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 農林水産省は5月31日、平成30年の外国資本による森林買収の事例について調査結果をまとめ発表。全国で30件、373haの事例が報告され、このほか国内の外資系企業と思われる買収も43件、359haあり、合計で732haに上っている。

 規模が大きいものでは、いずれもアメリカの法人が太陽光発電を目的に兵庫県姫路市で118ha、上郡町で140haを買収しており、宮城県大崎市でも太陽光発電目的の米国法人による2haの買収が報告されている。太陽光発電目的では平成29年もいわき市で90haの米国資本による買収事例が報告されている。

 平成18年から30年の累計は223件、2,076haで、市町村別では北海道倶知安町の62件、318ha、砂川市の1件、292ha。

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 記者の記憶では、目的が不明なものはたくさんあるが、太陽光発電目的として森林買収が報告された事例は平成29年の1件に続き続きこれで4件目だ。

 太陽光発電は森林資源や生態系への影響も大きいはずで、この種の買収に注視する必要があるのではないか。昨日も「新木場」の記事で書いたが、118haは皇居より広い。2,076haは港区とほぼ同じだ。

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 住友林業は531日、タイで初めての戸建て分譲事業を現地の大手不動産開発と合弁で約1,400戸開発すると発表した。

 住友林業100%子会社のSumitomo Forestry Singapore Ltd.SFS社)とタイの不動産開発会社Property Perfect PCLPF社)との共同事業で、首都バンコクの中心部まで車で約1時間の約52haの敷地に5つのプロジェクトを開発。延べ床面積110230㎡/戸、平均分譲価格162USドル/戸で20196月に開発を開始、2027年の完成を目指す。総投資額は約190百万USドル。出資比率はSFS社が49%、PF社が51%。

 同社は年間、米国で10,000戸、豪州で3,000戸の販売体制の確立を目指しており、アジア圏は米豪に次ぐ第3のエリアとして事業領域の拡大を図っている。

 

 

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 国土交通省は5月31日、消費者が安心して購入できる物件に国が商標登録をしたロゴマークの使用を認める「安心R住宅」制度の運用を平成30年4月1日に開始して1年が経過したことを受け、登録事業者9団体を対象にした調査結果を発表。平成31年3月末時点で1,266件の既存住宅が「安心R住宅」として流通(広告に標章が使用されるなど)していることが確認できたとしている。

 内訳はリフォーム済が1,139件(一戸建て349件、共同住宅等790件)、リフォーム提案127件(一戸建て118件、共同住宅等9件)。

 

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「(仮称)三井リビングラボ新木場」完成予想図

 首都圏のJR・私鉄の全駅名を諳んずることができるギネス級の才能の持ち主のアンビシャスの安倍徹夫社長にははるかに及ばないが、小生はマンションや戸建てが分譲された駅はほとんど〝踏破〟している。数えてはいないが、400駅くらいはあるはずだ。

 東京メトロ有楽町線・りんかい線・JR京葉線3駅が利用できる、東京駅から約10分の新木場駅は2度ほど、マンション見学ではなかったが降り立ったことがある。1度目は20年前、貯木場を見るためだった。沢山の丸太があり、小さいころ見た筏師を思い出した。もう一度は、木造中高層建築物「木造会館」を見学するためだった。

 そして一昨日(5月30日)、驚いたことに新木場は地区計画で「マンションは不可」になっていることを三井不動産関係者から聞いた。

 工業専用地域(工専)でも調整区域(条件付きだが家も店舗も建つ)でもあるまいし、東京駅から電車で10分の交通利便なエリアで住宅建築を不可とする地区計画などはあり得ないと思ったが、区のホームページと担当者に確認したらその通りだった。

 平成11年11月15日付で従前の用途地域・工専を準工業に変更し、なおかつ「新木場・辰巳三丁目地区 地区計画」を定め、「木材関連をはじめとする多様な生産・流通機能と商業・業務機能などが共存できる複合地区の形成を図る」目的に適さない住宅や風俗系建築物、廃棄物処理場を不可とした。

 網をかけたエリアは江東区新木場一丁目、新木場二丁目、新木場三丁目及び辰巳三丁目の約151haだ。規模は、約180haの昭和記念公園には負けるが、約115haの皇居を上回る広さだ。

 試しに、区のホームページで住民登録をしている人がいるかどうかも調べた。何と74世帯88人が〝住んでいる〟ではないか。男女別では71人:17人。圧倒的に男性が多い。

 この不可思議を都市計画担当者に伝えたら「既存不適格? それはあり得ない。もともと工専だから、住んでいる人がいるとすればNG(罰則はないそうた)」と話した。このことを住民登録担当に伝えたら、広報に回され、広報担当の方も答えられなかった。つまり、住民登録と都市計画法はリンクしていないことは明らかだ。

 都市計画担当者から話を聞いて、地区計画を決定した平成11年のころ、当時の江東区長とデベロッパーの間で大喧嘩したのを思い出した。区長は、激増するマンション開発に小学校などのインフラが整備できないと激怒し「マンションなど蹴とばしたい」と都の都市計画に関する会合で発言した。工専が解除されるのを見越して土地を購入していた大手デベロッパーは色をなくし、色めき立った。新木場を「住宅不可」としたのは知らなかった。(個人的には〝何でもあり〟の準工用途が圧倒的に多い同区には同情するが…)

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新木場の位置図(〝海の孤島〟ではあるが都心に残された〝処女地〟であることが分かる)

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 ここまではプロローグ。都市計画法ではありえない住宅不可の、駅前に行かないと飲食店はなく、フーゾクもない151haもの広いエリアに男女比71:17の88人の方はどのような生活をしているのか、職業は何か興味をそそられないわけではないが、本当に書きたいのはこれからだ。

 5月30日、三井不動産は記者発表会を行い、オフィスビル、住宅、商業施設、ホテル・リゾート、物流施設に続く、新しいアセットクラスの不動産事業である「賃貸ラボ&オフィス」事業を開始すると発表した。

 「三井のラボ&オフィス」は、これまで日本橋を中心に進めてきた一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネッ トワーク・ジャパン(LINK-J)と連携した「コミュニティの構築」、イノベーションによる新産業の創造・育成につながるエコシステムを構築するための「場の整備」、およびライフサイエンス系ベンチャー企業へのLP投資をおこなう「資金の提供」の取り組みをさらに一歩進めるもので、「本格的なウェットラボ」(創薬や再生医療等の研究者が液体気体等を使って実験を行う場所のこと)と「オフィス」が一体化した施設の賃貸事業のことだ。

 具体的な取り組みとして「(仮称)三井リビングラボ葛西」「(仮称)三井リビングラボ新木場」を開設し、柏の葉でも計画していることを明らかにした。

 「葛西」は第一三共の延べ床面積約678坪の研究棟を賃借(マスターリース)する。2019年9月竣工。

 「新木場」は駅から徒歩11分、同社が土地を賃借し、ラウンジ、会議室、共通実験機器室なども利用可能な6階建て延べ床面積約2,280坪の事務所棟を2020年1月に竣工する。ワンフロア30坪から最大480坪まで賃貸可能。

 会見に臨んだ同社常務執行役員でLINK-Jの理事を務める植田俊氏は「この種の事業は欧米ではけた違いの規模で行われているが、わが国には市場そのものがない。具体的な事業規模は現段階で申し上げられないが、マーケットメークし、当社の6番目の新しい事業に育てたい。『コミュニティ』の構築、『場』の整備、『資金』の提供を3本柱とし、わが国がライフサイエンス産業における世界に冠たるアジアナンバーワンの地位を確立することに貢献する」と話した。

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右から植田氏、三枝氏、LINK-J理事 事務局長・曽山明彦氏

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 小生はライフサイエンスのことはちんぷんかんだが、同社ライフサイエンス・イノベーション推進部長・三枝寛氏などによると、米国ボストンには新木場をはるかに上回るライフサイエンス拠点があるという。2025年の先端医療・ライフサイエンス市場を約2兆円と予想した富士経済のレポートもある。

 さて「新木場」に戻す。東京駅から10分の至便な位置に皇居を上回る約151haにも及ぶ土地に「住宅不可」の地区計画の網をかぶせてきたからこそ乱開発を防止してきた。〝海の孤島〟というよりは都心に残された最後の〝処女地〟だ。

 地価はどうか。地価公示は坪当たり約100万円(容積200%として1種50万円)で、〝陸の孤島〟晴海の坪470万円と比べると5分の1だ。

 同社がいくらで賃借したかは分からないが、賃料は都心一等地の数分の1ではないか。同社の発想力には舌を巻くほかない。湾岸開発は同社の十八番だ。

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 以下は、いわばエピローグ。同社が3年前、ベンチャー共創事業に関する記者発表会を行った際の同社取締役専務執行役員・北原義一氏(現同社代表取締役副社長執行役員)の感動的な名演説を紹介する。

 北原氏は「当社の事業の柱であるオフィス、商業施設、分譲住宅を野球に例えるなら3番、4番、5番のクリーンアップ。しかし、これが20年先、30年先、永遠に続くわけではない」と切り出し、「ダーウィンは『変化に順応できるものが生き残る』といったが、それだけでは十分でない。変化の後追いだけでは進歩はない。そのためには、異端、異能を重視し、柔軟性のある社会に変えないといけない」「社会を切り開くのは既存のベンチャーの専売特許でもない。当社のオフィス・商業施設のネットワークは約5,500社の50万人、60万人にのぼる。こうしたオフィスワーカーのベンチャースピリットを覚醒させ、化学反応、爆発を誘引したい。そこから新しい産業が生まれるかもしれない。わたしはワクワクしている」「もう一つ重要なのは、短期的利益を求めず、中長期的視点で育てていくということだ」などと語った。

 ひょっとしたら、菰田正信社長も北原副社長も第4、第5(第3は心当たりあり)の〝東京ミッドタウン〟候補に「新木場」を上げているのではないか。10年先には〝東京ミッドタウン新木場〟構想が発表される可能性があるのではないか。

 江東区の都市計画担当者は「オフィス? もちろん可能。地区計画の変更? 手続き上は可能ですが、まずありえない。ホテル計画の相談があったが、インフラの整備ができず立ち消えになった。都市再生特区? 10年くらい先のスパンであればありうるかもしれない」と話した。

 冒頭の貯木場に戻る。あれから20年。木材の輸入形態が丸太から製品に変化したことなどにより、貯木場はいまほとんど未使用状態のようだ。筏師は観光地でしか見られなくなった。

三井不動産 〝ワクワクする〟発表会 ベンチャー共創に50億円投資(2016/2/24)

木造とコンクリートの見事な調和を図った「木材会館」(2012/10/2)

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 平成31年4月28日に死去した前アットホームホールディングス・アットホーム代表取締役会長、不動産流通研究所代表取締役の松村文衞氏(享年82歳)の「松村文衞 お別れの会」が令和元年6月12日(水)午前11時~午後1時、グランドプリンスホテル新高輪「飛天」の間で行われる。

 主催は、アットホームホールディングス・アットホーム、不動産流通研究所。

 問い合わせはお別れの会事務局03-3730-6400へ。

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「パークウェルステイト浜田山」

 三井不動産レジデンシャルは5月29日、人生100年時代に向けた新たなライフステージを提案するサービス付き高齢者向け住宅「パークウェルステイト浜田山」の竣工プレス説明会・内覧会を行った。間違いなくトップレベルの富裕層向けサ高住だ。

 物件は、京王井の頭線浜田山駅から徒歩9分、杉並区高井戸東4 丁目の第一種低層住居専用地域に位置する敷地面積約5,328㎡、延床面積約9,103㎡、RC造(一部S 造)地上3階・地下1階建て総戸数70 戸(一般住戸62戸・介護用住戸8戸)。契約形態は終身建物賃貸借契約で、59㎡の賃料は一人入居の場合、<前払方式>75 歳で約1億7,000万円、80歳で約1億4,000万円、<月払方式>は約94万円。月額利用料は一人入居の場合で約26万円。利用料・食事代込みで月払い月額200万円を超えそうな100㎡以上は9戸。施工は大林組。設計は日建ハウジングシステム。従前敷地はNTTの社宅。

 外観デザイン・エントランスは「市中の山居」をデザインコンセプトとし、プライベートガーデン「彩の庭」 には約1,100本の樹木を植栽。居室空間は都心高級マンション並みとし、生活リズムセンサーやカードキーの導入による見守り機能などを完備。

 その他、コミュニティを育むライブラリーラウンジ、ラグジュアリーホテルのダイニングをイメージさせる「季響(ききょう)」ではイベントメニューやコースメニューも用意。大浴場はヒノキ風呂付き。

 さらに、帝国ホテル出身の総支配人と2人の支配人に加え、同社グループのネットワークを活かした外部の各種専門コンシェルジュサービス、送迎シャトルバスの運用、アクティビティプログラム、様々な介護サービス、順天堂大学医学部附属順天堂医院の人間ドックの年1回送迎付き無料受診、併設するむらい浜田山クリニックでの健康診断なども行う。

 説明会に臨んだ同社シニアレジデンス事業部長・井上貴嗣氏ら関係者は「富裕層向けサ高住はいくつか供給されているが、どこにも負けないと自負している」と異口同音に語った。3年後の満室稼働を目指す。

 同社は今後、第2弾のリゾート型「鴨川」(全473戸)、ラグジュアリー型の「西麻布」(約300戸)を予定しており、年間1~2物件を供給することを目標に掲げている。

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プライベートガーデン

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エントランスラウンジ

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「伊達冠石」

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大浴場

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 社に戻り、原稿を書き出す丁度そのとき、オフィスのBGMは「第九」の第三楽章の演奏が始まった(第三企画だから第三楽章)。記念碑的なサ高住の記事にこれほどふさわしい音楽はない。この記事は最高の気分で書いていることを読者の皆さんにまず伝えたい。

 約40年間の記者生活で、億ションの最高峰は同社の「麻布霞町パークマンション」であり、準都心部の高額マンションでは、やはり同社の「パークシティ浜田山」が最高で、100件は取材・見学しているサ高住・特養・有料老人ホームでは昭和63年に竣工した介護付有料老人ホーム「サクラビア成城」がトップだと思っている。

 時代が異なり、規模も異なるので単純比較はできないが、今回の「浜田山」は「成城」(敷地が約1万㎡、延床面積が約22,000㎡の10階建て全150室・介護居室18室)とほぼ同レベルだと思う。それほど素晴らしい。

 一つひとつ書き出すときりはないのだが、外観・中庭は「パークシティ浜田山」と似たところがあり、品がある。約1,100本の中高木を植えたという植栽の密度はこちらのほうが高い。

 設備仕様も素晴らしかった。例えばエントランスラウンジの「伊達冠石」のオブジェ、100万円くらいしそうな古木のカウンター、無垢材の亀甲仕上げの壁、レストランの組子デザインの天井、その他の壁面アート・オブジェなどだ(上皇陛下・上皇后陛下が植樹祭などで植えられたイチイもあったが、フェイクだった)。細かな点では、居室とバルコニーはフラットサッシを採用して段差をなくし、洗面室も含めて床暖房を採用していることなど。

 サービスでは、ラグジュアリーホテルのレストランをイメージして設計されたカスケード(滝)の庭が眺められるダイニングが圧巻。この日は試食会もあり、小生はベリー&アサイのジュース、クロワッサン、お吸い物のお椀、ローストビーフ、ジャガイモの何とか(トランプ大統領と安倍総理が炉端焼き店で食べたのはアイダホ産のジャガイモのポテトだが、これは北海道産)を食べた。最高に美味しかった。(獺祭の180ミリリットル入り大吟醸酒1,800円を頼んだのだが、この日は供されなかった)。

 この食事サービスは、夕食なら1,400円くらいで食べられるそうだが、ホテルのレストランなら数千円はするだろうし、コースなら数万円してもおかしくない。

 これらの設備仕様・サービスを評して「『パークマンション』並み」と絶賛したメディアの方もいたが、小生はこの意見については保留する。共用部や専用部の設備仕様、建具・家具などはやはり「パークマンション」に軍配があがるような気がするし、そもそも分譲マンションが提供するのは基本的に〝モノ〟であり、サ高住は〝サービス〟だから、比較するのは適当でないと思う。

 賃料について。58㎡のタイプで一人入居の月払い1カ月約94万円(前払い金方式で75歳の場合1億6,992万円)、月額利用料約26万円というのは相場ではないか。ちなみに前払い方式の75歳の想定居住年数は15年で、80歳は12年だそうだ。看取りも行う。

 大急ぎで書いたのでまとまりに欠けるような気がするが、感動は伝えられたのではないか。

 強いて難点を上げれば、フェイクの「壁面緑化」だ。ほんものはお金がかかるというのなら、綱町三井倶楽部のロビー正面に飾ってあるターナー、霞が関の月曜会クラブの荻須高徳、中川一政らの作品、三井記念美術館に秘蔵されている芸術品、さらには入居者所有の絵画などを有償・無償で飾ってはどうか。ラウンジにグランドピアノがあってもいい。入居者にはプロ並みの人もいるはずで、好きなように弾いてもらうのはどうか。

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ダイニング

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ダイニング

感動的なマンション 三井不動産レジデンシャル「浜田山」(2007/11/8

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分譲事業で営業利益率10%を確保するのは困難 各社の2019年3月期決算数字(2019/5/22)

 分譲事業で営業利益率10%を確保するのは困難と書いた。別格は住友不動産だ。2019年3月期の「不動産販売事業」は売上高3,318億円、営業利益471億円(営業利益率14.2%)だ。今期計上予定戸数5,300戸に対し期首時点で約80%(前年約65%)が契約済というから絶好調というほかない。

 しかし、第八次中期経営計画(2020/3~2022/3)では「第七次で実現した高水準の利益規模を維持する」としながら、「量を追わず利益重視で販売ペースをコントロールしていく」「競争激化の用地取得環境が続く中、『好球必打』で着実に確保する方針は継続する」と戦略の転換を匂わせている。量的拡大の時代は終わったとみるべきだ。

 2019年3月期の売上高、営業利益、経常利益、純利益とも過去最高を更新するなど非の打ちどころのない好決算となった三井不動産の分譲事業はどうか。

 投資家向け・海外住宅分譲を含めた売上高は前期比311億円増の5,307億円、粗利益率は38.4%(前期24.7%)と伸び、営業利益は150億円増の980億円(営業利益率9.3%)となった。

 これらの結果に対して、経理部長委嘱の執行役員・富樫烈氏は「営業利益率9.3%はとても高い水準」とし、マンション分譲が大幅に増加し、前期比372億円増の554億円となった海外事業については「出来すぎ」と語った。

 期末契約済み戸数はマンション4,331戸、戸建て119戸合わせ4,450戸となり、今期マンションの計上予定戸数3,400戸の進捗率は約75%。

 完成在庫はマンション141戸、戸建て30戸を合わせて171戸で、計上戸数に対する割合は4.5%しかない。

 三井不動産も〝量から質(中身)〟に完全に移行していることを次の表から知ることができる。

 表は、同社の過去11年間のマンション・戸建ての計上戸数、完成在庫、売上高の推移を見たものだ。

 戸数は2014年3月期にマンション・戸建て合わせ7,473戸を計上したが、その後は漸減しており、2019年3月期は3,754戸に減らしている。ほぼ半減だ。

 しかし、売上高は約17%しか減らしていない。なぜか。1戸当たりの価格を比較するとその理由がはっきりする。2014年3月期は1戸当たり4,618万円であるのに対し2019年3月期は7,594万円だ。実に64%も上昇している。最近は戸建てよりマンションの価格のほうが上回っているのも特徴だ。

 同業他社と比較して、アッパーミドル・富裕層向けで圧倒的な差をつけているのが見て取れる。確実に利益が確保でき、在庫も出さない戦略を徹底しているとみた。(東京建物の2018年12月期の分譲の売上高は726億円で、1戸当たり単価は7,351万円と高い)

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 今週の業界紙「住宅新報」と「週刊住宅」の1面はともに主要不動産会社の2019年3月期決算概要記事で、「旺盛な不動産需要が追い風」(住宅新報)「根強いオフィス、投資需要」(週刊住宅)として、最高決算が相次いだことを報じている。集計対象は住宅新報が31社、週刊住宅は63社。

 これはこれで有難いのだが、住宅新報の表は売上高、経常利益、純利益の前期実績と今期業績予想しかなく、週刊住宅もこれらに営業利益を加えているのみだ。

 これでは専門紙としては不十分だ。読者の立場からすれば、これらの数字だけではなく、例えば営業利益率、セグメント別、「ROA(総資産利益率)」、「ROE(自己資本利益率)」なども知りたい。

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 両紙の表を基に電卓を叩いて、各社の営業利益率をはじいてみた。大手では住友不動産がトップで21.8%、以下、三菱地所18.1%、東京建物17.1%(2018年12月期)、三井不動産14.1%、野村不動産HD11.8%、東急不動産HD8.9%の順。

 数値が高いのはビルや投資事業、不動産活用が中心の会社で、京阪神ビルディング36.2%、ダイビル25.4%、サンフロンティア不動産25.0%、平和不動産23.6%などとなっている。

 その他、売上げが多い会社の営業利益率はプレザンスコーポレーション16.9%、エフジェー・ネクスト12.3%、スターツコーポレーション11.7%などが高い数値を示している。

 分譲が主力の会社では日本エスリード12.4%、日神不動産7.8%、飯田グループHD7.2%、タカラレーベン7.6%、明和地所6.0%、ケイアイスター不動産5.7%など。長谷工コーポレーションは11.0%。

 表中に森ビルと森トラストが抜けていたので調べたら、森ビルは5月21日発表で、売上高2,461億円、営業利益611億円(営業利益率24.8%)、森トラストは5月16日発表で、売上高1,748億円、営業利益344億円(営業利益率19.7%)だった。

 大和地所レジデンスも5月22日に発表し、売上高367億円、営業利益45億円(営業利益率12.3%)となっている。

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 これらの数値から分かるのは、分譲事業〝単品〟で利益率10%を確保するのは容易でないことだ。プレザンスコーポやエフジェー・ネクスト、日本エスリードは極めて好調ということができるが、3社とも投資向けやコンパクトマンションの比率が高いのが好調な要因ではないか。

 その意味では、ほとんどがファミリー向けの大和地所レジデンスの利益率の高さは注目に値する。商品企画力の反映だと思う。

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 東京都が晴海オリンピック選手村用地を民間事業者に約130億円で売却したのは不当とし、妥当額との差額1,200億円を支払うよう不動産会社11社に請求せよと住民らが小池百合子都知事を訴えた住民訴訟の第6回口頭弁論が5月16日、東京地裁で行われた。

 原告の代理弁護士は、桝本行男不動産鑑定士による不動産鑑定書はオリンピックの特殊要因を考慮していないという被告側の批判に応える形で、開発法による鑑定評価でも鑑定価格の9割程度の約1,529億円が「適正な価格」であるとし、デベロッパーに約130億円で売却したのは「官民癒着」であると被告を批判した。

 これに対して被告代理弁護士は、原告が今回新たに開発法を採用して鑑定価格を算定したのは従来の主張と矛盾しており、論理が破綻しているとし、何ら証拠を示さず「官民癒着」などと難詰するのは「善意の第三者」であるデベロッパーの名誉を棄損するものと原告を批判した。

 次回は9月13日(金)に決まった。

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 記者は法廷小説が好きで、スコット・トゥローの「推定無罪」やジョン・グリシャム、バリー・リードなどをよく読んだ。映画でも弁護士の感動的な名演説を何度も観た。

 今回の裁判も原告、被告双方の知的で丁々発止の〝ゲーム〟を期待していたのだが、前回同様、期待は裏切られた(民事訴訟はそのようなやり取りはないようだ)。原告が「不正な官民癒着」「官製談合だ」と批判すれば、被告も「名誉棄損」「誹謗中傷だ」と応酬しただけだった。

 サッカー場でもボクシング会場でないのも分かるが、52もの傍聴席が満席になるほど多くの〝観客〟がいるのだから、もっと分かりやすい論陣を張っていただきたい。

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 以下に、原告側が配布した口頭意見陳述要旨を紹介する。(被告側にもお願いしたのだが断られた)

 第1 不動産価格に関する争点について

 1 本件不動産価格の争点は、「当該敷地についてのカ価格決定を、取引事例比較法と開発法のいずれの手法によるべきか」という価格決定の手法を巡るものではありません。

 本件土地は、東京都の財産ですから、果たしてこれを「適正な価格」で譲渡したといえるかどうかが争点です。

 「適正な価格」とは、地方自治法や、東京都価格審議条例では「時価」を基準に判断され、都市再開発法による場合でも、「近傍同種の土地の取引価格」を考慮して定める相当額とするのが原則です(都市再開発法80条)。

 2 東京都は甲6号証の調査報告書で、開発法という手法のみで、129億6000万円という金額を決定しており、不動産鑑定基準による鑑定評価は出していません。不動産鑑定基準では、開発法による計算をする場合でも不動産鑑定基準による鑑定価格を示すべきと定めており、東京都はこれに違反しています。東京都は、第3準備書面で、本件敷地は、「不動産価格調査ガイドライン」の取り扱いに関する実務指針を元に、本件が「鑑定評価基準に則ることができない場合」であることを、延々と述べています。

 原告は、準備書面(5)では、その点を詳細に反論しました。

 3 本件土地の鑑定価格

 本件土地についても不動産鑑定基準による鑑定価格の算出は可能です。周辺には取引事例も十分にあり、公示価格も出ている地域です。詳細な鑑定作業の結果、原告は不動産鑑定書(甲68号証)のとおり、1,611億1,800万円と主張しました。

 4 原告の「オリンピック要因反映価格」の主張

 (1) 原告は「日本不動産研究所に提出した資料リスト」を情報開示して検討し(甲79号証)、「調査報告書」(乙32号証)も検討して、被告の主張するオリンピック要因を反映させたうえで、「適正な価格」を算出しました。

 原告も、本件敷地の譲渡契約の時期から、分譲マンションの売却時期までが、長期間に及ぶことについては、被告と同じく開発法で計算しました。また、乙32号証には、建築工事費が高額すぎること、販売価格の想定が相場から見て、低すぎるという問題点があることも指摘しました。

 (2) さらに、本件の場合、「開発法によって算定した数字」をそのまま、本件土地の譲渡価格とすることが、根本的な誤りであることを主張しました。

 そもそも、開発法によって導き出された土地代金は、契約時に全額支払う(資本投下されている)ことが前提で計算する手法です。

ところが、譲渡契約書(甲12号証)では、特定建築者は、土地価格の10%だけを契約時に保証金として支払い、90%は建物竣工時以降に支払う約定です。

 ですから、開発法によって算出された価格をそのまま、本件のケースの土地価格とするのは、資本投下していない代金を、あたかも投下したように計算するというカラクリがあるのです。

 (3) そこで、原告は、この支払い方法を価格に反映させて計算する作業を行いました。

 その結果の金額は、総額1,529億1,800万円となりました。

 すなわち、被告の主張するオリンピック要因を反映させたとしても、鑑定価格の約9割程度が「適正な価格」なのです。

 被告の主張する129億6,000万円という鑑定価格の1割以下の価格は、異常な廉価であり、到底「適正な価格」とは言えないことは、明白です。

 (以下、略)

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 以前から気になっていたのだが、選手村用地を鑑定評価した日本不動産研究所の「調査報告書」は「鑑定評価報告書」ではない可能性が高いことが分かった。

 国土交通省「不動産鑑定評価基準」によると、「鑑定評価報告書は、鑑定評価書を通じて依頼者のみならず第三者に対しても影響を及ぼすものであり、さらには不動産の適正な価格の形成の基礎となるものであるから、その作成に当たっては、誤解の生ずる余地を与えないよう留意するとともに、特に鑑定評価額の決定の理由については、依頼者のみならず第三者に対して十分に説明し得るものとするように努めなければならない。特に、特定価格を求めた場合には法令等による社会的要請の根拠、また、特殊価格を求めた場合には文化財の指定の事実等を明らかにしなければならない」とある。

 東京都が「鑑定評価基準に則ることができない場合」としているのは、「依頼者のみならず第三者に対して十分に説明し得るものとするように努めなければならない」ことを回避するためなのかという疑問が浮かび上がる。

 しかし、そうだとしても、2016年5月1日付で改正された「価格等調査ガイドライン」では、「従来『やむを得ず鑑定評価基準に則ることができない場合』とされていた価格等調査のほとんどが鑑定評価基準に則った鑑定評価で対応可能となるため、『やむを得ず鑑定評価基準に則ることができない価格等調査』の規定を削除」(日本不動産鑑定士協会連合会)としているように、都は都民に対して十分な説明をする義務があるはずだ。

 さらにまた、日本不動産鑑定士協会連合会が「不動産鑑定評価基準に則らない価格等調査においても、不動産の経済価値を判定し、その結果を価額に表示していれば、鑑定法上の鑑定評価業務に当たると考えられます」としているように、「調査報告書」は単に〝聞き置く〟だけも可能な「不動産価格意見書」ではないと理解される。

 裁判の行方はどうなるか分からないが、鑑定手法次第では地価公示の10分の1以下の鑑定評価も可能ということが明らかになった。どちらが敗訴しても、不動産鑑定士の鑑定評価が罪に問われることはないと見た。

 記者は2008年、「かんぽの宿」が今回の選手村とほとんど同額の126億円と評価され、オリックスに109億円で売却された(その後、鳩山総務相の〝待った〟で契約は解除され、不動産鑑定士も処分された)ことを思い出す。日本不動産鑑定士協会連合会は今年もまた〝クライアント(依頼者)・プレッシャー〟なるアンケート調査を行っている。

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 原告が開発法により算出した鑑定価格約1,529億円について。これだと分譲単価は坪300万円を超える可能性が高い。記者は都民が安く買える〝レガシーマンション〟にするためにも特定価格としてもっと低くすべきだと考える。「晴海・正す会」の会報でも「(HARUMI FLAG」は)一般庶民には手が届きそうにありません」とあるではないか。

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カテゴリ: 2019年度

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「東京虎ノ門グローバルスクエア」

 野村不動産が地権者・参加組合員として事業参画している虎ノ門駅前地区市街地再開発組合は5月15日、「虎ノ門駅前地区第一種市街地再開発事業(国家戦略都市計画建築物等整備事業)」の名称を「東京虎ノ門グローバルスクエア」に決定したと発表した。

 事業地は東京メトロ銀座線虎ノ門駅に直結。敷地面積は約2,782㎡、建物は地下3階・地上24階建て延べ床面積約約47,273㎡。主な用途は事務所、店舗、駐車場など。竣工予定は2020年6月末日。

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