街の価値を評価したい三井不動産レジデンシャル他「パークシティ大崎 ザ タワー」
「北品川五丁目第一地区」の街並み
三井不動産レジデンシャル(事業比率45%、以下、他社は非公表)、日本土地建物販売、大成建設、大和ハウス工業、新日鉄興和不動産は11月26日、品川区の大規模開発「パークシティ大崎ザタワー」(総戸数734戸)の第1期分譲288戸を12月1日に抽選分譲すると発表した。
物件は、JR大崎駅から徒歩6分、品川区北品川5丁目、全体約3.6haの「北品川五丁目第一地区」再開発事業区域の一角に位置する40階建て全734戸(うち一般分譲566戸)の規模。専有面積は43.89~116.89㎡、1期の価格は4,580万~1億8,500万円(最多価格帯9,000万円台、平均8,042万円)、坪単価368万円。設計・監理は日本設計。施工は西松建設。デザイン監修は光井純&アソシエーツ建築設計事務所。竣工予定は平成27年5月下旬。
主な特徴は、①平成25年の地価公示で都内の住宅地地価上昇率1位の「北品川5丁目」に立地②30年に及ぶ市街地再開発「GARDEN CITYS構想」の集大成③山手線内初の「パークシティ」④オーガニックシティとして7つのガーデンを配置し、緑化率30%以上を実現⑤おしゃれな街の理想的な子育てを実現するため各界のスペシャリスト(桐島かれん氏、滝沢眞規子氏、青山有紀氏、西畠清順氏、石戸奈々子氏)の提案を採用-など。
発表会で三井不動産レジデンシャル開発事業本部都市開発第一部長・山田貴夫氏は「全体約60haの再開発事業のなかで、今回は最大規模となる3.6haの住・商・業一体の複合開発でこの街の集大成のプロジェクト。11月から始めたモデルルームには1,700組の来場があり、分譲566戸の半分以上の288戸を供給するが、登録即日完売の勢いにある」と自信を見せた。
コミュニティガーデン ウェルカムスクエア
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坪単価について。業界の一部から400万円を超えるのではないかという声も聞かれたが、それはないとみていた。街の将来性を加味すればあるいは400万円もあるかもしれないが、そんな高値追求はしないという確信があった。
368万円というのは極めてリーズナブルな価格だと思う。発表会で三井不動産レジデンシャル都市開発一部営業室主査・大栗裕樹氏も「お客さんからは街の将来性、希少性が評価された。単価は決して安くはないが適正な価格と考えている」と話した。
今回も、街並みはデザインガイドラインに沿って整備されており、今回も長さ約250m幅約16mの道路・歩道空間が整備される。沿道には街路樹のシラカシが2段植栽され、その他の樹木が混植される。
共用施設はもちろんだが「街づくり」を評価すべきマンションだ。難点と言えば敷地と道路を挟んだ南側に31階建ての業務棟が建設されるので、その日影の影響を受ける住戸があることだ。
大崎のマンションでいえば、2001年竣工の「オーバルコート大崎」が印象に残っている。どちらかと言えば住宅や工場、倉庫などが混在し、色でいえば〝グ レー〟の街を、光井氏が得意とする温かみのあるアースカラーの外観デザインで一変させた。当時の坪単価は320万円だった。よくぞここまで街のポテンシャルを上げたものだ。
カスケードホール キッズガーデン
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各界スペシャリストの提案を盛り込んだ70㎡のモデルルームはよく分からなかった。リビングの隣の6畳大をスライドドア付きのオープンな子ども部屋にし、ダイニングに大きなボードを設けたものだが、リビングの隣に子ども部屋を設ける発想が理解できない。その一方で、主寝室は6.3畳大しかなかった。
他の2つのモデルルームはよくできていた。住戸プランはワイドスパンが中心で、3~4畳大のDENの提案、5畳大のキッチン、1620の浴室などがいい。設備仕様は天然石、フィオレストーン、標準仕様のバックカウンター付きなどが特徴。
70㎡のモデルルーム キッチン ダイニング 70㎡のモデルルーム子ども部屋
野村不動産アーバンネット 今年度新規5店舗目の仲介「国立」オープン
野村不動産アーバンネットは11月25日、同社の仲介店舗「国立センター」を12月2日(月)に開設すると発表した。
「国立センター」は、JR中央線国立駅北口から徒歩1分、駅前ロータリーに面したマンションの1階(クレッセント国立・ディアナプレイス1階、電話:042-580-1581、FAX:042-580-1582)に出店。今年度の新規出店は「国立センター」で5店目となり、仲介店舗数は首都圏50店舗・関西圏3店舗の合計53店舗となる。
同社は、昨年発表した中長期経営計画に基づき営業店舗と人員を向こう10年で倍増する計画。10月には新ブランド「野村の仲介+(プラス)」を立ち上げた。
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正確には分からないが、三井不動産リアルティが平成22年度に全国で15店舗(うち首都圏9店舗)を出店したのが近年では最多ではないか。野村不動産アーバンネットの出店ラッシュも注目される。
積水ハウス 「IAUDアウォード2013」の未来世代部門で金賞を受賞
左から中村氏、田中氏
積水ハウスが11月21日、一般財団法人国際ユニヴァーサルデザイン協議会(IAUD)が主催する「IAUDアウォード2013」の未来世代部門で金賞を受賞した。大賞を受賞したのは本田技術研究所。
同社が金賞を受賞したのは、2011年から取り組んでいる「ドクターユニバーサルデザイン授業プログラム」。「座学」と「実習」を2時間のパッケージとして小学校へスタッフらが出張して授業を行うもので、座学ではUDを知ると優しくなる、社会に役立つことなどを教え、実習では学内の様々な施設で実証するもの。全体を通じ「知性」「感性」「社会性」「(健康な)身体」を身につけてもらう取り組み。豊中市の小学校で一昨年と昨年の2年間で4回実施した。
表彰式に参加した同社総合住宅研究所部長・中村孝之氏は、「UDの取り組みはまだユニバーサルデザインの言葉が世の中に知られていないときから行ってきた。最近はUDで通用するようになってきた」と喜びを語った。また、同研究所技術研究室課長・田中眞二氏は「今後は健康、空気環境など研究テーマを広げ、メニューをそろえていく」と話した。
受章者のIAUDは、ユニヴァーサルデザインの普及と実現を目指す団体で、2003年11月に設立。設立時に総裁を務められた故・寬仁親王は「100%の障害者はいない。100%の健常者もいない。人間は皆、身体(又は精神)のどこかに障害部分を持っており、なおかつ健常なる部分をも合わせ持っている。ユニヴァーサルデザインとは、誰でもが豊かで快適な生活を送るためのものである」(同協議会ホームページ)と述べられている。
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記者は20年以上前からユニバーサルデザインを取材してきた。中村氏が語ったように、読者にユニバーサルデザインを伝えるのに難儀した。デベロッパーが取り組みだしたのはこの20年だ。ニチモが企業スローガンに掲げたときはうれしかった。その後、扶桑レクセルが積極的にマンションに採用した。社内で認定制度を設け、設備仕様も一新した。
しかし、最近はほとんどのデベロッパーがパンフレットなどでユニバーサルデザインを謳うようになってはきたが、設備仕様面ではむしろ後退している。
どこよりも早くこの問題に取り組んできた積水ハウスの受賞は当然だ。メーターモジュールの廊下・階段などの採用はどこよりも早かった。他のハウスメーカーやデベロッパーももっと真剣に取り組んでほしい。このままではいつまでたっても差は縮まらない。
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住宅関連では、積水ホームテクノの「ユニットバス」が医療福祉部門で金賞を受賞した。浴槽の位置が変えられ、介護者の負担も軽減できるものだ。浴室の寸法が2m×2.5mとややスペースを取るのが難点と言えば難点だと思った。
約200人が参加した会場
住友不動産 晴海のツインタワー「ドゥ・トゥール」来春分譲へ
「ドゥ・トゥールキャナル&スパ」(写真左端は竣工済みの賃貸マンション)
価格は公表されずオリンピック効果をどうみるか
住友不動産は11月21日、来年1月に分譲する中央区晴海の大規模ツインタワーマンション「ドゥ・トゥールキャナル&スパ」の記者発表・モデルルーム見学会を行った。数年前から計画されていた案件で、東日本大震災で計画見直しを行い、2020年の東京オリンピック開催決定を受けて分譲するもの。「災い転じて福をなす」の典型的な物件だ。
物件は、都営大江戸線勝どき駅から徒歩9分、中央区晴海三丁目に位置する52階建て2棟の全1,450戸とSOHO216区画の規模。住戸の専有面積は44.67~123.77㎡、SOHOは32.34~57.05㎡。価格は未定だが、第1期は上層階を中心に分譲する予定で、価格は6,000万円台~7,000万円台が予定されている。竣工予定は平成27年9月下旬。設計・施工は三井住友建設。
最大の特徴は、2020年開催の東京オリンピック選手村に近接していること。この価値をどう見るかだ。建物は免震構造を採用、ガラスを多用したファサードで、運河沿いという立地を生かし水辺を含む空地、スカイデッキを整備。幅15mもの巨大な浴槽を備えた広さ約200㎡の「サウナ付き大型スパ」、広さ約150㎡の「ビューラウンジ&バー」などの共用施設を整備する。
また、逆梁工法を採用して室内の梁型が出にくくするとともに、足元の床近くまで視界がすっきりする新ダイナミックパノラマウインドウ」を採用する。同社としては初の「長期優良住宅認定」を受けており、「カスタムオーダーマンション」対応ともする。
会見に臨んだ同社執行役員住宅分譲住宅事業本部副本部長・青木斗益氏は「現行消費税率の適用期限の9月を過ぎてもその反動はない。今後も売れ行きは好調に推移する。今回のマンションは当社のタワーマンションの集大成と位置付けているもので、エリアを代表するランドマークにする」と語った。
「ドゥ・トゥール」は、コーヒーのブランドではなく、フランス語から取った「ツインタワー」という意味だ。
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最大の関心事はいったい価格(坪単価)がいくらになるかだが、発表会ではいっさい公表されなかった。記者も質問したが、「ご想像にお任せする」としか返ってこなかった。
そこで記者の予想。同じ晴海エリアの三菱地所レジデンスのツインタワーも坪単価にして320万円の価値があると読んでいたが、オリンピック開催が決まり、今回のマンションも320万円以下はないと読んだ。東京のど真ん中の中央区アドレスで、江東区の豊洲、川崎市の武蔵小杉に負けるようでは情けないし、新宿区の「富久町」と同等の価値があるとみている。ひょっとすると坪330万円もあるかもしれない。郊外部のマンションは価格上昇してほしくないが、都心部のマンションは大手が競い合って高値追求しても問題ない。
ただ、価格上昇を押しとどめる要因がないわけではない。同じ勝どき駅圏には鹿島建設などの大規模マンションがほぼ同時期に分譲されるし、同じ晴海エリアで三井不動産レジデンシャルが大規模マンションを計画している。
オリンピックまであと7年もある。それまで分譲しないのなら坪単価は400万円近くになるのではと考えるが、同社は「約2年で完売したい」意向だから、「ワールドシティ タワーズ」で行ったようなオークションも行わないようだ。
物件の設備仕様そのものもオリンピック特需を見込んだ富裕層向けのものではなく、同社のこれまでのタワーマンションの延長線上にあるものだ。鹿島のマンションがいくらになるかも値付けを難しくしている。
SOHOはちょっと読めない。少なくともオリンピックが終わるまでは相場の2倍ぐらいの賃料設定でも申し込みが殺到するのではないか。所有権にしても面白い。
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同業の記者からはオリンピック選手村について質問が飛んだが、青木氏は「非常の魅力的な開発。当社も手を挙げる」と話した。
現段階では、選手村は17,000人収容の規模しか公表されていないので何戸建設されるかわからないが、5,000~6,000戸に収まるものとみられる。住戸面積もそれほど大きいものはつくらないだろうし、閉幕後は賃貸利用が過半を占め、分譲も定期借地権付きになるような気がする。交通アクセスが悪いのがネックだ。場所にもよるが歩けば駅まで20分はかかる。
2階デッキ
三菱地所 企業メセナ活動で文化庁長官賞受賞
受賞の喜びを語る杉山社長
公益社団法人企業メセナ協議会が11月21日、「メセナアワード2013 贈呈式」を行い、三菱地所が「特別賞文化庁長官賞」を受賞した。同協議会は、企業による芸術・文化振興による社会創造(メセナ)活動への参加を促す目的で1990年に発足。全国各地の優れたメセナ活動を行っている企業や企業財団などを表彰してきた。今回23回目を迎えた「メセナアワード2013」では全国から107件の応募があり、メセナ大賞1件、メセナ各賞5件、文化庁長官賞1件が受賞した。
特別賞の文化庁長官賞を受賞した三菱地所は、障害のある子供たちの絵画コンクール「キラキラっとアートコンクール」を毎年主催していることに対して受賞したもの。
贈呈式に出席した同社・杉山博孝社長は、「賞は、ご協力いただいている社会福祉法人の東京コロニー様などを代表して頂戴したのだと思っております。障害のある子どもたちがプロとしての作家活動ができるように今後も支援していきたい」と受賞の喜びを語った。同コンクールは2002年から実施しているもので、今年は2050作品の応募があった。
メセナ大賞にはNPO全日本製造業コマ大戦協会が、メセナ各賞には岩波不動産、損保ジャパン/損保ジャパン美術財団、トヨタ自動車、SCSK、村上町屋商人会がそれぞれ選ばれた。
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記者はこの日、別の取材があり、弊社の若い女性2人に杉山社長のコメントをテープに収め、写真を撮り、記事も試しに書くよう指示した。2人はこれまで取材などまったく行なったことなどない入社1~2年生だ。2人が書いた記事は主体と客体、主語と述語の関係がはっきりせず、誤字・脱字もあり、そのままでは記事にはならないものだった。
しかし、文末に書かれた「子供たちの話をするとき、無意識なのだろう、顔を緩める杉山社長が印象的に写ったスピーチだった」という文章に目が吸い寄せられた。
「写った」のはご愛嬌。やはりここは「映った」の誤植。それでも「無意識に」顔を緩める杉山社長の表情や、2人の若い女性の視線がストレートに伝わってくるではないか。
記者はこうであらねばならないと思う。コピー&ペーストで記事はいくらでも書ける。しかし、そんな記事は何の値打ちもない。知ったかぶりなどもってのほかだ。見る目を養わなければならないのはいうまでもないことだが、記者自身が感じたこと、見たことをストレートに伝えるから読者の心を捉えるのだ。
「キラキラっとアートコンクール」は記者も一度取材している。そのときも、杉山社長は自分の孫に対するかのように話したのを覚えている。杉山社長のやさしい一面を見ることは、本業の取材でも生きてくる。作品は丸ビルに展示される。ぜひ見学を勧めたい。
贈呈式
住友林業 国産材を活用した床材発売
住友林業グループの住友林業クレストは11月20日、木質系住宅部材の製品シリーズ「BeRiche(ベリッシュ)」の国産材を利用し、木材利用ポイント対象商品となる「ベリッシュカラーフロアTR-J」を同日から発売すると発表した。また、これまで発売していた「シストS-J」にベリッシュシリーズ5柄を追加設定した「国産材活用フロアベリッシュシストS-J」を同日より発売する。
2つの商品は、国産材のトドマツとヒノキをフロア基材として採用。「ベリッシュカラーフロアTR-J」は表面突板にも国産のカバ材を使用している。
「ベリッシュカラーフロアTR-J」は1坪当たり19,000円。「ベリッシュシストS-J」は1坪当たり26,000円。
RBA野球常勝軍団・旭化成ホームズ 育ての親の平居社長「野球」を語る
平居社長
「体育会系社員は練習する価値を知っている」
住宅・不動産・建設業を横断的に組織するRBA野球大会が今年で25周年を迎える。約50チームでスタートしたのは平成元年。バブルの絶頂期にあったが、平成2年にはバブル崩壊。さらに追い打ちをかけるようにリーマン・ショックも業界を襲った。
この間、参加チームは業界の浮沈を映すように約170チーム・社が参加しては消えた。第1回大会から連続して参加しているのは6チームのみだ。25年間を通じて断トツの強さを発揮しているのが旭化成ホームズだ。同社チームは第2回大会から水曜ブロックに参戦している。
参加した当初は強豪チームに歯が立たず、コールド負けを繰り返していた。そのチームが激変したのが平成8年。この年、4勝を挙げると翌年に無敗で初の総合優勝を遂げると、その後はほとんど毎年のように優勝争いを演じてきた。日曜ブロックの覇者と争う総合優勝戦で24回大会まで11度の優勝を飾っており、水曜ブロック優勝が12回、準優勝が2回。通算119勝19敗、勝率.862の高率をマークしている。
ターニングポイントになった平成8年こそ平居正仁社長が当時人事担当として野球選手をコンスタントに採用してきた時代と符合する。平居氏はその後、平成12年に人事部長、同16年に旭化成リフォームの社長を務めた後、同21年に社長に就任した。人事担当だったころはいつもグランドに駆けつけ応援していた。いまは業務が忙しく決勝戦にも顔を見せなくなったが、チーム育ての親であることに変わりはない。平居社長になぜ野球なのかを聞いた。
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平居社長が野球部を強くしようと思ったきっかけは平成6年に人事部担当になったときだ。それまで平成2年~6年、平居氏は滋賀の旭化成住工勤務だった。
「当時、社名は東芝住宅工業(旭化成住工に社名変更したのは平成3年)で、若い社員は野球をやっていました。その野球部が強く、グループ内の大会でも好成績を上げていました。みんな天狗になっていたんです。
私自身、野球は素人。そこで、私は旭化成ホームズの人事部に異動になるとき『本社の野球部を強くして、こいつらの天狗の鼻をへし折ってやる』と考え、平成7年採用のとき、慶大野球部監督の後藤(寿彦氏)さんを訪ね『住宅に興味のある部員はいませんか』とお願いしたら、たまたま鈴木鉄也(前監督)ら3人が来てくれることになった。その年の秋、慶大の4年生とうちのチームと親善試合をやったのですが、慶大チームには西武から指名を受けて、その日が入団調印式だった高木大成さんも参加され、ものすごく盛り上がりました。
この年は、青学の渡辺康平たちも入ってくれた。翌年、後藤さんの伝手で早大野球部監督の佐藤さん(清氏)にお願いしたら、山本(寿彦氏、現監督)が入ってきた。それから負けないチームになりましたね。先輩、後輩の伝手でコンスタントに入社してくれるようになりました。
当時、土屋社長(友二氏)から『お前はスポーツ選手ばかり採っているんじゃないか』と言われ、早速野球選手の営業成績を調べたら、みんな平均以上だった。しかし、支店や営業所もなかなか売り上げが上がらず苦戦していた時代で、業績が悪いと気持ちよく野球に出してくれないこともあった。やはり業績が上がらないと気持ちよく野球はできない。
その頃、鈴木鉄也(前出)が受注絶好調だったので、休日に野球部員を集めて営業の勉強会を何度か行い、その結果、他の営業マンと比較しても皆それぞれ営業成績を上げてくれた。そこで、『人事部長としての仕事をちゃんとやっているでしょ』と、決して野球選手ばかり取っている訳でなく、業績にも貢献できる人材を採用していますと、土屋に伝えました」(土屋社長はチームが優勝したときホテルで祝勝会を開いたほどの野球好き。平居氏には『野球選手は本業でも優秀であることを証明せよ』とエールを送ったのだろう=記者注)
野球選手などの体育会系の社員はどこがいいのか。この質問に対して平居社長は「一般的にはパワーがあるとか礼儀正しいとかが強みだと言われます。確かにそれもそうですが、私が体育会系を買っているのは、練習することの価値を知っていることに対してです。たゆまず練習する。スポーツ系の社員はこれを苦にしないで実践する。これが最大のポイントです。仕事も同じ。普通は何度か失敗するとあきらめて方向転換しますが、それでは仕事も上達しない。失敗したらなぜ失敗したのか、考えればいいこと。反復練習することでミスが見えてくるし、ミスをなくすことができるんです。当社の野球部の選手は本業でも全国レベルの人材がたくさんいます」
(旭化成ホームズの選手は確かにミスをしない。1試合に1つあるかどうかだ。ライバルのリスト主砲・杉山選手(横浜高校出身で、松坂にエースの座を奪われた投手)は『うちと旭化成さんの違いはミスの差』と話したことがある)
同業へのメッセージ。「いまは積水(ハウス)さん、住林(住友林業)さんも参加されています。住林の市川さん(晃氏)は〝打倒・旭化成〟を目指していただいておりますし、社長同士が集まる会合では野球の話で盛り上がっています」
「14回大会と15回大会は2度にわたって優勝できなかった年があります。〝打倒リバブル〟が達成できて気が抜けてしまったのではと思ったので、みんなを集めて『本当に野球が好きだったら、野球に恩返しをしろ』と話しました。かつてのリバブルさんのように〝打倒・旭化成〟と目標にされるような強いチームにすることが野球に対する恩返しだ』と話しました。それからまたエンジンがかかり、負けないチームになったんです。鈴木はかなりプレッシャーと戦っていたはずですよ」
(鈴木監督が負けないチームをつくったのは適材適所の起用と、チームが勝つための采配にこだわったためだ。ナインも外野への安打を放っても『あの場面はゴロを打てとの指示だった』と決して喜ばなかった。鈴木監督は試合後の反省会で必ず左利きでノートに小さな字でメモを取っていた)
「(旭化成)リフォームにも強くなってほしいのですが…補強? 補強はしませんよ。補強して強くしても面白くない。弱いチームを強くしていくプロセスが楽しいのです」と話した。
普段は各支店・営業所めぐりで忙しく、本社にいるのは月に数えるほどとか。「ここ(本社)にいても仕事にならない(笑)。各地を回って担当者から人の成長を確認するのが私の役割」とくったくがない。2泊3日の勉強会を年10回もこなすという。現場主義を貫く社長だ。
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旭化成ホームズの業績が伸びている。平成26年度第2四半期決算は、売上高前年同期比11.9%増収の2,384億円、営業利益が40.9%増益の265億円となり、第2四半期累計としては過去最高となった。通期見通しについても「消費増税の駆け込みの反動による落ち込みは限定的」(平居正仁社長)と判断し、売上高5,320億円、営業利益600億円とし、過去最高の売上高・営業利益を目指す。
同社の業績が好調なのはこれまで書いたように、人事担当時代から人を育ててきた平居社長の手腕によるところが大きいと思えてならない。これは記者の身びいきか、我田引水か。
平居社長は11月22日に開かれる25周年記念の「RBA懇親会」にも出席する。
左手にタコ 一筆書きのようにマンション検査を徹底 新三平建設・高谷氏
高谷氏(2011年6月撮影)
今年の春先から夏までに約3カ月で完売した「プレミアムレジデンス府中西府駅前」45戸の施工を担当している新三平建設の建設事業部支援課課長・高谷郁浩氏に話を聞く機会があった。マンションの竣工検査の厳しさを思い知らされた。
マンションはJR南武線西府駅から徒歩1分の6階建て全45戸。専有面積は57.77~92.17㎡、価格は3,300万円台~5,800万円台(最多価格帯3,900万円)。竣工予定は平成25年12月上旬。施工は新三平建設(事業比率90%)、三信住建(同10%)。売主は三信住建。
西府駅は2009年に開業した駅で、当時、扶桑レクセル(現大京)が「レクセルマンション府中西府」78戸を分譲して人気になったのを記憶している。坪単価は220万円ぐらいではなかったか。その後、マンションは供給されていないはずだ。
今回も人気になったのは駅1分の利便性と、道路を隔てた隣接地にスーパーが開業する予定になっていることだろうと思う。
高谷氏は、引き渡しを目前に控えかなりナーバスになっていた。「竣工検査には社内検査-施主検査-入居者検査の3回ありまして、今回が最初の社内検査。機能性で問題が発生するのはあり得ないことですが、住戸内検査のとき私は左手に軍手をはめて角という角を隈なく撫でまわします。一筆書きと一緒ですよ。途切れることは絶対にない。徹底してキズや汚れをチェックします。1回あたり30カ所ぐらいは修理すべきところを発見します。職人さんたちとは侃侃諤々、掴み合いになるぐらいの議論になることも度々です。それをやるから施主や一般のお客さまからゼネコンは信頼されるのです」と話した。
左手を見せてもらったが、普通にはあり得ないタコができていた。なぜ左手かは聞かなかったが、右手は何か作業したり書いたりするので使わないのだろうと思った。工事ミスかそうでないかで議論が白熱化するのは、それぞれプロの立場から自論を主張するはずだろうから当然だろうと考えた。
こうした裏方の苦労を思うと、マンションの施工時期の平準化は急がなければならないし、ゼネコンの多重下請構造の改善も喫緊の課題だ。
千駄ヶ谷のリファイニング建築に見学者300人
現地で挨拶する青木氏
青木茂建築工房 賃貸を分譲の「千駄ヶ谷 緑苑ハウス」に再生
青木茂建築工房(主宰:青木茂首都大学東京特任教授)が11月12日、青木氏がリファイニング建築の設計・監修を担当する再生マンション「千駄ヶ谷 緑苑ハウス」の解体現場見学会を行った。JR千駄ヶ谷駅から徒歩3分の賃貸マンションを同社として初めて分譲マンションに再生するプロジェクトで、行政、不動産、設計事務所、研究者ら約300人が押し寄せた。
物件は、JR中央・総武線千駄ヶ谷駅から徒歩3分、渋谷区千駄ヶ谷5丁目に位置する7階建て全17戸 (非分譲住戸1戸、非分譲事務所3戸、一般分譲13戸) の規模。専有面積は38.93~50.25㎡、現在分譲中の住戸(6戸)の価格は3,390万~5,180万円。坪単価は290万円。リファイニング工事は山田建設。完成予定は平成26年2月下旬。売主はハチハウス。媒介は三井不動産レジデンシャル。既存建物は築43年が経過。再生工事を着手後、これまでに半分以上が分譲済み。
青木氏は、「見学者が100名、200名は想定していたが、300名を突破するとは。僕もよく分からない。こういったプロジェクトは大きな可能性を秘めている。旧耐震でも再生できないほど耐震性に問題があるのは100棟に1棟ぐらい。今回のプロジェクトは賃貸にするか分譲にするか、事業主をどうするかなどに時間を割かれたため企画段階からこれまで3年がかかったが、現在の事業主は決断が速かったため、3か月で基本設計ができた。検査済証があったため、今回の工事では建築確認の必要はない。行政と協議を行い、確認申請が不要の工事内容であることを確認している」と語った。
耐震補強前の7階(左)とほぼ補強済みの6階スケルトン
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まず、見学者の数から。見学会の直前、9日にメールが届いた。「このたびは『千駄ヶ谷 緑苑ハウス リファイニング工事』の解体現場見学会に沢山の参加のお申し込みをいただきありがとうございました。現時点におきまして参加者数が約300名に達しましたため、安全上の観点から、大変恐縮ではございますが受付を締め切らせていただきます」と書かれていた。
この人数に驚いた。何かの間違いではないかと思った。大手デベロッパーが分譲するマンションの見学会でも多くて50人ぐらいしか集まらない。青木先生とハチハウスには失礼だが、たかが17戸の再生マンションに300人もの見学申し込みがあるはずがないと思った。青木先生が〝さくら〟として学生さんを動員したのだろうと思った。
ところが、当日の現場は見学者でごった返していた。主催者によると見学者は国交省を含めた行政、不動産会社、建築設計事務所、大学の研究者が中心で、学生さんらしき人は数えるほどしかいなかった。ビルやマンションの再生が大きなテーマになっているが、300人という数に関心の高さをうかがわせた。
リファイニング建築とは同社の登録商標で、従来のリフォームやリノベーションよりさらにレベルの高い安全性を確保し、トレンドを見据えたデザインを施した再生手法のことだ。
モデルルーム(梁型を織り上げ天井として演出。照明設計は東京スカイツリーの照明デザインを担当したシリウスライティングオフィス)
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現地は、敷地北側に新宿御苑が見渡せる立地。すぐ近くにはトーセイが分譲して早期完売した「THEパームス千駄ヶ谷 御苑の杜」(23戸)が建っている。 従前建物は賃貸と事務所の複合用途建築物。
旧耐震の建物であることから、様々な手法により耐震補強を行い、第三者調査機関に委託し、躯体の耐用年数推定調査を実施。税法上の残存耐用年数は7年であるにもかかわらず改修後の物理的耐用年数は残り50年と評価された。35年の住宅ローンも借りられる予定である。
モデルルームは内装と設備の一新を図ったもので、天井高は約2400ミリ(スラブ厚120ミリ、階高2800ミリ)。二重床・二重天井。従前は北側住戸には小さな窓しかなかったものを、耐震補強することで幅約6mの開口部を設けて窓にしている。
◇ ◆ ◇
分譲単価について。新築ならいくらぐらいか判断ができるが、躯体をそれほどいじらないリノベーションでもないから評価は難しい。工事費については青木氏から聞いたが、これは売主のこともあるから明かせない。ハチハウス・青木歩実社長(青木氏とはたまたま同姓)は「坪単価は新築の8掛けと考えていただいて結構」と話した。
見学会に参加していたある大手のリフォーム会社の常務と取締役は、青木社長から単価を聞いて「よく付けましたね」と感嘆の声を上げたので、記者は「それは安いという意味? それとも頑張った値段? と解していいのですか」と聞いたらすかさず「もちろん、頑張った値段」と返ってきた。
屋上(左)と現地(写真右端はトーセイのマンション、シートがかかっているのが工事中の建物)
「関西」電鉄会社の矜持を見た 京阪電鉄・京阪電鉄不動産「品川タワーレジデンス」
「品川タワーレジデンス」
京阪電鉄・京阪電鉄不動産の「品川タワーレジデンス」を見学した。品川がリニア新幹線の始発駅となることが正式に発表され、品川-田町間のJR品川車両基地再開発が「アジアヘッドクォーター特区」にも選ばれるなど、将来性が期待されるエリアにあり、アドレスが「高輪三丁目」の初のタワーマンションだ。
物件は、JR品川駅から徒歩6分、または都営浅草線泉岳寺駅から徒歩7分、港区高輪三丁目に位置する25階建て125戸の規模。専有面積は30.00~87.37㎡、現在分譲中の住戸の最多価格帯は8,800万円台。坪単価は385万円。設計・施工は長谷工コーポレーション。竣工予定は2015年2月下旬。販売代理は三井不動産レジデンシャル。
現地は、品川駅高輪口から第一京浜道路を北に向かった「高輪三丁目」の一角。南側の借景にはグランドプリンス高輪、SHINAGAWA GOOSなどのホテル群や邸宅街が望める。建物は制震構造を採用し、外観は見る方角によって、時間の経過とともに表情が異なるように工夫し、グラデーションを巧に利用している。居室の天井高は最高約2.7m。標準階はワンフロア5~6戸。角住戸比率は76%。これまで80戸が販売済み。
京阪電鉄不動産首都圏事業部マネージャー・髙橋和寿氏は「仕入れたのは2年前。最初は大手とのJVも考えたが、私たちの矜持を見せようと親会社の京阪電鉄と共同で分譲することになった。商品開発には力を入れた。リニア新幹線の効果もあるが、すでに第1期で80戸が売れているようにお客様に評価されたと考えている」と話した。
DEN
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モデルルームを見てすぐ電鉄会社のマンションとしては初めて大手と互角に戦える物件だと思った。
専有部のインテリア・内装デザインコーディネートは、髙橋氏が「一目見てほれ込んだ」という鈴木ふじゑ氏だ。鈴木氏の「作品」は記者も数え切れないほど見ているが、本物志向でえもいわれぬ色使いに特色がある。57㎡のコンパクトタイプでは主寝室(約6.2畳大)に隣接した約2.8㎡のDENの提案がいい。
最高価格1億2,000万円の87㎡では、幅約1.5m、奥行き約5m、壁面突き板仕様の玄関・ホールが圧巻。57㎡のタイプ20戸と最高価格住戸を含む80戸が完売というのも納得だ。
リビングダイニング
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首都圏の電鉄会社はみんな立派な街をつくってきた。ところが、分譲マンションとなると、記憶に残るいいマンションはほとんどない。大手デベロッパーとのJVで〝ぶら下がり〟として名を連ねているぐらいだ。最近でいえば、近鉄不動産の「大宮」が出色の出来だったが、これも鹿島建設とのJVだ。西武線を中心に水準以上のマンションを供給していた西武不動産は分譲から撤退してしまった。社名もなくなった。情けない限りだ。
そんな事情があるので、今回見学した「品川」もそれほど期待はしていなかった。そもそも京阪電鉄も京阪電鉄不動産もよく知らなかった。大阪や京都には多くはないが取材や旅行で行ってはいるが、京阪電車に乗った記憶はない。中ノ島、枚方、東福寺、祇園四条などにはどうやって行ったのだろう。一般のユーザーも記者と同じではないか。「京都タワー」は知っていても、それが京阪電鉄のホテルだと知っている人は少ないのではないか。
それもそのはずだ。過去、関西でプロ野球球団を経営した「近鉄」「阪急」「阪神」「南海」は日本中に強烈な印象を残しているが、「京阪」は全国へのブランド展開を行ってこなかった。
記者が見学取材している「戸田公園」「聖蹟桜ヶ丘」のマンションも髙橋氏に指摘されるまで、同社が分譲したマンションであることを忘れていた。
いま考えてみると、知名度が低いからこそそのハンディを跳ね返すためにも「矜持を込めた」商品企画にしたのに違いない。関西圏でマンション供給第3位の力を首都圏で見せた。
同社は来春、王子駅前の一等地で近鉄不動産と共同で29階建てタワーマンション285戸を分譲するという。見るのが楽しみだ。社員約100人のうち8割がプロパーという他の電鉄(系)会社にない企画力を見せてくれるのではないか。東京の営業所長である髙橋氏は関西出身だが、あるゼネコンの経験を含めて東京勤務20年の大ベテランだ。
キッチン
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最後に坪単価について。道すがら考えた。高輪の住居系なら坪400万円をはるかに越えるが、第一京浜に面していることから坪400万円は越えないと予想した。しかし、リニアや再開発の将来性を先取りすると400万円をはるかに越えると思った。
モデルルームを見学している途中で「単価はいくらですか」と聞いたら、逆に髙橋氏から「いくらだと思いますか」と聞かれたので、とっさに「坪420万円」と、リップサービスの意味も込めて答えた。385万円は極めてリーズナブルだし、将来性を考えたら割安感のあるマンションだ。
87㎡のモデルルーム玄関