UDS 「旅館」文化をデザイン・サービスに生かす「ONSEN RYOKAN 由縁 新宿」開業
「ONSEN RYOKAN 由縁 新宿」外観
UDSは4月23日、日本特有の「旅館」のよさを取り込んだホテル「ONSEN RYOKAN 由縁 新宿」を5月8日に開業するのに先立ちメディアに公開した。
「旅館」には日本のおもてなし文化が凝縮されていることから、客室の間取りやデザイン、サービスなどを現在の宿泊者ニーズや環境に合わせて編集した旅館。インバウンドも含めた観光マーケットにおける新たな選択肢を提案している。
エントランスには数寄屋門や四季を感じる庭園、手水鉢など伝統的な和のしつらえを取り入れ、ヒノキやスギなどの白木の無垢材、和紙、漆を模した天板などの「和」の素材で、「陰影」を意識した日本らしい繊細な表現を随所に施している。最上階の18階大浴場には、箱根「小田急 山のホテル」の自家温泉「芦ノ湖温泉 つつじの湯」から運ぶ温泉露天風呂を設けている。
客室は、雪見窓を多用し視線を低く集め空間全体に広がりを感じさせるデザインとし、コンパクトな空間でも快適に過ごせる工夫を凝らしている。
レストラン「夏下冬上」には、福岡県産の全長8mのイチョウの木をカウンターに採用。その上部は網代(あじろ)編みとし、テーブル上部にはスギの無垢材を渡すなど本物の素材を使用しているのが特徴。
物件は、東京メトロ副都心線・東京メトロ丸ノ内線新宿三丁目駅から徒歩7分、新宿区新宿5丁目に位置する敷地面積約1,034㎡、18階建て延床面積約5,521㎡全193室。客室は12㎡から51㎡までの7タイプ。宿泊料金はセミダブル(12㎡)9,000円から。開発事業主は住協。所有者はJA三井リース建物。企画・設計・運営はUDS。
チェックインカウンター
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同社が運営する銀座の「MUJI HOTEL GINZA」を先に見学した際、デザインがいいと思ったので、今回のホテルも見学させていただいた。
「旅館」は嫌いではないが、何しろサービスがひどい。年をとってからほとんど利用しなくなった。朝早く叩き起こされ、強制的に食事を取らされ、10時には叩き出される(ずいぶん改善されているはずだが)。
このホテルは「旅館」のデザインなどいいところを取り込んでいる。客室は狭いが、これは最近の宿泊客のニーズの反映なのだろう。
レストラン「夏下冬上」がいい。8mもあるイチョウのカウンターなど最近はほとんど見なくなった。値段は200万円くらいかそれ以上するのではないか。ほんものの網代編みもいい。
陰影もテーマの一つのようで、デザインを担当した同社マネージャー・瓜生一雄氏によると、谷崎潤一郎の「陰翳礼賛」は建築家、デザイナーの必読書だそうだ。三井不動産の「日本橋」のホテルには昔の体裁のその本が客室に置いてあった。
レストラン「夏下冬上」
サスティナビリティ特化 東建 ベンチャーコミュニティ「City Lab Ventures」始動
左から自然電力 風力・水力・バイオマス事業部長・花吉哲芝氏、ボーダレス・ジャパン副社長・鈴木雅剛氏、ウィファブリック社長・福屋剛氏、東京建物専務執行役員・福居賢悟氏、TBM代表取締役CEO・山﨑敦義氏、ユーグレナ特命担当室テクニカルディレクター・村花宏史氏、DG TAKANO代表取締役・高野雅彰氏
東京建物は4月19日、同社が運営するコワーキング・スペースとカンファレンススペースからなる「City Lab TOKYO(シティラボ東京)」で、サスティナビリティ特化型ベンチャー6 社を発起人とするベンチャーコミュニティ「City Lab Ventures(シティラボ ベンチャーズ)」を始動したと発表した。
発起人は、サステイナビリティへの貢献を事業の中核としているTBM、ウィファブリック、ユーグレナ、ボーダレス・ジャパン、DG TAKANO、自然電力の6社。4月19日から「City Lab TOKYO」を拠点に活動を展開していく。
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先月は三菱地所の「アクセラレータープログラムDemo Day」を取材した。訳の分からないことばかりだったが、それだけにワクワクさせられ、とても楽しい時間を過ごさせてもらった。
今回は、他の取材もあり場所を間違ったため、途中からの取材となった。会場に着いたときはユーグレナの村花氏のプレゼンだった。この会社は創業当時から注目していたが、わずか15年で東証に上場し、売上高は100億円を超える。ミドリムシ(ユーグレナ)をバイオに活用するなどという奇想天外な発想が面白い。
次のボーダレス・ジャパンの田口氏はいきなりプロジェクターに「資本主義」の文字を大写しした。マルクス・ガブリエル氏のような難解な哲学論でもぶつのかと思ったら、資本主義社会が抱える様々な社会課題を解決するという強いメッセージだった。田口氏はまた「当社は23の事業を展開しており、1つ紹介するのに5分はかかる」と話したように、ぶっ通しで2時間くらい話してもらってもよかった。
DG TAKANOの高野氏の話がまた面白かった。1000分の2の誤差しか許されない父親の金属加工技術を生かし、洗浄力を高めながら95%の節水を実現したノズルを開発したというではないか。バーチャル・ウォーターという考えがある。節水ノズルとバーチャル・ウォーターを融合させたら革命が起きる。記者が投資家だったらこの会社に投資する。
自然電力の花吉氏の話も説得力があった。地産地消の100%再生可能エネルギー事業を展開しており、社員約200人のうち40~50人は外国人の多国籍企業だという。こういう会社が社会を変えるのだろう。座布団3枚!
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東建へ。いま企業はESG、SDGsの取り組みに懸命だ。今回の「City Lab Ventures」はサスティナビリティに特化しているのがいい。三菱地所は先にスタートアップ企業やベンチャーキャピタルへの出資額が100億円に達したと発表した。負けないよう頑張ってほしい。
一つ問題もある。配布された資料に「CLT」があった。えっと思った。「CLT」は「クロス・ラミネーティッド・ティンバー(Cross-Laminated-Timber)」しか知らなかった。同社はそうではなく「City Lab TOKYO」の略だそうだ。今後の活動次第だが、国家事業の木造の「CLT」に飲み込まれるのは必至だ。存在感を示すためにもどんどん情報を発信してほしい。(先の三菱地所のイベントは酒のふるまいもあった)
無限の可能性秘める 三菱地所「アクセラレータープログラムDemo Day」(2019/3/26)
〝安心が途切れないシームレスな住宅〟 旭化成ホームズ 要介護向けサ高住に参入
旭化成ホームズは4月19日、「要介護期」を対象としたサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)「Village(ヴィラージュ)リーシュ」シリーズを立ち上げたと発表した。これまで展開してきた健常期からフレイル(虚弱)期のシニア向け賃貸住宅「へーベルVillage(ヴィレッジ)」シリーズが好調に推移しており、健康や家族の状況に応じて〝安心が途切れないシームレスな住宅〟を提供するのが狙い。
シニア・中高層事業推進本部長・田辺弘之氏は、「2005年に始めた自立型の『へーベルVillage』は35棟464戸を運営しており、入居率は95%超に達している。他にないコミュニティラウンジ、相談室などの共用部を備えているのが評価されている。2025年度までに500棟6,000戸に拡大する。『Village リーシュ』は、健康や家族の状況に応じて〝安心が途切れないシームレスな住宅〟を提供できるよう訪問看護・居宅介護支援事業所を併設する」などと話した。
第一号の「Village リーシュ上石神井」は、西武新宿線上石神井駅から徒歩9分の3階建て53戸。専用面積は18.90~21.68㎡。18.99㎡の月額料金は254,000円(家賃130,000円、共益費39,000円、生活支援サービス費35,000円、食費50,000円)。事業主は4月1日付で設立した同社100%出資の子会社「リーシュライフケア」。運営委託はやさしい手。今年10月に開業する。
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自立型シニア向け賃貸「ヘーベルVillage」が好調に推移していることから、介護付きサ高住への参入は予想されたことだ。
記者も見学した「ヘーベルVillage」は、田辺氏も話したように特別な設備仕様が施されているわけではないが、爆発的に増やしているのは、他の賃貸住宅やサ高住にはないニーズにしっかり応えているからだろう。
逆に言えば、圧倒的多数派の自立型高齢者が入居をためらう玉石混交のサ高住のあり方が問われている。国交省のサ高住に関する有識者による懇談会がどのような方向を示すか注目したいし、〝入居を拒否しない〟セーフティネット住宅についても〝貧困ビジネス〟にならないよう注視する必要がある。
サ高住は老人福祉法の「施設」の受け皿・代替えになるか 国交省・懇談会(2019/3/11)
ニッチからコアへ 旭化成ホームズ シニア向け賃貸「ヘーベルVillage」受注加速(2018/8/24)
料理をもっと楽しく 栗原はるみプロデュース「harumi's kitchen」トクラス発売
可動式ワゴンについて説明する栗原氏(栗原さんはそんな服を着て調理されるのか)
トクラスは4月17日、料理家・栗原はるみ氏がプロデュースした「harumi's kitchen」発売記念イベントを開催した。同社とゆとりの空間、東邦ガスの3社が〝料理をもっと楽しく〟をコンセプトに共同開発した商品で、キャスター付きのワークトップワゴン、奥行き70cmの人造大理石カウンター、好みのものが置ける棚などが特徴。4月22日から発売する。
イベントに出席した栗原氏は「わたしは家を6回住み替え、キッチンは11回模様替えしました。一日中いますから使い勝手がいいだけではだめで、シンプルなのも問題がある。両方を兼ね備えた楽しく過ごせるようにすることが大切」「白と紺が好きで、今日の衣服も白と紺。キッチン収納扉もややブルー掛った紺にしましたし、カウンターはグレーに近い人造大理石ですが、汚れが目立たないからいいかも。子ども用の椅子も用意しました」などと話した。
企画担当の東邦ガスリベナスショールーム所長・久米むなみ氏は「当社はリフォームを強化する取り組みを行っており、食を支えるキッチンが重要だと考え、平成20年からCMなどに出ていただいている栗原さんに相談したらとんとん拍子に企画が進みました」と開発の経緯について話した。
開発担当のトクラス経営企画部商品事業戦略マネージャー・緒方彰氏は「当社は旧ヤマハ時代、キッチンメーカーとして1976年にわが国で初めて人造大理石カウンターキッチンを発売した実績がある。今回の新商品をプロモーションしたら97%の方にワゴンを欲しいと仰っていただいた」と語った。
また、ユーザーに情報を発信するコミュニティ組織「harumi's kitchen ambassador」について、同部副部長・水野宇多子氏は「女性の管理職比率、働き方改革では時間を単位に目標を掲げますが、会社でも家庭でも『もっと楽しむ』という『仕事の質』を上げることが人生を豊かにし、世の中の発展にもつながる」「まだまだ古い体質の残るこの建築業界で女性がリーダーシップをとる面白いWAVEになれば」などと説明した。
メインキッチンの標準仕様は幅255cm×奥行70cm×高さ85cm。価格は1,598,000円(税別)。食洗器付きは1,731,600円(税別)。
左から緒方氏、水野氏、久米氏、栗原氏
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女房を亡くしたために約10年間、小さい子ども2人を育て、少なくとも食事だけはほぼ完ぺきにこなしたと思っている記者は、この日のイベントを楽しみにしていた。栗原氏がいかに楽しく料理をしているかはよく伝わってきた。何事も楽しくなければつまらない。揚げ物は苦手だったが、鰹節を削って利尻昆布でタイの潮汁を作ってごらんなさい。アップルパイもよくつくった。
しかし、その一方で、調理が楽しくならない現実をずっと考え続けた。マンションも戸建ても普通の家庭が持てるのは20坪から30坪の住宅だ。キッチンの広さも3畳大から広くても5畳大あるかどうかだ。
油がパチパチと音を立て、湯が沸騰しているキッチンは戦場と化す。記者の経験からいって広さ3畳大では夫婦や子どもと一緒に調理するのは難しい。危ない。そこにはゴミ箱があり古新聞のラックがあり、ビールケースなどもある。ワゴンは便利だが、すぐ物置になる。住宅のなかでもっとも冷たいのはキッチンではないか。
なので、「夫婦と子ども1~2人の理想のキッチンスペースはどれくらいか」と聞いたら、緒方氏は「キッチン・ダイニング合わせて18畳大を想定している」と回答した。この広さを確保できる住宅に住む家庭はどれくらいあるだろうか。多くはリビングスペースを含めてこれくらいではないか。
もう一つ、記者は「楽しく」料理するためには、中華は絶対ガスがいいし、安全性を考えるとIHもまた必須ではないか考えるので、「ハイブリッドの商品はないか」と聞いたら、「(需要がないためか)15年前にやめた」(緒方氏)ということだった。ハイブリッドはそれだけ什器が必要だが、あおりがうまくいったせいでチャーハンやホイコーローがプロ並みにできたときの嬉しさは何にも代え難い。失敗したらしたで〝今度こそ成功するぞ〟という闘志も湧く。
さらに追加。最近のキッチンカウンターは水返しがなくなった。あっても床が水浸しになることがあるのになくして大丈夫か。解せない。
言いたいことはほかにもあるがこの辺でやめておく。「料理を楽しく」というアプローチはとてもいいと思う。住設メーカーもデベロッパーもハウスメーカーもそのようなキッチンの開発をどんどん進めてほしい。
「この棚は奥行きがないから好みのものが置けるんです。大きいと鍋などを置いてしまう」(なるほど、これはいい)
可動式ワゴン(記者も物販店で買って重宝したが、そのうちに物置になった)
わが国初 既存ビル含め非常時も電力安定供給 プラントは住宅300戸分 三井不・東ガス
左から内田氏、菰田氏(日本橋室町三井タワーで)
三井不動産と東京ガスは4月15日、日本初となる既存ビルを含む日本橋室町周辺地域に電気と熱を安定供給する「日本橋スマートエネルギープロジェクト」を開始したと発表した。
プロジェクトは、平常時はもちろん、非常時でもエネルギー供給が可能なエネルギーレジリエンス向上や省エネ・省CO2を達成するエコフレンドリーな街づくりを実現し、災害に強く、国際競争力の高い街・日本橋を目指すもの。
共同で設立した三井不動産TGスマートエナジー(持ち株比率三井70%、東ガス30%)を通じ、このほど竣工した「日本橋室町三井タワー」内の「日本橋エネルギーセンター」にプラントを設置して稼働させた。
都市ガスを活用した分散型電源である大型CGS(ガスコジェネレーションシステム)と系統東京電力による電源の多重化を実現し、日本初の既存ビルを含めた周辺地域へ電力を供給し、CGSが生む発電時の排熱とCGSが生む発電時の廃熱と高効率熱源設備を活用した熱供給の効率化を図り、供給エリアのCO2を約30%削減する。広域停電時にも建物のBCP(Business Continuity Plan)に必要な電気の供給(年間ピークの50%)が可能。
両社は今後、豊洲(2020年竣工予定)など他エリアでも連携し、国内外に向けて発信できる「スマートエネルギー事業」の先進モデルを構築していく。
会見に臨んだ三井不動産・菰田正信社長は、「これまでも『柏の葉』『日本橋再生』『ミッドタウン』などのプロジェクトでもスマートシティの取り組みを進めてきたが、今回、東京ガスさんと共同で、災害時でも安定的に電力を供給し、地球環境へも貢献し、都市防災力を強化し環境性能の向上につなげる。経年優化の街づくりにもSGDsの理念にもかなうもの」と挨拶した。
また、東京ガス・内田高史社長は、「今回のプロジェクトに採用する当社の中圧ガス導管は、阪神・淡路や東日本大震災でもほとんど影響を受けなかった。地域の既存ビルにも電力を供給するのは当社も初の試みだが、エネルギーレジリエンス向上と省エネ・省CO2の取り組みを今後も強化していく」と話した。
「日本橋室町三井タワー」は、区域面積約2.1haの「日本橋室町三丁目地区第一種市街地再開発事業」によって建設された地上26階建て・地下3階建て延べ床面積約168,000㎡。3月38日に竣工した。テナントは全て決まっている。
プラントは約8,000㎡。供給範囲は日本橋室町・本町地区の一部約150,000m、延床面積約1,000,000m²。予定電力供給能力は一般家庭約14,000戸に供給するのと同じ約4.3万kW。冷熱は約110GJ/h、温熱は約60GJ/h。ガスエンジンは7,800kW×3台。廃熱ボイラは4t/h×3台。
供給エリア
CGS(ガスコジェネレーションシステム)プラント
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1時間近くにわたって難しい説明を受けた。記者はちんぷんかんぷん。しかし、原理そのものは、愛を与え奪い分かち合う、時には自家発電も行う男女関係とよく似ている。中学の理科で学んだのと一緒。熱を与えたり奪ったり、冷ましたりするもので、水力やら火力、天然ガス、原子力、再生可能エネルギーを電力に変換することに変わりはないと理解した。
それより記者が驚いたのはプラント設備の大きさだ。地下3階の心臓部といえるCGSと地下二階の最新のICT技術を導入した中央監視室などプラント全体の面積は約8,000㎡もある。
ただ広いだけではない。地下3階は天井高が約8mだから、一般的なマンションのリビング天井高の3層分だ。つまり8,000㎡を容積に換算すると約24,000㎡にもなり、これを一般的な専有面積70㎡のマンションに置き換えると300戸近い大規模マンションになる。
プラントはもちろん容積不算入で、国土交通省、経済産業省、東京都からの補助も受けている。東京ガス・内田社長は「補助金がなければ、既存のビルのオーナーが(持ち出しが増えるので)納得したかどうか」と話した。
どうして太陽光や地熱やら再生可能エネルギーも採用しなかったのかという疑問も湧くが、関係者によると検討はしたが、安定的に電力を供給することを優先して決断したという。
もう一つ、よく分かったようでわからないのがプラントの災害対策。「壺型潜水艦構造」により、地震などの揺れの影響が小さい地階3回に設置し、しかも浸水を防ぐためにプラント全体をすっぽりと包み、出入り口には22トンもの水圧に耐えられる厚さ約30センチの放水扉を施しているという。どうして福島原発にはなかったのか。
「日本橋室町三井タワー」
中央監視室
東急電鉄・東急不 渋谷エリア最高峰「渋谷スクランブルスクエア 第Ⅰ期」11月に開業
「渋谷スクランブルスクエア」完成予想図
東京急行電鉄と東急不動産は4月10日、渋谷エリアの再開発プロジェクトの目玉である「渋谷スクランブルスクエア 第Ⅰ期(東棟)」、「渋谷フクラス」内の「東急プラザ渋谷」、「渋谷駅桜丘口地区再開発」に関する最新情報を公表した。
「渋谷スクランブルスクエア」は、東京急行電鉄、東日本旅客鉄道、東京地下鉄が事業主で、デザインアーキテクトは日建設計、隈研吾建築都市設計事務所、SANAA事務所。運営会社は渋谷スクランブルスクエア(東京急行電鉄、東日本旅客鉄道、東京地下鉄の3社共同出資)。設計は渋谷駅周辺整備計画共同企業体(日建設計、東急設計コンサルタント、JR東日本建築設計、メトロ開発)。開業は第I期(東棟)が2019年11月、第II期(中央棟・西棟)が2027年度。
「第I期」は渋谷エリアでは最高峰となる高さ約230mの地下7階、地上47階建て延べ床面積は約181,000㎡。14階・45階~屋上の展望施設「SHIBUYA SKY(渋谷スカイ)」、17階~45階のオフィス、15階の産業交流施設「SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)」、地下2階~14階の商業施設などから構成される。2019年11月に開業する。
「SHIBUYA SKY」は、世界的な注目を集めるクリエイティブ集団・ライゾマティクスを起用。日本最大級の屋上展望空間(約2,500㎡)など既存の展望施設の概念を超える新しい体験を提供する。
渋谷最大級の広さを誇るオフィスの総賃貸面積は約73,000㎡で、全27フロアのリーシングが完了している。
「SHIBUYA QWS」は、多様な人が交差・交流し、社会価値につながる種をうみだす会員制の施設。2019年7月から会員募集を開始する。
施設の開業に伴い、エレベーターやエスカレーターにより地下やデッキから地上に人々を誘導する歩行者動線「アーバン・コア」を整備する。
「渋谷フクラス」は18階建て延べ床面積約58,970㎡。「東急プラザ渋谷」は2~8階、17、18階部分。コンセプトは〝本物・本質的・普遍的なものの良さ〟を大切にする意味を込めた「MELLOW LIFE(メロウ ライフ)」で、商環境デザイナーにGLAMOROUS(グラマラス)の森田恭通氏を起用。2019年12月に開業する。
2023年度竣工予定の「渋谷駅桜丘口地区」は59棟の解体工事が始まった。敷地面積約16,970㎡、延床面積約254,830㎡で、2023年度に竣工する予定。
両社は渋谷エリアで8つの再開発プロジェクトに関わっており、コンセプトに「エンタテイメントシティSHIBUYA」を掲げ、世界を牽引する新しいビジネスやカルチャーを発信するステージの実現を目指している。
現在の空撮写真
2027年ころの完成予想図
三井不動産 最寄り駅も新国立競技場も徒歩1分のホテル「神宮外苑」11月開業
「三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア」
三井不動産と三井不動産ホテルマネジメントは4月9日、新国立競技場に近接する「三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア」を2019年11月22日(金)に開業し、本日4月9日から予約を開始したと発表した。
同ホテルは、都営大江戸線国立競技場駅から徒歩1分、JR中央・総武線千駄ヶ谷駅から徒歩5分の13階建て362室。客室は平均約25㎡。宿泊料金は22㎡で1.8万円、24.7㎡のツインで2万円。の現在建設中の新国立競技場からは徒歩1分。主な設備はレストラン・ベーカリーショップ(1 階)、 大浴場・フィットネスジム・ラウンジ(2 階)、ダイアログ・イン・ザ・ダーク(2 階)、屋上テラス(13 階)など。
「三井ガーデンホテルズ」のプレミアシリーズとして全国で5施設目、都内では3施設目となる。「Japanese New Vintage」をデザインコンセプトとし、木や石などの自然素材を外観や客室・共用スペース内の壁面などに多用しているほか、自然をモチーフにしたアート作品を館内の随所に配し、周辺の緑やビル群の眺望を楽しめるよう全客室にバルコニーを設置した。
1階には約200㎡の自然光が差し込むロビーを、2 階には大浴場のほかフィットネスジムや多目的室を設置。建物内のテナント区画(2 階)には「暗闇のソーシャルエンターテイメント」としてダイアログ・イン・ザ・ダークの常設会場が出店を予定している。
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記者はRBA野球大会の取材で神宮外苑軟式野球場によく行ったが、困ったのは取材を終えてシャワーを浴びることができるホテルが全く周辺になかったことだ。
宿泊料金が高いか安いかよくわからないが、地方からの野球・スポーツ観戦には絶好の立地だ。もちろんアスリートも利用できる。いつも国立競技場駅を利用しているのに、このホテルは全く気が付かなかった。
〝アホぬかせ、東京目指しとんとちゃうねん〟淀屋橋odona前で「桜SAKEフェスタ」
「桜SAKEフェスタ」
三井不動産は4月5日、御堂筋まちづくりネットワークとともに御堂筋の活性化を目指す「御堂筋天国」プロジェクトを開始。プロジェクト第1弾として淀屋橋odona前で「桜SAKEフェスタ」を開催した。
プロジェクト名には、御堂筋を自由に新しく、親しみやすいエリアにしようという思いが込められている。今後はマルシェの開催だけでなく、大阪が世界中から注目される2025年までに産・官・学など、様々なステークホルダーを巻き込みながら、2037年には御堂筋エリアが新たな観光地として認知を獲得し、御堂筋に人が集まり、にぎわいのあるエリアとなることを目指していく。
プロジェクト説明会で三井不動産常務執行役員関西支社長・弘中聡氏は、「10年前にビルがオープンし、マルシェをスタートさせ、2年前からテナントの農林中金さんにも協力していただいている。さらに御堂筋を賑やかにするため、大阪市の協力も頂き今回のプロジェクトを立ち上げた。少なくとも年に4回はこのように夜も楽しめるイベントを開催し、点から線へ、線から面へ拡大していく」と挨拶した。
続いて登壇した農林中央金庫常務執行役員・松永諭氏は、「近畿管内の食と農林水産のステークホルダーの協力を頂き、消費拡大と御堂筋の賑わいの増大に貢献したい」と語った。
また、御堂筋まちづくりネットワーク事務局長(竹中工務店)・髙梨雄二郎氏は、「2001年、25社でスタートしたネットワークはテナントも含め49社に増えた。エリアマネジメントも導入して品格ある街づくりを進めたい」と話した。
大阪市都市計画局長・高橋徹氏は、「流失企業増加に歯止めをかけようと2014年度に従来の容積率1,000%を1,300%に、高さ規制50mを100mに緩和する地区計画を定めた。今後も2025年の大阪・関西万博、2037年の御堂筋100周年記念へと一体的に取り組んでいく」と述べた。
この日は、淀屋橋odona前に3mの本物の桜が飾られ、オープンスペースでは灘・伏見の日本酒や大阪のワイン、近江牛や犬鳴豚、 さくらびんちょうなどつまみも提供され、オフィスワーカーなどでにぎわった。
三井不動産と農林中央金庫は、淀屋橋odona前で過去8回マルシェを開催し、平均2,000人の来場を生み、御堂筋のにぎわいを創出してきた。2001年に設立された沿道のビルオーナーやテナント企業等で構成する御堂筋まちづくりネットワークは、活力あるビジネスエリアとして発展し続けていくことを目指して活動している。「大阪都市魅力創造戦略」でも、世界に発信するクオリティの高いにぎわい空間の形成に向けた歩行者空間の充実が位置づけられている。
1937年5月に開通した梅田-難波を南北軸で結ぶ御堂筋は幅員43.6m、総延長約4キロ。沿道には800本以上の銀杏が植えられている。
左から弘中氏、松永氏、高梨氏、高橋氏
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市営地下鉄御堂筋線淀屋橋駅に直結している2008年竣工の淀屋橋odonaに着いて分かったことが一つ。他のビルはほとんど歩道一杯に建てられているのに、このビルの柱は歩道から約4mセットバックされていたことだ。道路に面した建物の幅は50mはあった。つまり、4×50=200㎡(柱から壁までの距離を合わせるとこの倍くらいか)の空間が今回のイベント会場にもなったわけだ。
公開空地が確保されたのは、2004年(淀屋橋地区)に都市再生特別地区が指定され、高さ制限が緩和されたためのようだ。その後、市は2014年に地区計画を定めた。
「odona」はどのような意味か地元の人に聞いたら「大人も驚く」という意味だという。大阪弁ではないそうだ。
右端の酒は「月のケイ」ではなく「月のカツラ」です(念のため)。弘中氏のお勧めは菊政宗の「百黙」
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少しはイベントに貢献しようと、屋台に並んだ酒造・ワインメーカーの酒を1杯100円から飲み比べ3杯500円まで全て飲んだ。10杯くらいか。
酒ばっかり飲んだもんだから、勤務帰りの女性グループからは酒と共に「水飲んだほうがええよ」と水もおごってもらった。小生が「大阪は東京の半分」などと挑発したら、次のような小気味いい大阪弁が返ってきた。
「何、ぬかしとんねん、アホ、ボケ、アホヌカセ。大阪は東京目指しとんとちゃうねん。オンリーワンや」
この方たちは「何、ぬかしとんねん、アホ、ボケ、アホヌカセ…」とは別のグループ
「新梅田シティ」の里山
安藤忠雄氏の発案で建設された「希望の壁」
51階建て全871戸免震タワー「グランドメゾン新梅田タワーTHE CLUB RESIDENCE」建設現場(坪単価は350万円くらい予想したが、もっと高くなるか)
東急不HDグループ 「こま武蔵台」団地再生で東大と協働
「こま武蔵台」after(左)とbefore
東急不動産ホールディングス、東急不動産R&Dセンター、東京大学は4月4日、東急不動産が昭和52年(1977年)に供給した埼玉県日高市の「こま武蔵台」団地で、東京大学の学生が発案した空き家のリノベーションプランを実施するなど団地再生のサポートを共同で行ったと発表した。
同団地は、西武池袋・秩父線高麗駅圏の総面積約93ha、総戸数約2,210戸の大型団地。少子高齢化の進行により居住者の約半数が高齢者となり、空き家が増加する社会課題を抱えている。
この問題を解決するため、R&Dセンターと東大工学部都市工学科の学生が中心となり、空き家となったタウンハウスを若い世代向けにリノベーションを実施。東急ホームズが施工を担当した。
同大学工学部都市工学科准教授・樋野公宏氏は、「この一軒をきっかけにこま武蔵台全体の活性化につながることを狙っています」とコメント。R&Dセンターはこの取り組みをテストケースとし、若い世代を呼び込み、安心で快適な多世代交流や団地活性化をサポートしていくとしている。
住友林業が施工し、新素材研究所が設計した清春芸術村ゲストハウス「和心」公開
「和心」
住友林業は4月6日、同社が施工を担当した山梨県北杜市の清春芸術村ゲストハウス「和心」の内覧会を開催した。南アルプスを望む複合施設「清春芸術村」に隣接するもので、甲斐駒ヶ岳はまだ雪をかぶり、県の指定天然記念物「清春のサクラ」も一、二分咲きだったが、春に目覚めたのかウグイスは「妙なるかな、ホーホケキョ、ケキョケキョ」と大声で見学者を歓迎した。
「和心」は、現代美術作家の杉本博司氏と建築家の榊田倫之氏が率いる新素材研究所が設計し、同社が施工を担当。新素材研究所が表現したい空間の実現のため、同社オリジナルのビッグフレーム(BF)構法と鉄骨造の混構造を初めて採用。銅板葺きの大屋根を支えるとともに、角に柱を配置せず南側と東側の2方向に広がる大開口を実現した。
また、大屋根により生み出された広い軒先空間が建物と庭を繋ぎ、自然を楽しむことのできる空間を演出。素材に秋田杉(建具など)、十和田石・ヒバ(浴室)、玄昌石(土間)、庭には滝根石を用いているのが特徴。
物件は、山梨県北杜市長坂町中丸に位置する敷地面積約800㎡、延床面積約160㎡。木造(BF構法)+S造。竣工は2018年6月10日。宿泊は、清春芸術村に寄付を行っているサポート会員限定で1泊50万円。
清春芸術村は、創立者である吉井長三が、小林秀雄、今日出海、白洲正子、東山魁夷夫妻、谷口吉郎、正田英三郎らと桜の季節に当地を訪ね、その美しさに魅せられて1980年に設立された。「アトリエ清春荘」は小林秀雄が命名した。
敷地内にはシャガールやスーチンをはじめとする巨匠がアトリエ兼住居として利用したものと同じ設計の「ラ・リューシュ」、ルオー、梅原龍三郎、岸田劉生、バーナード・リーチなどの作品を収めた「清春白樺美術館」、安藤忠雄氏が設計した「光の美術館」、ルオーが制作したステンドグラスをはめ込んだ「ルオー礼拝堂」、梅原龍三郎のアトリエを移築した「梅原龍三郎アトリエ」、「白樺図書館」などがある。
杉本氏
左から吉井氏、杉本氏、榊田氏
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言葉などいらない。とくと写真をご覧いただきたい。杉本氏はニュース・リリースに一文を寄せ、次のように書き出している。「和風住宅とはなにか、それは庭と共にあることではないかと思う。古代、源氏物語絵巻に描かれる寝殿造りにも、壺と呼ばれる美しい庭があり、その部屋に住まう美しい人をも指していた」と。そして「現代は敗戦の痛手からか、日本人は庭を持つ気概を無くしてしまった。相続の度に家屋は縮小し、庭にはプレハブが嵌められ、畳は捨てられた。和風はかろうじて高級旅館にその名残を留めるだけとなってしまった」と。
建物の四囲を庇が囲っており、母屋は3分の1くらいに抑えられていた。軒裏には「もうこんな柾目の材料は手に入らない。最後かもしれない」と杉本氏が言った秋田杉の柾目の板が貼られていた。
「庭」と言えば龍安寺をすぐ思い浮かべるが、この「和心」の庭も美しい。庭には凹と凸型の滝根石が鎮座していた。杉本氏によると、福島原発から30キロの山奥で「岩盤から数億年の眠りを覚まされて剥がされた数千個の石達の中から、特別な気配を送ってくる二つの石に邂逅した」とのことで、その形から杉本氏は「風神雷神関係であり、夫婦和合そのもの」と形容した。男石は重さ5~6トンくらいで、「女石(逆にすると石女)の窪みからは汲めども尽きぬ清水が滾々(原文は懇々)と湧き出る」という。
杉本氏は、「建物はよくできたので、江戸後期の真言僧の篇額『和心』をプレゼントした」と語り、「(清春芸術村オーナーの)吉井さん(仁実氏)のお子さんは6カ月。女石で水浴びさせよう」と冗談を飛ばした。
小生は伊勢しかないかいづの干物を「夫婦和合の干物」と呼ぶが、確かに「和心」の二つの石はぴったりと重なりあっていたと思われるほどの対をなしていた。小生と同年代と思われる山梨の女性に「どっちが上ですかね」と尋ねたら、意味は通じたのか通じなかったのか、「もちろん女が上」と返ってきた。
手前が「男石」
手前が「女石」
伊勢のかいづの干物
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過去2度、三菱地所の「空と土プロジェクト」を取材しており、北杜市を訪ねるのは3回目だった。甲斐駒ヶ岳は雪をかぶり、梢を揺さぶる風の音にたじろいだが、清澄なウグイスのさえずりに春を感じた。
清春芸術村は1日かけても飽きない施設だろう。24畳大のアトリエがそのまま再現された「梅原龍三郎アトリエ」には梅原が好きだった紅殻色の京壁とモデルを横たえさせたであろう床の間があり、邸の近くには小林秀雄邸にあった枝垂れサクラが植えられていた。ルオーの制作した唯一のステンドグラスはいったいいくらの値がつくだろうかと想像するだけで楽しくなった。
藤森照信氏が設計した茶室「徹」とセザールのオブジェ「親指」だけは理解できなかった。
「光の美術館」
「ラ・リューシュ」
「梅原龍三郎アトリエ」
紅殻色の京壁(左)とパレット
ルオーが制作したステンドグラス(左)と岡本太郎のオブジェ
茶室「徹」(左)セザールのオブジェ「親指」
レストランのウッド製テーブル(光と影が戯れていた)