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 国土交通省は8月31日、令和4年7月の新設住宅着工動向を発表。総戸数は前年同月比5.4%減の72,981戸で、3か月連続の減少。内訳は、持家が22,406戸(前年同月比14.1%減、8か月連続の減少)、貸家が29,668戸(同1.5%増、17か月連続の増加)、分譲住宅が20,612戸(同4.0%減、先月の増加から再びの減少)となった。

 分譲住宅の内訳は、マンションが8,053戸(同11.7%減、先月の増加から再びの減少)、一戸建住宅が12,461戸(同1.8%増、15か月連続の増加)。分譲マンションは首都圏、近畿圏、中部圏とも2ケタ減となったが、その他は25.2%増と大幅に増加した。

 首都圏マンションは3,532戸(同12.8%減)で3か月連続減。都県別では東京都が2,291戸(同-26.5%減)、神奈川県が824戸(同45.1%増)、埼玉県が32戸(同83.5%減)、千葉県が385戸(同127.8%増)。1~7月では、首都圏全体は29,149戸(同10.9%)で、東京都が24.7%減、神奈川県が5.4%減となり、埼玉県が17.6%増、千葉県が49.0%増となっている。

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 持家の着工減が止まらない。1~7月では145,571戸(前年同期比9.0%減)となっており、分譲住宅の148,857戸(同3.7%増)を下回っている。このまま推移すれば、2006年(平成18年)の持家358,519戸、分譲住宅379,181戸以来16年ぶりに分譲住宅が持家を上回る可能性が高まった。

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 一般社団法人優良ストック住宅推進協議会(スムストック)は8月31日、総会後の記者会見を行い、2021年度の会員10社の成約件数は前年度比3.3%減の1,858棟で、累計成約数は15,757棟に達し、スムストック住宅販売士は累計7,460名と着実に増加したことなどを報告。

 会員10社の戸建てストックのうち市場に流通した11,700棟のうちスムストックが仲介した物件数は1,858棟で、捕捉率は16%(前年は17%)であることから、引き続き「20%以上」を目指すと発表した。

 このほか、スムストックの2021年度の買取再販成約件数は248件で、前年度の154件から大幅に増加している。安心R住宅の一戸建てリフォーム提案148件のうち95.3%がスムストックになっている。

 堀内容介会長(積水ハウス代表取締役 副会長執行役員)は、住宅生産団体連合会が先に国土交通省に要望した来年度税制改正に触れ、「買取再販住宅に新築住宅と同等の税制を適用するとか、ZEHリフォームを補助対象に追加することなどが実現することに期待している。捕捉率を伸ばすためにはWebの改善も必要」などと語った。

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 この日の記者会見では、捕捉率に関するメディアの質問が相次いだ。スムストックの会員は旭化成ホームズ、住友林業、積水化学工業、積水ハウス、大和ハウス工業、トヨタホーム、パナソニックホームズ、ミサワホーム、三井ホーム、ヤマダホームの10社だ。

 わが国を代表するハスウメーカーばかりなのに、捕捉率が伸びないのにハウスメーカー担当記者の方もいらだちを覚えているからかもしれない。小生もスムストック応援団の一人ではあるが、現状のままでは捕捉率をアップさせるのは至難の業だと思う。〝勝てない争い〟はやらないほうがいいとすら考えている。

 スムストックの取り組み自体は素晴らしい。査定価格を土地価格と建物価格に分けて提示するのは画期的なことだ。しかし、購入検討のユーザーの立場からすれば、新築も中古も住宅選好で重視するのは基本的には価格、環境、交通便の3Kであるのは今も昔も変わらない。住宅の建て方・構法はそれほど重要ではないし、売主・仲介会社がどこであるかも選好の決定的な要因にはならない。

 スムストックが必要なのは、査定の3つの原則である①住宅履歴データベースの保有②50年以上のメンテナンスプログラム③新耐震基準レベルの耐震性の保持と、(イ)スムストック住宅販売士が査定から販売まで行う(ロ)スムストック査定方式で査定する(ハ)建物価格と土地価格を分けて表示する-という3つの手法が売る側も買う側も納得できる適正な価格であることを分かりやすくWebなどで伝えることだ。売主にしたら「予想以上に高く査定された」であり、買う側には「価格は高いが、買いあがる価値がある」と決断させることだ。

 この観点からみると、スムストックの物件検索サイトは大手デベロッパー系のそれと比べ検索項目の多さ、情報の量・質とも圧倒的に見劣りすると言わざるを得ない。一つひとつ紹介はしないが、例えば仲介担当者。大手は顔写真付きでプロフィールを公開しているところが多い。スムストックはほとんど定型の問い合わせ先のみだ。

 これでは勝てるわけがないではないか。大手系と同じレベルに引き上げるのは容易ではない。リソースがケタ違いだ。取扱高、店舗数トップの三井不動産リアルティの2022年3月期の全国売買仲介取扱件数は41,183件で、店舗数は291店舗だ。スムストック10社の成約数1,858件の22倍だ。店舗数は10社が束になっても、仲介3位の東急リバブルの205店舗にも勝てないはずだ。これらを考慮すると、捕捉率16%というのはよく健闘しているとも受け取れる。

 同協議会も説明したように、オーナー向けに訴求を強化し、専属専任契約を結ぶことは可能ではないか。査定を行うスムストック住宅販売士は建築の専門的知見も有しているはずで、これは大きな武器になる。スムストックの成約価格は、近傍の同程度の物件と比較してはるかに高いことなども実証できるのではないか。

 この点に少し関連することだが、公益財団法人不動産流通センターには「宅建マイスター」「宅建マイスター・フェロー」「不動産コンサルティングマスター」認定・登録制度があり、現在、「宅建マイスター」は671名、「宅建マイスター・フェロー」は17名、「不動産コンサルティングマスター」は15,466名が登録されている。登録者は不動産総合情報サイト「不動産ジャパン」で検索することができ、様々な相談が受けられる。スムストック住宅販売士も同様に、その人材を生かす仕組みを構築できるはずだ。

 門戸を開放し、スムストック会員を増やすのも手ではないか。民間の顧客満足度調査ランキングでいつもトップになっている、プレ協の賛助会員でもあるスウェーデンハウスはどうして入っていないのか。

 このほか、分譲と注文双方を手掛ける一条工務店、ポラス、細田工務店、ナイスなども良質な住宅を供給しているし、全館空調システムの先駆けである三菱地所ホームや、デベロッパーの分譲施工実績が豊富な西武建設、エステーホーム、津田産業などもある。これらの会社も会員に加えてはどうか。

 そして、もう一つ、捕捉率とは直接関係はないが、顧客対応についても指摘したい。一般の売買仲介会社の営業担当者は、施工がどこであろうと分譲会社がどこであろうと全然関係ない。親会社A社が分譲した中古マンションを買おうとしている顧客に、「お客さん、近くにあるB社分譲した物件のほうがいいですよ」と平気でいう。また、市場価格よりかなり安い新築物件を勧めるときなどは「この物件の安いのは質が低いからです。中古並みと考えてください」などと説明する。

 スムストックはどうだろう。大和ハウス工業のグループの日本住宅流通などを除き、自社が施工、あるいは分譲した戸建ての売買仲介を行っているはずだ。〝お客さん、当社が施工したA物件より、競合が施工したB物件のほうがいいですよ〟などとは口が裂けても言えないはずだ。

 親会社から何のプレッシャーも感じない大手系仲介会社と、親会社からのプレッシャーを絶えず受けているスムストックの営業スタッフの差は計り知れない。捕捉率からの呪縛を解けばまた違った展開ができるのではないか。

 このことを質疑応答でも話したのだが、同協議会事務局統括管理部長・島津明良氏は、「会員間では垣根をなくす取り組みを開始した。近いうちに公表したい」と話した。どのようなものになるか注目したい。

スムストック2020年度は過去最高1922棟成約(捕捉率17%)(2021/8/28)

スムストック 市場での認知度・捕捉率が低いのはなぜ 劇的に上げる「武器」はあるか(2019/3/5)

スムストック・新会長に阿部俊則氏(積水ハウス会長) 「捕捉率20%に拡大したい」(2018/9/3)

「スムストックの認知度と販売士がカギ」 優良ストック住宅協議会・和田会長(2015/8/27)

 

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オンライン交流会(写真提供は同社)

ポラスグループの中央グリーン開発は828日(日)、好調のうちに販売を完了し、引き渡しも済ませた分譲戸建て「ONE for 30@清瀬」(30戸)の入居者交流会・防災イベントをメディアに公開した。イベントには7割を超える22組が参加した。

イベントは10時にスタート。オンラインでの顔合わせ会のあと、提供公園内でリアルの水消火器体験、煙体験などを清瀬消防署の協力のもと行なわれた。

91日は、1923年(大正12年)91日に発生した関東大震災にちなみ「防災の日」と定められており、その前後、830日から95日の1週間は「災害への備え」を啓発する「防災週間」として様々なイベントが行われている。

物件は、西武池袋線清瀬駅から徒歩18分・秋津駅から徒歩16分、清瀬市中里1丁目に位置する全30棟。土地面積は120.19139.25㎡、建物面積は91.08106.81㎡、価格は4,380万~5,480万円。昨年1015日から販売を開始し、今年411日に完売。

来場者は378組で、清瀬市が14%、朝霞市が10%、武蔵野市が7%など広域から集客できており、平均年齢は34.8歳。家族数は2.8人。約9割が一次取得層。

敷地の従前は畑で、中央に提供公園を設け、公園を取り囲むように住棟を配置し、ヒメシャラ、カツラ、シラカシ、レッドロビン、ナツハゼ、ミツバツツジなどのシンボルツリーを植栽、木のぬくもりを演出した商品企画が評価されたという。

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オンライン交流会(写真提供は同社)

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消火器体験コーナー

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煙体験ハウス内(甘い香りがしたが、このように全く何も見えない。実際は煙は1秒間に3m流れ、濃度にもよるが一酸化炭素中毒で倒れるそうだ。生き延びるには息をしないこと=30~40秒はできそうだ。これが生死を分ける)

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オンライン配信

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オンライン配信

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「写真? どうぞどうぞ。われわれ公務員には肖像権はありませんから」

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 この種のイベントは、記者が入居する大半がお年寄りの団地や、三菱地所レジデンスの「ザ・パークハウス 津田沼奏の杜」で経験しているが、今回は、当然ではあるが、未就学児が圧倒的に多いファミリー層で占められていたのに驚いた。

 そして、イベントを取り仕切っていたのが同社野球部の中村氏で、主砲の三瓶氏も参加しているのに嬉しくなった。半年で30棟を販売する企画力・販売力はさすがだ。

 RBAのホームページから「ポラス 中村」「ポラス 三瓶」で検索するとそれぞれ20本はヒットするはずだ。

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 令和元年版 消防白書によると、出火率(人口1万人当たりの出火件数)は、全国平均で3.0件/万人で、出火率を都道府県別にみると、もっとも高いのは島根県で4.5件/万人、以下、長野、高知の順。もっとも低いのは、富山県の1.6件/万人で、2位は神奈川県、3位は石川県。富山県は平成3年(1991年)以降連続してもっとも出火率が低い。小さいころから徹底した防災教育が行われているからだそうだ。

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ONE for 30@清瀬」

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ONE for 30@清瀬」

安否確認4764%に伸ばす 「ザ・パークハウス 津田沼奏の杜」防災訓練(2016/4/18

〝怪物〟対決は積水・生田に軍配 ポラス岩瀬は四球が命取り(2014/7/16

ポラス逆転勝ち 〝ノーコン〟の汚名返上 岩瀬1死球のみ完投 次があるオープンハウス(2019/6/13

 

 

 

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「Be GRACE(ビー・グレイス)南流山 紡ぐ家」(庭にフェンスがないのが分かる)

 ポラスグループの中央グリーン開発は8月9日、南流山の土地区画整理事業地内の分譲戸建て「Be GRACE(ビー・グレイス)南流山 紡ぐ家」のメディア向け見学会を行った。駅から徒歩8分の全4棟で、〝ウチ・ソト・トナリ〟を緩やかにつなぎ、さらに地域とのコミュニティにも配慮した意欲的な商品企画が光る。

 物件は、JR・つくばエクスプレス南流山駅から徒歩8分、流山市南流山2丁目流山都市計画事業木地区の第一種低層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率120%)に位置する全4棟。土地面積は約162㎡(49坪)、建物面積は約101㎡(30坪)~約116㎡(35坪)、価格は6,980万~7,480万円。施工はポラテック。構造は木造2階建(在来工法)。建物は完成済み。引渡予定は2022年11月10日。

 現地は、最低敷地面積が135㎡と定められている土地区画整理事業地内の一角で、戸建てやアパートなどか建ち並ぶ低層住宅街。保育園・幼稚園が徒歩3分、小学校が徒歩8分、中学校が徒歩5分。スーパーなどの3つの商業施設が徒歩10分圏。このほか3つの公園が徒歩10分圏内。

 全体敷地はそれぞれ6mの北側と西側道路に接道。4棟とも①タイルテラス・モダン和室付き②2階バルコニーを内側に取り込んだ主寝室-ランドリールーム-洗面-浴室一体型③中庭に面したリビングと多目的ルーム付き④上部吹抜けの広い土間付き-の個性的な異なるプランなのが特徴。

 主な設備は、2台カースペース、天井高2.7m×サッシ高2.2mリビング、階段ステップ15段、食洗機・浴室暖房乾燥機・床暖房・エコワン・電動シャッター・宅配ボックス、挽板・無垢材多用など。

 販売・申し込み状況は、5月27日から資料請求を受け付け、これまで反響は約300件。反響者の居住地内訳は流山市26%、松戸・柏市13%など千葉県内が48%、都内は29%。来場者は約40組で、夫婦、または小さいこどものファミリーがほとんど。7月30日から販売開始し、3棟が成約済み。成約者は都内居住者が中心。

 同社設計部部長・鎌田浩之氏は、「当初は5棟も考えたが、コロナ禍でお家時間が増え、家の中に閉じこもり、家と外の関係が分断されているのではないかと強い危惧を抱いており、中間領域を設け内と外、更には隣の家や地域・街とゆるやかにつなぐように設計した。プランは万人受けするものではなく1棟1棟異なるものにした。設備仕様レベルも引き上げ、感動していただけるよう完成販売にした」と企画意図について話した。

 同社ブランディング課プロモーションチームリーダー・萩原誠氏は、「購入予算を引き上げて購入を検討された方と、最初から購入をあきらめた方に分かれた。おおたかの森や南流山にはこの種の分譲戸建ての供給事例はほとんどない」と語った。

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モデルハウス(1号棟)

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モダン和室(正面の南側の窓を下側に、しかも小さくし、壁は外壁と同じような色にしているのが味噌)

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 いつものように、現場に着くまで価格はいくらかを考えた。土地は30~40坪で、価格は4,000~5,000万円台だろうと。これなら〝母になるなら、父になるなら〟の流山だから売れるのは当然だろうと。

 予想はものの見事に外れた。区画整理地であることを忘れていた。予想は外れたが、鎌田氏と萩原氏の話を聞いて納得もした。都内などでは20坪そこそこの敷地の、緑などまったくない長屋のような戸建てが今も昔もたくさん分譲されている。鎌田氏は「家と外の関係が分断されているのではないか」と語ったが、記者もそう思う。

 ところが、同社グループの春日部の調整区域、東浦和、新松戸、みのり台などの分譲戸建ても、この前取材した旭化成ホームズの賃貸併用住宅も同じだ。この種のプランを受け入れるユーザーは一定数存在するのは間違いない。みんな〝隣近所や地域とつながりたい〟という潜在的な意識を持っている。

 それを顕在化させるため、隣家との間にフェンスを設けずピンコロによる境界線とし、2・3号棟の間にポールベンチを設けたデザインは、規模は小さいけれども社会課題を解決しようという意義は大きい。デザインとは、単なる意匠デザインではなく様々な課題を解決するソリューションであることを分かりやすく伝えた。この企画に拍手喝采だ。

 取材の案内が届いたときは、断ろうかとも思った。年間3,000戸超も販売する同社グループのたかが4棟の販売現場が好調だからといって、記事にする「か・ち・も・な・い」し、この日は夕方から横浜のマンションの取材が入っていた。移動時間は徒歩を含めて東京-名古屋間と同じだ。炎天下で疲れるだけだと。

 しかし、〝取材にNOは言わない〟現場主義をモットーとする記者だ。受けることにした。大正解だった。得るものはたくさんあった。

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吹抜け付きの土間空間(4号棟)

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2階にランドリールームを設けた2号棟(天井は開閉できる天窓を設け、階下から吹抜けを通じ風が抜ける工夫も凝らされている。手前の南側の黒い部分は敢えて壁にしているのも特徴)

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2号棟と3号棟のポールベンチ(フェンスはなく、南側にも抜けている)

全68戸にピアキッチン装備 歩留りは実に3割 ポラス中央住宅「南流山」(2022/6/24)

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大月氏

 旭化成ホームズは8月4日、同社が建設した築1-30年の賃貸併用住宅オーナーを対象に実施したアンケート調査の結果をまとめ発表した。年の賃貸併用住宅の実態とオーナーの意識、家族変化への対応実態を明らかにするのが目的。同日、結果報告を兼ねた第19回「くらしノベーションフォーラム」を開催し、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授・大月敏雄氏が「併用で高まる価値」と題する講演を行った。

 冒頭、同社取締役兼常務執行役員・大和久裕二氏は、「当社は今年創業50周年を迎え、賃貸併用住宅の提案開始から40年が経過した。多様化するオーナー、入居者ニーズに今まで以上の価値を提供できるか再考する目的で、今回の調査を行った」と挨拶。

 調査は、2021年7月から8月にかけて賃貸併用住宅オーナー1,200人に郵送によるアンケート方式で行ったもので、有効回答は685人(回答率74%)。報告書は78ページに及ぶ。以下、主な特徴。

 1)築1-10年の賃貸併用住宅の調査では、平均して敷地面積の1.38倍の延べ床面積で建築されており、都市の高度利用が求められている中で、都市の特性を活かせていることが確認できた
 2)階数が高いほど最上階自宅型が増え、3階建ての約7割が最上階自宅型
 3)くらし価値1:ワンフロアライフ対応住戸は91%、そのうち71%が主要な生活空間が1階、または主要な生活空間にEVでアクセスできるフラットアクセスであり、高齢期も住みやすい住居となっている実態が明らかに
 4)くらし価値2:築21-30年のオーナーの家族人数は、平均3.8人から2.5人まで減少し、年数の経過による家族減への対応が課題。一方ですでに約40%が賃貸住戸に家族・親族が住むことを想定済みで、当初賃貸住戸に家族が居住し、家族減少時に賃貸へ戻す、または賃貸住戸を取り込み家族住戸を拡大する実例も
 5)くらし価値3:賃貸居住者に挨拶をするオーナーが8割。入居者の顔が分かるオーナーは7割で、80代の高齢オーナーでは50代の4倍以上立ち話をするなどの交流をしている実態も
 6)経済価値:賃貸併用住宅メリットとして、ローン返済の軽減(87%)や安定収入、私的年金が得られる(85%)、子どもに将来収入を生む資産が残せる(85%)などの経済的価値が認識されている

 同社は1982年に賃貸併用住宅の仕様化を開始してから2021年度まで累計12,310棟の引き渡しを行っている。

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左から同社二世帯住宅研究所所長・松本吉彦氏、大月氏、大和久氏、同社くらしノベーション研究所所長・河合慎一郎氏(写真提供は旭化成ホームズ)

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左から松本氏、大和久氏、河合氏(写真提供は旭化成ホームズ) 

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 報告書は78ページもありなかなか読みごたえがある。まず、40年間で累計12,310棟の実績について。単純計算すると年間約308棟超だ。国土交通省の2021年度の住宅着工統計の戸建て併用住宅は2,595棟だから、約12%は同社ということになる。これは同業他社と比較して圧倒的に多いのではないか。

 敷地面積は平均219.5㎡、延べ床面積は平均301.8㎡、自宅住戸面積は平均118.7㎡、賃貸住戸面積は平均37.7㎡×3.81戸=143.9㎡、レンタブル比(賃貸住戸面積÷総面積)は、40~60%未満が多いというのはなるほどという数値だ。

 オーナーとテナントとの関係性では、共同型はお茶食事・手土産・立ち話32%(分離型は25%)、挨拶あり58%(同49%)、挨拶なし8%(同17%)となっており、コミュニティが満足度を高めているとしている。これは、一般的な賃貸マンションや分譲マンションにはないはずだ。

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 一つだけ不思議に思ったのは、アンケートの回収率が57%と極めて高く、家賃収入・節税対策・土地活用の経済価値と、ワンフロアライフ・家族変化対応・自由なコミュニティのくらし価値が両立しており、総じてオーナーの満足度が高いのはよく分かるのだが、賃貸入居者の声は紹介されていないことだ。

 後述するように、賃貸住宅は分譲住宅と比べて相対的に質は劣るし、家賃負担も大きい。施主のオーナーも請負の同社も賃貸居住者も満足するという三方良しの構図が成立しているのかということだ。(だから同社の賃貸併用が伸びているのだろうか)

 この点について同社に質問した。入居者アンケートを実施する方向で検討するという回答を得た。一般的な賃貸アパート・マンションとどのように異なるか、オーナーと緩やかにつながる関係をどのように考えているのか、面白い回答に期待したい。

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 大月氏は、上田篤氏の1973年に朝日新聞に掲載された「現代住宅双六」、2007年の日経新聞の「新・住宅双六」から語り始め、分譲戸建ても分譲マンションも入居者の高齢化が急速に進む一方で、賃貸住宅は〝住まわざるを得ない〟事情もあるが、築30年を経ても各世代が一定の割合で入居している数字を示した。

 また、最近は自治体のワンルーム規制によって若年層向けの賃貸マンションが建てづらくなっている一方で、若い人を呼び込もうとする自治体間の〝人口争奪戦〟も演じられており、これまで賃貸と戸建ては異なったカテゴリーとしてとらえられているが、これからは融合させていく必要があると語った。

 そして、同潤会アパートや自らの経験、大規模住宅地内での親子近居・隣居の事例紹介や、地方への移住、十津川村の「高森の家」、寒冷地の「越冬プラン」などの慣らし住み、喜連川の戸建て団地に隣接する雇用促進住宅を町の活性化に活用した事例などを紹介。

 さらに、生業を生むリッチライフの「分離型マンション」、韓国の「連立住宅」、NPO法人による地域の空き家活動、シェアハウス、更には賃貸・シェアハウス・コンビニ・障がい児保育・カフェなど近隣とのコミュニティを緩やかにつなぐ賃貸住宅など多様な住まい方の可能性について語った。

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 記者も、大月氏が賃貸と戸建て(マンションも含めて)複合の街づくりを進めるべきという主張に大賛成だ。もともとわが国の街は、金持ちも貧乏人も若者も高齢者も多様な人々が住み、それぞれが助け合うコミュニティの機能を有していた。

 しかし、高度成長期をきっかけに経済最優先の核家族を基本とする〝nLDK〟という均一的な住宅供給によって都市と地方は分断され、コミュニティは破壊された。バブルの発生・崩壊によって〝住宅双六〟は昭和の遺物として死語となった。核家族そのものも崩壊の危機にあるのが現状だ。

 ごく一部の富裕層を除き、一般的な世帯には多様な選択肢はない。国の持家偏重政策を改めない限り、賃貸と戸建ての融合は絵空事に過ぎないと記者は思う。

 マンションなどの持家は、最近の地価・建築費の上昇で基本性能・設備仕様レベルの退行がどんどん進んではいるが、低金利を背景に住宅ローン控除、税制など手厚い住宅取得支援策によって支えられている。

 賃貸はどうか。オーナーの利回りを最優先するため基本性能・設備仕様は後回しになり、耐震性、断熱性、遮音性などあらゆる面で分譲より劣り、その割には入居者の家賃負担は重い。崩れつつあるとはいえ、いまだに絶対的な住宅不足時代の悪しき商慣習〝礼金〟を墨守し、高齢者の入居を拒否するところも少なくない。賃貸脱出⇒住宅取得志向は強まることはあっても弱まることはないと考える。

 端的な例が、生活困窮者や高齢者、子育て世帯などの入居を拒まないセーフティネット住宅だ。今回のテーマではないのでここでは詳しく書かないが、記者は貧困ビジネスとなんら変わらない住宅が登録されているのを取材したことがある。この制度は、最貧者を閉じ込め、生活再建の道を断つ危険性もはらんでいると思う。

 もう一つ、大月氏が紹介したリッチライフプランについて。これは記者も同社が分譲開始したころ取材したことがある。素晴らしいと思った。しかし最近、同社は供給していない。

 地価・建築費の上昇などで土地が仕入れられないからだろうと思うが、考えてみるとそのような賃貸用のスペースを備えたリスクも伴ったマンションを購入する余力は一般的な需要層にはない。

 仮に分譲坪単価を300万円としよう。自宅用に20坪確保すると6,000万円だ。隣に8坪の賃貸用のスペースを併設すると2,400万円だ。合計で8,400万円。そんなお金を出す余裕があれば自宅用スペースを優先するはずだ。

 かつて、UR都市機構も同じようなαルーム付きマンションを分譲したことがあるが、長続きしなかった。生業として機能するサポート体制がないからだ。

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大月氏(写真提供は旭化成ホームズ)

大東建託 セーフティネット住宅の登録住宅は約45万戸 全国の90%超か(2021/7/14)

激増セーフティネット住宅1年で政府目標の2.8倍 大東建託がけん引/必読の平山論文(2021/7/12)

坪3.5万円!億ション以上 現地見ずに家賃判断 審査は適正か セーフティネット住宅(2018/11/9)

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積水ハウス物件ホームページから

 別掲の通り、多摩市は市制50周年を迎えたのをきっかけに主に若年層向けのコンセプトムービーを作成し、多摩ニュータウンの魅力を発信した。それより少し前、9年ぶりに「多摩ニュータウン東山」を訪ねた。積水ハウスと大和ハウス工業による総区画681区画の大規模住宅地だ。

 訪れた7月15日はあいにくの大雨で、隣接する愛宕神社では蚊にあちこち刺され往生したが、むせかえるような緑に圧倒された。利便性を優先するか、豊かな緑の環境を重視するか、人それぞれだが、住宅選好の選択肢の一つとして子育て世代にお勧めだ。街並みは熟成しているが、敷地内外の中高木はまだまだ成長段階だ。もっとよくなる。

 「多摩ニュータウン東山」の最寄り駅は京王相模原線堀之内駅。ニュータウン入口までは徒歩圏だが、現在分譲中の区画はバス便と思われる。

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大和ハウス工業提供

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大和ハウス工業提供

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積水ハウス 物件ホームページから

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 両社には区画の特徴、販売状況、コロナ禍で変わったことなど同じ質問をした。その回答を紹介する。

 積水ハウスの持ち分は339区画で、分譲開始は2012年3月。分譲戸建ては残3区画のみ。土地面積は185㎡、建物面積は130㎡、価格は7,500万(税込み)。建築条件付土地分譲1区画の土地面積は約185㎡。敷地165㎡(50坪)のゆったりした区画が特徴。

 大和ハウスは341区画。分譲開始は2012年3月。分譲戸建てと建築条件付の比率は4:6で、分譲戸建ては土地面積約185㎡、建物面積約108㎡(33坪)、価格約6,000万円~8,000万円。建築条件付き区画の土地面積は約185㎡。自然と共存する“回廊緑地”で周囲の公園や緑をつなぎ、生活利便性の向上と動物たちの生活範囲の確保の両立を図っている。

 購入者の属性については、「30~40代の子育て世代がメイン」(積水ハウス)「上場企業・公務員の共働き世帯、定年退職後のご夫婦が多く、世代、前居住地など属性が絞られないことが特徴」(大和ハウス)と回答があった。

 コロナ禍については、「リモートワークの普及で、都心から郊外へという流れが起こり、一気に分譲が進んだ。特に、広い土地、4LDK以上の間取り、住環境の向上という価値観が浸透し、販促に繋がった」(積水ハウス)「この2年は、在宅勤務の共働き世帯の購入者が多くを占めている」(大和ハウス)としている。

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雨に煙る愛宕神社

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愛宕神社の森

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愛宕神社のヤマユリ(記者の田舎の田んぼや山には無尽蔵に咲いていた。摘んで活けた)

多様な価値観生かせる多摩ニュータウン 多摩市市制50周年 コンセプトムービー(2022/7/24)

小田急不「リーフィア南大沢」第1・2期47区画完売 第3期モデルオープンへ(2020/6/16)

積水ハウス キッズデザイン体験施設 多摩NT「東山」にオープン(2013/4/30)

 

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「北浦和みのりのプロジェクト」(左側は小学校の敷地)

 ポラスグループ中央住宅は7月8日、「農と住まい・ヒト・モノ・コトがつながる暮らし」をテーマにした全51戸の「北浦和みのりのプロジェクト」記者見学会を行った。浦和駅、北浦和駅、浦和美園駅、東浦和駅4駅が最寄り駅ではあるが、バス便の立地難を逆手に取った商品企画がヒット。3月に分譲した第1期34戸が即日完売するなど、これまで42戸が成約・申し込み済みだ。

 物件は、JR浦和駅からバス12分バス停徒歩7分、北浦和駅からバス11分バス停徒歩7分、さいたま市緑区松木1丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)に位置する全51戸。土地面積は約110~115㎡、建物面積は100㎡前後、価格は2,980万~4,850万円。建物の構造は在来工法2階建てで、一部を除き完成済み。施工はポラテック。

 プロジェクトは、「見沼の田んぼ」と呼ばれる1200ha以上の農地が近くに奇跡的に残っていることに着想、〝庭で野菜を育てたい〟〝自然が豊かなところで暮らしたい〟〝自分らしい生活をしたい〟など自然・農業・コミュニティを「居・食・住」としてとらえ、分かりやすく具現化しているのが特徴。

 「居」では、自然が多いエリアであることから、ポタジェや緑のカーテン、実のなる木、灯りのいえなみ協定を、「食」では見沼田んぼでの農業体験、ワークショップ、食育・地産地消を考える機会を、「住」では、木の内装材を多用し、安心・安全の住まいをそれぞれ提案。これらが円環となって新たな価値をクリエイトしょうというメッセージを発信している。

 物件のホームページを2月に開設し、3月10日に分譲した第1期34戸は最高4倍で即日完売するなど、これまで42戸を成約・申し込み済み。46%が共働き世帯で、教員など公務員、病院関係者が目立つという。来場者は200組超。購入者の居住地は21%が地元、そのほかは県外を含み中広域に広がっている。

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ポタジェ(背後に隣家の雨水ポンプが見える)

◇        ◆     ◇

 現地見学は、東浦和駅から車で案内してもらったので、いったいどこを走っているのか全く分からなかったが、東浦和駅前通りの街路樹はとても美しく、それを車窓から眺めながら、戸建ての価格は、マンションなら浦和、大宮駅圏は坪単価400万円を突破しているので5,000万円くらいではないかと見当をつけた。

 ここで横道にそれる。緑区の道路維持課によると、植えられている街路樹はユリノキ、クスノキがほとんどで、南部建築事務所が管轄する中央区、桜区、浦和区、南区、緑区の5区の街路樹は約13,000本で、中低木を含めると約16,000本。樹種はこのほかニセアカシア、トウカエデ、ハナミズキ、ケヤキが多いという。年間の維持管理予算は約4億円。とくに緑区は他区と比較して圧倒的に緑被率が高いそうだ。

 話を聞いて課題もあると思った。道路維持課は街路樹などの維持管理を担当し、樹種を決めるのは他の部署とのことだ。ここに街路樹が道路の附属物としか位置づけられていない問題がある。街のポテンシャルを左右する街路樹の選定は、専門家を起用し、部署間連携は当然ながら市民も含めて行うべきだ。街路樹をめぐり市民の苦情が多いのは、市民ほの説明が不足し声を聴いていないからだ。市の街路樹に関する公表データも少ない。

 話を元に戻す。予想は大外れ。信じられない〝安さ〟だった。モデルハウスの質は決して低くない。床、壁、建具・家具は本物の木の挽板が採用されている。

 売れ行きにはびっくりしたが、さもありなんとも思った。2年前、同社が春日部市の調整区域内で分譲した「ハナミズキ春日部・藤塚」(全22戸)の見学会でも感じたのだが、駅に近いとか商業施設が整っているとか、そのような利便性に価値を見出す人は圧倒的に多いのだろうが、そうではないと考えている人も一定存在する。そのような人にフォーカスした今回の商品企画がヒットしたということだろう。

 プロジェクト責任者の中央住宅戸建分譲設計本部設計一部部長・野村壮一郎氏は、「従前は自然の森だった用地を取得し、34棟を当初は計画したが、その後隣接地を買い増しして全51棟に変更。生活利便施設は揃っていたがバス便であることから、何かできないかを考え、『見沼たんぼ』に車で5分の立地でもあることから、地元で農業を営むこばやし農園とコラボし、建物だけではなく暮らしをデザインした」と語り、「こばやし農園の小林さんにアドバイザーになっていただき、日常的に『農』を取り込めるように企画した」と同部営業企画設計課係長・酒井かおり氏が話した商品企画が光った。

 同社が3年前に近隣エリアで分譲したときは購入者の47%が地元だったことを兼ね合わせ考えると、コロナ禍で消費者の住宅選好基準は間違いなく変わっている。そのヒントは、さいたま市は人口流入が全国でもっとも多いことにある。

◇        ◆     ◇

 見学会で紹介された見沼田んぼは、さいたま市、川口市の2市にまたがる南北約14km、外周約44km、面積約1,258ha。江戸時代に水田確保のために開発されたのが奇跡的に現在まで残り、野菜などが栽培されている。広さは、東京23区内の農地約95ha、皇居の115haとはケタ違いで、千代田区の1,164haにほぼ匹敵する。

 「こばやし農園」は2014年営農開始、2017年株式会社を設立。年間50~60種類の野菜を無農薬で栽培し、「見沼野菜」として販売している。

 社長を務める小林弘治氏は1996年、さいたま市生まれの55歳。浦和高校-慶応大学を卒業後、広告代理店に勤務していたが、「農業には全く縁がありませんでしたが、突然(天から)降りてきた。これが天職だと思い、脱サラを決意しました。今はパートさんを8人雇い、約2haの農地に50~60種の野菜を栽培しています。今年からコメの栽培も開始しました。獣害? クマやサルはいませんが、カラス、タヌキ、ハクビジン、イタチ…それと人間」と話した。

 取材後、現地を案内してもらった。武蔵野線から眺めたことは何度もあるが、そこが見沼たんぼだとはまったく知らなかった。栽培されている野菜はサトイモやナスなどが多く、小林氏も話したように耕作放棄地も多く、目視したところでは2割くらいあるのではないか。営農者の高齢化、後継者難が課題であるのがうかがわれた。

 小林氏は「ロールモデルにしたい」とも語った。難しい問題が立ちはだかっている分だけ「見沼野菜」の可能性もまた大きいと思った。

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小林氏

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見沼田んぼ

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サトイモ畑

調整区域の市民農園付き200㎡邸宅 ポラス「ハナミズキ春日部・藤塚」企画秀逸(2020/7/3)

 

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清家氏(左)と磯部氏

住友不動産は616日、東京大学、武蔵野大学と共に共同で進めてきた建物改修による脱炭素効果の定量化を目指す研究の「第一フェーズ」結果をまとめ発表。建物性能を向上させたうえで、同様の建物を建て替えた場合と比較してCO2排出量を47%削減できるとした。

研究は202112月にスタート。わが国は2050年カーボンニュートラル、家庭部門における2030年までのCO2排出量66%削減(2013年度比)が要請されているが、圧倒的に多い既存住宅(5,000万戸)の省エネ、脱炭素化の取り組みの遅れが指摘されている。

このため、既存住宅の脱炭素を推進する研究・制度の構築を主導している東京大学大学院新領域創成科学研究科・清家剛教授とその弟子の武蔵野大学工学部環境システム学科・磯部孝行講師から、「新築そっくりさん」として丸ごとリフォームの実績が約15万戸ある同社に研究依頼があったのがきっかけ。

研究では、BIMBuilding Information Modelingの略称。資材データなどを入力し、3次元の建物デジタルモデルを構築する技術)などデジタル技術を活用して既存部材の再利用量、改修時資材投入量をそれぞれ把握し、建物LCA評価(Life Cycle Assessment の略称。製品等のライフサイクル全体における環境負荷を定量的に評価する手法)を実施。住友不動産の改修現場(築46年、延べ床面積149㎡)で調査を行った。

その結果、平成28年省エネ基準をクリアしたリフォーム住宅では、同基準の建物に建て替えた場合と比較し、解体などで生じる廃材の利活用により資材投入量が大幅に削減されるため、CO2排出量は47%削減できるという結果が得られた。

今回の調査結果を受け、第2フェーズでは既存戸建住宅の改修による長寿命化効果の検証を行い、2年後に発表する予定の第3フェーズでは既存戸建住宅の改修による省エネ・創エネ設備の導入効果を検証し、CO2排出量削減を可視化(定量化)できる評価システムの構築を目指す。

発表会に臨んだ清家教授は、「今回は資材、リフォーム現場にフォーカスして調査した。改修における環境評価手法は確立されていないが、47%のプラスマイナス10%のCO2排出量削減効果があることを示せた。今後は長寿命化やZEHレベルなど運用効果を検証していく」と語った。

住友不動産取締役 新築そつくりさん事業本部長・加藤宏史氏は、「わが国の戸建て住宅の寿命は約30年と考えられているが、当社はそのスクラップ&ビルドの常識を覆し、既存の残せるものは残しながら新築と同様の安心・安全の『新築そっくりさん』事業を25年超展開し、約15万棟の実績を積み上げてきた。今回の調査結果は、当社の事業は持続可能な社会的を目指す事業であることが証明できた。今後も引き続いて環境評価手法の見える化、定量化に貢献していく」とあいさつした。

        ◆     ◇

 清家氏と磯部氏の説明を聞きながら、昨年、三井不動産と東大、青木茂建築工房が共同研究した結果、「リファイニング建築」のCO2排出量は建て替えるより約72%削減できると発表したのを思い出した。

コンクリと木造の違いだろうとは思ったが、「わたしは木造ファン。リファイニングは72%なのに、木造はどうして47%なのか。わが国の森林・林業は危機に瀕している。建築資材を外材ではなく国産材を使用することで、森林・林業の再生・活性化を図れば、その社会的経済的効果を金銭に置き換えることはできるのではないか。それをCO2排出量に反映できないのか」などとストレートに質問した。

記者の質問に対し、清家氏は、「リファイニング建築」のCO2排出量研究を行ったのは自分たちであることを話し、RC造はCO2排出量が大きい鉄やセメント、ガラスなどを大量に使用するのでリファイニング建築では削減効果が大きく出るが、木造はもともと排出するCO2が小さいので、削減数値も小さくなると語った。

また、わが国には外材と国産材を分けて環境評価を行う手法はなく、国産材を活用した場合も、天日で乾燥する場合はともかく、重油を使って乾燥させる場合はCO2排出量は大きくなり、その課題もあると指摘した。

        ◆     ◇

 清家先生の仰ったことはよく分かった。おそらく国産材より外材のほうが植林、伐採、運搬、製材、加工コストは低く、結果としてCO2排出量も少なくなるのだろう。しかし、わが国の森林・林業は危機的状況にあり、地域の文化すら崩壊しつつある。コストは多少かかってもCO2排出量が多くなっても、国土を強靭化するのに投資する価値のほうを重視すべきだと記者は考える。わたしたちは経済合理性だけで生きていない。「安心・安全」をお金に換算し、多少値段が高くとも国産の食材を購入する消費者が多いのはその端的な例ではないか。

 いま取材している千代田区の神田警察通りのイチョウの伐採の是非も同様だ。区はイチョウを伐採してヨウコウザクラに植え替える場合のコストはイチョウを残して道路整備するより初期コストはかかるが、その後の維持管理費を考慮すると、数年後には元が取れると主張している。この論法には樹木がもたらす緑陰効果、地表温度の抑制効果、癒し効果、街並みの景観美などは全く考慮されていない。

 建築資材も同じではないか。磯部先生は日本建築学会の地球環境委員会 LCA小委員会主査を務めている。先生、外材と国産材の利用に関する経済波及効果の差異を研究する学者先生はいらっしゃらないのでしょうか。

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 野村不動産は6月9日、全国の分譲マンション・戸建て「プラウド」シリーズに、スタイルポートが開発した3Dコミュニケーションプラットフォーム「ROOV(ルーブ)」を導入し、DX化を強化していくと発表した。

 同社は2020年春から物件ごとのオンライン接客をスタートし、2021年9月には首都圏の「プラウド」全物件の情報をまとめて紹介する「プラウドオンラインサロン」を開始。これまで月間約1,000件の利用があるという。

 「ROOV」は2019年4月、スタイルポートが開発・サービスを開始したもので、スマートフォンやパソコンのインターネットブラウザで「いつでも」「どこでも」「かんたんに」3DCGの空間を自由に動き回り、様々なシミュレーションで住み方のイメージを確認できるクラウドサービス。これまで約3年で80社、350プロジェクトを超える販売現場で利用されている。

 スタイルポートによると、同種のサービスを提供している企業の採用件数は年間数件で、ウォークスルーの3DCG VR内覧を擁する住宅販売のオンライン型接客/商談システムを提供している企業は現状では同社のみという。

◇        ◆     ◇

 「ROOV」の採用実績が3年間で80社、350プロジェクトというのに驚いた。80社というのは、主だった分譲マンション・戸建てデベロッパーをほぼカバーしているということだ。

 記者はモデルルーム見学を基本としているので「ROOV」なるものをよく知らないのだが、自らの記事で検索したら2件ヒットした。検討する住戸からの眺望が確認できるのは素晴らしいと思うが、リアルにはかなわない。これが最大の課題だと思うし、各デベロッパーは基本性能・設備仕様レベルが高いのか低いのかも分かるような物件ホームページにするべきだ。(みんなが「ROOV」を採用したら、差別化はできないではないか)

 DX化の取り組みには大賛成だ。2021年6月、JR西日本プロパティーズ(Jプロ)「プレディアあざみ野」を取材したとき、販売代理の野村不動産​ソリューションズ プロジェクト営業本部住宅販売一部専任課長・石川広勝氏は「モデルルームでの顧客対応は一般的に3~4時間かかるが、コロナ禍でオンライン商談を導入した結果、1回目のプロジェクト説明会と、それ以降の個別相談会を実施し、価格情報も当初の段階で伝えていることなどから商談時間を大幅に短縮できている。それが歩留まり率(約3割)のアップにつながっている」と語っている。顧客もそうだが、販売スタッフの労働時間短縮、その他販売経費の削減にもつながる。

◇      ◆     ◇

 野村不動産は、営業担当者の業務効率化に関して、記者の質問に次のように答えている。

 ①営業ツールの修正・削除・入替作業が軽減される⇒従前の紙資料やデスクトップ保存ツールの場合は接客卓1卓1卓での紙差替え、データ差替えが必要だったが、ROOVでは管理IDで一括修正・削除・入替が可能となり、これにより業務効率化のみではなく、古い情報をお届けするリスクも軽減される。

 ②営業時のツール取り出しが容易となる⇒同一プラットフォーム上での管理の為、ツールの取り出しが容易となる。

 ③新たな現場を担当する際の営業習熟を早期に図ることができる⇒こちらも同一の仕様とすることで現場ごとで異なる格納形式ではなくなり、どこにどのようなツールがあるのかが判別しやすく、操作性も同一の為早期キャッチアップが可能となる。 

 ④完売後、キャンセル住戸発生時の再販売時の再稼働が効率化される⇒完売後、新たにツールを揃える必要がありましたが、プラットフォームを再立上げするのみとなり業務効率となる。

 ⑤お客様への資料送付(共有)が効率化される⇒シェア機能で共有したいファイルに☑をいれてURLを発行するのみとなるので、重いデータを分けて送ることなどの手間が省け、お客様もみやすい形での共有が可能となる。

 

AIアバターの能力は高いが宅建士との差は歴然 「東急リバブル・銀座サロン」見学(2022/6/2)

木漏れ日、渓流の音…イニシアの世界観を表現 総合ギャラリー「三田」(2021/7/30)

JR西日本プロパティーズ プレディア「都筑ふれあいの丘」「あざみ野」好調(2021/6/26)

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  アキュラホームグループとスマートアライアンスビルダー(SABM)は5月28 日(土)、新商品「超発電の家」の販売を開始した。東京都が年間2万㎡以上を都内で供給するハウスメーカーに太陽光パネル設置を義務付ける方針を打ち出したのに対応するもので、太陽光発電7.5kWを環境貢献価格1,810万円(税抜)~に設定。光熱費の大幅削減を可能にする。

 「超発電の家」は、太陽光発電の発電能力を最大限に発揮できる屋根勾配の設計を実施し、太陽光発電7.5kW を環境貢献価格で設定。35年で828万円(延床面積30坪、4人家族、オール電化仕様を想定)の光熱費を抑えることで、初期投資を約7年で回収することができるのが特徴。

 直近では、同社の半数の販売拠点が搭載率100%を達成している(全体の太陽光発電採用率は89.8%)。

 

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