT都市開発さんは会社設立して30年で営業利益が300億円くらいになりました。新会社は今後10年間で営業利益300億円という訳にはいきませんが、NTT都市開発さんなどの他社の事例も参考にしつつ、スピード感をもって事業展開を図っていきたいと考えています」
-将来的には企業買収に動くのではないですか
「企業買収はいい案件があればとは考えていますが、まだ会社を立ち上げたばかりで、宅建建物取引業法の免許取得も手続き中です。
この時期に新会社を立ち上げた理由を改めて申し上げておきますけども、直近の郵政グループ全体の利益構造は営業利益4,500億円のうち9割がゆうちょ銀行とかんぽ生命の金融2社です。この金融2社は郵政民営化法で全株処分する方針が示されています。ですから、経営環境として今のうちに郵政グループとして第4の柱を作っておかないといけないということと、不動産は果実が実るまでに時間を要するということから、いま立ち上げたということです。この10年間でプロの専門家集団を育てていく、そういう設計です」
-健康は問題ないですか
「全く問題ないです」
-好きな作家、座右の銘はどうでしょうか
「好きな作家ですか? わたしはキリスト教ではありませんが、遠藤周作の『イエスの生涯』『キリストの誕生』のイエス・キリストのように、迫害されてもみんなに愛を注ぎ、対価を求めない姿勢に共感を覚え、感動したことがあります。今の仕事も『お国のため』というのはおこがましいですが、お役に立つのであればということで引き受けました。座右の銘は『前進あるのみ』です。常に前を向いて進むということです」
-お酒はどうですか? タバコは? ギャンブルは?
「お酒は飲めませんし、タバコは吸いません。ギャンブルもやりません」(酒もタバコもギャンブルと無縁なのは、記者が好きな作家のひとりで、ノーベル文学賞を受賞するのならこの人しかいないと思っている〝孤高の作家〟丸山健二氏と同じだ。年齢も一緒)
-岩崎さんは、丸山健二さんと違いやさしいイメージですか
「いや、いや、それが違うんです。わたしは三井不動産時代、怖い5人の一人に数え上げられていたんです。なぜかというと、横浜支店の時は個室を設けなかった。偉ぶるのが好きじゃないんです。とにかく声が大きく、『これはこうじゃないか』と筋を通して話すもんだから、周囲の社員がわっと集まって侃々諤々となりました。でも、昼になれば『じゃ一緒に飯を食おう』と言って、笑って社員とコミュニケーションをとっていました。
今も日本郵政の副社長としての個室はありますが、郵政不動産の方は個室を設けず社員の近くに座っています」(岩崎氏は横浜時代、当時、大京に圧倒的に負けていたマンション事業を肩を並べるまでに成長させた)
-三井不動産に入社した経緯について。岩崎さんは最初、住友銀行に入行されて3年後に三井さんに入られました。銀行が嫌だったのですか
「いやいや、銀行が嫌だったというわけではなく、わたしは自由人になりたかったんです。たまたま大学の同期が三井不動産を辞めたと風の噂で聞き、その代わりに入社しました。あとで振り返って、こんな自由に働かせてくれる会社は素晴らしいと思いました。
入社して最初の昭和40年代は臨海事業部に所属し、埋め立て事業などで東南アジアなどを飛び回りました。第一次オイルショック時は原油が1バレル2ドルから10ドルに上昇し、中東に資金が集中したこともあり、スエズ運河の拡幅工事でエジプトに駐在員として滞在もしました」
◇ ◆ ◇
岩崎氏は後期高齢者の仲間入りをし、社長に就任した。世間には高齢者のトップ就任を良しとしない空気があるが、年齢は全然関係ないと思う。
稲盛和夫氏が日本航空の会長に就任したのは78歳のときだった。日本スーパーマーケット協会の名誉会長・清水信次氏(ライフコーポレーション会長兼CEO)は92歳だ。土光敏夫氏は91歳で亡くなる直前まで第二次臨時行政調査会の会長を務めた。91歳で亡くなったピカソも死の直前まで創作活動を続けていた。安田善次郎は「50、60は洟垂れ小僧、70は働き盛り、80、90は男盛り」と言った。
ただ、経営者たるもの健康に不安があったら務まらない。ましてや岩崎氏は若いときに大病を患ったため、小学生で1年留年した。これが一番心配だった。だから単刀直入に「岩崎さん、健康は問題ないですか」と聞いた。
「全く問題ない」ことに安堵したのだが、問題ないどころか、その健康ぶりに驚愕させられた。
取材を終えてから記者を手招きし傍に立たせた。何をやらかすのかといぶかっていたら、岩崎氏はやや両足を広げて「押してごらん」と話しかけた。
記者も69歳の立派な高齢者だが、75歳の後期高齢者のおじいちゃんを押したばっかりに倒れ込み、頭やら腰を打ち再起不能になり、その責任を問われたらかなわないと考え、恐る恐る言われたままに押した。びくともしないのでさらに強く押したが微動だにしないではないか。
岩崎氏はさらにまた、左腕を水平に持ち上げくの字に曲げて「力いっぱい押してみて」と言った。今度は腕くらい折れても知ったことかと渾身の力を振り絞って押してみたが、結果は同じだった。
唖然とする記者に畳みかけるように、今度はソファに腰かけ両膝に自分の手を載せ、「力いっぱい押さえてごらん」と言うから押してみた。すると、何の苦も無く記者の手を押し上げたではないか。上から抑えられた手をそのまま持ち上げるなんて、どう考えても力学的にあわない。
「これが空手。押されて微動だしないのは、生き方や仕事にも通じる」と岩崎氏は宣うた…。
◇ ◆ ◇
この岩崎氏によく似た経歴の人がいる。大京アステージ会長、マンション管理業協会理事長、URコミュニティ社長などを務めた黒住昌昭氏(76)だ。黒住氏は、東大法学部を卒業後、接待攻めに陥落し三井不動産に入社することを決めたが、親に「不動産業などに就職したら勘当だ」と脅され、三和銀行に入行した。
バブル崩壊後、大京再生のため同行副頭取・長谷川正治氏とともに大京グループに送り込まれた。多芸多才ぶりはつとに知られており、5か国語を操り、東大OBコーラス部でテノールを担当し、料理も得意とか。合気道も会得している。
岩崎氏の空手と黒住氏の合気道が戦ったらどっちが勝つか。体格は断然黒住氏だが…。
◇ ◆ ◇
新会社は、日本郵政本社ビルと同じ霞が関一丁目のビル内にあり、資本金は15億円(日本郵政100%出資)。社員は約50名。
岩崎氏は、昭和18年生まれ、東京都出身。同42年東京大学教養学部卒業。同42年住友銀行(現三井住友銀行)入行。同45年7月三井不動産入社。平成7年6月同取締役。同10年6月三井不動産販売(現 三井不動産リアルティ)代表取締役副社長、同平成15年4月同代表取締役社長。同19年4月同代表取締役会長、同21年4月同相談役。同21年6月日本放送協会経営委員会委員長職務代行者兼監査委員。同26年6月ゆうちょ銀行取締役、同28年6月日本郵政代表執行役副社長(現職)、同30年4月、日本郵政不動産代表取締役社長に就任。
URコミュニティ社長に就任して10カ月 黒住昌昭氏に「再生」を聞く(2014/6/24)
都市、住宅、税制の三位一体の取り組み肝要 不動産協会・菰田理事長
菰田氏(帝国ホテルで)
不動産協会は5月16日、定時総会後の恒例の懇親会を行った。
冒頭、同協会理事長・菰田正信氏(三井不動産社長)は、わが国の経済はゆるやかな回復を続けているが、世界情勢は不透明感が増しているとし、「デフレからの脱却を確実なものとし、経済の好循環に向けて成長を加速させるため官民が総力を挙げて、都市と地方のさらなる活性化を図ることが重要。近年、人口減少、少子高齢化など社会構造が変化し、AI、IoTなど革新的な技術が急速に進行しており、街づくりに求められている役割も変化している。
多様な人々の社会参画、健康長寿、環境負荷の低減、新産業の創出など持続可能な社会の実現に向けて解決しなければならない諸課題を、街づくりを通して確実にし、強固な社会を実現することが求められている。そのため、人々が多様に暮らし、働き、憩える、世界に誇れる魅力的な街づくりを行い、豊かな市民生活ができるよう都市、住宅、税制の三位一体での取り組みが肝要」と述べた。
平成30年度の重要課題として①街づくり②豊かな住生活の実現③税制改正-の3点を挙げ、積極的に取り組んでいくと話した。10月に予定されている消費増税については、駆け込み需要とその反動減に各業界団体と連携して対応策を提言していくと語った。
乾杯の音頭を取った同協会会長・木村恵司氏(三菱地所特別顧問)は、「3分間だけ話させてください」とし、IoTをどう利用していくか、30年先、40年先を見据えて考えないといけない、われわれは普段競争しているが、団結しないといけないと話した。
木村氏
◇ ◆ ◇
日本小売業協会会長・清水信次氏(ライフコーポレーション会長CEO) 100歳時代というが、75歳で後期高齢者、85歳で末期高齢者。100歳まで生きると年金のこととか生活のことがあるから渋い(厳しい、財布のひもを締めるという意味か)。わたし? 100歳まで生きる。業績? 社長をはじめみんな頑張ってくれているからいいほうだろうね。日本は価格競争、サービス競争で世界一だ(上場会社最高年齢経営トップの92歳。わが三重県出身)
清水氏
不動産協会相談役・岩沙弘道氏(三井不動産会長) (先日、日本郵政不動産の岩崎社長にインタビューしました。岩崎さんは75歳、岩沙さんは76歳。岩崎さんにメッセージをお願いします)郵政不動産は、都市開発、地方再生に欠かせない資産を持っていらっしゃる。時代の変化に応じでその資産を有効に活用し、全体の事業の根幹を担うよう期待している。共同事業? フェアでオープンな形で協力させていただく
岩沙氏(左)と神山氏
不動産協会理事長・菰田正信氏(三井不動産社長) (三井不動産レジデンシャルがRBA野球大会総合優勝戦で旭化成ホームズと対決します。三井さんに一言)三井の力を十二分に発揮してほしい。(やや劣勢ですが)チャレンジスピリッツを発揮してほしい。(社長ご自身はプロ野球はどこのファン? )コメントを差し控えさせていただく
不動産協会副理事長・沓掛英二氏(野村不動産会長) (先日、日本郵政不動産の岩崎社長にインタビューしました。縁談話には全然関与していないということでした。復縁の話も出ませんでした)アハハハハ。(この前、川口のマンションを見ました。最高にいいですね。価格も安い)今はね…(意味深なコメント)
すてきナイスグループ取締役・木暮博雄氏 (RBA野球経験者としては上場企業3人目の社長誕生ですが)まだなっていないからね。(チームは低迷していますが)仕事も野球もちゃんとやってほしい。(Yの弟を補強するのはどうですか)いいね、しかし、わたしはまだ社長じゃないからね(6月28日の総会で社長に就任する予定。写真をお願いしたら「すっかり禿げちゃった」と拒否。昔から禿げていたのでは)
全国住宅産業協会会長・神山和郎氏(日神不動産会長) (横山修二さんが亡くなられました)業界(横山氏は全住協の前身、住宅産業開発協会の初代会長)のトップまで務められた方。(7月上旬予定の)お別れ会にはたくさん来ていただくように協力する(大京時代の部下。大京の山口陽社長と大京アステージ会長・栗原清氏は株主総会で退任されるので、横山氏を知る大京の役員は落合英治専務くらいになってしまった。落合氏も昭和59年入社だから、横山氏と直接話をしたことなどほとんどないのではないか)
東急不動産 全国25カ所で再生可能エネルギー事業を本格展開
東急不動産は5月15日、再生可能エネルギー事業を本格展開し、 風力発電所2カ所を含め北海道から九州・沖縄まで全国25カ所で事業推進すると発表した。
同社は2014年、香川県で太陽光発電事業に参入して以降、リニューアブル・ジャパンと資本業務提携し、国内最大級の蓄電池併設型発電所「(仮称)すずらん釧路町太陽光発電所」、岩手県一関市の太陽光発電と営農を両立する大規模ソーラーシェアリング事業の着手など、 再生可能エネルギー事業を推進してきた。
全国25カ所の事業推進による将来完成時の定格容量合計は一般家庭約12.9万世帯分の年間使用量に相当する約450MWとなり、CO2を年間約36万t-CO2 削減する。
横山修二氏が死去「スケールの大きい方だった 夢を語った」安倍徹夫氏が追悼文
元大京社長、会長の横山修二氏が死去したことに伴い、全盛時の部下で幹部だった安倍徹夫氏(アンビシャス社長)が「日刊不動産経済通信」に追悼文を寄せた。同紙の承諾を得たので、全文を紹介します。
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とにかくスケールの大きい方だった。どんな状況の時でも、正道を歩む経営をされていた。
大京が上場した頃、一番辛かったのはシベリアでの捕虜の時代とオイルショックだったと講話されたことがあった。
「戦時中、学徒動員で徴兵され、戦後シベリアに3年間捕虜として抑留された。厳寒の中、坑夫として過酷な労働を強いられ、毎日満足な食事も与えられず、地下の坑道を数百メートル往来し、周りには病死する若者が続出した。朝起きたら、戦友の堀内君が亡くなっていた」と述懐されていたことがあった。
35歳で独立し、会社を急成長させ、オイルショックの頃は何度も倒産しそうな状況にあったが、どんなときでも部下を信頼し、その家族を大切にされていた。
仕事をぬかるみの道に例え、小学校時代の恩師に教わった「土牛のごとき人生を歩む」を座右の銘にしていると、社員に話をされたことがあった。
大京の売上が7,000億円を超えた頃、常に言われていたのは、投資向け不動産を扱うな、投資向けは必ず崩れる。大京は実需の会社なんだと口癖のように言われていた。
マンション事業の他に海外、特にオーストラリアの開発に夢を抱いていた。
昭和40年代後半には、ゴールドコーストやケアンズに人を派遣し、リゾートエリアの開発やホテル建設に尽力された。部下を信頼し、いつも夢を語っておられた。
私も16年間の役員時代に稟議を却下されたことは1度もなかったと記憶している。
常に部下を信頼し、部下に任せ、事業を成長させ、逆に任せたことによって傷つくことがあっても、常に人を信頼していた。
様々な思い出が走馬灯のようにめぐってくるが、事業を通して正しい道の歩き方を多くの人達が教えられたと思う。海が大好きな方だった。
心から哀悼の意を表します。
巨星消える 木下長志氏に続き大京創業者、横山修二氏が死去 92歳
大京創業社長の横山修二氏が死去した。92歳。詳細は未定。
横山氏は1925年(大正14年)11月23日生まれ。1960年(昭和35年)大京商事、1964年(同39年)に大京観光を創業。1997年(同9年)代表取締役会長に就任。
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記者は14日の夜、業界紙の記者から訃報を知らされた。すぐ、大京創業時の幹部、記者が勝手に呼ぶ〝大京の7人の侍〟のうちの一人に電話した。亡くなられたのは事実のようだが、その侍は「また会いましょう」の言葉を残して電話を切った。もう一人の侍にも電話したが、コール音だけが鳴り響くだけだった。
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横山氏には2005年、大京がオリックスと資本提携し、事実上オリックス傘下になったとき、自宅を訪ねコメントを取ろうとしたが、家族の方から「もう経営にはタッチしておりませんのでコメントは差し控えさせていただきます」としか聞けなかった。これもご本人の意思かどうかも確認できなかった。
横山氏は、バブル崩壊後の経営悪化の責任を取り、平成4年に第一線から退いた。それでも当時の幹部からは「親父」と親しまれ、定期的に会合やゴルフなどをされていたようだ。馬主としても知られており、横山氏の所有馬から数点買って5万円の万馬券を的中したのは30年も昔か。
92歳といえば、今年2月に亡くなった木下工務店の創業社長、木下長志氏と同じ年齢だ。昭和-平成の激動期に活躍した2人の巨星が消えた。2007年、7人の侍のうちの一人、明和地所の創業社長、原田利勝氏が亡くなったとき、秘書を通じ「残念です」と間接的にコメントを聞いたのが最後となった。
土地を耕し、種を植え、花を咲かせた 木下長志氏(享年92歳)お別れの会(2018/2/28)
元大京専務 木原稔氏 マンションの顧客主義を語る(2009/12/10)
元明和地所会長の故原田利勝氏通夜に2500人(2007/6/19)