モリモト・武蔵新田vsオールジャパン(三菱・三井・野村)・矢口渡 多摩川決戦
「アールブラン武蔵新田」完成予想図
モリモトが4月下旬に分譲する「アールブラン武蔵新田」を見学した。駅から徒歩5分の全79戸で、開放的な二方角地に立地。プランもよく早期に完売するとみた。
物件は、東急多摩川線武蔵新田駅から徒歩5分、大田区矢口1丁目の準工業地域に位置する7階建て全79戸。専有面積は36.57~82.39㎡、価格は未定だが坪単価は320万円くらいになる模様。竣工予定は2020年1月下旬。設計・監理・施工は長谷工コーポレーション。デザイン監修は南條設計室。
現地の用途地域は準工だが、ほとんど嫌悪施設はない二方角地。敷地南側は道路を挟んで低層の住宅街が、敷地西側は道路を挟んで氷川児童遊園。
建物はコの字型で、中心は南向き。住戸プランは66㎡でもスパンが7550ミリ、70㎡で8450ミリあるワイドスパン・アウトフレームが特徴。
主な基本性能・設備仕様は、ディスポーザー、食洗機、リビング天井高2450ミリ、パネル張り廊下壁など。
販売チーフの同社・関根祥朝氏は、「250万円? それくらい安くできれば自販機、われわれはいらないということです。坪単価はみなさん納得されている。会員優先で半分くらい売れるかもしれません。競合? 負けません」と話していた。
現地(手前は氷川児童遊園)
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プランがいい。記事を書くより同社がパンフレットにも盛り込み、販売事務所にも掲げているパネルを見ていただきたい。
左が専有面積66㎡の間取りで、間口を7.5m確保し、廊下面積を少なくした結果、居住面積は約30.4畳大となっているのに対し、右は約71㎡の約5.8mの一般的なプランでは約30.9畳大となり、ほとんど変わらないことを図示している。
沿線には、東急多摩川線矢口渡駅から徒歩12分の三菱地所レジデンス・三井不動産レジデンシャル・野村不動産の3社JVマンション「ザ・ガーデンズ多摩川」(378戸)が同時期に分譲される。こちらは駅からややあるため、坪単価は270~280万円くらいになりそうだ。
価格的に競合するのは必至だ。だからこそ、66㎡と71㎡のプランを図示して、優位性をアピールしている。
三菱・三井・野村の物件もモデルルームはモリモトと目と鼻の先にオープンするようだ。モリモトはもちろん勝ちます、勝つ、勝てば、勝とう-ということのようだ。しかし、相手だって〝オールジャパン〟だ。どちらが勝つか、多摩川決戦が見ものだ。
同社のプラン(左)と一般的な物件のプラン
「はがきの木」タラヨウ植樹 日本郵便 社宅活用の老人ホーム、保育園、賃貸竣工
「グランダ目白弐番館」
日本郵便は3月28日、社宅跡地を活用した「グランダ目白弐番館」、「ニチイキッズかみいけぶくろ保育園」、「JPnoie三田」が完成したと発表した。
「グランダ目白弐番館」は介護付き有料老人ホームの「グランダ目白弐番館」と保育所の「ベネッセ目白保育園」の複合施設。ベネッセスタイルケアに一括賃貸し、同社がそれぞれ運営する。
施設は、豊島区西池袋二丁目に位置する3階建て延べ床面積約3,116㎡。定員は有料老人ホームは58名で、2019年3月開設。保育所は60名で、2019年4月開園予定。
「ニチイキッズかみいけぶくろ保育園」は、同社が建設した保育所としては「ベネッセ板橋三丁目保育園」、「ベネッセ目白保育園」に次いで3棟目。ニチイ学館に一括賃貸する。
施設は、豊島区上池袋二丁目に位置する木造1階建て延床面積約497㎡。定員72名。施工は住友林業。2019年4月開園予定。
「JPnoie三田」は全23戸の賃貸住宅で、「JPnoie」ブランドによる賃貸住宅としては6棟目。
物件は、港区三田四丁目に位置する13階建て延べ床面積約1,744㎡、全23戸。設計・施工は髙松建設。賃貸管理は東急住宅リース。
「ニチイキッズかみいけぶくろ保育園」
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2019年3月期の経常収益12兆9,203億円、経常利益9,161億円の日本郵政グループが建設した施設がどのようなものか見学したかったのだが、すでに開設していることなどの理由で敵わなかった。
面白いのは、全ての物件に「はがきの木」と呼ばれるタラヨウを植樹し、保育所のエントランスには「ゆうびん」を表す点字をデザイン化し、子どもたちが手紙文化に触れるきっかけになればとの思いを込めたゲートを配置している。
皆さんはタラヨウの木をご存じか。記者は小さい頃、葉っぱの裏に字を書いて遊んだ記憶がある。
「JPnoie三田」
旧同潤会の長屋など木密地域を一新 旭化成不レジ・不燃公社「品川中延」竣工完売
「アトラス品川中延」
旭化成不動産レジデンスと首都圏不燃建築公社が参加組合員として開発を進めてきた「中延二丁目旧同潤会地区防災街区整備事業」のマンション「アトラス品川中延」が竣工し、3月下旬に引き渡しが行われる。防災街区整備事業の竣工事例としては東京都内6例目。関東大震災後の復興として旧同潤会が建設した木造戸建住宅の面影が残る木密エリアで、権利者も140名に及ぶ事業だったにも関わらず、準備組合設立から5年という短期間で竣工・引き渡することができた貴重な事例だ。
物件は、東急池上線荏原中延駅から徒歩4分、品川区中延二丁目に位置する13階建て全195戸(権利者住戸72戸含む)。専有面積は33.45~87.05㎡、坪単価は352万円。竣工は2019年2月下旬。設計・監理は日建ハウジングシステム。施工は長谷工コーポレーション。
2017年末に分譲を開始し、竣工までにほぼ全戸が成約済み。
集会所
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記者は一昨年の暮れ、現地を見て、モデルルームも見学している。周辺には狭隘な道路も残っており、正直、売れ行きの良さに驚いたのだが、完成した建物を見て、よくぞやったと称えたくなるほどよくできていた。
従前はすれ違うのも大変な路地が錯綜しており、敷地の約半数が60㎡未満で4戸1棟という長屋住宅が多く、旧耐震の建物が8割を超え、権利者の高齢化も進むという困難が伴っていたにもかかわらず、短期間で合意形成できたのは関係者の努力に尽きるのだろう。設計・監理に日建ハウジングシステムを起用する取り組み姿勢にも敬意を表したい。
完成した建物は、隣地との境界線に道路・通路を設けたほか、帰宅困難者を受け入れる共用部、かまどベンチ、防災井戸、非常用簡易トイレを備えた公園も整備した。駐車場の屋上を緑化し、庭園空間を設けているのも特徴。
分譲単価352万円というのは今となっては割安か。今なら坪400万円するかもしれない。(従前の現地を見たら手を上げるデベロッパーはいないと思うが…)
駐車場の上の2階屋上庭園
またまた怒り心頭 住宅新報の地価公示は住宅地のみ しかも千円未満は切り捨て
3月26日号の「住宅新報」は36ページ、3月25日号の「週刊住宅」は14ページ。双方とも地価公示特集だから増ページしたのだろうが、紙数は新報が圧勝。しかも同紙は「安心R住宅」と「不動産テック」の特集を組んでいる。
これまで記事批判ばかりしてきた小生は、特集を組む辛さもよくわかっているので、労をねぎらうことに決めた。そして褒めようと…新聞をたたもうとしたのだが、誤字脱字が「わたしを見つけて」と呼び掛けてくる感覚と同じだ。〝小さくて読めない〟新報の地価公示の紙面がささやきかけてきた。とたん、飛び上がらんばかりにびっくりした。何かの間違いだと。そして、またまた怒りが沸々と湧きあがり、やがて沸点に達した。我慢がならない。なぜだ。
紙面は、北は北海道から南は福岡まで12ページにわたって公示地点の価格を掲載しているのだが、住宅地だけで、商業地、工業地、調整区域をオミット(ミスではないはず)しているではないか。しかも1㎡当たり千円表示の「千円未満は切り捨て」だ。
冗談ではない。小生は鑑定士がどのように調査するかよく分からないが、手抜きなどしていないはずだ。住宅地も商業地も林地も平等に調査しているはずだ。地価公示の調査地点は26,000地点あり、用途別では約70%を住宅地が占めているのだが、他を除外していいはずはない。同紙はこれまでもそのようなことをしてきたのか。地価公示などどうでもよく、広告収入がはいればよいという魂胆がありありだ。国交省も読者もクレームを付けないのか。紙がもったいない。(個人的には地価公示はやめたほうがいいと以前から主張してきたが)
「千円未満の価格切り捨て」にも我慢がならない。不動産公取規約では、消費者の不利益にならないよう分譲価格や駅からの距離は切り上げ、敷地面積は切り捨てることになっている。地価公示で千円未満を切り捨てたら1坪で約3,000円、30坪で約10万円の差となる。小生も含めわが業界は坪でしか不動産価格を計れなくなっているが、どんぶり勘定は改めたほうがいい。同紙の記事が国交省のデータをそのまま引き写したのであれば、同省に苦情が殺到するはずだ。ただでは済まない。
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参考までに、地価公示の紙面の編集・製作がどれほど大変だったかを紹介する。
昔は国交省から文書データで渡され、印刷工場の植字工が一字一字拾って組み立てていく作業が必要だった。その手間と特集する取材時間を見込んで、報道解禁の10日前に資料が配布されていた。
校正作業が大変だった。ミスは許されない。どこのマスコミも元原稿を読む人と校正ゲラを読む人と2人一組で校正作業を行ったはずだ。
住居表示が浸透している東京都などはやさしいが、地方都市は難しい読めない漢字、例えば「匝瑳」(いすみ)などがたくさん出てくる。しかも「大字」「小字」などと長い。そうなると「えっと…読めない」「早く読め」「そんな字が読めないのか」とけんか腰になり、「ダメだ。代われ」となる。
具体例を示そう。兵庫県神戸市北区には「大沢町日西原字小屋かち2106--1」「山田町下谷上字猪ころび4-73」「有野町唐櫃字水ナシ2-12」がある。
「かち」「ころび」「みずなし」は発音する側からすれば「かちはひらがな」「猪ころびの猪は漢字、ころびは平仮名」「みずなしの水は漢字、なしはカタカナ」とでも読み上げないと正確に伝えられない。聞いているほうも「えっ、猪ころびの猪は漢字でころびは平仮名とは何だ」と聞き返さないとしっかり校正できない。「櫃」(ひつ)も死語と化している。読めやしない。ネットで調べたら「唐櫃」は「からと」と読むらしい。…こんなのをやってごらんなさい。泣けてくる。それでも記者はこうして漢字を覚えた。いつも作業は徹夜になった。そのあとで酒を飲む楽しみはあったのだが。
今はエクセルデータで各報道陣に配布されているはずだから手間は省けるし校正ミスなど起きない。音読の校正作業もなくなったのではないか。
「東京ミッドタウン日比谷」開業1周年 来街者2,200万人 売上高160億円超 三井不
「東京ミッドタウン日比谷」
三井不動産は3月27日、同社が運営する大規模複合施設「東京ミッドタウン日比谷」の来街者数が開業1周年を迎える2019年3月29日(金)に約2,200万人、売上高は160億円を超え、目標を大きく上回る勢いで伸長していると発表した。
「企業の価値創造」増加 メセナ活動の目的に拡がり 企業メセナ協議会調査
企業メセナ協議会は3月26日、全国の企業・企業財団を対象にした2018年度「メセナ活動実態調査」をまとめ発表した。回答があった企業328社、企業財団175のメセナ活動費総額は、企業が212億7,043万円(回答社数222社、1社平均9,581万円)、財団が553億5,616万円(回答団体数166団体、1団体平均3億3,347万円)だった。
メセナ活動の目的を5年前と比べると、「芸術・文化支援のため」87.2%(2013年67.5%)、「芸術・文化による社会課題解決のため」60.3%(同55.9%)、「社業との関連、企業としての価値創造のため」82.2%(同28.7%)となり、いずれも増加し、目的の多様化・拡がりがみられる。
活動の事後評価の観点では、「社会に対する効果・影響があったか」がもっとも多く60.3%(15年前は62.8%)で、「妥当性」52.7%(同33.9%)、「達成度」48.9%(同11.0%)、「経済性」30.5%(同11.2%)となっている。
2018年度に活動の事後評価をしていると回答した企業131社のうち約半数(65社)が、「地域や社会にプラスの変化が起きた」と回答したほか、「地域での自社のブランドが向上した」(63社)、「宣伝効果があった」(51社)、「顧客開拓・サービス向上につながった」(24社)などとなった。
メセナ活動の成果を10年前と比較すると、「実施地域において芸術文化への理解や振興が進んだ」は65.0%から65.6%へ増加したものの、「地域での自社のブランドが向上した」は61.1%から48.1%へ、「宣伝効果があった」は38.9%から38.9%へ、「顧客開拓・サービス向上につながった」は34.3%から18.3%へと伸び悩んでいる。
無限の可能性秘める 三菱地所「アクセラレータープログラムDemo Day」
第2回目「アクセラレータープログラムDemo Day」(丸ビル・コンファレンススクエアで)
三菱地所が3月22日に開催した第2回目「アクセラレータープログラムDemo Day」を取材した。応募200件の中から最終選考に残った5つのプロジェクトのDemoは、スマホですら満足に扱えないアナログ記者にとって何が何やらさっぱりわからない部分もあったが、ものすごく刺激的でワクワクするものばかりだった。みんな無限の可能性を秘めている。
同プログラムは、同社の事業領域にとらわれずベンチャー企業から事業提案を募り、同社の資産・ノウハウ・販路などの経営リソースと掛け合わせることで、新たなビジネスモデルの創出を目指すもの。この種の取り組みは盛んにおこなわれているが、領域を問わない企業の壁を越えたものは他にないという。2017年に行われた第1回に続き、今回は第2回目。
最終選考に選ばれたのは、「時短・道案内動画マップ」などを製作するブイテック研究所、音楽に関する情報を提供しているフォニム、AI・ドローンを駆使してビルメンテなどのソリューションビジネスを手掛けるアイ・ロボティクス、不動産情報などの検索・解析・調査データを提供するRESTAR、人工知能により万引き行動を察知する防犯カメラ技術を開発したVAAKの5社。
最初のDemoにしっかり耳を傾け、最後の懇親会でも各社に声を掛けた同社・吉田淳一社長は「当社の業務範囲を超え、社会課題を解決し、働き方改革のみならず暮らしを豊かにする提案を頂いた。引き続き5社で連携し、新たな価値創造につなげるよう期待しています。実現が楽しみ」と総評した。
会場には約100名が駆け付けた
吉田社長
◇ ◆ ◇
5社の取り組みを一つひとつ紹介する余裕はない。必死にメモは取ったが、いかんせん専門知識など全く持ち合わせていない。各社のホームページでどのような事業かを調べていただきたい。
5社のDemoを聞いて〝これは凄い〟と思ったのはアイ・ロボティクスだ。どのような外壁でも忍者のようにペタッとくっつき、汚れの種類にも対応できるドローンには驚いた。航空法の規制も受けないという。これが実用化されたら、あらゆる建築物の自動清掃に使える。
ただ、気になったことがひとつある。わが国のドローンの開発・サービスは圧倒的にアメリカや中国に負けているのではないか。特許などでがんじがらめにからめとられ、この分野でも米中の軍門に下るのではないかという懸念だ。がんばれアイ・ロボティクス!
フォニムにも注目した。音楽はみんな小さい頃、スポーツや習いごとに熱中した経験を持っているのに、年を取るごとに忘れられていくという指摘は説得力があった。
確かに考えてみれば、音楽もそうだがわが人類の原初的なコミュニケーションは祭祀であり口伝だった。文字が発明されても音読文化は継続した。いまは黙読だし、ネットの言葉は味もそっけもない。文化もない。音・声の文化を取り戻すのは困難かもしれないが、せめて文字の文化と繋ぎ合わせる役割を音楽は担っていいはずだ。音楽を日常不断に聴き、自らも演奏する仕掛けはつくれないものか。ヨーロッパには公共施設・空間に自由に使っていい楽器があるというではないか。
RESTARも面白かった。ビッグデータとAIによって様々なデータを解析、レポートまで作成するとい。概要入力も簡単に行うというスグレモノだ。
だが、しかし、殺人ロボットが開発されている時代だ。自社のマル秘データは外部に漏れないのか、外部に漏れることを想定してフェイクデータをたれ流したらどうなるのか、さらにまたAIを狂わすAIが出現したら市場はどうなるのか…何もかもAIに頼るのはものすごく危険とも感じた。
もう一つ。みんな欲張りすぎだ。限られたDemo、プレゼン時間の中で伝えたいことを分かりやすくアピールするテクニックがやや欠けているように思った。テーマは3つくらいに絞るべきだ。よく1分間に300字とは言われるが、それでも多いと思う。過ぎたるはなお及ばざるがごとし。
さらにもう一つ。記事を書いたこの日(3月26日)、三井不動産リアルティの三井のリパーク・災害支援寄付付き自販機設置に関する協定式を取材した。日赤の行動思想は「人間を救うのは、人間だ」-これを実践するAIをベンチャー企業にぜひ開発してほしい。
アイ・ロボティクスのドローン(シンプルで軽かった)
三井リアル×日赤×コカ・コーラ 三井のリパーク・災害支援寄付付き自販機設置で協定
左から藤原氏、片岡氏、大塚氏(日赤本社で)
三井不動産リアルティ(三井リアル)、日本赤十字社(日赤)、コカ・コーラ ボトラーズジャパン(コカ・コーラ)の3社は3月26日、三井リアルの駐車場事業「三井のリパーク」の赤十字災害支援寄付つき自動販売機の設置に関する協定を日赤本社で締結した。
協定は、三井リアルがコカ・コーラの商品を販売する寄付付き自販機から得られる収益金の一部を日赤に寄付するもの。4月1日(月)から全国の自販機約1,800台を対象に順次対応していく。日赤が特定の企業・団体と協働した支援自販機の設置台数としては過去最大規模。
協定調印式で三井リアル常務執行役員シェアリング事業本部長・片岡純市氏は、「当社は街のインフラとして少しでも社会に役立つため『災害支援型駐車場』を全国5カ所に設置しているが、もっと増やせないかと今回の寄付になった」と語った。
コカ・コーラ社の執行役員ベンディング事業本部長・藤原義樹氏は、「三井不動産リアルティさんから相談を頂き、継続して支援していこうと実現した。当社の掲げる『地域密着』の理念に沿うもの」と話した。
これを受けて日赤副社長・大塚義治氏は、「本当にありがたいこと。支援は金銭的だけでなく、双方のリーディングカンパニーの気持ち、精神は励ましにも励みにもなる。この気持ちを真正面で受け止め、災害救援事業に取り組んでいくことを約束します」と述べた。
左から大塚氏、片岡氏、藤原氏(自販機の前で)
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さすが日赤というべきか。調印式前から普段の会見とは異なっていた。司会の女性の方が「皆さん、関係者が入場されますので後方を向いて大きな拍手でお迎えください」と呼び掛けたではないか。その声はとても静かだったが、思いやりが込められていた。数十人の参加者はみんな拍手した。息子の結婚式だってこんな厳かな気持ちにさせられたことはない。
同じような光景は数年前、広島の三菱地所レジデンスマンション事業説明会で、地元の記者の方が司会者の広報マンに拍手したのを経験しているが、あれは完全に〝さくら〟だった。今回は断じてそうではない。愛のなせる業だ。
小生はきっときれいな女性が先導役になって現れるのだろうと胸を膨らませたが、三人ともおじさんだったのには肩透かしを食らった。しかし、調印式も粛々と行われたので、三者の心意気が直に伝わってきた。
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いったいいくら寄付するのだろうと聞いたが、これはさすがに「非公表」だった。片岡氏は「自販機の収益金以外にも寄付することも考えている」と話した。
そこで調べた。日本自動販売機工業会の調査によると、2016年の自販機及び自動サービス機の普及台数は約494万台で、年間売上高は約4兆7,360万円となっている。1台当たりの売上高は約95.8万円だ。これを三井のリパークのコカ・コーラ自販機に換算すると約17億2,520億円。売り上げの1%だと約1,725万円となる。三井不動産全体の社会貢献支出額は年間50億円を超えるといわれており、三井のリパーク単独で1,725万円は妥当な額ではないか。間違っているか。
と、ここまで書いたが、三井リアルとコカ・コーラの契約はそうではないようだ。三井リアルは自販機を置く場所を貸借し、売上に応じて手数料を得るというシステムのようだ。なので、寄付額は異なってくる。
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これまでの震災・災害時にはそれなりに寄付も行ってきたが、記者は車の運転はしないので、この種の駐車場を一度も利用したことがないし、自販機で飲料水を買う(コーラは独身の頃はよく飲んだが)のも年に10回あるかどうかだ。いい機会だと思い、セレモニーで用意されていた自販機でお茶でも買おうかと思ったが、中身は空だった。残念。
それでもしっかりコーラ類の金額は確認した。大きいのはみんな160円だった。藤原氏に「同業他社の商品より高くないですか」ときいたら、「同じ」という返事だった。
しかし、オフィスに戻り、喫煙室の自販機で値段を確認したら同じ商品でも140円だった。藤原氏が答えたのは屋外の駐車場にある自販機の値段は他社と同じと理解した。
みなさん、どんどん三井のリパークと自販機を利用して寄付してください。小生はタバコと酒でしっかり納税する。
関係視野揃って記念写真
防災アンケート回収率1割 なぜ 大阪市北区/管理員の処遇改善 喫緊の課題
協定締結式に臨んだ鈴木氏(左)と上野信子・北区区長(北区ホームページから)
なぜ、なぜ、なぜ――2週間前の3月14日に行われたマンション管理業協会(管理協)の記者懇談会で話題になったことが頭から離れない。
それは、同協会副理事長で関西支部長の鈴木清氏(阪急阪神ハウジングサポート代表取締役)が語った次のことばだ。
「この種の取り組みは全国初だが、北区が実施した区内360のマンション管理組合を対象とした防災に関するアンケートの回収率は1割だった」
この種の取り組みとは、今年1月に大阪市北区とマンション管理業協会関西支部が地域のコミュニティの推進、防災・減災及び災害対応、福祉・子育て支援の充実などを図ることを目的とした連携協定を締結したことを指す。
これを聞いてわが耳を疑った。そんな低いはずはないと。そこで、北区担当者にも確認した。鈴木氏の指摘は間違いではなかった。
北区担当者は「アンケートは全て郵送で、実施したのは昨年2月。防災に関する質問が主で、今回の協定締結につながるような意向も示しました。ところが回答があったのは360組合のうち30組合のみ。担当者が各マンションに出向き、手渡しで行えばまた違った結果にかったかもしれませんが、職員もそんな余裕はありませんし。区内には投資用のマンションも少なくないので、回収率の低さの一因かもと考えているのですが…」と、低い回収率の原因をつかみかねている様子だった。
記者は「大阪市北区」はいったいどこにあるのかも知らないが、ネットで調べたら「東京都北区」とは全く異なる、梅田や中之島がある市の中心地だった。東京都でいえば千代田区か中央区のようなエリアだ。
そのような中心地を対象にした区の防災に関するアンケート調査の回収率が1割とは…。これはしっかり考えないといけない。
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実はもう一つ、小生の胸の内で熾きのようにくすぶり続けているものがある。管理員と思われる奥さんからのメールだった。劣悪、過酷な処遇が連綿とつづられ、「藁をもすがる思い。何とかして」と認められていた。事実関係が分からない小生は「わたしにできることは何もありません」としか返事のしようがなかった。
この日の懇談会でも、ゴミ出しに関する問題提起が報道陣からなされた。小生などはほとんど考えたこともないが、いまのマンションは24時間ゴミ出しOKになっており、それぞれのゴミを分別し、回収日に合わせて運ぶのも管理員だ。夏場のゴミ置き場はどのような状態なのかを想像するだけで息が詰まる。小生は管理員の掃除をつぶさに見学したことがあり、そのプロ意識の高さ、完璧な仕上がりに驚嘆したことがあるが…。
マンション管理員の処遇改善は喫緊の課題であることを管理協も認識しており、今年7月をめどに管理員の労働実態をまとめるという。高齢化、なり手不足、賃金の低さなどが明らかになるはずだし、今後どうするのか、管理組合と一緒になって考えないといけない。
〝掃除は科学 床は朝日、窓は読売〟 マンション管理員のスゴ技を1日体験(2017/2/25)
不動産情報サイト「街とマンションのトレンド情報局」岡本郁雄氏が立ち上げ
不動産ジャーナリストの岡本郁雄氏が不動産情報サイト「街とマンションのトレンド情報局」(https://mansiontrend.com/)を2月下旬に立ち上げた。「広げよう世界を 深めよう知識を 見つけよう理想を 始めよう物語を」をコンセプトに、街づくりやマンショントレンドを中心とした不動産関連情報などを無料で配信している。
岡本氏は1967年岡山県倉敷市生まれ。神戸大学工学部工業化学科卒。1989年、リクルート入社。住宅情報事業部で首都圏のマンションなどを担当したのち、2004年4月に独立。マーケティングや不動産コンサルティング業務に関わってきた。ファイナンシャルプランナーCFP®、中小企業診断士、宅地建物取引士などの資格を持つ。
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本日(3月25日)、初めてサイトを見た。トップ記事は「2019年公示地価 台東区・荒川区が上昇率トップ」の記事だった。中身は見ていない(酒が入っているから)。写真だけ見て唸ってしまった。文句なしに美しい。悔しいけど小生は完敗。小生の数万円のものよりはるかに高いカメラで撮っているようだ。読者の皆さん、このサイトを「お気に入り」にして読まれることをお勧めする。間違いなく役に立つ。
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小生は、いわゆる「住宅評論家」は前にも後にも故・佐藤美紀雄氏しかいないと思っているが、ひょっとしたらその肩書を背負える人は岡本郁雄氏ではないかと10数年前から思っていた。デベロッパーに対する質問が並みの記者では全然気が付かない鋭いものだったからだ。
「無料サイトを立ち上げる。ひも付きではない」とご本人から聞いたとき、御用評論家にはならないという意思がひしひしと伝わってきた。大丈夫かと心配もしているのだが、やれるところまで突っ走っていただきたい。
業界関係者の方々には、岡本氏を販促のための「住宅評論家」にだけはしないことを願いたい。デベロッパーもハウスメーカーも自立した評論家を育てることが結局は業界の発展につながるのだから。