RBA OFFICIAL
 

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全景(手前が「パークタワー新川崎」。奥は三井不動産のビル)

 地権者の三井不動産レジデンシャルや川崎市などが出資している鹿島田駅西部地区再開発株式会社が11月27日、商・住一体開発の「鹿島田駅西部地区第一種市街地再開発事業」の事業全体の竣工を記念して「鹿島田駅西部地区まちびらきフェスタ」を開催した。三井不動産専務・北原義一氏、川崎市長・福田紀彦氏、三井不動産レジデンシャル社長・藤林清隆氏など関係者約110人が式典に参加、竣工を祝った。フェスタには約10,000人(主催者発表)が集まった。

 冒頭挨拶した北原氏は、「駅と駅、人と人、街と街をつなぐコンセプトのもと、再開発計画段階を含めると四半世紀にもわたるプロジェクト。670戸のマンション『パークタワー新川崎』は施工段階で『手戻り』(作業工程の途中で大きな問題が発見され、前の段階に戻ってやり直すこと)があったため、竣工が約1年半延びたことを深くお詫びします。関係者のみなさんのご尽力に感謝いたします。設計監理の松田平田さん、施工の清水建設さんにも理解していただいたことを感謝いたします(この間、10人くらいの関係者の名を挙げ謝意を示した)。ハードは完成しました。最新鋭のスペックを備えています。これからソフトの部分、魂を入れるコンテンツの充実に総力を結集します」と述べた。

 福田市長は、「(新川崎)駅と(鹿島田)駅がペデストリアンデッキでつながり、ワクワクする街が完成した。今後、平成30年には新たな交流施設も計画している。武蔵小杉同様、街に欠かせない施設が揃うことになる」と話した。

 また、来賓としてあいさつした地元選出の田中和徳・衆議院議員は、「一時は大変な事態になりそうになったが、今日の竣工を迎えることができた。これからは南武線の踏切をなくし連続一体化を図るべく前進しよう」と語った。

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街びらきの鏡割り

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左端から北原氏、田中衆議院議員、福田市長、右端が藤林氏

◇       ◆     ◇

 「パークタワー新川崎」については別掲の分譲開始時の2013年に書いた記事を参照していただきたい。北原氏が述べたように最先端の技術が採用されている。免震工法を採用し、マンション全住戸に蓄電池を搭載しHENS連携システムをわが国で初めて導入したほか、当時としては3例目の「CASBEE川崎」の最高ランク「S」を取得。再開発を株式会社方式で行うのも全国的に珍しいことから話題となった。

 ところが、契約がかなり進んでいた2014年3月、施工中のコンクリートにひび割れや剥離が見つかり、工事をやり直すことになった。

 当時、三菱地所レジデンスの「南青山」(施工は鹿島)や積水ハウスの「白金」(施工は清水)なども不具合が見つかり、「南青山」は建て替える事態に追い込まれた。

 今回の「新川崎」では新た分譲することになったため工期が1年半も伸びたが、今年11月の竣工まで全て完売となっている。

 関係者によると、「中古」段階では新築時の価格を上回る可能性が高いという。価格が当初分譲開始した2013年当時のままで据え置かれ、その後の建築費の高騰を織り込んでいないためのようだ。

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ペデストリアンデッキ(左)と「パークタワー新川崎」

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三井不動産グループの出店「住まいモール」(施設には三井不動産リアルティと東急リバブルが店舗を構えている)

商・住一体の三井不レジ「パークタワー新川崎」(2013/10/3)

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三井不動産グループ記者懇親会で挨拶する菰田社長(マンダリン オリエンタル東京で)

 三井不動産グループが11月24日、恒例の記者懇親会を開いた。

 冒頭、挨拶に立った菰田正信・三井不動産社長は「今日は東京で11月として54年ぶりに初雪を記録したが、今年は例年以上に想定外のことが起きた」と切り出し、熊本地震、イギリスのEU離脱、リオデジャネイロオリンピック・パラリンピックでの日本選手の活躍、次期アメリカ大統領選挙でのトランプ氏の勝利などについて触れたあと、わが国の経済は「緩やかな回復基調にあるが、GDP600兆円実現に向けた成長戦略は力強さに欠ける」と指摘した。

 同社の事業については、先に発表した平成29年3月期第2四半期決算が好調に推移し、通期では売上高、利益とも過去最高を更新するのが確実となったためか、「極めて順調」を何度も繰り返し、マンションなどの分譲事業、オフィス・リート市場、ホテル、ライフサイエンス・イノベーションなど事業領域拡大の取り組み、海外アウトレットモール展開などについ語った。最後は「ミレニアル世代の台頭、人口減少、高齢化、IoT、シェアリングエコノミーなど社会構造は大きく変化しており、当社グループはフロントランナーとして新しい価値を創造する」と締めくくった。

 続いて登壇した岩沙弘道・同社会長は、「今年はいい意味でも悪い意味でも〝まさか(坂)〟の年だった。伊勢志摩サミットでは日本の存在感を示した。デフレ脱却は2020年までにやればできる動きが出てきた」などと話し、乾杯の音頭を取った。

◇       ◆     ◇

 両氏の挨拶で、一つだけ気になったことがある。岩沙会長が「デフレ脱却は2020年までにやろうとすればできる」と語ったことだ。岩沙会長は今年の不動産協会の賀詞交歓会で「今年こそデフレ脱却を宣言できる年にしなければならない」と語ったし、「アベノミクスの果実は実りつつある。経済と消費の好循環を実感できるよう多様な雇用・働き方ができる取り組みをしっかりやっていくことが大事」などとも述べていた。岩沙会長はこの言葉を〝まさか〟お忘れではないはずだ。

 アベノミクスの成長戦略の第三の矢は新しい矢にすげ替えられ、「女性活躍」は「一億総活躍」に置き換えられた。

 来年まであと1カ月ちょっと。岩沙会長には来年の賀詞交歓会でデフレ脱却を4年も先送りした理由をしっかり聞くことにする。

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岩沙会長

◇       ◆     ◇

 役員との懇談では、記者は木下克己・三井不動産リアルティ専務に「三井さんは住友(住友不動産販売)さんにも野村(野村不動産アーバンネット)さんにも勝てなくなった。かろうじて東急(東急リバブル)さんとは互角」などと挑発し、RBA野球チームの強化を訴えた。木下専務は笑いながら「本業では負けない」とやり返した。

 藤林清隆・三井不動産レジデンシャル社長には、同社の野球チームがRBA野球大会で初めて東京ドーム進出を決めたことを報告したが、(ある新聞社から横浜傾斜マンション問題についてしつこい質問攻めにあったためだと思うのだが)もう一つ表情がさえなかった(と考えるのは私だけか)。

 この新聞社の記者には、大勢の記者が詰めかけているのに二人掛かりで藤林社長を〝独占〟するのはいかがなものかといいたい。同社は「CAT」、つまり「Compliance」(法令順守)「Accountability」(説明責任)「Traceability」(追跡可能性)の点で適正に対応したと思う。どうして三井のマンションが売れるのか、このあたりにもヒントがある。記者の方には現場をしっかり見てほしい。

 今後の動きで注目したいのはわが故郷・三重県のリゾート「Amanemu(アマネム)」だ。岩沙会長は「世界に冠たるリゾート」にすると話した。「志摩観光ホテル」を上回るということか。

 

 

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全国低層住宅労務安全協議会「じゅうたく小町部会」セミナー(大和ハウスで)

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ヨハンナ・オーマン氏

 11月25日に行われた全国低層住宅労務安全協議会(全国低住協)の「じゅうたく小町部会」のセミナーを取材した。

 同協議会は平成元年に発足。都内の住宅メーカーや専門工事店、安全関連機材・標識の製造、販売会社24社が集まり、増大する低層住宅建設の労災事故撲滅のための活動を開始。現在は住宅メーカー、専門工事店、安全関連機材・標識の製造、販売会社、電動工具メーカーなど約50社が会社の垣根を超えて活動している。

 「じゅうたく小町部会」は昨年4月に発足。男性中心の労働環境下で孤独になりがちな女性の現場監督の絆を強化し、またスキルを向上させるため月1回のペースで勉強会などを行っている。

 記者はこの団体を全然知らなかった。部会広報担当の壁下瑛里子氏(スウェーデンハウス)からお誘いを受け参加することにした。女性の働き方改善=男性の働き方改善に興味があったからだ。かつては〝3K〟と呼ばれ、学生に敬遠されていた建設業への女性の就職も増え、労働環境も改善されているとは聞くが、まだまだ女性にとっては過酷な環境にあるのは想像できる。その実態を少しでも知りたかったからだ。そして何よりセミナーの講師を務めるスウェーデン人のヨハンナ・オーマン氏がどのような話をされるのかに魅かれたからだ。 

 会場に着いたとき、すでにヨハンナ氏は話をされていた。記者はてっきりあの難しいスウェーデン語で話され、誰かが通訳する形で進められるかと思っていたが、立派な日本語で話されていたのにまずびっくり。ヨハンナ氏は高校時代に4番目の言語として日本語を学ばれたそうだ。1時間以上にわたりスウェーデンの歴史、自然、文化、教育、政治などについて話された。

 福祉国家先進国のスウェーデンがあらゆる面で日本より進んでいることは周知の事実なのでここでは触れないが、どれもこれも耳が痛い話ばかりだった。グサリ、グサリと刃が胸に突き刺さった。ヨハンナ氏は「日本は大好きだが、男女平等でも民主主義でも大変遅れている」と顔をしかめた。

 と同時に、記者はあのスティーグ・ラーソンの大ベストセラー小説「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」(映画は見ていない)の女性主人公リスベット・サランデルにヨハンナ氏を重ね合わせた。サランデルは知的な小悪魔として描かれているが、ヨハンナ氏もタトゥー、ピアスをたくさん入れればきっとサランデルのような存在になる。核心をつく言葉に酔った。

 歳を聞いたら25歳だった。今は「国費で研修中」とのことだが、スウェーデンに帰すのはもったいない。わが国の「女性活躍」推進のためにスウェーデンハウスあたりが〝役員待遇〟で採用しないか。企業の生産性も飛躍的に高まると確信する。

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左から壁下氏、ヨハンナ氏、「じゅうたく小町部会」会長・前田直子氏(大和ハウス工業)

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 セミナー後の懇親会にも参加した。20人くらいの中で男性は記者一人。集中砲火を浴び、いびり出されるのではないかと恐れたので、記者と同じスーツ姿の〝男性〟に「わたし一人では心細い。一緒に参加しませんか」と声を掛けたら「わたしは女性です」と一喝された。いびり出される前に心臓が飛び出したのだが、ここで退却するようでは〝男が廃る〟と考え、最後まで皆さんと歓談した。

 ここでは書かないが、「女性活躍」は「男性活躍」と同義語であることを思い知らされた。現場での「トイレ」が大きな問題であるのにびっくりした。

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 わが業界には全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)という14字にものぼるいかめしい業界団体がある。全国低層住宅労務安全協議会(全国低住協)はそれより1文字少ないだけで、やはり長い。「低住協」という略称も「中古住宅」と同様、いいイメージを与えない。不動産流通近代化センターが不動産流通推進センターに名称を変えたように、もっと気が利いた名称に変更してはいかがか。

 もう一つ。朝の8時に現場の仕事が始まり、職人が仕事を終える17時まで働き、また事務所に戻らなければならない、しかも代わりがいない労働形態は改善すべきではないか。裁量労働制を検討してはどうかとも思った。

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セミナー参加者

「202030は可能か」 日本学術会議 ジェンダー研究分科会セミナーに参加して(2016/10/25)

 

 

 

 

 

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北原氏とそのコレクション

 日本土地建物・東京建物・日建設計・清水建設の4社が特定業務代行者として完成させた「KYOBASHI EDOGRAND(京橋エドグラン)」が11月25日オープンする。前日24日、メディア向けに公開された。

 記者は地下1階の共用部分といくつかの店舗のデザイン・アートに驚愕した。取材中ばったり出会ったテレビ東京「開運!なんでも鑑定団」のレギュラー出演者で、京橋生まれで京橋育ちのトーイズ・北原照久代表取締役の案内で、トーイズが賃貸している共用部分などのアート作品、おもちゃコレクションを見て回った。

 見るだけで楽しく戦前戦後の世相が見えてくる。素晴らしい〝作品〟ばかりなのに驚愕した。北原代表は賃貸料を明らかにしなかったが、近くにあるブリヂストン美術館の名作に匹敵する価値がある。しかも無料だ。東京に新名所が誕生した。

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北原氏のコレクション

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 「KYOBASHI EDOGRAND(京橋エドグラン)」は、東京メトロ銀座線京橋駅に直結。敷地面積約8,000㎡、事務所、店舗、公共公益施設などからなる地下3階地上32階建て延べ床面積約113,000㎡。事業主は京橋二丁目西地区市街地再開発組合。設計監理は日建設計。施工は清水建設。特定業務代行は日本土地建物・東京建物・日建設計・清水建設。組合は2006年2月に設立され、2009年6月に都市計画決定された。

 主な特徴は、①京橋エリア最大級・国内最高クラスのスペックを誇る超高層免震②高さ31mの吹き抜け空間など多様なオープンスペース③歴史的建造物「明治屋京橋ビル」を保存再生④タウンマネジメントの展開⑤中央区の情報発信拠点「中央区観光情報センター」の開設-など。

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外観

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オープニングインスタレーション

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大階段

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ガレリア

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 内覧会では、冒頭紹介した北原照久氏のコレクションのほかいくつか見学し、試食もさせていただいた。

 まず、「中央区観光情報センター」。広さは約134㎡。江戸時代の地図と昭和22年以降のNASAの協力を得て作成したという中央区の空撮写真が刻々と展開する「オーバービュー」にびっくりした。ファミコンのコントローラーのようなものを操作すれば、区の50スポットが日本語、英語、中国語、韓国語で紹介される。

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「中央区観光情報センター」

 店舗は「北大路 京橋茶寮」を取材した。これが最高に素晴らしかった。わが国の伝統的な仕上げと現代的なデザインを融合させた造りになっているのが特徴で、ヒノキ、ケヤキ、栃の無垢材などをふんだんに用いた面材・家具調度品、浮造りの床、大谷石の壁、手すき和紙の漆・柿渋仕上げ、備前焼き、鉄器、江戸唐紙などが目を楽しませてくれる。

 驚いたのは「試食会」。試食だから料理が少し提供されるのかと思ったら、何と普段は4,000円もする和食料理が出された。記者は、このような和食(中華もイタリアンもそうだが)が出されるとパブロフの犬のように酒を飲まずにはいられない。なので「すいません。お金はちゃんと払いますので、日本酒をお願いできますか」と栃木の酒「くどき上手」1合を頼んだ。瞬く間に飲んだのだが、料理が全然減らない。残したら失礼だと思い、また酒を1合頼んだ。お猪口が銅製でちゃんと冷やされていた。もちろん、酒代3,080円はきちんと支払った。

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「北大路 京橋茶寮」

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ケヤキのデザイン壁(左)とお酒

 「中央区観光情報センター」と「京橋茶寮」、さらにオープンイノベーションオフィス「SENQ(センク)」と北原氏のコレクションを見て満足し、帰り際に明治屋の店舗「明治屋ワイン亭」をのぞいたら、輸入ワインが飲めるというのでグラスに一杯どころか2杯も頂いた。これがまたおいしかった。

 最後になったが、「SENQ(センク)」もなかなかいい。法人登記もできる個室6室のほかブース11室、ラウンジ63席とシェアキッチン、会議室のほか、カフェ「ミカフェート カフェアンドブラッスリーSENQ京橋」が併設されている。

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「SENQ(センク)」ラウンジ


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「蘆花公園 ザ・レジデンス」完成予想図

 三菱地所レジデンス・野村不動産・セコムホームライフ(事業比率は非公開)が共同して12月に分譲する「蘆花公園 ザ・レジデンス」を見学した。敷地面積約15,000㎡のゴルフ練習場跡地に建設される全389戸の大規模マンションで、ランドスケープデザインに力が注がれている物件だ。

 物件は、京王線芦花公園駅から徒歩6分、千歳烏山駅から徒歩10分、世田谷区粕谷2丁目に位置する8階建て109戸と9階建て280戸の合計389戸の規模。専有面積は57.59~114.87㎡、価格は未定。竣工予定は平成30年1月上旬。設計・監理・施工は長谷工・不二建設共同企業体。

 現地はケヤキ並木が美しい、ゴルフ練習場「芦花パークゴルフ」跡地。敷地南側は第一種低層住居専用地域が広がる。

 敷地の約半分以上を空地としたランドスケープに力が入れられており、地域の自然植生や在来種を積極的に植樹し、いきもの共生事業所認証(ABINC認証)を取得するなど街との調和を図っている。また、「ロイヤルパークホテルズ」や「カッシーナ・イクスシー」とコラボレーションしたゲストルームやプライベートラウンジなど共用部分の充実を図っている。

 平均専有面積は75㎡超。全体的に広めのプランが多い。現段階で2,000件以上の問い合わせがある。

◇       ◆     ◇

 芦花公園駅はマンションの取材で度々訪れているが、アクセス、住環境は申し分ない。すぐ近くの対面には東急不動産の高級マンションシリーズ〝プレスティージュ〟の初期の頃の「プレスティージュ芦花公園」(158戸)がある。記憶は定かではないが、分譲されたのは昭和60年代初め。坪単価が300万円超で〝億ション〟もたくさん含まれていた。京王線での億ションの先駆けのような存在だった。その後、市場は狂乱時代に突入する。調布あたりで坪単価は500万円を突破した。

 もう一つ、芦花公園には記念碑的なマンションがある。セコムホームライフの「グローリオ蘆花公園」(373戸)だ。分譲開始は2008年、当初の坪単価は338万円。建築家・芦原太郎氏がデザイン監修した最高のマンションだった。しかし、時期が悪かった。リーマンショックの直撃を受けた。その後、完売まで数年かかり、最終的に坪単価は300万円以下だったはずだ。

 さて、今回の物件はいくらになるか。関係者は「未定」と口を閉ざすが、記者は坪単価330万円くらいに収まるのではないかと読んだ。明らかに最近のやや変調をきたした市況を踏まえたものだろうと思う。

 考えてみればこの30年間、「芦花公園」は市場の波に翻弄されてきた。いったいいくらで分譲されるのか、ユーザーはどう評価するのか。今後の京王線だけでなく、坪単価300万円前後のエリアの動向を探る意味でも試金石、指標となる物件であるのは間違いない。

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ランドスケープ

分棟配置と雁行設計が優れたセコムホームライフ「グローリオ蘆花公園」(2008/10/15)

 

 

 

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「アクアテラス」全景

 柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)と三井不動産は11月22日、柏の葉スマートシティの次期開発エリア「柏の葉イノベーションキャンパス」の中核ゾーンとなる「アクアテラス」の一般供用を開始するとともに、米国のグリーンビルディング協会(USGBC)が運営する国際的な環境性能認証制度「LEED(リード)」の街づくり部門「ND(Neighborhood Development:近隣開発)」の計画認証で最高ランクとなる「プラチナ認証」を取得したと発表した。プラチナ認証取得は日本初で、42haに及ぶ規模は世界最大級となる。

 「アクアテラス」の面積は約2.3ha。雨水流出抑制を目的に造られた「2号調整池」を大規模改修し、親水空間化したもの。「調整池」に新たに6 カ所の階段・スロープを設け、利用者は街のさまざまな方向から水辺近くまで降りることができ、各所にベンチやデッキ、「三角広場」、「親水テラス」など賑わいを創出するスペースも随所に設置。地域住民や周辺企業が主催するイベントや各種のアクティビティの開催も行っていく。

 また、「交流空間」としての機能の強化を実現する複合商業施設「柏の葉T-SITE」を2017 年春にオープンする。同施設は、カルチュア・コンビニエンス・クラブが手掛けるライフスタイル提案型施設で、書店・カフェ・各種ショップなどで構成される。

 UDCKが柏市と協定を結び、調整池を維持・管理していく。植栽や安全管理にかかる費用は、調整池に隣接する土地所有者が協議会を設立して負担する。

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「アクアテラス」オープンのテープカット(左からカシワニ、北原氏、田中地域ふるさと協議会・染谷茂会長、秋山市長、武田氏、出口氏)

◇       ◆     ◇

 「アクアテラス」のお披露目会に先立って行われた関係者によるプレゼンテーション・トークセションで、出席した秋山浩保・柏市長は、「市の中長期計画で『柏の葉』地区を将来にわたって千葉県全体をけん引するエリアの一つとして位置付けており、規制の強化と緩和を駆使して新たなチャレンジを行っている。今回の『アクアテラス』は難易度でいえば100%難しいのだが、皆さんの熱意に後押しされて実現した。街の大きな付加価値になる」と関係者を称えた。

 北原義一・三井不動産専務は「『柏の葉』は300haに及ぶ規模。『環境共生都市』『新産業創造都市』『健康長寿都市』の3つのテーマを掲げ、日本から世界に発信する他に例を見ない壮大な実証実験プロジェクト。『2号調整池』の用途変更も極めて画期的なこと」と語った。

 出口敦・UDCKセンター長(東大大学院教授)は、「一つの空間に一つの機能を持たせるのが従来の都市計画の手法。今回の計画は新たなモデルケースとなる」と話した。

 「柏の葉T-SITE」を出店するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の武田宣副社長は「コンセプトは『代官山 蔦屋書店』などと同じ。日常をワクワクしていただく、『T-SITE』ができて変わったなという人が一人でも増えてくれたらうれしい」と話した。

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親水テラス(左)と親水ステージ

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張り出しデッキ

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 40年近く郊外の大規模開発を取材してきたが、調整池が〝主役〟の取材は初めてだった。調整池といえば、立派な水辺空間があるのに、コンクリとフェンスで囲まれ「立ち入り禁止」の看板が掲げられているのが普通だ。それを「アクアテラス」が覆した。秋山市長は「行政単独では費用負担も大きくまずできない」と話した。

 「画期的」な親水空間の演出には違いないが、イベントに参加した地元居住者の女性は「子どもが水遊びできるようしてほしい」と話した。水辺にみんなを誘導しながら「水面への立ち入り禁止」は残酷だ。蛍を誘っておいて水を飲ませないのと一緒だ。

 調整池の深さは30~80㎝だそうだ。水は流れており、魚も泳ぐぐらいの水質だ。メタンガスは発生しない。こどもの事故など起きるはずがないではないか。仮に起きても秋山市長の責任を問う住民はまずいない。

 かつて調整池で子どもの事故はあったかと国交省にも聞いたが、国交省は把握していないということだった。

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駅前の「オークビレッジ柏の葉」の農園

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「オークビレッジ柏の葉」で「特別ですよ」といただいた富有柿

「時間をどう豊かに使うか 都市を評価する新しい指標に」 出口敦・UDCKセンター長(2016/11/22)

街の勢いを見せつけられた「オークビレッジ柏の葉」(2012/5/14)

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 柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)センター長・出口敦氏

 「ワークライフバランスに象徴されるようにいかに時間を豊かに使うか、これが都市を評価する新しい指標になる。これまで都市は公共性や利便性が重要視されてきたが、これからは人間の時間の使い方、豊かさをどう実現するかが重要」

 東京大学大学院教授で、柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)センター長を務める出口敦氏が11月22日、「UDCK設立10周年記念イベント」で語った言葉だ。

 この言葉を聞いてわが意を得たりと思った。記者はここ数カ月、いやバブル崩壊後ずっと考えてきたことがある。

 それは、「駅近」のマンションが〝過剰〟に評価され、その一方で豊かな自然環境や広い面積が確保されている郊外型が〝過小〟に評価されている市場はどこかいびつではないかという思いである。普通の会社員が23区内でマンションを買えない、住めない世の中は狂っている-この思いがずっと澱のように沈殿してきた。

 出口教授はその解けない謎を解くヒントを与えてくれたような気がした。しかし、果たして時間を豊かに使える会社員がどこにいるのか。記者は出口教授に「先生、仰ることはよくわかる。しかし、今の会社員は時間と仕事に追われ、全てのものを犠牲にして時間を確保するため『駅近』を選択する。豊かな時間など持てない世の中ではないか」と迫った。

 出口教授は「その問題を問を解くカギは可処分所得と可処分時間をどう増やすかだ」と答えた。

 時間や仕事に追われない、時間や仕事を追わない-そんな社会が来ることを記者は夢見ているのだが、「可処分時間」という概念は面白い。誰にも侵されない「可処分時間」は工夫次第で作れるような気がする。「柏の葉」が時間や仕事に追われない、そんな社会の実現のための実証実験プロジェクトであることを信じたい。

 「駅近」の価値については日を改めて書く。

三井不 柏の葉の調整池を親水空間にイノベーション「アクアテラス」一般供用を開始(2016/11/23)

 

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「Meet Up Under the Tree(あの木の下で会いましょう)」イベント参加者

 ポラスグループの中央グリーン開発は11月19日、同社が2004年から2014年にかけて開発・分譲した全1,035棟の野田市の大規模戸建て住宅地「パレットコート七光台」の一角に、住民参加型のワークショップ「光葉町ミライ会議」とともに完成させたコミュニティカフェ「Meet Up Under the Tree(あの木の下で会いましょう)」のオープンイベントを開催。鈴木有・野田市長、菊地晃史・光葉町自治会長、桜井・カフェオーナーら約100名の関係者が完成を祝った。カフェは11月23日オープンする。

 公募で選ばれたカフェオーナーの桜井氏は「お花がいっぱい飾られたオーストラリアのカフェで朝ご飯を食べてカルチャーショックを受けたのがきっかけ。こんな店を日本でもやりたいと思った。コンセプトは〝はじまり、つながり、ひろがり〟。デザインにもこだわった。コミュニティの輪を大きく育てたい」と話した。

 菊地氏は「『七光台』が分譲開始されたとき、いい街になると直感し購入を決めた。その直感は間違っていなかった。これからもいい街にしたい。自治会加入率も引き上げたい」と語った。

 カフェの敷地は、同社の旧千葉支店があったところ。当初は建物を壊し分譲戸建てを5戸建設して分譲、事業完了する予定だったが、自治会などと協議を重ね、事業完了後の地域コミュニティを支援するために今回の住民参加型のカフェに変更した。3年間のテナント料と300万円の支店リノベーション費用を補助した。リノベーションには住民も参加した。

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コミュニティカフェ「Meet Up Under the Tree(あの木の下で会いましょう)」

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左から菊地氏、鈴木市長、桜井氏

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 この街は分譲当初から数回取材している。「奇跡の街」と書いたが、あの貧相な駅舎と蒼茫とした野原がわずか10年で1,000戸を超える住宅街に変貌したのが信じられない。いま、郊外住宅地の販売ペースは年間20~30戸だ。この街はその4~5倍のスピードで完成させた。当時の記事もぜひ読んでいただきたい。

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カフェの一角

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 イベント会場で参加者に話を聞いた。まず、この日のイベントに野菜を提供した千葉県野田市木間ケ瀬(旧関宿)農家「みのりFarm池澤」の30歳代のご夫婦。

 読者の皆さんは野田市木間ケ瀬と聞いても皆目見当がつかないだろうし、記者自身も「旧関宿」と聞いて、「ああそうか。あの千葉県の北西の突端にある利根川と江戸川に挟まれた盲腸のような町」くらいしか思い浮かばないのだが、若い池澤ご夫妻は、その盲腸のような地で年間30種類の野菜をセットで各家庭に直接販売している。今では六本木ヒルズ、恵比寿ガーデンプレイスなどのマルシェにも出店しているというから驚きだ。

 2人は19、20歳で結婚。ご主人はいわゆる〝婿〟。〝嫁ぎ先〟は子どもに同じ仕事をさせないのが家訓だったため、二人で農業の道を選んだのだそうだ。子どもは2人。

 ご主人が「彼女は30キロの荷物を持てる」と紹介したので、早速奥さんに腕相撲を申し込んだ。体重は40キロ前後なのに、記者はものの数秒でねじ伏せられた。

 奥さんは「わたしの専門は美容・ネイル。仕事を通じて美容と農業がつながっていることがわかってきた。土に触らない日はない。ネイルは爪が汚れても目立たないように黒を基本にしている」と笑った。

 「パレットコート七光台」に当初から住んでいる6歳と4歳の子どもがいる30歳代の夫婦はどうか。

 大阪出身のご主人(38歳)は都内・日本橋に勤務する会社員。「会社まで1時間半。専ら読書の時間に充てている」と、通勤をそれれほど苦に思っていないようだ。結婚して仕事を辞めたという〝専業主婦〟の奥さんは「わたしは所沢出身。最初は全然お友だちもいませんでしたが、たくさんできるようになった」と語った。

 気になるのはやはり女性の仕事と子育ての両立だ。18歳から25歳まで4人の子どもかいる40歳代の女性の「いつも母子家庭状態」という声にはドキリとさせられた。

 豊かな自然と広い敷地の郊外住宅に住むことが、女性にとって〝専業主婦〟〝母子家庭〟状態になることを覚悟しなければならないのか。これはみんな考えないといけない。今回のカフェでは、採用した従業員6人中4人が七光台の住民とのことで、雇用創出にも一役買っているようだ。

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「みのりFarm池澤」ご一家

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七光台にお住いのご一家

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イベントでふるまわれた料理

全191戸が5カ月で完売した「パレットコート七光台」(2005/2/4)

奇跡の街 ポラス「パレットコート七光台」 現場監督を務めるのは2人の若い女性(2010/2/4)

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「宮崎台ブラザビル」リビング

 コスモスイニシアは11月18日、子育てを終えた50~60歳代の夫婦ふたり世帯をターゲットにしたリノベーション済マンションの新シリーズ「INITIA WiZ(イニシア ウィズ)」を立ち上げ、3物件のリノベーション工事が完了したのに伴い分譲を開始したと発表した。同日、完成済みの住戸をメディア向けに公開した。

 「INITIA WiZ」は、利便性と環境に恵まれた沿線・駅の徒歩5分以内を目安に物件を選定。"寛ぎ"を実現できる陽当たりを確保した物件を厳選。間取りはふたり暮らしにちょうどいい距離感を実現する間取りとし、リビング・ダイニングには床暖房を設置し、天然木のフローリングを使用する。また、趣味を愉しむための空間や、飾る・見せるを愉しむ収納、なかなか手放せないものをしまえる大型収納を確保する。

 今回、分譲を開始したのは東急田園都市線の「宮前平ガーデンハウス」(駅徒歩2分、全73戸、1995年竣工、専有面積65.50㎡、価格5.380万円)、「宮崎台プラザビル」(駅徒歩1分、全136戸、1981年竣工、専有面積68.33㎡、価格4,980万円)、「梶ヶ谷プラザビル」(駅徒歩3分、全147戸、1982年竣工、専有面積70.04㎡、価格4,480万円)の3物件。

 今後、他の沿線でも展開し、分譲棟内の居住者のリフォーム・リノベーション要望にも応える体制を整える。同社は9月にリノベーションに特化した「&Renovation渋谷青山営業所」を設置しており、リノベーション事業の一層の拡大を図る。

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「宮崎台ブラザビル」

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 この「INITIA WiZ」シリーズのコンセプトがいい。人気沿線の後背地には分譲価格にして数千万円以上の戸建てに住んでいる高齢者がたくさんいる。ローンも終え、世帯分離で独立する子世帯も多いはずだ。そのような層をターゲットにするのは大正解。同社と大和ハウスが共同で分譲した「高尾」のマンションでも、周辺の戸建て居住者の買い替え・買い増しがたくさんあったことでも証明されている。

 見学したのは「宮前平」と「宮崎台」の2物件。「宮前平」は住友不動産が売主で、築年月からしてバブル崩壊直後の分譲だ。当時のデータは手元にないが分譲単価は坪400万円くらいしたのではないか。二重床にすることで段差の解消を図り、オーク材の挽き板フローリングがよく、ソフトクローズ機能付きの引き戸を多用しているのが特徴。

 ちょっと価格が高い(坪単価271万円)気がするが、解体費用を含めて約800万円の改修費をかけているというからこんなものか。新築なら坪単価は300万円をはるかに突破する立地だ。

 「宮崎台」は竣工からして旧耐震マンションだ。デザインもいかにも昭和50年代に流行した外壁で、レンガ調のタイル、アーチが多用されている。耐震診断は受けていないようだが、当時の売主は東急電鉄で、「宮崎台」だから地盤はしっかりしていそうだ。

 リノベ住戸は、遮熱性に劣り高さも低いサッシ、旧式の玄関ドアそのままだが、内装のデザインは最近の新築物件とそん色ない。壁一面のカウンターラック、ホールの上部収納付きカウンターの提案がいい。リノベ後の坪単価240万円は安いのではないか。

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「宮前平ガーデンハウス」

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「梶ヶ谷ブラザビル」
 


 

 

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主力商品「檜の家」

 ナイスは11月18日、ヒノキ造りの伝統的な木造軸組工法による一戸建住宅や社寺建築などを手掛ける菊池建設を11月17日付でナイスの100%出資子会社にしたと発表した。菊池建設の民事再生計画の認可決定が確定したことを受け、7月15日付で締結したスポンサー契約に基づき決定した。

 菊池建設は1955年に創業。木造注文住宅メーカーで、ヒノキを使用した日本伝統の数寄屋造りをはじめとする純和風の木造注文住宅を得意としており、神奈川県、東京都、千葉県、埼玉県、静岡県を中心に供給している。社寺建築もこれまでに100件以上を手掛けている。

 今後、グループが有する建築資材の調達、プレカット加工、物流といった機能を活用し、経営の合理化や事業の拡大を図っていく。新社長には木暮博雄氏が就任。 資本金は1億円。社員数は104人。

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 ナイスは最近、一戸建住宅部門に力を入れており、前期売上計上戸数は733 戸(前期比60.0%増)、売上高は257億円(同52.7%増)に伸ばしている。今期は1,00戸目標を掲げる。デベロッパー系の分譲戸建てでは野村不動産を抜き三井不動産レジデンシャルに迫る勢いにある。菊池建設の子会社化により注文住宅部門(前期は293戸)を伸ばそうという戦略だ。

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寺社建築 地持院(静岡県静岡市)

 

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