住友不 高級賃貸〝ラ・トゥール〟「渋谷神南」「渋谷宇田川」完成
「ラ・トゥール渋谷宇田川」
住友不動産は2月22日、高級賃貸マンション「ラ・トゥール」シリーズの「ラ・トゥール渋谷神南」と「ラ・トゥール渋谷宇田川」の竣工見学会を行った。前者はNHKや明治神宮、代々木公園の借景が素晴らしく、より渋谷駅に近い後者は免震構造のオフィスと合築で、空地率が半分くらいあるのが特徴。双方とも平均坪賃料は3万円くらいになる模様だ。ともに総合設計制度の適用を受けている。
「渋谷神南」は、JR渋谷駅から徒歩10分、渋谷区神南1丁目に位置する敷地面積約775㎡、延床面積約6,966㎡の22階建て全54戸。専用面積は73.68~130.28㎡。竣工は2019年1月8日。容積は500%から650%へ緩和されている。
「渋谷宇田川」は、JR渋谷駅から徒歩7分、渋谷区宇田川町に位置する敷地面積約5,226㎡、延床面積約37,942㎡の免震構造21階建て総戸数40戸(権利者住戸17戸含む)。専用面積54.31~126.22㎡。竣工は2019年2月28日。容積は400%から550%へ緩和されている。
「ラ・トゥール」は、2000年に竣工した「代官山」を皮切りにこれまで25棟・約3,400戸を所有。平均専有面積は100㎡以上、平均賃料は約60万円。入居者は企業経営者、外資系企業駐日役員、各界著名人など。ほとんどが満室という。
見学会に臨んだ同社賃貸住宅事業部長・堀慎一氏は「今期、当社は6物件760戸の賃貸を完成させ、トータルで5,000戸を突破する。そのうち約7割、3,500戸を占める都心立地に絞った『ラ・トゥール』は今回の渋谷の2物件のほか、『京都東山』『札幌伊藤』の地方も初進出する。20年前の第一弾の『代官山』を供給したころは外国人の比率が高かったが、最近の外国人比率は2~3割で、日本の富裕層の比率が高まってきている。マーケットの拡大、すそ野の広がりを感じる。渋谷はこれまで高級賃貸が少なく、賃料水準は著しくあがってきている」などと語った。
「ラ・トゥール渋谷神南」
「ラ・トゥール渋谷神南」眺望
「ラ・トゥール渋谷宇田川」眺望
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同社の「ラ・トゥール」を見学するのは10年ぶり。平均賃料が約60万円で、約3,400戸が満室というからすごい。
今回の「渋谷神南」は旧マンションで、標準階フロア3戸すべてが角住戸。天井高は2.65m以上。22階の128㎡の住戸の賃料は130~140万円になるというから、坪賃料は3.5万円くらいか。利回りを5%ととすると、分譲マンションの坪単価に換算すると850万円くらいになる(三井不動産レジデンシャルの定借「渋谷タワー」は坪単価900万円を突破しているのではないか)。北側住戸の眼下にはNHK、明治神宮、代々木公園などが見渡せる。
賃料は「神南より気持ち高くなる」(関係者)「宇田川」は、総合設計制度の適用を受けているのか、大きな公開空地を設けており、免震構造を採用。18階以上が賃貸となる。17階には200㎡を超える屋上庭園が設置されている。17階まではサイバーエージェントの「アベマタワーズ」が入居する。
よくもこんな広い土地が残っていたものだと聞いたら、スタジオなどかあったところで同社は10年くらい前から地権者などと協議を進めてきたという。
「ラ・トゥール渋谷宇田川」
「ラ・トゥール渋谷宇田川」
「ラ・トゥール渋谷宇田川」屋上庭園
狭小敷地だがプランは抜群 いくらになるか モリモト「ピアース旗の台」
「ピアース旗の台」完成予想図
モリモトが3月末に分譲するコンパクトマンション「ピアース旗の台」の現地を見た。駅から3分、ワイドスパンが特徴。価格は全く見当がつかない。皆さん、考えていただきたい。
物件は、東急大井町線・池上線旗の台駅から徒歩3分、品川区旗の台二丁目の商業地域・第一種中高層住居専用地域に位置する敷地約384㎡、11階建て全48戸。専有面積は20.91~53.71㎡、価格は未定。完成予定は2020年2月中旬。設計・監理はスペーステック一級建築士事務所。デザイン監修は南條設計室。施工は小川建設。
現地は、駅北口から商店街を通って、中原街道との交差点を左に曲がった角地。敷地南側は3階建てくらいまでの一戸建てや共同住宅・ビルが建ち並んでいる。建物は1フロア3~5戸。アウトフレーム、内廊下、最大約10.6mのワイドスパンが特徴。
35㎡のプラン(中住戸でもスパンは約5.1m)
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この前、みかんの値段をかみさんに問われ「20~30円」と答えたら「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と怒られた。
まあ、みかんの値段が分からなくても大勢に影響はない。しかし、マンション記者が現地を見てモデルルームを見て価格が分からなければおしまいだ。だから、「価格は未定」でもいつも単価予想をする。
だが、しかし、このマンションの値段は予想がつかない。決定的(と記者は思う)な難点があるからだ。これまで〝ピアース〟はたくさん見てきたが、敷地面積が100坪強という規模はほとんど前例がないのではないか。北側の中原街道に面しているのもマイナス要因だ。高速に面し、坪単価300万円台の前半だった「ピアース初台」が売れたのには驚いたが、敷地はもっと広かった。
プラス要因はある。さすがモリモト。スパンは30㎡でも約5.1m、35㎡で約6.0m、53㎡は約8.6m確保していることだ。これは他社も真似ができない。
デザイン監修に南條設計室・南條洋雄氏を起用しているのもプラス要因。狭小敷地のマンションに著名な建築家を起用するデベロッパーなどまずいない。南條氏はパンフレットで「周辺と調和するのではなく、この地の新たなシンボルとなるようなスタイリッシュかつ主張的なファサードを目指します」と書いている。
さらにもう一つ、昨日書いた「木になるリニューアル」駅舎はマンションの坪単価に換算して1万円の価値はあるのではないか。
さて、価格。コンパクト事業担当の方々にお聞きしたい。いったいいくらなら売れるか、みなさんはいくらに設定するか。
近隣には事例がないと思うが、坪単価320万円くらいの三菱地所レジデンス「ザ・プレミアスカイ品川中延」、坪単価352万円の旭化成不動産レジデンス「アトラス品川中延」はよく売れた。地所レジの「不動前」はいくらなのか。
他のコンパクトでは、立地に恵まれ、高額以外は瞬く間に売れた三井不動産レジデンシャルの「幡ヶ谷」は坪単価400万円だった。
ヒントを一つ。モリモトの関係者は「うちはどこと戦っても負けない(商品企画だけでなく価格もという意味か)」と豪語していることだ。先月書いた「72㎡より64㎡のほうが有効面積は広い〟ワイドスパンで差別化 モリモト『高津』(2019/1/28)」の記事と合わせて読んで頂きたい。
日本の父親の育児分担率は5か国で最下位 リンナイ調査
ワーキングママの「育児」に関する自己採点とパートナーの評価
リンナイ提供
日本の父親の育児分担率は5か国で最下位-こんな不名誉な調査結果をリンナイがまとめ発表した。
世界のワーキングママの育児事情を明らかにすべく日本(東京)、ワーキングママが少ない韓国(ソウル)、ナニー文化が浸透しているアメリカ(ニューヨーク)、共働きが主流のドイツ、福祉の充実度で有名な北欧スウェーデンの計5カ国の25~39歳の働きながら育児をする女性計500名を対象に今年1月に実施したもの。
調査によると、自分(母親)の育児の点数は、日本の平均点が5カ国の中でもっとも低いことが判明したほか、育児分担では日本の父親の分担度合が最下位になり、日本で〝ワンオペ育児〟と感じているワーキングママは6割超、毎日育児へ参加している父親がもっとも多い国はスウェーデンが7割以上で、日本はわずか3割しかいないことなどが分かった。また、日本のベビーシッター・保育サービス利用率はどちらも5カ国中最下位だった。
各国のワーキングママに自分(母親)と、パートナー(父親)の育児にそれぞれ点数をつけてもらった結果、自分自身への平均点がもっとも高かったのはスウェーデンの79.5点で、日本は平均点がもっとも低く64.2点。
パートナーへの点数は、もっとも平均点が高かった国はこちらもスウェーデンの71.2点で、日本は3番目の56.1点だった。
これらの結果について、立命館大学産業社会学部教授・筒井淳也氏は、「日本では、育児の分担が女性に偏っているわりには夫の育児の評価が高いが、これは夫に希望する水準がもともと低いから」「スウェーデンやアメリカでは、男性の育児参加は私たちの想像以上に進んでいる。韓国では、低出生率への危機感が強く、政府が両立支援対策を強力に進めており、そのせいか、日本よりも外部サービスの活用が進んでいる」「男性の育児参加も、以前よりは増えているが、まだまだ不足している。育児と仕事の両立は職場の改革、 行政のサービス拡充、男性の意識改革など、総動員で取り組むべき課題であり続けている」と指摘している。
感動!わが鼻腔をスギの香りが満たす 池上線旗の台駅「木になるリニューアル」
「木になるリニューアル」完成予想図
東急池上線旗の台駅に降り立った途端、まだ嗅覚だけは衰えていないどころか、記事にできそうなネタを嗅ぎつける感覚はより研ぎ澄まされており、花粉症とも無縁のわが鼻腔をあの名状しがたい香しいスギの香りが満たした。もうこれだけで、肝心のマンションの取材もうまくいくことを確信した。
早速調べた。これは東急電鉄が2017年11月にニュース・リリースしている「木になるリニューアル」事業の一環で、2016年ウッドデザイン賞、2017年グッドデザイン賞などを受賞した「戸越銀座駅」に続く第2弾。
東京都内の多摩地区で生育、生産される「多摩産材」を使用し、老朽化したホーム屋根を新たな温かみのある木造ホーム屋根として建替えるほか、待合室の改修により快適性の向上を図るプロジェクト。今春には完成する予定だ。
今後の「木になるリニューアル」については検討段階で、具体的に決まっているものはないようだ。
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鉄道各社はいま、駅舎などの改修に木造を多用するケースが目立っている。わが京王線は、建築家隈研吾氏がデザインし、髙尾山薬王院をイメージしたダイナミックな屋根が特徴の「高尾山口駅」が2017年のグッドデザイン賞を受賞している。
また、ご存じのように新駅名が「高輪ゲートウェイ」に決まったJR新駅も隈氏がデザインした。
JR九州もここ数年、上熊本駅、日田駅、六本松駅などで行った6つの木質化事業でウッドデザイン賞を受賞している。
駅舎の木質化は間違いなくその駅・エリアのポテンシャルを引き上げ、マンションの相場形成にも貢献する。
そういえば、東武伊勢崎線は内装が木の車両が1984年(昭和59年)まで走っていた。同社広報で確認できた。復活させれば坪単価400万円近い「北千住」同様、沿線の人気が沸騰するのではないか。この前、東武伊勢崎線のマンション記事を書いたら、そのデベロッパー担当者から「伊勢崎線でなく千代田線にしてほしい。イメージがよくないから」と言われた。記者は伊勢崎線のファンでもある。スカイツリーラインが何だ、これは愛称だ。正式名は伊勢崎線だ。どこが悪い。
トヨタはいくらか知らないし、実用化するかどうかも分からないが、数年前に外装が木の自動車を造ったではないか。
住友林業 「ミャンマー寺子屋応援チーム」校舎建築支援5校目が完成
建て替え後の寺子屋
住友林業は2月19日、「ミャンマー寺子屋応援チーム」校舎建築支援で5校目が完成したと発表した。
2013年から同社が建設の発起人・事務局を務め、毎年1棟ずつ校舎を建築、寄付しているもので、今回、5校目の寺子屋校舎が完成した。
ミャンマーでは公立校の授業料や制服は無料だが、文房具、寄付金などの費用負担があり、経済的な事情や近くに公立校がないなどの理由で学校に通うことができない子どもたちが多く存在するという。そうした子どもたちの教育の受け皿として寺院で僧侶が運営する寺子屋が重要な役割を担っている。
5校目となる寺子屋は、ミャンマー社会の発展に役立ちたいという趣旨に賛同する19社6個人からの寄付により建築された。
建替え前は窮屈な小屋だったのが、鉄筋コンクリート3階建て校舎に生まれ変わり、小学1年生から中学2年生まで約300名の児童、生徒が勉学に勤しんでいる。
野村不動産 豊島区新庁舎東側で再開発タワー248戸 着工
「東池袋四丁目2番街区地区第一種市街地再開発事業」完成予想図
野村不動産は2月19日、特定業務代行者として参画している「東池袋四丁目2番街区地区第一種市街地再開発事業」の工事を2月12日付け着工したと発表した。
建設地は、東京メトロ有楽町線東池袋駅から徒歩1分の敷地面積約2,665㎡。建物は36階建て延べ面積約31,192㎡全248戸。竣工予定は2022年3月。事業コンサルタントは日建設計。設計・監理は日建設計・日建ハウジングシステム。施工は前田建設工業。
同事業は、2012年10月に準備組合設立、2017年3月に都市計画決定、2017年10月に再開発組合の設立認可を受け、今回着工したもの。木造住宅が密集し細分化された地区内の宅地を共同化し高度利用することによって、地区全体の不燃化を促進し、建物の1~3階部分に店舗、子育て支援施設などを整備する。
現地は、豊島区新庁舎の東側エリアに位置。同社が参画している「東池袋五丁目地区第一種市街地再開発事業」(「プラウドタワー東池袋」)にも近接。
オリンピック選手村住民訴訟も佳境に 原告、被告双方 相手を「著しく」非難
閉廷後の原告側の記者会見 左から4人目が淵脇氏(司法記者クラブで)
東京都が晴海オリンピック選手村用地を民間事業者に約130億円で売却したのは不当とし、小池百合子都知事に対し妥当額との差額1,200億円を支払うよう不動産会社11社に請求せよという民事訴訟の第5回審理が2月19日、東京地裁で行われた。
被告側弁護士が、原告側を「全てがありもしないでっち上げ」などと攻撃すれば、原告弁護士・淵脇みどり氏は「被告(小池都知事)は早く火消しをしたいと言わんばかり。われわれはあせって早期に終わらせるつもりはない。傍聴席も満席になり、都民の関心は高まるばかり。都の姿勢を追及していく」と語った。「HARUMI FLAG」の分譲を前にして、こちらのバトルも佳境に入っている。
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都民ら58名による監査請求が棄却されたのを受け、33名が東京地裁に提訴したのが今回の事案。都が売却したとき書いた記事「東京2020オリ・パラ選手村 敷地売却価格は地価公示の10分の1以下の〝怪〟」は間違っていないと今でも思っているが、その売却価格をめぐって争われている「事件」の顛末を見届けようと傍聴することにした。用意された傍聴席52席は入りきれない人も出るほどの〝盛況〟だった。
原告側でも被告側でも敵でも味方でもないないニュートラルの記者は一瞬たじろいだ。高齢の方が圧倒的に多いのと、ネクタイを締めているのは記者と被告側の弁護士くらいしかいなかったからだ。場違いなところに入り込んでしまったように感じた。国立裁判で一貫して明和地所側についていたときとはまた違った緊張感がある。どちらの側からも胡乱な目で睨め付けられているようでいい気分はしなかった。「愛」のかけらもない相手をやり込める裁判は苦手だ。
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ここからが肝心な部分。原告側から以下の通り意見陳述書が提出された。やや長いがほぼ全文を紹介する。
1(1)原告らは前回、本件土地の価格について主張する準備書面3を提出し、桝本行男不動産鑑定士による不動産鑑定書を証拠として提出しました。
前回期日、被告は意見陳述で原告提出の不動産鑑定について原告である不動産鑑定士が行っていることについて客観的な独立した第三者である不動産鑑定士でないとして問題にし、手続の中立性を欠くとまで言い、自らは外部委員を含ませた保留床処分委員会に日本不動産研究所の調査結果を審査してもらっていると述べています。
(2)しかし、桝本鑑定士は、原告ではありますが、原告であるから鑑定が客観的でない、正当でないということは言えません。
桝本鑑定士は、長年鑑定士実務に従事した経験があり、法令等に従い、誠実に鑑定を行っています。従って、その鑑定は客観的、正当なものです。
(中略)
(3)なお、被告が価格の正当性の根拠としてあげている保留床等処分委員会における審理は、原告らが今回提出した準備書面4で述べているとおり、正当性の根拠とはなりえません。
なぜなら、同委員会の構成員10名のうち、6名は東京都の都市整備局次長など被告の職員であり、出席委員の過半数が被告東京都の職員でした。さらに委員会の開催時間は1時間で、その間に会長の互選、副会長の指名、定足数の確認、議案の説明がありますから、審議時間は1時間にもみたないものです。さらに、審議内容についても日本不動産研究所の調査報告書に関する説明も詳細、具体的なものであったとは考えられません。さらに、時価公示等は後日事務局で確認とされ、委員会開催の時には明らかにされていませんでした。時価公示等は価格を判断する際に最も重要な資料となりうるものですが、これが委員会の際には資料すら明らかにされていなかったのです。(中略)
このように、保留床等処分委員会の審理を「手続の中立性」や本件土地の価格の正当性の根拠とすることは出来ません。
2(中略)被告の主張によれば、本件は正式な鑑定による価格の判断が出来ない場合であり、価格の唯一の根拠は日本不動産研究所の作成の調査報告書及び今回提出された価格等調査報告書に係る補足意見書ということです。
そうであるならば、その根拠となる調査報告書は早期に黒塗り部分をなくし全面的に明らかにするよう再度求めます。
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(1)と(2)は不動産鑑定士とは何ぞやという問題だ。原告側の言うとおりであれば、被告はやや勇み足でないか。不動産鑑定士法には「不動産鑑定士は良心に従い、誠実に鑑定評価等を行うとともに、不動産鑑定士の信用を傷つけるような行為をしてならない」(第5条)「故意に、不当な不動産の鑑定評価を行なつたときは、懲戒処分」(第40条)」とある。
被告側弁護士の「でっちあげ」発言は、桝本氏の鑑定評価に対してではないようだが、記者が桝本氏なら、名誉棄損で被告側弁護士を訴えるがどうだろう。
だが、しかし、弁護士は白を黒に、黒を白に言いくるめる商売と考えているのと同様、不動産鑑定士もまた依頼者が希望する鑑定を行っているとしか思えない。どっちもどっちだ。
(3)は、保留床等処分委員会の審理のあり方の問題だ。原告の主張する通りだとすれば、問題(注)だと思うが、委員会に都の職員を入れてはいけないという規則はないはずで、手続きに瑕疵はないのではないか。委員を誰にするかも都知事が決めるのだろう。
論議時間も問題にならない。シャンシャンだろうが、喧々囂々の末の結論だろうが、正当な手続きを踏んだ結果であれば問題はないはずだ。よほど重大な証拠をつかめば別だが、原告が手続きの瑕疵を見つけるのはむずかしいのではないか。
(注)「保留床等処分委員会における審査は、学識経験者を中心に客観的な視点や専門的な知見に基づき、算定の前提条件となる投下資本収益率や、分譲事業の長期化に伴う減価率など、詳細な項目・数値について、質疑応答や議論が交わされた」(住民監査請求(その2)監査結果)とある。
◇ ◆ ◇
被告弁護士は、①原告側不動産鑑定士は第三者として具体的説明を行っていない②鑑定報告書などの情報開示は条例に反することなので出来ない③選手村要因の情報…すべてがありもしないでっち上げ④桝本不動産鑑定士は選手村要因を算出できたはずなのにしなかった-などと意見を述べた。
弁護士は「選手村ヨウイン」を何回となく発言した。これが全然理解できなかった。「ヨウ」も「イン」も語尾を下げられたので「用務員」かと思ったが、そんなはずはないと必死で考えているうちに陳述は終わってしまった。
これだけはきちんと確認しようと、弁護士に意味を聞いたら「要因」だった。弁護士先生、発音はしっかりしていただきたい。中国の四音ほどではないが、日本語だって語尾を上げたり下げたりして同音異義語の意味を正確に伝えようとする。「橋と箸と端」「灰と肺」などだ。「要因」は要の語尾を上げて(あるいは平板)発音するのではないか。
公平を図るため、弁護士に読み上げた文書のコピーを頂けないかとお願いした。「検討する」とのことだったので、届いたら紹介する。
◇ ◆ ◇
どう考えても理解できないこともあった。原告側は「(不動産鑑定士が調査した)調査報告書は鑑定評価書ではない」と言っていることだ。
これはあり得ない。仮に報告書が鑑定書でないとすれば、鑑定価格は法律に基づかない、ただの意見に過ぎない。その意見を聞こうが聞くまいが、その判断は保留床等処分委員会=都知事に委ねられることになる。そんなことがありうるのか。
そうであれば、不動産鑑定士は「守秘義務」というアメリカの国境の壁のような強固なガードに守られているわけだから、鑑定の信ぴょう性、公平性は闇の中に葬られてしまう。
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裁判の構図が面白い。裁判官は女性の方で声は穏やかで美しかった。記者は目も悪いので、顔立ちなどはよくわからず、何を考えているかも全く分からなかった。
原告側弁護士ハ女性が中心で、淵脇氏は饒舌、多弁家だ。記者が「弁護士は黒を白に、白を黒に言いくるめる商売ではないか」と挑発したら、すぐ「異議あり」と返された。「鑑定業界にはクライアントプレッシャーなる業界用語があるが」と聞いたらご存じないようだった。「相手はよく考えている。上手」とつぶやいた。
被告側は全てが男性。10人くらい集まったか。メタボもいたが、屈強なマッチョが目立った。みんな濃紺のスーツで怖い印象も受けた。女性1人くらい加えたらどうか。傍聴人の印象も変わるはず。
「特定建築者募集要領」には、「敷地譲渡契約締結後…特定建築者が応募時に提案した資金計画に比べ著しく収益増となることが明らかとなった場合は、敷地譲渡金額について協議するものとします」とあり、いったい「著しく」とはどの程度か興味があるのだが、双方の弁護士は相手を「著しく」非難した。
一つ言い忘れた。原告側が配布したパンフレットには「晴海オリンピック選手村建設めぐる怪!!」とあった。これは記者の記事とは全く関係がございません。早く「怪」と書いたのは記者のはず。
次回審理は5月16日(木)。争点は、手続きの成否から価格の妥当性に移りそうだ。
東京2020オリ・パラ選手村 敷地売却価格は地価公示の10分の1以下の〝怪〟(2016/8/4)
怒り心頭 三菱・吉田社長に世界の隈さんに失礼 住宅新報のCLTの記事
今週号の業界紙は待ち遠しかった。14日に発表があった三菱地所の「CLT晴海プロジェクト」だけはきちんと伝えるだろうという確信があったからだ。
ところがどうだ、住宅新報を見てあ然、呆然。見事に期待を裏切ってくれたどころか、扱いは小さく紙面の隅の〝囲み〟に追いやられていた。期待が大きかった分だけ怒りも倍増した。またも批判記事を書かざるをえない。
その記事は3段囲みの扱いで、ページの全スペースの10分の1くらい、紙面トップの「ドレッセWISEたまプラーザ」のエリアマネジメント記事と比較すると5分の1くらいしかない。料理に例えると、小生はもうお腹いっぱいで、カロリーも気になるのでほとんど口にしない最後の水菓子だ。
例えがちょっと過ぎたかもしれないが、こんな失礼なことがどうしてできるのか。これは書いた記者より編集、デスクの責任だ。ニュースの価値判断がまるでできていない。メディア・リテラシーが欠落、欠損している。
エリマネの記事にケチなど付けたくないが、これは旧聞。小生は分譲時の2017年8月に取材し記事にしている。この時は「CASBEE横浜」Sランクに注目し、単価が信じられないほど高いにも関わらず人気になっており、「CO-NIWA」も評価されていると伝えた。
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新報の記事しか読まない読者の方にも知っていただきたいので、「CLT晴海プロジェクト」について少し紹介する。
CLT発表会には、同社の吉田淳一社長、岡山県真庭市の太田昇市長、建築家の隈研吾氏が出席し、それぞれ挨拶・スピーチし、CLTの実物も公開した。いかに力が入ったイベントであったかは出席すればすぐわかる。国会議員の先生4人も応援に駆けつけたほどだ。
言うまでもなく森林林業の活性化、地方創生は喫緊の課題であり国策だ。CLTはその「起爆剤」(隈氏)として期待されている。
小生は木造ファンなので、これはビッグニュースだと判断し、あらかじめ記事を書き、解禁にあわせて12:00にweb記事としてアップした。配布された画像を追加したのは12:30くらいでなかったか。
ニュースは速さが勝負だ。他のメディアはよく分からないが、とにかく第一報では負けなかったはずだ。見出しを「〝美しい〟〝画期的〟隈研吾氏が連発」としたのもその場の雰囲気を伝えられたはずだ。
◇ ◆ ◇
とても面白い記事もあった。共同住宅としては唯一環境省のZEH宿泊事業の連携事業者に選定されている積水ハウスの「亀有」に体験宿泊したK記者の体験ルポ記事だ。Kさんとは最近名刺交換したばかりで、新報の記者さんだとは全然知らなかった。
Kさんは築浅の集合住宅(74㎡)に午後5時にチェックインしてから翌日の午前9時のチェックアウトまで、LDK、寝室、居室、玄関などの温度を5回ほど測定。最後に「暖房の効きやすさ、室温の下がりにくさは素晴らしく、1泊2日の体験中に『快適』の言葉を何度も口にした」と締めくくっている。
笑ってしまったのは次のくだりだ。「スーパーから買ってきた食パンを電子レンジでトーストし、ソーセージをIHヒーターで焼き、夕食とした」
食パンが電子レンジでトーストできるのはいまネットで調べて初めて知ったが、トーストとソーセージだけとは…いつもそんな夕食なのかと思うとかわいそうになった。宿泊経費は会社持ちじゃないのか。酒も飲まないのか。元編集長Hさんの居酒屋紹介記事の飲み代は半分くらい会社が負担していると聞いた。えらい差ではないか。
それにしてもKさん、「体験中に『快適』の言葉を何度も口にした」というのはどういうことか。話す相手がいないのに言葉が出るものなのか。小生などは西武が逆転サヨナラ勝ちしても小さくガッツポーズするくらいしかできない。羨ましい。
記事は完ぺきではない。普通のマンションと比べてどうなのかも書いてほしかった。Kさんが住む築30年以上の19㎡のワンルームはおそらく単板ガラスで壁厚も薄い。「快適」などの言葉も隣に筒抜けでないか。そんなレヘルの低いわが家からして宿泊したマンションは「素晴らしく快適」なのは当然ではないか。参考までに。小生のマンションの洗面室は真冬の朝方は13度くらいまで下がる。昔の三重の農家は台所の水がめが凍った。(注)
Kさん、今度は三菱地所ホームの全館空調モデルハウスの体験を申し込むといい。温度を設定すればトイレもロフトもほとんど変わらない。「快適」とはこのような住空間をいう。あっ、ゴメン。ZEHはいいですよ。
(注)積水ハウスの提供資料によると、155㎡の「グリーンファース ゼロ」のモデルプランでは、真冬の深夜、トイレに行くときの温度は主寝室が20.0℃、トイレが15.3℃(旧省エネ基準は9.2℃)で、リビングの温度差は、外気温が-0.5℃のとき、20.0℃~13.9℃と6.1℃の差であるのに対し、旧省エネ基準は20.0℃~6.5℃と13.5℃の差があるとしている。
美しい〟〝画期的〟隈研吾氏が連発 三菱地所「CLT晴海プロジェクト」(2019/2/14)
東急不ほか 全1,152戸の「豊洲」事業説明会に40名超の報道陣 〝愛〟に反応
「ブランズタワー豊洲」完成予想図
東急不動産(事業比率55%)、NIPPO(同25%)、大成有楽不動産(同15%)、JR西日本プロパティーズ(同5%)は2月18日、江東区豊洲五丁目で開発を進めている「豊洲地区1-1街区開発計画」のタワーマンション「ブランズタワー豊洲」に関する事業説明会を行った。メディアの関心が高いのか、40名を超える記者が駆け付けた。
物件は、東京メトロ有楽町線・ゆりかもめ豊洲駅から徒歩4分、江東区豊洲五丁目に位置する48階建て全1,152戸。専有面積は43.41~219.44㎡、価格は未定で、3LDKで8,000万円台の予定。竣工予定は2022年10月。施工は熊谷組。販売開始は今年10月上旬。6月にモデルルームをオープンする。
現地は、約2.4haの東京ガスの元所有地で、2014年に東急不動産が取得。その後、冒頭の3社と共同で開発することとなった。敷地内には、マンションのほか生活利便施設、保育所が設置される。また、敷地の一部は江東区に小学校用地として譲渡されている。
計画では、敷地に隣接する「東電堀」の水辺資産を取り込んだ約7,950㎡のプロムナードを整備。また、地域の継続的賑わいや活性化・価値向上に貢献するためエリアマネジメント手法を採用し、事業主がサポートする管理組合が主体の一般社団法人を設立する。財源には区分所有者からの会費とテナントへの賃貸料を充当する。
説明会で東急不動産執行役員住宅事業ユニット首都圏住宅事業本部本部長・大谷宗徳氏は、「戸数は当社としては過去最大級。都心で『タワー』とつけるのも初めて。今秋より販売を始めるが、海に面した立地、敷地計画、利便性からいっても競合に負けない。即日完売を目指す」と語った。
記者団の価格についての質問に、同部マンション開発第二部統括部長・武田敬氏は、「現段階では、3LDKで8,000万円台とまでしか公表できない。『月島』(三井レジ)がベンチマークになる。あと半年あるのでよく精査したい」と語るにとどめた。
空撮
プロムナード
左から大成有楽不動産マンション事業本部長・糺幸男氏、大谷氏、NIPPO執行役員 開発事業部長・真田昭彦氏、JR西日本プロパティーズ執行役員不動産開発部長・前久司氏
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「晴海シビックセンター」に設けられた事業説明会場に入ったとたん、報道陣の数の多さにびっくりした。大谷氏も「これだけたくさんの方が集まるとは予想していなかった」と切り出したほどだ。どれだけ多いか説明しないと分からないので、少し書く。
昨年10月に行われた「HARUMI FLAG」説明会に参加した記者は約100名だった。ここには数では負けるが、事業主の数は「「HARUMI FLAG」は11社だ。今回は4社だから、1社あたりの数では「豊洲」の勝ちだ。
今年に入って三菱地所レジデンスが立て続けに行った「本厚木」「高輪」「北千住」の記者見学会の参加者も多くて20数名だった。吉田社長、隈研吾氏も出席した画期的な「CLT」発表会だって40名はいなかったような気がする。
過去にさかのぼったらどうか。記憶は定かでないが、あるいは6年前の三井不動産レジデンシャル「千代田富士見」と東京建物ほか「池袋」、5年前の東京建物「目黒」などが上回っていたかどうか。住友不動産が10年くらい前に行った見学会には50名集まったのは知っている。広報責任者が「うちは動員力があるんだ」と豪語したからだ。
よって、記者の記憶に間違いがなければ、今回は10年ぶりの記者動員力ということになる。間違っていたら謝るほかない。
しかし、皆さん、昔はもっとすごかった。17年前の8社JV「東京ツインパークス」は100名集まった。1社当たり12.5名だからこれが近年の記録かもしれない。
馬鹿なことと思うかもしれないが、それだれ最近のデベロッパーのマンション記者見学会への動員力は落ちているし、メディアの〝見る目〟はどんどん退化・劣化している。
なので、今回、これだけたくさんの記者を集めた関係者に拍手喝采したい。同社の「四番町」も「一番町」もこれほど集まらなかったはずだ。
説明会場(晴海シビックセンター)
建設現地(向こうの高層マンションは晴海)
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ここからが本題。いちばん知りたかったこと、聞きたかったことだ。商品企画と価格だ。
記者は、三井不動産レジデンシャルの「MID TOWER GRAND」記者見学会のとき、次のように書いた。
「『豊洲』は中央区でなく江東区だが、ポテンシャルは負けていないと思う。『月島』が434万円なら400万円超はありうるような気がするがどうだろう。『月島』は制振で『豊洲』は免震。規模もはるかに大きい。チャレンジしてほしいが、戸数が1,230戸(本日発表は1,152戸)もあるのでそんな勇気があるかどうか」
残念ながら今回は詳細な商品企画は明らかにされなかったし、価格も武田氏は「3LDKで8,000万円台。ベンチマークは『月島』」としか話さなかった。モデルルーム公開の記者見学会を行うそうだからそこまで待とう。
同業の記者の方にも一言。こんなにたくさん集まったのは嬉しいのだが、最近の各社のマンション見学会に集まる記者の数から判断して、半数くらいの方は普段現場を見ていないのではないか。記者は現場を見ないジャーナリズムを信じない。自分の視点を持たないか、持とうとしないと言ったら言い過ぎか。これをきっかけに、是非とも周辺の湾岸マンションを取材して記事にしていただきたい。自らが情報発信者にならないとだめだ(していたらごめんなさい。小生は他の媒体はあまり読まない)。
言い忘れたことが一つ。現場の囲いに「愛が、長続きするタワー。」と大書きされていた-これにいたく興味をそそられた。エリアマネジメントのことだろうが、愛が長続きするタワーマンションなんて想像もつかない。これだ、愛だ。昨年、大和ハウスの正月のTVCM「物流に愛《AI》を。」が最高に面白かった。みんな「愛」に飢えている。ここに切り込めば大ヒットするのではないか。間違っても「HARUMI」などと価格競争すべきではない。
工事現場の囲い
左側がマンション建設地。手前が公園、その奥が東電堀
聞きたいことは不明 オリ・パラ選手村の街の名称「HARUMI FLAG」来春分譲(2018/10/31)
三井レジ 「月島」再開発タワー「MID TOWER GRAND」第1期189戸 坪単価434万円(2018/7/17)
分譲では初か オーバル型の中庭がいい20数年前の〝アート〟蘇る 野村不「東雲」(2018/11/15)
好スタート 第1期は330戸 住友不「シティタワーズ東京ベイ」 プラン秀(2017/8/17)
大和ハウスの新TVCM 「物流×AI」が最高に面白い(2018/1/5)
三菱地所 「中日ビル」建て替えに参画 ロイヤルパークホテルを出店
「中日ビル」完成予想図
三菱地所グループは2月15日、中部日本ビルディングと中日新聞社が計画する名古屋市中区栄の「中部日本ビルディング(中日ビル)」の建て替えをグループでサポートすると発表。三菱地所がプロジェクトマネジメント支援業務を、三菱地所設計がコンストラクションマネジメント業務を手掛け、建て替え後のビルに「ロイヤルパークホテルズ」が出店する。
中部エリアの「ロイヤルパークホテルズ」の出店は、「ザロイヤルパークキャンバス名古屋」(2013年11月開業)に続き2店舗目。中部エリアのフラッグシップホテルとして計画中。宿泊主体型で約250室の予定。
新しいビルは、敷地面積約6,857㎡、延床面積約113,000㎡の事務所、ホテル、商業施設、多目的ホール、駐車場などからなる地上31階地下4階建て。設計・設計監理は竹中工務店。竣工予定は2024年度。