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 三井不動産は4月1日、入社式を行い、菰田正信社長が次のように挨拶(要約)した。

 入社おめでとうございます。皆さんを心から歓迎します。

 三井不動産グループの歴史は、日本の経済・社会の発展とともに、その時代の「パラダイム転換」を捉えた、新たな「価値創造」の歴史です。その価値創造に果敢にチャレンジし、常に自らのビジネスをイノベーションすることが、当社グループのDNAであります。

 当社グループのコーポレートステートメントである「都市に豊かさと潤いを」は、人が暮らし、働き、憩う「都市」を豊かで潤いのあるものにするという強い思いを示したものです。またグループビジョンに「&EARTH」を掲げていますが、これは都市に豊かさと潤いを提供する上で、地球環境との共生を常に意識しながら行動していくという意志を表しています。

 世界の先進国では少子高齢化や環境問題などの社会課題を抱えていますが、我々は街づくりを通して様々な社会課題を解決し、持続可能な社会を実現することを目指しています。またグローバル化が進んだ現代において都市の魅力の高まりは、世界中から人材や資金、情報を集め、日本経済の活性化にも大きく貢献することになり、当社が担う役割は、社会的な意義が大きなものとなっています。2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催は絶好の機会であり、「街づくりゴールドパートナー」として、当社グループの街づくりの魅力を世界に発信していきたいと考えています。

 グループビジョンで示す「&マークの理念」は、多様な価値観を「どちらか」「OR」ということで選択するのではなく、「どちらも」「&」として両立・共存させようというものです。お客様の価値観の多様化に応えていくためには、当社自身の中に多様性を取り入れ、多様な価値観・多様な才能を持った人材が持てる力を最大限に発揮し、シナジーや化学変化を起こせる会社にならなければなりません。

 入社にあたり、皆さんに期待すること、心掛けていただきたいことは、以下の5点です。

 まず「自立した個人」になること。今日を新たなスタートラインと位置づけ、自らの力で人生を切り開き、高い志を果たしてください。

 二つ目は、「幅広い視野を持つ」こと。社会、経済の変化の激しいダイバーシティの現代において、自らの可能性を最大限に伸ばしていくためには、「好奇心」や「ネットワーク力」、価値ある情報を選び取る「感性」が必要です。社内外・世代を問わず、「人との交流」「出会い」を大切にし、物事を見る視野・人間の幅を「外向き」志向で広げてください。

 三つ目は、「チャレンジスピリットを発揮する」ということ。仕事をしていくうえで、様々な困難に直面することがあります。そういう時こそ、当社グループのDNAであるチャレンジスピリットを発揮していただきたいと思います。

 四つ目は、「健全な心身を保つ」こと。常に心と体の健康を保てるよう、十分な自己管理を心掛けてください。

 当社は今、多様な人材が自分にあった働き方でその能力を最大限発揮できるよう「働き方改革」に取り組んでいます。労働時間に制約があるという前提で、限られた時間で最大限の成果をあげ、それ以外の時間は、家族と過ごす時間も含め「個人を豊かにする時間」に充てようというものです。それが、社員としての人間の幅を拡げ、ひいては会社の組織としての力を強くすることにつながり、さらには社員の心身の健康を保つことにもつながると思います。

 そして最後は、「社会人としてのコモンセンスを持つ」こと。世の中の不祥事のほとんどは、常識の欠如に起因するものです。「コモンセンス」がしっかりしていれば、ごく自然にコンプライアンスの態勢がとれるはずです。

 当社の行っている事業は、社会的意義が大きく、人々に夢と感動を与えられる産業です。当社グループが、魅力あふれる企業グループであり続け、今後もたくましく成長していけるよう、共に頑張りましょう。

                                                                

 長谷工コーポレーションは4月1日、入社式を行い、辻範明社長が次のように挨拶した。

 新入社員の皆さん、入社おめでとうございます。

 長谷工グループは現在、好業績が続いていますが、これは東京オリンピック・パラリンピックに向けた建設・不動産市場の活性化の影響が大きいと考えています。ただし、2020年以降はこの追い風がやむおそれがあり、その時には中長期的な流れである、少子化・高齢化に伴う人口減少や世帯数減少の影響がより顕著に表れると思います。

 一昨年4月にスタートした中期経営計画「NBj計画」(New Born  haseko Jump up plan)は、2020年以降の新しい時代に向けたグループの基盤作りと位置づけています。時代の移り変わりに備えて、様々な変化が生じつつある時が今だと感じています。新入社員の皆さんは、目の前の仕事に一生懸命取り組むのと同時に、長谷工グループの進化の当事者としての意識を持ってこれからの日々を送ってください。

 年頭に今年のキーワードとして「堅忍不抜」という言葉を掲げました。「堅忍」は意思がきわめて強く、じっと耐え忍ぶこと。我慢強いこと。「不抜」は固くて抜けないという意味。合わせて、「辛く苦しいことがあっても我慢して、ひたすら意思を貫くこと」という意味になります。世の中の状況がどうであれ、安全・安心で快適な住まいを提供するために、“堅忍不抜”の精神で、社員全員が各々の立場・役割に則って、基本に忠実に業務に励んで欲しいと思います。

 長谷工の社員は、目標を与えられると粘り強く、最後まで諦めずに何とかしようという気持ちを持って行動します。長谷工のDNAとも呼んでいますが、自分の会社は自分で良くする、何とかするんだという気持ちを社員全員が共有していたからこそ、過去の修羅場・土壇場・正念場という3つの場を乗り越え、会社を成長させてきたのだと思います。長谷工グループは「大いなる中小企業」の集まりだと思っています。皆が会社のために何ができるかを常に考え、常に動く。現状に甘んじることなく全員で努力する。そんな人材になるように努力をしてください。

 「グループの全社員が営業マン」というプロジェクトを、グループ全体で進めています。一人一人が自分の所属する会社だけでなく、グループ全体のために行動するグループ連携の考え方が、長谷工グループの良いところであり、強みだと思っています。これからはいつもグループを意識して行動して頂きたいと思います。

 一日も早くこのグループの一翼を担う人材として活躍されることを期待しています。

 

 大和ハウス工業は4月1 日(月)、入社式を行い、芳井敬一社長が次のように訓示(要旨)した。

 新入社員の皆さん、入社おめでとうございます。役職員を代表して心よりお祝い申し上げます。入社は人生の新しい物語のスタートです。新元号とともに社会人人生を走っていく皆さんは、自分の目標を どのように実現していくかを考え、その目標に向かって努力を続けてください。

 現在、日本では消費税増税を控えており、世界経済でも米中の貿易摩擦や日韓問題など複雑な経済情勢となっています。こうした逆境に立ち向かっていくためには、皆さんの成長が不可欠です。

 そこで、新入社員の皆さんには期待と希望を込めてお願いしたいことが7点あります。

 1つ目は挨拶の徹底です。「おはようございます」「ありがとうございます」「お疲れ様です」などの挨拶はコミュニケーションの基礎となり、仕事を円滑に進めるための潤滑油になります。皆さんが率先垂範して、事業所を活気づけてください。

 2つ目は〝正対〟することです。問題が発生した時に、斜に構えたら解決できません。お客さまからの信頼獲得のためにも、何事にも嘘をつかず、逃げずに、常に前向きで〝正対〟してください。

 3つ目は周りの人への感謝です。皆さんは家族や親戚、友人など周囲の人に支えられて、ここまで成長してきました。ぜひとも、初任給は感謝の気持ちとこれからの決意を表すために使うことを推奨します。

 4つ目は、知識の積み重ねです。皆さんは良き同期・仲間であると同時に、好敵手です。現在、個人の能力差はほとんどありませんが、やる気次第で大きな差が生まれます。最初はほんのわずかでも、それが倍々になって如実に表れてきます。そのため、配属された部門はもとより、部門の垣根を超えて知識を得るとともに、 他社に就職した友人からも多くを学ぶことで社会全体を理解するよう努めてください。

 5つ目は心を切り替えるための「リセットキー」を持つことです。例えば、運動や読書、音楽、芝居の鑑賞 といった「リセットキー」があれば、悩んだときに笑顔になるための心の支えになります。仕事には浮き沈みがありますが、努力を続けるための活力にもなります。

 6つ目は特別な人財であることの認識です。当社では、創業者から受け継がれている夢「創業100周年 売上高10兆円の企業群」の実現に向けて業容を拡大していますが、創業100周年(2055年)の頃には皆さん の中から主要な経営層が輩出されます。そのため、皆さんは向上心を持ち、お互いに刺激し合って、切磋琢磨してください。

 最後に、創業者の著書「わが社の行き方」を熟読し、当社の原点を知ることです。皆さんが壁にぶつかった時に、「わが社の行き方」の中にある「行動第一主義」や「全員営業員たれ」、「スピードは最大のサービス」といった精神は、困難を乗り越えるためのヒントを与えてくれます。自分の状況に落とし込み、目標を達成するための道しるべとしてください。今後の活躍を大いに期待しています。

 積水ハウスは2019年4月1日(月)、西日本:琵琶湖マリオットホテル(滋賀県守山市)と東日本:ラディソンホテル成田(千葉県富里市)の2会場で入社式を行った。仲井嘉浩社長は琵琶湖会場で話し、成田会場で同時中継された。

 同社の新入社員は、グループ合計669人(積水ハウス470人、グループ会社199人)。サプライズゲストとして同社のCMソングを歌っている歌手の村上ゆきさんが西日本会場に登場、お祝いの言葉と同社CMソングやオリジナルソング「おかえりなさい」 「夢にできること」など3曲を披露した。

改革のキーワードは「イノベーション&コミュニケーション」

 新入社員の皆さん、本日は入社おめでとうございます。皆さんと一緒に仕事ができることを大変うれしく思い、また大変ワクワクしています。何故かというと、若く新しい感性を持った方たちが入社してきてくれたおかげで、さらなるイノベーションが生まれる可能性があると思っているからです。

 私は今、社内で「イノベーション&コミュニケーション」をキーワードに改革を進めています。もっともっと組織内 のコミュニケーションを活性化することによりイノベーションを起こそうと考えています。リーダー層にも、これからのリーダーは社員と「コミュニケーション」をとりながら、新しい価値を創造しなければならないと言い続けています。皆さんも是非、積極的にコミュニケーションをとるよう心がけてください。

 また、皆さんが配属された組織内だ けでなく、本日ここにおられる同期の仲間たちとのコミュニケーションも大事にしてください。これから長い人生、成功もあれば、壁に当たることもあります。そんな時、特に同期の存在はかけがえのないものとなるでしょう。

 そして、もう一つのワード「イノベーション」についてお話させていただきます。イノベーションと聞くと何か画期的な、または革新的なアイデアを考えないといけないのではないかと萎縮してしまうかもしれません。しかし、イノ ベーションというのは実はそんなに堅苦しくないのです。秘訣はお客様に新しい価値をどのようにご提供するか、言い換えれば「お客様がさらに幸せになっていただくためのアイデア」は何かないかと常日頃から考えていることが、イノベーションになるのです。

「人生100年時代の幸せ」を提供、地方創生などで社会にも貢献

 ここでお客様の幸せについてお話したいと思います。当社は「わが家を世界一幸せな場所にする」というビジョンを昨年発表しました。2020年に当社は創立60周年を迎えます。今まで住宅産業のリーディングカンパニーとして、先進的な技術で安全・安心・快適性を提供し時代を牽引してきました。

 これらに加え、これからは「人生100 年時代の幸せ」を提供していきます。第一弾として2020年春の販売を目指して「家が健康をつくりだす」をテーマに実証実験を開始しました。そして皆さんと一緒にイノベーションを起こし、お客様の幸せをアシストする サービスを次々とインストールできる住宅「プラットフォームハウス」を考えていきます。そしてお客様を幸せにするために、まずは皆さんが幸せになっていただきたい。

 このような思いで男性社員の1カ月以上の育児休業完全取得を宣言し、「イクメン休業」も開始しました。人生100年時代を幸せに生きるためには「有形資産」よりも「無形資産」が重要です。無形資産とは健康や家族、友人とのつながりや知識、スキルなどを言います。わかりやすく言いますと、しっかり睡眠をとって、家族や友人を大事にし、自分の知識やスキルを身につけるための学習を生涯怠らないということです。

 話は変わりますが、「Trip Base 道の駅プロジェクト」についてお話しします。これは各都道府県と組んで、1県当たり、3~5 施設の宿泊特化型のホテルを整備するプロジェクトで、地元で食事や体験をしていただくなど、少しでも地方創生のお役に立ちたいという思いで開始しました。既に3000室程の目処が立っています。地方には、まだ日本人も知らないような観光資源が眠っています。

 運営はマリオット・インターナショナル様にお願いして、地方が少しでも活性化できるように推進します。このプロジェクトは当社オリジナルの「βシステム構法」が支えています。防火、遮音性などの住宅で培ったノウハウが備わったこの構法は、ホテルや幼稚園、介護施設などでも 好評をいただいており、開発してくれた技術陣に感謝しています。

住宅のプロとして日々学び、コツコツとやり抜くことが大切

 皆さんは今日から住宅のプロです。プロスポーツ選手が毎日練習を怠らないように、常にプロ意識が必要です。建築や不動産に関する知識やハード、デザイン、インテリア、そしてファイナンシャルプランニング、税務、資金 計画、ライフサイクルコストなどの知識に至るまで学ぶべきことはたくさんあります。焦らずにコツコツ勉強してください。時に、壁に当たることもあるかもしれませんが、逃げずに「やり抜く」ことが大切です。当社グループで10年間コツコツと知識を蓄えていけば、どこに行っても通用する人材に必ず成長できます。私も睡眠時間や家族や友人との時間を大事にしています。そして日々新しいことを勉強しています。

 最後になりましたが、住宅のプロとして、多くの人を幸せにできるよう、ともに社会に貢献してまいりましょう。

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第6回「住宅団地の再生のあり方に関する検討会(第2期)」

 国土交通省は3月29日、第6回「住宅団地の再生のあり方に関する検討会(第2期)」(座長:浅見泰司・東大大学院教授)を開催。住宅団地再生に向け、検討会に設けたマンションワーキンググループ(座長:小林秀樹・千葉大大学院教授)、戸建てワーキンググループ(座長:大月敏雄・東大大学院教授)で行った議論について報告がなされ、意見交換した。

 マンションWGでは、マンションストックが高経年化していく中ではストックをできるだけ活用する努力が必要という考えから、地方公共団体が管理組合による適正な維持管理を促す方策や、管理が適正に行われていないマンションに対して行政が関与できる仕組みを構築する方向で検討すべきとした。

 また、建物の老朽化により生命・身体に危険を及ぼす蓋然性が高まったマンションについて、マンション及びその敷地を売却し、買請人による除却などを促進する方向で引き続き検討すべきとした。これまで建て替えが実現したマンションのうち200戸超は約8%であるのに対し、建て替え検討中の団地の約8割は200戸超の大規模団地であることを報告。タワーマンションの増加で管理の専門化・複雑化が不可避であるともした。

 さらに、団地型マンション内の一部棟を存置・改修しながら、建て替え・売却を行うことが可能な柔軟な再生の仕組みについても引き続き検討すべきとした。

 戸建てWGは、5ha以上の住宅団地は全国で約3,000団地存在し、居住者の高齢化、空き家の急増が懸念されることから、若者・子育て世帯にとって魅力的な場所として転入を促し、高齢者が安心して住み続けられるよう職住近接の就業機会を創出することが必要と報告した。

 また、用途が住宅に特化した団地が多く、多様な機能を導入することが困難なことから、多様な主体が参画し、住宅以外の機能や用途、就業の場の確保、ワンストップの行政手続きを可能とする方策が必要としている。

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左から大月氏、浅見氏、小林氏

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 この種の検討会が国交省内にどれだけあるか知らないが、これほど困難でなおかつ緊急を要すテーマは他にないのではないか。毎年ストックが積み上がる一方で遅々として進まない建て替え・再生、加速度的に進行する居住者の高齢化と比例するように下がる資産価値、こじれたら梃子でも動かない合意形成の困難さなどを思うと、記者などは頭が痛くなり、2時間も話を聞いていられない。記者と同じか、傍聴席ではコクリコクリと舟をこぐ人もいた。

 しかし、各委員は大したものだ。しわぶき一つしないで報告に聞き入っていた(聞いているふりをしていた人はいないはず)。記者がファンの櫻井敬子委員(学習院大学教授)が欠席されたのは残念。先生の本は素人でもよく分かる。先生の都合に合わせて会合の日にちを設定してほしい。

 発言者は少なかったように思ったが、これは議論が出尽くし各委員で課題・方向性を共有できているからではないかと推測される。

 そんな中で、宮原義昭委員(アール・アイ・エー会長)が「(建て替え・売却・除却などに際して)居住者の受け皿をどうするかを考えるべき」と、合意形成を容易にする取り組みを強化すべきと指摘した。心しないといけないことだ。

 最近の再開発、団地の活性化の事例では旭化成ホームズ「アトラス品川中延」と、鳩山ニュータウンを見学した。こちらも読んで頂きたい。

旧同潤会の長屋など木密地域を一新 旭化成不レジ・不燃公社「品川中延」竣工完売(2019/3/28)

鳩山NT活性化を「私自身がアート」藝大卒・菅沼朋香氏「ニュー喫茶 幻」開業(2019/3/23)

〝羽ばたけないかごの鳥〟国交省 団地再生検討会 エアコンなし 議論白熱30度超に(2018/6/8)

 国土交通省は3月28日、不動産業が持続的に発展していくための中長期ビジョンの策定に向けて、平成31年3月28日(木)に、第39回「社会資本整備審議会産業分科会不動産部会」を開催し、「新・不動産業ビジョン2030」(仮称)のとりまとめに向けた議論を行った。

 同部会は、少子・高齢化、人口減少社会の進展、AI・IoTなどの技術革新が進展し、社会経済が大きな変化を遂げており、また、オリンピック・パラリンピック東京大会後の概ね10年程度先を見越した不動産業の目指すべき方向性を共通して認識できる指針づくりが必要として中長期ビジョンの策定に向けた議論を進めているもの。

 新ビジョンは4月中に発表される予定。

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  こんなことを言っても詮無いことだが、「新・不動産ビジョン2030」(仮称)の取りまとめ案を読んで「おやっ」と思ったことが3つある。「たたむ」「心理的瑕疵」「平成の時代の終焉」いう文言だ。もちろん法律用語でもないので住宅・不動産行政に直接的な影響を及ぼすとは考えられないが、正直に言えば違和感がある。

 「たたむ」は、A4で全62ページのなかで3度登場する。①「ストック型社会」の実現に向けて「(空き家・空き地など)有効な活用方策が見込めない不動産は思い切って『たたむ』ことも視野に入れ、そのための適切な『たたみ方』や、その後の活用方策を探る必要がある」②「建替え、コンバージョン、リニューアルなど多様な選択肢の中から不動産の『たたみ方』を含めて提案し」③「不動産を早期に『たたむ』ことへの動機づけなど」だ。

 文脈からして「布団をたたみ収納する」というような意味ではなく、「店をたたむ」、つまりおしまいにするという意味で使われているのは間違いない。部会を開催した同省不動産業課でも公式文書で初めて用いた文言だという。

 どうもこの言葉は、東京都市大学教授・饗庭伸氏の著作「都市をたたむ」(花伝社、2015年12月)が初出のようで、饗庭氏は「それほど変わった言葉をつくったつもりではないのですが、拙著がきっかけで使われることになったと思います」とのコメントを寄せた。

 もう一つの「心理的瑕疵」は、「既存住宅市場の活性化が不可欠であるが、その実現を阻害しかねない要因として、昨今、過去に物件内で自殺や事件があった事実などいわゆる『心理的瑕疵』を巡る課題をどのように取り扱うべきかが課題となっている」と書かれている。

 「心理的瑕疵」は業界用語で、既存住宅市場や賃貸住宅市場で用いられており、事件などが起きたことを告げなければ重要事項説明違反に問われることもあるようだ。だが、しかし、これは社会的通年が優先するはずで、国交省の公式文書に使うべき類の「課題」ではないと思う。

 そんなことが問題になるのなら、事故死、孤独死が日常の特養や一部のサ高住はどうするのか。入居費を安くするのか。死後も「死に方」がずっと問われるのであればそれこそ死者も浮かばれない。四十九日法要(神式は五十日祭)か一周忌法要(キリスト教は1年後の昇天記念ミサがあるようだ)を過ぎれば重要事項説明から除外したらどうか。

 もう一つの「平成の時代が終焉」は、ビジョンの「おわりに」の冒頭で「平成の時代が終焉を迎えつつある…」といきなり出てくる。ここで読み進めなくなった。

 「終焉」はよく使われる言葉だ。小生も「バブルの終焉」などと何度も使用した。この語彙には有無を言わさない断絶、終息、滅亡などの強い意志が込められている。

 だから、「平成の時代が終焉」などと言われると、何だか平成と次の元号との間には大きな隔たりがあるように感じられてならない。そうならないように生前退位-新元号決定(公表)-退位・即位の儀が行なわれるのではないか。

 小生の身近な人にも「平成の時代が終焉」をどう思うかについて聞いた。「終焉」を肯定的にとらえる人もいたが、「終焉という言葉は好きではない」「デリカシーに欠ける」「中国でも使うことがあるが、意味は結末」などと話した。小生も同感だ。「幕を閉じる」もあまりいいイメージではないし、「たたむ」も適当でない。平凡だか「平成から〇〇へのリレー」「平成から〇〇へ年が明ける」などのほうがよほどいいと思うがどうだろう。

 このように書くと、反論もあるかもしれない。天皇陛下御自身が「天皇の終焉」と述べられたことがあるからだ。

 平成28年8月8日に宮内庁から発表された「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」の中には「これまでの皇室のしきたりとして、天皇の終焉に当たっては、重い殯(もがり)の行事が連日ほぼ2ヶ月にわたって続き、その後喪儀に関連する行事が、1年間続きます。その様々な行事と、新時代に関わる諸行事が同時に進行することから、行事に関わる人々、とりわけ残される家族は、非常に厳しい状況下に置かれざるを得ません。こうした事態を避けることは出来ないものだろうかとの思いが、胸に去来することもあります」と記されている。

 このお言葉に対して、8月12日付毎日新聞は西川恵氏の署名入りコラムで「天皇陛下が生前退位の意向を示唆されたお言葉で、強く印象づけられたのが『天皇の終焉(しゅうえん)』という表現だ。『逝去』でも、『死亡』でもない。ここには一個人の死を超えた、天皇が体現してきたシステム、体制、時代がピリオドを打つという意味が込められているように感じる」と報じている。

 しかし、どうだろう。天皇陛下はまさに「逝去」「死亡」について触れられていると小生は考える。天皇の逝去には重い殯(もがり)や喪儀に関連する行事が続くということを説明されたのだと思う。

 だからこそ、「象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ」退位を決断されたのではないか。

 そしてまた、「憲法で定められた象徴としての天皇像を模索する道は果てしなく遠く、これから先、私を継いでいく人たちが、次の時代、更に次の時代と象徴のあるべき姿を求め、先立つこの時代の象徴像を補い続けていってくれることを願っています」「私がこれまで果たすべき務めを果たしてこられたのは、その統合の象徴であることに、誇りと喜びを持つことのできるこの国の人々の存在と、過去から今に至る長い年月に、日本人がつくり上げてきた、この国の持つ民度のお陰でした」(在位30周年記念式典でのおことば)につながる。

 このお言葉からは、「平成の終焉」はもちろん、(国家・社会)システム、体制、時代がピリオドを打つという意味の「天皇の終焉」を示唆するものは全くないと思う。

 野村不動産は3月29日、「プラウドタワー武蔵小金井クロス」第一期(100戸)が最高2倍、平均1.05倍で即日完売したと発表した。

 専有面積は46.82~112.41㎡、価格は5,307 万~19,432万円(最多価格帯5,900万円台、7,100万円)。坪単価は370万円。登録者属性は、年齢:平均52.1 歳、家族数:平均2.6人。

 申込者の評価ポイントは、①都心への高いアクセス性と個性豊かな街が沿線にそろう人気のJR中央線②総開発面積52,000㎡超、中央線駅前最大規模となる壮大な再開発事業③12,000㎡超の商業フロア(食料品ゾーン等)へエレべーターで直結④ホテルライクな内廊下設計、各階ゴミ置場・食配ステーション・防災倉庫を完備-など。

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 これくらいは売れるだろうと予測していた。それより、全くの予想外なのが「プラウド恵比寿ヒルサイドガーデン」88戸(一般分譲対象外29戸含む)だ。すでに7割が販売済みのようだ。坪単価は恵比寿駅圏バブル崩壊後の最高値の900万円弱。

野村不の再開発タワー「musako」(武蔵小金井)は「musako」(武蔵小杉)を越えたか(2019/2/26)

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「アールブラン武蔵新田」完成予想図

 モリモトが4月下旬に分譲する「アールブラン武蔵新田」を見学した。駅から徒歩5分の全79戸で、開放的な二方角地に立地。プランもよく早期に完売するとみた。

 物件は、東急多摩川線武蔵新田駅から徒歩5分、大田区矢口1丁目の準工業地域に位置する7階建て全79戸。専有面積は36.57~82.39㎡、価格は未定だが坪単価は320万円くらいになる模様。竣工予定は2020年1月下旬。設計・監理・施工は長谷工コーポレーション。デザイン監修は南條設計室。

 現地の用途地域は準工だが、ほとんど嫌悪施設はない二方角地。敷地南側は道路を挟んで低層の住宅街が、敷地西側は道路を挟んで氷川児童遊園。

 建物はコの字型で、中心は南向き。住戸プランは66㎡でもスパンが7550ミリ、70㎡で8450ミリあるワイドスパン・アウトフレームが特徴。

 主な基本性能・設備仕様は、ディスポーザー、食洗機、リビング天井高2450ミリ、パネル張り廊下壁など。

 販売チーフの同社・関根祥朝氏は、「250万円? それくらい安くできれば自販機、われわれはいらないということです。坪単価はみなさん納得されている。会員優先で半分くらい売れるかもしれません。競合? 負けません」と話していた。

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現地(手前は氷川児童遊園)

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 プランがいい。記事を書くより同社がパンフレットにも盛り込み、販売事務所にも掲げているパネルを見ていただきたい。

 左が専有面積66㎡の間取りで、間口を7.5m確保し、廊下面積を少なくした結果、居住面積は約30.4畳大となっているのに対し、右は約71㎡の約5.8mの一般的なプランでは約30.9畳大となり、ほとんど変わらないことを図示している。

 沿線には、東急多摩川線矢口渡駅から徒歩12分の三菱地所レジデンス・三井不動産レジデンシャル・野村不動産の3社JVマンション「ザ・ガーデンズ多摩川」(378戸)が同時期に分譲される。こちらは駅からややあるため、坪単価は270~280万円くらいになりそうだ。

 価格的に競合するのは必至だ。だからこそ、66㎡と71㎡のプランを図示して、優位性をアピールしている。

 三菱・三井・野村の物件もモデルルームはモリモトと目と鼻の先にオープンするようだ。モリモトはもちろん勝ちます、勝つ、勝てば、勝とう-ということのようだ。しかし、相手だって〝オールジャパン〟だ。どちらが勝つか、多摩川決戦が見ものだ。

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同社のプラン(左)と一般的な物件のプラン

72㎡より64㎡のほうが有効面積は広い〟ワイドスパンで差別化 モリモト「高津」(2019/1/28

ワイイドスパンのプランがいい モリモト「アールブラン下丸子センティア」(2015/2/6)

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「グランダ目白弐番館」

 日本郵便は3月28日、社宅跡地を活用した「グランダ目白弐番館」、「ニチイキッズかみいけぶくろ保育園」、「JPnoie三田」が完成したと発表した。

 「グランダ目白弐番館」は介護付き有料老人ホームの「グランダ目白弐番館」と保育所の「ベネッセ目白保育園」の複合施設。ベネッセスタイルケアに一括賃貸し、同社がそれぞれ運営する。

 施設は、豊島区西池袋二丁目に位置する3階建て延べ床面積約3,116㎡。定員は有料老人ホームは58名で、2019年3月開設。保育所は60名で、2019年4月開園予定。

 「ニチイキッズかみいけぶくろ保育園」は、同社が建設した保育所としては「ベネッセ板橋三丁目保育園」、「ベネッセ目白保育園」に次いで3棟目。ニチイ学館に一括賃貸する。

 施設は、豊島区上池袋二丁目に位置する木造1階建て延床面積約497㎡。定員72名。施工は住友林業。2019年4月開園予定。

 「JPnoie三田」は全23戸の賃貸住宅で、「JPnoie」ブランドによる賃貸住宅としては6棟目。

 物件は、港区三田四丁目に位置する13階建て延べ床面積約1,744㎡、全23戸。設計・施工は髙松建設。賃貸管理は東急住宅リース。

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「ニチイキッズかみいけぶくろ保育園」

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 2019年3月期の経常収益12兆9,203億円、経常利益9,161億円の日本郵政グループが建設した施設がどのようなものか見学したかったのだが、すでに開設していることなどの理由で敵わなかった。

 面白いのは、全ての物件に「はがきの木」と呼ばれるタラヨウを植樹し、保育所のエントランスには「ゆうびん」を表す点字をデザイン化し、子どもたちが手紙文化に触れるきっかけになればとの思いを込めたゲートを配置している。

 皆さんはタラヨウの木をご存じか。記者は小さい頃、葉っぱの裏に字を書いて遊んだ記憶がある。

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「JPnoie三田」
 

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「アトラス品川中延」

 旭化成不動産レジデンスと首都圏不燃建築公社が参加組合員として開発を進めてきた「中延二丁目旧同潤会地区防災街区整備事業」のマンション「アトラス品川中延」が竣工し、3月下旬に引き渡しが行われる。防災街区整備事業の竣工事例としては東京都内6例目。関東大震災後の復興として旧同潤会が建設した木造戸建住宅の面影が残る木密エリアで、権利者も140名に及ぶ事業だったにも関わらず、準備組合設立から5年という短期間で竣工・引き渡することができた貴重な事例だ。

 物件は、東急池上線荏原中延駅から徒歩4分、品川区中延二丁目に位置する13階建て全195戸(権利者住戸72戸含む)。専有面積は33.45~87.05㎡、坪単価は352万円。竣工は2019年2月下旬。設計・監理は日建ハウジングシステム。施工は長谷工コーポレーション。

 2017年末に分譲を開始し、竣工までにほぼ全戸が成約済み。

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集会所

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 記者は一昨年の暮れ、現地を見て、モデルルームも見学している。周辺には狭隘な道路も残っており、正直、売れ行きの良さに驚いたのだが、完成した建物を見て、よくぞやったと称えたくなるほどよくできていた。

 従前はすれ違うのも大変な路地が錯綜しており、敷地の約半数が60㎡未満で4戸1棟という長屋住宅が多く、旧耐震の建物が8割を超え、権利者の高齢化も進むという困難が伴っていたにもかかわらず、短期間で合意形成できたのは関係者の努力に尽きるのだろう。設計・監理に日建ハウジングシステムを起用する取り組み姿勢にも敬意を表したい。

 完成した建物は、隣地との境界線に道路・通路を設けたほか、帰宅困難者を受け入れる共用部、かまどベンチ、防災井戸、非常用簡易トイレを備えた公園も整備した。駐車場の屋上を緑化し、庭園空間を設けているのも特徴。

 分譲単価352万円というのは今となっては割安か。今なら坪400万円するかもしれない。(従前の現地を見たら手を上げるデベロッパーはいないと思うが…)

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駐車場の上の2階屋上庭園

公開空地整備で容積40%緩和 旭化成不レジ・不燃建築公社「アトラス品川中延」(2017/12/14)

 

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