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 7月6日付「週刊住宅」がセーフティネット住宅について次のように報じた。

 「当初政府は20年度末までに全国で17万5000戸の登録住宅確保を目指すとしていたが、本紙の取材で、21年度6月末の段階で登録数は47万8102戸と予想を大幅に上回っていることがわかった」

 最近の同紙はニュース・リリースのオンパレードで、独自取材記事などほとんどないのでびっくりした。

 登録数増加の背景としては、「現在空き家の数が過去最高の846万戸(2018年住宅・土地調査統計)に上っていることが挙げられるが、一方で、シェアハウスに関しても基準を満たしていれば賃貸物件として登録が可能になったこと、また、高齢者の入居支援を行うNPOや社会福祉法人、さらに関連業務を行う企業も『居住支援法人』として都道府県から認められたことが大きい」としている。

 なるほど、そうかもしれない。しかし、同紙は政府目標をはるかに上回る戸数に伸びたその具体的な理由については触れていない。同制度の普及に国土交通省などが力を入れてきたことは理解できるのだが、常識的に考えればそんなに一挙に伸びるはずはないし、空き家の増加は今に始まったことではない。コロナ禍とはいえ、住宅困窮者向けの申請もまたそんなに激増することなどありえないではないか。

 そこで、裏に何かが隠されていると直感し、セーフティネット登録住宅の推移を調べた。別表・グラフがそれだ。その激増ぶりは目を見張るものがある。平成30年11月では全国で4,448戸しかなく、令和2年4月の段階でも約3.0万戸だったのが、同7月には約6.0万戸へと倍増し、同11月には約13.6万戸へとさらに倍増し、令和3年2月には約30.2万戸へと一挙に政府目標を達成すると、同7月には約48.2万戸へ政府目標の実に約2.8倍に達した。同紙は「本紙の取材で…分かった」としているが、同制度の登録件数などはセーフティネット住宅情報提供システムで誰でも自由に閲覧できるから、実際は取材で分かったのではなく、取材してこなかったから〝知った〟というべきだ。(かくいう記者も同様だ)

 なぜ、そんなに増えたか。国土交通省は「法改正当初はなかなか認知されなかったが、その後、普及活動に力を入れ、公共団体とも連携し、申請にかかる手数料を減免し、煩雑だった申請手続きの簡素化などを図ったのが大きな背景」としている。

 東京都と埼玉県にも聞いた。東京都は、昨年の今ごろは二千数百戸しかなかったのが現在約4.1万戸に増加したことについて「大東建託パートナーズさんの申請があったため」と答えた。令和元年度末では800戸弱だったのがいまは約4.5万戸に増加した埼玉県は「特定の法人の申請がたくさんあったため」としている。なぜ増加したかについては、双方からは「申請が増えたため」と木を鼻でくくるような回答しか得られなかった。

 しかし、「大東建託パートナーズ」という具体的な名前が得られたのは大きな成果だった。さらにネットで検索したら、凄いデータに突き当たった。

 全国借地借家人組合連合会の2021年5月15日付の全国借地借家人新聞だ。それには「平山(洋介)神戸大学大学院教授は国交省の登録住宅のインターネットに掲載されている『セーフティネット住宅情報システム』から、住宅セーフティネット登録住宅の実態について分析し、日本住宅会議会報2021年111号に発表しました」とあり、「登録住宅21万7308戸(2月5日現在)の実に85%は大東建託の物件で、ビレッジハウスが9.8%を占めています」とあるではないか。

 つまり、「昨年まで低迷していた登録住宅が大東建託の物件の大量登録で国の目標を一気に超過達成」した理由であることを平山教授が突き止めたというのだ。

 記者は2018年11月、東京都の登録物件を全部調べ、現地取材も行い、ずさんな審査(失礼)と億ション並みの家賃設定に批判的な記事を書いたが、平山教授は全国の21.7万件を全て調べたというから脱帽する以外ない。

 平山教授からは、「世界」2021年5月号に掲載された「これが本当に住まいのセーフティネットなのか」と題する8ページに及ぶ論文を送っていただいた。そこには「『住宅セーフティネットとは大東建託物件のこと』といっても、それほど過言ではない」とあり、住宅確保要配慮者のみを対象とする専用住宅は、登録住宅全体のわずか1.3%しかないと指摘し、「住宅セーフティネットは-少なくとも現在の制度では-住宅困窮への対応に関し、ほとんど役に立ちそうにない」と結論づけている。

 これには頭をどやされた。関係者の皆さんもぜひ「世界」5月号を買って読んでいただきたい。これを読まずしてセーフティネット住宅を語れない。必読の論文だ。ただ一つ、論文で気掛かりなことがある。住宅確保要配慮者のみを対象とした専用住宅は、なんだか姨捨山のような施設のイメージしか湧いてこないことだ。集合住宅を含めた街というものは、お金持ちも貧乏人も年寄りも若い人も健常者も障がい者も一緒に住めるのが本来の姿だとずっと前から考えてきた。画一的な街づくりやマンションの失敗例をたくさん見てきた。専用住宅の増加は手放しで喜べない。

 「いい部屋ネット」で全国展開している大東建託は、「当社の2020年3月末時点における居住用の管理戸数113万218戸が、(週刊「全国賃貸住宅新聞」)が調査した管理会社1,083社の中で第1位となりました。当社は、同ランキングにて1997年から24年連続で第1位を獲得」(同社ホームページ)している賃貸管理トップ企業だ。同社にはどうして申請が増えたかを問い合わせ中だ。回答が得られれば記事に追加する。

 平山教授が喝破したセーフティネット住宅の現実を突きつけられると、低所得者や被災者、高齢者、障がい者、子どもがいる世帯、その他住宅確保要配慮者が差別されない良質で安価な住宅が供給されるのは夢物語に過ぎないのか-「週刊住宅」には気づかせていただいたことには感謝するが、もっとしっかり取材していたら「シニア住宅にビジネス好機」の見出しは付けられなかったはずだ。小生もそうだが記者は〝全て疑ってかかれ〟というのが基本だ。

坪3.5万円!億ション以上 現地見ずに家賃判断 審査は適正か セーフティネット住宅(2018/11/9)

 


 

カテゴリ: 2021年度

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「三井リンクラボ新木場1」

 三井不動産は7月8日、賃貸ラボ&オフィス事業「三井のラボ&オフィス」の都心近接型施設の第二弾「三井リンクラボ新木場1」が7月1日に開業したのに伴うメディア向け見学会を行った。通常のオフィス空間に加え、実験専用の排気ダクト、空調室外機、緊急用シャワー施設などの増設スペースを確保しているのが特徴。

 物件は、東京メトロ有楽町線・東京臨海高速鉄道りんかい線新木場駅から徒歩11分、江東区新木場2丁目に位置する敷地面積約3,300㎡、5階建て延べ床面積約11,169㎡。総貸付面積約7,867㎡。基本計画は日建設計。設計・監理・施工は鹿島建設。建物は今年3月に竣工済み。入居希望企業は、竣工後の仕様を確認してから決定したいということから、現段階では6~7割の入居率という。

 今回のプロジェクトは、国際基準の本格的研究が可能なBSL2対応のウェットラボ仕様とし、スタートアップ企業やCRO、異業種からの参入までを可能とするライフサイエンス領域の様々なイノベーションプレイヤーの入居を想定。1フロア約110~1,600㎡のニーズに対応する。また、100人収容の会議室も設置しているほか、社内外のコミュニケーションを活発にさせるためのラウンジ、カフェを設置し、エントランスにはキッチンカー専用の駐車場も設けている。

 「三井のラボ&オフィス」は、ライフサイエンス領域において一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J)とともに2016年に立ち上げたもので、参加特別会員は461会員、2020年のイベント実施回数は357件に達するなど、国内外の連携の輪が広がっている。

 同社はオフィスビル、住宅、商業施設、ホテル・リゾート、物流施設に続く「第6のアセットクラス」としてこの事業の拡大を図っていくとしており、2021年11月竣工予定の「(仮称)三井リンクラボ柏の葉」、2023年春竣工を目指す「新木場エリア2棟目」も計画。先に竣工稼働している「三井リンクラボ葛西」も含め4棟4棟体制となる。また、米国ボストンの「(仮称)イノベーションスクエアPhaseⅡ」(延べ床面積約28,400㎡)も2021年に竣工する予定。

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コミュニケーションラウンジ

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様々な配管が設置されているバルコニー

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会議室

◇       ◆     ◇

 オンラインで発表会に参加した記者の方が、事業費や賃料について質問した。同社は当然答えなかった。

 この記者の方は答えが返ってこないのを承知のうえで聞いたのか、それとも特別の意図があったのかわからないが、記者は全く別のことを考えていた。設計が日建設計で、施工が鹿島建設であったことだ。わが国を代表する設計会社とゼネコンが、約11,000㎡(3,000坪)程度のオフィスビルを設計・建設した事例はそうないはずだ。ここに隠された何かがある。単純計算だが、レンタブル比率は7,867÷11,169=70.4%だ。こんなビルも少ないはずだ。

 さらに言えば、賃料などは同社も入居を考える企業も二の次の問題ではないかということだ。普通のオフィスビル立地として、「新木場」はまずありえない。記者は計画が発表された2019年6月、現地を見学取材している。それまで知らなかったのだが、この新木場一帯は、規模にして皇居をはるかに上回る約151haが地区計画によって「住宅不可」に定められている。

 「住宅不可」といえば調整区域だが、調整区域は住宅や商業施設はないかもしれないが、その分だけたっぷりの緑環境が確保されている。ここ新木場は、図体がでかい分だけ大きな騒音を撒き散らすトラックの往来が激しく、飲食店や遊興施設、公園など一つもなかい。あったのは1軒のコンビニだけだった。いくら賃料が安くても、普通の企業はこんなところに事務所を構えようと考えないはずだし、そんな会社に入社を希望する人など皆無のはずだ。

 それでも「三井リンクラボ新木場1」を可能にしたのは、同社取締役執行役員/LINK-J専務理事・植田俊氏がいみじくも言ったように「バイオハザード」だろう。事務所で扱う有害化学薬品などか適正に処分できるか、社外秘の研究内容が漏洩しないかが最優先されるはずだ。

 だが、しかし、外界と遮断できる職場環境が整っていることに経営者は満足しても、ここで働く研究者などはストレスの固まりになるのではないかと取材したとき考えた。昼食はどうするか、同僚などとの飲み会は駅前のどこにでもある居酒屋で満足できるのか(駅前にはホテルがその後建設されたが)、緑など全くない環境で精神に異常をきたさないか…などだ。

 いまもこの疑問・懸念は払しょくされていないのだが、ここに入居しているNECソリューションイノベータ(デジタルヘルスケア事業推進室)シニアプロフェッショナル・堀井克紀氏は「(研究に)集中できるのでいい」と言い放った。同社が借りているのは約200㎡で、5人が勤務している。1人当たり約40㎡だ。大会社の社長室でもあるかないかの広さだ。ここで堀井氏らは抗体の一種であるアプタマーの研究を行っており、新型コロナウイルスのDNAなども調べているそうだ。(ワクチン開発は別の部署で進めているそうだ)

 記者などはもろもろの誘惑があってこそ生きるに値する世の中だし、仕事をするときはどんな誘惑にも負けないで集中する自信はあるが、そんなことより、同社にぜひとも聞きたかったことがある。現地を見学取材したときも感じたのだが、貯木場など一つも稼働していない。住宅不可の今日的意味はないのではないか。コンテナの積み下ろしなどの機能はあるのかどうかはわからないが、記者は都心に残された最後の大規模処女地だと思う。

 地区計画を変更し、商・住・公(あるいは工)の複合タウンは可能ではないか。すでに同社はそうすべく、その先鞭をつける、外堀を埋める突破口としてこのプロジェクトを位置づけているのではないか。

 そんなことを質問しようと、最初から最後までずっと手を挙げたが、指名されなかった。小生はきちんとマスクを付けており、外見はメガネザルに似た目と、白と黒の淫らではないまだらの髪の毛くらいのもので人畜無害のはずなのに…どこかの人も人気がないのは質問を無視したりまともに答えなかったりするからだ。(大和ハウスはその点偉い。質疑応答に1時間くらいかけることもある)

 愚痴っぽいことを書いたが、1階には150坪はありそうな入居者が自由に利用できる天然芝張りの立派な広場空間も整備されていた。サクラやヒマラヤスギ(未確認)の高木も植わっていた。

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エントランスロビー ラウンジ(壁、天井は本物の木材、観葉植物は本物とフェイク)

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誤って薬品などを浴びたときなど非常時に使用できるシャワー(日常的に使用できるかどうかはわからない)

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広場(左の樹木はヒマラヤスギとみたが)

住宅不可の151ha〝処女地〟新木場にライフサイエンス拠点 三井不の新事業(2019/6/1)

らしき建築物発見!住宅不可の151haの江東区・新木場に88人が住む不思議(2019/6/4)

 

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「いいオフィス南越谷」

 全国に400店舗以上のコワーキングスペースを展開するいいオフィスが7月1日オープンした埼玉県内最大規模の「いいオフィス南越谷」(https://e-office.space/minamikoshigaya/)を見学した。

 総席数は140席で、1人用の個室13部屋や2〜6名部屋の個室もあり、4名・6名・8名定員の会議室5部屋用意し、ホワイトボードやモニター、プロジェクターなども利用可能なオンライン会議(テレカン)も設置。

 設備はオープンスペース/個室/会議室/テレカンブース/キッチンなど。各種サービスはWi-Fi/スタッフ常駐/複合機/ホワイトボード/モニター貸出し/プロジェクター&スクリーン/フリードリンクなど。法人登記や郵便物受け取りも可能。英語学習ができる「Kids In」(https://kids-in.ib-tec.co.jp/)も併設。喫煙は不可。

 施設は、JR南越谷駅・東武スカイツリーライン新越谷駅から徒歩3分の複合商業施設「南越谷ラクーン」4F。元スポーツジムだった区画を居抜きで入居し、リニューアルしたもの。利用料金はドロップイン(当日利用)が1時間660円~、月額会員は13,200円/月~。

 同社は、首都圏を中心に日本全国とフィリピンなど国内・海外含め448店舗を展開。2021年度中に契約ベースで1,000店舗の展開を目指している。

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カテゴリ: 2021年度

 国土交通省は6月29日、第1回「長期優良住宅認定基準の見直しに関する検討会」(座長:松村秀一・東京大学大学院工学系研究科特任教授)を開催した。令和3年5月に「住宅の質の向上及び円滑な取引環境の整備のための長期優良住宅の普及の促進に関する法律等の一部を改正する法律」が成立・公布されたことを受け、長期優良住宅認定制度に新たに創設される災害配慮基準や共同住宅での認定促進、脱炭素社会に向けた省エネ対策の強化に係る認定基準の見直しなどについて議論するのが目的だ。

 先に報告された「長期優良住宅制度のあり方に関する検討会」(同)最終とりまとめでは、平成21年6月に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」(長期優良住宅法)による累計認定戸数は約102万戸(平成30度末時点)にのぼり、良質な住宅の供給に一定程度貢献しているとしながらも、消費者への意識向上につながっているかどうかは住宅事業者間で評価が分かれ、①共同住宅の認定がほとんど進んでいない②住宅性能表示制度と重複する評価項目が多いにも関わらず、別の制度であるために申請者の負担が大きい③建設コストが通常より高くなるにも関わらず、流通市場では認定制度はあまり評価されない④税制優遇などのインセンティブは10年後になくなり、増改築認定の場合は当初からインセンティブがほとんどない⑤賃貸住宅の認定実績がない⑥地価が高い都市部では規模の基準が厳しすぎる-などの課題も指摘されている。

 「見直し検討会」は、これら「あり方検討会」が指摘した課題に基づいて、具体的な見直し案をまとめることになる。

◇       ◆     ◇

 記者は、「あり方検討会」で各委員が指摘した「容積率等の緩和の可能性も検討することが望ましい」「長期優良住宅と住宅性能評価の仕組み自体をなるべく整合できるような形にしたほうがいいのではないか」などの声に賛成だ。

 制度・モノサシが異なるといってしまえばそれまでだが、住宅性能評価制度と長期優良住宅制度は分かりづらい。

 令和2年度の住宅着工戸数に占める住宅性能評価書交付件数は27.9%の約24.5万件で、長期優良住宅認定件数は12.5%の約10.1万戸しかないのは、消費者にとって分かりづらいのが最大の理由だと考えている。以下、まとまりを欠くが、記者なりの考えを紹介する。

 住宅性能表示は、2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づき10分野・34事項について等級表示することで消費者が住宅の品質を理解しやすいように定めた制度だ。紛争処理体制を整え、消費者保護を図り、住宅ローンの優遇が受けられるという目的には賛成だが、当初からずっと腑に落ちないものを感じていた。

 国土交通省のガイドラインには「建築基準法で定める基準を下回る住宅については違法と考えられますので、住宅性能評価書を交付することはできません」とある。

 当然のことだ。しかし、逆に考えれば、建基法をクリアすれば「等級1」を取得できる。これは〝違法建築ではありません〟と消費者自らか費用(数万円から20万円と言われている)を払っているようなものだ。そうまでしないと、消費者に信用されない業界は情けないと思った。(それでも違法建築は防げなかった)

 言い過ぎかもしれないが、住宅性能表示制度はお上がお墨付きを与えることで、建基法を満たしているに過ぎない住宅でも質の高い住宅であるかのような〝誤認〟を消費者に与えたという疑念をずっと抱いてきた。

 長期優良住宅制度も同様だ。全然〝優良〟でないのに「優良」のお墨付きを与えた旧住宅金融公庫時代の「優良(中古)マンション」制度と大差ないといったらこれまた失礼か。

 この制度の欠点を一つ指摘する。記者は住宅の価値は緑被率など緑環境や地域との親和性が重要だと考えている。長期優良住宅制度の9項目の評価基準の中に「良好な景観の形成その他の地域における居住環境の維持及び向上に配慮されたものであること」とする「居住環境」がある。これは所管行政庁が審査することになっており、各行政庁が定める地区計画、景観条例などに適合させることが求められている。

 これまた当たり前のことだ。しかし、地区計画、景観条例などは最低限の条件を定めたものが多く、「長期優良」にふさわしいかどうかは別問題だ。記者は、プレハブ建築協会が取り組んでいる「エコアクション」を高く評価しているが、それでも緑化面積率40%以上を目標にした建売住宅の供給率は2019年度実績で14.5%(前年比7.6ポイントマイナス)しかなく、2020年度目標の50%にはるかに及ばない。

 大手ハスウメーカーですらこれが現状だ。建売住宅大手も含めた戸建てはコンクリで地面が固められたぺんぺん草も生えない住宅地がどんどん広がっている。この流れを変えるためにも長期優良住宅にふさわしい独自の指標を設けるべきだ。

 住宅の質を計るモノサシは住宅性能表示制度、長期優良住宅制度だけではない。2001年に立ち上げたCASBEE、2012年運用開始の低炭素建築物認定制度、2013年運用開始の建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)、2016年ころから取り組みが始まったZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)などだ。最近はZEHに力を入れているハウスメーカー・デベロッパーが多い。

 この中で、記者はCASBEEとZEHをチェックするようにしている。CASBEEは評価結果を「Sランク(素晴らしい)」から「Aランク(大変良い)」「B+ランク(良い)」「B-ランク(やや劣る)」「Cランク(劣る)」の5段階で評価するもので分かりやすい。東京都の場合は、同様の「マンション環境性能評価」制度を平成17年に設け、断熱性、省エネ性、みどり環境など5項目についてそれぞれ★印3つ(満点は★15個)で評価している。これまで満点を取得したマンションはどれも素晴らしい物件だ。

 ZEHは、国土交通省、通産省、環境省など別々の取り組みもあり分かりづらいところもあるが、目指す目標は一つなのでとても分かりやすい。

 これらの制度と住宅性能表示、長期優良住宅は相互に関連していることではあるが、消費者は混乱するばかりだ。

◇      ◆     ◇

 事業者は住宅性能表示制度と長期優良住宅をどのように利活用しているか。事業者のスタンスの置き方、制度の方向性を考えるうえで参考になりそうなので紹介する。

 2021年3月期は46,620戸の戸建てを計上した飯田グループ6社は、住宅性能表示制度7項目で全て最高等級を取得しており、それを最大の〝売り〟の一つにしている。一方で、長期優良住宅認定は東栄住宅(2021年3月期は4,954戸)一社のみのはずだ。

 住宅トップの積水ハウスは、2019年度の長期優良住宅認定取得率は93%だが、同社は最近ZEHに力を入れており、2020年度のZEH比率が91%に達し、2021年3月末時点で累計60,843戸となったと発表した。

 デベロッパーはどうか。三井不動産レジデンシャルは、長期優良住宅認定を取得したマンションは数件あるが、年間数百戸をコンスタントに分譲している戸建てで長期優良住宅認定を受けたのは1件しかない。その理由を同社は「ファインコートの仕様から馴染まないところがいくつかあり、評価をクリアできないのと、維持保全計画は、建売住宅には馴染まない」としている。

 では、同社の戸建てのレベルが低いかといえばそうではない。記事にも添付したが、2016年に分譲した首都圏初の〝ススマートウェルネス住宅〟「ファインコート等々力 桜景邸」などは長期優良住宅レベルをはるかに超えていた。

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 「見直し検討会」に提出された出口健敬委員(不動産協会事務局長代理)と西澤哲郎委員(住宅生産団体連合会 住宅性能向上委員会SWG1リーダー)の資料について。

 出口委員は、集合住宅の現行55㎡の面積要件を単身者の都市居住型誘導居住水準である40㎡に引き下げることを要望している。記者はこれに賛成だ。

 住宅の質は基本的には広さではあるが、そもそも面積要件は官主導の住宅金融や税金控除などにはつきものだ。どこかで線を引かざるを得ないのだろうが、合理的な説明がつかないものは多い。記者はローン控除の面積要件を30㎡に引き下げろと20年前から主張してきた。

 西澤委員が要望した低層賃貸住宅の可変性に関する認定基準である躯体天井高2,650ミリ以上の基準の緩和には同意しかねる。技術的なことは分からないが、天井高は住宅の質にとって重要だ。最近はコストを削減するためどんどん天井高を低くしているのは残念でならない。賃貸住宅でも躯体天井高2,650ミリというのは譲れないラインではないのか。

 この点については、先の出口委員も20mの高さ規制を想定した場合「居室天井高2.45~2.5mを保持しようとすると、1層(階)減り、分譲売上の低下を招き、事業の起点である土地購入の難度が上がります」としているが、これは5m刻みが多い高さ規制に問題がある。1層を3mではなく、3.1とか3.2m刻みにすれば天井高は確保されるはずだ。長期優良など天井高の高いものについては容積の割り増しを行い、質の担保を図るのが合理的だと考える。記者は高さ規制を撤廃すべきというのが持論だ。

 また、西澤委員が求めている床面積要因を55㎡以上(現行75㎡以上)に引き下げるというのは基本的には賛成だ。理由は出口委員の要望について書いたのと同じだ。

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 住宅性能表示と長期優良住宅の申請に掛かる費用は1件5~10万円として、双方で年間35万件だから5~10万円×35万件=175~350億円となる。もちろん負担するのは他の誰でもない消費者だ。ローン控除などで還元されるとはいえ巨額だ。

 長期優良住宅制度の合理化を図り、ハードルを高くして事業者や消費者がチャレンジしたくなるような制度にするか、それともCASBEEのようにランク付けして選択制にしたらいいと思うのだが、どうだろうか。

なぜ伸びない品確法性能表示&長期優良住宅 どうなる中古住宅評価(2015/9/4)

長期優良住宅が「CASBEE」で評価されないのはなぜ(2013/6/13)

敷地60㎡未満の分譲「狭小住宅」 都心部は軒並み50%超 最少の練馬は1.9%(2019/8/19)

首都圏初の〝ススマートウェルネス住宅〟完成 三井不レジ「等々力」(2016/3/24)

 

カテゴリ: 2021年度

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「ODAKYU RENTAL SPACE本厚木」個室

 小田急不動産は7月2日、小田急厚木ホテルビル地下1階にだれでも利用できるレンタルスペース「ODAKYU RENTAL SPACE本厚木」をオープンしたと発表した。

 使いたい時にいつでも借りられるドロップイン形式で、WEB会議や作業に集中できる完全個室(1人専用)のワークスペース(7室)と、プロジェクターを完備した最大21名収容可能な会議室(1室)の計8室を設置した。個室の使用料金は1時間440円(税込み)。運営はクルトンに委託する。

 施設は、小田急線本厚木駅から徒歩30秒、小田急厚木ホテルビル地下1階。

予約サイトURL:https://upnow.jp/metrominutes/search?keyword=ODAKYU%20RENTAL%20SPACE

◇       ◆     ◇

 記者は、コロナが発生してから1年4か月、テレワークを行っている。取材などで外出しても店舗内で食事することをやめ、たばこも安全と思われるホテルなどを利用することにしている。ただで喫煙室を利用するのは失礼なのでコーヒーやワインなどを飲むが、1、2本吸うのに千円札も煙のように消えていく。

 それと比べ、1時間440円というのはいかにも安い。施設内は禁煙だがホテルには喫煙室はあるはずだ。

 京王不動産も会員制サテライトオフィス「KEIO BIZ PLAZA」を展開しており、多摩センターは時間貸しで165円/15分(最低利用料金660円/月)。

 これからはこの種のホテルの施設を利用することにしよう。コーヒーを注文すればやはり1000円はかかるのか。

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「トラバース高谷川球場」竣工式(屋内練習場で、手前は農園のカボチャ)

 当欄既報の測量調査、地盤改良会社のトラバース(本社:千葉県市川市、佐藤克彦社長)は7月3日、社会貢献の一環として自社設計・施工した少年野球グラウンド「トラバース高谷川球場」の竣工式を行った。当日は佐藤社長をはじめ、グラウンド建設とともに設立した「野球アカデミー」のコーチを務める同社副社長・G.G.佐藤氏、同球場の土地所有者、県議会議員、市議会議員など多数の関係者が完成を祝った。当日行われる予定だった野球アカデミーの開校式・野球教室は天候不順のため延期された。

 竣工式のあと、佐藤社長は建設に至った経緯について次のように語った。

 「当社は会社設立(昭和51年4月)から45年が経過するが、会社の利益は社員と分かち合い、関係者や地域などにも還元しないといけないという三位一体経営を父から教わった。球場を造ろうと思ったのは2年半前だった。江戸川に掛かっている妙典橋(千葉県道179号船橋行徳線)の西岸はきれいに整備され散歩する人たちも多いのに、反対側は青々としたまるで草原のような光景が広がっていた。この土地に球場を造って、青少年野球に貢献できないかと考えた。プロを引退した息子を含め元プロのセカンドキャリア支援に取り組み、社員として採用してきた結果、多くの野球経験者が集まるようになってきた。この人材を活かせば地元からプロを誕生させることができるのではないかと」

 「グランド整備に当たっては、6種の石や砂などを埋めたが、水はけが悪かったり球が思ったように弾まなかったりしたので何度も入れ替えた」と悪戦苦闘したことも明かし、「ナイターも可能にしたので、アカデミーにたくさん参加していただきたい」と話した。

 昭和14年生まれの地元の大地主という土地所有者(82歳)は、「以前は毎年5月、7月、9月に敷地内の雑草刈りをやっていたが、俺も歳をとった。(土地を貸してくれと)話が持ち込まれたときはいつ相続が発生するかわからないので躊躇したが、俺も高校のとき、ちょこっとだが野球をやったこともあり、トラバースさんのやっていることにも共感したので受けることにした。立派な球場ができてとても嬉しい。従前? ここら一帯はみんな蓮の田んぼだった。賃料? それは勘弁して。たくさんいただいている」と笑顔を見せた。

 完成した球場は、東西線妙典駅と原木中山駅の中間くらいの市川市高谷に位置し、千葉県道179号船橋行徳線妙典橋のたもと。敷地面積は約1400坪。グラウンドは左翼・中堅は60m、右翼は50m。芝は天然芝(内野除く)。屋根・夜間照明付きの練習場には佐藤氏が25年前に考案した特許取得日本第一号のキャタピラーで簡単に運べるピッチングマシンが3台装備。

 敷地内には約100坪の農園も設置。パクチー、カボチャ、カキ、チンゲンサイ、コマツナ、ユズ、サツマイモ、ネギ、キュウリ、ナス、タカノツメ、ピーマン、モロヘイヤなどを栽培。収穫して関係者などにプレゼントするのだそうだ。水遣り用の井戸を2基掘削している。

 アカデミーは、小学生を対象に無料で定期的に開催予定。コーチにはG.G.佐藤氏をはじめ同社のNPB、独立リーグ、社会人野球出身者が務める。外部コーチとして元ヤクルト・西武ライオンズの米野智人氏を招へいする。

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天然芝のグラウンド(外野から写す)

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佐藤社長

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関係者で記念撮影

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佐藤鯱用が考案した日本で初の特許を取得したバッティングマシン

◇       ◆     ◇

 「牧田さん、これ見てよ。私が息子のために25年前に日本で初めて特許を取得したピッチングマシンだ。最初、ボールは奥さんが入れる役割を果たしていたが、嫌がったので自動的に補給できるように改良した。デッドボール? 全然ない。コントロールはいい。130キロは出る」

 佐藤社長は自慢げにこう話した。記者は事前にピッチングマシンがあるのを確認していたが、〝大きな仕事をしているのに中古を買うなんて何と中途半端な〟と思った。そんな歴史ものだとは全然知らなかった。

 G.G.佐藤氏は「そう。わたしはこれでプロになった。これを使って市川からプロを育てたい」と語った。

 ついでに聞いた。「佐藤さん、もうすぐオリンピック。北京の悪夢を再現する外野手はいませんか」「大丈夫。わたしみたいなへぼな選手は一人もいない。みんな素晴らしい選手ばかり」(日本代表の外野手は柳田・吉田・栗原・近藤・鈴木誠也の各氏)

 土地所有者との交渉役を務めた創価高校-創価大野球部出身の越口誠氏は、「最初に土地を貸してくださいとお願いに行ったときは、ほとんど相手にされなかった。その後、市会、県会議員さんなどの協力も得て、当社のことも分かっていただき建設が実現した。元プロや独立リーグ、社会人野球経験者の入社も増えている。今回の球場建設も含めて野球を通じて業界を明るくしたい」と語った。越口氏は高校時代、通算49本の本塁打記録を残している。

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カボチャ

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農園

◇       ◆     ◇

 トラバースは、RBA野球大会第30回、31回大会に参加(昨年の32回、今年の33回大会はコロナの影響で中止)。通算成績は8勝3敗、勝率.727の高率を残しているが、「元プロの出場は1人」という大会規定の壁と寄る年波には勝てないのかベスト8どまり。

 記事はRBA野球大会ホームページhttps://www.rbayakyu.jp/の検索欄で「トラバース」を入力していただければ100本近くヒットするはずだ。

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トラバース 自社設計施工の少年野球グラウンド整備 地域貢献の一環として無償提供(2020/12/23)

G.G.佐藤さんの実父 トラバース社長・佐藤克彦氏がポラス分譲地で絵画展(2019/2/6)

住友林業 ドームへ一歩前進 石井-町田の継投ズバリ 小池猛打賞 トラバース無念(2019/10/3)

G.G.佐藤のトラバース ピンチ 「プロは一人」の制限で予選敗退も(2018/6/9)

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「ウォーターズ竹芝」

 水辺や「WATERS takeshiba(ウォーターズ竹芝)」を中心とした街づくりを推進するタウンマネジメント組織・一般社団法人竹芝タウンデザインなどは6月29日、「ウォーターズ竹芝」の報道陣向け内覧会を行った。記者は、施設内のラグジュアリホテル・メズム東京、アトレ竹芝、オートグラフ コレクション、干潟などを約2時間にわたって見学した。

 「ウォーターズ竹芝」は、東日本旅客鉄道が開発した敷地面積約23,030㎡、26階建てオフィス高層棟、6階建て劇場棟、10階建て駐車場棟からなる延床面積約108,500㎡の複合施設。オフィス棟には14階までの全フロアにヤクルト本社が、15階以上はJR東日本グループの日本ホテルが運営する「mesm  Tokyo Autograph Collection(メムズ東京 オートクラブ コレクション)」265室が、劇場棟は「JR東日本四季劇場」がそれぞれ入居している。施工は清水建設。開業は昨年4月。

 竹芝エリアでは昨年10月、敷地面積約12,156㎡、40階建て延べ床面積約182,052㎡のソフトバンク本社が入居する「東京ポートシティ竹芝」が開業している。

 また、近接エリアでは東京建物の32階建て免震タワーマンション「ブリリアタワー浜離宮」420戸が建設中。

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「メムズ東京」ロビーラウンジから

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勝どき、晴海のマンション群(「メムズ東京」ロビーラウンジから)

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「BANK30」

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「BANK30」

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「BANK30」

◇       ◆     ◇

 圧巻は「メムズ東京」だ。16階のロビーラウンジは、高さ約9m、幅数十mの180度吹き抜け空間で、眼下の浜離宮恩賜庭園から再開発計画が楽しみな約23haの築地卸売市場-隅田川-「勝どき ザ・タワー」「THE TOKYO TOWERS」などのタワーマンションが近景に広がり、遠景には都心のビル街や東京スカイツリーなどが眺望できる。緑や川・海などの景観や、都心の夜景が楽しめるラグジュアリーホテルはたくさんあるが、すべてを満たすホテルはまずない。「京都ブライトン」は6階吹き抜け、水天宮の「ロイヤルパーク」は5層吹き抜け空間があるが、外の景色は見えない。

 客室は、40㎡台のchapter1から95㎡のchapter3、180㎡のchapter4まで。95㎡のchapter3を見学したが、客室のほか43㎡のバルコニー付きだ。ルームチャージは約20万円。chapter4は60㎡のバルコニー付きでルームチャージは100万円~とか。

 バー&ラウンジ、ダイニング「シェブズ・シアター」などはカジュアルなもので、バンケットルーム(宴会場)は180㎡の1室のみで、大宴会などは想定していないようだ。

 「メムズ東京」は、「Exactly like nothing else(唯一無二)」の価値である水辺と浜離宮恩賜庭園を臨む立地環境を生かした〝五感を楽しむ〟がコンセプト。マリオット・インターナショナルと提携することで、JR東日本グループのホテル全体の底上げを狙う。

 「アトレ竹芝」は、同社初の〝駅外〟施設で、新業態のラグジュアリーオーシャンビューラウンジ「BANK30」は、海を目の前にショーと映像、音楽のセッションの3つのエリアで構成されており、料理、酒などはリーズナブルな値段だ。

 干潟は、JR東日本が整備したもので、広さは150坪くらいか。ハゼなど10種以上の魚が釣れ、マイクロプラスチックごみ、オイルボール(油の固まり)なども流れ着くので、海の汚染状況が勉強できる。

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〝小さなごみのようなものがマイクロプラスチックごみです〟

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干潟で釣れるハゼなど

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干潟

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「東京ポートシティ竹芝」
 

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「三井不動産ロジスティクスパーク船橋(MFLP船橋Ⅲ」

 三井不動産は6月30日、千葉県船橋市の「三井不動産ロジスティクスパーク船橋(MFLP船橋Ⅲ」が完成したのに伴う記者発表・内覧会を行った。7月1日には、約20,000㎡の緑地空間「MFLP船橋・&PARK」も竣工し、一般に開放する。

 「MFLP船橋Ⅲ」は、敷地面積約58,800㎡の8階建て延べ床面積約270,000㎡。各階の倉庫・トラックバース面積は約27,000㎡と業界最大級の規模で、事務所の天井高は全フロア約3.6mを採用し、緑地空間を一望できる開放的なオフィス環境を実現。倉庫内は全館空調を実装し快適な労働環境を整備。トラックバースは国際基準である45ftコンテナ車両にも全フロア対応可能とするほか、免震構造・72時間対応の非常用発電機等のBCP対策や、車番認証システムを採用したトラックゲート、フラッパーゲートや顔認証システムによる入退館管理など、オフィスビル同等のセキュリティ計画も完備している。

 「MFLP船橋」は、8年間かけて開発してきた事業で、2016 年10月竣工の「MFLP 船橋Ⅰ、2019年10月竣工の「MFLP 船橋Ⅱ」、2020年12月竣工の「三井不動産アイスパーク船橋」、2020年12月竣工の「MFLP 船橋・&GATE」と合わせ総延べ床面積約70万㎡の施設全体が完成したことになる。施設は、RE100 やSDGsの達成に向けた取り組みのほか、と「BELS」で「5STAR」を取得している。

◇       ◆     ◇

 記者は、この日の取材を楽しみにしていたのだが、昨日、第2回目のコロナワクチンの接種を受けており、朝起きたら気分が悪く、急遽取材をキャンセルし、オンライン視聴に切り替えた。1回目は日常生活にほとんど問題なかったが、体温も朝は36.6°(記者の平熱は36.2°)あり、昼過ぎには37.5°まで上昇した。いま夕方は落ち着いてきており、味覚も食欲も飲酒の欲求も普段通り。左肩は腫れて痛い。

 なので、上段の記事はほとんどコピペ。しかし、質疑応答の場面で、面白いやり取りがあった。物流施設を「嫌悪施設」として理解されているのか、一般紙の記者の方が「近隣対策」について質問した。

 なるほど。これには一理ある。詳しくは分からないが、倉庫の建設が許可されるのは準住居地域、近隣商業・商業地域、準工業・工業地域、工業専用地域しかないはずだ。住居系ではまず許可されない。

 逆に、いまは工業系でも商業系でもマンションがどんどん建設されている。そうしたところは物流施設を歓迎しないというのもよくわかる。この質問に対して、三木氏がどう答えるか注目したのだが、三木氏は「当社のこれまでの物流施設で反対されたものは1件もない」と言い切った。

 同社は2021年3月の段階で、開発中を含め全国47か所で事業展開している。1か所も近隣住民などからの反対がないのは驚きだ。

 記者は、もちろん立地条件にもよるが、物流施設とオフィス、マンション、商業施設などとの複合開発の可能性は大きいと考えている。同社の2019年7月に開業した「三井不動産インダストリアルパーク羽田(MFIP 羽田)」を見学した際、設計業の梓設計が本社機能をここに移したのを聞いた。

 細部はまだ手付かずだったが、天井高は5mもあったのに驚愕した。京浜急行空港線穴守稲荷駅から徒歩7分だから、オフィス立地もありかとそのとき思った。

 実は、今回の「MFLP船橋」の「Ⅰ」の竣工見学会が2016年に行われたとき「ここにマンションを建設したら坪単価180万円で売れる」と関係者と談笑したのを覚えている。同社は駅から徒歩3分の「パークホームズLaLa南船橋ステーションプレミア」(231戸)を坪単価210万円で分譲し、早期に完売している。

 物流施設を複合施設にする場合は、容積率などの大幅緩和を行えばコスト的にも見合うはずだ。

 もう一つ。物流施設で「CASBEE」で最高「S ランク」を取得している物件はほかにあるのか。

EC拡大 多様化する顧客ニーズ コロナ禍でも伸びる三井不ロジスティクス事業(2021/3/4) 

 

駅前4.5haの再開発も三井不グループに決定 三井不レジ「南船橋」人気加速か(2020/10/23)

梓設計が本社機能 三井不 街づくり型「インダストリアルパーク羽田」満床稼働(2019/7/5)

わずか7年間でオフィス面積と肩並べる360万㎡開発 三井不のロジスティクス事業(2019/11/6)

 


 

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PDFはこちら 感染者比率.pdf

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 東京都の新型コロナ感染者は、70歳以上の高齢者の実数も感染比率も減少する一方で、20歳未満の年少者の実数、比率が増加するなど対照的な動きを見せている。高齢者や医療従事者へのワクチン接種が進んでいる効果がはっきり表れているが、年少者にも感染しやすいといわれる変異株の影響か、気掛かりな材料だ。

 別表・グラフは、東京都の5月8日以降の新型コロナ感染者の推移を見たものだ。感染者は5月上旬では1,000人を超える日もあったが、その後は漸減し、6月14日には209人まで減少した。1週間ごとの感染者は5月上旬の5,000~6,000人台から6月の第3週は2,644人へ減少した。

 この間の大きな特徴は、70歳以上の感染者・比率が確実に減少していることだ。5月8日は91人(比率8.1%)で、5月26日は83人(比率11.2%)にのぼっていたのが、この10日間では感染者は30人を割っており、比率も数%台に減少している。6月24日は2.5%、25日は2.7%と3%を割った。

 都のデータによると、約311万人の65歳以上を対象としたワクチン接種者は6月24日現在、 1回目が1,660,474人、2回目が605,415人となっており、1回目接種者は53%となっている。また、約56万人の医療従事者を対象としたワクチン接種者は6月25日現在、1回目が494,036人、2回目が423,361となっている。

 しかし、一方で気になるのは20歳未満の年少者の実数と感染比率の増加だ。5月9日は132人(比率12.8%)と100人を超えたが、その後は徐々に減少し、比率も10%前後で推移してきた。

 ところが、6月23日には92人(比率14.9%)に増加し、実数・比率は増加傾向にある。変異株は若年層へも感染しやすいと報告されていることを裏付けているのか。

 感染経路不明率も6月8日に60%を超えたのをきっかけに25日までの18日間で60%を割ったのは6月23日(58.3%)しかなく、18日間の不明率は62.8%に達している。都のデータでは、6月25日現在の7日間移動平均値は114.5%と増加傾向を示している。

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「鍋島松濤公園トイレ」(撮影:永禮賢氏、提供:日本財団)

 日本財団は6月24日、誰もが快適に使⽤できる公共トイレを渋⾕区内17か所に設置するプロジェクト「THE TOKYO TOILET」の9カ所目となる、建築家・隈研吾氏がデザインした「鍋島松濤公園トイレ」のメディア向け見学会を行い、同日から⼀般利⽤を開始した。

 タイトルは「森のコミチ」で、緑豊かな松濤公園に、集落のようなトイレの村をデザイン。ランダムな角度の耳付きの吉野杉の杉板ルーバーに覆われた5つの小屋は「森のコミチ」で結ばれて森の中に消えていくというもの。

 ⼦育て、着替え、車いすなど多様なニーズにあわせて、村を構成するひとつずつのトイレの、プラン、備品、内装も異なるそれぞれの個室を分棟とすることで、公園に開かれた⾵通しの良い、通り抜けのできる「公衆トイレの村」としている。

 隈研吾氏は、「今回様々な候補地がありましたが、⼀番緑の深い鍋島松濤公園に設計することで、これまでの公共トイレのイメージを払拭できると思い、この場所を選びました。トイレだけでなく、動線となる道も含めて設計しています。建築物に加えて、その周辺の環境など、トータルな体験として捉えていただければと思います。 また、従来の公共トイレは全て均⼀なデザインでしたが、今回はお子さんが利⽤できるトイレや、イベントの多い渋谷の街に合わせて着替えができるトイレなど、小さな5つのトイレを設計しています。これまでの公共トイレと異なり、様々な人に使⽤いただける点も大きな特徴です」と述べた。

 ⽇本財団常務理事・笹川順平氏は、「プロジェクトは、今回の鍋島松濤公園トイレで9か所⽬になります。このプロジェクトは建築までが半分、適切に維持管理しながらご使⽤いただくことが残りの半分だと考えています。従来の公共トイレに持たれている〝暗い・汚い・臭い・怖い〟といったイメー ジを取り払うモデルケースになることを⽬指すべく、ご使⽤いただく皆さまにもご協⼒いただけますと幸いです」と語った。

 「THE TOKYO TOILET」は、日本が世界に誇る「おもてなし」文化の象徴であるはずの公共トイレが利用者に不評であることから、性別、年齢、障害を問わず、誰もが快適に使⽤できる公共トイレを2021年秋までに区内17カ所に設置するもの。プロジェクトには建築家の隈研吾氏、伊東豊雄氏、安藤忠雄氏、坂茂氏、槇文彦氏、クリエイティブディレクターの佐藤可⼠和氏など16人の専門家が参画している。トイレの設計施⼯は⼤和ハウス⼯業、現状調査や設置機器・レイアウトの提案はTOTOが担当している。

 THE TOKYO TOILETの特設ウェブサイトはhttps://www.nippon-foundation.or.jp/what/projects/thetokyotoilet

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撮影:永禮賢氏、提供:日本財団

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撮影:永禮賢氏、提供:日本財団

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※以下は全て記者写す

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◇       ◆     ◇

 上段は、日本財団のプレス・リリースをほとんどコピペした記事だ。隈氏は、実際にはたくさん面白い話をされた。忠実に再現したいのだが、申し訳ない。その後、別の取材があり、うちに帰ってから酒も入ってしまったので、記事を書けなくなった。

 とりあえず、写真だけを紹介します。続きは明日、明後日にします。

 (続き)

 隈氏の木の格子デザインはたくさん見学してきたので、今回も鉄やコンクリではなく木がふんだんに採用されているのではないかという予感はあった。その通りだった。ただ、使用されている木の名前はわからなかった。スギのようには見えたが、木目が密で、記者の田舎・三重のスギとは異なっていた。

 直接、隈氏から吉野杉であることを聞き、納得もした。三重のスギも美しいと思うが、関係者の間では吉野杉のほうが建築材としては使用部位にもよるが優れていると評価されているのだろう。

 トイレの個室に採用されているメタセコイア、サクラ、コナラ、ケヤキ、イチョウなどの木片は、「相模原津久井産材」の廃材・端材になるものをそのまま生かしたことも聞いた。

 素晴らしい公園トイレに仕上がったのは、隈氏と笹川氏のやり取りからもよく伝わってきた。

 公衆トイレについて隈氏は、「1990年にバブルがはじけて、東京の仕事が全部キャンセルとなり、仕事がなくなったとき、いちばん最初に頼まれた仕事は高知県の梼原(ゆすはら)町の公衆便所でした。町長さんから『隈さん、公衆トイレの設計できる? 』と聞かれ、『公衆便所すごく得意です』と答えました。木を使った建物の設計は公衆便所から始まりました。私の人生にとっても大きな転機でした。30年たってもう一度公衆便所に出会え、公衆便所を通じて新しい都市像を提案できた。縁の深さを感じている」と語った。

 笹川氏は、「最初に先生の事務所に伺い、依頼したときは断られると思ったが、『これまで関わったプロジェクトの中で一番面白そうだ』と仰っていただいて、とても嬉しかった。これまでの9か所のプロジェクトの中で自然との共生をテーマにしたのは今回が初めて。もっと驚くことに、トイレを楽しもうというコンセプトも今回が初めて」と返し、嬉しさを隠しきれない様子だった。

 高知県梼原町は、隈氏の作品がたくさんある町として知られているが、公衆トイレが最初の案件だったのを初めて知った。

 隈氏はまた、自らが審査委員長となり、在学生を対象とした東大赤門脇のトイレデザインコンペを行い、採用案も決定したと話した。

 この件に関し、ネットで調べた。隈氏は講評として次のように述べている。

 「小さな公共トイレを入り口にして、これほどに深い世界にはいってゆけるとは、僕自身正直なところ全く予想していなかった。

 『インクルーシブな社会の実現』が重要であるということについて、反論する人はいないであろう。しかし、その総論に賛成な人も、それが具体的にどんなトイレのプランニングになり、どんなデザインになるべきかと問われると、はたと考え込んでしまうだろう。それほどに、僕らは無意識にトイレを使い、無意識に様々な人たちをエクスクルード(排除)したり、差別したりして、毎日を過ごしているのである。建築に携わり建築を作っている人間が、実はその問題に対して最も無意識で、無知であったかもしれない。

 審査していて、その事実をつきつけられ、僕自身にとっても貴重な体験をさせていただいた。

 大学という場所は、専門家を育てる場所である以上に、専門家が傲慢と偏見に陥りやすいことを教えるべき場所でもある。今回のコンペは、小さなトイレを通じて、そのとても大事なことを発信できたように、僕は感じた」

 この隈氏の言葉は重くて深い。これまで9か所すべてのトイレを見学してよかった。「THE TOKYO TOILET」プロジェクトは凄い展開を見せてきた。「無意識にトイレを使い、無意識に様々な人たちをエクスクルード(排除)したり、差別したりして、毎日を過ごしている」われわれの意識を劇的に変えるはずだ。

 今回採用されたスギの学名「クリプトメリアヤポニカ(Cryptomeria japonica)」は「隠れた日本の財産」というではないか。隈氏の作品は5年、10年、20年と時間が経過することで色合いが変化し、周囲の風景によく馴染み、同化していくに違いない。

 

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隈氏(左)と笹川氏

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「鍋島松濤公園」入口

〝汚い・臭い・暗い・危険〟公共トイレ利用率13.5% 日本財団18歳意識調査(2021/6/22)

素晴らしい槇文彦氏、田村奈穂氏、片山正通氏 日本財団 渋谷公園トイレPJ(2020/9/21)

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