恒例の記者が選んだ「2016年 話題のマンション」。見学したマンションは約90件で前年とほぼ同数。その中から31物件(前年は33物件)を選んだ。「ベスト3マンション」とともに読んでいただきたい。(順不同)
物件選定に当たっては大手、中堅から幅広く選ぶように心がけ、特定のデベロッパーに偏らないよう1社あたり3物件を限度にした。
「話題性」を重視したために、都心の高額や再開発・タワーマンション、〝駅近〟などが多くなった。その一方で、千葉県や埼玉県の第一次取得層向け郊外マンションが少なくなったのが残念だ。
また、中には売れ行きがいま一つのものもあるが、その原因はやはり価格の壁があるようだ。価格を抑えるためには面積を圧縮し、設備仕様や外構にかかるコストを抑制せざるを得ないのだが、もう限界に達していると見る。
記者が選んだ「2016年 ベスト3マンション」(2016/12/27)
【都心高額マンション】
野村不動産「プラウド六本木」
全45戸が100 ㎡超で坪単価は900万円。同社の最高峰億ション。
スケルトンインフィル設計とオーダーメイドシステムを導入。天井高約2,700ミリ、窓フレームが床面から見えない隠し框構造で内外をすっきりとつなぐテラスウィンドウや、「ジャクソン」のバスタブ、ドイツ製「ドンブラハ」の洗面水洗、「ビレロイ&ボッホ」の洗面ボウルなど圧巻の設備仕様。
野村不動産の最高峰マンション 「プラウド六本木」最高のモデルルームの出来(2016/7/19)
大和ハウス工業「プレミスト六番町」
坪単価800万円を突破する同社の最高単価マンション。千代田区の総合設計制度の適用を受け、周辺の建築物と調和するように西洋建築の美を象徴するシンメトリーの外観と石造りの重厚なデザインが特徴。
建築家・三沢亮一氏が自ら選んだというパウダールームのブルーは、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」のブルーと一緒だった。
「地価公示日本一」六番町にフェルメールを見た 大和ハウスが億ション(2016/3/14)
【横浜都心マンション】
横浜市住宅供給公社「横浜MIDベース タワー」
商業・保育所・診療所・有料老人ホーム・地域交流施設を併設した複合大規模開発で、鹿島建設の免震・SI工法を採用。割安単価から圧倒的な人気呼ぶ。
5階の屋上コミュニティ広場に「屋上養蜂」スペースを設置。年間30~50キログラムを採取し、地域交流の場でお年寄りや子どもたちに供する計画。
今度は横浜のど真ん中 人気必至の横浜公社「横浜MIDベース タワー」(2016/1/28)
東急不動産「ブランズ横浜」
現地は商業地域だが、市の商住共存地区として指定されているエリアの一角。これほどの大規模マンションが駅近で建設されるのは過去47年にさかのぼってもない希少立地。高島屋が業務用に使用していた敷地跡地。
外観・外構デザインが優れており、設備仕様レベルも極めて高い。建築デザインはNAP建築設計事務所。
外構も素晴らしい東急不動産「ブランズ横浜」 「銀座」同様〝大人〟向け(2016/4/6)
【大規模ファミリーマンション】
三井不動産レジデンシャル他「ザ・ガーデンズ東京王子」
第1期に2016年の都内物件としては最多の315戸を供給し、年末までに供給した451戸のほとんどを契約するなど絶好調。竣工完売のめど付ける。
北区も「住めば、北区東京。」のPRポスターを制作し、地域の魅力発信に懸命。
三井不レジなど5社JV「ザ・ガーデンズ東京王子」(864戸)は坪260万円台(2016/7/8)
「ザ・ガーデンズ東京王子」 販売好調/北区がPRポスター「住めば、北区東京。」(2016/9/18)
【再開発マンション】
野村不動産「プラウド府中ステーションアリーナ」
京王線府中駅から徒歩1分の15階建て全138戸(非分譲27戸)の商・公・医・住の複合再開発マンション。第1期91戸が約700件の来場者を集め即日完売。買い替え・買い増しが過半に達するなど、多摩エリアの富裕層から圧倒的な人気を呼んだ。坪単価はバブル崩壊後の京王線最高単価となる360万円強。
京王線の最高峰(単価) 野村不「プラウド府中ステーション…」第1期91戸が即完(2016/5/23)
三井不動産レジデンシャル「パークシティ中央湊」
八丁堀駅から徒歩6分の36階建て住・商一体免震タワーマンション。外観デザイン監修は光井純&アソシエーツ建築設計事務所、共用部分のデザインは鬼倉めぐみ氏とテキスタイル(布)デザイナーの須藤玲子氏。
40㎡台の住戸でも最低5m、ほとんどが7~10mのワイドスパンプランがいい。
隅田川沿いの商・住一体開発 プラン秀逸 三井レジ「パークシティ中央湊」(2016/2/12)
相鉄不動産他「グレーシアタワー二俣川」
二俣川駅と直結している29階建て全421戸の免震タワーマンション。将来には相鉄線とJRや東急線が相互乗り入れされ利便性が高まること、価格がリーズナブルであることなどから早期完売。第1期供給戸数380戸は、バブル崩壊後の神奈川県内の物件では記録的な多さ。
来場者の多くは横浜市内の地元旭区が中心で、相鉄不動産などが開発した緑園都市、万騎が原などのマンション・戸建てからの買い替え希望が5割を突破した。
記録的な一挙供給量380戸 相鉄不他「グレーシアタワー二俣川」は坪280万円(2016/8/22)
東京建物「BrilliaTower上野池之端」
敷地は東天紅本店跡地。眼下に不忍池、上野公園が広がる絶好の立地。建物のファサードデザインは日建ハウジングシステム、共用部分デザインは乃村工藝社。周囲に点在する歴史・文化施設との調和を図るため、格子、障子などの伝統的なデザインを多用。都の総合設計制度の適用も受けている。
売れ行きも絶好調。全販売戸数327戸のうち供給戸数は316戸に上っており、完売は目前。
東京建物「BrilliaTower上野池之端」 不忍池・上野公園に隣接、旧岩崎邸も近接(2016/3/17)
住友不動産「シティタワー国分寺ザ・ツイン」
住・商・官一体型の市街地再開発事業。「ウエスト」棟300戸と「イースト」棟284戸の合計584戸(地権者住戸30戸含む)。即日完売した第1期70戸の坪単価は475万円。
駅直結の住友不動産「シティタワー国分寺ザ・ツイン」 即日完売スタート(2016/4/1)
【秀逸商品企画マンション】
日本エスコン「Grand Le JADE若松町レジデンス」
同社のハイグレードマンションシリーズ「Grand(グラン)」を冠した首都圏初の物件。31戸の小規模マンションだが商品企画が秀逸。
吹き抜け(ライトコート)を3カ所に設置し、各住戸に光と風を取り込み、多面採光、ワイドスパンを採用、角住戸比率(58%)を高め、旗竿状敷地の難点(アプローチは逆に素晴らしいのだが)を克服した。これまで16戸を供給し12戸が契約済み。
ライトコート付きのプラン秀 日本エスコン 首都圏初の〝グラン〟「若松町」(2016/11/4)
コスモスイニシア「イニシアクラウド渋谷笹塚」
出色の商品企画。デザイン監修に建築士の横堀健一氏を起用、端正な外観デザインにするとともに、デザインオフィスnendo代表・佐藤オオキ氏とコラボ。廊下を挟んだ左右の居室のドアをスライドウォールとし、廊下の天井高も居室と同じ2400ミリとすることで15~16畳大の居住空間になるよう自在な住空間を提案。
Wリビングの提案がいい コスモスイニシア「イニシアクラウド渋谷笹塚」(2016/10/24)
中央住宅「ルピアコート新小岩フレール」
「勝手口」付きマンション。ピアキッチンをはじめ、玄関とキッチンを引き戸でつなげ、バックカウンター・吊戸棚を標準装備し、コンセント付きの出窓を設けたり、実用新案申請中の分別ダストボックスを設置したりしている。
さらに進化した商品企画 玄関に勝手口 中央住宅「ルピアコート新小岩フレール」(2016/2/16)
【定期借地権付きマンション】
スターツ・安田不動産「千桜タワー」
都営新宿線岩本町駅から徒歩1分、免震工法を採用した期間70年の定期借地権付き。設計は山下設計・大成建設。千代田区立千桜小学校の跡地と隣接の民有地を一体として開発するもの。
50~60㎡台の小家族向けから70~80㎡台のファミリー向けをバランスよく配置、坪単価350万円も割安感があり、早期完売。
中堅所得層でも手が届く坪350万円 スターツ・安田不の定借「千桜タワー」(2016/9/5)
東急不動産「ブランズシティ世田谷中町」
東急田園都市線桜新町駅・用賀駅から徒歩15分、世田谷区中町五丁目の第一種低層住居専用地域に位置する期間70年の定期借地権付き。坪単価は308万円。
分譲マンションのほかに、シニア住宅「グランクレール世田谷中町」を併設。グランクレールの敷地にはコミュニティサロン、カルチャールーム、介護事業所、認可保育園が設置される。
東急不動産の記念碑的マンション 定借「ブランズシティ世田谷中町」は坪308万円(2016/9/3)
【環境配慮型マンション】
野村不動産「プラウド国分寺」
敷地約8,000㎡が国分寺崖線区域内にあるため、市のまちづくり条例をクリアしたうえで、敷地全体の約3分の1を占める「保存林」にある既存樹約80本を残し、約670㎡の提供公園と共に地域住民に公開。緑地率は約44%。
野村不動産「プラウド国分寺」 国分寺崖線の既存樹を残し市民に一部開放(2016/7/26)
大京「ライオンズ関町北グランヒルズ」
換気機能付き玄関ドアには花粉やPM2.5に対応できる専用フィルターを初採用。バルコニー側には大口径の150Ø×2給気口を標準装備したほか、通気ルーバー付きドア、換気ストッパー付きサッシ、グリーンカーテン用のフックなども採用。
「ライオンズ関町北グランヒルズ」で見た 第4世代の大京パッシブデザイン(2016/6/29)
【公園隣接・借景マンション】
三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス 新宿御苑」
三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス千代田麹町」
三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス国分寺緑邸」
「新宿御苑」は、駅から徒歩1分で、道路を挟んですぐに新宿御苑。公園側の住戸の坪単価は600万円くらいになった模様だが、早々と完売した。
「千代田麹町」は、四ツ谷駅を降りてすぐの麹町大通りと番町文人通りが交差する角地。麹町通りを挟んだ南側は上智大のキャンパス。徒歩2分には雙葉学園、5分には番町小学校、9分には学習院初等科がある。
「国分寺」は、約20.7haの「日立製作所 中央研究所」の森に隣接し、その借景が眺められる希少物件で、生物多様性の保全に配慮したマンション。
三菱地所レジ「ザ・パークハウス 新宿御苑」 駅にほぼ直結、目の前に新宿御苑(2016/3/29)
今度は上智大キャンパスが借景 三菱地所レジ「ザ・パークハウス 千代田麹町」(2016/2/9)
20haの森が借景 水琴窟も設置 三菱地所レジ「ザ・パークハウス 国分寺緑邸」(2016/1/29)
住友不動産「ガーデンヒルズ四ツ谷 迎賓の森」
道路を隔てたほぼ正面に東宮御所の正門。完成すれば眼前に御用地の森が眺められる。門番のおまわりさんに誰何されたらどうしようと、びくびくしながら見学した。これほど見学に緊張したマンションはほかにない。
分譲マンション初、赤坂御用地に隣接「ガーデンヒルズ四ツ谷 迎賓の森」(2016/1/20)
西日本鉄道「ブラントン日本橋小伝馬町」
西日本鉄道の新ブランド「ブラントン」の首都圏本格進出第1弾。敷地は68坪だが、全戸が公園に面する絶好の立地。近接する「プラウド日本橋三越前」や「Brillia日本橋三越前」に負けない。残りわずか。
立地は「プラウド」「ブリリア」に負けない 西鉄「ブラントン日本橋小伝馬町」(2016/4/26)
伊藤忠都市開発「クレヴィア日本橋浜町」
中央区最大の浜町公園まで徒歩1分(20mだから15秒)で、都営新宿線浜町駅A2出口から徒歩1分(30mだから約23秒)。分譲戸数は26戸のみで、竣工売りも納得。早期完売は間違いない。
浜町公園も浜町駅も15~23秒 立地抜群の伊藤忠都市開発「クレヴィア日本橋浜町」(2016/10/11)
住友不動産「シティテラス小金井公園」
NTT社宅跡地で敷地面積は約3.2ha、全922戸の規模。名門小金井カントリー倶楽部と都内有数の小金井公園に隣接・近接。単価設定は約215万円。武蔵小金井駅直行のシャトルバスが運行される予定。
住友不 小金井カントリーを眼下 「シティテラス小金井公園」は坪215万円(2016/7/26)
【建て替えマンション】
大和ハウス工業「プレミスト大宮氷川参道」
「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」(円滑化法)に基づく建て替え決議(全員合意)がなされた埼玉県初のマンション。全100戸のうち分譲は62戸で、3月に販売を開始し、1カ月で完売となった。(この物件は見学していない)
大和ハウス 埼玉県初の民間主導による建て替えマンション「大宮氷川参道」が竣工(2016/9/27)
旭化成不動産レジ「ONE AVENUE(ワンアベニュー)一番町文人通り」
「番町文人通り」に面したマンションとしては36年ぶりの希少物件。隣接地は串田孫一の居住跡で、通りには与謝野鉄幹・晶子、有島武郎、菊池寛、泉鏡花、島崎藤村、藤田嗣治などの居住跡がある。
廊下-居室-リビングや建具・家具の高さを2.4メートルに揃えた。奇を衒わない玄人好みのオーソドックスな億ション。
激戦の番町エリアの一等地「一番町」 旭化成不レジが「ホーマット」建て替え分譲(2016/6/8)
【シニア向けマンション】
フージャースコーポレーション「デュオセーヌ柏の葉キャンパス」
フージャースコーポレーション「デュオセーヌ緑山」
フージャースコーポレーションの所有権付きシニア向けマンション「デュオセーヌ柏の葉キャンパス」「デュオセーヌ緑山」の売れ行きが好調だ。
前者は駅から徒歩5分、「ららぽーと柏の葉」に隣接する全266戸で、坪単価は230万円。天然温泉付き浴場のほか共用施設が充実。
後者は、すでに入居が始まっており、記者が見学した時点で全82戸のうち約7割が契約済みだった。こちらは坪単価250万円。
「ららぽーと」に隣接 坪単価230万円でも人気 シニア向けフージャース「柏の葉」(2016/5/2)
高級住宅街の一角に シニア向けフージャース他「デュオセーヌ緑山」(2016/10/11)
【郊外健闘マンション】
ポラス中央住宅「ルピアコート川口戸塚」
埼玉高速鉄道戸塚安行駅から徒歩2分の全200戸。キッチンとダイニングカウンターを一体にした「ピアキッチン」を約4割の住戸に標準装備。坪単価158万円も割安感がある。
約半年で122戸を供給して110戸を契約済み。今の市況を考えると大健闘。2017年3月の引き渡しまで7割の140戸に乗せられるか。
ポラスグループ 埼玉高速沿線でマンション強化200戸の「川口戸塚」分譲開始(2016/7/30)
【コンパクトマンション】
三井不動産レジデンシャル「パークリュクス白金高輪」他
三菱地所が〝参戦〟を決めるなど全員参加型になりつつあるコンパクトマンション市場だが、売れ行き・実績では三井不動産レジデンシャルが圧倒。中でも絶好調なのが「パークリュクス白金高輪」だ。
坪単価450万円の全160戸(事業協力者住戸8戸含む)だが、ゴールデンウィークに契約を開始し、残りは3戸のみ。23~26㎡の1Kタイプが100戸超で全体の約7割を占める。購入者は全体としては実需と投資が半々。
坪単価400万円の「パークリュクス渋谷西原」69戸も、年末まで約8割が契約済み。こちらも実需に投資需要も取り込んでいる。
三井不レジ コンパクト「白金高輪」「渋谷西原」 投資需要も取り込み絶好調(2016/12/20)
明和地所「ラベルヴィ市ヶ谷」他
新ブランド「ラベルヴィ」の第一弾が早期完売したのをはじめ、「王子」「川崎南幸町」「武蔵小杉」なども好調。
ブランド名がお洒落だ。「La belle vie(ラベルヴィ)」はフランス語で「美しい生活」「美しい人生」という意味だが、「ボレロ」や「展覧会の絵」などでよく知られた作曲家ラヴェルから採ったようでもあり、また「四季」の作曲家ヴィヴァルディを想像させる。
明和地所コンパクトの新ブランド〝ラベルヴィ〟「市ヶ谷」で第一弾(2016/1/4)
【用途変更マンション】
関電不動産開発「シエリア湘南辻堂」
関電不動産開発の首都圏第1弾。辻堂駅から徒歩4分の商・住複合開発の全352戸の規模で、敷地は元パナソニックの関連会社の工場跡地。
従前の用途地域は工業専用地域だったが、用地を取得した同社(前MID都市開発)が個人施行による土地区画整理事業を行い、第一種住居地域に用途変更した全国的にも珍しいマンション。地域・行政・開発事業者の協働によるコミュニティ「茅ヶ崎モデル」の構築を目指す。
7月の第1期分譲から年末までに220戸前後が販売済みだ。