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 明和地所の国立マンション建設をめぐる訴訟で、国立市が同社に支払った損害賠償金約3,120万円は当時市長だった上原公子氏が賠償すべきとした裁判(東京地裁平成26年9月25日判決言渡し)で、最高裁判所は12月13日、上原元市長の上告を棄却。この結果、上原元市長に約3,120万円の損害賠償を命じた東京高裁判決(2015年12月22日)が確定した。

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 この問題は、明和地所がマンション建設計画を明らかにした1999年から同社へはもちろん、国立市役所や当時の上原市長へのインタビュー、住民集会への参加、裁判の傍聴などずっと関わってきた。ある意味では記者の人生を変えた事案でもある。あれから17年、感慨深いものがある。節目節目で記事を書いてきたのでそちらを参照していただきたい。

 一連の裁判で当初から主張してきたことがほぼ認められてうれしいのだが、次の2点だけはもう一度しっかり指摘しておく。

 一つは、地区計画の決定について。

 明和のマンション敷地を含む「中三丁目地区地区計画」の施行面積は約13.5ha。このうち、同社のマンション敷地は約2.7haで、同社の敷地に隣接する北側の桐朋学園の敷地は約9.2ha。地区計画ではともに高さ規制は20mとなっている。そして、桐朋の敷地の東側にある低層住宅地約1.1haと同社の敷地の西側にある第一種低層住居専用地域約0.5haは高さ規制をそれぞれ10mとした。

 全体施行面積のうち明和の敷地は約20%だが、桐朋の敷地とその隣接の低層住宅地を除くと、同社の敷地割合は約84%に達する。地区計画が決定される前の明和の敷地は高さ規制がない建蔽率60%、容積率200%の地域だった。

 このことからも、マンション建設反対運動を主導した桐朋の関係者などと上原氏が結託して、まさに同社を狙い撃ちにした地区計画であることがわかる。地区計画は法的な強制力を持つため、その決定には関係権利者の合意を得て民主的に進めるべきなのに、上原氏と当時の議会はその手続きを無視した。暴挙と言わざるを得ない。

 一連の判決は、この地区計画の決定に至る手続きに瑕疵はないとしているが、これは今でも納得できない。

 もう一つ。記者は問題に〝火〟が付いたとき、不動産協会や日住協(現全住協)に「対岸の火事視してはいけない。このような暴挙を許せば、絶対高さ規制を行おうとする動きは燎原の火のごとく全国に広がる。業界全体として動くべき」と持ち掛けたが、どこも取り合ってくれなかった。当時、同社は飛ぶ鳥を落とす勢いにあり、同業他社はやっかみもあったのか、等閑視した。同社の故・原田利勝氏にも「泣く子と地頭には勝てない。和解を」と勧めたが、原田氏は首を縦に振ることはなかった。

 その後、事態は憂慮した通りになった。建築物の絶対高さ規制は良好な街づくりに絶対つながらない。むしろ逆だ。擁壁のように街と遮断し、日照・通風・居住性の劣るマンション建設を増やすだけだ。用途規制、日影規制なども含めた都市計画のあり方についてしっかり再検討すべきだと思う。

 上原氏は敗訴を受けて記者会見し、「市民自治を無視するもの。歴史に汚点を残す決定だ」(東京新聞)と怒ったそうだが、何人も法の下では平等ということをお忘れか。首長は権限が大きいからこそ、権力行使には公平・公正を期さなければならない。上原氏の暴走はその後の「景観保護」運動に大きな影響を与えた。功罪はあまりにも大きい。

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 裁判の確定を受けて、上原氏を支援してきた「くにたち大学通り景観市民の会」は2016年12月30日付で以下のような「ご報告とお願い」をネットで公開した。

 「(前略)この結果は、国立の大学通りの景観保護をめぐって努力してきた国立市民と国立市、当時の上原市長の「オール国立」ともいえる住民自治の営みを消し去ろうとする承服しがたい決定であると言わざるを得ません。

 (中略)上原公子さんがいま、国立市から請求されている賠償額は、約4400万円と巨額です(金利含め)。

 私たちは、この間のすべての経過を鑑みて、この額は、上原元市長ひとりで1円たりとも負担すべきものでないとの決意で向き合うことといたしました。

 これまで多大なご支援をいただいてきたことに加えて恐縮ですが、この度、募金を募る(ママ)ことを決めました。どうか、私たち決意をお受け止めいただきたく心より訴えさせていただきます」

 この「会」が中心になって進めたマンション建設反対署名には石原慎太郎氏など数万名が賛同したはずだ。

 政治理念の実現のためには「権限を濫用」し「信義則に反する」「不法行為」を堂々と行う人に対する支援であることを承知の上でなら、当時賛同した方々は寄付をしたほうがいい。一人当たり1,000円の寄付でお釣りが出るくらいの募金は集まるはずだ。

 寄付が集まらず、上原氏が金策に回らなければならないようでは、わが国の景観を守ろうとする勢力の鼎の軽重が問われる。

「国立裁判」明和地所〝圧勝〟に思う(2004/11/8)

「国立裁判」全て終結 明和地所が全面勝訴したが…(2008/3/13)

「求償権の放棄」は問題 国立市は上原元市長に賠償請求すべき(2014/10/1)

上原・元国立市長への求償は当然 議会「決議」の法的効力は? (2015/1/31)

国立 市議会勢力図が逆転 どうなる上原氏への損害賠償請求(求償権)(2015/5/1)

国立市議会 上原元市長に対する求償権行使を求める決議(2015/5/20)

国立求償裁判 国立市が逆転勝訴 東京高裁、第一審判決を破棄(2015/12/22)

 

 今年の不動産協会と不動産流通経営協会(FRK)の合同「新年賀詞交歓会」は参加者が過去最多の約1,200名が参加した。ごった返す会場で参加者に「今年はどのような年になるか、どのような年にしたいか」を聞いた。(順不同)

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 全国住宅産業協会(全住協)会長・神山和郎氏(日神不動産会長)

 (会長、叙勲おめでとうございます)今年? 昨年と変わらないよ。若干(市況は)上向くかもしれないが…。当社? 長年の懸案だったリートの立ち上げを目標にしている(2016年秋の叙勲で旭日重光章を受章)

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神山氏

 森ビル社長・辻慎吾氏

 決断、実行の年にしないといけない。2020年の東京オリンピックに向けて政官民が一体となって都市づくりを進めなければならない

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辻氏

 タカラレーベン社長・島田和一氏

 昨年と変わらないが、潮目に逆らって攻めに転じる(潮目が引き潮になっても積極的に事業展開するという意味)

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島田氏(右)と同社常務・手島芳貴氏

 野村不動産社長・宮嶋誠一氏

 開発用投資を増やし、発展の年にしたい。(マンションの完成在庫が増えているが)期末に向けて営業スタッフを強化して減らすよう努力する

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宮嶋氏

 モリモト社長・森本浩義氏

 新しいモリモトステージ。今まで(坪単価)500万円以上のマンションは分譲したことがないが、年初から分譲する「西麻布」をはじめチャレンジする

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森本氏

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左からモリモト会長・庄司直哉氏、東京建物相談役・畑中誠氏、森本氏、モリモト常務・柏木二郎氏(両社は昨年、「湯島」で激突したが、双方ともよく売れ、共同事業をやろうと相談していたのかもしれない)

 不動産協会会長・岩沙弘道氏(三井不動産会長)

 (会長、昨年はこの場で「デフレ脱却」を強く訴えたが)今年も同じ、デフレ脱却、強い経済の基盤づくりの年にしなければならない。この4年間の安定政権の中、一定の効果・成果が表れてきた。成長戦略に期待したい

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岩沙氏

 野村不動産ホールディングス会長・中井加明三氏

 マンションは安定的に売れ出す年になる。期待している。阪急さん? 東京に猛攻撃している

 阪急不動産社長・諸冨隆一氏

 関西で培ったノウハウを東京で生かそうと試行してきた。東京にはたくさんデベロッパーがいるが、安定的に着実に伸ばせるようにしたい。野村さん? 野村さんとは「京成立石」で再開発を共同で行う(東京進出に際して第一弾を三井不動産と組み、その後着々と実績を積み重ねてきた。野村不動産と組んで再開発も積極的に行うのか)

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中井氏(左)と諸富氏

 かんべ土地建物社長・神戸雄一郎氏

 変化の年。世界経済・社会の影響を受けるだろうが、その変化に対応して2020年の東京オリンピックに向け街の発展に寄与したい。(御社には野球が上手な社員がいるはずだが)福田? 彼は私の(慶応)高校時代の後輩の縁で入社した。私も高校時代は野球選手でサード。大学ではアメフトをやりましたが…。(野球部を作ってほしい)いいですね

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神戸氏

 日本不動産鑑定士協会連合会会長・熊倉隆治氏(東急不動産参与)

 業界として鑑定士法改正をしっかり具体化していく。これまで鑑定士は土地や建物など不動産が評価の対象とされてきたが、これからは農地の流動化にも大きな役割を果たすし、動産も評価できるようになる

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熊倉氏と東急リバブル元社長・袖山靖雄氏

 新日鉄興和不動産常務・松本久長氏

 潮目の変化に注意したい。投資マーケットはピークを過ぎ、今後は下がるという声が圧倒的に多くなっている

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松本氏

 野村不動産アーバンネット会長・宮島青史氏

 最近はRBAの野球会場ばかりで会っていますね。本業? 価格が高騰する中、当社は昨年12月、売り上げとして月間の新記録をつくった。今年もこの調子を続ける(RBA野球では優勝を狙える力をつけてきた)

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宮島氏

 相鉄不動産社長・杉原正義氏

(「二俣川」はすごい売れ行きでしたが)いい年にしたいですね。写真? 勘弁してください(帰り際、急ぐように会場を去った)

 エメスタッフ会長・加藤光晴氏、同社社長・加藤晴樹氏

将来に向けて盤石の強い会社にする(加藤光晴氏)父の築き上げてきたものを拡大したい(加藤晴樹氏)

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加藤光晴氏(左)と加藤晴樹氏

不動産協会・不動産流通経営協会 2017年 合同賀詞交歓会に過去最多の1,200名(2016/1/6)

 

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木村・不動産協会理事長(左)と田中・FRK理事長 

 不動産協会と不動産流通経営協会(FRK)は1月6日、恒例の合同による「新年賀詞交歓会」を行った。冒頭、不動産協会・木村惠司理事長(三菱地所会長)が「日本の豊かな社会、安心・安全の街づくりを進めていく」とあいさつし、FRK・田中俊和理事長(住友不動産販売社長)は「昨年は不動産流通取引件数が過去最高を更新した。今年も市場規模の倍増に向け業界が一丸となって取り組む」と抱負を述べた。

 参加者は昨年の約1,150名を上回る約1,200名に達し過去最高を記録。来賓として石井 啓一・国土交通大臣、山本幸三・内閣府特命担当大臣(地方創生、規制改革)、高市早苗・総務大臣、野田毅・自民党税制調査会最高顧問、北側一雄・公明党副代表(元国交大臣)、井上義久・公明党幹事長なども挨拶し、菅義偉・内閣官房長官も駆けつけるなど、会場は立錐の余地がないほど賑わった。

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不動協とFRKの2017年賀詞交歓会(会場のホテルオークラ アスコットホールの定員は800名)

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 最初に登壇した不動産協会・木村理事長は、「私事で恐縮ですけれども、私、いま鎌倉に住んでおりまして、この正月3ケ日は快晴の日が続きました。紺碧の空と海と、そして江の島と湘南海岸の間に富士山が白い雪を頂いている姿を観て、改めて日本の豊かな社会、安心・安全の街をつくっていく決意を新たにしました」と語り始め、国内外の社会・経済状況には「中国の動向などリスク要因もあり、多少不透明感が続く」としながらも、昨年末の税制改正大綱では「事業用資産の買換え特例の延長・拡充、登録免許税の特例の延長などが決まり、わたしどもが要望した税制がほぼ100%実現した」と評価、「内需産業の中核としてこれからの日本経済の成長に寄与したい」と述べた。

 具体的な課題としては、地方創生とともに大都市の問題について触れ、「世界的な都市間競争が激化する中でのわが国の大都市の魅力を発信するために、ハード的には国家戦略特区の活用をスピーディに行うこと、ソフト的には街づくりエリアマネジメント手法などを駆使することが必要」と強調した。

 住宅分野については、「約6,000万戸あるストックのうち3,000万戸は耐震、耐火、省エネなどで問題がある」とし、建て替えやリフォーム、リノベーションを進め中古と新築の両方が良質なストックを形成し、「新しいライフサイクルにあったニーズ、ウォンツに応えていくことが大事」と話した。

 働き方改革についても触れ、「取り組みは業界でもまだまだ緒についたばかり。不動産特有の問題も潜んでいるかもしれないので研究していきたい」と語った。

 「街づくり都市づくりを通じて、なおかつ良質な住宅を供給することで希望が持てる社会の実現のために努力していく」と結んだ。

 来賓の挨拶のあと、乾杯の音頭を取った不動産流通経営協会理事長・田中俊和氏(住友不動産販売社長)は、「昨年の不動産流通市場は取引件数が過去最高を更新するなど、堅調に推移しました。足元も既存住宅の底堅い需要を実感しており、今年も住宅税制・金融支援策もあり、高水準な取引が続くと期待している。

 日本にはモノを大切にする文化がある。よいものは残し、次の人に活用してもらう、このリレーをお手伝いするのが私たちの仕事。既存住宅における消費者の不安解消にわれわれは取り組んでおり、建物状況調査(インスペクション)はその一助になる。年末にその運用方法がまとめられた。我々はそれがスムーズな導入に向け、業界で取り組んでいく。

 また、多様化する時代を迎え、新たな技術の活用を加えることにより消費者に地域の魅力、既存住宅の魅力を発信していく役割を担っていきたい。そして、『新住生活基本計画』の目標である市場規模の倍増に向け業界一丸となって取り組んでいく」と述べた。

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左から不動産協会会長・岩沙弘道氏(三井不動産会長)、木村氏、田中氏

 大手デベロッパー、ハウスメーカートップの2017年年頭所感が記者にも届いた。

 昨年の政治・経済・社会動向については、熊本地震、英国のEU離脱、米国の大統領選結果などを挙げ、「本当に想定外な事象が多かった」(三井不動産・菰田正信社長)、「文字通り激動の一年」(積水ハウス・阿部俊則社長兼CEO)などと振り返った。

 しかし、こうした激変する社会・市場環境をどう見るかでは微妙な差異が見られる。三井・菰田社長は「大きな時代の転換点の始まりに過ぎない」とし、「技術革新、価値観の変化は既存のビジネスを破壊するほどのイノベーションを起こし始めている」と読む。

 また、大和ハウス工業・大野直竹社長は、不透明な情勢下では「たった1つの出来事で会社の信用は失墜する」と慢心を戒めた。

 その一方で、野村不動産ホールディングス・沓掛英二社長は「私は、2017年の日本の経済環境は、昨年のように不透明が強まり、厳しい環境が続くとは考 えていません。大局観として今年は、経済の明るい方向に目を向けるべき年である」と、先行きは明るいことを強調している。

 ポラスグループ・中内晃次郎代表も「本年の不動産業界は低金利基調や緩やかな地価上昇が予想されるなど、総じて堅調な年になる」と考えている。

 激変する市場環境の中で、どのような舵取りを行うかでは興味深いキーワードも見られる。

 野村HD・沓掛社長は、「不動産や関連するサービス業は、もはや先を見越した変化対応業である」と言い切った。三井・菰田社長はミレニアム世代の台頭について触れ、三菱・杉山社長は、世の中は「モノ消費から『コト消費』へ移行しつつある」と述べている。リビタ・都村智史社長は、今年に込める思いを漢字一文字「結」と認めた。

 積水・阿部社長兼CEOは「子育て中の女性、男性社員の支援を含めた“働き方改革”を進めていく」「今後も施工人材の育成と確保が競争力の要」と、社会的課題についても取り組みを強化すると語った。

三井不・菰田、地所・杉山、野村HD・沓掛、リビタ・都村各社長 2017年 年頭所感

積水ハ、大和ハウス、三井ホーム、ポラス各社社長 2017年 年頭所感

お客さまのWANTSを引き出す

積水ハウス・阿部俊則社長兼COO

 今は、量より質が求められる時代。単に「住む」ということではなく、暮らし方がより重視され、家はやりたいことを実現する場に変化しつつある。自宅がレストランや 図書館、シアター、そしてホテルにもなる。

 お客様のNEEDSではなく、WANTS、つまり住宅が「必要だから」ではなく、「お客様が本当に望まれていること」を引き出して、「潤いのある暮らし」を提案していく。さらに、子育て中の女性、男性社員の支援を含めた“働き方改革”を進めていく。

 今後も働きやすい制度、環境づくりを深化させる。また、積和建設やハウス会などの「施工力」は当社にとっての大きな強み、財産。

 今後も施工人材の育成と確保が競争力の要になると考えている。構造改革やグループ連携強化により、各事業の収益基盤が確立してきた結果、利益成長を3つのビジネスモデルでバランスよく支える体制が整ってきたことで、売上高2兆円という過去最高の記録が視野に入った。

 新たな中期経営計画も始動します。新たな成長へ向けて前進する。

何事も「焦らず、弛まず、怠らず」

大和ハウス工業・大野直竹社長

 大和ハウスググループは昨年来、役職員全員のたゆまぬ努力により、「第5次中期経営計画」の初年度中間期に計画値を上方修正するなど、売上高4兆円超に向かって歩みを着実に進めているが、このような業績が好調な時こそ、決して慢心してはいけない。

 たった1つの出来事で会社の信用は失墜し、約6万人のグループ役職員、協力会社、取引先が路頭に迷う。何事も「焦らず、弛まず、怠らず」、「お客様ファースト」で一歩一歩、着実に丁寧に業務を遂行してください。

 加えて、本年、皆さんは〝更なる〟高みを目指して、売上高5兆円の基盤づくりに励んでください。

 かつて創業者は「世の中の多くの方々が必要とされ、喜んでいただける商品・サービスの創出と事業化」を念頭に置き、住宅・建築・不動産の各分野で、これまでになかった商品・サービスを提供してきました。

 みなさんも新たな需要を掘り起こすべく、事業の川上から川下までのバリューチェーンの中で「プラス1、プラス2の事業」を創出し、業容拡大とグループの更なる成長・発展のために尽くしてください。

「木」の持つ魅力を最大限に活かし、可能性を追求

三井ホーム・市川俊英社長

 住宅市場においても、(昨年は)相続税対策としての貸家建設需要に牽引される形で新設住宅着工戸数が7月から4か月連続して対前年比増加となり、全体戸数としては回復傾向となりました。

 しかしながら持家需要については未だ力強さに欠け、リーマンショック後の着工戸数に及ばない水準であり、楽観できない状況にあります。

 今年は昨年より継続している施策を展開することに加えて、熊本地震における現地調査結果などを生かして、あらたな技術革新に取り組んでまいります。

 また、昨年秋にツーバイフォー工法において2時間耐火構造の大臣認定が取得されたことを受けて、木造施設建築等への展開も推進してまいります。

 引き続き「木」の持つ魅力を住まいへ最大限に活かしつつ、新たな技術の研究とあわせ、その可能性を追求して参ります。

会社の文化的インフラを強化する1年

ポラスグループ・中内晃次郎代表

 本年の不動産業界は低金利基調や緩やかな地価上昇が予想されるなど、総じて堅調な年になると考えています。

 しかし建設費の面では、ドル高傾向は資材価格の上昇につながり、現場の人手不足感もありコスト的には見通しが効かない状況です。一部都心では不動産価格が上昇していますが、私たちがテリトリーとしている近郊エリアは実需に基づいて動いており、大きな値動きはないと考えておりますので、投機的な動きや情報などに左右されずに着実に行動してまいります。

 本年、当社では『凡事徹底』をモットーに、当たり前で基本的なことを確実に実行します。責任と権限の明確化や仕事の構造の見直しを行い、個人の力量だけに頼り過ぎない事業運営を進めます。そして核となる強みを構築し強い骨格を持った、いつの時代でも勝ち続けられる会社にするために、会社の文化的インフラを強化する1年とします。

 そして初夏に稼働予定の佐賀県の工場を確実に立ち上げ、2年後に控えた創業50周年に向けて、社会からより信頼される企業を目指し、全社一丸で前進し、盤石な企業基盤を構築してまいります。                        

 

急拡大するシェアリングエコノミーに対応

三井不動産・菰田正信社長

 2017年は、昨年起こった多くの想定外の事象が、これからの歴史の中でどういう意味を持つことになるのかが見えてくる年になると思われる。反グローバル・保護主義の声が影響を及ぼし、経済面での影響が生ずる可能性もある。

 ICTの発達によるマッチングコストの低下がミレニアム世代の嗜好と相まって世界ではシェアリングエコノミーが急拡大しており、既存のビジネスを破壊するほどのイノベーションを起こし始めている。

 今年は、中期経営計画「イノベーション2017 ステージⅡ」の目標年度であり、まずはその目標を確実に達成すると同時に、これまでも時代の変化を先取りして新しいビジネスを開拓してきたように、2020 年以降を見据えて、新しい需要を創造し、新たな市場を創りだし、ビジネスを革新していく。

 新たなコトに『スピード感』をもってチャレンジ

三菱地所・杉山博孝社長

 オフィス賃貸市場は今年も引き続き堅調に推移していく。分譲マンション市場は、魅力を伝えられる物件とそうでない物件で販売状況には今までよりも差が付く可能性があり、「立地の見極め」や「企画力」がより重要になってくる。

 訪日外国人客の増加は今後も継続することが想定されるが、いわゆる「爆買い」は落ち着いてきており、モノ消費から『コト消費』へ移行しつつあり、質の高いものを提供することで、新たなインバウンドニーズの流れをつかんでいく。

 今年は新中期経営計画を発表する年であり、「信頼され、競争力のある事業グループの集合体」の実現に向けて事業を推進し、新たなことに「スピード感」 をもってチャレンジしていく。

不動産業はもはや変化対応業

 野村不動産ホールディングス・沓掛英二社長

 2017年の日本の経済環境は、昨年のように不透明が強まり、厳しい環境が続くとは考えていない。大局観として今年は、経済の明るい方向に目を向けるべき年である。不動産市況、特に住宅市場は回復傾向とみるべき。

 これらの環境を踏まえて2点、申し上げたい。まず1点目は、中長期経営計画に対してもう一度、その達成に向けて真正面から向き合っていきたい。

 2点目は、組織や業務、働き方などの様々な構造改革・業務改革に挑戦したい。「過去の継続、安定、スタビライズ」はある意味で「衰退」を意味する言葉と置き換えてもおかしくない時期に突入している。

 不動産や関連するサービス業は、もはや先を見越した変化対応業であると言っても過言ではない。イノベーティブな変革を推し進めてゆくことは、今後のグループの成長にとって極めて重要な戦略である。

 今年は野村不動産が1957年(昭和32年)に創業して以来ちょうど60年の節目の年。どんな環境であろうともしっかりとした自覚を持って次なるステージ に向けて企業価値の向上を果たしていきたい。

今年に込める思いは漢字一文字で「結」

リビタ・都村智史社長

 シェア・コミュニティを事業軸とする弊社はリノベーションを通じて人と人、人と街を結ぶコネクトの役割を果たすことが重要と考えております。新しい結びつきがあってこそ、そこに付加価値が生まれます。

 「結」という文字には「糸を束ねて一つにゆわえる」という意味が込められております。新年を迎えるにあたり、弊社とパートナーの方々が持つ多種多様な「糸」で「吉」をより合わせて新しい付加価値を創造し、その「結」果を相互に享受していきたいとの決意を新たにしております。

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三井不動産レジデンシャル「パークコート青山 ザ タワー」

京阪電鉄不動産「ファインシティ東松戸」他2物件

モリモト「ディアナガーデン自由が丘」他4物件

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「パークコート青山 ザ タワー」モデルルーム

 今年(2016年)のベスト3マンションは、①三井不動産レジデンシャル「パークコート青山 ザ タワー」②京阪電鉄不動産の「ファインシティ」シリーズ3物件③モリモトの各物件-毎年、見学取材した物件の中から話題性、売れ行き、商品企画などを総合的に判断して選んでいるもので、今年は92物件が対象だった。

 「パークコート青山 ザ タワー」(163戸)は文句なしの選定。業界関係者に今年のマンション3物件はどれかを問えば間違いなくこの物件がその一つに選ばれるはずだ。立地条件とユニークな商品企画は他を圧した。売れ行きも絶好調。都心人気を象徴した。

 ほかの2物件は難航した。業界関係者でも10人中10人が異なる物件を選ぶのではないか。記者も同じで、〝これを選べばあれも〟と目移りする物件が多く、絞り切れなかった。

 そこで、価格の高騰により売れ行きが鈍化する郊外物件の中にあって孤軍奮闘、〝価格破壊〟にチャレンジし、第一次取得層にターゲットを絞り込んだ京阪電鉄不動産の3物件「ファインシティ東松戸」(382戸)「ファインシティ王子神谷」(319戸)「イマジンテラス(ファインシティ横浜江ヶ崎ルネ)」(338戸)をひとくくりにして選んだ。

 もう一つは、意匠デザインを含めた商品企画が際立ったモリモトの「ディアナガーデン自由が丘」(14戸)「ディアナコート浜田山」(32戸)「ディアナコート日本橋浜町」(44戸)「ピアース千代田淡路町」(71戸)など一連の物件をまとめて一つとして選んだ。

 この3社の供給物件は、超都心の人気、コンパクトの激増と二極化、郊外不振など今年のマンション市場をくっきりと浮かび上がらせた。

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「パークコート青山 ザ タワー」インフィニティ プール

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 「パークコート青山 ザ タワー」は、分譲前からいくらで分譲されるのか、どのような商品企画になるか注目されていた。

 記者は、前年もベスト3マンションに選んだ坪単価1,000万円の「パークコート赤坂檜町ザ タワー」の例もあるので、「青山」も単価はそれくらいになると読んでいたが、その通りになった。坪950万円と聞いても全然驚かなかった。

 驚いたのはモデルルームだった。記事の見出しに「非日常の極み」と付けたように、曲線デザインをふんだんに盛り込んだ内装に目が眩み、あきれ返って隅々まで見学するのを忘れてしまったほどだ。

 他のメディアも同じ反応を見せた。たくさん書かれているので、記者の拙い記事よりそちらを読んでいただきたい。

 売れ行きも絶好調。一般販売住戸110戸のうち80戸に申し込みが入っている模様だ。事業協力者販売住戸53を含めるとすでに8割以上が売れていることになる。全322戸の「赤坂檜町」と比べると戸数規模は約半分だが、それでも都心部の高額物件では同業他社を圧倒した。

 本当は同社の別の究極の億ションを選びたかったのだが、同社は「未分譲」としているので選外としたことを付け加えておく。

非日常の極み 「パークコート青山 ザ タワー」は坪単価950万円(2016/10/18)

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「イマジンテラス(ファインシティ横浜江ヶ崎ルネ)」収納

 ここ数年、電鉄会社(系不動産)のマンション攻勢がすさまじい。神奈川県が地盤だったはずの相模鉄道(相鉄不動産)と京浜急行(京急不動産)は都内だけでなく埼玉、千葉方面にも攻め込んできている。

 もともとマンションの供給が少ない京王、西武、東武、京成の各社はすっかり影が薄くなり、東急電鉄や小田急電鉄(小田急不動産)も霞むほどだ。とはいえ、電鉄各社はビル事業や再開発、その他の事業にも積極的に参入しており、デベロッパーを脅かしている。

 ここに、関西の近鉄不動産、阪急不動産、京阪電鉄不動産、東海の名鉄不動産、三交不動産、さらに最近は西鉄不動産も参戦し、首都圏での事業展開を加速させている。これら電鉄(系)会社の首都圏マンション供給シェアは10%をはるかに突破するのではないか。

 電鉄各社が首都圏マンションを主戦場とするのは、多角化の一環で、それぞれの地盤ではマーケットが小さいからだろうが、みんなの〝足〟である移動手段を独占している各社が手を組んだら(例えば契約者専用車両とか専用シート)、マンション4強(三井、三菱、住友、野村)に迫る。今のところその気配はないので、デベロッパーも一安心だろう。(かつて東武は自社マンション見学会のため新松戸に特急を停車させた)

 前置きが長くなってしまったが、JRや私鉄各社と小さなマーケットで争っている京阪電鉄不動産はさすがというべきか。第一次取得層の取得限界を3,500万円と読み、徹底した差別化戦略で他を圧倒、存在感を示している。

 今年分譲開始した「東松戸」「王子神谷」「横浜江ヶ崎」の3物件の販売戸数は合計1,039戸(JV含む)にのぼる。野村不動産の〝オハナ〟のお株を奪う勢いだ。

 4月の販売開始の「東松戸」は現在まで250戸を契約している。驚異的な売れ行きだ。竣工まであと1年あるので、竣工完売は間違いない。

 「王子神谷」「イマジンテラス」は現在までそれぞれ約170戸を成約済み。販売ペースは落ちてきているようだが、順調に進捗している。こういう会社を応援したい。

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「ファインシティ東松戸」リンクガーデン

〝三方一両損〟で3,500万円の3LDKを死守 京阪電鉄不「東松戸」が大健闘(2016/8/26)

〝郊外不振〟跳ね返す 京阪電鉄不動産他「イマジンテラス」(2016/9/21)

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 今年に始まったわけではないが、モリモトが相変わらず元気だ。今年見学したのは「ディアナコート浜田山」(32戸)「ピアース千代田淡路町」(71戸)「ピアース下北沢」(37戸)「ディアナコート日本橋浜町」(44戸)だが、このほか「ディアナガーデン自由が丘」(14戸)の記事を書いた。

 圧巻は、坪550万円の億ションの「自由が丘」だ。モデルルームを設置せず、図面だけですでに11戸を契約済み。モデルルームなしで億ションを売る力のあるのは、他では三井不動産レジデンシャルくらいではないか。残り3戸は来春に一般分譲される。

 「浜田山」も素晴らしい物件だ。設備仕様レベルは、都心の単価が600万円くらいの億ションに負けない。

 坪単価420万円の「千代田淡路町」と坪単価440~450万円の「下北沢」はいずれもコンパクトで、瞬く間に売れた。こんな芸当をやってのけられるのはやはり他では三井くらいしかいない。

 競合も多い「日本橋浜町」の一般分譲は来春だが、すでに友の会会員だけで15戸が販売済み。このマンションも商品企画が抜群だ。

 なぜ同社のマンションがよく売れるのか、ヒントらしきことを同社関係者から聞いた。契約後の解約や内覧会での「イメージが異なる」などといったクレームはほとんどないそうだ。エレベータや共用部の掲示板にいたるまで神経を行き届かせているのが高く評価されているともいう。

 「モリモトのデザインコード」が今年のグッドデザイン賞を受賞したのも納得だ。来年早々には、完成後の建物を見学して共用部分の細部についてレポートしたい。同社のすごさがまた見えてくるかもしれない。

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「ディアナガーデン自由が丘」

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「ディアナコート浜田山」
 

モリモトの億ション「ディアナガーデン自由が丘」 モデルなし 会員だけで残り3/14戸(2016/12/8)

モリモト「ピアース下北沢」 坪440~450万円でもコンパクトが人気(2016/9/30)

デザイン・プラン・仕様レベル高い モリモト「ディアナコート日本橋浜町」(2016/10/11)

モリモト「ピアース千代田淡路町」 坪単価420万円でもほぼ1カ月で完売へ(2016/4/19)

これを見よ 比肩するマンションなし モリモト「ディアナコート浜田山」(2016/3/4)

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「ヴェレーナグラン浦和仲町」完成予想図

 今年のマンション取材の締めは大和地所レジデンスの「ヴェレーナグラン浦和仲町」になった。GRAND =「偉大なる」の意味を込め、外観、空間、マテリアル、仕様の細部にこだわり、住まいとしての価値を求めたシリーズ〝ヴェレーナグラン〟の名に恥じない好物件だ。

 物件は、JR京浜東北線・湘南新宿ライン・上野東京ライン浦和駅から徒歩13分、埼玉県さいたま市浦和区仲町三丁目に位置する11階建て全30戸。専有面積は62.63~71.08㎡、価格は未定。竣工予定は平成30年1月下旬。施工は東京美装興業。販売予定は平成29年1月下旬。

 現地は、埼玉県庁、知事公館、さいたま市役所など行政機関や商業ビル、マンションなどが建ち並ぶ一角。

 建物は南向きで、エントランス部分にさび石を配するなど重厚感を演出。住戸プランは、1フロア3戸のワイドスパンが特徴。玄関、廊下、キッチン・洗面カウンターに御影石を採用。

 廊下スペースを極力小さくして、居室やその他のスペースに充てるなどの工夫を凝らしている。居室ドアはほとんど引き戸だ。

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70㎡のプラン

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 他の取材が現地販売事務所から徒歩2~3分であり、そのついでといっては失礼だが、どのようなプランのどのような設備仕様のマンションになるのか興味があったので、取材を申し込んだ。正直に言えば「たいしたことはないだろう」と高をくくっていた。

 しかし、モデルルームを見学してそのレベルの高さに驚いた。浦和駅圏のマンションはここ数年で6~7物件は見ているが、設備仕様は間違いなくトップクラスだ。例えばキッチン。寸法は幅2550ミリ×奥行き1000ミリ×高さ850ミリだが、袖壁も御影石仕上げ。

 プランもいい。グロスを抑えるために全体的に専有面積を圧縮しているが、間口を約7.85~8.30m取り、廊下はメーターモジュールとする一方で極力少なくしている。ホールは折り上げ天井。居室ドアは引き戸。奥行き2メートルのオープンエアデッキは照明、スロップシンク付き。

 さて、肝心の価格はどうか。記者は2年前、このマンションと目と鼻の先で分譲され、瞬く間に売れた大成有楽不動産「オーベル浦和レジデンス」を見学している。坪単価は230万円だった。価格を抑えすぎと当時でも思ったほど割安感があった。

 今回の物件は、それより高くなるのは間違いなく、記者は275万円とはじいたが、ひょっとしたらもっと高くなるかもしれない。

 もう少し駅寄り、駅から徒歩8分には野村不動産の「プラウド浦和高砂マークス」(108戸、非分譲13戸含む)がある。こちらは果たしていくらになるか。坪単価300万円はないと思うがどうだろう。

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エントランス

 三井不動産リアルティは12月26日、売買仲介機能と賃貸仲介機能を併せ持った「三井のリハウス 勝どきセンター」を2017年1月5日(木)に開設すると発表した。2016年12月に竣工する都営大江戸線勝どき駅から徒歩6分の大規模タワーマンション「勝どき・ザ・タワー」の1階の立地に出店する。

 これまで勝どきエリアは「月島センター」が主にカバーしていたが、当エリアのマーケット拡大に伴い出店するもの。

 勝どきエリアは、2000年に都営大江戸線が開通して以降、再開発による大規模タワーマンションや商業施設の建設が相次ぎ、隣接する晴海には2020年東京オリンピック・パラリンピック選手村も建設されるなど一層の賑わいが予想されている。同業他社では住友不動産販売、野村不動産アーバンネットがすでに出店している。

 今回の出店により、同社グループは全国281店舗となる。

 別掲のように昨日(12月22日)、埼玉県住まいづくり協議会が主催する「第4回埼玉県環境住宅賞」表彰式が行われた。審査委員長の三井所清典氏(日本建築士会連合会会長)は、20周年を迎えた同協議会の活動を称え、受賞作品も絶賛した。

 記者もそう思う。しかし、素晴らしい活動をやっているからこそ、支援したいからこそ言わざるを得ないことがある。同協議会の組織運営についてである。

 石の上にも3年だ。部外者が言うべきことではないのを承知で、組織に水を浴びせることを書く。誰かが悪者にならなければ治らない。記者はそうなってもいい。

 この日の表彰式、満席になれば優に100名は超えると思われる会場に集まったのは30~40名。空席が目立った。

 式次第に沿って、主催者の同協議会会長・風間健氏(高砂建設社長)の挨拶から賞状授与が粛々と行われた。

 賞状を受け取るため登壇した人は25名。一人ひとりに賞状が手渡され、降壇するたびに司会者が「受賞者にもう一度大きな拍手を」の呼びかけに応える拍手が大きく響き渡ったが、それ以外はしわぶき一つ聞こえない。お通夜と間違えそうな静かさだ。〝さくら〟もいなければ一般人の参加は皆無だったはずだ。

 その後、プレゼン、総評に移ったが、登壇者の声が小さく最後列に用意された報道席には届かないのもあった。

 この光景こそ、同協議会の現状を如実に物語っているのではないか。これ以上は書かないが、式の演出に問題があるのだ。関係者みんなが受賞者を称える雰囲気づくりに決定的に欠ける。三井所氏ら審査員が「素晴らしい」などと絶賛する言葉がむなしく聞こえるのは記者だけでないはずだ。

 プレゼンの登壇者もそうだ。4人のプレゼン時間を測った。3分、8分、15分、19分だった。決められた時間きっかり行うのがプレゼンのイロハだ。

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 もう一つ。今回の応募は92作品。多いか少ないかの判断は難しいが、応募者の構成を見ると、アキュラホームから50作、県下の3高校から13作、小林建設が4作、東京ガスが4作。この6社・校で全体の77%を占める。

 この構成は考えなければならない。盛り上がり、広がりに欠けると言わざるを得ない。

 その原因として、「レギュレーションがくるくる変わる」という関係者の声も聞かれるが、三井所氏は「応募部門は5つあるから、関心を持てば県民全てに(応募の)チャンスがある」と話した。部門によってはハードルを高くし、また「学生部門」のような市民がどんどん応募できるような部門を設けていいではないか。受賞者に対するユニークな賞品提供もあっていい。

 協議会メンバー、中でもハウスメーカーは優れているのが当たり前だから、個人応募はともかく企業としての応募資格から除外してもいい。若い人にチャンスを与えるべきだ。

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 埼玉県は最近、「先導的ヒートアイランド対策住宅街モデル事業」を立ち上げ、さいたま市も「スマートシティさいたまモデル」を国内外に発信・展開する「美園タウンマネジメント協会」を設立した。地球環境問題に真剣に取り組む姿勢を明らかにしている。

 同協議会はその旗振り役であるはずだし、そのメンバーが建築中の「浦和美園」の戸建ては、東京都の「「むさしのiタウン」や横浜市の「脱温暖化モデル住宅」などと比較しても、はるかに進んでいる。

 記者はこの〝落差〟が許せないのである。このままでは尻すぼみになるのが目に見えている。「埼玉で、がんばる! 埼玉を、創る!」のスローガンが泣くではないか。

 上田清司・埼玉県知事は先のRBA交流会で「埼玉県が一番元気」とアピールしたが、元気なのは知事だけでないのか。

 同協議会を応援しようという気持ちがなえてくる。記者だって暇じゃない。このままでは来年は取材するかどうか考える。(こんな記事を書いたらお呼びじゃないだろうが)

 20周年を記念にもう一度、原点に立ち返って協議会のあり方を問い直すべきだ。

 

埼玉県知事賞に小林建設 高校生の作品も入賞「第4回埼玉県環境住宅賞」(2016/12/23)

 

 

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