用地取得から10年 アンビシャスが満を持す「南柏」 南面に42万㎡の麗澤大学の森
「アンビシャス南柏」
アンビシャスが分譲を開始した「アンビシャス南柏」を見学した。リーマン・ショックの直前に用地を取得した物件で、紆余曲折を経て、難局を乗り切って満を持して分譲するものだ。建物は2月末に完成した。
物件は、JR常磐線・東京メトロ千代田線南柏駅から徒歩15分、流山市向小金四丁目に位置する6階建て全58戸。専有面積は66.17~88.94㎡、第1期(28戸)の価格は4,180万~4.860万円、坪単価は195万円。設計はアクシス環境デザイン。監理はアートプランニング。施工は住協建設。建物は平成30年2月末に完成済み。
現地は、麗澤大学の約42万㎡の森に隣接している住宅地の一角で、戸建て住宅街とは比高差にして約4m高いヒルトップ。
建物は東西に長いコの字型で、南面は麗澤大学の森、西側は小学校、東側は道路を挟んで小公園と麗澤大学の学生寮などに隣接。東側のエリアは同社のマンションが建築確認を取得したあと、条例により高さ12m規制が施行されている。
住戸プランは、間口6.4~6.6mの70㎡台のファミリー型が中心で、両面バルコニー、ワイドスパン、多面採光、専用庭付き、ビューバス、ベイウィンドウ、出窓付きなど多彩な25プラン。
基本性能・設備仕様では二重床・二重天井、リビング天井高2,500ミリ、天然大理石玄関床など。
販売を担当する同社営業第一部第三課課長・鈴木好美氏は「これから本格的に販売する。目標は半年で完売」と話した。
麗澤大学の森(左)と浴室から写した森
リビングダイニング
◇ ◆ ◇
この物件は、リーマン・ショックのすぐあと、同社関係者から存在を知らされた。商品化は難しいだろうと思っていた。何と10年後のいま分譲されるとは夢にも思わなかった。
現地のモデルルームを見学して、同社の商品企画は健在であることを確認した。ベイウィンドウ、出窓付きは建築費の高騰でほとんど姿を消したが、同社が得意とするものだった。窓などの開口・採光部が6~9カ所ある住戸は17戸、ビューバス付は9戸ある。
感心したのは、敷地南側の奥行約20m×幅約60mが空き地になっていることで、麗澤大学に依頼して実現したのだという。樹木が植わっていたら少なくとも4階あたりまではまず日照を確保することが難しかったはずだ。
坪単価について。195万円が高いか安いか、これは市場が判断することだからあまり書かないが、いま読んでいる小説、箒木蓬生著「悲素」(新潮文庫)には「法医学では、異常値だと騒いだところで、何と比較して異常な値なのか明確にしない限り、相手にされない」とある。
なので、少し書くと、少なくともいま首都圏郊外で分譲されている一次取得層向けマンションよりはるかにプランが優れており、住宅地から4m以上の高台立地、東側は高さ12m規制、南側は約42万㎡の麗澤大の森-この価値を考慮すれば決して高くないと思う。
グロスが張るので販売は容易ではないかもしれないが、こうした商品企画で勝負する以外、中堅デベロッパーの生き残る道はないと断言できる。
室内からの眺め
マンションの敷地南側(写真左側)は空き地になっている
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同社の安倍徹夫社長とは、記者が駆け出しのころ、安倍氏が大京(当時大京観光)の東京支店長を務めていた時だから40年近くのお付き合いになる。書きたいことは個人的なことを含めて山ほどあるのだが、記者が大好きな獺祭と生ガキとアメーラ、刺身などを前に「個人的なことは書かない」と約束させられたので書かない。ついでだが、酒を飲む前に「絶対二日酔いしない」ともらった薬を飲んだが、これは全く効果がなかった。
一つ二つ、これは個人的なことではないので紹介する。リーマン・ショックで多くのデベロッパーが破綻したことは周知の通りだが、同社が生き残ってきたのは、「弊社の営業哲学を理解して購入していただいたお客様、弊社を応援していただいた取引先、そして汗を流し懸命に働いてきた弊社幹部と社員のお蔭」と安倍氏は話すが、記者は安倍社長のパッションが取引先など関係者の心に響いたのだろうと思う。
実需向けのマンション事業一筋で、商品企画にこれほどこだわる社長はまずいない。
首都圏初の低床バス採用、バルコニー、外廊下の両側のアウトフレーム設計、建築基準法の改正に伴う外廊下の容積不算入部分の活用、タイヤメーカーと組んだ強化ゴムを活用した二重床(浮床)工法の採用、安全性を強化した立駐機の開発、環境共生住宅認定第1号マンションの開発などはいずれも安倍氏が大京の専務時代から扶桑レクセル社長時代に企画してきたものだ。
〝大京の7人の侍〟(記者がこう呼ぶ)の中で現在も経営トップとして活躍されているのは安倍氏のみだ。
そして今、ピーク時には120億円もあった借入金などの負債は今期末には15億円に圧縮するという。
野村不ほか 関西最大級の駅前複合「プラウドシティ塚口」(1,200戸)竣工
「プラウドシティ塚口」
野村不動産、JR西日本不動産開発、長谷工コーポレーションの3社は3月13日、兵庫県尼崎市のJR宝塚線塚口駅前の複合再開発プロジェクト「ZUTTOCITY(ズットシティ)」内に建設していた「プラウドシティ塚口」(全1,200戸)が竣工したと発表した。
「ZUTTOCITY(ズットシティ)」は、関西最大級となる総開発面積約8.4haの駅前複合再開発プロジェクトで、「プラウドシティ塚口」は街区全体のエネルギー消費量の「見える化」と、それに連動した地域通貨を導入しているほか、敷地内に整備した約8,000㎡の「みんなの森」など充実した共用部を活用し、居住者のコミュニティ形成をサポートする。
「プラウドシティ塚口」は15階建て全1,200戸。専有面積は66.96㎡~94.80㎡、価格は3,250万円~5,670万円、平均価格は3,977万円。設計・施工は長谷工コーポレーシ。
「みんなの森」
すごい数だ 第1期は78戸〝ディスカバ〟こと京阪電鉄不他「武蔵野富士見」
当欄既報の京阪電鉄不動産他「DISCOVER ★TERRACE★ ファインシティ武蔵野富士見」の第1期販売戸数が78戸になったことが分かった。驚異的な戸数だ。
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2月24日付記事で「敵か味方か」という見出しを付けた。「敵」とは、首都圏デベロッパーや近隣物件にとって、関西が本拠のデベロッパーにこんな企画をされたら困るという意味を込めた。「味方」とは、大手デベロッパーでなくとも(失礼、記者は大手デベロッパーとは6社くらいと規定している)、こんな企画をすれば売れるということを証明し、商品企画担当者に希望の光を点すのではないかと思ったからだ。
今の段階で「敵」なのか「味方」なのかわからない。ものすごい第1期供給量であることは確かだ。
長谷工の技術力&ルネの企画力生かせ なぜ火中の栗を拾うか 総合地所「ルネ八王子」
「ルネ八王子トレーシア」完成予想図
総合地所が販売中のマンション「ルネ八王子トレーシア」を見学した。八王子駅圏は駅直結のタワーマンションからやや離れた郊外型まで、規模も大小入り乱れて大激戦の様相を呈しているが、こちらの物件は坪単価170万円。その安さに驚いた。
物件は、JR中央線八王子駅から徒歩10分、八王子市八日町の商業地域に位置する15階建て86戸。先着順(5戸)の専有面積は68.11~80.34㎡、価格は2,998万~4,388万円(最多価格帯3,600万円台)。坪単価は170万円。竣工予定は平成31年1月。設計・施工は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。
昨年12月から販売を開始しており、これまで20戸が成約済み。総来場者数は115件。年齢層は30歳代がもっとも多く25%、以下、20歳代が18%、40歳代が16%。現居住地は市内が56%、日野市が10%。年収は500万円台が27%、400万円台が18%。賃貸・アパート居住者が66%。
子育てママの声を取り入れた敷地・デザイン、共用施設、居住空間が特徴で、ライフスタイルを提案する「アーバンリサーチドアーズ」が首都圏分譲マンションでは初となるモデルルーム、ギャラリー、建物空間コーディネートを企画・監修。
モデルルームの家具はアウトドアテイストが特徴。オーク材本来の表情やナチュラル感を演出している。
モデルルーム
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八王子駅圏では坪単価300万円近い駅直結タワーマンションから坪150~160万円くらいの郊外型まで7物件が分譲されており、大激戦の様相を呈している。
記者は昨年12月、明和地所の物件を見学した。前建の影響を一部受けながらプランがよく、坪単価265万円でも好調に推移しているのに驚いた。
今回は、明和の物件と比べると立地、地形が劣るので単価は安くなるとは予想していたが、170万円と聞いて別の意味で驚いた。
販売開始から4カ月で20戸成約というのはまずまずの数字かもしれない。アーバンリサーチドアーズとのコラボも効果があると思うが、長谷工施工&〝ルネ〟の商品企画をもってすればもっと売れていいはずだ。どうして〝価格競争〟という火中の栗をわざわざ拾いに行こうとするのか。これが理解できない。
さらに問題なのは、西向き全86戸のうち5.8mスパンの住戸が56戸(65%)もあったことだ。これはいかがなものか。明和の物件と対照的だった。この前見学した「ルネ北綾瀬」は素晴らしかったではないか。
同社が2流、3流のデベロッパーだったらこんなことは書かない。同社は創業40周年というではないか。長谷工グループの業績も絶好調だ。総合地所には完売まで時間はかかっても利益率を落としても、輝かしい「ルネ」のブランド価値を高める商品を供給してほしい。長谷工は自社ブランド「ブランシエラ」がある。これを総合地所に移管し、パイロット的マンションを供給してはどうか。
習志野市「奏の杜」防災訓練に過去最多1,000名 三菱地所グループ&管理組合
「奏の杜」防災訓練
東日本大震災から7年を迎えた2018年3月11日(日)、三菱地所レジデンスと三菱地所コミュニティは千葉県習志野市で進められている土地区画整理事業による約35ヘクタールの街「奏の杜(かなでのもり)」で、エリアマネジメント組織である一般社団法人奏の杜パートナーズと共に4度目の防災訓練を行った。隣接する戸建て街区居住者を加え、過去最大規模の約1,000名が参加した。宮本泰介・習志野市長も出席し、活動を称えた。
訓練は、三菱地所レジデンスが分譲し、三菱地所コミュニティが管理する「ザ・パークハウス津田沼奏の杜」(721戸、2013年竣工)をはじめ全4物件1,943戸の管理組合と、隣接する戸建住民や集合住宅居住者が加わって実施された。
朝9:00から安否確認、避難訓練(防災バッグ持参)を行ったのち、参加者全員が「谷津奏の杜公園」に集合。はしご車による救出訓練、トイレ組立訓練、水消火器訓練、AED 訓練などのほか、東日本大震災語り部・山田葉子氏と復興応援団・佐野哲史氏の講演会も行われた。
安否確認訓練では対象となっている2,051世帯のうち1,113世帯が応答し、実施率は54.3%に達したことが報告された。
「谷津奏の杜公園」で行われた総評集会に出席した宮本市長は、「皆さまの導きでこのような素晴らしい防災訓練が行われていることに対し、市長として心から敬意と感謝を申し上げます。また、様々な地域の課題もあろうかと思いますが、市政としてきちんと対応してまいります。
さて、昨日3月10日は東京大空襲の日、今日3月11日は東日本大震災の日です。1年の中でいちばん犠牲が伴った2日間です。それぞれで思いをはせて、平和であること豊かであることに思いを募っていただきたい。防災訓練でいちばん大切なことは、皆さんがそれぞれ知り合いであるということです。結束力が生かせる地域という利点を生かし、顔を見合わせることを目標にし、理解を深めていただければ幸いです。素晴らしい街づくりをともにしていきましょう」と呼び掛けた。
近接する千葉工業大学大学の院生らと参加した同大学附属研究室共同研究員で新習志野教務課学習支援センター職員の青木和也氏は「この種のエリアマネジメント活動などに参加すれば単位が取得できるように来年度からなる」と話した。
宮本市長
左から千葉工大・青木氏、小柴清人氏、北村勇樹氏、汐澤隆氏
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「奏の杜」の防災訓練を取材するのは今回で3回目だ。前回では、猛烈な風でメガネを吹き飛ばされた若い女性と遭遇し、パニックに陥りながらメガネをすぐ見つけたハプニングまで記事にしたことを、三菱地所コミュニティ関係者や管理組合理事の方々が覚えていてくれたようでとても嬉しくなった。
そして何より嬉しかったのは、記者もそうだが参加者の皆さんに余裕が感じられたことだった。管理組合の理事や三菱地所関係者のこれまでの努力が報われ、訓練はどんどん進化していることを実感した。
それは参加者の数と質に表れている。参加者は3年前の3倍増だし、先頭を歩く人は手書きのプラカード姿から立派な幟を掲げた〝隊長〟に変わっていた。どことなくぎこちなかった動きは一変していた。あってはほしくないが、いざというときこうした経験は間違いなく生きるはずだ。
取材に余裕も生まれた。参加者はもう他人ではなく、古くからの隣近所の友人のように思えてきた。AED訓練では「わたしは身内ならためらいなくやるでしょうが、若い女性の胸を触り、口づけをやる自信はない」などと軽口も叩けるようになった。
「あなた、やってみなさいよ」と勧められたのでやってみた。2度、3度ダメ押しされた。聞いていた通り、肋骨が折れるほどきつく押す必要があることを学んだ。しかも救急車が駆け付ける7分くらいの間ずっと、みんな交代でやらないといけないことも。
マンホールトイレ組み立て訓練
AED訓練
非常用井戸水試飲
安否確認47%→64%に 「ザ・パークハウス 津田沼奏の杜」防災訓練(2016/4/18)
初の防災訓練に350人 「ザ・パークハウス津田沼奏の杜」管理組合(2015/3/1)
女性輝けないトイレ 「利用しない」公園90%、駅38%、職場30% 国交省アンケート(2017/1/21)
液状化に悲鳴あげる浦安市 道路・上下水道ズタズタ、計画停電も(2011/3/17)
「砂上の楼閣都市」新浦安 それでも住宅はしっかり建っていた(2011/3/18)
積水ハウス 女性や子どもも快適に利用できる仮設「おりひめトイレ」開発(2014/5/1)
プラン・デザイン秀逸 地所レジ、住友に勝てるか モリモト「ディアナコート用賀」
「ディアナコート用賀」完成予想図
モリモトが5月に一般分譲する「ディアナコート用賀」を見学した。用賀駅から徒歩1分で、敷地面積が約1,700㎡という規模のマンションは24年振りの供給という。デザイン監修はいつもの今井敦氏で、インテリアデザインは鬼倉めぐみ氏。坪単価500万円をはるかに突破しても売れると読んだ。
物件は、東急田園都市線用賀駅から徒歩1分、世田谷区用賀2丁目の第1種住居地域に位置する6階建て全52戸。専有面積は37.90~107.36㎡、価格は未定。竣工予定は平成31年2月下旬。設計・監理はIAO竹田設計。デザイン監修はアーキサイトメビウス。施工は森本組。
現地は、低中層のビルなどが建ち並ぶ2方道路の角地(敷地北側に一部私道あり)。
建物は、同社が得意とする中廊下方式のワイドスパンが特徴。南向きの住戸のスパンは65㎡でも9,800ミリあり、72㎡で11,200ミリ、80㎡で9,200ミリ、最上階の115㎡では15,950ミリ。外壁には一部織部を採用。
設備仕様は、イタリア・マラッツィ社の大判タイルと挽板フローリングが無料選択制になっている。
◇ ◆ ◇
今井氏のデザインはたくさん見ているが、これもまたいい。完成予想図を見ていただきたい。実に美しい。用賀駅東側のシンボルのとなるのは間違いない(道路を隔てた南側は雑居ビルなどが建ち並ぶが)。
そして、鬼倉氏のインテリアデザインだ。同氏がデザインを担当したマンションは「パークコート千代田富士見」「東京ミッドタウン・レジデンス」「ディアナコート本郷弓町」「ドゥ・トゥール」「パークコート赤坂檜町ザ タワー」があるが、今回も最高にいい。
玄関に入ったとたん、あのイタリア・マラッツィ社の大判タイルに魅入られる。タイルは廊下、リビング、収納、洗面、トイレなど全面(主寝室はカーペット)に張られており、うっとりしてしまうほどだ。担当者によると「女性の評価が特に高い」そうだ。
同氏のデザインにどうして惚れこむのか。その理由が分からないのだが、美醜を分かつ眼力がすこしは身についているからか。一度取材を申し込もうかしら。
これは美醜と関係ないのだが、校正について。記者は自分のミスは気が付かないのだが、他人の書いた文章のミス、誤字脱字を探すのに結構自信がある。誤字・脱字が〝わたしを見つけて〟と呼び掛けてくる感覚があるのだ。莫言の850ページもある「豊乳肥臀」(平凡社)では、20年間誰も気が付かなかった重大な日本語訳のミスを発見したし、最近ではある著名な作家(名前はいえない)の新刊本で10カ所以上の誤字脱字などのミスを指摘してやったこともある。
肝心なことを忘れていた。坪単価だ。モデルルームをみてすぐ、競合すると思われる住友不動産「シティタワー駒沢大学」と、三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス二子玉川 碧の杜」と比較した。双方とも坪500万円(住友の物件は当初450万円だったが、500万円くらいなっているはず)を突破しているが、モリモトの物件は同じ単価でも負けないと思う。
同社が高値追究するかどうかは分からない。北向きのコンパクトは当然500万円以下だから申し込みが殺到するかもしれない。「ディアナコート目黒」は今一つ読めないが、こちらは自信がある。
72㎡で11,200ミリのプラン
曰く言い難し 三条実美の邸宅跡地 価格はいくらか モリモト「ディアナコート目黒」(2018/3/2)
住友不動産 どんぴしゃり坪450万円 「シティタワー駒沢大学SC」各層から支持(2017/9/6)
「音がしない」「静か」 三菱地所レジ エリア最高値「二子玉川碧の杜」に高い評価(2017/10/13)
あっぱれ!モリモト 階数を2層分減らし天井高2.7m確保「本郷弓町」(2014/5/23)
江戸の「粋」と「エスプリ」を融合 「パークコート千代田富士見ザ タワー」(2012/11/8)
ヴィンテージマンションとは何か 三井不リアルティ「リアルプラン営業部」新設
「広尾ガーデンヒルズ」
三井不動産リアルティが4月1日付で組織改正すると発表した。流通業務本部、首都圏流通営業第一本部、首都圏流通営業第二本部、地域流通営業本部を再編し、リテール売買仲介事業を担う流通業務本部、首都圏流通営業第一本部、首都圏流通営業第二本部、地域流通営業本部を統合し「リテール事業本部」とする。
これに伴い、首都圏流通営業第一本部と首都圏流通営業第二本部の各営業部を「流通営業一部」「流通営業二部」「流通営業三部」「流通営業四部」「流通営業五部」「流通営業六部」「流通営業七部」「流通営業八部」「流通営業九部」に改称する。同時に、富裕層を中心に都心の不動産売買仲介に特化する組織として「リアルプラン営業部」を新設する。
また、事業用、投資用不動産市場におけるソリューションサービスの強化するため、各営業本部を統合し「ソリューション事業本部」とする。
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不動産流通のことはよく分からないのだが、意思決定が迅速に伝達され、なおかつきめ細かなサービスが提供されるための組織改編だろう。
記者が注目したのは「リアルプラン営業部」の新設だ。同社は他社に先駆け、1985年にリアルプランセンターを立ち上げた。その後、バブル崩壊を経験しながらも店舗数を増やしてきた。現在では都心の5店舗だが、一時は9店舗くらいあったはずだ。
富裕層向けビジネスは間違いなく拡大する。国内だけでなく海外富裕層の投資需要も見込める。もちろんリテール事業部との連携は必要だが、通常のアプローチではケタ違いの富裕層に対応できないと思う。時々刻々と変わる生きものとしての不動産の実相はプロしか伝えられないのではないか。
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さて、そこで「リアルプラン営業部」が取り扱ういわゆる「ヴィンテージマンション」について考えてみた。
まず、定義。そもそも「ヴィンテージ」は、ワインの年代物・名品に付される代名詞か冠詞のようなものだ。記者は日本酒や焼酎、泡盛、紹興酒、モンゴル酒の古酒は飲んだことがあるが、ワインやウィスキーはほとんど飲んだことがない。
日本酒の古酒は高級ワインのようにすっきりしているし、泡盛の古酒を飲んだら他の酒など飲めないくらい美味しい。しかし、経験したことがないものを中古マンションにたとえることなどできない。記者は億ション中の億ションと理解している。御三家をあげれば、三井不動産レジデンシャル「麻布霞町パークマンション」、三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス千鳥ヶ淵」(三井「千鳥ヶ淵」もいいが)が東西の横綱で、住友不動産、三井不動産、三菱地所、第一生命保険の「広尾ガーデンヒルズ」が名誉会長のような存在だ。「パークマンション檜町公園」はシートがかかった外観しか見ていないので評価のしようがない。
三井リアルがどう定義付けしているかわからないが、東京カンテイは2016年のリポートで、「少なくとも築10年以上(2015年12月時点)を経過していること。専ら住宅地(≒住居用途地域)に所在していること。物件の平均専有面積が100㎡前後であること(少なくとも90㎡以上であること)。物件から発生する中古流通事例の90%以上が坪300万円以上であること」とし、その数は237物件としている。
これには同意できるものも同意できないものもある。築年数は関係ないと思う。確かに時を経ても資産性が保たれているという意味では「築10年」は一応の説得力があるが、分譲開始の時点で将来にわたりその価値が維持されるであろうと思われる物件はある。
「専ら住宅地に所在」もどうか。確かにバブル発生前は〝億ション〟といえばほとんど100%近く住居系エリアに所在した。商業系や準工地域で億ションが分譲されるようになったのはバブルの最盛期のころからだ。今では、タワーマンションを含め商業系エリアのほうが多いくらいだ。
富裕層の選好基準も変化している。「専ら住宅地」に限定するのは適当ではない。三井レジの「赤坂」「青山」(これをヴィンテージと呼べばだが)は商業立地のタワーだ。
「物件の平均専有面積が100㎡前後」はまずまず同意できる。これを絶対条件とするには疑問もあるが、コンパクトマンションをヴィンテージと呼ぶには抵抗がある。
「坪300万円」も根拠が希薄だ。「広尾ガーデンヒルズ」だって坪3,000万円を突破したこともあるし、リーマン・ショック後は坪300万円まで下落したこともある。坪単価は重要な基準ではない。郊外エリア№1の物件も該当するようにすべきだと思う。
同社の定義で欠落しているのは、基本性能・設備仕様、住環境・居住性能だ。これらの価値は自ずと坪単価に反映されるが、定義として外すわけにはいかない。絶対条件だ。売主や施工会社のブランドも加えるべきだ。そうすればランク外になる物件は続出する。
ここまで書いてくると、「ヴィンテージマンション」なるものはあるようでないともいえる。前提条件が異なれば、結果は全く違ったものになるということの証左だ。
本物の億ションは、東京カンテイが示している237物件のうち半分は減り、一方で加えるべき物件も増えるのではないか。
そこで、不動産流通各社に提案だ。自社の基準を設け(設けているはずだ)、それこそランキングとして公表したらどうか。なによりも物件の特性、価値を知っているのは流通会社だからだ。それぞれ評価が異なったら面白い。ヴィンテージマンションを事業主に順位付けするのもいい。三井レジが3~4割を占めるのか。
曰く言い難し 三条実美の邸宅跡地 価格はいくらか モリモト「ディアナコート目黒」
「ディアナコート目黒」完成予想図
モリモトが4月に分譲する「ディアナコート目黒」を見学した。東京建物「目黒」とは反対側、駅から徒歩5分の落ち着いた雰囲気がある第1種中高層住居専用地域の一角。敷地は三条実美の邸宅跡地の一部。いったいいくらになるのか、普段は口が軽い(失礼、正確には自信たっぷり)同社関係者も口をつぐんでいる。
物件は、JR山手線目黒駅から徒歩5分、目黒区目黒1丁目に位置する敷地約2,392㎡の7階建て(建基法では地下2階地上5階建て)全89戸。専有面積は32.04~87.07㎡、価格は未定。竣工予定は2019年8月下旬。設計・監理はIAO竹田設計。デザイン監修はアーキサイトメビウス。施工は東亜建設工業。
敷地は南北軸が細長い長方形で、西下がりの傾斜地。敷地東側はホテルプリンセスガーデンに隣接。道路を隔てた南側には2000年の募集時に入居希望者が殺到した賃貸マンション「アクティ目黒」(234戸)が、北側には目黒合同庁舎がある。同社が取得したのはホテルの敷地の一部で元駐車場。
建物のデザイン監修は、同社の〝定番〟ともいえるアーキサイトメビウスの今井敦氏で、南側の正面は黒御影石とライムストーンの縦と横ラインを強調した端正な表情が特徴。
住戸は内廊下方式の西向きと東向き。西向きは間口7.7~11.3mのワイドスパンで、最上階は20.40m(194㎡)と18.25m(164㎡)。
専有部のインテリアデザインは、「ディアナコート浜田山」も担当した西山建築デザイン事務所・西山広朗氏。床は敢えて凹凸を出したタイルを採用。壁はオークの突板、リビングドアはオリーブウォールナット。玄関扉も木製。
◇ ◆ ◇
敷地が三条実美の邸宅跡地であることは、記事を書く段階で分かった。現地を見たときは、ホテルの真後ろ(西側)で敷地が真っ二つに切られていたので、ホテルが敷地の一部を売却したのだろうということは容易に想像がついた。
そのホテルの敷地は見事だったが、エントランスの案内表示は一部壊れており、廃業でもしたのかと思える風情だった。コーヒーでも飲もうかと入ったが、そのようなサービスはされていなかった。
ホテルとモリモトのマンション敷地を一体として再開発したら間違いなく坪1,000万円でも売れると思った。
どうして三条実美の邸宅跡地に〝プリンセス〟などの名がついているのか不思議に思い調べた。人様の記事を引用するわけにはいかないが、フジモリ大統領、亀井静香、ライベックスなどが登場する。曰く言い難し、そのものだ。
さて、肝心の坪単価だが、これが読めない。建物の正面には7階建てのマンションが建っており、全8スパンのうち3スパンくらいは影響を受けそうだ。これはマイナス材料だ。また、東向き住戸は日照が確保できないことなどを考慮すると平均単価は650万円がアッパーと見たがどうだろう。最上階は坪2,000万円でも安いかもしれないが、同社はそんな高値を追求しないのではないか。
高値で始まった年初の株価からそのまま都心部は突っ走ると予想したが、その後、株価が急落し、変調を来した。各社とも値付けに慎重になっているようだ。森本浩義社長も頭を悩ましているのではないか。
10.2mスパンで専有面積は74.52㎡
野村不動産 恵比寿の駅近再開発着工 マンションは88戸、ホテルはプリンス
完成予想図
野村不動産が2月22日、恵比寿の旧国家公務員宿舎跡地の再開発プロジェクトを着工した。
「2020年に開催される国際競技大会時等の観光客の増加に伴い不足する都市部の宿泊施設の整備」と「高齢者・子育て支援施設整備」という国の定める条件を満たして選定された事業。
物件は、JR恵比寿駅から徒歩5分、渋谷区恵比寿南3丁目に位置する敷地面積約4,035㎡、11階建て延床面積約16,078㎡。主要用途はマンション(88戸)、ホテル(82室)、介護施設(デイサービス)、保育施設。設計は日建ハウジングシステム、鴻池組。施工は鴻池組。マンションの入居開始は2020年3月下旬。
マンションは、駅近と高台立地を活かし、敷地面積の約21%を緑地とするほか、重厚感のあるファサードデザイン、オーダーメイド対応とする。併設するホテル、介護施設、保育施設とのサービス連携も行う。専有面積は約60~200㎡。
ホテルは、プリンスホテルの次世代型宿泊特化ホテルブランド「プリンススマートイン」として開業する。
◇ ◆ ◇
記事をアップするのが遅れたのは忙しかったこともあるが、どうしても単価予想をしたかったからだ。
いま、恵比寿駅圏では住友不動産が分譲中で坪単価は700万円。順調に売れているそうだ。三菱地所レジデンスも分譲を開始した。取材を申し込んでいる。坪単価は700万円を切っているようだ。モリモトがこれから目黒駅5分で分譲する。坪単価は600万円を下回らないと思う。パナホームが代官山で分譲するが、こちらは読めない。900万円はあるかどうか。取材を申し込む予定。
さて、これらと比較すれば、野村不動産のマンションは立地条件を考慮すれば坪単価800万円以下はあり得ないと思う。では900万円はどうかといえば自信がない。三井不動産レジデンシャルの青山を超えることはないと見たが、敢然と挑戦する可能性は否定できない。同社は代官山や六本木で味を占めた。
竣工販売に納得 しっかりした商品企画で差別化 総合地所「ルネ北綾瀬」
「ルネ北綾瀬」(バルコニーに注目)
総合地所は3月1日、「ルネ北綾瀬」のメディア向け見学会を行った。1月末から竣工販売を開始しており、全58戸中25戸を成約するなど順調なスタートを切った。しっかり造りこみを行った好物件だ。
物件は、東京メトロ千代田線北綾瀬駅から徒歩6分、足立区東和5丁目に位置する7階建て全58戸。専有面積は59.97~77.08㎡、予定価格は3,300万円台~5,300万円台。坪単価は214万円。建物は2018年1月9日竣工済。施工は長谷工コーポレーション。
現地は、商業地からやや離れた戸建てや中層マンションなどが建ち並ぶ住宅街。近くにはスーパー、公園、保育施設がある。
現在、北綾瀬駅は綾瀬駅から乗り換えで0番線から発着しているが、遅延解消と利便性の向上のため、駅のホームの延伸を行い、代々木上原方面の直通運転を来春に開始する予定で工事が進められている。開業すれば1番線となり、現地から駅までは徒歩5分と短くなり、大手町へは23分となる。乗り換え時間を考えると数分は都心に近くなる。キャッチフレーズで「東京0▷1」とうたっているのもそのためだ。
住戸プランは南向きが中心。グッドデザイン賞を受賞した可動収納ユニット「ウゴクロ」を竣工物件では初めて14戸に装備しているほか、競合物件には付いてないディスポーザーや食洗機、カップボード付き。
バルコニーはアルミ格子やガラス・パネル手すりでなく、5階部分まではコンクリートを立ち上げ、その上にガラスルーバーを添えることで縦のマリオンと横のルーバー、ガラスが印象的なデザインとしている。内廊下側も壁はタイル仕上げとし、面格子は、光を取り込みながらプライバシーも確保する機能を持つ上下セパレート型。
今年1月20日にモデルルームをオープン。来場者は約150件で、これまでに25戸を成約。DINKS層も多いのが特徴。現居住地は足立区が55%、年収は400万円台が20%、500万円台が15%、600万円台が20%。
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いま、供給物件すべてをメディアに公開しているのは同社だけだ。しかも、坪単価から販売状況、顧客の属性・特徴など細かなデータまできちんと別紙に添え発表している。こうした企業姿勢に頭が下がる。その割に見学するメディアが少ない。情けない。ものを見ないと絶対成長しない。記者の優劣はどれだけものを見たかで決まる。
商品企画もいい。同社は安宅地所当時から施工は長谷工コーポが圧倒的に多かったが、〝丸投げ〟はしなかった。マンション不況の時などは需要を喚起する物件をたくさん供給した。記憶は確かでないが、施工は長谷工で、設計は日建だったか東急設計だったかを起用した「ルネ蒲田」が大ヒットした。長谷工が変るのもそのころか。双方はとてもいい関係にあった。
今回の物件も、足立区居住者には申し訳ないが、外観にタイルを張り巡らし、この程度の規模にディスポーザーを採用するデベロッパーは少ないはずだ。
グロスを抑制するため専有面積圧縮型もあるが、これは致し方ない。普通のサラリーマンが無理なく取得できる住宅政策を取らない政治が悪い。このままだと23区で子育てファミリーがゆとりあるマンションを買えなくなる時代がやってくる。もうやってきたか。
長谷工コーポには自社ブランド「ブランシエラ」があり、首都圏では「板橋西台」と「浦和駒場」でパイロット的事業を行った。これからは総合地所がその役割を担うようにすればどうだろう。長谷工の技術とルネの商品企画が融合したら素晴らしいマンションができる。
エントランス
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どうでもいいことだが、面白い話を2つ。先日の長谷工コーポ「東十条」の賃貸・有料老人ホームの見学会で外を歩く時のスリッパにカイロが入れられていたことを書いた。今回は、暖かくカイロは必要なかったのだが、外用のゴム製スリッパがまたよかった。土踏まずの部分が盛り上がっており、ネコの肉球のように柔らかく足の裏にフィットした。これは同社が長谷工グループ入りした効果の一つか。それとも長谷工が真似をしたのか。
もう一つは「ウゴクロ」。記者も試してみた。軽くはないが両手を使えば移動できる。そこで「兄弟姉妹が陣取り合戦をやるのではないか」と発したら、別の記者は「通知表の出来で決めればいい」と言った。なるほど。(彼も兄弟だか姉妹がいたはずだ。彼は勝ち目がないということか。勝ちを譲るなんてえらい)。
記者などは兄姉が3人いたが、束になっても記者にはかなわなかった。しかし、出来の悪い長兄は10畳間を独り占めしていた。記者はわずか2畳間で冬は震えながら勉強した。
総合地所に提案。65㎡の田の字型3LDKはリビング・ダイニングが10.6畳大、洋室が5.8畳大、5.4畳大、5.0畳大だ。仮に夫婦と子ども2人だったらどう使うのか。夫婦が一番大きな部屋を使うとしても1人当たりにすると子どもより狭い。これはいかがなものか。
子どもの寝室は2畳大あれば十分だ。大きな部屋を与えたら出来のよい子どもに成長するとは限らない。どこかチャレンジするデベロッパーは現れないか。マンションの間取りは劇的に変わる。
あっ、そうだ。このマンションは「駅から7分以内」だし「マンションは足立区を買え」にも合致する。
「ウゴクロ」(梁を隠しているのがポイント)