RBA OFFICIAL
 

外観.jpg
TOTOPA都立明治公園店」(提供:東京建物、以下、上段は全て同社提供)

東京建物と東京建物リゾートは315日、都市型スパブランド「TOTOPA(トトパ)」の第一号店「TOTOPA都立明治公園店」を322日(金)に開業すると発表した。開業を前にした15日、施設を報道陣に公開した。素晴らしい施設だ。

TOTOPA」は、同社グループが1999年以降展開してきたスーパー銭湯「おふろの王様」の運営ノウハウを生かした新ブランド。男性フロア(3階)では、3つのサウナ空間と水深約160cmの水風呂を含む2つの水風呂、3つの休憩スペースなど、18(=3×2×3)通りの「ととのい」体験を提供する。

女性フロア(2階)では、館内着を着用して楽しむ薬草スチームの蒸し湯と、脱衣で楽しむ本格的な「ととのい」体験のためのサウナをそれぞれ用意。また、パウダースペースには女優のMEGUMIさん選定のコスメを用意する。

施設は、都営大江戸線国立競技場駅から徒歩9分 、JR千駄ヶ谷駅から徒歩10分、新宿区霞ヶ丘町5丁目のPark-PFI(公募設置管理制度)を活用した東京都初の「都立明治公園」(約61,342㎡)に位置するA2階、32階。女性フロア約461㎡と、3階男性フロア約434㎡(男女入れ替えの可能籟もあり)。営業時間は11時~23時(22時最終受付)。利用時間は1時間まで:1,980円/人(税抜)、1時間~3時間まで:3,980円/人(税抜)、3時間~:5,980円/人(税抜)。年中無休。施設内は酒類はNGだが、禁酒ではない(持ち込み可能)。

また、同社を代表企業とする4社のコンソーシアムは昨年8月、Park-PFIを活用した福岡市の「明治公園整備・管理運営事業」(公園面積:約3,572㎡)にも選定されている。藤本壮介氏が総合デザイン監修を行い、2025年春から順次供用開始する予定。

男性浴室.jpg
男性浴室(女性用は少し狭い)

深水風呂.jpg
深水風呂(深さ163cm)

浴室ラウンジ.jpg
浴室ラウンジ

左室.jpg
左室(左脳を刺激するそうだ)

ナ室.jpg
ナ室(みんなで楽しむなごみのサウナ)

呼吸ルーム.jpg
呼吸ルーム(サウナや虫部目に入る前にストレッチプログラムなどを行う空間)

すちこ.jpg
すちこ

パウダースペース.jpg
ロッカールーム&パウダースペース

        ◆     ◇

 小生は風呂が大嫌いで、いつもカラスの行水で済ませる。真冬でも湯船に浸かることはほとんどない。旅館などの浴場では、貧相な裸身を晒すのは恥ずかしいし、小生の体重の2倍も3倍もある赤銅色のトドのような醜い中年男など見たくもないのだが、一度だけ混浴を経験したことがある。

 誰もいないのを幸いに、大きな浴場で泳いでいたら、どかどかと土偶のような中年のおばさん数人が前も隠さず闖入してきたときは、心臓がひっくり返るような衝撃を受けた。体を洗わず慌てて逃げだした。背後からキャキャキャの罵声やら嘲笑の声を浴びせられたのを思い出す。

 東建のスタッフの方に聞いたら、このわが国独自の文化は公衆浴場法によって原則禁止されているとのことだった。同法第三条には「営業者は、公衆浴場について、換気、採光、照明、保温及び清潔その他入浴者の衛生及び風紀に必要な措置を講じなければならない。2 前項の措置の基準については、都道府県が条例で、これを定める」とある。つまり混浴は「風紀」に抵触するのだろう。

都の条例では「善良の風俗を害するおそれのある文書、絵画、写真、物品、広告又は装飾設備を置き、掲げ、又は設けないこと」「七歳以上の男女を混浴させないこと」「従業員に、風紀を乱すおそれのある服装をさせないこと。従業員に、風紀を乱すおそれのある行為を行わせないこと」などと細かに規制されている。

一方では、「個室を設け、当該個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業(前号に該当する営業を除く。) 専ら性的好奇心をそそるため衣服を脱いだ人の姿態を見せる興行」(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)は許可されている。

この問題には深入りしないが、小生が子どもの頃は小学6年生まで男女一緒になって上半身裸で身体検査を受けた。胸が膨らみ始めた女の子は何人かいた。いま、帚木蓬生の「インターセックス」を読んでいるのだが、内性器や外性器が未分化の人はかなりいるようだ。戦前の「男女七歳にして席を同じゅうせず」が復活したのか。

脱線はこのくらいにして、元に戻る。小生は上述したように風呂嫌いだが、風呂好きにはたまらない施設であろうことは理解できる。

洗い場は完全個室ブース・シャワー式で、隣の人の(逆もそうだが)シャワーシャンプーの飛沫が気になり、誰が使ったか分からない風呂桶(椅子)と洗面器の座るタイプではないのがいい。手首にロッカーのカギをつけなければならないのは何とかならないのか。見つかったからよかったものの、小生はなくして大慌てしたことがある。

女性用の「すちこ(蒸し湯)」は、大分県・別府温泉にヒントを得た岩盤浴の一種で、室温を60度に設定しているのは一般的なサウナと変わらないが、湿度は通常の40%から60%にしているので、女性は5分も入っていられないほど汗だくになるという。また、寝転ぶこともできる床の下には大分県の草(何の草だったか、グリーングラスのようなものか)が敷き詰められており、美肌・薬草の効果があるそうだ。どれだけ減量効果があるかは分からないそうだが、これは人気を呼びそうだ。

小生にはまったく意味不明だが、女性用のコスメが利用できるパウダールームは美しかった。3種の調光が可能で、化粧品(水)は何種類も用意されており、最高級の「ReFa(リファ)」が備え付けられていた。何人もの女性が横並びになって隣の人など気にせず、矯めつ眇めつする光景は圧巻だろう。ただ、いろんな化粧品の香りが交じり合ったらどうなるのだろう。「すちこ」状態にはならないのか。

もう一つ、とてもいいと思ったのは、神宮外苑を走る人が多いのに着目したのか、ランナーズロッカーやシャワーブースなども設けられていたことだ。同社によると、スパのブラスαのサービス提供が目的のようだが、独自に1,000円くらいで利用できるようにすることも検討しているという。反響も多いようだ。

注文もある。この施設に限ったことではないが、浴槽から、ラウンジから外の景色が眺められるようにしたらもっと素晴らしい。「風紀」を乱すからできないのだろうが、坂茂氏はシースルーのトイレを造って話題になったではないか。同じ技術をつかえばできるのではないか。

スパとは関係ないのだが、同社は「羽鳥湖高原レジーナの森」を平成28年、楽天グループのエンゼルに売却したことを聞いた。芝桜が見事な春に一泊したこともある。大浴場が素晴らしく、コテージもよかった。もったいない。

IMG_5535.jpg
洗い場

IMG_5551.jpg IMG_5552.jpg
パウダースペース(左)と「ReFa(リファ)」

過去の記憶蘇る 東京都初のPark-PFI活用した「都立明治公園」完成(2023/11/4

人も犬も〝非日常〟を楽しむ 東京建物「いぬのきもちコテージ」(2009/4/20

東京建物「羽鳥湖高原レジーナの森」をリニューアルオープン(2007/4/21

カテゴリ: 2023年度

湾岸人口.png
.pdf 

2011311日の東日本大震災から明日で13年が経過する。警察庁の発表によると、令和6年2月末現在、死者は19,500人、行方不明者は2,520人となっており、復興庁によると、関連死は令和51231日現在、3,802人となっている。令和511月現在、避難者は当初の47万人から3.0万人に、応急仮設住宅などの入居は最大12.4万戸(31.6万人)から602 (958)にそれぞれ減少している。平成23年度から令和7年度までの15年間で32.9兆円程度の国費が投じられる予定。

 別表の通り、震災被害を受けた太平洋岸に位置する岩手、宮城、福島、茨城県の39市町村の令和621日現在の人口をまとめた。

前年同月比で人口が増加したのは宮城県名取市のみで、仙台市も0.1%ながら減少に転じたほか、被災29市町村全体では0.8%減少した。4県平均の減少率0.9%を1ポイント下回ったのは4県全体の人口約800万人のうち13.7%を占める仙台市が微減にとどまったため。被災地全体の減少率は県全体の減少率を上回っている。

 被災前人口との比較では、人口が増加しているのは仙台市、名取市、利府町の3市町のみ。女川町が39.8%減となっているほか岩手県の岩泉町、山田町、宮城県の南三陸町、山元町が30%以上減少している。仙台市を除く38市町村の減少率は13.8%に達しており、4県全体の減少率7.7%より6.1ポイント上回っている。

カテゴリ: 2023年度

IMG_5431.jpg
「カフェ百日紅」

 午後3時過ぎ、阪急阪神不動産「ジオ板橋大山」のモデルルーム見学取材の帰りだった。場所は東武東上線下板橋駅近く。一服しようと飲食店などを探したが見つからず、地元の人に聞いてやっと「カフェ百日紅」にたどり着いた。「タバコを吸いたいのですが…」と声を掛けたら、店主と思しき和服姿の女性が「どうぞ。ワンドリンクの注文をお願いしますが」と承諾してくれた。小さなテーブルが4脚、満席でも6人くらいしか入れない5坪くらいの店だ。

 勧められた椅子に座ろうとしたら、だしぬけに壁全面に貼られた毛筆書きの「失禁」「終夜」「昏睡」「降臨」「白夜の天使」「異食」「吐き気」「夢幻」「騎虎」…おどろおどろしいカードが目に飛び込んできた。1枚660円の値も付いていた。

 小生は最近、難しい漢字を覚えようと「魑魅魍魎」「憂鬱」「跳梁跋扈」「顰蹙」「躊躇」「慇懃」「饒舌」「暗澹」「韜晦」「畢竟」「朦朧」「麤」「甕」「龜」「竈」「麒麟」「鼠」「孑孑」「檸檬」「躑躅」「玉蜀黍」「蒟蒻」などをノートに書き出しているのだが、さすがに「失禁」「吐き気」「異食」にはどきりとした。〝また来ますと〟一瞬考えたが、たばこの誘惑が勝った。

 ビールを頼もうとしたら、ビールはなし。メニュー表にあったウイスキーのロックを一杯注文した。「モンキーショルダーMonkey Shoulder」だった。700円。記者は以前、「バランタイン BALLANTINE」を4日に1本空けていたが、このスコッチも苦みが強くとても美味しい。

 一服吸い、店内を眺めた。壁、棚、床の至る所にカードや装飾品、小物、写真などが展示されており、本棚には聞いたことがない作家の小説、漫画、R指定のエロ本(失礼)が並べられており、自由に読めるようになっていた。いま20年ぶりに読んでいる小説「存在に耐えられない軽さ」(集英社文庫)と同じ、訳の分からない世界が広がっていた。

 物は試しだ。「白夜の天使」のような読みたい本はないか探したら、帚木蓬生「アフリカの瞳」(講談社、2004年刊)と「インターセックス」(集英社、2008年刊)が床の箱に無造作に置かれていた。値段は発刊当時のまま、それぞれ1,900円。

 帚木氏は、昨年亡くなられた作家・加賀乙彦氏と同じ精神科医で好きな作家の一人だが、最近作は読んでおらず、安かったら購入しようと聞いたら、「いいえ、この箱に入っている本はお好きな方に差し上げています」とのことだった。これ幸いと頂くことにした。ただでは申し訳ないので、もう1杯ウイスキーを頼み、タイトルと帯に惹かれて「作家逃亡飯」(星海社、2020年刊)も頂くことにしたので、さらにもう1杯。〆て3杯2,100円(お勘定したら割り引いてもらった)。Amazonと比べればはるかに安い。

 記事化することを申し入れたら、「結構ですが、店は3月いっぱいで閉めます。母の看病がありまして…」とのことで、3月7日(木)~3月25日(日)まで「百日紅夜市」と題するフィナーレ―イベントを行っている。多くの作家の作品が展示されるようだ。

IMG_5422.jpg IMG_5424.jpg

◇        ◆     ◇

 「作家逃亡飯」は、フライさんによるイラスト漫画が表紙で、歌番組に登場するような若い女性が描かれており、赤と黒の帯には白抜き文字で「星海社激怒。『こんな同人誌許さん!商業化してやる!』と挑発的な文字が踊り、前書きのあとのカルロ・ゼン著「作家軽飯」冒頭には「お願いごと 端的に結論から参りましょう。編集者並びに出版社の皆様、お読みになるのは此処までにしましょう。皆様がこの拙い同人誌から得られる情報に有益なものなど何一つありません」「煮詰まったルサンチマン、どうしようもない退廃、怠惰の極みである本著なぞ賢明にして聡明なる方々へどうしてご覧いただく必要があるでしょうか」「一般の皆様、このように拙い代物であることをご承知おきくださいませ。万が一にも編集者の方々に内容を問われた場合は、『読むだけ時間の無駄だと思います』と強く仰ってください」(15~16ページ)とある。そして、津田彷徨氏のあとがきには「太田が悪い。」と締めくくっている。太田とは、出版した星海社の太田克史氏のことのようだ。

 強烈なブラックユーモア、アイロニーではあるが、最近の出版界の凋落ぶりを見ると、嘘を書くのが商売のお二人の作家は〝本当〟のことを言っているのではないかと思えてくる。

 現実社会が狂っているからだ。〝ナチからの解放〟のために他国を侵略し、庶民が払う税金の10倍以上の金を受け取りながら、基本中の基本である「CAT=Compliance(コンプライアンス)・Accountability(アカウンタビリティ)・Traceability(トレーサビリティ)」を果たさない政治家がおり、その政治家に投票する愚民(投票行動を起こさない小生はクズ同然か)が多数派を占めているではないか。「存在に耐えられない軽さ」を読んでいるのは、1968年のソ連軍によるチェコスロヴァキア侵攻が舞台になっているからだ。

 嘘が嘘でなくなり、虚と実があいまいになり、白と黒の垣根も取り払われ、生と死の意味も分からなくなる-生きづらい世の中になってきた。

IMG_5425.jpg IMG_5426.jpg

 

カテゴリ: 2023年度

外観.jpg
「(仮称)軽井沢駅北口東側遊休地活用事業計画」

 三菱地所は3月6日、軽井沢駅北口直結の「(仮称)軽井沢駅北口東側遊休地活用事業計画」の新築工事を3月1日に着手したと発表した。

 しなの鉄道が所有し、1997年の北陸新幹線開業により廃線となった旧信越本線の線路跡地を活用するもので、敷地を同社が賃借して軽井沢駅自由通路直結の商業施設を開発、アクアイグニス、カルチュア・コンビニエンス・クラブが温浴施設や宿泊施設、飲食・物販店舗等を運営する。開業は2026年春の予定。

 物件は、JR北陸新幹線・しなの鉄道軽井沢駅から徒歩1分、長野県北佐久郡軽井沢町に位置する敷地面積約13,000㎡、鉄骨造・平屋建て・2階建て6棟の延床面積約5,400㎡。用途は温浴施設・宿泊施設、飲食・物販店舗など。

 

カテゴリ: 2023年度

締結式の様子.jpg
竹内氏(左)と芳井氏

 大和ハウス工業と大東建託は3月5日、両社グループが管理する賃貸住宅約189万戸の平時・有事の協業・情報共有を推進し、地域の防災力向上と入居者の安心・安全の暮らしを提供する「災害における連携及び支援協定」を締結したと発表した。

 協定の対象となるのは、大和リビングか管理する約65万戸、大東建託パートナーズが管理する約124万戸、合計189万戸で、平時では全国の賃貸住宅入居者のほか、オーナー、地域住民を対象としてAEDの講習や水災・火災のVR体験、消火訓練などの防災イベントを共同開催するなど、有事を想定した情報連携により、地域防災力の強化を図る。

 震度6弱以上の地震の発生もしくは警戒レベル5「特別警報」が発令される有事の際には、両社グループで協議のうえ、共同対策本部を設置。被災地域の状況調査結果や空室情報、被災者支援策を共有することで、被害状況を把握し早期の災害復興に役立てるとともに、被災地域の賃貸住宅入居者の仮住まいを融通し合あう。

 あわせて、大和ハウスグループのロイヤルホームセンターとも連携を図り、災害用備蓄品や復旧用資機材を必要に応じて供給し、大和ハウス工業の全国9か所の工場に移動式貯水タンクを設置し、有事の際、被災地域の賃貸住宅入居者に生活用水を配給する。

 会見に臨んだ大和ハウス工業代表取締役社長・芳井敬一氏は協定締結の経緯について、「2018年の岡山水害の現場を見て、当社が施行した建物は何ともないのに隣は大きな被害を受けていたりその逆もあったりした。同じ被害であるのに、このような差が出るのか、1日も速く賃貸住宅の平和をとりもどせないかずっと考えてきた。そんな折、昨年、三井住友海上さんから大東建託さんの取り組みを紹介された。大東建託さんとはお会いしたいと考えていたので、竹内(社長)さんにお会いし、非常に素晴らしい、ぜひ進めましょうと即決していただいたのがスタート。(管理戸数)業界トップの大東建託さんと組むことは世の中に大きなインパクトを与える。いかに被災者の方々の笑顔を取り戻すかが協定締結の主旨。このような輪を広めていただきたい。トップ同士の決断が大事だということも分かった」などと話した。

 大東建託代表取締役社長執行役員・竹内啓氏は、「当社グループはこれまで個社で平時の防災イベント・訓練を実施してきており、有事には被災地の状況調査、そしてオーナー、入居者様の支援策に取り組んできた。(昨年には)『大東建託グループ防災ビジョン2030』を策定した。ビジョンは『地域の“もしも”に寄り添う』という理念のもと、地域防災を平時と有事の両輪で支援し、当社グループ全体で災害時の地域の早期復興に寄与していくことを目指すもの。今回の連携によって、安心・安全により効果的な活動ができると考えている。両者の基盤をいかし、密に連携し迅速な対応を行っていく。地域全体の防災力の向上、地域住民の命と財産を守ることに少しでも貢献できればと考えている」と語った。

◇        ◆     ◇

 両社から共同会見の案内を受け取ったときは、双方は敵ではないにしろ、オーナーを奪い合う競合関係にあるはずで、協定締結の意図は何なのかよく分からなかった。

 しかし、この日(5日)、芳井氏と竹内氏の話を聞いて、疑問は氷解した。考えてみれば、公助はあてにできないことをみんな知っている。ましてや防災・防犯は個社の力でできるものではない。日ごろから地域全体の防災・防犯の取り組みを行っていくことが大事なことも分かっている。問題はだれがやるかだ。

 それを両社は決断した。両社グループが管理する賃貸住宅は、全国の賃貸住宅約1,500万戸の12~13%にしか過ぎないと考えることもできるが、大変な数字だ。いかにこの種の取り組みが困難であるかの例を示す。。

 マンションの管理計画が一定の基準を満たしていれば地方公共団体が認定する管理計画認定制度が令和4年度からスタートした。令和5年12月末時点で認定実績は378件(国土交通省が把握しているもの)しかない。全国のマンションストック約694万戸(2022年末時点)に対する戸数割合は示されていないが、0.3%程度と思われる。制度は遅々として進んでいない。

 これとは別に、マンション管理状況を★5つで評価するマンション管理業協会のマンション適正管理評価制度がある。2023年12月末現在、登録件数は2,624件となっている。同協会は令和6年度末までに1万件の登録を目指している。

この1万件がどのような数字かについて、同協会副理事長・小佐野台氏(日本ハウズイング代表取締役社長CEO)は2023年6月の総会後の懇親会で「一言だけ皆さんにお願いしたい。2年後のマンション適正管理評価件数を1万戸にするには、会員354社の管理件数の1割で達成できます。ちょうど1割、たった1割で達成できます」と呼び掛けた。これまた容易な数字ではない。

 賃貸住宅は両社が管理しているから可能なのだろうが、芳井氏も話したようにトップダウンで即決即断したのが決め手ではないか。仕掛け人の芳井社長は元ラガーマンだが、最前線の押し合いへし合いのFWではなかった。確かBKで司令塔的な役割を果たしていたはずだ。今回の協定も賃貸市場を冷静に俯瞰し決断したはずだ。ラグビーは試合が終わればノーサイド。お互いが健闘を称えあう-そのようなスポーツマンシップが生かされたと記者は理解した。ボトムアップだったら途中で頓挫していた可能性が高い。両社長の決断に天晴れ!座布団5枚!

◇        ◆     ◇

 会見で、大東建託は全国58拠点で18の自治体と防災協定を締結していることを知った。災害時に飲食料、防寒具などの災害支援物資の提供、帰宅困難者の一時的な受け入れ、災害時にガス・電力・水などのインフラの提供などだ。

 マンションを避難ビルに指定したり、施設を帰宅困難者に提供したりする事例は聞いているが、これほど多くの拠点で自治体と協定を結んでいる企業は他にあるのか。

IMG_5343.jpg
生活用水用の1000リットル入り貯水タンクを前に、左から大東建託取締役常務執行役員・守義浩氏、竹内氏、芳井氏、大和ハウス工業取締役常務執行役員 集合住宅事業本部長・出倉和人氏(大東建託は能登半島地震でも二缶セットで10回現地に運んだという)

 

カテゴリ: 2023年度

 大和ハウス工業は3月4日、タイ王国で物流施設や工場の開発などを展開する最大手のWHA Corporation PCLが共同出資するベトナムの現地法人と、首都ハノイから東へ約40kmのフンイエン省「ミンクアン工業団地」内のマルチテナント型物流施設「DPL Vietnam Minh Quang」(平屋建て敷地面積約70,109㎡、延床面積約42,330㎡)を着工したと発表した。同社のベトナム北部での初の開発物件。

 同社は、「第7次中期経営計画(2022年4月~2027年3月)」で、海外事業は2026年度には売上高1兆円、営業利益1,000億円を目指すとしており、ASEAN・東アジアでは売上高500億円を計画している。

◇        ◆     ◇

 三井不動産は3月4日、米国子会社Mitsui Fudosan America, Inc.を通じ米国を代表する不動産開発・投資会社であるTishman Speyerと共同事業契約を 締結し、2事業へ出資したと発表した。同社初の米国物流施設事業に参画するもので、出資上限額は5億ドル(約680億円)。

 2事業は、カリフォルニア州オレンジ郡アーヴァイン市に位置する「(仮称)Great Park Parcel 1」(延床面積約55,300㎡)と、カリフォルニア州サンフランシスコ市の既存物流倉庫を取得し、リニューアルする「(仮称)2225 Jerrold」。

 

カテゴリ: 2023年度

Screenshot 2024-03-02 at 17-38-40 n2024030101416.pdf.png
対象エリアは青の部分

 スリー・ワイ・エム・ディ・オールコーポレーションをはじめとした30者(個人含む)は3月1日、新大阪駅南口エリア(本地区)のまちづくりを検討する組織「新大阪駅南口エリアまちづくり協議会」設立し、運営推進パートナーの野村不動産、計画作成パートナーの東急不動産、西松建設、丸紅都市開発とともに本地区の活性化、街の価値や魅力の向上などの取り組みを行っていくと発表した。本地区の対象エリアは約13ha。

 協議会設立の背景・経緯として「本地区において2023年より民間主導の勉強会等を開催し、地権者の皆様と意見交換等を行ってきました。その中で、本地区では駅の乗降客数が多いにもかかわらず、駅から外への人の流れが少ないことや、築40 年の老朽化した建物が増加しているなど多くの課題を抱えていることを共有し、将来のまちづくりビジョンなどを組織として検討する」ためとしている。

 今後、勉強会の実施、知名度向上のための各種イベント、行政機関などとの連絡、協議、調整、「まちづくりビジョン」や「地区整備方針」などの策定を行っていく。

◇      ◆     ◇

 新大阪駅は、取材のために数えきれないくらい乗り降りしたが、駅構内から外に出た記憶はない。どのような街か全然知らない。「うめきた」に負けない街づくりはできないのか。参加企業は「うめきた」にも加わっていない東京の会社ばかりというのはなぜか。13haといえば「HARUMI FLAG」と同じだ。

カテゴリ: 2023年度

IMG_5310.jpg
更科氏(左)と坂田氏

 大和ハウス工業は3月1日、物流「2024 年問題」への取り組みと「業界動向勉強会<物流施設事業篇>」をテーマにした業界動向勉強会を開催。同社執行役員東京本店長建築事業本部営業統括部長・更科雅俊氏が同社の物流事業の24年問題の取り組みを説明し、ゲストのHacobu取締役COO・坂田優氏は物流業界の現状と今後の方向性などについて話した。

 更科氏は、2007年に事業参入してから物流施設(Dプロジェクト)の開発実績は海外を含み384棟、開発延床面積約1,335haを開発。投資計画も「第7次中期経営計画(2022年4月~2027年3月)」での計画投資額約1兆1,660億円に対し、2年間で約半分のペースで堅調に投資を行っていると説明。2024年度(86期)竣工予定物件は20件で、①災害対策➁ダイバーシティ➂環境配慮➃地域交流-に力を入れていると話した。

 2024年4月から施行される年960時間の時間外労働規制に対しては、フレームワークス、アッカ・インターナショナル、Hacobuなどとの連携を強化し、ドライバーの時間外労働の上限規制・割増賃金の引き上げ・作業員の絶対数不足に取り組んでいくとした。

 坂田氏は、わが国の企業間物流が買換えているアナログ体質を紹介し、法律改正により事業者に対する荷待ちへの罰則を設けるなど、政策への対応、デジタル技術の活用が求められると話した。

 同社が展開するMOVE Berth利用事業者は約4年間で2,715か所から15,855か所へ約6倍、利用ドライバー数は117寝518人から546,300人へ約5倍増加したと報告。①どのような荷物が②どこからどこへ③どのような手段で運ばれているかの情報を蓄積し、活用することが重要と語った。

◇        ◆     ◇

 大手ハスウメーカーやデベロッパーが24年問題に対応しているであろうことは容易に想像できる。しかし、今回の勉強会では、坂田氏も指摘したように、何年も前から指摘されているアナログ体質が物流業界では解消されていないことがクローズアップされた。29兆円にも達する企業間物流が電話やファックスが中心というのは信じられない。約3兆円の宅配便の再配達の課題は解消されつつあるではないか。

 ほんの一握りの大手企業の取り組みが末端まで浸透させるためには何が欠けているのかを知りたかったが、勉強会では分からなかった。

課題山積アナログの物流業界荷待ち・再配達は有料化すべきだが…大和ハウス勉強会(2024/3/2)

 


 

 

カテゴリ: 2023年度

 国土交通省は2月29日、令和6年1月の新設住宅着工戸数をまとめ発表。総戸数は58,849戸(前年同月比7.5%減、8か月連続の減少)で、内訳は持家14,805戸(同11.0%減、26か月連続の減少)、貸家24,681戸(同2.7%増、6か月ぶりの増加)、分譲住宅19,039戸(同16.1%減、先月の増加から再びの減少)。分譲住宅の内訳はマンション9,020戸(同24.8%減、先月の増加から再びの減少)、一戸建住宅9,867戸(同6.7%減、15か月連続の減少)。

 首都圏マンションは4,442戸(前年同月比33.1%減)、都県別では東京都3,287戸(同19.7%減)、神奈川県459戸(同66.8%減)、埼玉県574戸(同22.0%減)、千葉県122戸(同71.6%減)。

 

カテゴリ: 2023年度

 物流業界がアナログ業界であることは以前から聞いていた。この日(3月1日)の物流業界をテーマにした大和ハウス工業「業界動向勉強会」で配布されたHacobuの資料にもその後進性が示されていた。国土交通省は「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」を改正し、荷待ちルールなどを守らない事業者の罰則強化を図るようだが、魑魅魍魎の世界をどう変えるのか。

 資料によると、物流は企業間物流と宅配便ラストワンマイル(宅配便をこう定義づけているようだ)に分けられ、前者の市場が29兆2,750億円、後者が2兆9,250億円。圧倒的多数を企業間物流が占める。関係する業種はメーカー、メーカー倉庫、流通事業者、小売事業者で、それぞれfirst、second、third の運送業者と電話・ファックスでやり取りするのが主流になっている。

 このアナログ的なコミュニケーションが様々な問題・課題を抱えているようで、国土交通省が調査した「荷待ち時間の発生有無に対する認識」では、「発生している」は荷主出荷(n:296)が24.0%、荷主入荷(n:297)が20.6%、実運送(n:1022)が73.4%、元請(n:599)が54.5%となっている。認識に大きなずれがあることが分かる。これは男女間、恋人同士でもよくあることだ。捨てられるときは、永遠に待っても返事すらないのが普通だ。

 もう少し詳しく知ろうと、元データである国交省のアンケート「R3年度トラック輸送状況の実態調査結果」を調べた。対象者は運送委託者(荷主)が5,200社、運送事業者が5,000社で、回答数は前者が666 社(回収率12.8%)、後者が42社(同19.7%)だ。運送委託者(荷主)の概要は、従業員数50人以下が79.7%、資本金5,000万円以下が86.2%となっており、中小・零細企業が大多数を占めている。

 記者はこの回収率の低さに驚いた。どこかの調査機関のアンケートなら分からないではないが、市場改善を図るための国の調査であるにもかかわらずこの低率だ。回答しないその理由を聞きたい。

 調査は86ページに及ぶもので全てを紹介することはできないが、問題が山積していることが分かる。例えば「荷主等に対して燃料費上昇分を不当に据え置くことが勧告・公表の対象となることについて質問をしたところ、実運送では67.6%、元請では71.1%が『知っている』との回答であったが、実運送では32.4%、元請では28.9%が『知らない』と回答」とある。また、「標準貨物自動車運送約款について質問をしたところ、『知っている』が49.5%であったが、『改正された約款の存在も内容も知らない』と答えた荷主企業が49.8%で半数を占めていた」「『トラック運送業における下請・荷主適正取引推進ガイドライン』について質問したところ、ガイドラインの存在について知っているとの回答が半数以上の52.7%を占めたが、『ガイドラインの存在も内容も知らない』との回答が47.3%もあった」とある。

 「標準運送約款」「ガイドライン」がどのようなものか、記者はもちろん知らないが、マンション標準管理規約を知らない管理組合が多いのと一緒。守るべきことを知らなければ業務改善ができるわけがない。

 今後の課題や国に対する要望も多数寄せられている。以下に列挙する。

・納入日や納入時間は、納入先の要望によるため断ることが出来ない。納入先によっては待機場所が無く、待ち時間が多くなる場合がある。

・ 零細企業では、運賃や条件等の要望が受け入れてもらえない現状があり、運送事業者から言われるまま対応するしかない。

・ 送料無料を廃止しなければ、運送業界の待遇は改善されないと思う。物流にはコストがかかっていることを認識させる必要がある。

・送料無料に対し、運賃は運送事業者に支払うものであるという認識が浸透してほしい。

・荷物を運んでもらえないと困るので、運送事業者の言いなりになっている。顧客と運送事業者との板挟みになることも少なくない。

・繁忙期では明らかにドライバーの疲労がみられる。物流量に対してドライバーが不足している。

・出荷先・納品先との相互理解が必要であると考える。

・荷主への罰則がないと、協力を求めても改善は実現しない。

・荷受・荷卸先、倉庫等関係者が多く、荷主との交渉では(労働時間は)改善されない。

・時間帯指定が多く、保有車両の削減ができない。

・最低運賃が設定されない限り、低運賃の事業者と競争となる。

・休息をとるための駐車スペースがないため、沿道の空きスペース活用してトラック専用の駐車場の整備をして欲しい。

◇        ◆     ◇

 課題・要望はみんなよく理解できる。テレビショッピングで当たり前となっている「送料無料」もそうだ。あらゆるサービスがそうであるように「無料」はありえない。小生はAmazonで書籍をよく購入するが、本体(書籍)より送料のほうが高いものも少なくない。いまネットで調べたら、「モデルハウス先着10,000組へQUOカードなど゜20,000円進呈」とあったが、「進呈」は正確ではない。「裏金」処理のように収支があいまいにされることもあると思うが、普通は商品に価格転嫁されているはずだから、これは消費者負担だ。わが住宅・不動産業界も多くの問題を抱えている。

 「荷待ち」「再配達」の有料化について。宅配便は、送り主と受け手が契約を結んでおらず、送り主が一方的に送るケースも少なくないので、再配達料金を受け手が支払う義務はないような気もするが、企業間物流は、きちんと契約を書面化(データ化)すれば、荷主-配送業者-受け手それぞれの責任の所在が明確になり、契約を履行しない事業者が荷待ち、再配達料を負担するのが当然だと思うが…。

電話・FAXが主流 アナログ物流業界 24年問題に対応できるのか 大和ハウス勉強会(2024/3/2)

待ったなしアナログ一掃建設DX取り組み加速セーフィー 360°カメラ提供開始(2024/1/30)

宅配ドライバーの負担軽減へ Amazon&三井レジリース「置き配」で協業(2023/3/3)

「物流」に「AI」ドライバーに「愛」大和ハウス&日立物流コンテスト説明会(2022/12/1)

アナログの世界に楔 IoT活用で物流市場を変える Hacobu多業種と連携し課題解決構想(2019/9/22)

 

カテゴリ: 2023年度
 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン