青木茂建築工房は3月22日、同社が設計・監理を担当した「目黒クリニックビルリファイニングプロジェクト」の完成見学会を行った。従前は築52年のRC造4階建ての外に閉じられた礼拝所+事務所だったのを、リファイニング手法により用途の変更、耐震補強、設備更新、内外装を一新し、光と風を取り込んだ付加価値のある診療所に再生したもの。コロナ禍で見学を制限したが、予定の3部構成(各35名)合計105名は全て満席となった。
プロジェクトは、JR目黒駅から徒歩7分、品川区上大崎3丁目に位置する敷地面積約608㎡、1969年(昭和44年)竣工の鉄筋コンクリート造(地下2階地上2階建て) 延べ床面積約1,234㎡。従前は礼拝所+事務所だったのを診療所とする。設計・監理は青木茂建築工房(意匠)、金箱構造設計事務所(構造)、ZO設計室(設備)。施工は日本建設。監理は青木茂建築工房。2021年2月に竣工した。
この日、東京のサクラの満開宣言が行われ、可憐なハナニラ(別名、キリスト生誕の星とされるベツレヘムの星)もあちらこちらで咲き誇っていた。I'm REFINING!
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このプロジェクトについては昨年10月に行われた解体工事見学会も取材している。そちらの記事も参照していただきたいし、過去の同社のリファイニング建築物についても取材したほとんどすべての記事も添付したので、ぜひ読んでいただきたい。
今回のプロジェクトは、用途が診療所ということもあるのだろうが、従前は各フロアともほとんど片側しか開口部なかったのを、窓をたくさん設けることで南北に風が抜けるようにし、バルコニーに設置した緑を取り込み、内装にヒノキの突板とジョリパット(塗り壁)をふんだんに用いて〝癒し〟の空間を演出しているのが特徴だ。
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見学者から「全部取り壊して、新しく建設してもコストは同じくらいではないか」という声もあったが、これは全くそうではない。
記者は、これまでもたくさんリファイニング建築物を見学してきたが、おそらく、今回の診療所を新たに建設したら坪単価は最低でも150~160万円はする。一方で、今回は躯体をそのまま利用しているので、坪単価はほぼ3分の2くらいで収まっているはずだ。
リファイニングの凄いのは、このようにコストを大幅に削減しながら機能性もデザイン性も一新することだ。この価値をお金に換算したらいったいいくらになるか。目視で唯一従前のものだと判断できたのは、階段室の小さな窓だけだった(コストを抑えるためか、施主の意向か)。
SDGsにも貢献している。青木氏の説明によると、新築するより83%のCO2削減を実現したという。これまた凄いではないか。この価値はいくらになるか。
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