フージャースHD 2023年3月期 減収ながら大幅増益 配当利回りは5.76%へ
フージャースホールディングスは5月11日、2023年3月期決算を発表。売上高79,286百万円(前期比0.3%減)、営業利益8,425百万円(同25.95増)、経常利益7,280百万円(同27.9%増)、純利益4,557百万円(同48.5%増)。
不動産開発事業は、マンション1,146戸、戸建て39戸の合計1,185戸(前期比31.4%増)の引渡により、売上高49,916百万円(前期比37.0%増)、営業利益6,410百万円(同138.6%増)となった。営業利益率は12.8%(前期比5.5ポイントアップ)。
分譲型シニアマンションなどCCRC事業は、引渡戸数が前期484戸から当期287戸へ減少したことなどから、売上高13,314百万円(前期比35.9%減)、1,559百万円(同37.7%減)。粗利益率は25.3%と高い水準を継続している。
2024年3月期は売上高90,000百万円(前期比13.5%増)、営業利益8,600百万円(同2.1%増)、経常利益7,500百万円(同3.0%増)、純利益4,800百万円(同5.3%増)を見込む。
当期の期末配当金は当初予想から4円増配の28円とし、中間配当金24円と合わせ52円に増配する予定。24/3月期も55円(23/3月期比3円増配)の増配を予定している。5月12日現在の株価903円に対する配当利回りは5.76%と不動産ポストではトップクラスとなる。
住友不動産 2023年3月期 増収増益 経常は2期連続、純利益は10期連続最高益
住友不動産は5月11日、2023年3月期決算を発表。売上高9,399億円(前期比0.1%増)、営業利益2,412億円(同3.2%増)、経常利益2,366億円(同5.1%増)、純利益1,619億円(同7.6%増)。売上高、営業利益、経常利益、純利益のすべてで前期を上回り、経常利益は2期連続、純利益は10期連続の最高益更新を達成した。
不動産賃貸は売上高4,253億円(前期比0.1%増)、営業利益1,656億円(同1.9%増)。前期に竣工した「住友不動産田町ビル東館」、「住友不動産神田和泉町ビル」などの通期稼働に加え、「ラ・トゥール」シリーズの高級賃貸マンションが好調に推移し業績に寄与した。既存ビルの空室率は6.0%(前期末5.8%)。
不動産販売事業は売上高2,220億円(前期比5.0%減)、営業利益539億円(同6.8%増)。マンション・戸建2,886戸、宅地75区画の合計で2,961戸(前期比643戸減)を計上し、戸数は減少したが、都心物件を中心に利益率が改善し増益となった。営業利益率は前期が21.6%、当期は24.3%。次期計上予定戸数3,000戸に対する契約進捗率は約90%(前年約80%)。完成済み販売戸数は1,215戸(前期比41戸増)。
完成工事事業は、受注は「新築そっくりさん」事業が7,796棟(前期比566棟減)、注文住宅事業が2,071棟(同548棟減)と減少したが、両事業ともに値上げが寄与し増収となり、国産材の活用などコスト管理を徹底した結果、売上高2,027億円(前期比4.4%増)、営業利益214億円(同15.6%増)と増収増益となり、3期ぶりの最高益更新を達成した。
不動産流通事業は売上高751億円(前期比2.2%増)、営業利益200億円(同11.1%増)。仲介件数は34,906件(前期比3,238件減)となったが、取扱単価の上昇(前期38.1百万円⇒当期39.9百万円)により売上高、営業利益とも2期連続で過去最高を更新した。
2024年3月期は売上高9,700億円(前期比3.2%増)、営業利益2,550億円(同5.7%増)、経常利益2,500億円(同5.6%増)、純利益1,750億円(同8.1%増)を見込む。
三菱地所 2023年3月期 売上高・営業利益・純利益が過去最高 海外けん引
三菱地所は5月11日、2023年3月期決算を発表。売上高13,778億円(前期比2.1%増)、営業利益2,967億円(同6.4%増)、経常利益2,718億円(同7.1%増)、純利益1,653億円(同6.6%増)となった。海外のキャピタルゲインが利益を牽引し、売上高・営業利益・純利益は過去最高を更新した。
コマーシャル不動産事業は、売上高7,774億円(前期比167億円増)、営業利益は1,888億円(同10億円減)。オフィスビルは「常盤橋タワー(TOKYO TORCH 東京駅前常盤橋プロジェクトA棟)」の通期稼働による増収があった一方で、前期に計上した既存ビルなどの一時的な収入の反動減により減収。2023年3月末の空室率は3.73%(前期末3.29%)。商業施設やホテルは増収となった。
住宅事業は売上高3,464億円(前期比345億円減)、営業利益350億円(同48億円増)。国内分譲マンション事業は、一戸当たりの販売単価は前期6,971万円から7,076万円に上昇したものの、計上戸数は前期3,046戸から1,596戸へほぼ半減したことから売上高は1,129億円(前期は2,123億円)へ減少した。粗利益率は26.1%(前期比3.6ポイントアップ)、完成在庫は61戸(前期は62戸)、今期計上予定額の78.3%を契約済み。注文住宅の売上高は382億円(前期比1.7%減)となった。
海外事業は売上高1,761億円(同45.3%増)、営業利益は894億円(同335億円増)。アジアで減収となったが、米国、欧州が大幅増収となった。
2024年3月期は売上高14,690億円(前期比6.6%増)、営業利益2,640億円(同11.0%減)、経常利益2,320億円(同14.6%減)、純利益1,660億円(同0.4%増)を見込む。
配当は23/3期38円(前期比2円増配)、24/3期40円(同2円増配)と3期連続で過去最高を更新する見込み。
コスモスイニシア 2023年3月期 2ケタ増収増益 宿泊事業が大幅改善
コスモスイニシアは5月11日、2023年3月期決算を発表。売上高は123,374百万円(前期比14.9%増)、営業利益は4,924百万円(同46.9%増)、経常利益は4,469百万円(同71.2%増)、純利益は3,524百万円(同106.9%増)となった。宿泊事業が大幅に改善した。
レジデンシャル事業は、新築マンションの引渡戸数(427戸、前期比26戸減)が減少したことなどから売上高41,052百万円(前期比1.9%減)、セグメント利益17,062百万円(同3.3%減)となったが、売上総利益率は22.5%(同3.6ポイント上昇)へ改善した。未契約完成在庫は293戸(同39戸減)。リノベーションマンション販売は売上高16,467百万円(同4.4%増)、引渡戸数313戸。
ソリューション事業は、売上高55,980百万円(前期比10.9%増)、セグメント利益5,386百万円(同3.5%減)。
宿泊事業は、昨年10月以降の入国制限緩和や国内の旅行需要喚起策などにより、ホテルの稼働が改善し、施設販売が増収となったため売上高11,536百万円(前期比81.5%増)、セグメント損失909百万円(前期はセグメント損失2,061百万円)と大幅に改善した。
また、同社の連結子会社Cosmos Australia Pty Ltdの清算に伴い、税金費用が大幅に減少したため、純利益35億24百万円(同106.9%増)を計上した。
2024年3月期は、売上高125,000百万円(前期比1.3%増)、営業利益5,500百万円(同11.7%増)、経常利益4,600百万円(同2.9%増)、純利益3,300百万円(同6.4%減)を見込む。
2023年3月期の年間配当は期初公表から5円増配の14円(前期比7円増)を予定し、2024年3月期は16円へ増配する見通し。
明和地所 2023年3月期 マンション販売好調で増収増益
明和地所は5月11日、2023年3月期決算を発表。売上高62,319百万円(前期比8.9%増)、営業利益5,941百万円(同42.5%増)、経常利益4,989百万円(同57.9%増)、純利益4,415百万円(同70.0%増)となった。
主力の不動産販売事業は、分譲マンション868戸(前期比5戸減)、中古マンションの買取再販114戸(同28戸増)の引渡しを行ったことなどから、売上高55,618百万円(同9.2%増)、セグメント利益は6,334百万円(同47.9%増)。2024年3月期に引渡しを予定している住戸の89%が契約済み。完成在庫は15戸。
2024年3月期は売上高83,000百万円(前期比33.2%増)、営業利益6,300百万円(同6.0%増)、経常利益5,200百万円(同4.2%増)、純利益3,800百万円(同13.9%減)を見込む。
今期末配当金は前期比10円増配の45円、2024年3月期は5円増配の50円を予定している。
三井不動産 2023年3月期決算 売上高・利益とも過去最高更新
三井不動産は5月10日、2023年3月期決算を発表。売上高は2兆2,691億円(前期比8.0増)、営業利益は3,054億円(同24.7%増)、経常利益は2,653億円(同18.0%増)、純利益は1,969億円(同11.3%増)となり、売上高、営業利益、経常利益、純利益とも過去最高を更新した。
セグメント別では、賃貸は売上高7,543億円(前期比12.9%増)、営業利益1,491億円(同14.7%増)。「50ハドソンヤード(米国・オフィス)」の収益・利益の拡大、既存商業施設の回復、「ららぽーと福岡」「ららぽーと堺」の開業効果などにより売上高・営業利益とも過去最高。首都圏オフィス空室率(単体)は3.8%で、前期末から2.6ポイント改善した。
分譲事業は、売上高6,406億円(同0.5%減)、営業利益は6,406億円(同5.3%増)。投資家向け・海外住宅分譲は減収減益となったが、国内分譲は2,705億円(同10.3%増)、営業利益は393億円(同63.8%増)で、営業利益は過去最高となった。完成在庫はマンションが55戸(前期末82戸)、戸建てがゼロ(同7戸)。今期の国内新築マンション計上予定戸数3,350戸に対する契約達成率は77.5%。
プロパティマネジメントは、売上高4,459億円(同3.9%増)、営業利益633億円(同10.8%増)。リパーク(貸し駐車場)の稼働向上や費用削減、プロジェクトマネジメントフィーが増加したことなどから売上高・営業利益ともに過去最高を更新した。三井不動産リアルティのリハウス事業の取扱高は増加したが、取扱件数は39,106件(前期41,183件)減少したため微減益となった。
ホテル・リゾートなどその他は売上高4,282億円(同19.1%増)、営業損失42億円(前期は296億円の営業損失)。RevPARが大幅に改善し、売上高は過去最高。東京ドームの売上高は731億円で、前期より137億円の増収。三井ホームの新築請負売上高は1,378億円で、前期比19億円の減収。
2024年3月期は売上高2兆3,000億円(前期比1.4%増)、営業利益3,300億円(同8.1%増)、経常利益2,450億円(同7.7%減)、純利益2,100億円(同6.6%増)を見込む。
また、期末配当は2円増配の32円(年62円)とし、次期配当も年68円に増配する予定。
◇ ◆ ◇
分譲事業が絶好調だ。国内分譲住宅と投資家向け・海外住宅分譲を合わせた売上高は6,406億円(前期比31億円減)、営業利益は1,457億円(同73億円増)。内訳は国内分譲住宅の売上高は2,705億円(同253億円増)、計上戸数は3,616戸(同99戸減)、営業利益は393億円(同153億円増)、営業利益率は14.6%(同4.8ポイント増)。
分譲住宅の内訳は、マンションの売上高2,356億円(同288億円増)、戸数3,196戸(同12戸減)、戸当たり単価7,373万円(同931万円増)で、戸建ての売上高348億円(同35億円減)、戸数420戸(同87戸減)、戸当たり単価8,308万円(同717万円増)。戸数減を戸当たり単価上昇でカバーした。完成在庫はマンションの55戸のみ。
投資家向け・海外住宅分譲の売上高は3,701億円(同285億円減)、営業利益は1,063億円(同79億円減)、営業利益率は28.7%(同0.7ポイント減)。
東急不HD 2023年3月期 売上高1兆円超だが 気になる住宅事業の利益率の低さ
東急不動産ホールディングスは5月10日、2023年3月期決算を発表。売上高は1兆58億円(前期比1.7%増)、営業利益は1,104億円(同31.7%増)、経常利益は995億円(同36.7%増)、純利益は482億円(同37.3%増)と増収増益。売上高が1兆円超となったのをはじめ営業利益、経常利益、純利益ともホールディングス体制への移行前も含めて過去最高となった。
セグメント別では、都市開発事業の売上高は3,461億円(前期比6.2%増)、営業利益は586億円(同12.9%増)。渋谷を中心とするオフィス・商業施設の空室率は1.1%(前期末1.3%)と堅調に推移し、「九段会館テラス」の開業も業績向上に寄与した。住宅分譲は計上戸数減少により減収となったが、在庫整理が進み、マンションの今期売上予想1,218戸に対する契約済みは82%(同24ポイントアップ)と改善した。
管理運営事業の売上高は3,371億円(同12.1%減)、営業利益は123億円(黒字転換)。「ハンズ」の株式譲渡により567億円の減収になったが、セグメント全体では減収増益となった。
不動産流通事業の売上高は2,630億円(同12.1%増)、営業利益は337億円(同28.9%増)。売買仲介、不動産販売とも好調で増収増益となった。
戦略投資事業の売上高は788億円(同17.6%%増)、営業利益は152億円(同3.4%増)。物流施設の売却や再生可能エネルギー事業の稼働施設の増加などが押し上げた。
2024年3月期は売上高1兆1,200億円(前期比11.4%増)、営業利益1,120億円(同1.4%増)、経常利益1,005億円(同0.95増)、純利益620億円(同28.6%増)を見込む。
また、純利益が直近予想の390億円から92億円増の482億円になったことから、期末配当は直近の配当予想から1株4円50銭増配し、14円50銭、年間配当金は23円50銭(前期実績17円00銭)とする予定と発表した。
◇ ◆ ◇
売上高が初めて1兆円超となったのは、2000年以降は主たる収益源だった住宅事業からオフィス・商業施設など賃貸事業へシフトし、2014年には再生可能エネルギー事業に参入するなどポートフォリオの改善を進めてきた結果だ。
しかし、同社の分譲事業を取材して記者にとっては、分譲戸建ての供給がほとんどなくなり、課題だったマンションの利益率改善もそれほど進んでいないのは残念でならない。
同じような事業規模の東京建物(2022年12月期)と比較してみよう。マンションの計上戸数は東急が1,369戸、東建が859戸、売上高は東急が1,453億円、東建は859億円、営業利益は東急が111億円、東建が233億円、売上高営業利益率は東急が7.6%、東建が27.1%だ。完成在庫は東急が200戸、東建が175戸。営業利益は東建の約半分で、利益率は10ポイントもの差がある。他のデベロッパーと比較しても同様の結果となるはずだ。何かが欠けている。
マンションの計上戸数が減少するのは「供給を抑えているためか」というメディアの質問に対して、同社執行役員・宇杉真一郎氏は「マンションの供給を抑えているというのは正確ではない。資材高騰などを価格に転化しづらい郊外から、利益率が高い都内・再開発物件にシフトしていくということだ。今期が底。来期以降は改善する」と説明した。この言葉を信じよう。とりあえず「ブランズ渋谷桜丘」155戸に期待しよう。
全3棟850戸超の「(仮称)昭島プロジェクト」始動 大和ハウス
「(仮称)昭島プロジェクト」
大和ハウス工業は5月10日、東京都昭島市の3棟で850戸超の大型分譲マンションプロジェクト「(仮称)昭島プロジェクト」本格始動すると発表した。
プロジェクトは、JR昭島駅から徒歩5分、映画館や飲食店が出店する大型複合商業施設「MORITOWN(モリタウン)」をはじめ、アウトドアをテーマとした体験型商業施設「MORIPARK OutdoorVillage(モリパーク アウトドアヴィレッジ)」やプール・テニスコートなどのスポーツ施設を備えている昭島駅北口の都市型リゾートエリア「東京・昭島 モリパーク」内に位置。
2021年4月に昭和飛行機都市開発から取得した用地約32,000㎡をA・B・Cに分け、うちA敷地の13階建て「プレミスト昭島 モリパークレジデンス」481戸を2023年1月に着工した。
このほかB敷地は9階建て約100戸、C敷地は14階建て約270戸をそれぞれ予定している。工期は2023年1月~2028 年度の予定。総事業費は約400億円。
◇ ◆ ◇
取得した用地はおおよその察しがつく。2021年に分譲開始された三井不動産レジデンシャルの「パークホームズ昭島中神」(313戸)のモデルルームが設けられたエリアの一角だ。ゴルフ場、ホテルもあり、住環境は素晴らしい。問題は戸数の多さだ。工期は5年。年間に換算すると年間170戸。
常識的には、竣工までに売るのはかなり厳しい数字だが、設備仕様レベルを上げ、アウトドア派に訴求すれば人気を呼ぶ可能性もあると見た。価格がいくらになるかだが、坪単価はアッパーで240万円でどうだろう。
サンウッド旋風巻き起こすか 2023年3月期業績好調 京王と初のJV「浜田山」分譲へ
「サンウッド浜田山」(物件ホームページから)
サンウッドは5月9日、2023年3月期決算説明会を行い、同社代表取締役社長・森毅氏が決算概要、2023年3月期業績予想、新規取り組みなどについて説明した。
2023年3月期決算は、売上高19,376百万円(前期比46.6%増)、営業利益1,959百万円(同256.7%増)、経常利益1,655百万円(同413.7%増)、純利益1,155百万円(同405.1%増)となり、営業利益、経常利益は創業来2番目、純利益は創業来最高益を達成した。
坪単価650万円超の「サンウッド瀬田1丁目」(22戸)など分譲マンション2物件が早期完売し、一棟収益物件「WHARF(ワーフ)」シリーズ6物件を計上した不動産開発事業が13,606百万円(前期比93.5%増)となり、増収増益に寄与した。完成在庫はゼロ。不動産再生事業は前期の反動減で減収となった。
2028年3月期の売上高300億円を目標とする中期経営計画を見据えた仕入れが順調に進んだ結果、棚卸資産は前期末18.7%増の22,972百万円となり、2026年3月期までの仕入れ目標をほぼクリアした。
2024年3月期は売上高19,531百万円(前期比0.8%増)、営業利益1,298百万円(同33.8%減)、経常利益1,010百万円(同39.0%減)、純利益696百万円(同39.8%減)を見込む。森社長は「前期は想定を上回る数値。今期は通常の利益率に戻る」と説明した。引き渡し予定のマンション3物件の契約が順調に進み、「WHARF」も5物件のうち4物件を契約完了している。
今期の新規取り組みとして、7月に合同モデルルーム「SUNWOOD LOUNGE新宿」を新宿アイランドに開業し、京王電鉄と初の共同事業マンション「サンウッド浜田山」(47戸)のモデルルームを設置する。また、高級賃貸マンションニーズの高まりを受け、都心5区を中心とする東京23区に特化した不動産ファンド事業を立ち上げる予定。森氏は「ファンド事業は中期経営計画に盛り込んでいないが、京王電鉄、グループの京王不動産、リビタとのシナジー効果を発揮し、マンション事業、WHARF事業に続く新しい事業の柱に育てていく」と語った。
◇ ◆ ◇
2021年11月に新たに京王電鉄グループと資本提携(京王電鉄の持株比率は21.19%)した同社の今後に注目している。
同社は1997年の創業から2012年まで森ビルと資本提携し、渋谷区や港区などで高額マンションを供給してきた。2012年に資本提携を解消し、2013年にタカラレーベンと資本提携したとき、都心部の高額マンションを得意とする同社と、郊外・地方が中心のタカラレーベンとの企業理念・社風は異なり、シナジー効果を発揮するのは容易ではないと記者は見ていた。
一方、京王電鉄は京王不動産、リビタの不動産会社を擁するが、自社開発マンションはほとんど行っていない。2022年3月期の不動産事業売上高は472億円で、グループ全体売上高の15.8%を占めるが、他の首都圏電鉄会社7社と比較すると、売上高、売上比率は下位からそれぞれ3番目だ。沿線のポテンシャルの高さを考えると圧倒的に負けていると記者は考えている。
そして今回、マンションなど不動産事業の強化が急務の京王電鉄と京王沿線での供給事例も多いサンウッドの提携は、双方に大きなメリットがあるはずで、決算説明会に出席したのも、森社長が何を話すか聞きたかったからだ。
その成果はあった。京王との共同事業第一弾となる「サンウッド浜田山」の現地は見ていないが、おおよその見当はつく。立地条件は申し分ない。同社は「価格は未定」としているが、記者は坪600万円超もありうるとみている。森社長は「井の頭沿線のナンバーワンを目指す。飛躍的に高まった資金調達能力を生かし、今後も積極的に京王さんとの共同事業を進めていく」と語った。
決算説明会で驚いたことがある。一つは、6月の株主総会で京王電鉄取締役常務執行役員開発事業本部長・南佳孝氏と、近鉄不動産元副社長で現顧問の田中孝昭氏が社外取締役にそれぞれ就任する予定であることだ。南氏は京王電鉄との関係強化が目的だから当然として、森社長は田中氏を「業界の重鎮。大手デベロッパーとの共同事業に欠かせない方」と紹介した。
田中氏の名前をどこかで聞いたような気がしたので調べてみたら、近鉄不動産が主導した「王子飛鳥山ザ・ファーストタワー&レジデンス」と「BLUE HARBOR TOWER みなとみらい」の記事がヒットした。田中氏が関西弁でまくし立てたのを思い出す。記者は樋口武男氏、矢野龍氏、和田勇氏を関西弁の〝雄弁御三家〟と呼ぶが、お三方はそれぞれ第一線を退かれた。田中氏はその後継者だ。絶滅危惧にある関西弁を東京で復活させてくれることを期待したい。
もう一つは、今後の物件サマリだ。分譲マンションは「浜田山W2」「信濃町W6」「西荻窪W5」「尾久W7」「吉祥寺W3」「東府中W6」「反町W8」「荻窪W7」「大森W4」「横浜・中華街W5」「六本木W5」「府中W6」「国立W5」とある。いずれも10~30億円の中規模だが、このままの市況が続けば、ほっといても売れるようなものばかりだ。
「浜田山」のモデルルーム次第ではサンウッド旋風を巻き起こす可能性があると見た。参考までに2017年分譲の「サンウッド青山」の記事を添付する。
サンウッド 創業20周年の集大成 「青山」の全面ヘリンボーン床に驚愕(2017/12/8)
近鉄不・三井レジ 商・ホテル・住の複合「みなとみらい」 坪単価は400万円前後(2015/6/9)
近鉄不・京阪電鉄不・長谷工コーポ 実利を取る戦法か「王子飛鳥山」(2014/4/23)
〝予約の取れない重松〟にしようではないか HIRAMEKIの最近のプロジェクト
九州八重洲「大野城市プロジェクト(ジョイナス大野城駅前)」
ポラスグループの「NOEN KASHIWA SAKASAI-ノエン柏 逆井-」の記事で、似たようなものとして、HIRAMEKI・重松剛氏が設計を担当した「レーベンプラッツ大泉学園」を紹介した。重松氏に「ほかにこのような事例はありませんか」と聞いたら、重松氏は「他にもこのようなプロジェクトはあったと記憶していますが、どこの何という詳細までは把握しておりません」ということだった。ただ、建ぺい率30%、容積率50%の事例は「別荘ならともかく、戸建て分譲ではないのではないか」と話した。
重松氏にHIRAMEKIが担当したプロジェクトについても聞いた。「都内では数少なく、小規模プロジェクトばかりがメインです」との回答で、次の4つのプロジェクトを紹介してもらった。素晴らしい物件ばかりだ。写真も添付してもらったので、以下に紹介する。
セット「大鋸(だいぎり)プロジェクト」(2020年)
室町時代から大鋸引(おがびき)という職人たちが多く住んでいたことから名づけられた藤沢市大鋸」の荒れた山を再生する全4戸のプロジェクト。道路側から見て階段をジグザクにして出来るだけ階段を見せないように、樹木で覆いかぶさるようにしてもともとあった山のように再生しつつ住宅地化したもの。売主・セット社自慢の「作品」とか。
九州八重洲「春日原(かすがばる)プロジェクト」(2015年)
九州福岡の4戸のプロジェクト。庭を中央に集約し、緑を中心に暮らすような住宅地。
九州八重洲「大野城市プロジェクト(ジョイナス大野城駅前)」(2020年)
福岡県大野城市中央2丁目に位置する全6戸。土地面積は128㎡、延べ床面積110㎡の木造2階建て。「未来のオトナへ繋ぐ住宅群」をコンセプトに、駐車場+門扉は共有、全体敷地の中央に幅13m、奥行き7.5m、R7.5mの「園庭」を設置、建物は園庭が眺められるよう扇状に配置。南側に走る鉄道線路の騒音対策として「反射角」を利用して建物配置・形状を変え、シンボルツリー、外観ライトアップ、木材の多用、維持管理が楽な常緑低木の選定、駐車スペースの一部歩道空間化なども図っている。
日本エスコン「杉並プロジェクト(Park JADE 杉並和泉)(2015年)
方南町駅から徒歩8分、杉並区和泉四丁目に位置する全18区画。敷地及び延床が30坪程度の典型的な都市型戸建開発だが、緑で境界線を曖昧化し連続感のある空間を生みだす「路庭」、4戸1組の外部空間を作りだす配棟計画とし、神田川へ繋がるパスを設け、住民同士のコミュニケーションが発生する仕掛けを施しているのが特徴。太陽光発電により神田川の地下水を汲み上げ、路庭に沿って水のせせらぎも設けている。この年のグッドデザイン賞、キッズデザイン賞を受賞。
◇ ◆ ◇
重松氏には、ランドスケープデザインが最高に素晴らしかった2016年分譲の総合地所「ルネテラス船橋」の見学取材で話を聞いている。敷地の緑化や外構にも力を入れており、芝生より安価でメンテフリーの「ダイカンドラ」を建物の際まで敷き詰めた住戸に驚愕したのを今でも思い出す。
デベロッパー、ハウスメーカーの担当者の皆さん、「都内では数少ない」という重松氏に注文が殺到し、業界の〝レストランひらまつ〟になってもらおうではないか。いい加減、ぺんぺん草も生えない分譲戸建てをやめようではないか。
重松氏(2016年撮影)
初めて見た30%・50%×200㎡の分譲戸建て まるで別荘 ポラス「柏 逆井」(2023/5/2)