フージャースコーポ 旧軽井沢のリゾートマンション 2棟目「ザ・ヴィラ」も販売好調
「デュオヒルズ旧軽井沢 ザ・ヴィラ」完成予想図
フージャースコーポレーションの軽井沢での2棟目のリゾートマンション「デュオヒルズ旧軽井沢 ザ・ヴィラ」が好調なスタートを切った。正式な契約はこれからだが、全19戸のうち10戸に申し込みが入っている。
物件は、JR北陸新幹線・しなの鉄道線軽井沢駅から徒歩27分(車約4分)、長野県北佐久郡軽井沢町大字軽井沢字西屋敷裏向に位置する2階建て全19戸。価格は5,000万円台から7,000万円台が中心。坪単価は280万円。竣工予定は平成29年12月上旬。施工は北野建設。
今年8月に竣工し、全19戸のうち18戸を完売した「デュオヒルズ旧軽井沢ザ・フォレスト」の隣接地。残りの1戸は同社が保養所として所有し、今回の「ザ・ヴィラ」のモデルルームとして使用している。「ザ・フォレスト」の坪単価は260万円だった。
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この情報はもちろん同社の広報にも確認したのだが、ついさっき、同社企画開発部企画開発一課課長代理・市川譲氏と企画開発部企画開発二課・北村和樹氏から仕入れたものだ。
種明かしをする。2人には記者が勤務する南青山のビルの喫煙室で1時間近く前にばったり出くわした。2人は商談に行く途中で、記者はいつものように記事の一段落がついたので一服するために地階まで降りていったのだ。市川氏と喫煙室で会うのは2回目だった。
「それでは」とタバコを1本吸って別れ、また記事を書き、一段落したのでまた喫煙室に行ったらまたまた2人に出くわした。「わたしのタバコは記事を書くために必要。あなたたちは仕事しているのか」と問いただしたら、「軽井沢のマンションを売ってきた」というのだ。「坪単価300万円? 」と聞いたら280万円という次第だ。
記者は1時間に1本の記事を書き、市川氏らは坪単価280万円のマンション1戸を売ってきた。(記事にそんな価値はないが)
これでも嫌煙家たちはタバコを嫌悪するか。タバコは音楽でいえばブレス、息継ぎだ。息が継げなければ歌は歌えない。記事も書けない。
軽井沢にはバブルの頃、リゾートマンションの取材で頻繁に訪れている。最盛期には坪単価は500万円くらいしたのではないか。「坪単価300万円? 」と聞いたのはあてずっぽうだが、相場観としてそんなに外れていないはずだ。再びブームが来るとは思えないが、箱根などとともに一定の需要は確実にあると思う。
「倫理経営、居住福祉へシフトチェンジせよ」 リブラン・鈴木靜雄会長が熱く語る
鈴木氏(埼玉県住まいづくり協議会セミナー会場で)
埼玉県住まいづくり協議会が先月14日に行ったセミナー会場で、同協議会の副会長を務めるリブランの取締役会長・鈴木靜雄氏に久々に会った。
鈴木氏は、「会社には年に1回、正月に幹部らと話をするくらいで、経営には関わっていない」としながらも、現在の中堅デベロッパーに次のような手厳しい注文・檄を発した。
「われわれが30代、40代の頃は大手と戦ってきた。ヒューマンランド、タケツー、興和物産などもそうだった。いまの中堅デベロッパーは戦っていない。今こそ住居とは、コミュニティ、子育て、健康とは何か、これら数値ができない、業界が関わろうとしないところに価値がある。ここに焦点を当て深く掘り下げれば、数値化できない、見えない価値が見えてくる。マーケットは無限だ。決断するかどうかだ。われわれが提唱している倫理経営、居住福祉産業へチェンジすればマーケットは無限に広がる」と。
激しい口調に〝昔と全然変わっていない〟と思いながら、お歳を伺ったら74歳とのことだった。鈴木氏が60歳を迎えたとき、業界関係者らと還暦祝いの飲み会を行い、赤いちゃんちゃんこを羽織って「引退」をほのめかされたのを思い出した。あれから14年が経過したことになる。
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鈴木氏は第一線を退くまでは同社の社長として、「環境共生」を前面に掲げたマンション・戸建てブランド〝エコヴィレッジ〟を幅広く展開し、中堅デベロッパーをリードしたばかりでなく、業界全体にも大きな影響を与えた。大手と互角に戦った〝中堅の星〟的な存在だった。
今では常識となっている「パッシブデザイン」を真っ先に導入したのもリブランだったし、〝リビングイン〟を提唱したのも同社だった。ビオトープを備えた戸建て「川越ハートフルタウン霞の郷」は現時点でも最高傑作のひとつといえる物件だ。防音機能を備えたミュージシャン向けの賃貸マンションなども手掛けて話題を呼んだ。
また、コミュニティ支援にも力を入れ、地域のバレーボール大会を後援するなどCSRでも業界の先駆的役割を果たした。
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鈴木氏が第一線を退かれた以後は同社への取材も足が遠くなり、また全国住宅産業協会(前日本住宅建設産業協会)とも訳あって〝絶縁〟したこともあり、中堅デベロッパーの動静には疎くなっているのだが、鈴木氏が現在の住宅・不動産業界に〝シフトチェンジ〟を求める主張は説得力がある。
記者が見る限り、全住協会員会社が分譲するマンションは完全に大手との競争力を失っていると思う。リーマン・ショック後、金融機関の貸出態度が厳格化したために〝戦えなくなった〟事情は考慮しなければならないが、〝戦っていない〟という鈴木氏の指摘は的を射ている。「倫理経営」「居住福祉」の原点に立ち戻れば、前途に光明を見いだすことも可能かもしれない。
鈴木氏が実業家の滝口長太郎氏と出会い、「倫理経営」に傾倒し、神戸大学名誉教授・早川和男氏らが提唱する「居住福祉」を盛んに口にしたころと、同社の業態が劇的に変わり、業績も上昇の一途をたどった昭和60年代の前半と一致するからだ。鈴木氏は「倫理経営」「居住福祉」を間違いなく実践した。
鈴木氏が「(私たち不動産・住宅業界は)住宅と人間、社会との関係性に本質的思想が欠如されたまま突き進み続けました。その結果、住宅産業は景気産業に変容してしまい、様々な社会問題が勃発して、日本社会は現在、末期的様相を呈しています」(2011年11月8日号「住宅新報」)という認識は的を外してはいない。日々生起する問題が住居と深くかかわりあっていることは自明のことだ。
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この日、鈴木氏に同行していたリブランのミュージション事業部部長代理・田代聡夫氏が「会長は社内のだれよりも精力的に活動している」と話したが、鈴木氏は今年6月に韓国で行われた「第11回平和と繁栄のための済州フォーラム」に日本セッションの実行委員長として参加、「倫理資本主義で世界を救おう」と呼び掛けた。日本居住福祉学会でもデベロッパーとしては唯一理事として活動されている。
〝引退〟とは、「人間と居住の本質から見れば『廃拠』に等しい」従来型の不動産業からの決別であり、「居住福祉産業」へ突き進む第一歩だったのだろう。
〝泣かせる〟尾崎・安部夫婦がグランプリ賞 第4回JEG大会 積水ハウスが賞総なめ
第4回「JEG DESIGN CONTEST 2016」プレゼンテーション大会(四谷区民ホールで)
住宅メーカー8社が共同運営・活動する住宅エクステリアガーデン研究会(JEG)は11月14日、第4回「JEG DESIGN CONTEST 2016」プレゼンテーション大会を開き、グランプリ賞に積和建設九州の尾崎孝也氏と安部美和子氏の「晴好雨奇」を選んだ。
応募総数は1,400作品で、二次審査を通過した5部門18作品が優秀賞として発表された。5部門とも積水ハウスグループが最優秀賞を受賞した。グランプリ賞は昨年も積水ハウスだった。
今回新たに設けられた「新人賞」は、下久保美咲氏(ナテックス)の「時間・空間・こころにゆとりの国立くらし」が選ばれた。
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記者は、樹齢80年のイチョウの伐採をめぐり問題となっている千代田区の取材が急きょ入ったため、JEGの会場に駆け付けたときは、プラントハンター そら植物園代表・西畠清順氏の基調講演が終わる間際だった。西畠氏は樹齢1000年のスペインのオリーブを小豆島に移植して成功させた話をされたようだ。
小豆島のオリーブの話は千代田区のイチョウと通じるものがあると思う。国立科学博物館名誉研究員・近田文弘氏によると「イチョウは1000年以上生きる。千代田区の街路樹はまだ若木。伐る必要など全然ない」と話した。
西畠氏の〝作品〟の一つ(三井不動産レジデンシャル「パークシティ大崎」で2015年撮影)
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優秀賞に選ばれたエクステリア大型、エクステリアベーシック、ガーデン、街づくり・集合住宅、リフォーム5部門の最優秀賞はいずれも積水ハウスと積和建設の社員の作品だった。主催者だったか受賞者だったか「この研究会の認知度が低い」と語ったが、それにしてもハウスメーカー8社も揃って、積水に総取りされるとは情けない。審査員の一人でE&Gアカデミー青山校校長・古橋宣昌氏は「今回は積水ハウスが総取り。来年は各社の気合が入るのでは」と話したが、他社の奮起に期待しよう。
古橋氏はまた、「皆さんのノウハウを若い人に伝え、働きやすい環境を整え、美しい日本の街並みを伝えていく業界にしましょう」と呼び掛けた。
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記者は聞いていないのだからその理由は知る由もないのだが、グランプリ賞に輝いた積和建設九州の尾崎孝也氏と安部美和子氏の受賞シーンが〝泣かせた〟。
受賞の感想を求められた尾崎氏は、関わった関係者にお礼の言葉を述べたあと「凸凹コンビの夫婦ですので、プレゼンの練習ではテレもあったり、微妙な空気も流れたりもした。受賞には言葉もない」と話し、奥さんの安部氏は「ありがとうございます」と涙ぐんだ。
これにはまだ続きがあり、審査委員のJAG会長・正木覚氏が「(審査で)初めて涙した。自分でも止められない内容を含んでいた」と語った。さらにまた、JEG審査委員長・粟井琢美氏(三井ホーム)も「ウルルっとした」と、二人の〝幸せガーデン〟提案を褒めた。
記者は、二人が侃々諤々、自らの意見を譲らず、またプレゼンの練習で相手に難癖をつけるうちに疲れ果て、やがて怪しい空気が流れ、2匹のフカのように深い海底に沈んだと理解する。デザイン提案に至る過程が〝泣かせる〟のであって、提案そのものが〝泣かせる〟のではないはずだ。
プレゼン用写真(月見台) 敷地は市街地が望める高台で、樹木はカエデ類が中心だそうだ
尾崎氏(左)と安部氏
「ダメな木は1本もない。私は木を見て、森を見て、人間を見る」 近田文弘氏/千代田区の街路樹
イチョウ並木を観察する近田氏(神田警察通りで)
皇居や吹上御所の植物相研究などで知られる国立科学博物館名誉研究員・近田文弘氏(75)が11月14日、樹木医による診断で「枯損木の恐れあり」と判定された千代田区神田警察通りの5本のイチョウを視察し、「わたしは樹木医ではないが」と前置きしたうえで「見た限り全然問題ない。気温低下と湿度維持の働きを持つ街路樹を切り倒すのは間違い。街路樹と人が共存できるように視点を変えるべき」などと語った。
近田氏は区議会企画総務委員会委員や住民らとイチョウ並木を見て回り、「イチョウは1000年以上生き、直径10メートルに成長する。見た限りダメな木は1本もない。みんな若木だ。切らなくても数十年は大丈夫。倒木や枝の落下を心配する声があるが、まず大丈夫。しっかり木を見ることが大事。根上りはして当然。木をいじめるのでなく、根が伸びられるように舗装方法を改善すべき」と話した。
区は近く正式に樹木医の診断を受けるそうだ。
神田警察通りのイチョウ並木
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記者はこれまで、「根上り」は〝音を上げる〟と同じ、樹木が高齢化し、死期に近いことを知らせるシグナルかと思っていたが、そうではないようだ。重い幹を支えるのに太い根を張る必要があるという近田氏の説明は明快だ。根上がりがしても大丈夫なよう舗装方法を改善せよという近田氏の指摘は検討に値しそうだ。
そして、近田氏の次の言葉がぐさりと胸に突き刺さった。
「樹木医? 木の病気を診断するのだろうが、私は木全体を見ているし、森も見ている。そして何より人間を見ている」
何の学問もそうだろう。すべては人間のためであり、人間もまた自然に生かされているという視点が大事なことを改めて教わった。「ダメな木は1本もない」というのは「ダメな人間は一人もいない」に通じるのだろう。
近田氏は記者より8歳も年上だが、スニーカーを履いた足取りも軽く、みんなを先導した。来年には天山山脈の西にあるカザフスタンを旅するのだそうだ。
近田氏に「千代田区の森と街路樹が東京を潤す」と題した6ページの小論文を頂いた。葉の形・大きさ・働きについて書かれた部分を紹介する。
「カシワの葉は大きな鋸葉と短い葉柄があり、長さ10~30㎝と大型で、風を受けて鋸葉と葉柄が動いて空気の波を作り葉の周辺の太陽熱を逃がす。…街路樹ではこの働きが扇風機の役をして空気が涼しくなる」
街路樹の伐採中止・保存求める陳情書を採択 千代田区議会 企画総務委員会(2016/10/17)
メジャー7決算 平均価格は5,400万円(2014年比900万円上昇) 在庫じわり増加
不動産上場会社の平成29年3月期第2四半期決算がほぼ出揃った。各社のマンション事業は、空前の低金利を背景に総じて好調を維持しているが、用地・建築費上昇による分譲価格の高騰や、消費者の交通利便性を重視した物件選好の影響を受けて完成在庫が増える傾向にある。在庫増が直ちに収益を圧迫する状況にはないが、価格高騰を吸収する消費力も弱く、デフレ脱却も遠のいた。市場は踊り場を迎えたといえそうだ。各社の決算データから現在のマンション市場を概観した。
メジャー7(業界では三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、住友不動産、野村不動産、東急不動産、東京建物、大京の7社をこう呼ぶ)の中で〝絶好調〟を維持しているのが三井不動産レジデンシャルだ。
今期計上予定戸数5,450戸に対する四半期末の契約進捗率は91%に達している。完成在庫も111戸で、計上予定戸数の2%にしか過ぎない。超都心の高額とアッパーミドル向き、DINKS、コンパクトマンションのバランスがいいのが好決算につながっている。
営業利益率が突出して高い住友不動産も好調を維持している。一言でいえば、三井不動産レジデンシャルは波をつくるのにエネルギーを注ぐ。一方の住友不動産は波に乗る、在庫を〝宝庫〟にするのが巧みだ。この差が利益率の差だ。販売事業全体の2017年度通期売上高2,700億円を2,800億円に上方修正した。計上予定5,000戸に対する契約率は約95%に達している。完成在庫は微減にとどまった。
三井不動産レジデンシャルと住友不動産以外は天気予報に例えれば〝快晴〟とはいいがたい。
ここ数年、戸数、売上高とも漸減している三菱地所レジデンスは期初の計上予定戸数を4,000戸から3,800戸に変更した。最近はJV物件の比率が増えている。完成在庫も徐々に増えている。
これまで完成在庫をほとんど出さなかった野村不動産にも異変が起こっている。2017年度計上予定戸数に対する契約進捗率は77.1%と高水準だが、2014年度、2015年度はそれぞれ26戸、25戸だった完成在庫は2016年度には一挙に209戸に増加し、今四半期末は602戸と3倍に増加した。依然として高い粗利益率を維持しているが、在庫増は気になる材料だ。
東急不動産と大京は戸数、売上高とも減らしており、〝4強〟との差が開いている。今後、両社はそれぞれ独自路線を歩むはずだ。完成在庫は微妙な水準に達している。
東京建物は「「Brillia Tower池袋」(分譲322戸、2015年度)「Brillia多摩ニュータウン」(分譲684戸、2015年度)など好調物件が続いたあとの〝中休み〟。来期は、すでに全戸完売している「Brillia Towers 目黒」(分譲661戸)「Brillia THE TOKYO YAESU AVENUE」(分譲387戸)が計上されるので戸数、売上高とも大幅に増やしそうだ。
メジャー7の売り上げ、価格の推移について。メジャー7の2014年度の計上戸数はトータルで約31,000戸、売上高は約1.3兆円、1戸当たりの平均価格は4,513万円だった。2017年度の予定計上戸数は約24,000戸、予定売上高は約1.3兆円、平均価格は5,401万円。3年間で計上戸数は約7,000戸減らしたが、売上高はほぼ同じ水準で、平均価格は約900万円上昇したことになる。
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メジャー7以外のデベロッパーの決算データも懸念材料がある。
今期引き渡し予定戸数1,600戸に対して契約進捗率が79.3%と好調のタカラレーベンは、昨年同期は引き渡し予定戸数1,250戸に対して進捗率は86.1%だったので6.8ポイント下落している。
平成26年3月末で330戸の完成在庫を抱えていた日神不動産は、その後販売が進み平成28年9月末で257戸に減少したが、平成26年4月以降の分譲戸数1,456戸に対する完成在庫率は17.7%で楽観できる数値ではない。
NTT都市開発も利益率が悪化している。2015年9月末の利益率が18.5%だったのが、2016年9月末には6.5%へ低下。完成在庫は2015年9月末の271戸から2016年9月末には506戸へと増加している。
2016年3月期末で693戸の完成在庫を抱えていた大和ハウスは半減以下の331戸に減らしたが、通期では2,250戸(前期2,972戸)、1,100億円(同1,313億円)に減らす計画。グループのコスモスイニシアも昨年同期の利益率が20.3%だったのが2016年9月末は17.9%へ落ち込み、完成在庫も49戸から111戸へ倍増している。
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決算データは遅行指標だ。売り上げに計上されるのは主に1年前、2年前に分譲たれたマンションで、用地取得を含めれば数年前だ。ここ2~3年の上昇気流に乗って売上高、利益率を伸ばしてきた結果が今の数値に表れている。
一方で、完成在庫は先行指標でもある。在庫の増加は一概に事業へ悪影響を及ぼすとは言えない。かつてマンションの雄だった大京の横山修二社長は「完成在庫は供給量の1カ月分くらいが適正」と話したことがある。在庫を抱えていたほうが、お客さんのニーズに応えられるメリットが大きいというのがその理由だ。しかし、資金力の乏しいマンションデベロッパーは、当然ながら極度に完成在庫を恐れた。
当時と現在では借入金利が全然異なるので単純比較はできないが、金利が低くマンション市況が好調なときは在庫増が収益を圧迫することはないが、市況が右肩下がりになると価格の下げ圧力が強まり、利益が吹っ飛ぶ事態もありうるので、やはり供給量の10%くらいが適正在庫ではないかと記者は考えている。
この先の景気・消費動向がどうなるか不透明だが、根強い需要がある富裕層や投資向けはともかく、第一次取得層・アッパーミドル向けマンションの価格(坪単価)は完全に取得限界を超えている。低金利を背景にまだまだ大丈夫という声がないわけではないが、若年層の将来不安は払しょくできていない。直近の消費動向テータも一進一退を繰り返している。トランプ氏が次期アメリカ大統領に就任することが決まり、政治・経済動向も不透明感を強めている。
以上みたように、マンション市場はじわり在庫が増え、踊り場に差し掛かったといえる。景気が上に振れるのか下に振れるのか。アベノミクスの「新三本の矢」「一億総活躍社会」に夢を託せるのかどうかにかかっている。
飯田グループHD 第2四半期決算 分譲戸建て好調 2ケタ増益へ修正 増配も
飯田グループホールディングスは11月11日、平成29年3月期第2四半期決算を発表。売上高は5,869億円(前年同期比7.1%増)、営業利益は592億円(同33.1%増)、四半期利益は391億円(同40.1%増)と増収増益となった。
主力の分譲戸建てが好調に推移していることから、通期予想を売上高1兆2,500億円(期初予想比0.6%増)、営業利益1,133億円(同12.7%増)、当期利益754億円(同13.9%増)に修正。また、期末配当を従来予想の23円から30円に、年間配当合計予想を従来予想の46円から53円に修正した。売上戸数は期初予想の41,550戸から41,190戸へ減らす。
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すごい数字だ。グループ6社のうち売り上げを減らしたのは東栄住宅グループのみで、一建設グループを激しく追い上げているアーネストワングループが10%以上伸ばした。第2四半期末の売上戸数は5,066戸で、一建設グループにあと319戸と迫った。
分譲戸建ての平均売価がまたすごい。6社平均で27.3(百万円)で、グループ別では一建設が26.2(同)、飯田建設が32.1(同)、東栄住宅が34.0(同)、タクトホームが28.8(同)、アーネストワンが23.6(同)、アイディホームが24.5(同)となっている。各社とも地方での比率を増やしていることもあるが、大手デベロッパーなどの半値以下だ。
三井不動産 横浜・傾斜マンション建て替え費用390億円 全額を施工会社などに求償
三井不動産は11月11日、三井不動産レジデンシャルが分譲した横浜市都筑区の「傾斜マンション」全棟建て替え問題についてについて、平成29年3月期第2四半期決算の決算短信に「偶発債務」として盛り込んだ。
建て替え費用や工事期間中の仮住まい費用などの総額は約390億円で、費用のすべてを施工会社の三井住友建設、杭施工を行った日立ハイテクノロジーズと旭化成建材に対し求償すると発表した。
また、「今後、当該事象の進捗状況によっては、当社グループの連結業績に影響が生じる可能性がありますが、現時点ではその影響額を合理的に見積ることは困難な状況にあります」としている。
これに対して、先に第2四半期決算を発表した三井住友建設や旭化成は「関係者間の協議の進捗によっては、今後連結業績に影響を与える可能性があります。なお、現時点ではその影響額を合理的に見積ることは困難な状況にあります」(三井住友建設)としている。
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この問題については、たいして取材もしていないので深入りしないが、問題が大きくなってからの三井不動産の対応は速かったし、国土交通省も事態の収束に動いた。全棟建て替えは入居者の負担も大きいが、建物の不具合が生じた場合の一つの解決策を示した。
ただ、建て替え費用の分担については各社が発表している通り、なお紆余曲折が予想される。
違法性が明らかになったのは全4棟のうち1棟だけのはずで、全て4棟の建て替え費用などを求償する法的合理性はあるのかという疑問が沸く。
また、4棟が建築確認上別々の建物か、それとも1棟の建築物なのかによっても判断が異なるような気がする。
三井不動産が求償する約390億円は、三井住友建設の営業利益233億円(平成28年3月期)をはるかに超える巨額だが、保険にも入っているだろうからそれで賄われる部分もあるのではないか。それとも保険期間は満了しているのか。
いま売ったら坪1,000万円か 三菱地所レジ「ザ・パークハウスグラン南青山」竣工
「ザ・パークハウスグラン南青山」
三菱地所レジデンスが11月11日、一般分譲20戸を平均9.65倍で即日完売して話題になった「ザ・パークハウスグラン南青山」が竣工したのに伴い、共用部分などをメディアに公開した。
外構に植栽をふんだんに施し、外観はランダムに配置したマリオンと御影石の重厚感、彫の深い陰影デザインを施しているのが特徴。
同社の担当者や周囲の記者の方に「いま売ったらいくら」と聞いたら、一斉に「坪1,000万円」の声が飛んだ。
エントランス
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このマンションについては2度記事にしているのでそちらを参照していただきたい。億ションはたくさん見学しているのでそれほど驚きはなかったし、カッシーナのテーブル、椅子が置かれたミーティングルームにも納得もした。デパートの外商などとの商談に用いるのだそうだ。
そこで売上げが2015年度で9,296億円の高島屋に聞いた。同社広報によると、外商の売上比率は約2割だという。これまたすごい数字だ。
2層吹き抜けラウンジ
ミーティングルーム
三菱地所レジ「ザ・パークハウスグラン南青山」 平均9.65倍で即日完売(2016/6/16)
10月の中古マンション 件数、単価など46カ月連続で前年比上回る/東日本レインズ
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が11月10日、首都圏の10月度の不動産流通市場動向をまとめ発表した。
中古マンションの成約件数は3,339件で前年同月比16.1%増加、㎡単価は48.58万円(坪160万円)で同6.1%上昇、成約価格は3,136万円で同6.4%上昇、専有面積は64.56㎡で同0.3%増加した。
成約件数、㎡単価、成約価格とも2013年1月から46カ月連続で前年同月を上回った。専有面積は15年4月以来18カ月ぶりに前年同月を上回った。
中古戸建ての成約件数は1,151件で同8.0%増加、成約価格は3,060万円で同2.5%上昇、土地面積は153.73㎡で同4.0%増加、建物面積は105.16㎡で同0.7%増加した。
コスモスイニシア「イニシア西新井」 都の「子育て支援住宅」で初のマンション認定
「イニシア西新井」完成予想図
コスモスイニシアは11月9日、足立区で建設中のマンション「イニシア西新井」が「東京都子育て支援住宅認定制度」で分譲マンションとして初の設計認定を受けたと発表した。
「東京都子育て支援住宅認定制度」とは、居住者の安全性や家事のしやすさなどに配慮された住宅で、かつ、子育てを支援する施設やサービスの提供など、子育てしやすい環境づくりのための取り組みを行っている優良な住宅を東京都が認定する制度。2016年2月に運用が開始され、同物件は分譲マンションとして初めて設計認定を取得した。
物件は、東武伊勢崎線西新井駅から徒歩9分の9階建て全81戸。
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同じような制度は、埼玉県の「埼玉県子育て応援分譲住宅認定制度」がある。埼玉県と東京都の制度のどこがどのように異なるのかわからないのでコメントしないが、個別の物件でなく、地域全体で子育てを支援することのほうが大事な気がする。
埼玉県の制度については、2012年の記事で「いじめの問題が社会問題化しているが、その背景には家族どうしのコミュニケーションの欠如があり、学校も教育委員会もいじめを根絶できないことが分かってきた。唯一、望みを託すことができるのは地域ではないか。家庭-学校-警察-町内会-商店街などが連携して濃密な地域のコミュニティを形成するのがいま求められているような気がする。デベロッパーはそのようなコミュニティ活動を支援すべきだと思うし、行政もそうした取り組みを顕彰することに価値がある。『子育て応援制度』の要諦はここにあると思う」と書いた。
埼玉県「子育て応援制度」 もっと中身のある制度に改善を(2012/9/11)