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山代氏(ホテルオークラで)

 不動産流通経営協会(FRK)は6月6日、定時総会を開き、新しい理事長に同協会副理事長の山代裕彦氏(三井不動産リアルティ代表取締役社長)を選任した。前理事長の榊真二氏(東急リバブル代表取締役社長)は副理事長に、前副理事長の田中俊和氏(住友不動産販売代表取締役社長)は顧問に就任した。

 山代氏は次のように就任のあいさつをした。

 不動産流通市場は、低金利政策の下支えの下、順調に推移しています。

 レインズによりますと、平成30年度の首都圏の既存住宅市場としては、成約件数、取引金額ともに前年度を上回り、マーケットとしては底堅い動きで、総じて堅調な一年だったと言えるかと思います。

 当協会は、社団法人としては昭和45年に不動産センターとして設立され、来年の令和2年5月29日には創立50周年という節目の年を迎えます。

 この度、国土交通省の「不動産業ビジョン2030~令和時代の不動産最適活用に向けて~」に示されているように、当協会も不動産流通を担う一因として「ストック社会」の実現などビジョンに掲げられた目標の達成に向け、その貢献が強く求められているところです。

 このような重要な時期に、わたしは理事長に就任することになりました。当協会が時代の流れを敏感に読み取りながら、新しい価値の創造と実現を目指し、令和時代の要請にしっかりと応えていくことが重要だと考えております。

 このため、わたしとして、特に力を入れてまいりたいことを3点ほどお話ししたいと思います。

 まず、一点目として、不動産流通市場の活性化、円滑化を進めるための「政策提言」と、その基となる「調査研究」、そして適時・適格な「情報発信」を重点活動として、これまで以上に努めてまいりたいと思います。

 特に、当協会の長年の課題でもあります、既存住宅の入通促進のための税制改正です。

 人生100年時代を迎え、ライフスタイルやライフステージに応じて多様化する住宅ニーズを支えるための税制改正要望については、関係諸団体と協力して、しっかりと活動してまいりたいと存じます。

 次に、第二点目として、不動産の特性や需要に即して、柔軟かつ的確なビジネスが展開できるよう、新たな不動産流通制度・システムの構築に貢献してまいりたいと考えております。

 次に、三点目として、お客さまの視点に立って、お客さまが抱えている問題を的確に解決できる仲介サービスを提供することが肝要であります。ネット時代を受け、不動産流通会社と消費者との情報格差が格段に縮小する中にあって、質の高いサービスを提供できる不動産会社が選択される時代となっています。

 こうした時代だからこそ、人が主役の不動産流通業として、その果たす役割は、ますます重要になってくると思われます。

 消費者の皆さまから信頼され、評価される不動産流通業たるべく、その担い手となる営業従事者への教育研修には、これまで以上に注力してまいりたいと考えております。

 目の前には解決を要する課題が山積しております。来年4月には民法制定後、実質的に初めての債権法に関する改正民法の施行が目前に迫っております。不動産流通の現場で不安や混乱が生じることのないよう、万全を期したいと考えております。

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◇      ◆     ◇

 山代理事長には、三井不動産リアルティ社長としてお願いを一つした。「社長、(RBA野球の星の)志村さんを試合に出させてください」と。

 山代氏は笑って「わかりました」と話した。

 これで本日の取材の目的は達せられた。山代社長は、記者の話を了解されたのか、志村さんに試合に出るよう勧めるのかどうかは不明。記者は志村さんと、旭化成ホームズの北寒寺さん、野村不動産アーバンネットの中川さん、トラバースの梅田さんや木ノ内さんなどとの対決をみたい。生きているうちに実現してほしい。ストレートに弱くなった北寒寺さんはバントヒットを狙うような気がする。

 

カテゴリ: 2019年度

 昨日(6月5日)、全国住宅産業協会(全住協)の新会長に東海住宅産業協会理事長で内田橋住宅社長の馬場研治氏が就任し、18年間会長を務めた日神不動産会長兼最高経営責任者・神山和郎氏は名誉会長に就任したことを業界紙が報じた。

 記者は訳あって十数年前に同協会とは縁を切った(正確には同協会事務局と)のだが、神山氏の次の会長は誰が就任するのだろうという関心はあった。同協会の会長は創業社長が就任するという不文律があった(と思い込んでいるだけかもしれないが)からだ。思い当たる人は何人かいたが、そうではなく、また東京以外の会社の社長が就任したのにやや驚いた。

 しかし、これも時代の流れか。名古屋市が本拠の内田橋住宅の創業は昭和10年というではないか。三井不動産の創業は同16年(越後屋の創業は1673年)だからそれより長い。そして、東海圏の会社社長が同協会のトップに就任するのが何よりも嬉しい。

 不動産流通研究所のWeb「R.E.port」に掲載された馬場氏と神山氏の挨拶文を以下に引用する。

 馬場氏は「住宅や住生活サービス面で何をどう取り組んでいくかが大きな課題となっている。われわれの主要なターゲットは多様な庶民。首都圏と地域経済とのバランスを図りながら、社会の隅々まで光が当たるような協会活動、政策提言に全力を傾け取り組んでいきたい」と語った。

 神山氏は、「理事長・会長を拝命して18年間、皆さまのご指導、ご協力により無事務め上げることができた」「組織は常に代替わりをして新しい血を入れていかないと長続きしない。令和の幕開けに、世代交代して新しい体制を発足することができた」と話した。

◇       ◆     ◇

 同協会には少なからぬ縁があるので少し追加する。

 小生は、同協会の前身、住宅産業開発協会(住産協)を立ち上げ、初代会長に就任した大京創業者の故・横山修二氏が活躍されていた頃からずっと取材を続けてきた。マンションのイロハを教わったのが大京であり、中堅デベロッパーを応援したい気持ちがあったからだ。

 同協会のもう一つの前身、日本ハウスビルダー協会の会長を務めていた木下工務店の創業者で社長だった故・木下長志氏にも懇意にしていただいており、大手デベロッパーが中心の不動産協会や、マンションデベロッパーの団体だった日本高層住宅協会(後に不動産協会と統合)に負けない団体に成長することを願っていた。

 実際、少なくともバブルが崩壊するまでは、マンションも分譲戸建ても〝中堅〟が主役だった。マンションは大京やダイア建設などの会員会社が市場の半分くらいを占めていたはずだ。当時の大京は首都圏だけでも年間1万戸くらい供給していた。分譲戸建て市場でも木下工務店、細田工務店、六建建設などが市場をリードしていた。

 その後の経緯については省略する。同協会が住宅・不動産業界で存在感を示す団体になってほしい。

 参考までに、横山氏と木下氏の追悼記事を添付する。

戦争体験と大京草創期を知る貴重な資料 「横山修二 講話」(全住協機関誌より)(2018/8/9)

土地を耕し、種を植え、花を咲かせた 木下長志氏(享年92歳)お別れの会(20178/2/28)

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空っぽの貯木場(新木場二丁目で)

 前回は、「都市計画法ではありえない住宅不可の、駅前に行かないと飲食店はなく、フーゾクもない151haもの広いエリアに男女比71:17の88人の方はどのような生活をしているのか、職業は何か興味をそそられないわけではないが」と書いたが、やはりその興味というか誘惑には抗えなかった。早速取材に出かけた。

 「(仮称)三井リビングラボ新木場」は駅から徒歩9分の表示だが、長丁場も予想し、スタミナを温存する意味もあり、また情報を仕入れる意図もありタクシーに乗った。「人? 住んでないですよ。飲食店? ありません」運転手はつれない返事。空振り。

 建物が解体中の「(仮称)三井リビングラボ新木場」の前から取材開始。運よくバイクに乗っている郵便局員に出会えた。「住宅? 分かんない」またも空振り。なんのなんの、西武の山川のような気分だ。空振りを恐れて取材ができるか。

 片っ端から営業している材木屋、倉庫などに声を掛けた。「10年位前からいるけど、そんな人知らないなあ」「歩き? 駅前にレンタル自転車あるけど。そんな恰好(スーツにネクタイ)して歩いたら、熱中症になって死にますよ」(ありがとう)「ここはそうじゃない。他を当たって」「ここは住んじゃいけないことになっている。知らない」「〇〇の息子さんが住んでいるという噂を聞いたが…まあ、どこだって事務所に住もうと思えば住めなくもないが…」

 ここまで約1時間。10カ所くらい回ったが、全て空振り。汗が噴き出す。野球の試合の取材では6時間くらい平気だが、もう限界。空っぽの貯木場の写真を撮って帰りのタクシーを呼んだ。「住宅? それらしきもの知ってますよ」「えっ、それじゃ、そこ行ってください」

 その現場に着いた。建物は鉄筋か木造か判別できないが、住宅といえば住宅だし、事務所のようでもある3階建てが建っていた。窓はあったが、男性も女性も子どもも下着は干されていなかった。表札には法人らしき名札が3つ4つかかっていた。業種までは分からない。フーゾクではなさそうだった。外観からは何屋さんか分からない。

 小生は意外と無鉄砲なところがある。その筋の人が出てきたらどうしょうかとも考えないではなく、近くの貯木場に丸太ではなく、枯れ木の流木みたいな土左衛門として浮上し、カラスの餌にされるのではないかという恐怖も襲ってきたが、ええーいっ、ままよとばかり、郵便配達人のようにコツ、コツと二度ドアをノックした。

 ものすごく長く感じたが、おそらく待つこと数秒。返事がないのに安堵した。小生はそれほど馬鹿でもない。写真を撮る勇気はなかったが、住所も法人名も控えた。もうこれ以上書かない。

 ところで皆さんは建築基準法でいう「住宅」とは何かご存じか。第二条に「共同住宅」「居室」などはあり、建築物の細かな規定はあるが、「住宅」そのものの定義はない。

 どうなっているのか。江東区の担当者は「法律をつくった国土交通省に聞いてほしい」といったし、国土交通省の担当者は「個々の案件は特定行政庁が判断する」とのことで、つまり、定義などは存在しないことのようだ。小生が「師匠」と仰ぐあるハウスメーカーの建築の専門家も「調べるから時間をください」としか答えてくれなかった。

 ここでクエッション。そもそも法律ではっきりした定義がないものを地区計画で禁止する行為はいかがなものか。

 参考までに、総務省の「住宅・土地統計調査」では「住宅」とは次のように定義している。

 「一戸建の住宅やアパートのように完全に区画された建物の一部で、一つの世帯が独立して家庭生活を営むことができるように建築又は改造されたものをいう」とし、「『完全に区画された』とは、コンクリート壁や板壁などの固定的な仕切りで、同じ建物の他の部分と完全に遮断されている状態をいう。また、『一つの世帯が独立して家庭生活を営むことができる』とは、次の四つの設備要件を満たしていることをいう。①一つ以上の居住室②専用の炊事用流し(台所)③専用のトイレ④専用の出入口屋外に面している出入口又は居住者やその世帯への訪問者がいつでも通れる共用の廊下などに面している出入口」とある。

 しかし、これも、バスもトイレもないわずか7㎡(2.1坪、4.2畳)の部屋を1戸とみなすセーフティネット住宅との整合性をどう説明するのか。

 それにしても、このような地域にライフサイエンスの最先端ベンチャーを誘致する三井不動産はすごい!マンションではないから、RBA・話題のマンションベスト3には入れられないが、某媒体の今年のヒット商品番付で横綱になるのは間違いないと思うが、どうだろう。

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「(仮称)三井リビングラボ新木場」の建築予定地

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新木場2丁目の街並み

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こちらの貯木場も空

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駅前の看板(駅の南側が新木場1丁目、島の部分が新木場2丁目、下が新木場3丁目、辰巳3丁目は地図の左上の部分)

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新木場駅前(左の建築物がホテル。今年8月に竣工予定)

住宅不可の151ha〝処女地〟新木場にライフサイエンス拠点 三井不の新事業(2019/6/1)

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 三井不動産リアルティは5月31日、不動産仲介事業の売買仲介取扱件数が33年連続で全国No.1を達成したと発表した。

 2018年度の売買仲介取扱件数は全国で41,533件(2017年度40,658件、前年度比2.1%増)となり、1986年度から2018年度まで33年連続の全国No.1となった。

 取扱件数第2位の住友不動産販売の2018年度は37,058件。その差は縮まりそうで縮まらない。

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 マンション管理業協会は6月3日、協会設立40周年を記念して、昨年まで実施してきた「マンションいい話コンテスト」をリニューアルし新たに住み心地や建物・設備などマンションにおけるバリューアップを図った事例や提案を募集する「マンション・バリューアップ・アワード(MVA)2019」を開催すると発表した。

 募集テーマは、①マンションライフ部門(住み心地、居住価値向上)②工事部門(建物資産価値の向上)③防災部門(防災力の向上)④財政部門(組合財政の健全化)⑤高齢者対応部門(居住者の高齢化に伴う先進事例)。

 応募資格はマンション管理組合、サークル等組織、マンション居住者、管理会社、管理員、マンション管理士、設計事務所関係など誰でも可能で、複数部門への応募も可能。応募期間は6月3日(月)~8月31日(土)。

 賞及び賞品はグランプリ1点40万円(従来は30万円)、部門賞数点各10万円、特別賞数点ほか。

 応募方法など詳細は「マンションのWa」サイト内で。

マンション管理協 いい話コンテスト「かわら版って、いいよ!」 高橋さんグランプリ(2018/12/4)

 

 

 

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芳井氏(如水会館で)

 プレハブ建築協会は5月31日、通常総会後の記者会見を行い、芳井敬一会長(大和ハウス工業社長)は3つの重要課題として、災害に備える準備を行うこと、10月に予定されている消費増税後の反動減の有無を注視すること、住宅ストック向上に向け先導的な役割を果たすことを上げた。

 また、「先日、事務局から報告を受けたデータを見て、会員会社の退職者の退職理由が〝自分の成長が感じられない〟というのが多いのに衝撃を受けた。働き甲斐が感じられるような業界にするための方策を検討していく」と語った。

 平成30年度のプレハブ住宅の着工戸数が減少していることについては、「賃貸との併用などはカウントされていないものも少なくない。精査しないと分からない部分もある」と、業界全体として工業化住宅をさらに進めていくと話した。

 平成30年度の住宅着工戸数は前年度比0.7%増の952,936戸だったが、建て方別でプレハブは同3.9%減の130,916戸で2年連続の減少、ツーバイフォーは同2.5%減の116,690戸で2年連続の減少となった。

◇       ◆     ◇

 芳井会長が働き方改革に言及したのに注目したい。芳井氏は5月16日行われた大和ハウス工業の経営方針説明会でも「第6次中期経営計画」の最終年度2021年度までに「従業員の働きがい実感度」を現状の65%から80%へ、「取引先総合満足度」を現状の70%から90%へそれぞれ引き上げると語った。

◇       ◆     ◇

 プレハブの着工戸数の減少はよくわからない(記者は木造ファンだが)。しかし、木造だって丸太のまま輸入されるケースは激減し、現場で大工さんが材木を切り、かんなを削る時代はとっくの昔になくなっている。〝プレカット〟が主流だ。分譲マンションもほとんどがprefabricatedだし、ケミカル製品だらけだ。

 その一方で、洋服は「既製品」から「レディ―メード」「プレタポルテ」に、「中古住宅」は「既存住宅」「安心R住宅」に変わった。小生はもう40年も昔から「プレハブ」という呼称は改めたほうがいいとずっと思っている。

 

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 農林水産省は5月31日、平成30年の外国資本による森林買収の事例について調査結果をまとめ発表。全国で30件、373haの事例が報告され、このほか国内の外資系企業と思われる買収も43件、359haあり、合計で732haに上っている。

 規模が大きいものでは、いずれもアメリカの法人が太陽光発電を目的に兵庫県姫路市で118ha、上郡町で140haを買収しており、宮城県大崎市でも太陽光発電目的の米国法人による2haの買収が報告されている。太陽光発電目的では平成29年もいわき市で90haの米国資本による買収事例が報告されている。

 平成18年から30年の累計は223件、2,076haで、市町村別では北海道倶知安町の62件、318ha、砂川市の1件、292ha。

◇       ◆     ◇

 記者の記憶では、目的が不明なものはたくさんあるが、太陽光発電目的として森林買収が報告された事例は平成29年の1件に続き続きこれで4件目だ。

 太陽光発電は森林資源や生態系への影響も大きいはずで、この種の買収に注視する必要があるのではないか。昨日も「新木場」の記事で書いたが、118haは皇居より広い。2,076haは港区とほぼ同じだ。

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 住友林業は531日、タイで初めての戸建て分譲事業を現地の大手不動産開発と合弁で約1,400戸開発すると発表した。

 住友林業100%子会社のSumitomo Forestry Singapore Ltd.SFS社)とタイの不動産開発会社Property Perfect PCLPF社)との共同事業で、首都バンコクの中心部まで車で約1時間の約52haの敷地に5つのプロジェクトを開発。延べ床面積110230㎡/戸、平均分譲価格162USドル/戸で20196月に開発を開始、2027年の完成を目指す。総投資額は約190百万USドル。出資比率はSFS社が49%、PF社が51%。

 同社は年間、米国で10,000戸、豪州で3,000戸の販売体制の確立を目指しており、アジア圏は米豪に次ぐ第3のエリアとして事業領域の拡大を図っている。

 

 

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 国土交通省は5月31日、消費者が安心して購入できる物件に国が商標登録をしたロゴマークの使用を認める「安心R住宅」制度の運用を平成30年4月1日に開始して1年が経過したことを受け、登録事業者9団体を対象にした調査結果を発表。平成31年3月末時点で1,266件の既存住宅が「安心R住宅」として流通(広告に標章が使用されるなど)していることが確認できたとしている。

 内訳はリフォーム済が1,139件(一戸建て349件、共同住宅等790件)、リフォーム提案127件(一戸建て118件、共同住宅等9件)。

 

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「(仮称)三井リビングラボ新木場」完成予想図

 首都圏のJR・私鉄の全駅名を諳んずることができるギネス級の才能の持ち主のアンビシャスの安倍徹夫社長にははるかに及ばないが、小生はマンションや戸建てが分譲された駅はほとんど〝踏破〟している。数えてはいないが、400駅くらいはあるはずだ。

 東京メトロ有楽町線・りんかい線・JR京葉線3駅が利用できる、東京駅から約10分の新木場駅は2度ほど、マンション見学ではなかったが降り立ったことがある。1度目は20年前、貯木場を見るためだった。沢山の丸太があり、小さいころ見た筏師を思い出した。もう一度は、木造中高層建築物「木造会館」を見学するためだった。

 そして一昨日(5月30日)、驚いたことに新木場は地区計画で「マンションは不可」になっていることを三井不動産関係者から聞いた。

 工業専用地域(工専)でも調整区域(条件付きだが家も店舗も建つ)でもあるまいし、東京駅から電車で10分の交通利便なエリアで住宅建築を不可とする地区計画などはあり得ないと思ったが、区のホームページと担当者に確認したらその通りだった。

 平成11年11月15日付で従前の用途地域・工専を準工業に変更し、なおかつ「新木場・辰巳三丁目地区 地区計画」を定め、「木材関連をはじめとする多様な生産・流通機能と商業・業務機能などが共存できる複合地区の形成を図る」目的に適さない住宅や風俗系建築物、廃棄物処理場を不可とした。

 網をかけたエリアは江東区新木場一丁目、新木場二丁目、新木場三丁目及び辰巳三丁目の約151haだ。規模は、約180haの昭和記念公園には負けるが、約115haの皇居を上回る広さだ。

 試しに、区のホームページで住民登録をしている人がいるかどうかも調べた。何と74世帯88人が〝住んでいる〟ではないか。男女別では71人:17人。圧倒的に男性が多い。

 この不可思議を都市計画担当者に伝えたら「既存不適格? それはあり得ない。もともと工専だから、住んでいる人がいるとすればNG(罰則はないそうた)」と話した。このことを住民登録担当に伝えたら、広報に回され、広報担当の方も答えられなかった。つまり、住民登録と都市計画法はリンクしていないことは明らかだ。

 都市計画担当者から話を聞いて、地区計画を決定した平成11年のころ、当時の江東区長とデベロッパーの間で大喧嘩したのを思い出した。区長は、激増するマンション開発に小学校などのインフラが整備できないと激怒し「マンションなど蹴とばしたい」と都の都市計画に関する会合で発言した。工専が解除されるのを見越して土地を購入していた大手デベロッパーは色をなくし、色めき立った。新木場を「住宅不可」としたのは知らなかった。(個人的には〝何でもあり〟の準工用途が圧倒的に多い同区には同情するが…)

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新木場の位置図(〝海の孤島〟ではあるが都心に残された〝処女地〟であることが分かる)

◇       ◆     ◇

 ここまではプロローグ。都市計画法ではありえない住宅不可の、駅前に行かないと飲食店はなく、フーゾクもない151haもの広いエリアに男女比71:17の88人の方はどのような生活をしているのか、職業は何か興味をそそられないわけではないが、本当に書きたいのはこれからだ。

 5月30日、三井不動産は記者発表会を行い、オフィスビル、住宅、商業施設、ホテル・リゾート、物流施設に続く、新しいアセットクラスの不動産事業である「賃貸ラボ&オフィス」事業を開始すると発表した。

 「三井のラボ&オフィス」は、これまで日本橋を中心に進めてきた一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネッ トワーク・ジャパン(LINK-J)と連携した「コミュニティの構築」、イノベーションによる新産業の創造・育成につながるエコシステムを構築するための「場の整備」、およびライフサイエンス系ベンチャー企業へのLP投資をおこなう「資金の提供」の取り組みをさらに一歩進めるもので、「本格的なウェットラボ」(創薬や再生医療等の研究者が液体気体等を使って実験を行う場所のこと)と「オフィス」が一体化した施設の賃貸事業のことだ。

 具体的な取り組みとして「(仮称)三井リビングラボ葛西」「(仮称)三井リビングラボ新木場」を開設し、柏の葉でも計画していることを明らかにした。

 「葛西」は第一三共の延べ床面積約678坪の研究棟を賃借(マスターリース)する。2019年9月竣工。

 「新木場」は駅から徒歩11分、同社が土地を賃借し、ラウンジ、会議室、共通実験機器室なども利用可能な6階建て延べ床面積約2,280坪の事務所棟を2020年1月に竣工する。ワンフロア30坪から最大480坪まで賃貸可能。

 会見に臨んだ同社常務執行役員でLINK-Jの理事を務める植田俊氏は「この種の事業は欧米ではけた違いの規模で行われているが、わが国には市場そのものがない。具体的な事業規模は現段階で申し上げられないが、マーケットメークし、当社の6番目の新しい事業に育てたい。『コミュニティ』の構築、『場』の整備、『資金』の提供を3本柱とし、わが国がライフサイエンス産業における世界に冠たるアジアナンバーワンの地位を確立することに貢献する」と話した。

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右から植田氏、三枝氏、LINK-J理事 事務局長・曽山明彦氏

◇       ◆     ◇

 小生はライフサイエンスのことはちんぷんかんだが、同社ライフサイエンス・イノベーション推進部長・三枝寛氏などによると、米国ボストンには新木場をはるかに上回るライフサイエンス拠点があるという。2025年の先端医療・ライフサイエンス市場を約2兆円と予想した富士経済のレポートもある。

 さて「新木場」に戻す。東京駅から10分の至便な位置に皇居を上回る約151haにも及ぶ土地に「住宅不可」の地区計画の網をかぶせてきたからこそ乱開発を防止してきた。〝海の孤島〟というよりは都心に残された最後の〝処女地〟だ。

 地価はどうか。地価公示は坪当たり約100万円(容積200%として1種50万円)で、〝陸の孤島〟晴海の坪470万円と比べると5分の1だ。

 同社がいくらで賃借したかは分からないが、賃料は都心一等地の数分の1ではないか。同社の発想力には舌を巻くほかない。湾岸開発は同社の十八番だ。

◇       ◆     ◇

 以下は、いわばエピローグ。同社が3年前、ベンチャー共創事業に関する記者発表会を行った際の同社取締役専務執行役員・北原義一氏(現同社代表取締役副社長執行役員)の感動的な名演説を紹介する。

 北原氏は「当社の事業の柱であるオフィス、商業施設、分譲住宅を野球に例えるなら3番、4番、5番のクリーンアップ。しかし、これが20年先、30年先、永遠に続くわけではない」と切り出し、「ダーウィンは『変化に順応できるものが生き残る』といったが、それだけでは十分でない。変化の後追いだけでは進歩はない。そのためには、異端、異能を重視し、柔軟性のある社会に変えないといけない」「社会を切り開くのは既存のベンチャーの専売特許でもない。当社のオフィス・商業施設のネットワークは約5,500社の50万人、60万人にのぼる。こうしたオフィスワーカーのベンチャースピリットを覚醒させ、化学反応、爆発を誘引したい。そこから新しい産業が生まれるかもしれない。わたしはワクワクしている」「もう一つ重要なのは、短期的利益を求めず、中長期的視点で育てていくということだ」などと語った。

 ひょっとしたら、菰田正信社長も北原副社長も第4、第5(第3は心当たりあり)の〝東京ミッドタウン〟候補に「新木場」を上げているのではないか。10年先には〝東京ミッドタウン新木場〟構想が発表される可能性があるのではないか。

 江東区の都市計画担当者は「オフィス? もちろん可能。地区計画の変更? 手続き上は可能ですが、まずありえない。ホテル計画の相談があったが、インフラの整備ができず立ち消えになった。都市再生特区? 10年くらい先のスパンであればありうるかもしれない」と話した。

 冒頭の貯木場に戻る。あれから20年。木材の輸入形態が丸太から製品に変化したことなどにより、貯木場はいまほとんど未使用状態のようだ。筏師は観光地でしか見られなくなった。

三井不動産 〝ワクワクする〟発表会 ベンチャー共創に50億円投資(2016/2/24)

木造とコンクリートの見事な調和を図った「木材会館」(2012/10/2)

カテゴリ: 2019年度
 

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