細田工務店 中古の買取再販に参入 新築を含めた再販業が乱戦模様に
細田工務店は6月19日、グループ会社「親和ファイナンス株式会社」の社名を「株式会社細田ライフクリエイション」に変更するとともに定款を変更し、中古住宅の不動産仲介業、買取再販を軸に事業展開すると発表した。
事業エリアは杉並を中心に23区、都下とし、他社施工の中古マンションを買取り、リノベーションを行い販売する。
細田ライフクリエイションは、所在地:杉並区阿佐谷南三丁目35番21号、代表者は小林和昭社長、資本金は9,000万円。
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中古マンションの買取再販戸数は業界トップのインテリックスが1,393件となっているほか、リフォーム産業新聞の調査によればフジ住宅、大京グループ、トータルエステート、イーグランド、リプライス、エフ・ジェー・ネクスト、長谷工リアルエステート、スター・マイカが500戸以上を販売している。また、新築の買取再販を行っている会社も相当数に上るとみられており、買取再販の実態については分からない部分も多い。
平成25年6月に公表された国土交通省「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会報告書」でも「買取再販事業については、我が国において潜在的な市場規模は相当程度あると思われる。また、消費者にとって、適切なリフォームのノウハウを有する事業者が自ら販売することは、中古住宅の質に対して一定の安心感を与えるものであり、中古住宅流通市場活性化の起爆剤となる可能性がある」と、「起爆剤となる可能性がある」としながらもその実態については明らかにしていない。
一方で、既存住宅の流通を促進するために買取再販で扱われる住宅の取得に係る不動産取得税の特例措置が平成27年に創設され、建物状況調査(インスペクション)の活用などを盛り込んだ宅地建物取引業法の一部が平成28年6月に改正され、インスペクションに関する規定は平成30年4月から施行されることになっている。
住宅リフォーム市場規模は平成23年の約6.5兆円から2020年には20兆円に伸びるとされており、参入障壁の低い成長分野である新築・既存住宅の買取再販業は乱戦模様の様相を呈してきた。「適切なリフォーム」とはいったいどのようなものかも問題となりそうだ。
野村不・関電不・パナソニック 「プラウド綱島SST」モデルオープン
「Tsunashimaサスティナブル・スマートタウン」(Tsunashima SST)
野村不動産、関電不動産、パナホームの3社は6月15日、パナソニックの事業所跡地で開発中の「Tsunashimaサスティナブル・スマートタウン」(Tsunashima SST)内にあるマンション「プラウド綱島SST」のモデルルームをオープンしたと発表した。
「次世代の暮らし」を提案するためプラウドシリーズで「初」の商品を多数導入。IOTの活用によりテレビ視聴、インターホン応答、家電のコントロール操作を、エネルギー情報と合わせて一つのデバイスでの操作やスマートフォンによる住まいの遠隔操作を可能とした。
快適性と経済制の両立を目指すため、パッシブデザインとともに次世代型エネルギーマネジメントサービス「エネコックe」を導入し、2005年度比でCO2約30%削減の実現と、一般のガス併用住宅に比べて約20%の光熱費の削減を目指す。
さらに、グローバルな環境認証評価「LEED」のGOLD取得を目指し、プレ認証を取得している。また、横浜市の建築物環境配慮制度「CASBEE 横浜」で最高の「S」クラスを取得済み。
また、「デリバリーステーション」を初めて導入し、マンション内の宅配ボックス設置率を住戸比約35%(一般プラウドの設置率約15%)に引き上げる。
物件は、東急東横線綱島駅から徒歩11分、10階建て94戸。専有面積は70.76~85.40㎡。施工は三井住友建設。竣工予定は2018年2月中旬。
告知開始後約2カ月で資料請求数1,000件を突破している。
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レベルの高いマンションであるのは間違いない。過去8年間で「CASBEE 横浜」の「S」ランクを取得した分譲マンションは、22年度の「プラウド綱島」「プラウド横濱中山」、23年度の「Brillia City横浜磯子」、28年度の「ドレッセWISEたまプラーザ」とこのマンションの5物件(このうち同社が3物件)しかない。それ以前を含めても6物件くらいしかない。
近く見学してレポートしたい。
「プラウド綱島SST」
「過去最高水準の2×4住宅はまだまだ伸びる余地ある」2×4協会・市川会長
市川氏
日本ツーバイフォー建築協会は6月15日、平成29年度定時総会後の懇親会を行った。
市川俊英会長(三井ホーム社長)は、平成28年度の2×4工法による建築物は前年比7.1%増の約12.3万戸となり、住宅着工に占める割合も0.2ポイント増の12.7%となり、いずれも過去最高水準に達したことを受けて、「いい結果になった。今年度はまだまだ伸びる余地がある。熊本地震の例でも2×4工法の住宅の半壊・全壊がゼロだったことからも高い耐震性が証明された。新築からストックの時代になり、流通も増加するが、2×4工法は精緻な基準で建てられており、資産性も流通性も高いことを発信していきたい」などと語った。
来賓として登壇した国土交通省住宅局長・由木文彦氏は、28年度の着工戸数が97.4万戸となり、4月の着工戸数から今年度は100万戸の水準で推移していることから、「8%の消費増税のときの反動減は解消されつつある。2×4住宅が伸びていることは結構なことで、国土交通省としても木造住宅の推進に積極的に取り組んでいく。国産材の使用やCLTの普及、中・大規模建築物の拡大を目指す必要がある。木材が使われることは喜ばしいことで支持していく」と語った。
由木氏
2×4協会 懇親会(都市センターホテルで)
大京穴吹不動産 「店舗間IT接客」メディア向けにデモンストレーション
「店舗間IT接客」デモンストレーション(左が対応車、右が相談者の設定)
大京グループで不動産流通事業を展開する大京穴吹不動産は6月16日、先に発表した「店舗間IT接客」のデモンストレーションを報道陣向けに行った。
「店舗間IT接客」は、同社の店舗・営業所からモニターを通じて現地担当者と遠隔地の不動産売買・賃貸の相談などができるもので、6月1日から導入している。今年10月から賃貸物件に限りIT重説が本格運用となるのに応えるもの。同社の全30都道府県71店舗で利用できる。予約制で、当面は賃貸に限定する。
同社は現在、8,000戸強の仲介扱い件数があり、首都圏顧客の売り依頼物件のうち約12%が遠隔地で、購入依頼も約7%あるという。沖縄の物件などは約50%が首都圏の購入者だという。
そうした顧客ニーズに対応するもので、月間約30件の相談を見込む。今後はグループの新築・中古の売買、リフォーム、インテリアのほか、税理士、介護、FP、ソフトサービスにも拡大していく。
この日は、同社スタッフが相談者になり、WEB会議システムを利用して同社大阪中央店、税理士、大京リフォーム・デザイン事務所とそれぞれ大阪の物件の売却、相続物件の相談、リフォーム済みの室内の模様などをリアルタイムで画面に映し出した。
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この種の対応を行っているのは、同社によるとアパマンくらいしかないのにやや驚いた。地方の相続物件や所有リゾートマンションの売却などは売却しても足が出たり、仲介業者も手数料収入で賄えない費用が掛かったり難しい問題もあるが、時代は間違いなくIT対応が普通になる。
今回の同社のデモンストレーションはものすごくわかりやすかった。いろいろな用途に利活用できるはずだ。
平均面積77㎡ 低め価格設定で競合に挑む 大和地所レジ・菱重プロパティーズ「戸塚」
「ザ・テラス戸塚グランターミナル」完成予想図
大和地所レジデンス(事業比率65%)と菱重プロパティーズ(同35%)が分譲を開始した「ザ・テラス戸塚グランターミナル」を見学した。駅から5分のフラットアプローチで後背地が森、道路を隔てた対面が大規模商業施設「サクラス戸塚」という立地。平均専有面積は77㎡のファミリーマンションだ。
物件は、JR・横浜市営地下鉄ブルーライン戸塚駅から徒歩5分、横浜市戸塚区戸塚町字二十ノ区に位置する11階建て全175戸。第1期1次(28戸)の価格は4,998万~8,298万円(最多価格帯5,600万円台)、専有面積74.51~93.29㎡、坪単価は260万円。竣工予定は平成31年1月下旬。施工は東亜建設工業・多田建設。
現地は、1階エントランス部分からヒルトップまで約8層分ある北下がりの斜面地。
建物は東南向き「ヴィラ ド デリス」とその背後にそれぞれ雁行させた東向きの「ヴィラ ド シエル」「ヴィラ ド ブリーズ」「ヴィラ ド エール」の4棟構成。住戸プランは平均専有面積77㎡のファミリー向けで60プランバリエーションの多彩な間取りを用意しているのが特徴。
基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、御影石カウンタートップ、食洗機、ミストサウナなど。メーターモジュールの廊下幅を確保しているのも特徴の一つ。
エントランス
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東戸塚と戸塚駅圏でのマンション供給が相次ぎ大激戦の様相を呈している。とくに戸塚駅圏では駅前の再開発が完了し、供給増と共に坪単価も高騰。駅近物件は300万円を突破した。
しかし、単価上昇はグロス価格の上昇につながり、7,000万円が厚い壁と言われている。
今回の同社の坪単価は、先行する三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス 戸塚フロント」の坪270万円を意識した設定で、こちらのほうが駅から2分遠いこともあるが、低めに設定し、なおかつ面積を広くして競合に負けない商品企画にしている。93㎡のコーナーサッシ付きのモデルルームもよくできている。
同社広報担当の横山淳二氏から聞いたのだが、同社のマンション期末完成在庫は40戸程度、完成物件の5%しかないという。その理由を聞いたら、上場時と比べ平準化が進んでいるのが大きいという。
今回の物件は戸塚駅圏最大級(過去10年間においてJR東海道本線「戸塚」駅利用のバス便を除く新規分譲された物件で最大。MRC調べ、2017年1月現在)の規模で、森に隣接するというメリットをどうアピールするか。大手デベロッパーとの競合に挑む。
ウォーターコート
グロス7,000万円の壁突破した三菱地所レジ「ザ・パークハウス 戸塚フロント」(2017/6/14)
グロス7,000万円の壁突破した三菱地所レジ「ザ・パークハウス 戸塚フロント」
「ザ・パークハウス 戸塚フロント」完成予想図
三菱地所レジデンスが分譲中の「ザ・パークハウス 戸塚フロント」を見学した。戸塚駅西口から徒歩3分、駅前の市街地再開発が完了し、今後の開発が期待される「戸塚駅西口第3地区」の一角にあり、横浜市有地の公募売却によって建設されているもの。ハードルが高い「横浜市市街地環境設計制度」の適用により、通常約31mから約44mの高さ規制の緩和を受けている。2月から販売を開始し、現在、全106戸のうち約80戸が成約済み。
物件は、JR・横浜市営地下鉄ブルーライン戸塚駅西口から徒歩3分、横浜市 戸塚区戸塚町に位置する14階建て全106戸(ほかに店舗7戸、地域交流施設1戸)。専有面積は61.37~125.89㎡、6月末分譲予定の第3期(戸数未定)の価格は4,740万~6,750万円(最多価格帯5,900万円台)、坪単価は約270万円。竣工予定は2018年5月下旬。施工はフジタ。事業主は同社のほか大洋建設。
現地は、物件名にもあるように駅前の戸塚区総合庁舎、戸塚パルソ、トツカーナなどの駅前の再開発が完了し、今後開発が期待される「戸塚駅西口第3地区」のフロントに位置。
L字型の建物は、「横浜市市街地環境設計制度」の適用により、通常約31mから約44mの高さ規制の緩和を受けているのが特徴。デザイン監修は三菱地所設計の多田直人氏。格子を多用したシンボリックな外観で、基壇部には4種のタイルを採用し、一部ガラスカーテンウォール仕上げとしている。
1・2階に地域交流施設や「安心して利用できる店舗(未定だが、コンビニなどは不可)」が予定されている。
住戸は3階からで、採光面が多いプランが中心。ディスポーザ、食洗機、フィオレストーンカウンタートップが標準装備。
同社第一販売部販売グループリーダー・河嶋謙介氏は、「問い合わせは1,800件超、来場者は約700件。2月末から販売開始し、現在約80戸が成約済みの進捗は計画をオーバーしているが、当社の戸塚駅東口の物件も含め競合を避ける意味でもっと上を目指していた。現状、ファミリーがターゲットのグロスの壁とみていた7,000万円台は残り1戸、横浜市環境設計制度の恩恵を受けた11階以上も残り3戸なので、評価を得られたと考えている。7月には東口の駅近の『ザ・パークハウス戸塚ガーデン』129戸のモデルルームもできるのでぜひそちらも見ていただきたい」と話した。
ランドスケープ
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戸塚駅圏のマンションは昨年3月に伊藤忠都市開発他「クレヴィア戸塚」を見学した。まだ少し残っているようで、坪単価300万円(グロスで7,000万円)の壁は厚いのかと思っていた。
そのグロスの壁を三菱地所レジデンスは破った。駅近の資産性が評価されたのだろう。同社が東口で分譲予定の「ザ・パークハウス戸塚ガーデン」を検討しているユーザーも多いはずだ。いったいいくらの価格設定をするのか。坪300万円の壁を突破するか。
高さ規制について。もうばかばかしいからあまり書かないが、建築物の絶対高さ規制は緩和すべきだ。この物件は「横浜市市街地環境設計制度」の適用を受けてはいるが、それでもリビング天井高は2430~2455ミリだし、柱・梁型が結構出ている。公開空地や緑化率の確保以外に基本性能や天井高など居住性を制度の評価項目に入れるべきだ。優れたものは思い切った緩和をすれば、優良なストック形成につながる。人=居住性の視点が制度には欠けている。
モデルルーム
伊藤忠都市×神奈川中央交通×横浜公社 官民協業の「戸塚」人気必至(2016/3/1)
〝第三の老い〟 管理員の実態調査に着手 マンション管理協・岡本理事長
マンション管理業協会(管理協)は6月13日、定時総会後の懇親会を開き、先に理事長に就任した岡本潮氏(東急コミュニティー会長)が冒頭、「フローからストックの時代へ大きく変換した今、住みやすい住環境を整えるマンション管理業の役割は益々増大する」などと話したうえで、建物と居住者の2つの〝老い〟への対応に加え、管理員などの従事者の高齢化と人材不足という〝第三の老い〟について具体的な実態調査を行うと話した。業務範囲を明確にする標準管理委託契約書の改定も行うと語った。
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〝第三の老い〟問題については、前理事長の山根弘美氏(大和ライフネクスト相談役)もしばしば語っており、いよいよ本格的な取り組みが始まる。
しかし、一口に管理員といっても雇用形態は非正規雇用の準社員、パート、アルバイト、派遣などが一般的で、実態を把握するのは難しい。
全国にどれくらいの管理員がいるのか管理協に聞いたが把握していないということだった。管理戸数約43万戸のマンション管理業トップの大京アステージはホームページで「管理員等(マンションサポーター)」は5,362名としており、大京グループの穴吹コミュニティの1,761名を合わせると7,123名(16年3月末)だ。管理戸数では大京アステージを上回る約44万戸の日本ハウズイングは「準社員」が3,826名(平均62.8歳)で、このほかパートなどの臨時使用人が6,336名としている。準社員は必ずしも管理員だけではないので正確な数字は把握できないが、双方を合わせると1万人を突破する。
マンションの全国ストック約634万戸と、両社の管理員の数などから類推して全国の管理員の数は8~9万人とみたがどうだろう。
同協会が何から手を付けるのか不明だが、管理員の実態を明確にしていただきたい。でないと「マンション管理業に従事する職員が、生きがいや誇りをもって業務ができる環境づくりを強力に推進」(平成29年度事業計画)することは困難ではないか。
標準管理委託契約書の改定も待ったなしだ。同協会の調査資料でも、業務範囲が不明確なことから〝サービス労働〟に対する管理員のストレスが高いと報告されている。マンション管理の車の両輪の一つである「コミュニティ」の価値をどのように測るのかという難しい問題もある。
懇親会では民泊新法について来賓の国会議員の方々も触れたが、記者はマンション管理組合がしっかり対応すれば混乱は起きないと思う。
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懇親会後、新旧役員の歓送迎会が同じ第一ホテル東京内のレストランで行われることを聞きつけ、レストランの前と対面の喫煙室、1階下のカフェで張り込みをした。何か大きなニュースがつかめるかもしれないと思ったからだ。
残念ながら「何もないよ」(ある役員)で空振りに終わったが、記者と同じようによくタバコを吸う役員などから今後の取材に役立つヒントを得た。
マンション管理協 管理員の待遇改善を重要課題に 呼称も変えてほしい(2017/3/24)
第3の高齢化-マンション管理従事者の高齢化、人材難に取り組む 山根・管理協理事長(2017/1/18)
マンション管理協 女性初の副理事長に石﨑順子氏(大和ライフネクスト社長)選任
マンション管理業協会(管理協)は6月13日、定時総会後の理事会で新しい副理事長に石﨑順子氏(大和ライフネクスト社長)を選任した。
石﨑氏は愛媛県出身。1960年4月26日生まれ。1983年3月、大阪大学法学部法学科卒業。同年4月、日本リクルートセンター(現リクルートホールディングス)入社。1985年5月、リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。1999年1月、コスモスライフ(現 大和ライフネクスト)入社。2005年6月、同社取締役、2013年4月、同社常務取締役、2016年10月、同社代表取締役社長(現)。
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同協会の役員数は現在30名。このうち女性は、理事を務める弁護士の篠原みち子氏と石﨑氏のみ。副理事長に女性が選任されたのも初めて。
同協会は毎月のように理事会後に記者懇親会を開いている。石﨑も出席されるはずだ。発言が楽しみだ。男ばかりの組織に風穴を開けていただきたい。
〝しっかり造り込みをすれば売れる〟見本 大成有楽不「オーベル東林間レジデンス」
「オーベル東林間レジデンス」完成予想図
大成有楽不動産が販売中の「オーベル東林間レジデンス」を見学した。駅から徒歩5分、区画整理された戸建てが建ち並ぶ住宅街の一角で、坪単価190万円という値付けとよく工夫されたオリジナル収納などの商品企画が評価され、第1期48戸が順調に売れている。
物件は、小田急江ノ島線東林間駅から徒歩5分、相模原市南区東林間四丁目に位置する6階建て全79戸。専有面積は65.41~86.83㎡、現在分譲中の住戸(5戸)の価格は3,360万〜4,490万円。坪単価は190万円。竣工予定は平成30年1月下旬。設計・監理はジムス建築設計事務所。施工は大成ユーレック。販売代理は大成有楽不動産販売。
現地は、駅から徒歩5分。周辺は土地区画整理事業によって区画割された住宅街の一角。3方道路の敷地は容積率200%の第一種中高層住居専用地域だが、敷地の南面は一戸建てが建ち並んでいる。建物はコの字型で、住戸は南東向き(全体の72%)が中心。
前面道路幅約6mに面した部分は幅約60m、奥行き約2.6mの「サウスガーデン」とし、住戸のテラス側から道路に向かって樹高を下げる工夫を行っている。
住戸の商品企画では、同社オリジナルの「オレンジラボ」をフル装備。マルチシェアストレージ(共用収納)、マルチシューズシェルフ(下足入れ)、マルチクローゼット、オレンジキッチンなど使い勝手がよく収納量を増やせるようにしているのが特徴。
同社マンション事業本部マンション事業部事業室(第二)主任・堀内文普氏は、「東林間でのマンション供給は8年ぶり。これから大量の供給が始まるので競合に負けない商品企画にした。狙い通り、〝待ってました〟というお客さまが多く、極めて順調に売れている。歩留まりも高い。東向きは3,000万円台からだが、近く分譲される物件に負けない」と話した。
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坪単価はぴったりだとおもう。この前も書いたが、小田急線小田原線海老名駅西口では約3,000戸のマンションがこれから供給される。一方、小田急江ノ島線では、東林間駅の隣駅「中央林間」駅圏では同社も売主になっている857戸もの「ドレッセ中央林間」が分譲される。さらに「町田」や「相武台前」では野村不動産の「オハナ」もある。大激戦となるのは必至だ。
同社の今回の物件は、住環境がよく駅に近いという利点もあるが、高値追求は難しいと読んでいた。坪190万円はぴったりだと思う。
一つ強調したいのは収納、とりわけ今回初採用した「オレンジドレッサー」がよく工夫されていることだ。
①掃除がしやすい②化粧がしやすい③収納がたっぷり-この3つを満たしているもので、掃除がしやすいように壁付水栓を採用、化粧がしやすくするためには三面鏡のガラスは顔と30㎝くらいにし、ゴミ箱などが入る底板なしスペースを設けている。全体的なデザインも美しい。
〝しっかり造り込みをすれば売れる〟見本のようなマンションだ。
「オレンジドレッサー」
「お蔵入りしたコンバスが亡霊のようによみがえった」 トータルブレイン久光社長
冒頭の間取り図は、間口が6m、奥行きが10mの専有面積60㎡の3LDKプランだ。これを見て「これはうちのマンションじゃない」と言い切れるデベロッパーはどれだけいるだろうか。ほとんど皆無ではないか。
マンション建設費が高止まりで推移するいま、デベロッパーはグロス価格を抑えようと懸命になっている。その苦肉の策として18坪の3LDKが登場した。
この現状を、かつて長谷工コーポレーション(当時長谷川工務店)の専務から長谷工不動産社長などを歴任したトータルブレイン・久光龍彦社長(76)は皮肉交じりに次のように語った。
「もう30年以上も昔、故・佐藤美紀雄先生に散々叩かれて困り果て、お蔵入りさせた田の字型の『コンバス』が亡霊のようによみがえった。これはダメですね。デベロッパーは考えなきゃ」
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久光氏が語った「コンバス」とはどのようなものだったかを少し長くなるが紹介する。
「コンバス(CONdominiumu BUilding System)」は、長谷川工務店が昭和48年に編み出したマンションの究極の経済設計工法だ。間口が6m、奥行きが10mないしは11mの専有面積は60㎡(18坪)から66㎡(20坪)というという3LDKプランだ。形状が「田の字」型であるため「田の字型プラン」と呼ばれた。
この経済設計プランは、絶対的な住宅不足解消とマンションの大衆化に貢献した。同社はマンション施工№1という位置を不動のものとした。
コストを抑制するためには戸数を確保する必要があったため、ほとんどが住環境に難があり規制が緩やかな工業系用途地域に建設されたのも特徴だった。
ところが〝不況下の大量供給〟が続いた昭和57~58年、郊外の施工比率が30~40%にも達し、どこに行っても同じ間取で住環境に難がある「コンバス」に対する風当たりが強まった。
批判の論陣を張ったのは住宅評論家の故・佐藤美紀雄氏だった。自称〝弟子〟の記者も徹底して〝長谷工叩き〟の記事を書いた。
記者がもっとも腹が立ったのは、同社とデベロッパー各社がこの20坪の「コンバス」を「全戸住宅金融公庫付き 広い3LDK(64.40㎡)・2,230万円から」と堂々と広告で謳ったことだった。
当時、建設省は国民の豊かな住生活を確保するため住宅建設五箇年計画を策定し、第4期五箇年計画(4期五計)では誘導居住水準として都市居住型は4人家族で91㎡、平均居住水準として4人家族で86㎡の目標を掲げていた。
この4期五計を武器に記者は「御社は国の政策に逆行しているではないか。どうして20坪にも満たない間取りを〝広めの3LDK〟などと宣伝するのか」と捻じ込んだことがある。天下の長谷工が応じるはずはなく、けんもほろろ門前払いを食らった。
ところが、マンションが売れないのは「長谷工」のせいと、施工が長谷工であることをわからないようにする「長谷工隠し」を行ったデベロッパーが現われた。野村不動産だった。新聞広告に施工会社を掲載せず(公取の違反ではない)、現場では長谷工施工を示す「HK」マーク付きのシートに覆いをかけた。記者は「長谷工隠し始まる」と記事に書いた。
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いまはどうか。オリンピック景気に沸くゼネコンは、叩かれてばかりいた積年の恨みつらみを晴らそうと反攻に出た。「マンションはやらない」と公言するスーパーゼネコンの幹部がいるほどだ。
困り果てたデベロッパーがそれこそ手すり足すり、長谷工に「とにかく安くしてくれ」と泣きついているのが現状だ。かつて長谷工がコンバスを売り込んだのと逆の現象が起きている。
〝長谷工頼み〟がどの程度のものかを示すデータがある。2016年度の首都圏供給戸数に対する同社の施工シェアは100戸以上で56.0%、400戸以上だと実に60.4%に達する。つまり大規模マンションの2戸に1戸は同社施工ということになる。
冒頭の間取り図は、コストを最優先するデベロッパーが過去の遺物であるコンバスを思い出し、長谷工に再びやらせて出来上がった。
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残念ながら、亡霊のようによみがえった「コンバス」は成功しているとはいいがたい。では、どうすればいいか。久光氏が一つの解決策を示した。
「わたしが長谷工不動産の社長に就任し、コンバスから脱却しようと社運をかけたのが『モアクレスト』でした。第一弾の『西台』はよく覚えています」
「モアクレスト西台」は、昭和62年に竣工した東武東上線東武練馬駅から徒歩7分の11階建て全181戸のマンションで、もちろん施工は長谷工コーポレーション。売主は長谷工不動産。最多価格帯は4,900万円台、坪単価は180万円だった。
分譲開始は昭和62年2月。第1期79戸が最高72倍、平均27.0倍で即日完売した。引き続いて4月に分譲された第2期89戸も最高84倍、平均26.5倍の競争倍率で即完している。図面が示せないのは残念だが、バルコニー側に3室設けたワイドスパンの71㎡プランや、LDKが18畳大で主寝室が7.9畳大のプランなどを盛り込んでいる。
今では信じられないような人気だが、当時、不動産市場は〝狂乱〟状態で、62年2月の供給量3,596戸の月間契約率は91.5%だった。
記者は当時、マンションと建売住宅の全物件の販売状況を毎月調べており、中古でも築9年の「ドムス青山」が坪2,320万円(8億8,000万円、125㎡)で成約されたと記事にしている。
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昭和62年当時と今はまるで逆だ。第一次取得層の所得が伸び悩み将来不安もぬぐえず、デフレ脱却も絶望的でシュリンクする一方の新築マンション市場の中で果たして田の字型プランは有効か。考え直す必要がありそうだ。
「デフレ脱却絶望的。郊外マンション価格は下がらない」トータルブレイン・久光社長(2017/5/30)