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「ウエリス浦和美園」完成予想図

 記者は50年以上の西武ライオンズ(前西鉄ライオンズ)ファンで、球団が所沢に移転してきたとき球場の近くの戸建てかマンションの購入を考えたほど熱を入れたことがあるが、サッカーにはまるで興味がない。国際試合は必ず観て日本を応援するが、国内の試合は浦和が勝とうが大阪が勝とうがどうでもよく、それよりも頭突きをしたり、得点するとユニフォームを脱いで裸になり卑猥な踊りもしたりする、退屈で野蛮なサッカーのどこがいいのかと思っている。

 また、街のポテンシャルはホテル、デパート、食など文化の集積が重要で、その点からしてわが多摩ニュータウンに勝るところはないと思っている。坂の多さを批判する人がいるが、起伏の多い街は景観を美しくする利点もある。千葉や埼玉の大規模住宅地の人気がいま一つなのは、起伏に乏しい地形にも一因があると思っている。

 そんな記者の独断と偏見の物差しで、NTT都市開発他「ウエリス浦和美園」を紹介することを了解していただきたい。

 まず、「浦和美園」について。300ha超に及ぶ土地区画整理事業「みそのウイングシティ」の都市計画決定がなされたのは1999年。バブル崩壊により事態が深刻になっていたころで、前途多難を思わせた。埼玉県やさいたま市も事業に関与していた。

 そして、2001年に埼玉高速鉄道浦和美園駅が開業し、浦和レッズが本拠とする埼玉スタジアムも完成した。2006年には「イオンモール浦和」が開業。その前後にポラスの大規模戸建て分譲が行われ人気になったが、東急不動産他のマンション「センターフィールド浦和美園」(197戸)は完売まで相当時間がかかった。

 記者はこの10年間、4~5回取材に浦和美園を訪れている。街の開発スピードは遅々として進んでいないと思う。もっと早い段階から民間〝活力〟を導入し、街の未来像を描くべきだった。駅前は貧しいのに、どうして駅から15分もかかるところにスタジアムを建設したのか。サッカーファンはやさしいのか、野球ファンなら怒る。街路樹も貧弱だ。官主導の土地区画整理事業は時代遅れの開発スキームだ。

 ところが、2020年東京オリンピックの会場に埼玉スタジアムが選ばれたこともあるのだろうか、ここにきて動きが出てきた。駅前に公共複合施設が開設され、順天堂大学附属病院、商業施設「ウニクス」の進出も決まった。約14,000㎡の公園も整備される。最近は三井不動産レジデンシャルやポラスの戸建て分譲が人気を呼んだ。近く、さいたま市の先進的モデルタウンの戸建て分譲も始まる。

 「浦和美園」はそんな街だ。駅舎、駅前広場は浦和レッズ一色で、チームカラーのレッドは広島カープ同様なかなかいい色だと思う。

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リビングルーム

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 さて、これからが本番。ここまで辛抱強く読んでくださった浦和レッズファンはもちろん、もはやマンションの取得は絶望的と思っている圧倒的多数派のサラリーマンの方にもう少し辛抱して以下を読んでいただきたい。

 「ウエリス浦和美園」は、埼玉高速鉄道線浦和美園駅から徒歩7分、埼玉県さいたま市緑区大字下野田字新道下に位置する15階建て「サウステラス」380戸と「ノーステラス」317戸の合計697戸の規模。現在分譲中の「サウステラス」の専有面積は70.11~92.84㎡、価格は3,478万~5,548万円(最多価格帯3,900万円台)、坪単価は175万円。竣工は「サウステラス」が2016年12月中旬、「ノーステラス」が2018年4月上旬。施工は川口土木建築工業。売主は同社(事業比率80%)のほか川口土木建築工業(同20%)。販売代理は住友不動産販売、東急リバブル。

 物件の特徴は、敷地の南側に約14,000haの公園予定地が広がり、敷地の東側には魚も泳ぐ綾瀬川に隣接している環境のよさだ。販売を担当する住友不動産販売の担当者によると、「始発駅であるので朝の通勤時には座れるし、地下を走るので遅延がほとんどない」とのことだ。

 住戸プランでは、埼玉県初のマンション向けエネファームを全戸に搭載しており、二重床・二重天井、ディスポーザ、「良水工房」が標準装備。コミュニティプログラムは当初1年間、事業主が費用を負担して支援する。

 分譲開始から約1年半、これまで「サウステラス」の約160戸が契約済みだ。「サウステラス」の竣工を前後して全317戸の「ノーステラス」の分譲が始まる。

 「ノーステラス」の特徴は、専有面積63~130㎡のプランバリエーションが全87タイプと豊富で、とくに75㎡の4LDKを設けているのに注目したい。このタイプは、ナイスが採用して成功したように、部屋数を確保したいファミリーをターゲットにしたものだ。

 さらに、70㎡の3LDKのプランは、間口を6,400ミリ(サウステラスは6,000ミリ)とするなど広くし、横長リビングにしたり収納に工夫を凝らしたりしている。

 また、これは「サウステラス」もそうだが、70㎡台の後半のプランの廊下幅を広いものは約1,400ミリとするなどすべてメーターモジュールにしているのも大きな特徴だ。

 価格についてはユーザーが判断することだが、レッズファンにはたまらないマンションではないか。設備仕様などは他のこれくらいの単価のマンションよりは優れているといえる。多摩ニュータウンなら坪200万円を突破するはずだ。勝敗のカギは物件の特性をどうアピールするかだ。

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 同社のマンションブランド「ウエリス」について。昨年の5月、「ウエリス銀座」を取材したとき、どうして物件名が「ウェリス」でないのか悩んでしまった。NTT都市開発ともあろうものが物件名を間違えるはずがない、記者の目が悪いので「ェ」が「エ」に見えるのだろうかと何度も確認し、結局、「ウエリス」にしたのだが、それまでの記事は全て間違っていたのだろうかと冷や汗が出た。

 何のことはない。同社が昨年1月、ブランド名「WELLITH(ウェリス)」を「Wellith(ウエリス)」に変更したのを記者は知らなかっただけのことだった。どうして「Wellith」を「ウエリス」と読ませるのか不思議だが、旧仮名遣いでは拗音・促音はほとんど大文字だったから、まあいいか。

 同社によると、今も「ウェリス」と「ウエリス」が混在しているのだという。

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ロゴマーク

 三井不動産は10月24日、オフィスビル事業で女性の活躍を応援する新しいプロジェクト「Work-Life Bridge(ワークライフ・ブリッジ)」を本格始動すると発表した。

 「Work-Life Bridge」プロジェクトは、「女性の視点」に新しい働き方やライフスタイルのヒントがあるという考えのもと、オフィスを単に働く場としてだけではなくOff Timeも充実させる場となるような施策を企画することで“Work”と“Life”の架け橋となることを目指し、女性の活躍を応援するもの。

 プロジェクト第一弾は、「手軽&豊かな食卓を通じ“働く”を応援します」をテーマに、有機・特別栽培野菜などのインターネット販売を行うオイシックス株式会社とのコラボレーション企画として、20 分で主菜・副菜が作れるレシピと食材のセット「Kit Oisix(きっとおいしっくす)」を販売するイベントを「日本橋一丁目三井ビル」(コレド日本橋地下1階、10/24~10/28 17:00~19:00)と「霞が関ビル」(地下1階、10/31~11/4 17:00~19:00)で行う。通常1セット2人前1,180~1490円の商品を1,000円で販売する。「KitOisix」の定期会員数は3万人を越えるという。

 同社は女性活躍推進のリーディングカンパニーを目指し、女性管理職の人数について2020年までに2015年度の3倍を超えることを定量目標に掲げている。

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 先ほど、「202030は可能か」の記事を書いたばかりだ。タイミングよく、同社が女性活躍を応援するプロジェクトを始動するニュースをリリースした。

 記者も主夫をやったことがあるのでわかるが、20分で主菜・副菜をつくれるのはいい。

 記者が子ども二人によく作ったのは「親子丼」「カツ丼」(カツは市販のもの)「ホイコーロー」などで、これだと30分はかからない。材料費も安い。カレーライスは圧力鍋を使って時間を短縮したが、ねぎを炒めるのに時間がかかるので1時間近くかかった。休みの日の定番は「チャーハン」と「ラーメン」だが、ラーメンはもやしの根を切り出すと30分はかかった。自分の食事は子どもが食べ終わってから作った(酒さえあればよかったのだが)。

 それにしても「Kit Oisix」の定期会員が3万人とは。ただ同じ食材で、同じレシピで、同じ味のおかずで食事をする「Kit」はブロイラーのようで何だか味気ない。それだけ働く女性が追い詰められているのだろうが、「愛」のかけらもない。「Motto」はどうか。

「202030は可能か」 日本学術会議 ジェンダー研究分科会セミナーに参加して(2016/10/25)

 日本学術会議社会学委員会ジェンダー研究分科会が「202030は可能か-『女性活躍推進法』の実効性を問う-」と題する公開シンポジウムを10月23日、日本学術会議で開いたので議論を聞いてきた。

 「202030」とは、平成15年6月、内閣府・男女共同参画推進本部が決定した「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的位置に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする目標」をわかりやすく言い表したものだ。2010年段階でこの数値をクリアしているのは薬剤師(67.0%)、国の審議会など委員(33.8%)くらいしかなく、衆議院議員(10.9%)、100人以上の民間企業の課長相当職以上(6.5%)など、圧倒的に低い現状値を引き上げようというもので、2015年8月には、女性管理職の割合に数値目標を義務づける「女性活躍推進法」が参院本会議で可決、成立した。

 シンポジウムは、この数値目標を達成するのは可能か、さらにまた「女性活躍推進法」の問題と可能性を論じるのが目的だ。

 記者は、「女性活躍」なる言葉は何だか胡散臭く好きではないが、「女性活躍」=「男性の働き方改革」でもあると考えているので、女性の学者先生がどのようなことを話すか興味があったので聴きに行ったのだ。

 シンポジウムに参加して感じたのは、これほどの大きなテーマであり、コメンテーターに立命館大学特別招聘教授・上野千鶴子氏、東京大学教授・大沢真理氏が登壇し、その他多くの専門の立場の方々6人が報告するにも関わらず、聴衆は100人どころか数十人しかいなかったことだ。この日が土曜日で、家事や子育てに忙しいからだろうか。ならば保育付きならもっと集まったのではないかと率直に感じた。(家事や子育ては女性だけの仕事でないと怒られそうだが)

 もう一つは、どうしてジェンダー論者は女性ばかりなのか。この分科会には、女性は連携会員を含め18人もいるのに、男性委員は京都大学大学院文学研究科教授・伊藤公雄氏一人だ。上野氏らと真っ向勝負する男性の学者はいないのか。これまた男性にとっても女性にとっても不幸なことではないのか。

 とはいえ、女性の方々が何を考えているのかよくわかったし、何よりも声が美しく、「えー」「あのー」などの機能語をほとんど使わなかったのに感心もし、10分間の休憩をはさんで5時間も真剣に論議する〝粘り強さ〟には「男性は絶対かなわない」と感服した。

 (女性の)参加者や報告者の胸をぐさりと衝いたのは、大沢氏が「女性が(管理職などに就いて)何が変わるのか明らかにすべき」と語り、上野氏が「202030って何? これはゴールなのか手段なのか、達成した先には何があるのか、均等法によって(女性は)『白鳥』になれたのか、同床異夢ではないのか、女が軍隊への女性の参加は究極のジェンダーフリーなのか、大隅さんのノーベル賞受賞報道で、同じ研究者の奥さんの『内助の功』が強調されるのはなぜ」などと語ったことではないかと思う。

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 わが住宅・不動産業界の「202030」はどうか。記者の知る限り、上場会社の女性役員はコスモスイニシア、サンケイビル、フージャースコーポレーション、ヒューリックくらいしかない。管理職比率も全体では10%もないはずだ。

 しかし、マンションなどの商品企画は「女性の視点」抜きではありえない。三井不動産レジデンシャルは20年前に「MOC」を立ち上げ(実際はそれ以前から取り組んでいたが)、業界をリードしてきたし、大京、東京建物などの女性だけの商品企画グループは多くの成果を上げてきた。コスモスイニシアにはそもそも男女の差がない企業風土がある。

 ダイバーシティの取り組みも動きは緩やかではあるが、先進企業が見られるようになってきた。積水ハウス、大和ハウス工業、NTT都市開発は経産省・東証の「なでしこ銘柄」に選定されたし(株価が反応しないのは残念だが)、野村不動産とヒューリックは女性活躍推進法に基づく認定マーク「えるぼし」の最高評価の認定を受けた。

 また、東急リバブルはかなりハードルが高いとされる厚労省「均等・両立推進企業表彰」を、さらに厚労省「子育てサポート企業」には業界から10社以上がそれぞれ認定を受けている。

 均等法が(醜いアヒルの子を)「白鳥」にしたのか、それとも『カモ』にしたのかは分からないが、「女性活躍」=「男性の働き方改革」=ダイバーシティの取り組みは待ったなしだ。202030の実現に向けてわが業界が先進的な役割を果たすことを期待したい。

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 「白鳥」について記者は異論がある。多くの人は「白鳥(ハクチョウ)」からチャイコフスキー「白鳥の湖」、サン・サーンス 「白鳥」を連想するのだろうが、「白鳥(シラトリ)」と読めば、若山牧水の「白鳥はかなしからずや空の青海のあをにも染まずただよふ 」を思い浮かべる。

 若山牧水が自らの寂しい孤独な心境をうたったのだろうが、記者に言わせればそれこそ〝白鳥の勝手〟だ。空の青や海の青に染まず漂う姿は、人間に例えれば右にも左にもぶれず、自らの信念、孤高を貫く気品に満ちた実に美しい姿勢ではないか。

 そんなに「白鳥(ハクチョウ)」になりたいのか、醜いアヒルのどこが悪いのか。何とも滑稽な無防備な〝カモ〟もまたかわいいではないか。

 会社の女性スタッフに「女性活躍をどう思うか」と聞いたら、「活躍したからといって(アベノミクスの)手柄にしてほしくない」と手厳しい答えが返ってきた。

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「イニシアクラウド渋谷笹塚」完成予想図

 コスモスイニシアが11月上旬に分譲する「イニシアクラウド渋谷笹塚」を見学した。全体のデザイン監修に建築士の横堀健一氏を起用し端正な外観デザインにするとともに、デザインオフィスnendo代表・佐藤オオキ氏とコラボし、多様なライフスタイルに対応するため自在な住空間を提案した商品企画が優れている。

 物件は、京王線幡ヶ谷駅から徒歩10分、渋谷区幡ヶ谷三丁目の第1種中高層住居専用地域に位置する5階建て全42戸。専有面積は専有面積44.87~85.26㎡、価格は未定だが坪単価は360万円くらいになる模様。竣工予定は平成29年5月下旬。施工は大豊建設。

 現地は中野通りから一歩中に入った低中層の戸建て・マンションなどが建ち並ぶ住宅街で、敷地は東西軸が細長い長方形で、住戸は南向き。全住戸の床が挽き板のフローリングで、渋谷、代々木公園、千駄ヶ谷、代々木上原、代官山、青山が約5㎞圏にあることから、ライフステージ、ライフスタイルに応じて玄関を入ってすぐのスペースを〝Wリビング〟として暮らせる提案をしているのが大きな特徴。

 空間設計を担当しているnendoが「ワークルーム(渋谷)」「ガレージ(代々木公園)」「クロークルーム(千駄ヶ谷)」「パーティダイニング(代々木上原)」「プレイルーム(代官山)」「シアタールーム(青山)」の6つの提案を行っている。一部はモデルルームに採用されている。

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 周囲の道路が狭いのは難点だが、それを補って余りある商品企画だと思う。

 モデルルームを見学して驚いたのは間取りプランだ。玄関は住戸のほぼ中央に設置されており普通のマンションと変わらないのだが、廊下を挟んだ左右の居室のドアがスライドウォールになっており、開け広げると廊下スペースを含め15~16畳大の居住空間になるよう工夫されていた。廊下の天井高も居室と同じ2400ミリだから、一体利用できる配慮もなされていた。

 これを見たとたん、先日見学した三井不動産レジデンシャルの「パークコート青山ザ タワー」を思い出した。玄関を入るとすぐにリビング空間が広がっていたのにびっくりしたのだが、コスモスイニシアのモデルルームもほとんど同じだ。同社分譲事業部プロジェクトマネージャー・中路健太郎氏が「Wリビングの提案」と呼んだように、「ライフスタイルに応じてSOHOにもシアタールームにもなる」プランだった。

 このような思い切ったプラン提案は「笹塚」のアドレスだからこそ、ターゲットを絞り込んでいるからこそできる技だが、最近の同社の企画力は突出している。横堀健一氏についても触れておくが、先日見学したモリモトの「浜町」も横堀氏だった。これもいいデザインだった。

 価格について。笹塚駅圏では6年前にモリモトが分譲したマンションの坪単価は280万円だった。駅から少しあったのでこの単価に驚いたのだが、瞬く間に売れた。現在、同じエリアには中野通りに面した住友不動産「シティハウス笹塚レジデンス」が分譲中で、三菱地所もマンションを建設中だ。住友不動産の物件は所在が「中野区」であるため坪単価は350万円くらいで、三菱地所は笹塚駅により近いため、もっと高い値になるようだ。

 物件シアターを見て驚いたのだが、「suumo 新築マンション首都圏版」(2016.9.6号)で、「笹塚」が京王線の「住みたい街ランキング」トップに躍り出たのだという。記者は「仙川」がいいと思うが、果たして仙川は何位か。

 

 

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「ヘーベルビルズシステム」イメージ

 旭化成ホームズは10月24日、8階建てまでの賃貸住宅、店舗・事務所など多様なニーズに対応した中高層用ビルディングシステム「ヘーベルビルズシステム」を開発し、11月より一部エリア(東京および周辺部)で先行販売を開始すると発表した。

 「ヘーベルビルズシステム」は多様な商業用途が想定される4~6階建てをメインターゲットとして開発したもので、同社がこれまで販売してきた「ヘーベルハウスフレックス」の技術や生産・施工方法を継承しながら、各階の階高を2.8~3.5mの範囲で設定可能とするなど、品質と精度を確保しながら飛躍的に自由度を高めて8階建てまでの建築を可能とした。

 ヘーベルハウス同様、外壁のALCコンクリート「ヘーベル」の取り付けには、地震時の変形に対する追従性の高い独自のロッキング工法を用い、振動抑制装置や制震装置も用意した。更に、基礎工事も工業化するなど現場工程を極力単純化し、工業化が進んでいない中高層建築市場において高品質で高効率な施工を実現した。

 現在、4階建ての賃貸併用住宅などでは同社を筆頭に着工戸数に占めるハウスメーカー施工比率が高いのに対し、5階建て以上は現場施工のRCや鉄骨造が多く、「メインプレーヤーが不在」(同社)の市場を形成しているという。

 発表会に臨んだ同社取締役兼専務執行役員・川畑文俊氏は「やっと中高層の幅広い用途に対応した技術を開発することができた。長年展開してきた『ロングライフ経営』の礎が完成した。自社で内省化できる強みを発揮し『中高層建築№1』の達成を目指す。2020年度には4階建て以上の受注全体で500億円が目標」などと話した。

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 同社の工業化製品「へーベルハウス」の技術を継承・発展させて、在来工法が中心のメインプレーヤー不在の中高層ビル建設に市場参入するという非常にわかりやすい、いいことずくめの新技術に違いない。

 しかし、天邪鬼の記者は別のことを考えた。①都市部の狭小敷地は工業化製品では対応が難しい不整形の敷地のほうが多いのではないか②アール状のデザインを採用するなど特徴を持たせ、間取り・設計の自由度が高く、間口の広い空間を確保できるのはRCではないか③遮音性能もRCのほうが高いのではないか-と。

 そこで、そのまま同社の技術担当者にこの疑問をぶつけた。担当者は、「へーベルハウスは不整形の土地でも柔軟に対応できるようになってきている。外観デザインや間口など良しあしがあるものについて当社は数値競争しない。遮音性能は壁や床の仕様の問題」と語った

 -なるほど、そういうことだ。同社が建設した1~5階まで賃貸住宅で、延べ床面積270坪の試作棟は坪単価95万円とのことだった。確かにRCでは絶対このような単価では建設できないし、工期短縮、施工の安定性、職人不足のことも考慮すると競争力があるということか。

 

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「ヴィル・ボワール森下」

 ポラスグループの中央住宅マインドスクェア事業部の城東エリアの戸建て分譲が好調だ。都営新宿線瑞江駅から徒歩4分の7棟現場の「ザ・マインドスクェア瑞江」が9月末にモデルハウスをオープンしてからわずか1週間で完売し、同線菊川駅から徒歩3分の狭小敷地の全3棟「ヴィル・ボワール森下」も残り1棟。

 同事業部が東京に進出してから10年、城東と一部の千葉も含めると年間コンスタントに100~150棟を供給してきており、今年度中に1,000棟を達成するという。「目標は年間300棟」を掲げる東京東事業所所長・南部好克氏に話を聞いた。

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周辺の街並み(右端が同社の戸建て)

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 「ヴィル・ボワール森下」は都営新宿線菊川駅から徒歩3分、江東区森下3丁目の準工地域にあった。現在分譲中の1棟の敷地面積は46.49㎡、建物面積は79.57㎡、価格は6,500万円。構造は木造2×4工法3階建て。建物は平成28年6月完成済。他の7,500万円と6,500万円の住戸は契約済みだ。

 ポラスグループの分譲戸建ては数え切れないほど見学してきた。「蔵のある街」プロジェクトがその典型例であるように、数棟の小規模でも〝街づくり〟にこだわるのが大きな特徴の一つだ。

 ところが、この「森下」は全くそうではなかった。狭小敷地の3階建てだ。工法が2×4だからだろうか、外観はモノトーンの角張った住宅だ。玄関を入ってすぐ2階に上がったのだが、ステップは13段しかなかった。これもポラスの住宅ではない。ポラスは1階の天井高を2.7m確保することを標準としており、階段のステップも15段が普通だ。

 〝これはポラスの住宅じゃない〟と思ったのだが、2階に上って企画意図を瞬時に理解した。不特定多数の万人向けの戸建てなど全然企図していないことが分かった。写真を見ていただければお分かりだろうが、造り手の強烈なメッセージが込められている。青のタイルを貼ったキッチン、モザイク模様のローテーブル、アンティーク調の家具、カフェに掲げられている黒板のようなタペストリーなどだ。

 これら家具調度品は好みによって変えられるものだが、記者が感心したのは1m以上ありそうな背の高いカウンターだった。リビングとダイニングをつなぐようで分ける発想が面白い。

 〝木のポラス〟もしっかり盛り込んでいる。床にはブラックチェリーの銘木挽き板が採用されていた。

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ダイニング

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 中央住宅マインドスクェア事業部東京東事業所所長・南部好克氏はモデルハウスの椅子に座り、問わず語りに話し出した。

 「土地は14坪(46㎡)しかない。設計はどうしてもワンパターンになってしまう。立地からすれば何もしなくても売れることが分かっていた。従前の建物を解体する段階で『そのまま売ってくれ。言い値で買う』という業者さんも現われた。建てて売るより利益率が高いほどの条件だった。そこで考えた。間取りはどうしようもない、ペンシルハウスしかできない、街並みもつくれない。〝街並みをつくる〟をテーマにしてきたポラスグループとしていったい何をしたらいいのかと。原点が問われた。

 行き着いたのはこの深川界隈をひたすら歩くことだった。歩いて、歩いて深川の歴史を学び、イメージをつくり上げた。昨年出来たばかりの話題にもなった日本進出一号店の『ブルーボトルコーヒー』がヒントになった。そこにあるスペックでなくエモーショナルな部分に刺激を受けた。2006年に研修でニューヨークに行った時のことを思い出した。古い倉庫などをリノベしたアパートメントがたくさんあった。当時のアルバムを引っ張り出し、単品でもコストをかけ、この深川に馴染む、分譲らしくない注文住宅のような突出した価値のあるものをつくらなくちゃいけないことを発見した」

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 この南部氏の〝独白〟にヒントがある。モノづくりにこだわる商品づくりがユーザーに評価されているのだ。南部氏は、近い将来、年間300棟の販売を目指すという。城東エリアでの同社の供給シェアは現段階では微々たるものだが、年間300棟となると他を圧することになる。今後の展開が興味深い。

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リビング

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パネルディスカッション(三井倶楽部で)

 三井デザインテックが10月19日、昨年に引き続く第2回目のプレスセミナー&懇親会を三井倶楽部で行った。5mはありそうな天井には豪華なシャンデリアが輝き、壁も床も無垢材が採用されている会場にうっとりしながらも、同社デザインラボラトリー所長・見月伸一氏の報告や、伊藤忠ファッションシステム取締役ifs未来研究所・川島蓉子氏と見月氏などとのパネルディスカッションに夢中で聞き入った。

 「コト」「空間エクスペリエンス」などの魅惑的な言葉の意味を必死で考え、デザインが新しい空間価値を創造し、働き方、住まい方、生き方を変え、さらには日本を変える力になると確信した。ライスは食べなかったが、ビーフカレーは特別だった。ワインもおいしかった。

 セミナーでもっとも心に響いたのは、川島氏が「経営者もデザイナーもいつも未来を見つめている。両者がタッグを組めば素晴らしい未来が開ける」という趣旨のことを話された「コト」だった。

 記者もその「コト」を強く感じる。職場環境が社員同士のコミュニケーションをスムーズにし、生産性を上げることはこれまでもたくさん紹介されている。

 しかし、その動きはあまりにも小さく遅い。なぜか。企業・経営者は労働環境を変えることに後ろむきで、デザイナーもまた真剣にタッグを組もうとしていないのではないかと考えている。

 一例を示す。電通の女性新入社員が過労で自殺したのに衝撃を受けた。〝事件〟が報じられたその日(10月7日)、厚労省は過労死等防止対策推進法が施行されたのを受けて「過労死等防止対策白書」を初めて公表した。

 全体として労働時間(パート含む)は年々短くなっているが、長時間労働はまだまだ高い水準にあり、年次有給休暇の取得率は5割を割る水準で推移したままで、仕事の量や質にストレスを抱える労働者が多く、精神障害に係る労災申請が増加していることなどが報告されている。

 記者が驚いたのは、厚労省が労働時間、労働条件などについて企業1万社と労働者2万人にそれぞれアンケートを行ったのだが、回答は企業が1,743件で、労働者は19,583件だったことだ。回答が件数になっているので単純比較はできないが、仮に回答をそれぞれ社、人とすれば企業は17.4%で、労働者は97.9%となる。法律が施行され、安倍内閣が働き方を改革しようと必死になっているのにこれはどういうことか。

 川島氏が「経営者とデザイナーがタッグを組んだら…」と話したのはこのことだろう。デザイナーは毎日、労働・職場環境を見ており、未来も思考しているはずだ。その知見を生かし、企業・経営者に提案していくことが求められている。劣悪な環境を劇的に変えられるはずだ。

 もう一つ、デザイナーに期待したいのは、戸建てやマンションなどの住宅に対する提案力のアップだ。

 セミナーではユーザーの本物志向、素材へのこだわりが強まっていると報告された。その通りだ。しかし、このところの価格上昇で、設備仕様はケミカル製品だらけになってきた。専有圧縮も甚だしい。この悪い流れを変えてほしい。デザイナーの仕事は単なる意匠デザインだけでないはずだ。商品力を高めるのもデザイナーの役割だ。

 これは余談だが、参考になりそうなマンションのプランについて。三井不動産レジデンシャルが先日、「パークコート青山ザ タワー」のモデルルームをメディアに公開した。巨匠と呼ばれるブルーノ・モワナー氏がデザインを担当している115㎡のプランは、何と玄関がなくリビングインタイプだった。

 記者は欧米のマンションのプランがどうなっているか知らないが、リビングインタイプは少なくないそうだ。わが国で受け入れられるか疑問だが、提案してみる価値はありそうだ。これもまたマンションの間取りを劇的に変えるかもしれない。

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 ついでに三井倶楽部で発見した「コト」を一つ。三井倶楽部には「内外美術の粋を集め、とりわけロダンの彫塑、ターナー、サー・ト一マス・ローレンス、ドービニー、ニコラス・マースの油絵等の逸品があり、各室に配備の家具、什器、その他の調度品等もそれぞれ他に比類を見ない豪華なものです」(三井倶楽部ホームページ)とある。

 昨年は見過ごしたのか気が付かなかったが、はっとする絵を帰るとき見つけた。クロークの前に飾られた年代も画家名も不詳の50号はありそうな大作だ。裸婦がベッドに横たわっていた。絵の傷み方、陶器のような肌から判断して、描かれたのはルネサンス時代だろうと見当をつけた。

 しかし、その絵は単に裸婦が横たわっているだけではなく、丸裸の女性の前に黒い衣服を着た男が不義をなじるのか、これから犯そうとするかのような形相で見つめているではないか。

 これに似たような絵は、ルーベンス「レウキッポスの娘たちの略奪」を筆頭にいくつか見たし、レンブラント「ダナエ」、マネ「オランピア」、アングル「トルコ風呂」、マネ「草上昼餐」、ジャン・レオン・ジェロームの一連の「奴隷市場」などスキャンダラスな絵もたくさんある。(女性はどう見るかわからないが)率直に美しいと思う。

 ところが、三井倶楽部に飾られている絵には何とその背後のカーテン越しにその場面を覗く、明らかに男と思われる黒い影が描かれている。これには酔いがいっぺんに醒めた(と思っただけかも)。

 この黒い影は画家そのものであり、画家にそのような絵を描かせた王侯貴族だと理解した。年代も画家名も不詳なのは、名前が明らかになればそれこそ袋叩きにあうのを恐れたためだ。王侯貴族は卑猥な絵を描かせ私蔵した。

 この絵も、描いたのは世に伏せなければならないほど著名な画家であり、描かせたのも著名な貴族だったに違いない。鑑定に出せばとてつもない値段がつくかもしれない。そんな絵がさりげなくクロークの前に飾られている。

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懇親会

コンドルが設計した「綱町三井倶楽部」を観た 三井デザインテックがセミナー(2015/10/22)

 

 

 

 

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「クレヴィア調布国領RESIDENCE」

 伊藤忠都市開発(事業比率50%)・三菱地所レジデンス(同)が11月中旬に分譲する「クレヴィア調布国領RESIDENCE」を見学した。京王線国領駅から徒歩3分の全163戸で、坪単価は280万円。75㎡と70㎡前後の3LDKが中心。ドンピシャリの企画と見たがどうだろう。

 物件は、京王線国領駅から徒歩3分、調布市国領町4丁目に位置する10階建て全163戸。専有面積は55.04~79.06㎡、第1期(戸数未定)の予定価格は4,600万円台~7,700万円台(最多価格帯6,400万円台)、坪単価280万円。竣工予定は2018年2月上旬。施工は大末建設。販売代理は三菱地所レジデンス。

 現地は、商業ビルやマンションが建ち並ぶ表通りに位置しており、3方が道路。敷地南側は第一種低層住居専用地域。

 建物は3棟構成で、駅に近い部分にグランドエントランスが設置され、他の住棟とは長さ約100mのゲートブリッジで結ばれている。

 住戸プランは第一種低層住居専用地域に面する南側住棟は75㎡が中心で、他の棟は70㎡前後の3LDKが中心。二重床・二重天井、ディスポーザー、食洗機が標準装備。

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中庭

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 この前、NTT都市開発他「ウエリス世田谷砧」の記事でも書いたが、世田谷区内のマンションは軒並み坪単価が300万円を突破し、駅に近い物件などは400万円もする。

 今回の「国領」は、世田谷区に隣接する調布市で、各駅停車駅であることなどから坪280万円という単価設定になったと思われるが、20坪で400万円の差は大きい。

 コスト削減からプランバリエーションを少なくしたのは気になるが、70㎡のプランは7500ミリのワイドスパンで、廊下スペースを少なくし、主寝室を7畳大確保するなど工夫もされている。ここが試金石・分水嶺となる。売れなければ準都心の物件は相当苦労しそうだ。

 商品企画は伊藤忠都市開発で、販売には伊藤忠ハウジングは入っておらず、三菱地所レジデンスが担当するという面白い組み合わせのマンションでもある。

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「伊里前福幸商店街」完成予想図(隈研吾建築都市設計事務所提供) 

ナイスは10月19日、建築家の隈研吾氏が設計を担当した新たな復興のシンボルとなる宮城県南三陸町の「伊里前福幸商店街」の移転新築工事を着工したと発表した。

 「伊里前福幸商店街」の移転新築工事は、南三陸町の市街地再生の中核を担う株式会社南三陸まちづくり未来が進める事業で、同社は「ナイス・志津川・山庄特定建設共同企業体」の代表として参画するもの。全体設計は、新国立競技場のデザインを手掛けた建築家の隈研吾氏が担当している。

 建物は木造・平屋建て延べ床面積672.79 ㎡(202.04 坪)。完成予定は2017年4月末。建物の内外装には南三陸産のスギが用いられる予定。

 事業は、復興庁が認定している「南三陸町まちなか再生計画」の一環として計画されており、地域の生活を支える商材やサービスの提供をはじめとして地域コミュニティーの中核的機能を担い、また、国道沿いの高いアクセス性を生かして観光客も立ち寄りやすい市街地とすることを目指す。

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「癒し」の効果を促すカラーコディネト イメージ

 東急不動産は10月18日、分譲マンションBRANZ(ブランズ)の新たな商品企画に東京ガス、資生堂と連携し、各社の調査研究データをもとに“より美しくスマートな暮らし”を実現するための浴室空間と入浴方法、美容方法を加えた「自分を整えるBRANZのバスタイム」を提案すると発表。実際の提案をオリジナル商品企画「MEUP(ミアップ)」の一環として来春分譲する「ブランズ南荻窪」に採用する。

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 東京ガスの「ミストサウナ」を採用したマンションは少なくない。その効用は記者も体験したのでいうまでもないが、今回の商品企画は資生堂が参画したのがみそだ。

 ニュースリリースには「資生堂の研究結果によると、肌を温めることで細胞が活性化し、肌全体に美容成分が届きやすくなることが明らかになっています。資生堂のプレステージブランドベネフィークのスキンケアは、肌温に着目し、独自の『℃(ドシー)美容』で、ひとをあたためて美しくするブランドです。『温・冷・温』のサーマルギャップが“Nカーブ”で冷えた肌をほぐし、うるおい環境を整え、角層深く美容成分の効果をしっかりと受け止める肌へ導きます」とある。

 結構なことだ。しかし、記者は風呂嫌いで、冬場は湯船に入り、寝込んでたたき起こされるまで時間を忘れるが、普段は5~6分のシャワーだけで済ませる。一般の人は15~30分入るようだ。

 そこで、同社に提案。今回の提案もいいが、次は風呂代を浮かせ、浴室スペースも削減できる商品を開発してほしい。

 ネット情報などによると電気、ガス、水道代、洗剤その他を合計すると1日当たり150円くらいで、入浴時間、掃除時間などを時間給1,000円として計算すると月に2万円くらいになる。

 わが国は労働時間が長く、睡眠時間が少ないのが問題になっている。入浴時間を半分以下に減らせは、その分睡眠や余暇時間に充てられるので、月に1万円は節約できる計算になる。手っ取り早いのは、自動身体洗い機だと思う。洗濯機のように身体を入れれば数分で身体を洗い、乾燥もしてくれる機器を開発してはどうか。省スペースにもなるし大ヒットするはずだ。

 

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