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 日本政府観光局(JNTO) は8月21日、2019年7月の訪日外客数は前年同月比5.6%増の約299万人で、前年同月比5.6%増加し、単月として過去最高を記録し、1~7月でも約1,962万人で、前年同期比4.8%増加したと発表した。

 一方で、韓国からの訪日客は前年同月比7.6%減の約56万人で、1~7月の合計でも約442万人で、前年同期比4.3%減少している。

 その理由をJNTOは「韓中関係の改善による中国への渡航需要の回復や旅行先としてベトナムが人気になるなど海外渡航先が多様化していること、韓国経済の低迷に加えて、最近の日韓情勢もあり、訪日旅行を控える動きが発生し、訪日者数は前年同月を下回った」としている。

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 7.6%減が多いのか少ないのかよく分からないが、政治に振り回されないで仲良くすべきと考えている記者にとっては気になる結果だ。

ただ、救われるのは、韓国観光公社の調査によると、日本から韓国への今年7月の入国者数は274,830人で、昨年同月の230,512人より19.2%増加していることだ。

7月のわが国からの出国者数の伸び率は6.5%増だから、これと比べても日韓関係の悪化はそれほど影響していないのかもしれない。メディアも大本営発表記事ばかり書かないで、逆のあるいは裏側からの視点でものを観ることが必要ではないか。

 

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「三井ガーデンホテル京都駅前」

 三井不動産と三井不動産ホテルマネジメントは8月21日、京都市内の〝三井ガーデンホテル〟シリーズ4施設目となる「三井ガーデンホテル京都駅前」のプレス内覧会・特別試泊会を行った。ホテルは8月29日に開業する。

 施設は、JR京都駅(中央口)から徒歩3分、京都市下京区東塩小路町に位置する地下1階・地上10階建て全136室。客室はダブル37室(約21㎡)・ツイン90室(約21㎡)・トリプル9室(約27㎡)。宿泊料金は2人利用で約4.2万円~。

 京都駅に近い立地を生かし、京都市内の既存ホテル「京都新町 別館」「京都三条」「京都四条」と連携し、ホテル間で荷物を運ぶ新サービス「バゲージサービス」の拠点にする。料金は一個の荷物につき300円。既存ホテル利用者は地下1階のラウンジ・レストランも利用できる。

 「茶の心と京の美を五感でご堪能いただけるホテル」をコンセプトに、共用部や客室の随所に茶の世界観やわが国の伝統技術が体感できるオブジェ、アートを配置。トリプルルームはグループやファミリーでの利用が可能。1年間限定で、京友禅とデニムが融合した「京都デニムの間」と、2020年に創業300年を迎える生地「丹後ちりめん」を用いた「丹後ちりめんの間」をそれぞれ1室用意している。

 総支配人・景山敬之氏は「京都の玄関口の立地を生かし、初めてバゲージサービスを導入し、ホテルコンセプトにふさわしいアイテム、アートを盛り込んで差別化を図り、付加価値の高い施設に仕上げた」と話した。ADR(平均客室単価)は2万円弱を想定している。

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フロント・ロビー

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フロントカウンター

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「丹後ちりめんの間」

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「京都デニムの間」

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 試泊は予定していなかったが、取材の翌日(22日)に住友不動産が大阪の大規模マンションの記者発表を行うので、事情を話したら、快く試泊させてもらうことになった。お礼の代わりにこのホテルのいいところを紹介する。

 何がいいかといえば、組子デザインのフロントカウンターだ。帝つなぎと呼ばれる胡麻、サクラ、麻の3つの文様を繋ぎ合わせたもので、木片も色を変えているので、見る角度によって濃淡がつくように工夫されている。記者はしばし見とれた。

 客室では、「丹後ちりめんの間」が素敵だ。担当者は「女性向き」と説明したが、これは若いカップルや熟年夫婦にもお勧めだ。〝非日常〟を満喫できることを保障する。かつてはこの緋色ちりめんは日常にあった。

 「京都デニムの間」は、「侘び寂び」を堪能したい人にはいいかもしれない。昭和レトロな雰囲気がある障子の前に女性が立てば竹久夢二の世界に引きずり込まれるのではないか。

 記者が泊めてもらった客室は約21㎡のダブル。放映されていた野球中継で西武が快勝したのを見届けて、飲み直しに出かけた駅前のチェーン店が最悪。〝おもてなし〟のかけらもなかった。齢70の記者が悪態をつきながら独り寂しく輾転反側する図を想像していただきたい。

 だが、しかし、電気をつけたまま寝たおかげで、障子に映し出された幽玄な世界を何度も体験することができた。客室は茶室をイメージしたもので、窓はきれいな借景が望めないので閉め切られており、さらにブラインドによって光を遮断し、天井に埋め込んだライトで円相をあしらった円窓を照らすとぽっかりと円い月が浮かび上がるという仕掛けだ。これは外からの視線や日射が気になるマンションにも応用できる。難点を利点に転化できるスグレモノだ。

 シャンプーがまたいい。泡立ちがよく、アロマの香りが心地よい。ラベルには「花王レアーナ」とあった。業務用のようだ。帰宅してかみさんに話したらせせら笑った。「何よ、あなたのシャンプーは1,000円くらいだけど、わたしのは数千円」…処女の香りがする「牛乳石鹸」が懐かしい。

 プレス内覧会・特別試泊会に詰めかけた方は圧倒的に女性が多かった。その方々がどう感じたかは皆目見当がつかない。

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円相をあしらった円窓

宿泊・飲食サービス業向け建築物激増 あおり受けマンションは過去10年で最少 京都府(2019/8/20)

三井不 「ホテル ザ セレスティン京都祇園」開業 〝日本一の朝食〟メニュー(2017/8/29)

 

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 平成30年の観光消費額1兆3,082億円、外国人宿泊客数450万人、宿泊客数1,582万人とも過去最高を記録した京都人気を反映して、府内の宿泊業・飲食サービス業向け建築物の着工が激増し、ホテルなどに用地を奪われたためか分譲マンションの着工が激減している。

 国土交通省の建築着工統計によると、平成30年度の京都府での宿泊業・飲食サービス業向け建築物の着工件数は322件で、前年の310件を上回り、平成27年度の実に4.2倍となった。全体の延べ床面積約36.5万㎡、工事予定額約1,092億円とも前年を上回り、平成27年のそれぞれ9.8倍、11.5倍となった。

 延床面積、工事予定額は東京都のそれぞれ約59.1万㎡、約2,694億円には及ばないが、大阪府のそれぞれ33.5万㎡、約1,035億円を上回っている。

 そのあおりを受けた格好が分譲マンションだ。京都府の平成30年の着工戸数は1,055戸となり、前年の1,328戸より20.5%減少し、過去10年で最多だった平成27年の3,329戸のほぼ3分の1に激減。過去10年間で最少となった。

 激減した要因は、適地がホテルなどに奪われていることは明らかだ。昨年、京都の取材でタクシーに乗ったとき、運転手さんが「マンション? もうあきまへんわ。ホテルに勝てない」と話したくらいだから、マンションデベロッパーは全然歯が立たないのだろう。

 デベロッパーは京都で土地を仕入れられないためか、大阪にシフトしているようで、大阪府の平成30年のマンション着工戸数は19,732戸となり、平成27年より34.0%増加している。

 記者は、京都駅近でマンションを分譲したら坪1,000万円でも売れると思うがどうだろう。

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「木鋼ハイブリッドブレース」

 大和ハウス工業は8月8日、大規模商業施設や事務所などに適用可能な日本初の耐震部材「木鋼ハイブリッドブレース」を開発し、日本建築総合試験所の建築技術性能証明を取得したと発表した。

 「木鋼ハイブリッドブレース」は、平鋼の芯材を集成材の拘束材で補強することにより、地震時に圧縮力がかかっても座屈せず、優れた耐震性能を発揮できるブレース(筋かい)。

 拘束材にヒノキやカラマツなどの木質材料を用いることで、従来の鉄骨構造による座屈拘束ブレースと比較して、座屈拘束ブレースの製造時に生じる二酸化炭素排出量を最大65%低減でき、集成材を現しにすることができる。

 同社は今後、コストの削減を進め、柱や梁などへの採用可能性についても研究開発を進めていくとしている。

 わが国では、林野庁が2010年10月に施行した「公共建築物における木材の利用の促進に関する法律」により建築物の木造化・木質化の促進が図られており、国土交通省の「建築着工統計調査」でも、非住宅系木造建築物の着工床面積は、2010年の420万㎡から2018年には477万㎡まで増加している。

 

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「MIMARU京都 烏丸御池NORTH」

 コスモスイニシアは8月7日、世界最大旅行プラットフォーム「TripAdvisor®」の日本法人・トリップアドバイザーが発表した「インバウンドレポート2019 外国人に人気の日本のホテル2019」ランキングTOP20に同社の「APARTMENT HOTEL MIMARU」から16位に「MIMARU東京 上野稲荷町」、18位に「MIMARU東京 赤坂」、19位に「MIMARU東京 日本橋水天宮前」の3施設が選出されたと発表した。

 「MIMARU」は、2018年2月に開業した第一弾の「MIMARU東京 上野NORTH」をはじめ、8月1日にオープンした「MIMARU京都 烏丸御池NORTH」まで運営数は東京・京都あわせて11施設511室となっている。

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 これには驚いた。人気ランキングトップの「クラブメッド北海道トマム」、第2位の「クラブメッド北海道サホロ」は知らないが、マンションの究極はホテルだと思っているので、第3位「ザ・リッツ・カールトン東京」や5位「パーク・ハイアット東京」、8位「ザ・リッツ・カールトン京都」、10位「マンダリンオリエンタル東京」、12位「パレスホテル東京」、14位「コンラッド東京」などは記者も宿泊・取材もしている。

 これら名だたるラグジュアリーホテルに次いで、コンセプトもターゲットも全く異なる「MIMARU」が3施設も選ばれるのはいま一つよく分からないのだが、欧米では当たり前の施設がわが国にはなかったのが評価されたのであろうと考えると、なるほどと納得もできる。同社は「フレンドリーな接客を高く評価いただいている」としているが、記者も「MIMARU京都 新町三条」に体験宿泊しているので、ホスピタリティの高さを実感した。ファサードデザインもよかった。

 個人的に好きなホテルは「京王プラザホテル東京」と「ロイヤルパークホテル」、「京都ブライトンホテル」「旧ホテル海洋」「ウェスティンホテル東京」など。

高評価に驚愕 コスモスイニシア 7件目「MIMARU京都 新町三条」に体験宿泊(2018/10/17)

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「Open Network Lab Resi-Tech第1期Demo Day」

 デジタルガレージ(DG)は8月1日、不動産関連スタートアップを対象とした育成プログラム「Open Network Lab Resi-Tech」を通じ、大手不動産会社など7社とスタートアップ5社による実証事業を支援すると発表。同日、これまでの成果を発表する「Open Network Lab Resi-Tech第1期Demo Day」を行った。

 実証事業として発表されたのは、「IT活用による集合住宅等の不在時宅配受取の検証」(Yper)、「先進技術を用いた、高齢者介護の支援の可能性検証」(Origin Wireless Japan)、「先進技術を用いた、施設の在籍状況モニタリングによるセキュリティ対策の可能性検証」(Origin Wireless Japan)、「物管理業務における点検および記録報告等の効率化の検証」(THIRD)、「小規模トランクルームサービスの需要及び利用満足度の検証」(データサイエンスプロフェッショナルズ)の5つのプロジェクト。

 この中から、大量の紙とFAXが使われている不動産管理業務に着目し、建物の情報をアプリ、IoTデバイスなどで収集し、管理業務をAIに代替えするソフトウェア「管理ロイド」を開発したTHIRDが、審査委員による「ベスト コーポレート チーム アワード」と、来場者の投票による「ベスト オーディエンスアワード」の二冠を獲得した。

 同社の井上惇社長は、「『管理ロイド』は16社、5万棟に採用されており、約67%のコストが削減できる。削減効果は1.3兆円」と話し、「テクと現場が乖離しているニッチな分野に泥臭く入り込んで爆発させたい」と喜びを語った。

 当日は、シード期の育成・支援をメインとした4つのSeed Accelerator Program(シードアクセレレータープログラム)も発表され、今後、パートナー以外も含む企業からの投資や協業などが検討される。

 DGは2018年11月、コスモスイニシア、竹中工務店、東急グループ、東京建物、野村不動産ホールディングス、阪急阪神不動産、三井不動産の7社をパートナーとするコンソーシアムを結成し、新規事業の創出や社会課題の解決を支援する「Open Network Lab Resi-Tech」を運営している。

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「ベスト コーポレート チーム アワード」を受賞したTHIRD(右から2人目が井上社長)

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 18:30から21:00までの約2時間半、登壇者が次から次へ難しい言葉や図表をプロジェクターに映し出し、機関銃のように話した。スマホも満足に扱えないアナログ人間の小生は必死でメモを取ったが、ほとんど理解できなかった。審査委員のDG代表取締役兼社長執行役員グループCEO・林郁氏が講評で「やや詰め込みすぎた」と語ったように、素人でも分かるようなプレゼンは出来ないものか。

 だが、しかし、それぞれのプログラムはワクワクするものばかり。THIRDの「管理ロイド」が二冠を達成したのにも納得した。この前、三井不動産が働き方改革の一環として、年間約58,000時間の業務量と約840,000枚分の紙資料を削減すると発表したのと通じるものがあったからだ。

 意味は全く分からなかったが、さもありなんと思ったのはOrigin Wireless Japanの「Life log」とTellus You Careの「Tellus」だった。前者はWi-Fiの電波を、後者は小型レーダーを用い、24時間365日、人の動き、睡眠時の呼吸、ドアの開閉、室内での転倒などをモニタリングして、健康寿命を伸ばそうという技術だ。

 審査委員を務めた渋谷区長・長谷部健氏がこれに敏感に反応し、「Wi-Fiがいいか小型レーダーか、実験場を提供してもいい」と語った。

 しかし、小生はこれは危ないと直感した。両刃の剣だ。24時間365日、人の動きを監視できる技術が悪用されたらどうなるのか。国がマイナンバー制度とリンクさせたら監視国家システムが完成する。われわれはタグを埋められた競走馬と一緒。ジョン グリシャムの最新作「危険な弁護士」(新潮文庫)にも一般市民が犯罪に巻き込まれた悲惨なシーンが描かれている。

年間30人分の業務と約7%の紙資料削減 三井不「働き方改革」で新システム導入(2019/7/12)

〝住まい〟切り口 スタートアップ育成プログラム組成・始動 デジタルガレージ(2018/11/8)

 

 

 

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「Hi-NODE(ハイ-ノード)」

 野村不動産とグループのNREG東芝不動産は8月2日、国家戦略特別区域の特定事業「(仮称)芝浦一丁目計画」の関連事業として東京都港湾局と連携して進めてきた「日の出ふ頭小型船ターミナル等整備計画」の「Hi-NODE(ハイ-ノード)」の開業式典を行った。「Hi-NODE(ハイ-ノード)」は3日開業する。

 式典に出席した宮嶋誠一・野村不動産社長は「JR東日本さんと共同して進めている『芝浦一丁目計画』や浜松町・竹芝の再開発事業とも連携して水辺空間の賑わいを創出し、地域全体の活性化につなげていきます」と語り、出来栄えに満足していた。

 小池百合子・東京都知事は「『水の都・江戸』を再生させるカギとなる『日の出』の新しい顔となる事業に敬意を表します。いま外国人観光客が最初に目指すのは箱根のようですが、『日の出』を『Hi-NODE(ハイ-ノード)』と読ませるのがとてもいい。都も積極的にPRしていきます」と祝意を述べた。

 施設は、野村不動産グループは、今後、日の出ふ頭小型船ターミナルなどの施設を運営するとともに、水辺の賑わいと各エリアとの回遊性を創出し、舟運と地域の活性化を図っていく。

 同計画は、土地所有者の東京都港湾局と野村不動産グループが協定を結び、事業を進めてきたもの。これまで閉鎖されていた日の出ふ頭と竹芝ふ頭をつなぐ連絡橋の耐震補強を行い、付近の信号・横断歩道を移設することにより開発が進む芝浦-日の出-竹芝の相互のアクセスを改善し、回遊性を向上させる事業も含まれている。

 施設は、JR山手線・京浜東北線浜松町駅から徒歩9分、新交通ゆりかもめ日の出駅から徒歩4分、港区海岸二丁目に位置する延床面積約887㎡。事業主はNREG東芝不動産。設計は野村不動産。敷地所有者は東京都港湾局。

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左から港区副区長・田中秀司氏、小池氏、宮嶋氏

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小池氏(左)と宮嶋氏

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 式典後、メディア向けの内覧会が行われた。〝緑のフェイクをやめよ〟と主張している記者だが、さすが野村不動産だ。店舗内には水盤付きの本物の蔦を使用するなど随所に緑が配されていた。大きな広場にはヤシなど南国風の植栽が施され、BGMには山や川で採取した3Dサウンドが流れるように工夫されていた。

 驚いたのは芝だった。全面に天然芝が敷かれていると思ったが、そうではなく人工芝だった。しかし、安全性に課題もあるケミカル製品ではなく、原料にはわが国初で、イタリアの名門サッカーチーム・ユヴェントスが練習場に採用しているのと同様のヤシを使用したものだという。

 触ってみたが、たしかに東京ドームのそれとはまったく異なっていた。ほんものの芝と間違えるほどだった。雑草ほどうするかは課題だ。

 東京ウォータータクシーの海上タクシーも披露された。31カ所の乗降場の利用が可能で、8人乗りと6人乗りがあり1区間500円。酒も飲めるし、デッキではタバコも吸える。羽田空港(天空橋)-天王洲アイル-日の出-勝どき-築地-日本橋-浅草-押上などと繋がる。沢山の人が通勤・通学に利用する日がくるかもしれない。

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広場

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海上タクシー

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整備された連絡橋(正面はインターコンチホテル)

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店舗内の緑

 

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 粉飾決算容疑ですてきナイスグループの元代表取締役会長兼最高経営責任者・平田恒一郎(71)ら3名が7月25日に逮捕されたのに衝撃を受けたが、その前日(24日)にすてきナイスグループから発表された本件嫌疑に関する「第三者調査報告書」には、平田容疑者らが有価証券報告書の虚偽記載を指示したことを示す内容が赤裸々に報告されている。

 報告書は174ページにもわたる浩瀚なものだが、冒頭の部分で平田氏の独断専行が嫌疑を招いた要因であり、限りなく〝黒〟であることを匂わせている。引用するのもためらわれるが、二度とこのようなことが行われないよう他山の石にするためにも有益であると判断したので紹介する。

 報告書の第2章「創業家一族の影響力」では次のように述べられている。

 「平田恒一郎氏は、ナイスグループ各社の部長以上の人事権を掌握していた。また、新会社の設立や主要なマンションの販売等多くの事業を自ら指揮ないし監督し、職務の内外において厳しい姿勢で経営にあたっていた。例えば、新築マンションの完成後、未販売物件(完成在庫)が残った場合、完売になるまで会議等において毎回、住宅部門の役員に起立の上謝罪させたり、『清く、正しく、まじめなナイス』という行動規範を示し、自ら定めた『ワイシャツは白』、『役員は喫煙禁止』、『ゴルフ禁止』等の決まりに違反した役員の降格を命じるなどしていた」

 「平成27年3月期においては、何事も平田恒一郎氏の了解を得ずに進めることができない状況にあった。また、すてきナイスを含むナイスグループ各社においては、平田周次氏及び平田恒一郎氏という創業家の意向に反しないようにするという企業風土が醸成されることとなり、特に平田恒一郎氏に対して意見を述べることすら躊躇するような状況となっていた」(28~29ページ)

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 「ワイシャツは白」の是非はさておき、喫煙も飲酒もゴルフも個人の趣向の問題で、役員だからと言って禁止するのはどうかと思うが、「清く、正しく、まじめなナイス」は小生も何度も聞かされている。これほど立派な行動規範、生き方はない。いつもそうありたいと思っている。

 それだけに、平田氏の言動は信じられない。平田氏は赤字を出すことを極度に恐れていたとも報告書にあるが、有価証券報告書の虚偽記載を指示することの重大さをどう認識していたのか。免震マンションやパワーホーム、CLTの活用などまじめな事業を展開している会社のやることではない。創業社長の息子・穴吹英隆氏が社長を解任され、会社も破綻した穴吹工務店の事例を思い出した。穴吹氏も若いころは腰の低い方だった。

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 粉飾決算の舞台となった平田氏が実質的なオーナーであるザナックを「益出し」として利用したのは否定できないようだ。

 報告書は、ナイスとナイスエストが所有していた土地や店舗、マンション(75室)をザナックに売却し、平成27年3月期に売上高を約30億円、売却利益を約4億円計上した案件では、「すてきナイスでは、連結の範囲に関する会計基準及び実務上の判断基準を遵守して判断していたとは言えず」(40ページ)、「ザナックの本店事務所の面積はわずか7.4㎡であって、そこに設置されている主な備品は、机、キャビネット、会議用テーブルが各1つと椅子6脚のみである」(77ページ)で、入退室は、ナイスからの出向により管理され、預金通帳、実印、印鑑などもナイスが保管し、経理業務もナイスが行なっていたと報告。

 結論として、「実現主義の原則」要件を満たしておらず、会計上認められないと断定している。

 また、「ザナックという会社は、すべての意思決定をナイスが行なっており、主体的に経営を行うような会社ではなく、実質的にナイスグループが自由にコントロールすることができる、いわゆるペーパーカンパニーである。このため、上記の取引はいずれも、ザナックがその合理的な経営計画の一環として主体的に行ったものではなく、ナイスグループが、決算対策のためや、対外的に売却済みであることや他社のマンション計画であることを装うため等、専らナイスグループの目的のために、都合よく財貨の移転が行われたように、法形式を整えたにすぎない」(103ページ)

 「ナイスグループにおいては、直接又は間接に大半の株式を有している子会社でありながら非連結子会社としていた会社に加えて、実質的にナイスが支配して意のままに扱い得るグループ外支配会社が存在しており、とりわけグループ外支配会社には、ナイスグループにおいて取り扱いにくい事業や取引を行わせてきており、そのような非連結子会社及びグループ外支配会社の不適切な利用の一環として、今回のザナック関連案件が実施されたものとみことができる」(175ページ)と指弾している。

 小生は、売れ残りマンションを建設会社や関連会社、取引先に買わせたデベロッパーの話をたくさん聞いているが、このような架空取引は上場会社のやることではないのは確かだ。

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 第三者委員会は、同社の従業員と役員合わせ441名にアンケートを実施し、333名から回答を得ている。

 具体的には、ザナック案件については言及する回答者が一定数あったほかは、①架空売り上げ計上に関与、あるいは役職員が関与したり、指示したりするのを見聞したことがあるのは全体の6%②他の会社との不適切な取引に関与したり、見聞したことがない人は97%③回答者の92%が自ら又は周囲の従業員が、利益追求と比較して、法令や倫理を重視する姿勢を有していると答えた④ナイスグループは法令や倫理を重視する企業文化・企業風土を有している会社だと思っている人は92%⑤上司の指示に法令や倫理の観点から問題があると思われる場合に、それを上司に言える、または上司以外の同僚に相談できる企業文化・企業風土があるか否かの質問に対しては、あまりないと答えた人は33%、ほとんどないと答えた人は5%-などが報告されている。

 この結果に記者は安堵した。当然のことではあるが、92%の従業員も役員も「ナイスグループは法令や倫理を重視する企業文化・企業風土を有している会社」だと思っていることは、この会社は健全であることを示しているし、今回の事案を経験したからだろうが、法令順守に関する社内研修・教育体制の充実を求める声が37%あるのにも納得した。

 すてきナイスグループは、この報告書も参考にしながら再生の道を歩むことになる。杉田理之社長は存じ上げないが、取締役の木暮博雄氏(前社長)はRBA野球大会に出場され、監督としても采配を揮っていた方だ。

 今の野球部もベテランと若手が機能するいいチームだ。ナイスのいいところである〝アットホーム〟な風土を引き継いでいる。選手の皆さんには、野球部が主導して会社を元気にする気構えでこの難局を乗り切ってほしい。

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 小生の取材フィールドである分譲住宅事業についてひとこと。同社の何よりの強みは地域を熟知している人材だと思う。同社はワンストップで様々なお客さんのニーズに対応するため、分譲と仲介・賃貸の垣根を取り払い、人的交流を進めている。これはやがて花を開くはずだ。

 その人材からして同社の分譲事業はもっと伸ばせる余地があると思う。同社グループの2019年3月期の住宅事業の売上高は637億円で、内訳は戸建てが298億円、マンションが92億円、管理が246億円だ。一方で、営業利益は3億円で、売上高営業利益率は0.5%にしか過ぎない。ほとんど儲かっていないことになる。同規模の他社は4~5%は確保しているのと比べ極端に低い。

 マンションも戸建ても同社が基盤とする横浜・川崎を中心とする神奈川県の競争は厳しいが、利益を生む事業に転換するのはそう難しいことではないと思う。

 何よりも、「お客様の素適な住まいづくりを心を込めて応援する企業を目指す」経営理念はどこにも負けないからだ。この理念の具現化こそ免震マンションだ。免震マンションの供給実績7,471戸に上り、首都圏ではナンバーワンだ。

 ただ、免震だけでは勝てない。最近のニーズを考えると立地条件に恵まれた用地の仕入れは必須要件で、商品企画の充実を図らないと生き残れない。基本性能・設備仕様レベルを向上させ、競争力を高めるべきだろう。商品企画では、コスモスイニシア、大和地所レジデンス、モリモトなどは参考になるはずだ。

 地域の有力企業などと連携して街づくりなどに注力すれば年間500戸、250億円くらいには伸ばせるのではないか。

 戸建てはよく分からないのだが、年間700~800戸というのは限界ではないか。背伸びしないでいただきたい。圧倒的な価格競争力がある飯田グループと競うのは容易なことではないし、大手デベロッパーなどとの競合も避けられない。長期優良住宅「パワーホーム」は大きな武器なのだろうが、何かが欠けているようにも思える。現場を取材して、その何かを探りたい。

 CLTはこれから伸びる。先駆企業として事業拡大が望める。「木造ゼネコン®」のトップランナーになれるはずだ。

すてきナイス 元会長・平田恒一郎ら3人逮捕 粉飾決算容疑 横浜地検(2019/7/25)

ナイス逆転勝ち 山本スクイズ外す好判断 村尾が猛打賞 東急リバブル 先制及ばず(2019/7/10)

富士山に登らなくて済む!? 忙しいママ・パパ向け ナイス「DIWKS PARFAIT」(2019/1/13)

ナイス 同社国内最大 延べ床5,000㎡の軸組「久喜ことぶき苑」特養見学会に200名(2018/9/8)

ナイス 首都圏の注文戸建て強化 同社初のモデルハウス「横浜」にオープン(2015/11/21)

ナイス 常識破りの「住まいるCafe」来館者は前年度比8倍増9.6万人(2014/4/3)

ナイス 桁外れの地域貢献「ヨコハマ オールパークス」が完成(2012/3/16)

首都圏初 「免震」&「外断熱」マンション ナイス「アルシア大森」(2010/10/22)

〝見える化〟徹底すれば売れる 外断熱のナイス「アルシア千歳船橋」(2009/2/13)

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 国土交通省は7月26日、「木造先導プロジェクト2019」(第1回)について一般建築物6件、木造実験棟1件のプロジェクトを採択したと発表した。プロジェクトは次の通り。

【一般建築物】

 大崎市鳴子総合支所庁舎等複合施設建設事業(地上2階建て延床面積1,745㎡、補助限度額82,422千円、講評:2層通しのCLTパネルを使用し、内部架構の簡易化や現しでの利用を可能とした木造建築)

 中央大学多摩キャンパス学部共通棟新築工事(6階建て延べ床14,500㎡、補助限度額15,803千円、講評:CLT耐震壁の一部を現し仕上げにするなど構造材として積極的に木質材料を使いつつ、木を見せるための工夫が図られている

 玉川学園学生寮建設工事(9階建て延べ床6,147㎡、補助限度額300,000千円、講評:9階建て学生寮を木造軸組構法と免震構造により建設する計画であり、これまでの木造建築の階数を大きく上回る規模のプロジェクト)

 (仮称)OYプロジェクト計画(10階建て延べ床3,497㎡、補助限度額300,000千円、講評:10階建て大林組研修施設を木造軸組構法と免震構造により建設する計画。これまでの木造建築の階数を大きく上回る規模のプロジェクト)

 京丹波町新庁舎整備事業(2階建て延べ床4,906㎡、補助限度額153,668千円、講評:地域産材を活用して、まちづくりとまちの防災の拠点となる新庁舎を建設するプロジェクト)

 旧岡山市立福谷小学校改修計画(3階建て延べ床2,450㎡、補助限度額25,337千円、講評:校舎を事務所及び工場(育苗施設)に用途変更する、コンバージョン。一部の既存RC壁にCLT耐力壁で耐震補強を行う)

【木造実験棟】

 CLT遮音実験棟新築工事(2階建て80㎡、補助限度額30,000千円、講評:国内に少ないCLT建築物の遮音性能を検証するための実験棟)

カテゴリ: 2019年度

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「みどりとSDGsセミナー」(熊谷組本社で)

 住友林業と熊谷組は7月24日、協業推進セミナー「みどりとSDGsセミナー」を開催。三井住友信託銀行 フェロー役員兼チーフ・サステナビリティ・オフィサー・金井司氏がESGやSDGsの最新の動向、同行の取り組みについて講演したほか、金井氏と熊谷組 設計本部 副本部長・羽迫英男氏、住友林業緑化 生物多様性推進室長・伊藤俊哉氏のトークセッションが行われた。

 セミナーには熊谷組の関係者を中心に約200名が参加。熊谷組 代表取締役社長・櫻野泰則氏、住友林業代表取締役副社長・佐藤建氏ら両社の役員・幹部らも多数参加した。

◇      ◆     ◇

 最大の収穫は、住林は役員・執行役員のほぼ全員25名が愛媛県新居浜市の子会社で働く障がい者が手づくりで作った木によるSDGsバッチを付けており、今後、部長クラスにも配布すると聞いたことだった。

 佐藤副社長に「わたしにも一つください」とおねだりしたが、「ダメ。これは売りものでもただで配るものじゃない。そんなに簡単に作れない」と断られた。(顔には〝お前のようなSDGsを理解しない者にあげられるわけがない〟と書いてあった)

 熊谷組も同じで、この日参加した役員はほとんどSDGsバッジを付けていたそうだ。こちらはアマゾンでも買えるメタル製で値段は千数百円。

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佐藤氏

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佐藤氏が付けているSDGsバッジ

◇       ◆     ◇

 この日(24日)の午前中は、「City Lab Ventures(シティラボ ベンチャーズ)」主催によるSDGsの先進的取り組みを紹介するイベント(別掲の記事参照)があったので、1日に2度もSDGsの取材ができると、記者はおっとり刀で熊谷組本社の会場に駆け付けた。午前のイベントの参加者は50~60名だったのに対し、こちらは約4倍の200名。両社による画期的な木造建築物の新工法でも発表されるのではないかと胸を膨らませた。

 メディアに公開されたのは金井氏の講演の後の後半の部分のみで、その冒頭に住友林業緑化と熊谷組が作成したSDGs・環境不動産の8ページのパンフレットの紹介が行なわれた。

 パンフレットの表紙は、二人の子どもが手を繋いで逆光の森を歩くあのユージン・スミスの写真そっくりだったので〝大丈夫か〟と心配になり、事例紹介として熊谷組が施工した台北市の「陶朱隠園(タオヂュインユェン)」や「愛知学院大学名城公園キャンパス」はともかく、35年も前の施工は熊谷組でなかった「三井住友海上火災の駿河台ビル」が掲載されているのにあきれ果ててしまった(住林は素晴らしい木造の非住宅事例がたくさんあるはず)。

 トークセッションでも真新しい取り組みは紹介されなかった。この時点で小生のフラストレーションは最高潮に達した。

 極めつけは、熊谷組の櫻野社長の締めの挨拶だった。櫻野社長は「恥ずかしながら、熊谷組は(SDGs・環境不動産)の取り組みに後れを取っている。意識を鼓舞してSDGsに貢献したい」と語った。

 これは身内に語った率直な声だったのかもしれないが、少なくないメディア(20人くらいいた模様)の前で話してほしくなかった。聞きたくもなかった。

 セミナー後、櫻野社長に記者は「後れを取っているというのは、木造建築の耐震・耐火・遮音・コスト全てという意味か」とストレートに質問した。櫻野社長は「後れを取っているというのは意識の問題。木造建築では10階建ての木造建築を建てるライバルの大林組さんなどに負けない」と答えた。

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パンフレット表紙

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櫻野氏 

〝世界に発信〟 企業×自治体 先進的SDGs取り組み事例紹介「City Lab Ventures」(2019/7/25)

カテゴリ: 2019年度
 

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