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 大和ハウス工業は9月25日、同社の全国の分譲マンション・分譲住宅販売状況や物流施設の稼働状況の取り組みに関するメディア向け勉強会を行った。勉強会は、近く発表される基準地価に関する記事を書くための参考となるよう開催されたもので、業界紙だけでなく一般紙の記者も多く参加した。

 分譲マンションは同社マンション事業推進部 営業統括部部長・角田卓也氏が、戸建て分譲住宅は同社住宅事業推進部 営業統括部 分譲住宅グループ グループ長・本間生志氏が、物流施設は同社建築事業推進部 営業統括部Dプロジェクト推進室室長・井上一樹氏がそれぞれの最近の事業概況について説明した。以下、概要を紹介する。

【分譲マンション】

 ①首都圏の供給物件の価格は依然として高水準を維持。都心5区(中央、千代田、港、新宿、渋谷)は2019年より約12%上昇、平均坪単価590万円となっている。市場が大手の寡占状態にあり、新型コロナの影響も鑑み、供給計画のバランスを図っているため、現段階では価格下落の傾向は見えない。

 ②近畿圏においても約4%の価格上昇。価格下落の傾向は見えない。地方都市においては、複合開発を含む主要な駅周辺の再開発案件等について特に進捗が見られる。

 総じて、コロナによる緊急事態宣言解除後は、来場・契約において、8月以降は(コロナ前の)1月~2月と比較し、遜色のない数値にまで回復。特に実需層における購買意欲が顕著に見受けられる。

 ③賃貸レジデンスに関しては、金融緩和を受けて不動産投資家の物件取得が堅調。そのため都心エリアを中心に、賃貸マンション向け土地取引が活発である。その結果、マンション事業用地においては依然競争が厳しく、コロナの影響は見受けられない。

 ④一方ホテルについては、出店計画の見直しに伴い、売買の成約に慎重な姿勢が見受けられ、マンション用地との競合は減少傾向にある。

 ⑤新型コロナウイルスの収束が不透明な状況ではあるが、日本の不動産市況における影響が諸外国に比べ、限定的であるという判断から、早い段階で海外投資家のニーズが回復する可能性がある。

【戸建て分譲住宅】

 同社の仕入れ施策としては、エリアの一等地購入を中心とした小規模区画、事業部連携の大型案件、他社との競合を避ける共同仕入れに注力し、企画施策としては首都圏での3階建て強化、新商品・木造分譲の強化、家事シェアハウスをはじめとするコンセプト住宅の供給など。

 2019年11月に販売開始したライフジェニックは累計320棟を販売。コンセプト住宅の「家事シェアハウス」は2020年7月4日~26日に実施した全国一斉見学会には6,278組が来場。テレワークスタイル提案は11月以降に投入する予定。門柱付近の玄関先に設置しても違和感のないデザインの「Next-Dbox」を2020年10月から販売開始。

【物流施設】

 同社の2020年3月期売上高4兆3,802億円のうちセグメント別では26%の事業施設がトップで、戸建住宅の11%、賃貸住宅の22%、マンションの8%をはるかにしのぐ。

 成長ドライバーである物流施設を中心とする事業施設への投資を図るため、第6次中計画の当初予定投資額3,500億円を6,500億円へ3,000億円積み上げることに修正。

同社調べによる開発会社別の物流施設シェアは開発面積、件数ともトップ。数字は開発面積、シェア、件数の順。

1 大和ハウス工業 6,378,964㎡ 19.9%  217件
2P社        6,092,094㎡    19.0%  94件
3G社       2,254,032㎡    7.0%  30件
4M社          2,174,905㎡   2.4%   28件
5 E社        1,842,336㎡  4.3%   21件
全施設計     31,986,036㎡      671件

◇       ◆     ◇

 分譲マンション市況については、記者も極力現場に足を運ぶようにしているので角田氏の説明はすんなり理解できた。その通りだと思う。テレワークの浸透で郊外マンションが活性化しつつある。

 角田氏に、「マンションブランドは御社のプレミストを含めパーク・ホームズ、パークハウス、プラウド、ブリリア、ブランズも大手は全て〝ハ行〟。コンセプトによって複数のブランド名にしているところがあり、総合ギャラリーを開設しているところがあるが、御社はどうか」と質問した。角田氏はブランドの追加、総合ギャラリーの開設の予定はないと話した。

 戸建て分譲は、同社を含めた大手ハウスメーカー・デベロッパーと分譲戸建て専業のデベロッパー、メーカーなどとはターゲットが異なり、一概に断定的なことは言えないが、本間氏は「価格上昇、競争激化、消費増税などの影響で当社だけでなく各社とも昨年は売上戸数を減らした。今年も当社はコロナの影響で第一四半期の数値は大幅に前年同期を下回ったが、7月以降はV字回復。上半期の減少を下半期に取り戻したい。売上戸数は前期の2,000戸若干下回る1,900戸くらいを予定している」と話した。

 本間氏はまた、「回復が著しいのは首都圏の多摩エリア(ニュータウンとは言わなかったが)と千葉ニュータウン」と話した。これも納得だ。これらの戸建ては、土地が30坪、建物が30坪の都市型戸建てと異なり、土地は40坪以上確保され、緑環境など住環境もよく、第一次取得層でも手が届く価格帯にある。

 井上氏は施設事業について、①ゼネコンとしての施工能力の高さ②デベロッパーとしての土地選定能力③不動産証券化の仕組み-の3つの強みを強調した。稼ぎ頭だから当然かもしれないが、まだまだ話し足りなさそうだった。

 ◇      ◆     ◇

 昨日(9月24日)は、同社のリノベーションマンション「リブネスモア戸田公園」の取材現場で、20年以上前に取材した山梨県甲府市の「双葉・響きが丘」の同社の担当者・佐々木祐輔氏から声を掛けていただいたが、今日(9月25日)は、2011年11月に取材した千葉県千葉市の開発面積約369haの「かずさの杜 ちはら台」の同社担当者・鈴木光章氏から声を掛けられた。名刺の肩書は「住宅事業推進部東日本住宅設計室一課主任 一級建築士 一級建築施工管理技士 一級造園施工管理技士 インテリアプランナー」とあった。

 感動的な取材をした記憶がまたまた蘇った。ここも素晴らしい大規模住宅地だ。当時の記事も添付したのでぜひ読んで頂きたい。

 同社も分譲戸建ては都市型戸建てが中心になっているが、分譲戸建ての見学の醍醐味はやはり大規模住宅地にある。機会を見つけて取材したい。

20年、30年前の記憶蘇る 大和ハウス リノベマンション「リブネスモア戸田公園」(2020/9/25)

先行逃げ切りか まくり一発か レベル高い 大和ハウス「プレミストタワー白金高輪」(2020/9/19)

大和ハウス工業「平和台」 同社初の「ZEH-M Ready」 申し込み殺到 早期完売へ(2020/9/15)

積水ハウス「スマートコモンシティちはら台」に見た街づくりへの覚悟(2014/9/13)

街のレベル高い「かずさの杜 ちはら台」大和ハウス「xevo Li (ジーヴォリアン)」(2011/10/21)

 

カテゴリ: 2020年度

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 東京都の新型コロナ感染者は、連日300~400人台だった7月下旬から8月中旬と比較し、この1か月間は100~200人台で概ね推移し、100人を割る日もあるなど、徐々に減少しているようにも受け取れる。別表に、過去30日間の年代別感染者の推移を示した。

 8月24日から9月2日までの10日間の感染者は1,795人で、年代別では20~30代が最も多く884人で、全体に占める割合は49.2%となっている。以下、割合は40~50代が27.9%、60代以上が15.4%、20歳未満が7.4%の順。

 9月3日から9月12日までの10日間の感染者は1,729人と前10日間より66人減少した。20~30代が58人、60代以上が36人それぞれ減少したのが反映された。注目されるのは20~30代の感染比率が47.8%へ1.4ポイント低下した一方で、40~50代は31.5%へ3.6ポイントアップしたことだ。

 さらにこの10日間はその傾向が顕著になっている。感染者は1,537人へ前10日間から192人減少した。年代別では20~30代が157人、40~50代が39人減少し、60代以上は12人増加した。比率では20~30代は4.3ポイント低下し43.5%になった一方で、40~50代は1.4ポイント、60代以上は2.6ポイント、20歳未満は0.4ポイントそれぞれ上昇した。

 以上のことから、感染者の減少に20~30代の若年層が大きく〝寄与〟していることが分かる。他方で、他の世代はそれほど減少しておらず、若年層が減少した分だけ感染比率は高まっている。

 今後、どのように推移するか分からないが、感染経路不明者割合は40%台の後半から50%台で推移するなど減少はしているものの依然として高い数値を示していることを合わせ注視する必要がありそうだ。

 23区の飲食店などの営業制限も解除(9月15日)され、プロ野球観戦者制限は5,000人から収容人員の50%へ緩和(9月19日)された。10月からは除外されていた東京都のGo Toトラベルキャンペーンも解除される。

 以下、9月17日に行われた東京都のモニタリング会議での専門家によるコメントを紹介する。

①新規陽性者数が高い水準のまま、増加比が100%を超える値に変化したことは、新規陽性者数が急速に増加していくことを意味している

②新規陽性者数は、依然、週当たり1,000人を超える高い水準で推移しており、更に増加傾向が続くことへの厳重な警戒が必要である。

③今週の濃厚接触者における感染経路別の割合は、全年代合計で、同居する人からの感染が、前週の37.4%から32.9%に低下したものの、依然として最も多く、次いで職場が13.5%となり、施設13.2%、会食11.6%、接待を伴う飲食店等5.9%の順であった。前週と同様、同居する人からの感染が最も高い割合であった。

④一旦、家族内に新型コロナウイルスが持ち込まれると、感染を防ぐことは困難であり、まずは、家族内に持ち込まないよう、家族以外との交流における基本的な感染防止対策の徹底が必要である。また、特に重症化するリスクが高い高齢者の同居家族への日常的な感染防止対策が重要である。

⑤特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、デイケア施設、訪問看護、病院等、重症化リスクの高い施設において、無症状や症状の乏しい職員を発端とした感染が多数見られており、高齢者施設と医療施設における施設内感染等への厳重な警戒と、高齢者の感染予防を目的とした検査体制の拡充が必要である。

⑥今週の新規陽性者1,234人のうち、無症状の陽性者が18.0%を占めている。

東京都 新型コロナ感染者5日連続で30代男性が最多20代の減少顕著(2020/9/13)

東京都 新型コロナ感染者1カ月で大きな変化20代女性が最多に20代男性は48%減(2020/9/6)

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槇文彦氏「恵比寿東公園」

 先日(9月18日)、日本財団の17か所(予定含む)の「THE TOKYO TOILET」プロジェクトのうち恵比寿にある3か所を見学した。建築家・槇文彦氏の「恵比寿東公園」には立ち去りがたいほどの感動を覚えた。片山正通氏の「恵比寿公園トイレ」にもうなってしまった。田村奈穂氏の「東三丁目公衆トイレ」には強烈なメッセージが込められている。みんな素晴らしい。公園トイレの概念を間違いなく変える。(写真、コメントは全て日本財団提供)

 利用者は、「えっ、1か所1億円? 全部で17億円?あの笹川さんとこが? とてもありがたい」などと異口同音に感嘆の声を上げた。

 プロジェクトは、同財団が約17億円を投じ、渋谷区内の17か所の公園トイレを整備したうえ渋谷区に寄付し、維持管理も日本財団・渋谷区・渋谷区観光協会が行う〝民設民営〟事業で、TOTOの暖房便座付きトイレを採用、施工は大和ハウス工業が担当し、設計・デザインにわが国を代表する建築家を起用していることから話題になっている。、世界から〝同じものを是非〟というオファーもあるという。

 記者はこれで完成した7か所すべてを踏破した。(断わっておくが記者はトイレフェチではない。マンションもそうだが、全て物事は一流に触れないと成長しない。全17か所を見るつもりだ)

◇      ◆     ◇

 さすが世界でもっとも名誉あるプリツカー賞を受賞した槇文彦氏だ。「恵比寿東公園」トイレに記者は絶句した。息が詰まりそうな感動を覚えた。

 利用者がとぐろを巻きそうな円形デザインの安藤忠雄氏のトイレも素晴らしかったが、槇氏のトイレはスチールとアクリル板を組み合わせた白が基調の外観で、アールを描いた屋根は、わが国の寺社仏閣建築物によくみられる軒反りの手法を採用したその曲線は飛翔する鶴のようでもあり、樹間を緩やかに抜ける薫風のようにも映る。

 外観が美しいだけではない。普通トイレと言えば入り口と出口は同じだが、ここは通り抜けられるになっており、内部空間に風と光を取り込んでいるのが大きな特徴だ。臭気・運気は風に乗って天空を舞い、やがて雲散霧消する仕掛けだ。

 まだある。何とトイレの外壁には同じ素材のベンチが設えてある。デパートのトイレ脇の通路にベンチが設けられている例はあるが、ベンチ付きの公衆トイレなどないのではないか。

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記者が見学したときもベンチに腰かけていた人がいた

【槇文彦氏コメント】

 このパブリックトイレをきっかけに、公共空間のあり方について再考する機会を与えられたことに感謝いたします。
 敷地の恵比寿東公園は、緑豊かな児童遊園として普段から近隣の人々に親しまれている公園です。私たちはこの施設を単なるパブリックトイレとしてだけでなく、休憩所を備えた公園内のパビリオンとして機能する公共空間としたいと考えました。子どもたちから通勤中の人々まで、多様な利用者に配慮し、施設ボリュームの分散配置によって視線を制御しながら、安全で快適な空間の創出を目指しました。ボリュームを統合する軽快な屋根は、通風を促し自然光を呼び込む形態とし、明るく清潔な環境と同時に、公園内の遊具のようなユニークな姿を生み出すことを意図しました。
 タコの遊具によって「タコ公園」と呼ばれる恵比寿東公園に、新しく生まれた「イカのトイレ」として親しまれることを望んでいます。

◇      ◆     ◇

 プロダクトデザイナー・田村奈穂氏の「東三丁目公衆トイレ」は、恵比寿駅から徒歩数分のJR線路沿いにある三角形の敷地に合わせた鮮やかな赤の外観が特徴の三角形トイレだ。

 素材は堅牢な分厚いスチール。強烈な赤の色と鋭角的な外観に記者はたじろいだ。これは、田村氏が「LGBTQ+」(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア・クエスチョニング+)とコメントしているように、多様な生き方をストレートに表現したのだろう。

 誰が利用するのだろうとしばらく眺めていたら、タクシーの運転手や配送業の従事者と思われる人が利用していた。女性は少なかった。

 駅には近いが、道路幅は狭く(2mもないはず)残地のような敷地に立地するだけに、他の公園トイレと比べると田村氏には気の毒な気もした。

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田村奈穂氏「東三丁目公衆トイレ」

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女性用トイレ

【田村奈穂氏コメント】

 年齢や性アイデンティティ、国籍や宗教、肌の色に関係なく、誰にでも訪れる生理現象を満たす場所、トイレ。けれど、個人のニーズというものが無限に多様であることがわかった今、社会が共有する「公衆トイレ」はどう変わっていけばいいのでしょう?

 私の住むニューヨークの街ではLGBTQ+の人々が、自分の認識する性に正直に生きています。渋谷の片隅の小さな三角の土地にトイレをデザインするにあたり、彼らが、ありのままの「自分」を生きる姿を、ありのままを受け入れる社会を想像しながら突き詰めて考えてみた結果、トイレを利用するだれもが、快適な気持ちを同じように得られるために大切なのは、プライバシーと安全です。それを念頭に、個人の空間を再定義して3つの空間をデザインしました。

 造形のインスピレーションは、国際都市渋谷にやってくるビジターへのもてなしの気持ちをこめて、また、利用する人々を包み込む安全な場所にしたいという願いを込めて、日本の贈り物文化のシンボルである折形から得ました。

 社会に属するすべての人たちが、安全に、ハッピーに生活を営める社会に、そんな思いをデザインにこめたトイレです。

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 ワンダーウォール代表としてインテリアから建築、クリエイティブディレクション、大型商業施設など世界的に活躍する片山正通氏の「恵比寿公園トイレ」にもうなってしまった。

 記者が言うことはない。片山氏のコメントがすべてを物語っている。「建築的なものから距離を置き、遊具やベンチや樹木のように何気なく公園に佇むオブジェクト」-これがすべてだ。

 外壁に浮造り加工を施したコンクリート化粧打ち放し仕上げ スギ板型枠工法を採用することで、かなりのボリュームがあるにもかかわらず周囲の緑にしっくり溶け込み佇んでいるその風情は、空の青にも海の青にも染まず漂う白鳥とも、そして田村氏の強烈な「LGBTQ+」の赤とも馴染みそうだ。街行く人もそこに建造物があることすら気づかず、それがトイレであることも全然識別できないはずだ。(よく観察すると芸は細かい。写真で示したピクトサインはアートだ)

 片山氏は“曖昧な領域-現代の川屋(厠)”を構築したともコメントしているが、記者は谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」を思い出した。川に直接用便する「川屋」(厠)の記述もある。谷崎が生きていたらこのトイレをどう表現するだろうか。

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片山正通氏「恵比寿公園トイレ」

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ピクトサイン

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女性用(左)と男性用トイレ

【片山正通氏コメント】

 念頭に置いたのは、建築的なものから距離を置き、遊具やベンチや樹木のように何気なく公園に佇むオブジェクトとしての在り方。

 日本におけるトイレの起源は川に直接用便する「川屋」(厠の語源)と呼ばれるもので、縄文時代早期に遡る。土で固められたもの、木材を結び付けて作ったものなど極めてプリミティブで質素であった。そんな佇まいをイメージしながらコンクリートでできた壁を15枚いたずらに組み合わせ、トイレでありオブジェクトでもある“曖昧な領域-現代の川屋(厠)”を構築。壁と壁の間を男性用/女性用/だれでもトイレという3つの空間への導入とするなど、人々が不思議な遊具と戯れるような、ユニークな関係性をデザインした。

◇       ◆     ◇

 槇文彦氏の「恵比寿東公園」トイレについて追加する。

 この公園は、東京都に85か所(令和2年現在)しかない、渋谷区では130か所ある公園の中で唯一の「児童遊園」だ。

 どういうことか、少し説明しよう。児童遊園は、児童福祉法第四十条で規定されている「児童厚生施設は、児童遊園、児童館等児童に健全な遊びを与えて、その健康を増進し、又は情操をゆたかにすることを目的とする」施設だ。経緯は分からないが、渋谷区は平成19年にこの「恵比寿東公園」を児童遊園に指定した。

 他の129の公園は「〇〇遊園」と名がついているものを含め全て都市公園法第一条に定める「都市公園の設置及び管理に関する基準等を定めて、都市公園の健全な発達を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする」施設だ。

 ちなみに、わが多摩市には208か所公園があり、「児童公園」の名がつく公園は5か所あるが、児童福祉法による児童遊園は1か所もない。全て都市公園法で規定する「街区公園」だ。

 そもそも児童遊園と都市公園の差などほとんどない。児童遊園には遊具の整備に関する規定や「児童厚生員」を配置することが求められていることくらいのはずだ。記者はこの〝垣根〟を取り払うべきだと思う。「(悪しき)前例主義」の典型ではないか。

 そうでなくとも、街区公園は利用されないという現状がある。目黒区の実態調査によると、ほとんど利用されない公園比率は2割くらいに達している。他の区市も同じではないか。「立体都市公園制度」もあるのだから公園のあり方を根本的に見直したらどうか。日本財団の渋谷区公園トイレは一石を投じたはずだ。

 児童遊園があるのだから、圧倒的多数派のわれら老人向けの公園もあっていいはずだがどこにもない(ゲートボール場として〝占拠〟している例はあるだろうが)。老人福祉法の施設にも「老人公園(遊園)」の文言は一つもない。

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〝タコ公園〟と呼ばれる由縁のタコの遊具がある「恵比寿東公園」

「美しい公衆トイレ発信できた」安藤忠雄氏/世界からオファー日本財団PJ(2020/9/15)

縦格子の円形平屋デザインが美しい 安藤忠雄氏の「神宮通公園トイレ」完成 日本財団(2020/9/7

若い人で溢れかえる「立体都市公園制度」を活用した三井不「MIYASHITA PARK」(2020/9/6)

日本財団 渋谷区公園トイレ整備に17億円 「西原一丁目」完成/真逆の児童遊園(2020/8/31)

坂茂氏も坂倉竹之助氏も素晴らしい 日本財団の民設民営 渋谷区公園トイレ(2020/8/9)

渋谷区に安藤忠雄、伊東豊雄、隈研吾、槇文彦氏ら16人がデザインしたトイレ誕生(2020/8/7)

激減する利用者激増する1人当たり占有面積公園のあり方考える(2020/8/3)

〝駅なのか街なのか〟JR東日本最大規模の「グランスタ東京」8/3開業 トイレに注目!(2020/7/30)

デベロッパーも取り組んでほしい 「TOTO商品はすべてがユニバーサルデザイン」(2020/2/3)

「女性が輝く社会」へつなげるトイレ環境は整うか 国交省 トイレ協議会(2017/3/14)

公園に保育所、マンション岩盤規制を打ち破れるか国交省公園のあり方検討会(2015/2/2)

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パネルディスカッション(左から安藤氏、治部氏、池永氏、伊藤氏)

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仲井社長

 積水ハウスが9月17日行ったオンラインによる「イクメンフォーラム2020」記者発表会を「見逃し配信」で視聴した。

 冒頭、仲井嘉浩社長は「パートナーや子どもだけでなく、本人や周囲の人を幸せにするイクメン休業は幸せと生産性向上が両立できる働き方改革であり、多様な働き方へのトリガーになる。本日は、皆さんと当社が2年間蓄積してきたデータを共有させていただき、イクメン休業のあり方、今後の課題と可能性について一緒に考え、取り組んでいくヒントを見つけていただければ幸い」などと挨拶した。

 フォーラムでは、在日本スウェーデン大使館大使ペールエリック・ヘーグベリ氏のメッセージが紹介され、パネルディスカッションではNPO法人ファザーリング・ジャパンファウンダー・代表理事安藤哲也氏をモデレーターに、パネリストに前内閣府男女共同参画局長・池永肇恵氏、ジャーナリスト・治部れんげ氏、同社執行役員ダイバーシティ推進担当・伊藤みどり氏が登壇。三重県知事・鈴木英敬氏もオンラインでゲスト出演した。

 視聴環境がよく、聞き取れなかった部分はほとんどなかった。パネルディスカッションの会場はどこか分からなかったが、ガラス越しに樹木が映し出されており、とても気持ちがよかった。

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左から鈴木氏(後ろは宇治山田商業の生徒さん)、ペールエリック・ヘーグベリ氏

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左から安藤氏、治部氏

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左から池永氏、伊藤氏

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 ここで一つひとつ紹介する余裕はないので、気が付いたことをいくつか紹介したい。

 まず、わが故郷の三重県知事・鈴木英敬氏が熱く語った「みえの育児男子プロジェクト」について。鈴木氏は、自治体の首長として初めて「男性育休100%」に賛同し、第一子、第二子とも育児休暇を取得。「イクメンオブザイヤー2015」「ベスト・ファーザーイエローリボン賞」(2016年)などを受賞したことで知られるが、〝隗より始めろ〟とばかり同プロジェクトを立ち上げ、2018年度の男性職員の育休取得率は8.1%となり、47都道府県で全国一となった。

 これは全然知らなかった。こんな嬉しいことはない。記者はもう50年以上故郷を離れているが、いまでも三重県人だと思っている。三重県出身の歴史的人物は本居宣長、芭蕉、観阿弥・世阿弥、江戸川乱歩、朝日新聞の創業者・村山龍平、沢村栄治、山林王・諸戸家など少なくないはずだが、われら三重県人が誇れるのは伊勢神宮に赤福、的矢の牡蠣くらいで、スポーツ界でも全国区はマラソンの野口みずきさん、レスリングの吉田沙保里さんくらいしかいない。

 鈴木知事は、「ネクスト親世代」の高校生など若者の意識を変える取り組みにも力を入れていると報告した。万歳!三重県!

 これ以上書くと読者の方に怒られるのでやめる。次にジャーナリスト・治部れんげ氏が、「記者の皆さんは客観報道も大事だが、自分の問題として考えてほしい」と呼びかけたことについて。

 同感だ。日本新聞協会の倫理綱領には「新聞は歴史の記録者であり、記者の任務は真実の追究である。報道は正確かつ公正でなければならず、記者個人の立場や信条に左右されてはならない。論評は世におもねらず、所信を貫くべきである」とあるが、「真実」とはいったい何か誰も分からないし、記者が信条を捨てたらジャーナリストでなくなる。「客観報道」などそもそもあり得ない。

 3つ目。前内閣府男女共同参画局長・池永肇恵氏が紹介したわが国の男性の家事・育児などの「無償労働」が他の国に比べて圧倒的に低いことについて。全500分のうち有償労働時間と無償労働時間の比率は、男性が452分: 41分(女性は272分:224分)。カナダは341分:148分、スウェーデンは313分:171分となっている。

 小生は、旭化成ホームズが主催した「『ワーク・ワーク・バランス』を考えるオンライン記者勉強会」の記事でも次のように書いた。

 「有償」と「無償」は賃金が支払われるかどうかで分かれるのだろうが(労働者は金だけで働かないのも事実だか)、「労働」の価値そのものは変わらないと記者は考えている。家事や育児が「無償労働」とされてきたのはわが国の家父長制の残滓でもある。「無償労働」の価値を正当に評価することが「新しい生活様式」につながるのではないか。〝専業主婦(または夫)〟(昔は婚期を迎えた娘さんや出戻り、後家さんは「家事手伝い」と呼ばれたが、今は死滅しているはず)などの言葉は死滅すべきだし、職と住の関係も問い直す必要があると思う。

 家事・育児労働をきちんと評価しないといけない。「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の制度の見直しも必要ではないか。この制度は明らかに家父長制度の残滓だ。

 パネルディスカッションでは〝育休の質の向上〟も論議された。記者も約10年間〝主夫〟をやったので分かるのだが、家事・育児労働はいやおうなく質の向上を求める。さぼったり手抜きしたりすると、途端にほころびが出てくる。これは仕事と同じだ。だらだらと長時間働いても成果は上がらない-家事・育児労働をするからこそこのことがよく理解され、仕事にフィードバックされる。記者は〝主夫〟をやったことで仕事(記事)は2倍くらいに増えた。選択と集中だ。

 ペールエリック・ヘーグベリ氏は育休は自分を見直すきっかけになる主旨の話をされたが、確かに見えなかったすべてのものが見えてくる。

積水ハ イクメン白書2020全国ランク 九州男児が上位独占 かかあ天下群馬は最下位(2020/9/19)

旭化成ホームズ 「ワーク・ワーク・バランス」を考えるオンライン記者勉強会(2020/6/30)

 

カテゴリ: 2020年度

 積水ハウスは9月17日、全国の小学生以下の子どもを持つ20代~50代の男女9,400人を対象に育児休暇の取得実態を調査した結果を「イクメン白書2020」とまとめ発表した。

 「イクメン白書2020」では、同社が独自に設定した5項目4指標に基づき「イクメン力全国ランキング」を公表しているが、1位には昨年36位の佐賀県が浮上、2位に熊本県(同14位)、3位は福岡県(同29位)となるなど〝 九州男児〟の九州勢が上位を独占した。昨年1位の島根県は27位へ大幅に後退した。

 山口祥義・佐賀県知事は「佐賀県が日本一のイクメン県になったこと、本当に嬉しく思います。今、佐賀県では、結婚、出産、子育てのあらゆるステージで支援を行い『佐賀で子育てしたい』と思ってもらえる環境をつくるプロジェクト『子育てし大県(たいけん)さが』に取り組んでいます」とコメントを寄せた。

 このほか、男性の育休取得率は昨年9.6%から12.8%に、「1か月以上」取得した男性も昨年13.1%から18.1%に増え、育休満足度は昨年67.5%から81.8%にそれぞれ大幅アップした。

 また、男性の約8割が家事・育児に幸せを感じており、家事・育児スキルが高く、仕事に対する生産性の向上や会社への愛着も向上したと報告。

 男性社員の育休取得が進んでいる会社は「企業イメージが良くなる」(89.9%)、「生産性が高い企業だと思う」(83.7%)、「就職したい(子どもに就職してほしい)」(86.7%)と、全ての項目で高い評価を得た。

 調査結果について、子ども支援政策や男性の家庭参加の専門家・治部れんげさんは「今回の調査結果で興味深かったのは、佐賀、熊本、福岡という九州三県がトップ3 位を独占したことです。これまで『九州男児は保守的』とされてきたイメージを覆す画期的な内容だと思いました。もしかしたら『九州男児』に対するイメージ自体が特定地域と性役割の強さを結び付ける『ジェンダーバイアス』なのかもしれません」「都内の女子大で積水ハウスの男性育休について話したところ『うれしくて泣きそうになった』いう声がありました。男女共に育休を取れる会社、社会は次世代の大きな希望になるのです」などとコメントしている。

 同社は、男性社員の育児休業1か月以上の完全取得を目指し、2018 年9 月より「イクメン休業」制度の運用を開始しており、2020年8月末時点で取得期限(子が3 歳の誕生日の前日まで)を迎えた男性社員670名全員が1か月以上の育児休業を取得しており、2019年2月以降、取得率100%を継続している。9月19日を「育休を考える日」として記念日制定し、2019年から企業で働く男性の育休取得実態を探る「イクメン白書」を発表している。

◇      ◆     ◇

 小生は「イクメン」なる造語は好きではない。そもそも中身を不問にして外見だけで「イケメン」などと評価すること自体ばかばかしいことなのに、それを夫婦共同の仕事であるはずの「育児」に熱心な男性に当てはめるのは、不平等を当然のように肯定・固定化する考えが透けて見えるからだ。

 いったい「イクメン」と呼ばれることに当事者はどう思うか聞いてみたいものだ。例えば、8月26日に同社の「みんなの暮らし7stories」のメディア向け見学会を取材した際、モデルハウスを説明した同社住生活研究所課長・木野村昭彦氏(41)。木野村氏は「うちは完全フルタイムの共働きなので、家事は妻と出来る限り平等に分担していて、私も妻と同様に料理や洗濯も普通にこなします」と語った。木野村氏は「イクメン」と呼ばれることをよしとしないはずだ。木野村氏の奥さんだって「イクジョ」などと呼ばれたら嫌な気分になるのではないか。

 更にまた、男性の家事・育児時間は1日平均1.46時間なのに対し女性は5.14時間と大きな差があるのは、いわゆる専業主婦(これまた嫌な言葉)の回答者もいるからだろうが、こんな状態で生産性が上がるわけがない。

 まあ、本旨から外れるのでこれくらいにしておく。「イクメン」も「主婦」も死滅するような世の中にしないといけない。

 ◇       ◆     ◇

 レポートは全体で8ページの長大なもので、とても面白い。小生も全文を読んだ。

 驚いたのは、やはり〝九州男児〟の言葉に象徴されるように、まだ家父長制が色濃く残っているのではないかと思われる九州勢が「イクメン力全国ランキング」で葉隠れの佐賀県がトップに躍り出て、〝肥後もっこす〟の熊本県、〝亭主関白〟の福岡県の順にベスト3を独占したことだ。宮崎県(6位)、沖縄県(9位)、鹿児島県(19位)、大分県(21位)、長崎県(25位)と九州の他県もみんな上位にランクされた。

 九州勢の上位独占について治部さんは「もしかしたら『九州男児』に対するイメージ自体が特定地域と性役割の強さを結び付ける『ジェンダーバイアス』なのかもしれません」とコメントしたが、そうだろうか。

 ならば、〝かかあ天下〟で知られる群馬県(昨年14位)は得点が30点しかなく、佐賀県の205点、24位の千葉県の118点より断トツに低いのはどう説明するのか(参考までに。わが故郷・三重県も18位(同5位)と大健闘しているのもうれしいのだが、若いとき、小生を〝花を愛せる人になって〟と殺し文句で捨てられた彼女の出身地は群馬県だ)。

 まだある。隣り合う府県なのに京都府が11位なのに大阪府は44位、奈良県は46位だし、5位の長野県に対し岐阜県は37位で、鳥取県は7位なのに島根県は27位だ。順位が激しく入れ替わったのはなぜかの説明もほしい。

 その理由としては、一つにはサンプル数が少ないこともあるだろうが、設問の仕方にも回答者は影響されているのではないかと小生は考える。九州の人も群馬県の人も回答者は祖父母、両親などから父親像、母親像を刷り込まれているはずで、その色眼鏡で自分自身を、そして配偶者を評価しているはずだ。治部さんは「ジェンダーバイアス」といったが、そのバイアスを取り除くフィルターを通せばまた違った結果が得られるのではないか。

 それにしても、葉隠れ・佐賀県とかかあ天下・群馬県の人が結婚したらどのような夫婦になるのか。三日坊主になるのか、それともおしどり夫婦になるのか。

従来の総花的提案から脱却 積水ハウス ライフスタイル型モデル「7stories」開設(2020/8/27)

 




 

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「囲町東地区第一種市街地再開発事業」完成予想図


 三井不動産レジデンシャルは9月18日、参加組合員として事業参画している中野駅北口の線路際の「囲町東地区第一種市街地再開発事業」の組合が9月16日付で設立認可を受けたと発表した。

 JR総武・中央線、東京メトロ中野駅前の「中野駅新北口駅前エリア」再開発に隣接する約2.0haの規模。住宅約720戸のほか、商業施設・オフィスに加え、隣接する区立「囲町ひろば」と一体的な広場形成を行い、防災機能の拡充、回遊性のある歩行者空間の整備を行う。2024年度の竣工を目指す。

 事業地は、中野駅北口から徒歩数分の約2.0ha。建築面積は約8,860㎡、延べ床面積は約121,100㎡。事業推進コンサルタントは佐藤総合計画。

◇      ◆     ◇

 同駅南口駅前では、住友不動産が2024年2月の竣工を目指し、開発面積約2.4haの「中野二丁目地区第一種市街地再開発事業」に今年3月工事着手した。20階建てオフィス棟(延床面積約15,000坪)と37階建て住宅棟(延床面積約14,900坪、約400戸)などを整備する。

 同時に分譲すれば面白い戦いになるとみていたが、住友不動産は賃貸にする予定で、「囲町東地区」も分譲か賃貸化の記載はない。分譲されれば単価は坪600万円でどうだろうか。もっと高いか。

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「中野二丁目地区第一種市街地再開発事業」完成予想図
 

 

 


 

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 三井不動産レジデンシャル、日鉄興和不動産、三菱地所レジデンス、首都圏不燃建築公社の4社は9月18日、参加組合員として事業参画している港区三田一丁目の「三田小山町西地区第一種市街地再開発事業」の組合が9月10日付で認可を受けたと発表した。

 麻布十番駅に近接する約2.5haの区域で、約1,450戸の共同住宅をはじめオフィス、店舗、公園を一体で開発するとともに、麻布十番エリアへつながる動線を設け、緑あふれる広場や歩行者空間を整備してエリア全体の回遊性・利便性を高める。

 事業地は港区三田一丁目3番他、区域面積は約2.5ha。建築面積は約10,430㎡、延べ床面積は約181,130㎡。事業推進コンサルタントはアール・アイ・エー。竣工予定は2027年。

◇       ◆     ◇

 都心部の再開発プロジェクト始動が相次いで発表されている。マンションの戸数にしたら1万戸はくだらない。2万戸くらいではないか。

 ここも場所はよく知っている。三井不動産レジデンシャル「パークコート麻布十番ザ タワー」、住友不動産「シティタワー麻布十番」に隣接するエリアだ。駅と直結されれば徒歩2分だろう。

 所在は「麻布十番」ではないのと、高速道路が走っているのをどう評価するかだが、現時点で販売されれば坪単価800万円以下はあり得ない。あと7年、日本経済が活気を取り戻していたら坪1,000万円は超えるのではないか。それまで生きていられるかどうか。

三井不動産RD他「パークコート麻布十番ザ タワー」竣工(2010/5/26)

住友不動産 都心再開発2物件「大崎」と「麻布十番」(2008/7/8)

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最終審査発表会(なか安で)

 東京都八王子市の老舗料亭「なか安」と地元不動産会社「住宅工営」、昭和62年開校の日本工学院八王子専門学校の3者は9月10日、地域の再生・活性化を図るため老朽化し使用されなくなった老舗旅館をリノベーションし学生シェアハウスに再生するプランを専門学生から募る「明日も楽しみで”たまんない”〜学生シェアハウスdesign project @暁町〜」の最終審査発表会を開催し、各賞を決定した。(写真はは記者撮影以外全て住宅工営提供)

 56案のうち最終審査に残った15案の中から最優秀賞には井上汐里さんの「Inner Terrace(照らす)House」が選ばれた。光と風を取り込んだアイデアが評価された。

 井上さんは「手描き感を出すため、図面の色も自分で塗ったりした。努力が実ってうれしい」と目を潤ませた。

 次位の優秀賞には齋藤亜紀さんと星川雅人さんが受賞し、さらに「暮らしを、design。賞」に西川茉季葉さん(SDGs部門)、村松陸さん(地域コミュニティ部門)と小林菜々子さん(SNS発信部門)、特別賞には芹澤匠太郎さん(なか安代表取締役・宮﨑昌久氏)、山田健太さん(学校法人片柳学園理事・黒須隆一氏)、佐藤真心さん(日本工学院八王子専門学校副校長・山野大星氏)がそれぞれ選ばれた。

 オンラインによる最終審査発表会オープニングには、住宅工営より協力依頼したという、建築家の隈研吾氏からの学生に向けたエールメッセージ動画も上映されたそうだ。

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最優秀賞の井上汐里さんの「Inner Terrace(照らす)House」

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最終審査発表会(なか安で)

◇       ◆     ◇

 同プロジェクトは、創業87年の老舗料亭・なか安の1972年竣工の9階建てビルのうち、同社が2003年に旅館業から撤退してから使用されなくなった4~6階部分(1フロア56坪)をリノベーションし、学生向けシェアハウスとして再生しようというもの。

 なか安から相談を受けた創業51年の住宅工営・齋藤祥文社長は日本工学院八王子専門学校と連携して学生向けシェアハウスとして再生することを考え、今回のプロジェクトを立ち上げた。同社はこれまで2,000戸以上の建売住宅を供給した実績があり、齋藤社長は3代目だそうだ。

 プロジェクトには同校の建築学科の3年生56人が授業の一環として参加。今年6月からすべてリモート授業で取り組んでいる。

 齋藤氏は、「普通のマンションやアパートにリノベーションしてもこれからは事業として成り立たなくなる。いかに新しい価値を創造するか。学生さんには『箱があってプランを描くことは誰でもできる。新しい価値を吹き込むことが大事』と話しました。これから具体的なプラン作りに入るが、学生さんのアイデアを最大限生かしていく。来年3月までに完成させたい。これからの住宅事業はコミュニティがキーワードとなる」などと語った。

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住宅工営の店舗(背後にはSDGsをあしらった壁:記者撮影)

◇      ◆     ◇

 このプロジェクトは、週刊住宅の記者から聞いて知った。大手デベロッパーやハウスメーカーが主催するこの種の取り組みは何度か取材しているが、〝オール地域〟に意義があると思い取材をお願いした。書き足りない部分は、転載・引用の了解も得られたので、添付した同紙の記事を参照していただきたい。過不足なく書かれていると思う。

 なか安は記者も一度、利用(接待、つまりただ)したことがある。庭園が美しく個室型なのでゆったり寛ぐことができる。

 かつては多摩エリアの社会・経済圏の核だった八王子市だったことを納得させる料亭だと思う。シェアハウスが完成したらまた取材したい。

 ※8月3日付週刊住宅の記事

週刊住宅8月3日暑中特集号4面/八王子ホテル跡再生.jpg

前提条件は?だが「道」のテーマが最高にいい ポラス第5回「学生・建築コンペ」(2018/6/23)

次代へ道を開くか「広がる通りみち」 第8回 「三井住空間デザイン賞」(2014/10/23)

 


 

 

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「Torch Tower(トーチタワー)」

 三菱地所は9月17日、東京駅前で開発を進めている「東京駅前常盤橋プロジェクト(大手町二丁目常盤橋地区第一種市街地再開発事業)」の街区を「TOKYO TORCH(トウキョウトーチ)」に、2021年6月末竣工予定の東京駅圏最高峰の高さ約212mのA棟を「常盤橋タワー」に、2027 年度竣工予定の高さ日本一となる約390m B棟を「Torch Tower(トーチタワー)」にそれぞれ名称決定したと発表した。

 同プロジェクトは、東京圏の国家戦略特別区域計画の特定事業として2016年度に都市計画されたが、追加的に都市計画変更手続きを行い、「Torch Tower」に都心最高層クラスの展望施設、約100室の国際級ホテル、約2,000席の大規模ホールなどを整備するほか、1階から8階の外周部に約2㎞の空中散歩道と、屋上には約2,500㎡の屋上庭園を整備。街区全体では、約7,000㎡の大規模広場や親水空間、常盤橋公園など全体で約2.0haの屋外空間を創出する。

 「TOKYO TORCH(トウキョウトーチ)」という街区名称には、「Torch」のもつ「灯り」のイメージと、プロジェクトビジョン「日本を明るく、元気にする」想いが込められている。

 発表会に臨んだ同社執行役社長・吉田淳一氏は、「10年以上前から検討してきたプロジェクトの概要がまとまった。現在はグローバルな競争が激化し、国内の社会課題も山積し、不確実性が増しているが、だからこそ停滞感を払しょくするためにも明確で分かりやすい〝日本を明るく、元気にする〟をコンセプトにした。日本一の高さ390mというシンボル性にふさわしい唯一無二の街づくりを推進していく」と語った。

 「Torch Tower」は高さ約390m、地下4階地上63階建て延べ床面積約約544,000㎡。B1-6Fが商業施設、3F-6Fがホール、7Fがフィットネス、7F-53Fがオフィス、57F-61Fがホテル、62F・RFが展望施設。着工は2023年度、竣工は2027年度の予定。施工は未定。

 「常盤橋タワー」は高さ約212m、地下5階地上38階建て延べ床面積約146,000㎡。B1-3Fが商業施設、3Fがカフェテリア、9F-37Fがオフィス、8Fがラウンジ。2021年6月末に竣工する予定。施工は戸田建設。

 街区全体の設計監理は三菱地所設計が担当し、「Torch Tower」の頂部デザインには藤本壮介建築設計事務所主宰・藤本壮介氏、低層部デザインには永山祐子建築設計事務所主宰・永山祐子氏、広場デザインにはFd Landscape代表・福岡孝則氏を起用する。事業全体に占める同社の事業費は約3,500億円。

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左から福岡氏、藤本氏、三菱地所執行役員常盤橋開発部長・茅野静仁氏、吉田社長、三菱地所執行役副社長・谷澤淳一氏、三菱地所設計常盤橋プロジェクト室長・松田貢治氏、永山氏

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吉田社長

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-ホール外装

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親水空間

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親水空間

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広場空間

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ホテルロビー

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低層部

◇       ◆     ◇

 コロナ禍でデベロッパー各社は〝自粛〟を決めているが、同社と同社グループは今回を含めて5度目の発表会を行った。プレス・リリースでは伝えきれない新しい事業や新商品の特性を経営陣が直に伝える姿勢がうれしい。今回も、報道陣と同じくらいの数十人のスタッフは全員SDGsのバッジを胸につけていた。

 今回の発表会で記者がもっとも注目したのは「Torch Tower」の1階から8階の外周部に設置する約2㎞(往復4㎞)の空中散歩道だった。

 ビルの高さが日本一というのは宣伝効果としては大きいかもしれないが、世界レベルからすれば問題にならない高さだし、約54.4haの延べ床面積も他に負けるし、全体で2.0haの屋外空間も、これより広いプロジェクトはほかにもあるはずだ。

 しかし、ビルの外周にこれほどの空中散歩道を整備するのはわが国初ではないか。道路幅は約4mで、8階までの高さは約50mだそうだ。随所に緑も設置するという。マラソンのように走るのは禁じられるようだが、約5㎞の皇居一周とともに東京の新しい名所の一つになるかもしれない。

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「常盤橋タワー」

三菱地所ホーム 木造の常識を覆す新構法「FMT」 富裕層・非住宅用途に照準(2020/9/4)

三菱地所 生産者-産地-消費者つなげる屋外空間「バスあいのり3丁目テラス」開業(2020/9/5)

型枠を内装デザイン化30坪の平屋が1000万円 三菱地所 総合林業会社設立(2020/7/28)

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「神宮通公園トイレ あまやどり」(写真提供:日本財団)

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「美しい日本表現できた」安藤氏

 既報の建築家・安藤忠雄氏(79)が設計デザインを担当した日本財団「THE TOKYO TOILET」の一つ、「神宮通公園トイレ」(あまやどり)が供用開始されたのに伴い、9月15日、安藤氏が約30分にわたり熱弁をふるった。約30社50人のメディア関係者が駆け付けた。

 この種の独立型の公衆トイレを手掛けるのは初めてという安藤氏は、「2年前、話を聞いたときは費用もかかるし本当かな、大丈夫かなと思ったが、日本の〝売り〟の一つは清潔で美しいことにある。これをテーマに世界に発信したいと考えてデザインした。コロナを意識したわけではないが、風通しもよく、美しい公衆トイレとして世界に発信できたのではないか。宝石と同じように、小さいなりに大きな発進力があることを示せた。公園を見直すきっかけにもなる」などと語った。

 他の作品については、「他の先生の作品は見ていないが、それぞれ緊張を持たれ全力投球されているのにびっくりした。話題にもなっているガラス張りは透けて見えたらどないすんねんと思ったが、その〝危険感〟がいいのではないか」と感想を述べた。

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駆け付けた報道陣

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内部(写真提供:日本財団)

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安藤氏(左)と笹川氏

     ◇      ◆     ◇

 記者は次のように質問した。

 「先生、わたしはこれまで7か所のうち4か所を見学しました。先生のこのトイレが一番好き。日本だけでなく、世界の公園トイレのモデルに間違いなくなるはず。世界から同じものを作ってくれとオファーがあったらどうされますか。設計デザイン、著作権の帰属など権利関係はどうなっているのですか。外観ですが、縦格子はアルミ合金を採用されていますが(隈研吾さんが得意とする…これはぐっと堪えて)、木造では具合が悪いのですか。それと、こんなに美しいと、入った人が出て来なくなるんじゃないか、行列ができるトイレになるんじゃないかと心配ですが、いかがですか」

 安藤氏は次のように答えた。

 「世界からオファーがあったらどうするか、これは日本財団さんがどうされるかにもよる、ちょっと答えられない。アルミを使ったのは耐久性と衛生面を重視したから。木造は考えていなかった。入った人が出て来なくなったら、そりゃ困る」

 世界からのオファーの質問を引き継いだ日本財団の常務理事・笹川順平氏は、「実はインド、ベトナム、中国、ヨーロッパなど世界中からオファーがあるが、決まっていない。今回のプロジェクトはメーカーのTOTOさん、施工の大和ハウス工業さんの力が合わさって実現したもの。メンテナンスも含めてよく検討しないと、そのまま輸出してうまくいくか不安もある」などと慎重な構えを示したが、まんざらでもなさそうだった。

 「先生、コロナ気を付けてくださいよ」「コロナ? ついそこまで来よったが、逃げていきよった」

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「大和ハウスさんもようやった。親分(社長)というもんは売上ばかり言うたらあかん。今回のように社員がやりたい仕事を取らなあかん」

縦格子の円形平屋デザインが美しい 安藤忠雄氏の「神宮通公園トイレ」完成 日本財団(2020/9/7

日本財団 渋谷区公園トイレ整備に17億円 「西原一丁目」完成/真逆の児童遊園(2020/8/31)

坂茂氏も坂倉竹之助氏も素晴らしい 日本財団の民設民営 渋谷区公園トイレ(2020/8/9)

渋谷区に安藤忠雄、伊東豊雄、隈研吾、槇文彦氏ら16人がデザインしたトイレ誕生(2020/8/7)

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