記者が選んだ今年(2014年)の「話題のマンション」は30物件。いつものようにモデルルーム・現地見学した95物件の中から選んだもので、必ずしも物件の良否を判断して選定したわけではないことを断っておく。「ベスト3マンション」はこちら。
●湾岸マンション
鹿島建設他「勝どきザ・タワー」
住友不動産「ドゥ・トゥール」
東京建物他「東京ワンダフルプロジェクトBAYZ」
今年も湾岸マンションが話題を集めた。主な新規供給鹿島建設他「勝どきザ・タワー」、住友不動産「ドゥ・トゥール」、東京建物他「東京ワンダフルプロジェクトBAYZ」の3物件。
「勝どき」の売主は鹿島のほか三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、住友商事、野村不動産の4社。総戸数1,420戸のうち販売戸数は1,318戸。6月に販売開始され、これまで約800戸が供給された。この物件については「ベスト3マンション」でも触れたので、そちらの記事も参照していただきたい。戸数が多く、後続の競合物件が控えているため、価格設定を低く抑えたのだろう。意思決定するのはユーザーだ。極めて品質が高く、割安感があるということにとどめる。
「ドゥ・トゥール」は1,450戸のツインタワー。他にSOHO216区画がある。坪単価は現状では最高値の350万円。同社によると販売は順調に進んでいるようだ。近くには前田建設工業が33階建て350戸の建設を進めているが、自社で売るのか、デベロッパーに卸すのか不明。各社が出揃った段階で決めるのか。
「BAYZ」は、「東京ワンダフルプロジェクト」第一弾の「SKYZ」(1,110戸)に続く第2弾で、戸数は550戸。建物売主は第1弾と同じ東京建物、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、東急不動産、住友不動産、野村不動産の大手6社に、土地売主が東京電力。残りは200戸くらいか。3月末までに完売するはずだ。ここは中央区ではなく江東区なので単価は低いが、今後は信じられない値段になるはずだ。
このほか湾岸では、三菱地所レジデンス・鹿島の「ザ・パークハウス晴海タワーズクロノレジデンス」(883戸)に続き「ティアロレジデンス」(861戸)が供給された。これらを合わせると戸数は約4,300戸。
東京オリンピック村は22棟約6,000戸が建設され、大会終了後に民間に分譲・賃貸として売却される。そのほか50階建てタワーも2棟建設するという。
中央区の12月の世帯数は前年比3.9%、人口は前年比4.1%それぞれ増加している。人口は最少だった平成9年の約72,000人から91.1%増の約138,000とほぼ倍増している。これからも爆発的に増える。空恐ろしい。「地方創生」は大丈夫か。
「驚きの次元が異なる」鹿島建設他「勝どきザ・タワー」(2014/4/18)
住友不動産、晴海のツインタワー「ドゥ・トゥール」分譲へ(2013/11/22)
東建など6社共同「東京ワンダフルプロジェクト」第2弾「BAYZ」分譲へ(2014/5/28)
●高額・億ション
森トラスト「フォレセーヌ赤坂檜坂」
安田不動産「レフィール参宮橋ヒルズ」
高額・億ションでは三井不動産レジデンシャルの「三田綱町」をベスト3マンションにしたが、他では森トラスト「フォレセーヌ赤坂檜坂」、安田不動産「レフィール参宮橋ヒルズ」が好物件。
「赤坂檜坂」は上層階が非分譲になっているが、分譲される可能性もあると見た。坪単価1,000万円でも驚かない。その価値はある。
「参宮橋」は、参宮橋の一等地で、坪単価415万円。極めて割安感がある。12月分譲ですでに35戸が完売。当然だろう。どこかの掲示板に記者の「こだわり記事」が貼り付けられており「提灯記事」だの「広告」だのと書かれていたが、記者はこれまで1銭ももらったことがないし、「広告記事」も一度も書いたことがない。今後もこれは貫く。記事でミスをするかもしれないが、金をもらってユーザーをミスリードするようなことは絶対しない。
本物の億ション 森トラスト「フォレセーヌ赤坂檜坂」(2014/10/22)
安田不動産「レフィール参宮橋ヒルズ」 立地よく割安の単価415万円(2014/12/11)
●御三家の低層マンション
三菱地所レジデンス ザ・パークハウス「上鷺宮」「二子玉川」
住友不動産「インペリアルガーデン」
三井不動産レジデンシャル他「パークコート渋谷大山町」
低層マンションでは三井・三菱・住友の御三家がなかなかいい物件を供給した。タワーもいいが、やはり住むなら低層だ。みんな価格が高くて普通のサラリーマンには手が届かないが、価格の安い郊外型も供給すれば売れるはずだ。
23区最大の第一種低層 三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス上鷺宮」(2014/4/4)
国分寺崖線に重なるランドスケープ秀逸 三菱地所レジデンス「二子玉川」(2014/11/25)
用地取得から10年 小石川植物園に隣接 住友不「インペリアルガーデン」(2014/1/16)
三井レジ他「パークコート渋谷大山町」 低層住宅街の大規模単価は470万円(2014/12/3)
●みんなで渡る〝新価格〟
代表格の日本綜合地所「ヴェレーナ木場公園」
記者の好きな魯迅の言葉を紹介する。「思うに希望とは、もともとあるものとも言えぬし、ないものとも言えない。それは地上の道のようなものである。もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ」(竹内好訳「故郷」より)。
この「希望」「道」をそっくり「相場(坪単価)」に置き換えていただきたい。〝新価格、みんなで渡れば怖くない〟-他社の高値待ちで供給を先送りする物件が続出したのも今年の大きな特徴だった。
記者が驚いた新価格は「ベスト3マンション」のトップに取り上げた野村不動産の「立川」だったが、この「木場公園」にも仰天した。「木場」「東陽町」では過去、野村不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンスなどが供給しているが、最高値は坪260万円だった。この物件は280万円。それでも売れているからなお驚いた。10年前に分譲された木場駅の駅近マンションは確か坪210万円だった。
日綜「ヴェレーナ木場公園」 木場・東陽町駅圏&同社物件の高値更新(2014/11/26)
●中堅デベロッパーの星
モリモト「ディアナコート本郷弓町」
モリモト「ピアース高田馬場」
記者はモリモトがデザイナーズマンションに転換してからだからもう20年くらい経つか、そのほとんどの供給物件を見学している。歓楽街で分譲されたある物件(これもよく売れたのだが)は評価しなかったが、商品企画は大手と互角かそれ以上だ。「中堅」と呼ぶのが失礼なくらいだ。
「本郷弓町」も「高田馬場」も素晴らしい。どうして業界紙の記者やジャーナリストは同社のマンションを見ないのか。不思議でならない。
あっぱれ!モリモト階数を2層分減らし天井高2.7m確保「本郷弓町」(2014/5/23)
単身者・DINKS向けの最高レベルマンション モリモト「ピアース高田馬場」(2014/2/17)
●大手に負けない商品企画
フージャースコーポレーション「デュオセーヌつくばみらい」
ポラス中央住宅「ルピアコート新小岩」
タカラレーベン「レーベンザTSUKUBA」「レーベン横濱汐見台ソラノテ」
大手の寡占化がどんどん進んでいる。情報収集力や資金力で歯が立たない中堅デベロッパーが生き残るには、大手が供給しないすき間を狙うか地方に転出するかだが、これもまたリスクが伴う。商品企画の差別化以外に方法はない。
その点で、シニア層をターゲットに絞り込んだ「つくばみらい」、〝ピアキッチン〟を進化させたポラス中央住宅、「太陽光」を最大の武器にあえて大手が供給する物件にぶつけるタカラレーベンは示唆に富んでいる。
フージャースコーポ シニア向け「つくばみらい」 新しい選択肢として人気(2014/5/31)
進化するピアキッチン ポラス中央住宅「ルピアコート新小岩」(2014/11/17)
つくばの一等地タカラレーベン「レーベンザTSUKUBA」が人気(2014/4/14)
したたかタカラレーベン 日本最大級「太陽光」に全戸100㎡以上「汐見台」(2014/1/16)
●高齢者施設と複合
NTT都市開発「ウェリス津田沼」
東京都は今年、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に一般住宅及び居住者のふれあいを促進する交流施設を併設した住宅の整備について、民間事業者からの提案を募集し、東急不動産、ナルド・コミュニティネット、NTT都市開発の3事業者を決定した。
「津田沼」は補助事業ではないが、考え方は同じ。サ高住と一体的に開発整備し、リスクを分散させるとともに付加価値をつけて供給しようという差別化戦略だ。サ高住との複合開発はこれから注目される。
併設のサ高住のサービスも受けられるNTT都市開発「ウェリス津田沼」(2014/11/4)
●駅前再開発・市街地開発
野村不動産「プラウド京急蒲田」
大京「ライオンズタワー柏」
新日鉄興和不動産他「武蔵浦和SKY&GARDEN」
三井不動産レジデンシャル他「GLOBAL FRONT TOWER」
近鉄不・京阪神不他「王子飛鳥山ザ・ファーストタワー&レジデンス」
京浜急行・大和ハウス「ザ・タワー横須賀中央」
明和地所「クリオレジダンス新杉田」
相鉄不動産「グレーシア調布」
駅前の再開発の威力をまざまざと見せつけたのは野村不動産「立川」だったが、同社の「プラウド京急蒲田」、大京「ライオンズタワー柏」、近鉄不動産・京阪神不動産・長谷工コーポレーション「王子飛鳥山ザ・ファーストタワー&レジデンス」、京浜急行・大和ハウス「ザ・タワー横須賀中央」、三井不動産レジデンシャル他「GLOBAL FRONT TOWER(グローバルフロントタワー)」など再開発マンションが話題を集めた。長期低迷を続けてきた明和地所も新杉田駅前で複合マンションを供給。順調に売れているという。相鉄不動産は京王線調布駅前の一等地で分譲した。
大京「ライオンズタワー柏」 竹中の免震で坪単価は230万円(2014/6/2)
「立川」に続き「京急蒲田」 駅直結の威力まざまざ野村不動産(2014/9/2)
近鉄不・京阪電鉄不・長谷工コーポ実利を取る戦法か「王子飛鳥山」(2014/4/23)
「武蔵浦和SKY&GARDEN」 販社に長谷工アーベストが選ばれた理由(2014/4/15)
中心市街地の活性化の起爆剤 京急・大和ハウス「ザ・タワー横須賀中央」(2014/4/14)
相鉄不動産 調布駅前の一等地で再開発マンション(2014/10/3)
三井不動産レジデンシャル他「GLOBAL FRONT TOWER」(2014/6/17)
明和地所 新杉田駅前の商住一体「クリオレジダンス新杉田」(2014/4/9)
●〝元気印〟
大成有楽不動産「オーベル志村城山」など
今年元気だったデベロッパーをあげるとすれば、大成有楽不動産を間違いなくその一社に入れる。2012年4月に建物・施設管理事業の大成サービスとマンション開発が中心の有楽土地が合併し、大成有楽不動産が誕生したが、その後着実に前進している。マンションの商品企画は一変した。2カ月で完売した「志村坂上」は立地が抜群だったし、「オーベル浦和レジデンス」、「オーベル金町レジデンス」も早期完売した。
大成有楽不動産「オーベル志村城山」 全67戸が2カ月で完売(2014/9/2)
●〝脱LDK〟〝間取り自由〟
三井不動産レジデンシャル パークホームズ「築地」「駒沢」
将来のマンションライフを見据え、着々と布石を打っているのが三井不動産レジデンシャルだ。〝脱LDK〟の提案を「築地」で行った。「駒沢」では、女性でも簡単に動かせるキャスター付き「カナウシェルフ」を初採用した。単身女性のマンション購入を支援する女性向けサイト「モチイエ女子web」を立ち上げ、将来のマンションコミュニティを考えるイベントも行った。「新三郷」では「三井住空間デザイン賞」の発表会を行った。
三井不動産レジデンシャル “脱LDK”シニア層のニーズ取り込む「築地」(2014/1/14)
三井不レジデンシャル 可動間仕切りで間取り自由自在 「駒沢」に初採用(2014/5/28)
●最後の同潤会建て替え
三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス上野」
全部で16あった同潤会アパートのうち最後まで残っていた「上野下アパート」の建て替え、三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス上野」が分譲された。ホームページを見たら残りは2戸となっていた。
三菱地所レジデンス 最後の同潤会建て替え「上野」ワイドスパンがいい(2014/4/25)
●わが街
三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス多摩センター」
清水総合開発「ヴィークステージ多摩センター」
最後に、わが街の2物件を選定するのを許していただきたい。多摩センターは断じて〝オールドタウン〟ではない。この数年間で駅周辺に2000数百戸のマンションが分譲され、活気を取り戻しつつある。〝駅近〟で言えば三菱地所レジデンスの物件が最初で最後。多摩センター初の免震で、坪単価は「立川」より100万円以上安い。残りはわずかのはずだ。清水総合開発の物件も立地はいい。URの「わんにゃんワールド」跡地開発が待たれる。