「次世代ZEH+」三井不レジ「新百合ヶ丘」1期1次10戸 平均3.2倍で即日完売
「ファインコート新百合ヶ丘グランレガシー」
「次世代ZEH+」をクリアした三井不動産レジデンシャルの都市型戸建て「ファインコート新百合ヶ丘グランレガシー」を見学した。小田急線新百合ヶ丘駅から徒歩9~10分の全29区画で、第1工区18区画のうち12月17日に抽選分譲した第1期1次10戸が最高6倍、平均3.2倍で即日完売した。1億円前後の高額ながら、住環境に恵まれた希少立地が人気の要因だ。
物件は、小田急線新百合ヶ丘駅から徒歩9分~10分、川崎市麻生区万福寺4丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率80%)に位置する全29区画(建築確認未取得区画11区画含む)。建築確認済みの第1工区18区画のうち第1期1次10戸の土地面積は土地面積は125.20~132.60㎡、建物面積は97.36~113.28㎡、価格は8,690万~1億2,490万円。建物は2022年10月竣工済。構造・工法は木造2×4工法2階建て。施工は三菱地所ホーム(8区画)、エステーホーム10区画)。
一次エネルギー消費量を25%以上削減(ZEHは20%以上)し、発電設備などにより再生可能エネルギーの自家消費を拡大する「次世代ZEH+」を満たしており、主な省エネ・創エネ設備は太陽光発電、「HEMS」、アルミ樹脂複合サッシ、Low-Eガラス、エネファーム、TES温水式床暖房(キッチン含む)、24時間換気システム、EV充電設備などのほか、一部にV2H(Vehicle to Home)を採用。
物件ホームページを7月に立ち上げて以降の問い合わせは約860件。11月から集客開始してからの来場者は、小田急線沿線を中心に約110組。12月17日に抽選分譲した結果、最高6倍(2住戸)、平均3.2倍で即日完売した。購入者の約63%は地元の麻生区住民、他は地域に地縁のある人など。年代は30代の半ばから40代の半ばが中心。
現地は、土地区画整理事業により開発され、1区画の最低敷地面積が125㎡以上と定められている住宅地の一角。同社の調べによると、過去5年間に新百合ヶ丘駅圏内徒歩10分圏で供給された分譲住宅は8物件あるが、29戸の規模は最大という。
住戸プランは、天井高約2.7mの18〜21畳のリビング・ダイニング・キッチン、DEN、アイランドキッチン、マルチスペース、メーターモジュール階段など。
同社横浜支店営業室主管・水越敏彦氏は「来場者のみなさんに〝ワオッ〟と驚いていただけるようリビング・ダイニングの広さと高さを確保しました。お客さまの評価ポイントがもっともむ高いのは立地環境です」と語った。
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京王線多摩センター居住の記者は、街のポテンシャルは新百合ヶ丘に負けないと思っているのだが、多摩センターだったらまず今回のような価格では売れない。せいぜい8,000万円だろう。
新百合ヶ丘駅に近い中古マンションの価格も新築時価格より高い物件もあると聞いて、これまたびっくりした。三菱地所レジデンスなどが近く分譲する「ザ・グランクロス多摩センター」(289戸)は、新百合ヶ丘の中古よりは高い値が付くはずだが、かといって東京建物「ブリリア聖蹟桜ヶ丘」(773戸)の坪270万円を上回ることができるかどうか。京王プラザホテル多摩も来年1月で閉店となる。新百合ヶ丘との〝格差〟はどんどん広がっている。
「次世代ZEH+」について。記者は窓面の大きさに驚愕したのだが、これこそが「次世代ZEH+」の凄さの象徴だ。「ZEH」のよさは住んでみないと分からない部分も多いが、ZEH-Mを満たしている三井ホームの賃貸木造マンション「MOCXION INAGI(モクシオン稲城)」の居住者アンケートの記事を添付する。
マンションも分譲戸建てもZEHは必須要件で、これからは加速度的に広まるはずだ。
1号棟(左)と16号棟のモデルハウス
伝統的工法を採用し天然素材にこだわる 大和ハウス「まちなかMARE世田谷代沢」
「(仮称)まちなかMARE世田谷代沢」
大和ハウス工業は12月2日、木造&RC混構造の最高級戸建住宅商品「Wood Residence MARE-希-(マレ)」の実棟モデルハウス「(仮称)まちなかMARE世田谷代沢」を2022年12月3日にオープンすると発表。同日、メディア向け現地見学会を行った。
物件は、京王井の頭線池ノ上駅から徒歩5分、世田谷区代沢2丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率150%)に位置する敷地面積約165㎡(50坪)、地下1階・地上2階建て延べ床面積約238㎡(72坪)。
「MARE」のコンセプトである「木のぬくもり」を感じられる外観・デザイン・設備仕様にしているのが特徴。最大3500ミリの敷地の高低差を利用し、地下1階をRC造、地上1~2階を木造の混構造とし、和モダンを演出するため小間返し、坊主貼、格子戸、荒組障子、吊収納などわが国の伝統的工法を採用し、素材も尾鷲ヒノキ、天竜スギ、大谷石、トチの原木などをふんだんに用いている。2階~3階の階段・廊下幅は1150ミリ。システムキッチンはkitchenhouse。
当面はモデルハウスとして公開し、土地価格を含め5億円超で販売する予定。
見学会で同社東京本店木造住宅事業部長・長谷聡志氏は「わが国の住宅着工件数は11が月連続して前年同月比マイナスとなるなど厳しい状況にあるが、当社の住宅事業は2023年3月期第2四半期決算では前年同期比23.8%増と堅調。木造は400棟販売し、1棟単価が上昇。高額の伸び率は平均を大きく上回っている。『MARE』のモデルハウスがある『駒沢』の住宅展示場の来場者は40組/月」と述べた。
同社住宅事業本部設計推進部ZIZAIデザイン室長・櫻井恵三氏は「本当にいい家とは何かがコンセプト。第一種低層住居専用地域の南下がりの敷地で、道路制限、斜線制限など厳しい条件の中で、地階は車2台駐車を確保し、1~2階は道路側からの視線を遮り、かつ光と風を取り込む工夫を凝らした。『MARE』はこれまで11棟40億円を受注したが、うち1棟は15億円なので1棟平均単価は約3億円。今後も新千里、軽井沢、箕面、川崎などで積極的に展開していく」と語った。
また、同デザイン室デザイナー主任技術者・笹井賢次氏は「素材にこだわり、三重県の尾鷲ヒノキのほか、天竜スギ、トチの原木、大谷石、漆喰壁などをふんだんに用い、わが国の伝統的な工法を採用した。今後もわが国の優れた材料を積極的に取り入れていく」と話した。
エントランス
リビング
左から笹井氏、長谷氏、櫻井氏
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玄関に入った途端、トチの原木のベンチや美しいヒノキと思われる格子戸、白那智の石、収納下の大谷石などが目に飛び込んできた。照明計画も見事で、「駒沢」とは比較にはならないが、「まちなか」のリアルなモデルハウスとしては最高に素晴らしいと瞬時に判断した。
感動を覚えたのは、笹井氏がわが三重県の速水林業を介して尾鷲ヒノキを採用したことを強調したことだった。尾鷲ヒノキは生育環境が厳しい分、肌理細やかな材質が特徴と言われている。
読者の方々はご存じないかもしれないが、三重県桑名市は「日本の山林王」と称された諸戸財閥の発祥地で、現在も約2.800haの森林を保有する諸戸林業、約1,070haを所有する速水林業は日本有数の山持ち企業だ(トヨタ自動車も約1,630ha保有するが、主に諸戸林業から取得したもの)。
価格についてメディアから質問がたくさん飛んだが、予定価格は妥当な値段だと思う。いま井の頭線沿線でマンションが分譲されたら最低で坪500万円、良好な住宅地なら坪700万円超になるはずだ。敷地が50坪で、建物が72坪なら5億円超になるはずだ。
記者は、富裕層向けは伸びる余地がまだまだあるとみている。記事を添付したように、港区の今年度の課税標準額が1億円超の層は前年度から241人増の1,250人で、この層の所得割額総額も前年度比65.8%増の約280億円となり、人数、所得割額とも過去最多を記録した。都心の各区でも同じような傾向があるのは間違いない。所得の5倍が〝無理なく取得できる〟(庶民にとってだが)住宅価格とするならば、富裕層は10億円だ。かつてバブル期は10億円超のマンションが飛ぶように売れた。そんな時代が再び訪れるのはそう遠くないはずだ。
リビング
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難点は、全体的に天井高が低い(地階2220ミリ、1階2400ミリ、2階2340ミリ)ことだ。この日(12月2日)午前中に見学した三井ホームの「(仮称)MOCXIONモクシオン四谷信濃町」と同様、建築規制が厳しいエリア・立地条件であるためだ。
見学会が始まってすぐ、担当者らに「天井高は高くない」と話したら、「天井高には触れないほうがいいよ」と近くにいた記者が〝忠告〟してくれた。何のことだかとっさには分からなかったのだが、先日行われた野村不動産のスモールミーティングの質疑応答で、小生が「最近のマンションの質の劣化が甚だしい。天井高も低くなっている」と発言したことへの反駁だろうと思い、「住宅の質にとって天井高はとても重要な要素」とやり返した。
馬鹿馬鹿しくて書くのもためらわれるのだが、「天井高」と「高さ規制」について少し触れる。
居住空間を豊かにするのが最大のテーマであるはずで、デベロッパーもハウスメーカーも、そしてわれわれ記者も天井高に関心を払わなくなったらおしまいだ。
大和ハウスの「xevoΣ(ジーヴォシグマ)」だって、これまでの約2.7mを約2.8mに引き上げたではないか。同社グループのコスモスイニシアの分譲戸建てのリビングはほとんど3m以上だ。2億円前後の「グランフォーラム成城学園前」(4戸)は瞬く間に売れたが、2階リビングの最大天井高は3.7mだった。掃き出し窓をフラット化し、奥行き最大2.7mのバルコニーと一体利用できるのがヒットした。ポラスグループがどうして年間3,000戸以上の分譲戸建てを販売できるのかといえば、1階のリビング天井高は2700ミリを標準とし、差別化を図っているからだ。他社も追随するようになってきた。
小生は一方で、建築物の絶対高さ規制は問題があり、公開空地を設けたり緑被率を高めたりした住宅は規制を緩和し、容積も割り増しすべきという主張を繰り返し行っている。「天井高」と「高さ規制」は表裏一体の問題でもある。
2013年以降のRBAホームページから検索すると、「天井高」は561件、「高さ規制」は94件ヒットする。これをやめたら記者としての死を意味する。
この記者の方へ一言。「ペンを捨てて現場へ出ろ」と。ユーザー目線に目をつぶり、業界に手すり足すりなどしていたらそのうち捨てられる。
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以下は付録。取材を終え、食事をしようと池ノ上駅近くの間口2間くらいの小さな店に入った。先客が一人。
何と店内の正面の壁にスペインの大きな地図が貼ってあり、棚や壁にはびっしりとアンティークな置物などが飾られているではないか。これはきっとスペイン好きのオーナーが経営している店で、〝ブラボー〟と発するのは危ないと判断し、恐る恐る「ご主人はスペインファン? 」と声を掛けたら、「いや、日本を応援しましたよ。サッカーはよく分からないが、スペインは昔、ギターを弾いていたので…置物はほとんどもらったもの」と話した。世田谷区には「沢」がつく地名が7つあることから「七沢」と呼ばれ、「池ノ上」はもっとも高台に位置し、かつての繁華街だったことも聞いた。
店の名前は「ペキーノ イ アミーゴ(pequeño y amigos)」。御主人は80歳とか。ワイン3杯とチョリソーでお勘定は2,000円。1時間半も歓談させてもらったのでものすごく安い。何かにつけ意見は一致した。改めて行ったら、アランフェス協奏曲などを弾いてもらえるかもしれない。了解を得られたので店舗内の写真を紹介する。
スペインが優勝したときのメンバーとか
店内
パピルスで描かれた絵画
「希」に見る設計依頼1か月で来場100組超 大和ハウス 富裕層向け「MARE」(2021/6/2)
億万長者の人数&所得割額が激増 過去最多 アッパーミドルも漸増 東京都港区(2022/11/26)
一頭地を抜く コスモスイニシアの都市型戸建て「田園調布 桜坂」「成城」(2018/4/20)
大日本山林会 「これからの『林業政策』を問う」シンポジウム(2014/3/14)
今年は「国際森林年」主要32社の社有林 所有・利用状況(2011/1/24)
林経協が総会 森林・林業再生へ流通・需要拡大部会設置(2011/5/12)
坪59万円で剛木造の新商品発売&総額5億円の光熱費応援キャンペーン アキュラ
「超空間の家 スマート」
アキュラホームグループは剛木造の新商品「超空間の家 スマート」の販売を開始するとともに、発売を記念して「総額5億円分光熱費応援キャンペーン」を11月19日~12月25日に実施する。
「超空間の家 スマート」は、5回にわたる実物大耐震実験などの研究成果や営業体制、設計体制、建材の商流などの合理化により27.6坪2階建てで税抜 1,460 万円(税込1,606万円)から販売するもの。
応援キャンペーンは発売を記念し、業績も好調なことから実施するもので、1等は太陽光発電システム3kw(35年間319万円相当の光熱費削減)、2等は太陽光発電システム1.125kw(35年間175万円相当の光熱費削減)など総額5 億円分の光熱費を軽減し家計を応援する。
風致地区で最高ブランド「ザ・プルーヴ」 野村氏&酒井氏共演 ポラス「船橋海神」
「ザ・プルーヴ船橋・海神」
ポラスグループ中央住宅が12月上旬に分譲する「ザ・プルーヴ船橋・海神」を見学した。先に紹介した「BASE88@NISHIARAI」と同じ4棟現場だが、コンセプトが全く異なる。こちらは同社が立ち上げたばかりの最高級ブランド「ザ・プルーヴ」の第二弾。現地は第一種低層住居専用地域の風致地区。船橋市にこのような住宅地があることを全然知らなかった。価格は8,000万円超だが、価格に見合う価値はあると見たがどうだろう。
物件は、JR・東武線船橋駅から徒歩14分(京成本線海神駅から徒歩5分)、船橋市海神4丁目の第一種低層住居専用地域・風致地区(建ぺい率40%、容積率80%)に位置する全4棟。土地面積は141.87~181.25㎡、建物面積は105.98~111.16㎡。予定価格は8,280万~8,480万円。建物は完成済み。引渡予定は2023年3月23日。施工はポラテック。構造は木造2階建(在来工法)。分譲開始は12月上旬の予定。
現地は東下がりの傾斜地。従前は1宅地だったことでも分かるように、船橋市内屈指の高級住宅街で、千葉県下には数えるほどしかない風致地区なのが最大の特徴だ。
「ザ・プルーヴ」は、千葉県内のポテンシャルの高いエリアに特化した最高レベルのブランドで、第一弾の「南流山」に続く第二弾。
建物は、同社戸建分譲設計本部設計一部部長・野村壮一郎氏と同部営業企画設計課係長・酒井かおり氏がそれぞれ2棟を設計。全窓樹脂サッシ、リンナイのガス衣類乾燥機「乾太くん」が標準装備なのは共通だが、それぞれコンセプトテーマを違えて訴求力を高めている。
1号棟(左)と2号棟
3号棟(左)と4号棟
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海神駅に降り立つのは初めてだった。現地は駅から徒歩5分だから、近所の人に聞けばすぐ分かるはずと高を括り、5~6人に聞いたが、誰一人として近接する「海神東公園」の位置を知っている人はいなかった。
ために、行きつ戻りつすること30分。おかげで「海神4丁目」がどのような場所なのかを自らの足で確認することができた。駅からの比高差にして数mか、敷地が100坪くらいありそうな豪邸がたくさん建っていた。敷地内にクロマツなどが植えられていることから、昔からの邸宅街であることもわかった。
最初に見学したのは、敷地面積が約181㎡の敷延地の2号棟だった。設計担当は野村氏。1階のLDKに足を踏み入れた途端、ナグリ調仕上げの「クールジャパン スリム」(朝日ウッドテック)のアクセント壁が目に飛び込んできた。このほかにも床や壁、柱、階段ステップに本物の木や挽き板が採用されており、全体のカラーリングの白とグレーによく馴染んでいた。
野村氏が手掛けたもう一つは敷地面積が約142㎡の公道に面した4号棟。玄関を入った真正面のリビングドアを開けるとキッチンが見えたのにはやや驚いたが、LDKの提案はさすがというべきか。天井シナ合板張り、小上がり畳コーナー、春日部市の伝統手工芸品「桐箱」などが採用されていた。
酒井氏が手掛けた敷地面積が約181㎡の敷延地の3号棟は、オーソドックスなデザインだが、対面の2号棟の壁面などの借景を額縁絵のように取り込んでいるのが印象的だった。写真を見ていただきたい。樹脂サッシの白の枠と網戸の黒い枠は開け閉めによって構図が変化するのがとても面白い。時にはモンドリアンのような、あるいはビュッフェのような。
もう一つの酒井氏の建物は、公道に面した1号棟。広い土間スペースがあり、リビングドアを開けると、これまた記者が好きなヘリンボーン仕上げの床が目を射た。(欲を言えば1階を全てヘリンボーン仕上げにしてほしかった。コストの問題か。記者が圧倒された「サンウッド青山」の記事を添付する。オプション仕様だったが、高級家具や楽器に用いられる最高級の「マダガスカル・ローズウッド、パリサンダー」がLDK、居室の床全面に使用されていた)
2号棟
3号棟
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4戸とも商品企画、設備仕様レベルは極めて高いとは思うが、いかんせん「海神」の風致地区が消費者にどのように評価されているのかさっぱりわからない。
昨年見学したポラスガーデンヒルズ「佇美の家~たびのいえ~市川・菅野」(16棟)も「東の鎌倉」と称された市川市菅野の高級住宅街だったが、価格は6,000万円前後だった。今回は2,000万円以上も高い。
興味深いのは、お二人の共演だ。一番人気の住戸がどれになるか。酒井氏が勝ったら、野村氏の面目丸つぶれだろうが、記者は2号棟が一番好きだ(好みは人それぞれ)。結果は公表されるのか。
両氏にお願いだ(他の方でもいいのだが)。和室床にはナグリ仕上げの桐材を使用し、提案していただきたい。絶対に受けると思う。
一石三鳥、四鳥 ビルトインガレージ採用 狭小地の課題解消 ポラス「BASE88」(2022/11/19)
一石三鳥、四鳥 ビルトインガレージ採用 狭小地の課題解消 ポラス「BASE88」
「BASE88@NISHIARAI」
ポラスグループ中央グリーン開発の「BASE88」シリーズ第3弾「BASE88@NISHIARAI」を見学した。道路側の整形地2棟、その奥の旗竿地2棟の4棟の現場だが、4宅地で協定道路を設定し、自転車も置けるビルトインガレージを4棟の中間部分に採用することで、街に対する緑視率を高め、約75㎡の公開空地(コモンスペース)を編み出すなど、一石三鳥、四鳥のプランが光る。
物件は、東武スカイツリーライン・東武大師線西新井駅から徒歩16分、東武大師線大師前駅から徒歩10分、足立区西新井2丁目の第一種住居地域(建ぺい率60%、容積率200%)に位置する全4棟。土地面積は94.23~133.40㎡(共同利用地約8~28㎡含む)、建物面積は105.24~112.90㎡、価格は5,980万~6,480万円。構造は木造2階建(在来工法)。施工はポラテック。
この種の分譲戸建ては、道路側に4~6台のカースペースを設けるのが通常だが、地面をコンクリで固めるので植栽空間が減り、それぞれ玄関も離れていることから居住者同士のコミュニケーションも生まれづらい難点がある。
その難点を解消したのがこの物件の最大の特徴だ。まず、旗竿地の2住戸のそれぞれの接道部2m+2mと、整形地の敷地のそれぞれ50cmを協定道路(地役権設定)とすることで幅員5mの道路幅を確保。そして、自転車が置けるビルトインガレージ(建築基準法では延べ床面積の5分の1を上限に容積率に算入しない)を4棟の中央に配することで、前面道路側に植栽空間を確保。さらに各住戸の玄関が近くなることから、コミュニケーションが自然と生まれるようにしている。ガレージは照明・コンセント付きなので、車を所有しない人は多目的に利用できるのも〝味噌〟だ。
同社ブランディング課マネージャー・杉山秀明氏は、「自転車にフォーカスした『BASE88』ブランドの第一弾として『練馬光が丘』の34棟を分譲したところ好調裡に完売。2021年のグッドデザイン賞も受賞した。今回は、自動車にもチャレンジした。奥の住戸から売れたことからも、商品企画は間違いではなかったことが確認できた。狭小敷地の新しい開発手法として今後も供給していく。『BASE88』の“88”には、車や自転車の車輪のように見える“8”、横にしたら“∞無限大”にもなり、パパ”とも”母”とも読め、末広がりの”八”でもある」と語った。
同社設計部企画設計課課長・河内忠夫氏は、「ビルトインガレージにするのは、車を持っていない人のことを考えると抵抗感もあったが、通常3m弱のガレージ幅を3.1mに広げることで自転車も置けるようにし、街に対して緑視率を高めることができた。敷地延長の奥の住戸は2階リビングとすることで日照を確保できた」と話した。
河内氏(左)と杉山氏
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同社広報から取材の誘いを受けたとき、前期(2022年3月期)の分譲戸建ての契約戸数が3,050棟もあり、本拠地の西新井の4棟現場が好調だからといって、取材する価値があるのかと迷ったのだが、現場取材には基本的にNOと言わないので受けることにした。
大正解だった。広々とした公開空地が設けられているのを見たとたん飛び上がらんばかりの感動を覚えた。もう7年前だが、細田工務店の「グローイングスクエア杉並成田西グランフィールズ」を取材したとき、車庫・玄関スペースとは別に扉付きの自転車置き場が設けられていたのを思い出した。先日は100坪も敷地があるのに、植栽どころか雑草も映えないように地面はコンクリで固められていた分譲戸建てを見たばっかりだ。
ポラスグループも物件によっては自転車置き場を設けるケースもあるようだが、今回のように自転車と自動車に焦点を当てた企画は初めてという。様々な工夫を凝らすことで、狭小住宅地の難点・課題を一挙に解決している。
自転車を雨ざらしにしなくて済むことでサビなどの傷みを防ぐことができ、いたずらや盗難のリスクも軽減できる。車や自転車を利用しない人は物置など多目的用途に使える。
他にも利点はある。外からの視線を気にして道路側のリビングはカーテンを閉めっぱなしの家庭は多いはずだが、今回の物件の南道路に面した2棟の1階リビングは高窓とし、掃き出し窓はそれぞれオープンスペースに面した東側と西側に設けていることだ。これで採光・通風も確保できる。
価格差はそれほどないのに、道路側の住戸より旗竿地の奥側の住戸が先に売れたということでも商品企画の確かさが証明されている。車を持たない層が増えているので、これは受けるはずだ。このような取り組みを行うから年間3,000棟超を販売できるのだろうとも思った。
課題も見えた。緑被率・緑視率の視点からすれば、いっそのこと境界ブロックも取り払い、植栽帯にしたらどうか。雑草をどうするかの問題もあるが、芝生より丈夫で雑草を寄せ付けない特徴がある「ダイカンドラ」はいいと思うが、どうだろう。
整形地1号棟のプランENR53101.pdf 旗竿地25号棟のプラン ENR53102.pdf
旗竿地3号棟のプラン ENR53103.pdf 整形地4号棟のプラン ENR53104.pdf
敷地は100坪もあるのにぺんぺん草も生えない南栗橋駅圏の調整区域の開発(デベロッパーもひどいが久喜市の責任はより大きい)
敷地100坪 建物30坪の平屋 ミラースHDの戸建て「南栗橋」企画ヒット
「レーベンプラッツ南栗橋」
MIRARTHホールディングスグループのレーベンホームビルドが分譲中の木造平屋建て「レーベンプラッツ南栗橋」(16区画)を見学した。10月1日(土)から販売を開始しており、第1期8戸が完売するなど好調なスタートを切った。
物件は、東武日光線南栗橋駅から徒歩10分~11分、久喜市北広島字下沼廻の市街化調整区域(建ぺい率60%、容積率100%)に位置する全16区画。11月中旬に販売開始する第2期4次(戸数未定)の土地面積は300.71~340.23㎡、建物面積は100.20~101.44㎡、価格は未定だが4,000万円前後になる模様。竣工予定は2023年1月~2月。施工はレーベンホームビルド。建物は木造1階建て(木造軸組み+パネル工法)。
現地は、都市計画法第33条第4項の規定に基づき調整区域での開発が許可されたもので、条例で最低敷地面積は300㎡以上と規定されている。周辺は戸建て住宅街。
主な商品企画は、ポーチは雨でも濡れないよう庇付きで、玄関ドアは1200ミリの親子ドア。シューズインクロークのほか手洗いスペースや土間スペースを設け、食洗機、LDK床暖房などが標準装備。同社グループのオリジナルウォーターシステム〈ルイックプロジェクト〉を導入。キッチンだけでなく家中全ての蛇口から浄活水が利用できる「たからの水」を採用。「たからのミラブルシャワー」も設置。リビング天井高は最大4.9m。キッチンは回遊性のあるアイランドキッチン。床、壁などは木目調仕上げ。居室はライフスタイル・サイクルによって変更できようにしている。
同社戸建営業事業部戸建営業部戸建営業1課係長・梅崎裕二氏は「街をつくり植栽もふんだんに盛り込こんだ敷地が100坪超の平屋という商品企画が高い評価を受けています。来場者約100名のうちマンションと戸建てからの住み替えがベースで4割に達しています。地元以外の春日部市、越谷市、川口市など周辺エリアの反響も多いのが特徴」と語っている。
モデルハウス
最大天井高4.9mのLDK
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同社グループの分譲戸建てを見学するのは3度目だった。2度目の「レーベンプラッツ大泉学園」(27戸)は素晴らしかったが、今回も商品企画レベルの高いのに驚いた。
南栗橋駅圏ではトヨタホーム、東武鉄道、久喜市、イオン、早稲田大学の5者連携による約16万㎡の「BRIGE LIFE Platform構想」ではレベルの高い全172区画の戸建て分譲も行われているので、見学する前は期待より不安のほうが大きかった。
駅から現地に向かう住宅街は悪くないのだが、メインストリートの道路の街路樹は手足をもぎ取られ、葉っぱを付けることも紅葉することも許されず、墓標のような無残な姿をさらけ出していた。
さらにまた、現地手前の分譲戸建ての敷地はコンクリで固められ、樹木は1本も植えられておらず、緑といえば人工芝のみ。建物も出隅入隅などほとんどない総二階のデザイン性に乏しいものだった。畜舎だってもっとましではないかと思ったほどだ。
この時点でレーベンのレベルが低かったら記事にするのをやめようと決めた。見学は、同業の記者の方の誘いだったのだが、うかつに受け、青山一丁目駅から1時間半かけたのを悔やんだ。
ところが、どうだ。同社のモデルハウスの幟の先に本物の石や低中木で植栽された建物が目に飛び込んできた。瞬時に、その前に見学したトヨタホームの建物とほとんど遜色ないと判定した。
梅崎氏から、トヨタホームの戸建ての価格が5,000万円と聞いて〝なるほど〟と思った。価格が同じなら勝てるはずがないし、かといって質を落とせば消費者を満足させることはできない。調整区域・開発規制を逆手にとって敷地を100坪、建物を30坪の平屋とし、かつ水準以上の設備仕様とし、価格差を1,000万円にすれば互角以上に戦える。建物が完成していないのに第1期8戸が完売したのに驚いたが、納得もした。住宅は平屋がいいに決まっている。
余談だが、ミラースHDのマンションは、大手デベロッパーの単価の高い駅前などの物件と、少し距離を置いた物件をあえてぶつけるケースが少なくない。大手の物件には手が届かない需要層を取り込む戦略だ。
高さ6mくらいで強剪定されていた街路樹(ケヤキだそうだが、こんなみじめな樹形のケヤキはそうない。素晴らしい「BRIGE LIFE Platform構想」との整合性はあるのか)
紅葉も許されないのか
現地近くの分譲戸建て(左)と既存の住宅街
敷地は広いのだが、雑草すら生えることが許されない分譲戸建て(奥に見える緑は人工芝)
「桐の街・春日部」匠の技を未来に繋ぐ ポラス+地元企業連携 建材・インテリア開発
「フレーベスト新河岸WA plus」
ポラスグループは10月24日、〝桐の街〟として知られる春日部桐箱工業協同組合や建材メーカー・厚川産業と協働・開発した住宅用内装用無垢桐パネル「KIRINOKA」の活用を進めるとともに、伝統的工芸品をインテリア雑貨「KIRIHAKO」としても商品化し、同社ショールームなどで販売していくと発表。同日、分譲戸建て「フレーベスト新河岸WA plus」のモデルハウスに設けた「アンテナモデル」をメディアに公開した。
桐は、軽くて断熱性が高く、調湿性に富み、防虫効果もあることから桐箪笥、桐箱などとして利用されてきたが、「表層が柔らかく、傷がつきやすい」などの理由から国内建材メーカーは建材としてほとんど扱ってこなかった。
一方で、春日部市では、日光東照宮の造営に携わった匠が市内に住み着き、桐を使った製品を作っていたことから「春日部桐箱」として全国に知られるようになり、1980年代のバブル期には贈答品のパッケージとして重宝がられた。しかし、その後、1990年代の容器包装リサイクル法や環境意識の高まりの中、桐箱は過剰包装として生産量が減少。春日部桐箱工業協同組合が設立された昭和60年(1985年)当時、約50社あった桐箱業者は現在10社まで減少している。桐箱の生産は全国で行われているが、春日部以外では組織化されておらず、職人の高齢化、後継者難、価格決定権がないことなどから廃れる一方とされている。
こうした状況を打破しようと、伝統手工芸品「桐箱」の住空間への転用と地域産業の活性化のために、10年前から同社グループと春日部桐箱工業協同組合、厚川産業が研究を進め、浮造りや多重塗装など試行錯誤を重ね、無垢桐パネル「KIRINOKA」として開発。2021年度グッドデザイン賞を受賞し、今年度は200棟を超える分譲住宅に採用している。
「KIRIHAKO」は、「KIRINOKA」のテイストに合わせてインテリア雑貨として開発したもので、「Kinu-hako「Iro-hako」「Yuki-hako」と名付けテーブル、アロマペット、貯金箱、蛇腹の箱、アートパネル&フレームとして、同社のショールーム、大手通販サイトなどで販売していく。
ポラスグループ中央住宅戸建分譲設計本部設計一部部長・野村壮一郎氏は「『KIRINOKA』は年間200~300棟で採用していく。『KIRIHAKO』はインテリアとしていろいろなパターンで作れるので桐の価値を高めることができる」と語った。
春日部桐箱工業協同組合理事長で、明治31年創業の厚川産業代表取締役・厚川秀樹氏は、「桐は成長が早く30年で直径50cmくらいになる。わが国の桐の生産地としては会津、岩手が知られるが、国有林が多く、自然林はなくなってきており、中国や北米産が中心。我が家は床材に桐を採用しており、暖かくべたべたしない。ネコも喜ぶ(引っ掻けがいがあるためか)。ただ、施工が難しく畳材と競争するのには課題もある」と語った。発表会に臨んだ同社常務取締役・厚川雅信氏については「もう代替わり、来年度からは社長」と社長交代を明言した。
「フレーベスト新河岸WA plus」は、東武東上線新河岸駅から徒歩11分、川越市大字藤間字開発に位置する全41戸。敷地面積は110.03~154.82㎡、建物面積は95.63~106.61㎡、価格は3,980万~4,980万円。8月から21戸を販売開始しており、現在、14戸を成約するなど好調に推移している。
モデルハウス見学会(手前の小物、壁は桐材、床はシナの挽き板)
塗装は4種から選べる
「KIRIHAKO」
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若い人はどうか知らないが、小生などは桐は日常だった。嫁入り道具として桐箪笥をトラックに載せて嫁ぐのは女性の夢だったし、引き出しを締めると隣り合わせの引き出しが開くのを楽しんだものだ。母親の宝、自分の分身のへその緒は桐箱に収められた。
大きくなっても、一時は桐壺が最高ではないかと「通い婚」を夢見し、きれいな女性にキリキリ舞いし、結局は裏キリにあい、キリ捨てらてばかりいた。それでも、キリの摩周湖は数少ない持ち歌の一つだった。今でも江戸キリ子で酒を飲む。
そんな桐が使われなくなり、ミクロの世界で生きる匠の技が廃れるのは見るに忍びない。今回の取り組みが花開くことを望みたい。
その可能性はかキリなく大きいと見た。厚川氏が自宅の床材に桐を採用していることを前段で紹介した。野村氏もまた「最初、厚川さんから提案されたのは実は床材だった」と打ち明けた。ナイスが商品化した「表層圧密ギュッド」のように圧縮すると、桐本来のよさが失われるので圧縮材は不向きのようだが、柱の傷で子供の成長を計ったように「傷をデザイン」することは可能なはずだ。
その可能性を証明することを一つ経験した。この日はとても寒く、モデルハウスは暖房がつけられていたのだが、コロナ対策なのか窓という窓は開け放たれていたのでその効果はなかった。
ところが、床材は同社の分譲戸建ての特長でもある挽き板が採用されており、その寒さの分だけ暖かく感じられた(小生のマンションはシート張り)。桐も同じであるはずだ。その差のテータもあるはずだ。
アンテナモデル内観
現地
見事な擁壁緑化 建ぺい40% 容積80% 全18棟のコスモスイニシア「尾山台」完成
「イニシアフォーラム尾山台」
全18棟が完成し、残り1棟となったコスモスイニシアの分譲戸建て「イニシアフォーラム尾山台」を見学した。昨年末に続く2度目の見学で、南西側の擁壁を緑生ブロックで緑化した外構が素晴らしい。
物件は、東急大井町線尾山台駅から徒歩12分~14分、世田谷区尾山台一丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率40%、容積率80%)に位置する開発面積約2,900㎡の全18区画。先着順で分譲中の住戸(1戸)の土地面積は140.02㎡、建物面積は103.22㎡、価格は15,480万円。建物は2022年5月竣工済。構造・工法は木造(在来軸組工法)・2階建て。施工は西武建設(12棟)と細田工務店(6棟)。
工事は第1工区(5区画)と第2工区(13区画)に分けて行われており、第1工区の第1期1次5区画は昨年末に分譲され、11組が申し込むなど人気となった。第2工区は今年7月から分譲開始され、残りは1億5,480万円の1戸のみ。 これまで来場者は約180組。
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物件特性などは昨年末の記事を参照していただきたい。今回の取材の目的は、最初に見学したときは工事中だった南西側の擁壁がどのように整備されたかを確認することにあった。
写真を見ていただきたい(プロが撮影した写真は同社から送ってもらうようになっており、来週火曜日あたりには差し替える予定)。建基法上では地階となる高さにして2~3mはありそうな擁壁は緑生ブロックによって見事な緑化が図られている。来場した人もその見事さに驚くようだ。
現在分譲中のモデルハウスも素晴らしかった。1階部分のリビング(約20畳大)は周囲の建物の2階部分に当たり、しかも南側は坂下に当たるので広々とした眺望が広がり、天気のいい日は富士山も眺められるという。2階の主寝室の天井高は約3.5メートルあり、テレワークなど多目的に利用できる洋室(約5畳大)と浴室の乾燥機能と一体的に利用できるよう洗面室に設置されていた物干しポールの提案がいいと思った。
また、モデルハウスの観葉植物は全て本物だったのが嬉しい。読者の皆さんは高額だからと思うかもしれないが、同社はすべてではないが、モデルルーム・モデルハウスの観葉植物は本物を使っている。同社分譲事業部分譲一部プロジェクトマネージャー・藤田裕子氏は「わたしはフェイクは好きではありません。本物をスタッフが水遣りなどを行うと好きになるものです」と話した。
リビング
キッチン
多目的ルーム
建ぺい40%・容積80%の風致地区 雙葉も近接 コスモスイニシア「尾山台」人気(2021/12/22)
初期費用無料 太陽光PPAサービス導入第一弾「杉並区宮前PJ」着工 野村不
野村不動産は9月27日、東京電力エナジーパートナーが提供する太陽光PPAサービス「エネカリプラス」を同社の戸建て分譲シリーズ「プラウドシーズン」に導入する第1弾「(仮称)杉並宮前プロジェクト」を着工したと発表した。
PPAは、Power Purchase Agreement(電力販売契約)の略称で、顧客がPPA事業者に敷地や屋根などのスペースを提供し、PPA事業者が太陽光システムなどの発電設備の設置と運用・保守を行うもの。
「エネカリプラス」は、初期費用無料で太陽光発電設備を設置させてもらい、毎月定額で利用できる東電EPの定額機器利用サービス。余剰電力は東電EPへ売電する。
同社は今後、同様のスキームで年間300戸相当への導入を予定しており、その総発電出力はメガソーラー発電と同規模の1,000kWとなる。
物件は、JR荻窪駅から徒歩19~20分、杉並区宮前3丁目に位置する全16戸。敷地面積は90.00~107.89㎡、延床面積は91.50~106.06㎡。設計・施工は細田工務店、三菱地所ホーム。
「今期分譲戸建て1,600戸の8割はZEH仕様」本間部長 大和ハウス 記者レクチャー
大和ハウス工業は9月15日、9月下旬に発表される基準地価を前に、記事を書くのに参考となる「記者レクチャー会〈2022年基準地価〉」を開催した。記者は別の取材のため録画で視聴した。
分譲マンションについては同社マンション事業本部事業統括部部長・角田卓也氏が、分譲戸建てについては同社住宅事業本部事業統括部分譲住宅グループ部長・本間生志氏が、物流事業についてはDプロジェクト推進室上席主任・藤田渉氏が、オフィス・ホテルについては流通店舗事業本部事業統括部開発事業部開発グループグループ長・和田康紀氏がそれぞれ約10分間、事業環境などについて説明した。
角田氏は、首都圏マンションは引き続き好調に推移し、DINKSやDEWKS、富裕層の資産性を重視する旺盛な需要を背景に、販売価格も引き続き上昇しているとした。近畿圏や地方都市でも首都圏ほどではないが、再開発・複合開発などに対する需要の高まりがみられると説明した。
このような需給関係から、仕入れ競争も激化し、マンション用だけではなく賃貸用として取得するデベロッパーとの競合もあり、良好な適地には各社が群がり入札になると話した。
本間氏は、今年度上半期は在庫減少が要因で低調に推移したが、下半期はZEH仕様比率を大幅に高め、人気の家事シェアタウンなどを積極的に分譲すると話した。在庫(販売物件)が減少(最小期2,800区画⇒現在は3,400区画)したことから、今年設けた82名の用地企画マネージャーを通じて仕入れを強化し、3月末には年間在庫数(販売数)4,000区画に戻すという。
今後の地価動向については「全く読めない。いつ下落してもおかしくない」と警戒感も強めている。
物流市場について藤田氏は、EC・通信販売の継続進展、コロナ禍によるEC利用の定着・決済環境の充実などからBtoC、EC市場規模は順調に拡大し2026年度は29兆円を超えると話した。また、消費形態の変化と冷凍技術の進化に伴う冷蔵冷凍倉庫需要の増加などから物流適地が不足しており、好立地の物流用地は高値で取引されていると説明した。
オフィス・ホテルマーケットについて和田氏は、東京・大阪・名古屋圏のオフィスはテレワークやサテライトオフィスなど働き方の多様化により、乱立する都心のオフィスビルは波乱含みとした。
ホテルはコロナ禍で固定賃料の大幅減額や固定賃料が負担となり撤退を余儀なくされるホテルも見受けられ、本格回復は2024年と読み、これからは、売上に応じた変動賃料やホテル運営委託が主流になってくるとした。ホテルオペレーターの質(運営力 ・組織力・サービス・財源)が求められる時代になったと語った。
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これまでもそうだが、同社の記者レクチャーは非常に面白い。今回も4氏の説明は40分くらいで、残りの約50分間を質疑応答に割いた。そのため、メディアの質問が相次いだのだが、ハウスメーカー担当記者の関心事でもあるのだろうか、分譲戸建てに関する質問が多かった。
意図したことかどうかは分からないが、本間氏が質問を誘発するような本音の話をしたからでもある。本間氏は冒頭、各地区別の分譲戸建ての表データを示し「これは未公表資料ですので、転載は控えていただきたい」と前置きしながら、「赤字が目立ちかっこ悪いのだが、これが実態。今年度上半期の分譲戸建ては低調に推移した。分譲は〇%、土地は〇%減少した(戸数のことか)。大幅な在庫減が要因…価格は建売住宅が〇万円、戸建ては〇万円上昇した。要因は建売住宅はZEHを推進しており、土地は一等地戦略を取っているから(金額的には小幅減少にとどまったということか)…下期にはZEH比率を飛躍的に高める」などと具体的な数字を交えながら話したからだ。
(本間さん、ご安心ください。わたしのパソコンは表の映りが鮮明ではなく、ほとんど読めませんでした。転載のしようがありません。ただ、上記に書いたように、本間さんが話されたことのうち数字は〇にしましたが…これは書いてよろしいのでしょうか)
当然のように、この件にメディアは反応した(本間氏の計算通りか)。本間氏は具体的な数値を示し丁寧に対応した。小生もそこまで赤裸々に〝内幕〟を話したのには驚いたのだが、それは同社だけでなく戸建て業界全体の実態を話したのに過ぎない。この件についてはこれ以上触れない。
本間氏はポータルサイトによる反響が大幅に減少していることにも言及したので(検討者の知りたいのはセカンドオピニオンだ。ポータルサイトにはこれが全然ないのが課題だと記者は思う)、〝一強〟サイトの東京都の新築戸建てを検索した。約11,000件がヒットした。東京都の令和3年の分譲住宅の着工戸数は48,610戸だ(マンション31,221戸、戸建て17,389戸)。全着工戸数に占めるこのポータルサイトの捕捉率がどれくらいか分からないが、年間着工戸数の63%が分譲中というのはあり得ない数字だと思うが…。
そして「ZEH」で検索しようと思ったら、その項目はない。仕方なく「長期優良住宅」で検索したら503件だった。
「ZEH」でヒットしないのは、分譲戸建てのZEH比率は微々たるものであるからだろう。国土交通省のデータによると、2019年度の分譲戸建ての着工戸数146,154戸のうちZEH住宅は1,901戸、わずか1.3%しかない。年間400~500戸をコンスタントに供給している三井不動産レジデンシャルはZEHに取り組み始めたばかりで、2025年度までに50%という目標を公開している。野村不動産もこれからではないか。
なので、同社がZEHを標準仕様にするのは大賛成だ。本間氏は「時代に沿って先頭を走ろうと舵を切った。今期計上する約1,600戸の分譲戸建てのうち8割はZEH対応。5年後には100%にする」と話した。先頭を走るから価値がある。後ろからついていくのは誰だってできる。依拠すべきは良質住宅を求める顧客だ。価格が多少上昇しても、ZEHの魅力を丁寧に説明できれば購入検討者はみんな買いあがる。同業の積水ハウスは分譲戸建てもZEHが標準仕様と聞いている。
首都圏マンションはどうかというと、23区内は軒並み坪300万円以上で、駅近(どれほどの価値があるか分からないが)は400万円、500万円以上だ。20坪で1億円の相場となりつつある。神奈川、埼玉、千葉だって主要都市は坪250万円以上で、300万円を突破してきている。ZEHマンションは相場より坪単価(総額ではない)は1、2割高くてもみんなよく売れている。分譲戸建てをZEH化することで分譲価格が上昇しても、マンションにしたら1坪くらいではないか。
参考までに、年間4万戸以上販売する飯田グループホールディングスの2023年度第1四半期決算を紹介すると、分譲住宅の販売棟数は9,266戸(前年同期比9.5%減)で、平均価格は3,007万円(前年同期比5.0%、143万円増)に上昇。建物原価、土地原価上昇分を販売価格に反映しきれずに、1棟当たりの売上総利益額は35万円減少した。2年前の1棟単価は2,656万円だったので、この2年間で351万円上昇している。同社グループでZEH住宅を分譲しているのは東栄住宅のみで、同社は今後すべてZEH化すると打ち出した。