住宅立地に特化 コスモスイニシア レンタルオフィス第一弾「目黒不動前」オープン
「MID POINT(ミッド ポイント)目黒不動前」外観
コスモスイニシアは11月15日、住宅立地に特化したレンタルオフィスブランド「MID POINT」の第1弾「MID POINT(ミッド ポイント)目黒不動前」を2018年11月20日(火)にオープンすると発表した。
現在供給されているシェアオフィス、コワーキングスペース、レンタルオフィスなどは都心部が中心で、1名から入居可能な施設は少ないことに着目、「住居と職場の中間点」立地で付加価値の高いサービスを提供する。
第一弾は、築22年・8階建てのオフィスビルを同社が購入し、エントランス・専有部・共用部をフルリノベーションした「リードシー目黒不動前ビル」の5~8階部分をレンタルオフィスとして改装したもの。
記者発表会・内覧会で同社執行役員・藤岡英樹氏は、「2016年に公表した中期経営計画2018は目標通り進捗しているが、売り上げ増のエンジンになっているのはソリューション事業。アパートメントホテルもそうだが、今回のレンタルオフィスも他社との差別化が図れており、付加価値の高いサービスが提供できる」と話した。
物件は、東急目黒線不動前駅から徒歩5分、品川区西五反田3丁目に位置するリードシー目黒不動前ビル5階~8階。延べ床面積は約150坪。区画数は1~3人用まで67区画。一人用ブースの広さは1.5×1.5㎡が中心。月額賃料は1人用が29,000円~/共益費15,000~。共同企画として乃村工藝社がデザイン監修を、非営利型株式会社Polaris(ポラリス)がラウンジ運営をそれぞれ担当する。
特徴は、①1名から入居できるほか、リラックス空間、コミュニティ空間として利用できる共用ラウンジおよびテラスを設置②コミュニティ形成を支援するコミュニティマネージャーが常駐③キッチン&バーカウンター、食器および調理器具を常備④ミーティングスペース、TELブース、PHOTOブースなどの共用スペース⑤専用駐輪場、シェアサイクルサービス、宅配ボックス設置――など。
入居予定者からは、「ラウンジが利用できてこの利用料は割安」(30代男性/経営コンサル)「自宅からも近く、コワーキングではなく、固定席で利用できるところがよい」(30代男性/スタートアップ企業)「他の物件と比較して個室が広く、デザインもよい。仕事をするイメージが沸いた」(20代女性/フリーランス)などの声が寄せられている。
共用ラウンジ
テラス(喫煙コーナーあり)
Before Afterではありません 事業に応じて神出鬼没の藤岡氏(左は「MIMARU京都 堀川六角」で、右はこの日の会見。法被姿のほうが似合いそう)
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国が推し進める働き方改革を受け、テレワークを後押しするサテライトオフィス、コワーキングスペースなどの施設が加速度的に増えそうなことは容易に想像できる。記者もこれまで数回、同じような施設を取材して、賃料の高さやその至れり尽くせりの豪華ぶりに〝生産性向上が前提ではないのか〟〝却って労働強化にならないか〟などと考え込んだこともある。
今回の施設は確かに個室ブースが広く、ラウンジでは酒も飲め、タバコも吸えるスペースが確保されているのがいい。
賃料は正直よく分からないが、同社が想定している稼働率90%などから計算したら坪あたり月額賃料は2万円くらいになった。賃貸マンションよりははるかに高く、かなり高い利回りが期待できる。賃料も高く競争も激しい都心部のレンタルオフィスとの差別化も図れていると思った。
デザイン監修を担当する乃村工藝社の作品は、東京建物「Brillia一番町」のモデルルームで見た。最高に素晴らしかった。同社は新しい事業に力を入れているようだ。
ラウンジを運営するPolarisは、2010年12月の内閣府による地域社会雇用創造事業ビジネスコンペに採択され、2012年2月に設立。
当日配布された資料には「子どもが生まれ、成長し、女性としてはもちろん、母として、これからの社会、特に愛着のある地元の地域社会のことを考え、自分たちは何ができるだろうかと、創業者である市川望美さんはコンペにチャレンジした。2011年8月、…京王線仙川駅から徒歩3分、商店街の中にある店舗の上の3階の古い住居を改装してコワーキングスペース「cococi」(ココチ)を地域社会で知り合った仲間たちと3人で立ち上げた」「設立以来6年で約500人の女性の多様な仕事、社会との接点を作りだす企業になった」とある。
一人用ブース
コミュニティマネージャーのユニフォーム(これは夏用か。会場にはユニクロ製のカシミヤのセーターが置かれていた)
民間マンション第一号建て替え 旭化成不レジ「アトラス四谷本塩町」完売
わが国の民間マンション第一号「四谷コーポラス」の建て替え旭化成不動産レジデンス「アトラス四谷本塩町」が6月の分譲開始から10月末までに完売した。
物件は、JR四ツ谷駅から徒歩6分(東京メトロ南北線四ツ谷駅から徒歩5分、新宿区四谷本塩町に位置する6階建て全51戸(非分譲23戸含む)。最多価格帯は5,500万円台、7,300万円台。坪単価は462万円。竣工予定は2019年7月下旬。施工は佐藤秀。
購入者は医者・経営者が半分、他は資産家や会社員など。立地が評価された。
同社はまた、渋谷駅前の「宮益坂ビル」建て替えマンションについて「一般販売(広告)を行うかも含めて未定」としている。
旭化成不レジ 民間初の分譲「四谷コーポラス」建て替え説明会・見学会に80名(2017/9/5)
三菱地所「泉パークタウン」 最終章721区画のスマートタウンに着手
地鎮祭(左から大成建設・村田誉之社長、松下氏、パナソニック・井戸正弘執行役員、西田氏、仙台市・藤本章副市長、勝田氏、三菱地所設計・林総一郎社長
左から西田氏、松下氏、勝田氏
三菱地所は11月12日、仙台市泉区の大規模複合タウン「泉パークタウン」(開発面積約1,070ha)の最終章となる「(仮称)泉パークタウン第6住区東工区開発計画」の地鎮祭を行い、パナソニック、パナソニックホームズ、関電不動産開発とともに先進の技術やサービスを駆使して低炭素社会・循環型社会の形成に寄与する社会課題解決型の街づくりを進めると発表した。
地鎮祭に臨んだ同社・吉田淳一社長は「泉パークタウンは来年で45周年を迎える。最終開発のこの第6住区では、パナソニックさん、パナソニックホームズさん、関電不動産開発さんをパートナーに、SDGsの11番目に示されている『住み続けられる街づくり』の実現に向けオールジャパンの社会課題解決型の開発を行う」と挨拶。
また、パナソニックホームズ・松下龍二社長は「品格のある街づくりに参加できることを誇りに思う。今年4月に社名を変更した当社が目指しているのは『強さ』と『暮らしやすさ』のNo.1。総力をあげて価値の高いスマートな街づくりに貢献する」と話し、関電不動産開発・勝田達規社長は「仙台では松下興産時代から不動産開発を行ってきた。泉パークタウンは目標となる開発だった。今回、パートナーに選ばれて光栄」と語った。
三菱地所の当地での40年を超える街づくりのノウハウに加え、パナソニックグループのエネルギー・セキュリティ・モビリティの先進技術と住まいづくり、関電不動産開発が仙台圏で行ってきた街づくりの経験を融合させ、エネルギー、交通・物流、健康、安心・安全などの課題に挑戦する。
開発計画は、開発面積約481,194㎡、計画戸数721区画。設計監理は三菱地所設計。施工は大成建設。販売開始は2022年春。このほか未着工の「中央西」地区も合わせると計画区画は1,965区画。
一区画は平均70坪くらいになる模様だ。同社関係者は「年間100区画は販売したい」と話した。
地鎮祭 鍬入れ
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同社は地鎮祭後、泉パークタウンの主要ポイント17カ所をバスで巡るメディアツアーを実施した。
記者は過去2度、さらっとだが見学したことがある。1区画200坪はありそうな「桂ガーデンコート」に圧倒され、街路樹など街並みの美しいのと、立派なホテルがあることは確認しているが、1974年の街びらきから現在まで、全1,070haのうち86%・926haが造成済みで、10,156世帯・25,835人が居住し、アウトレットモール、ゴルフ場にテニスクラブ、乗馬クラブ、宮城大学、図書館、物流施設などが整備されているのに驚いた。
取材中ずっとこれほどの規模の複合タウン開発は首都圏でどれほどあるか考えた。国家的プロジェクトである「多摩ニュータウン」(施行面積2,884ha)「千葉ニュータウン」(同1,930ha)「港北ニュータウン」(同1,317ha)などには及ばないが、わが国最大級の千葉県の組合施行による土地区画整理事業「国分寺台」(同380ha)の約2.8倍だ。
ランドスケープデザインなどの美しさについても考えた。これは、歩車完全分離を実現した多摩ニュータウンなどのほうが勝るのではないかと思ったが、街路樹の景観は五分五分か。多摩ニュータウンは落葉樹もあるが、常緑樹のクスノキ、シラカシなとも多い。一方の泉パークタウンはメタセコイア、ユリノキ、カツラ、イチョウ、ケヤキ、プラタナス、カエデ、トチノキなどの落葉樹が中心だ。冬場の日照を確保するためか。
生活利便施設、文化施設の集積でも、首都圏の大規模開発に負けない。国際会議が開け、サッカーワールドカップでイタリアチームが借り切ったロイヤルパークホテルのような立派なホテルは多摩ニュータウンにもない。それどころか、埼玉県や千葉県には国際級のホテルは一つもない。ゴルフ場があるのは、多摩ニュータウン(開発区域外だが隣接)や「季美の森」くらいではないか。
そんなこんなを考えると、規模はともかく、もっとも似ているのは新百合ヶ丘の街か、記者が〝奇跡の街〟と呼ぶ山万の「ユーカリが丘」(245ha、計画戸数約8.400戸、計画人口約3万人)か。タウンマネジメント手法を導入しているのも「ユーカリが丘」によく似ている。
なぜ、そんな途方もない開発ができたのか。配布された資料には1970年当時の中田乙一社長の年頭所感が紹介されている。「買った土地を造成し、一割か二割の儲けをみて売るといったことは、当社のやる仕事ではない。我々はよそがやらないこと、我々の資力、経験、智能をフルに活用できる分野に取り組んでいく」と。
吉田社長が同社に入社したのは1984年だ。中田社長の年頭所感など知る由もないはずだが、その思想は生きていたのか。今どき48ha、721区画もある開発に乗り出すデベロッパーなど皆無だ。土地代はただ同然かもしれないが、造成に3年かかる。いったいどのような街を創るのか、楽しみだ。
メタセコイアの街路樹が美しい柴山公園付近のメインストリート
手前が柴山公園
タウンマネジメントも行うパークタウンサービス
記者発表会を取り仕切った三菱地所東北支店主事・宮﨑眞一氏(同社野球部黄金時代の主力の一人)
わが国初CLT床材を利用した高層建築物 三菱地所 仙台「高森2丁目」現場見学会(2018/9/15)
売れ行き順調ほぼ1年間で134区画契約積水ハウス「スマートコモンシティ明石台」(2013/3/29)﨑
分譲では初か オーバル型の中庭がいい 20数年前の〝アート〟蘇る 野村不「東雲」
「プラウドシティ東雲キャナルマークス」
野村不動産が11月下旬に分譲する「プラウドシティ東雲キャナルマークス」のモデルルームを見学した。わが国初と思われる楕円形(オーバル型)であるのが特徴で、反響が多いことから全472戸のうち第1期分譲は「100戸は超えたい」意向だ。
物件は、東京メトロ有楽町線豊洲駅から徒歩10分、江東区東雲一丁目に位置する15階建て472戸。専有面積は60.86~136.99㎡、価格は未定だが坪単価は330万円になる模様。2020年1月下旬。施工は長谷工コーポレーション。
現地のアドレスは「東雲」で、2005年に竣工した伊東豊雄、山本理顕、隈研吾氏らが設計して話題になった賃貸マンション「東雲キャナルコート」のほか、三菱地所「Wコンフォートタワーズ」、アパ「アップルタワー東京キャナルコート」、大成有楽不動産ほか「ビーコンタワーレジデンス」、丸紅ほか「キャナルファーストタワー」、野村不動産「プラウドタワー東雲キャナルコート」など6棟のタワーマンションが分譲された再開発エリアの一角。24時間営業のイオンに近接しており、エリアの中では豊洲駅にはもっとも近いマンション。
敷地面積約17,761㎡の外周部に平置き駐車場(163台)や遊歩道などを設け、建物はオーバル形状とし、その中に、代々木第一体育館のアリーナ面積とほぼ同じ長辺約90m、面積約4,000㎡の中庭を設置するのが最大の特徴。中庭には様々なガーデン、プロムナード、テラス、水盤などを配し、住棟の1階に設置する10の共用空間と結ぶ。
住戸プランはファミリー型中心に基本50タイプ。同社と長谷工コーポ、ブリヂストンが共同開発したキッチンの位置を排水竪管から最大約14m(従来は約3m)まで離せるサイホン排水システム「ミライフル」のほか、長谷工コーポが開発した可動収納ユニット「ウゴクロ」を採用しているほか、IoTの技術も導入する。
主な設備仕様は、ディスポーザー、食洗機、ミストサウナなど。天井高は2450ミリ(11階まで)-2550ミリ(12~14階)-2600ミリ(最上階)、サッシ高は2020ミリ、フローリングは約300ミリの幅広タイプ。
販売を担当する同社の川井亮太朗氏は、「当初はタワーや板状の多棟構成プランも検討したが、思い切ってオーバル型を採用した。同種の住宅は賃貸では福岡に事例があるのを確認しているが、分譲では確認できていない。近接のタワーマンション群より豊洲駅に近く、キャナルコートからの購入希望がとくに多い。中庭を眺められるタイプが人気」と語った。第1期戸数については「100戸はいきたい」と強気な姿勢を見せている。
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高くなるとは予想していたが、「Wコンフォートタワー」の2倍以上だ。湾岸人気はいつまで続くのか。豊洲駅近では東急不動産の分譲も控えているが、こちらは当初予想されていた値段よりはかなり〝安く〟なるようだ。
オーバル型は、似たようなものでは三井不動産レジデンシャルのタワーマンション「パークコート青山ザ・タワー」や商業・オフィス「ミッドタウン日比谷」で見ているが、今回の物件は何といっても大きな中庭があるのがいい。購入希望は中庭を眺められるタイプのほうが多いというのも当然だろう。
模型やパンフレットなどを見て、川井氏の説明を聞いたりして、二十数年前に見学した「くまもとアートポリス」(KAP)を思い出した。優れた5~6物件の建築物を見て回ったのだが、もっとも感動したのは建築家の山本理顕氏が設計した熊本県営保田窪第一団地だった。
この賃貸住宅は中層のロの字型の長方形だったが、建物の内と外を緩やかにつなぎ、各住戸は中庭に面してバルコニーなどが配置されていた。中庭で多くの子どもたちが遊んでいたのが印象的だった。
いま、熊本県のホームページで調べたら「各住戸は中庭や広いテラスを持ち、常に外部と接することができるようになっている。その結果、公営住宅としては、かつてないほど大きな専用空間をも持つことになった」と設計概要に記されている。「くまもとアートポリス」は現在も継続して意欲的な建築物の建築にチャレンジしているようだ。
今回の物件は外廊下方式なので、バルコ―や居室から直接中庭を眺められる住戸は半分もなさそうなのが残念だが、コストを考えたら二の足を踏むのも理解できる。2戸1はともかく3戸1、4戸1エレベータにして両面バルコニープランを提案していたら、申し込みが殺到したのではないか。
モデルルームは1つ。やや変形間取りだったが、デッドスペースそのものはあまり生じない印象を受けた。家具やジュータンなどの収まりを気にする几帳面な人はどう感じるか…。洗面の引き戸はソフトクローズ機能付きではなかったのはいただけない。細かな点にも手を抜かないのがプラウドのはずだ。
マンションはアートだ 三井不レジ「パークコート青山 ザ タワー」竣工(2018/4/11)
坪3.5万円!億ション以上 現地見ずに家賃判断 審査は適正か セーフティネット住宅
賑やかに人が行き交う表通りから一歩入ったT字型道路の奥に件の建物はあった。道路幅は4mギリギリか。周囲は戸建てあり、モルタル造りの店舗併用住宅あり、マンションあり…典型的な下町の街並みだ。用途地域は〝何でもあり〟の準工か、コンクリで覆えば敷地一杯に建てられる商業地域か、その両方か。
建物は木造モルタル2階建て。敷地は20坪あるかどうか。南向きだが、南側には空き家の戸建てを挟んで高い建物が建っており、日照は確保できそうもない。西側道路に背を向けた外壁はグレー。外壁と対照的な南側の入り口にある赤の玄関扉には人の出入りを拒絶する頑丈なチェーンが掛かっており、小さな全ての窓は閉まっている。人の気配は全くない。
敷地の南側には猫の額ほどの自転車置き場がある。値段は高くはなさそうな錆も出ている一部は倒れたままの自転車数台が隣家との境界線に並行ではなく斜めに置かれていた。斜めなのは出入りスペースを確保するたか。
隣家との境の砂利敷きの部分には、日陰に棲む花も咲かない隠花植物か、それとも劣悪環境をもろともせず悪の大輪を咲かせる顕花植物か、名も知らない雑草が車輪の隙間から勢いよく伸びていた。
しばらく様子をうかがったが、野良猫にでも誰何されるのも怖く立ち去った。
空振りは十分予想していた。しかし、ただでは起きないのが記者だ。駅から目的地までの数分の距離に、全国区の誰もが知っている店を含め4軒の賃貸物件を主に扱う不動産会社があることを確認していた。街からどんどん本屋、電気屋、八百屋などが消えていくのにわが不動産業界は元気だ。片っ端から聞くことを決めた。
1軒目。店舗内には若い女性が一人、指にはアート。客はいない。「すいません、そこに建っているセーフティネット住宅を見に来たのですが、話を伺える方はいらっしゃいませんか」
-アプローチがまずかった。女性のプライドを著しく傷つけたようだ。「わたしは受付もしますが、営業もします。セーフティネットは存じ上げておりません」言葉は慇懃だが、顔はすぐ立ち去れと語っていた。
2軒目はRBA野球大会にも参戦しているメジャー。同じように質問したが、「セーフティネット住宅? 分かりません」2球目も空振り。
そこで反省。三球三振は避けたい。記者は投手であり打者だ。投手としては単刀直入に聞きすぎた。ここは搦め手から攻めるべき。第一、アポもなしに、白髪交じりの老人斑とも死斑とも区別がつかないシミを顔中に浮かばせ、くたびれたスーツを着ている記者に関りを持とうとしないのは当然だ。
3軒目は、下手に徹した。打ちやすい球をなげた。「わたしのような高齢者とか貧乏人とか、肌の色が違う人の入居を拒否しないようにと国が定めたセーフティネット制度があります。まあ、居室内にトイレも浴室も炊事場がないシェアハウスと似たり寄ったりのものですが…」と切り出した。
店の青年はお客と勘違いしたのか、「シェアハウス? うちも取り扱っています」とファイルを見せてくれた。すぐメモした。「3.9万円、10㎡」「4万円、12㎡」。ともに電気、ガス、水道料金含む。
そして聞いた。「これって坪にするといくらですかね」と。「坪? 坪じゃわかんない。㎡か畳数じゃないと」「えっ、お宅はいくつ? わたしは69。坪に換算しないと不動産や住宅の価格を計れないもんですから」「26歳ですが、…えっと坪1万くらいですよ」「では、わたしがいま見てきた物件を検索してみてください。ホームページですぐ分かりますから」
営業マンは物件のホームページに掲載されている物件の写真などをチェックした。記者は一転、ここぞとばかり畳み込んだ。「ほら、坪3.5万円ですよね。これって、とんでもない価格じゃありませんか」「…でも、洗濯機などみんな新しいし…高すぎるとは言い切れない。値段を決めるのは大家さんですからね」
ダメだ。お礼を言って飛び出した。坪1万円と3.5万円の比較もできないのかと。腹が立った。
4軒目は、いかにも歴史を感じさせる一間もない間口の小さな店だった。机は1つ。記者よりは若いが高齢者の仲間入りをしていそうな男性が暇を持て余しているのか新聞を読んでいた。
「何? 入居拒否。セーフティネットなんか知らないよ。誰を断ろうとそれは大家が決めること。われわれ仲介の仕事は大家のために働くこと。35年間やっているんだから。仕事は信用だ。えっ、坪3.5万円のシェアハウス? そりゃべらぼうだ。かぼちゃ(へちまではなかった)と一緒だよ」
収穫十分。シェアハウスは立派な事業として浸透しており、セーフティネット住宅はまったく認知されていないことが分かった。記者はカボチャをよく食べる。
◇ ◆ ◇
冒頭の表は、東京都のセーフティネット住宅の全268戸の登録住戸のうち主なものを抽出したものだ。バスもトイレもないわずか7㎡(2.1坪、4.2畳)の部屋を1戸とみなすことの是非はともかく、268戸を棟に置き換えると二十数棟にとどまる。20例を示した表は都のセーフティネット住宅をほとんど網羅しているはずだ。
表から分かることは、居室内にトイレ、洗面、浴室、台所、洗濯室などがないものの家賃はおおむね4~6万円、居室面積は7~12㎡、坪(3.3㎡)単価は2~3万円だ。
居室面積が7㎡しかないものがどうして多いか。少し説明しよう。
省令では、登録住宅の要件を定めており、必須要件の耐震性のほか、面積については25㎡(共用部分に水回り設備を備えているものは18㎡)以上としている。これとは別に、共同居住型住宅(シェアハウス)では、①住宅全体では40㎡以上②居室面積は9㎡以上③共用部分に居間、食堂、台所、便所、洗面、浴室またはシャワー室などを設け、便所、洗面、浴室は居住人数概ね5人に1カ所以上を基準としている。
ただし、地方公共団体が供給促進計画を定めれば、耐震性の要件を除き緩和することができることになっており、都は今年3月、「多様なニーズを満たす」という理由から面積を省令の9㎡から7㎡に引き下げた。だから7㎡が多い。
ここで指摘したいのは、水回り設備が整っている住宅は相場並みの価格だが、シェアハウス型は全て賃貸住宅の相場を大きく上回り、中には〝法外〟な家賃もあるのではないかということだ。
具体的に事例を見てみよう。日暮里駅から徒歩5分で、家賃が7.5万円、面積は7㎡だから、坪単価は3.5万円。居室内に水回りがないから明らかにシェアハウス型だ。記者は法外な値段だと思う。あり得ない。全ての設備が整っている〝億ション〟の代名詞「広尾ガーデンヒルズ」だって坪単価は2万円くらいではないか。坪3.5万円は都心の一等地のビルの賃料単価だ。
登録住宅の規則には、「家賃が近傍同種の住宅の均衡を失しないこと」と定められている。住宅と呼べない(と記者は思う)シェアハウスを賃貸住宅と同等に扱い、その基準で家賃が適正かどうかを測るモノサシが果たして適当か。
そこで、家賃が適正かどうかを判断する東京都民間住宅課に問い合わせた。担当者は「当該物件の現地調査は行っていないが、ネットで検索した近傍同種の住宅(シェアハウス)と比較して適正と判断した。審査は国交省の基準に沿って適正に行っている」と語った。こうも付け加えた。「問題があるなら指摘してほしい」と。現場を見ないで審査するのは問題ではないのか。
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読者の皆さん、品が悪い記者を許していただきたい。〝味噌くそ一緒〟とはこのことを言うのではないか。現場を見ないで、ネットで検索して出てきた物件の質を調べるのでもなく、家賃の額だけで判断して「適正」とする横着が役所では通用する-これは許せない。
生活困窮者や高齢者、子育て世帯などの入居を拒まず、居住安定を図るセーフティネット住宅制度は、このままでは目的とは真逆の最低の居住水準を固定化、下支えすることになるような気がしてならない。さらに言えば、セーフティネット住宅は改修費補助、家賃補助の対象となるだけに、シェアハウスがそのモデルとして定着すれば、もっとも救われるべき住宅確保要配慮者の賃貸住宅の質の向上が後回しになる危険性をはらんでいると思う。
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記者はシェアハウスそのものを否定するわけではない。一定のニーズは確かにあるはずだ。以下に示した事例のように〝単価では計れない〟価値がある物件も少なくないのだろう。
しかし、シェアハウスなる言葉がなかった20年前以上昔に見た走りともいえるそれは〝たこ部屋〟だと思った。
国交省も都の職員も、そしてシェアハウスをもてはやした学者先生方にもぜひ市場に流通しているシェアハウスを見学していただきたい。手放しでほめちぎっていいのか。
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住宅セーフティネット法の改正法が昨年10月25日に施行され、高齢者、低額所得者、子育て世帯などの住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録情報を公開する「セーフティネット住宅情報提供システム」の運用が始まってから1年以上経過する。
同システムのホームページによると、現段階で総登録件数は302件、総登録戸数は 4,448戸。政府は2020年度末までに全国で17万5,000戸にする目標を掲げている。達成率は現段階で約2.5%だ。
浸透度がいま一つと判断したのか、国土交通省と厚生労働省は今年10月から全国10都市で説明会を開催中だ。国交省は登録申請書類や審査の簡素化、面積要件の緩和などをアピールし、厚労省は住宅と福祉の連携を強化するなど普及促進に乗り出している。
〝駒込駅圏ナンバーワン〟 三菱地所レジ 第2号シェアハウス「駒込」完成(2018/6/21)
壁面にアートがいっぱい 三菱地所レジ 初のシェアハウス「永福町」完成(2018/4/27)
ブルースタジオ 築85年のシェアハウス 国交省「寄宿舎」に該当せず(2014/5/23)
音楽好きにはたまらない 日土地がシェアハウス「シェアリーフ西船橋グレイスノート」公開(2014/2/19)
イヌイ倉庫 「企業寮をシェアする」新発想の「月島荘」が竣工(2013/9/29)
〝住まい〟切り口 スタートアップ育成プログラム組成・始動 デジタルガレージ
登壇者
デジタルガレージ(DG)は11月8日、不動産関連スタートアップを対象としたグローバルな育成プログラム「Open Network Lab Resi-Tech(https://resitech.onlab.jp/)」を始動し、同日からプログラムに参加するチームの募集を開始すると発表した。プログラムにはパートナーとしてコスモスイニシア、竹中工務店、東急グループ、東京建物、野村不動産ホールディングス、阪急阪神不動産、三井不動産が、協力パートナーとしてカカクコム、KDDIがそれぞれ参画するほか、DGのグローバルネットワークも活用する。
「Resi-Tech」が支援するのは、プログラム中の活動資金の提供、メンタリング・レクチャー、オフィススペースの提供、 国内外のネットワークの提供など。
今回募集するのは、住宅・暮らしや街とITが交差する領域での技術またはビジネスプランを持つ人が対象で、応募は2018年11月8日(木)〜2019年1月末。採択チーム決定は2019年3月中旬。
記者発表会に臨んだDG代表取締役兼社長執行役員グループCEO・カカクコム取締役会長 林郁氏は、「5G(第5世代移動通信)時代を迎えた中で課題も見えてきた。従来のスコープを通じてスタートアップを支援すると、見えないものを排除するというねじれ、矛盾が生じかねない。そのような縦と横の制約を取り除き、ユーザー目線から広義のレジデンシャルを切り口にスコープに入れ込んで、オールジャパンで世界に打って出る」と、プログラムを立ち上げた背景・狙いについて話した。
パートナーとして登壇した各氏のコメントは次の通り。
コスモスイニシア執行役員R&D本部副部長・藤岡英樹氏 当社はアパートメントホテル事業をスタートさせたが、今後も新規事業を拡大していく。スタートアップとユーザーニーズを掛け合わせれば何ができるか、面白い展開ができるのではないか
竹中工務店執行役員技術本部長・村上陸太氏 当社は歴史のある会社だが、だからこそ新しいことに二の足を踏みがちだ。今回の新しいことに挑戦し、社内にも新しい風を吹き込みたい
東急グループ 東京急行電鉄取締役常務執行役員事業開発室長・市来利之氏 ワクワクしている。ここにいられるだけで幸せ。当社も独自のアクセラレータープログラムがあり、双方の協調が期待できる
東京建物代表取締役専務執行役員住宅事業本部長・柴山久雄氏 ネット情報などはわれわれよりエンドユーザーのほうがはるかに進んでいる。新たなサービスを発見することにチャレンジしたい
野村不動産ホールディングス経営企画部長・田辺邦彦氏 当社もCVCの取り組みを行っているが、DGさんの先駆者としての知見、認識を吸収し、また協力したい
阪急阪神不動産常務執行役員・松田富行氏 プログラムは当社の新しい事業創出とシナジー効果が期待でき、当社のスタートアップ支援オフィス「GVH#5」と協働することでネットワークの拡大につながる
三井不動産ベンチャー共創事業部統括・光村圭一郎氏 当社は街づくりを中心に事業展開しているが、本質はビルでもマンションでもない人ではないかと。リソースにつなげ、デザインしたい
カカクコム代表取締役社長・畑彰之介氏 衣食住の中で、人の暮らしを豊かにする住まいはとても重要。参加できてとても嬉しい。コンテクストをつくっていくいいスタートになる
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この日集まった記者の数は約50名、関係者と合わせ約100名とか。記者の数は先の「HARUMI FLAG」の半分で、記念写真登壇者でも「晴海」より一人少ない10人だったが、市来氏が「嬉しい」「ワクワク」「楽しみ」を連発したのと同様、ワクワクして聞いていた。
もちろん、スマホすら満足に扱えない記者は「5Gの時代」などと言われてもちんぷんかんぷん。しかし、この前の三井不動産&プロロジスの物流竣工の記事でも書いたように「物流を制する者が市場を制する」と思うし、信じられないようなスピードでIoT、AIが世の中を席巻するであろうことは容易に想像できる。記者発表会で協力パートナーKDDIライフデザイン事業本部ビジネスインキュベーション推進部部長・中馬和彦氏が「これまで通信はあらゆる分野に溶け込んできたが、5Gの時代では逆にIoT、AIが人間に対抗してチャレンジしてくる」と話したのも理解できる。AIが勝つか人間が勝つか、生きている間に決着を見たいものだ。そのいみで「ワクワク」と書いた。
そして、何よりうれしかったのは登壇者全員が1分間だったがコメントを寄せたことだった。
だが、しかし、〝オールジャパンで世界に打って出る〟というのはやや言い過ぎではないか。パートナーは面白い組み合わせだとは思うが、全てではない。入っていない企業が対抗するために同じようなプログラムを立ち上げるような気がしてならない。共食い・共倒れだけは避けてほしい。
さらに言えば、いま世界を支配しているAGFA(Apple、Google、Facebook、Amazon)とMicrosoftを加えた5強の一つくらいと提携してほしかった。そんなことしたら全部乗っ取られるか。
スタートアップには、パートナーを蹴散らし、5強を震撼させるような技術・ビジネスプランを提示してほしい。「Soy sauce」のような日本発の横文字も編み出していただきたい。
防火サッシが炎上!? 火元は防火サッシ?「R.E.port」が報道
ギャハハハハハ…この前褒めたばっかりの不動産流通研究所「R.E.port」が本日(11月7日)、やってくれました。「国土交通省は7日、(株)エクセルシャノンから、同社が戸建住宅等に出火した防火サッシが国土交通大臣認定に適合しない仕様となっているとの報告を受けた、と公表」と記事にした。
読者の皆さんはお分かりか。記者は、自分の記事はろくに校閲もせずにとにかく他社より早く書くことをモットーにしているので、誤字脱字のオンパレード、目を覆いたくなるほどのひどさだが、他人の書いた記事の誤字はすぐ見つけることができる。誤字が〝わたしを見つけて〟と呼び掛けてくる-そうした感覚だ。この日の「R.E.port」も瞬時にその文字が読むより先にうろんな目に飛び込んできた。
わたしではない、パソコンを覚えたての記者が新社長就任の記事で「社長? 〇〇氏」と書いて(キーボード一番下の右から2番目は「? ・ / め」が同じボードにあるためのミス。当然「社長・〇〇氏」)、広告がストップしたことがあるが、今回は大した影響も与えず、ただ笑えるという意味では類を見ない大傑作だ。炎上ものだ。座布団3枚! ひょっとしたら書いた記者の炎上を意図した確信犯か。
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日本漢字能力検定協会は「広辞苑」に採用されている同音異義語でもっとも多いのは48個の「こうしょう」としているようだが、漢字一文字ではもっと多いのがあるように思う。調べていただきたい。たとえば「き」。この前、中国の人と話していて、日本語は語彙が少ないということで意見の一致を見た。
※記事は7日18:00に発信され、4時間後の22:00には〝鎮火〟したのか、訂正されています
〝タカラの奇跡〟 関係者も驚く売れ行き 残りわずか30戸 「レーベン川越南台」
「SMILINKの森PROJECT/レーベン川越南台The Arena」完成予想図
〝タカラの奇跡〟-タカラレーベンが分譲中のマンション「SMILINKの森PROJECT/レーベン川越南台The Arena」を見学した。西武新宿線南大塚駅から徒歩3分の全154戸で、今年3月から分譲しており残りは30戸。驚異的な売れ行きを見せている。
物件は、西武新宿線南大塚駅から徒歩3分、埼玉県川越市南台二丁目に位置する11階建て全155戸(非分譲住戸1戸含む)。11月下旬に分譲予定の第5期(戸数未定)の予定価格は1,900万円台~4,700万円台(最多価格帯3,200万円台、3,400万円台、3,600万円台)、坪単価155万円。竣工予定は2019年3月中旬。設計・監理・施工は長谷工コーポレーション。ランドスケープデザインはウイ・アンド・エフ ヴィジョン石倉雅俊氏。
現地は、低中層の建築物が建ち並ぶ住商の混在エリア。建物は全戸南東向き、敷地内100%無料駐車場、多彩な共用施設、太陽光発電による災害時対策などが特徴。
住戸プラン・設備仕様は、ワイドスパン、ディスポーザー、浄活水装置「たからの水」、洗浄力がすぐれた「たからのミックスセーバー」、温浴効果が高い「たからのマイクロバブルトルネードO2」など。
今年3月から分譲しており、残りは30戸。同社第1営業グループ第3営業部2課課長・熊野太一氏は、「南大塚駅圏では10年ぶりの供給。当初は苦戦も予想していましたが、想定外の売れ行き。企画段階でファミリー層にターゲットを絞り込み、広告展開でも商品企画を鮮明に打ち出したのが効果的だった。購入者は地元中心ですが、最近は都内からの来場が増えています。竣工まで完売? 当然です。つい先日も業界関係者から〝奇跡〟と言われました」と、表情も明るかった。
リビング
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種を明かすと、マンションの見学は予定していなかった。この日(6日の火曜日)は三井不動産の物流施設「MFLPプロロジスパーク川越」の記者見学会があり、モデルルームが開いていたらついでに見せてもらおうと。どうせ売れていないだろうから記事にはならないだろうとも考えていた。
ところが、あにはからんや。残り30戸という売れ行きにわが耳を疑った。信じられない。
あれやこれやとその理由を考えた。エリアでは10年振りという空白があったからだろうとか、所沢の再開発では坪300万円を突破し、川越の駅近でも坪200万円をはるかに超えてきており、同社の物件の割安感が顕在化してきたのも大きな要因だろうと…などと。しかし、理由はあとからならいくらでも付けられる。このエリアで月に十数戸が売れるとは…〝たからの水〟がいいのはよく知っているが、これは〝タカラの奇跡〟だ。
熊野氏は「取得した土地の一部をコンビニに売却したことも一因」と、低めに単価設定できた理由を明かしたが、設備仕様は悪くなかった。モデルルームも多目的に利用できるDENなどの提案がよかった。76㎡の3LDKでは「おはなしバスルーム」「ふれあいキッチン」「へんしんドア」「あつまリビング」「みはらしバルコニー」などのネーミングも分かりやすい。
この前見学した大和地所レジデンスの「千葉ニュータウン中央」もそうだが、商品企画と価格次第では郊外部でも売れることを証明したマンションだ。
画期的、大成功、渦を巻く〝三木&御酒〟雄たけび 三井不・プロロジス「川越」竣工
「MFLPプロロジスパーク川越」
三井不動産は11月6日、プロロジスと共同で開発を進めていた大型賃貸用物流施設「MFLPプロロジスパーク川越」の竣工式を行った。竣工時点で賃貸面積の約25%の入居が決まっており、来年の夏までには満床にする予定。
竣工式の前に行われた記者発表会で、三井不動産常務執行役員 ロジスティクス本部長・ 三木孝行氏は「世界最大のプロロジスさんと共同事業を行うことは、業界では画期的な出来事で、1+1は2ではなく、双方が競合するというのでもなく、相乗効果を期待できる。業界13社による協議会を立ち上げ国を動かすすごい渦を巻き起こしつつある」と話した。
プロロジス代表取締役社長・山田御酒(みき)氏は、「我々は物流のプロとしての自負はあるが、三井さんの街づくりのノウハウを生かした外構、デザインなどを学ばせてもらった」と語った。
施設は、西武新宿線南大塚駅から徒歩6分の敷地面積約60,000㎡、鉄骨造4階建て延べ床面積延床面積約130,000㎡。圏央道以南の関越自動車道沿いでは最大の物流施設。テナントはプラスロジスティクス、多摩運送、日本郵便が決まっている。
三井不動産は2012年に物流事業に参画。これまで稼働施設は19棟、今後14棟の開発・計画を進めている。プロロジスは物流不動産のリーディング・グローバル企業。世界で3,718棟、総所有・運営資産額は90,000百万ドル(約9兆9,000億円)。
三木氏(左)と山田氏
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物流施設を見学するのは2度目か。全くの素人なので見学するかどうか迷ったが、三木氏に元気をもらいたくて取材した。
「大成功」「画期的」「渦を巻いている」-三木氏の話はいつ聞いても気持ちがいい。言葉に迫力があり勢いもストレートに伝わってくる。メディアに何を話せば受けるかしっかり計算しているのだろうし、口説き上手なのは間違いない。山田社長も会食の席で飲みながら共同事業を提案したのだそうだ。
三木氏は「(プロロジスに)買収されないようにして、IoTやAIなど投資事業で手を携える機会はあるかもしれない」と、今後の展開もほのめかした。
山田氏の名前がまた「御酒(神酒と意味は同じ)」。〝三木&御酒〟。満床になったら盛大なパーティもやるのだそうだ。
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素人ではあるが、「物流を制する者が市場を制する」というのだけは分かる。これだけグローバル化が進むと、物流コストはもちろんだが、物流戦略が雌雄を決することになるのだろう。三木&御酒氏はすでに有力なアジア市場で手を組むことを考えているのではないか。わが国は圧倒的に負けているからだ。
その資料の一つを示す。国土交通省が作成した「世界の港湾取扱貨物量ランキング」がある。2001年と2016年を比較したもので、2001年のランキングはトップがロッテルダム(オランダ)で313,764千トン、以下、シンガポール313,487千トン、サウスルイジアナ(米国)252,819千トンがベスト3。ベスト10は上海(中国)、香港(同)、ヒューストン(米国)、千葉、名古屋、ウルサン(韓国)、クァンヤン(同)の順。ちなみに横浜18位、大阪26位、北九州27位、東京29位、神戸30位とベスト50にわが国の港湾は7つ入っている。
ところが、2016年になると、上海が2001年比2.9倍の647,446千トンに増やしトップに踊り出ており、3位広州、5位寧波、7位青島、8位天津、10位大連と中国勢がベスト10のうち6港湾を占めている。ロッテルダムは47.0%増の461,177千トンながら7位に後退。シンガポールは2001年比2倍近く伸ばし2位を確保している。
わが国は、18位の名古屋が最高で、2001年比26.9%増の193,257千トンながら世界には大きく水をあけられ、24位千葉、40位北九州、41位神戸、47位東京、50位大阪と大幅に順位を下げている。
このまま地盤沈下が進むのか、巻き返しがなるのか。
「カフェテリア」
内覧会で説明担当者は「カフェテリアに緑を配した」と話した。写真ではよく分からないが、本物の観葉植物ではなく、フェイクそのものだった。流行らない飲食店のトイレに置いてあるものとほとんど変わらない。
〝三木&御酒〟さん、これはない。働く人をコストとしか考えていないとわたしは受け取った。本物を置けばお金がかかると思えばなくしたほうがいいし、気持ちよく働けて、その癒し効果を考えればこれは絶対本物にすべき。わたしは、オフィスのポトスを定期的に剪定しに来る業者の方から枝葉を貰い、自宅と会社のデスクに置いている。ただ水をやるだけでどんどん増殖している。10年だって20年だって持つはずだ。
週刊住宅も住宅新報も〝中身なし〟 選手村「HARUMI FLAG」の記事に失望
先週の10月31日に発表があった2020年東京オリンピック・パラリンピックの選手村になる「晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業」のタウンネーム「HARUMI FLAG」を業界専門紙がどのように伝えているか興味深く読んだが、収穫はゼロだった。それより失望のほうが大きかった。
11月5日付「週刊住宅」は、ほぼ1面を割いてトップで報じた。もっとも興味がある価格については、「『(分譲は)4,000戸を超える大量供給となるため、販売は数期に分けることになるだろう。市場を攪乱しないよう価格設定する』(三井不動産レジデンシャル)と、周辺相場並みの価格設定を示唆する」としている。
この「市場を攪乱しない価格設定」とはどう意味か、その価格がどうして「周辺相場並みの価格設定」につながるのか、同紙は全く説明していない。意味不明だ。百歩譲って言わんとすることを補足すれば、仕入れ土地がただ同然の一種8万円からして、市場価格より格安で分譲することも可能だが、そのような価格で分譲したら「市場を攪乱する」ことにもつながりかねないので、「周辺相場を考慮して高くもなく安くもない値段にする」ということだ。(一種8万円は記者の推定)
つまり、周辺で分譲している当事者のマンション販売に影響を与えないよう配慮するということだ。
やはり専門紙として、土地の仕入れ価格に触れるべきだったし、果たしてレガシーマンションが「周辺相場並み」のただ戸数が多いマンションでいいのかどうかも書くべきだった。肝心のユーザー視点も欠落している。
そもそも、〝陸の孤島〟のこのエリアに相場などない。あるとすれば、9年前に分譲された「ザ・晴海レジテンス」と「晴海テラス」だ。ともに圧倒的な人気を呼んだ。坪単価は220万円しなかった。〝ない相場〟を創意工夫をこらし創るのがデベロッパーだ。「相場並み」で分譲して売れるのなら世話はない。
この問題については、ある一般紙が「坪単価は270~280万円の声もある」と書いているが、これもまた何の検証、裏付けも取らないで伝えているに過ぎない。書いた記者自身がどう思うかを書くべきだ。影響度を考えるとその罪は大きい。
11月6日付「住宅新報」は、5段見出しで、過不足なく伝えてはいるが、発表から土曜・日曜は挟んでいるが5日遅れの記事にしては独自の視点による記事ではなく、発表内容をトレースしただけの内容だ。記事量としては、11月2日に大京が発表した「ザ・レジデンス金沢」のマンションの即日完売記事と大差ないどころか、「選手村」の完成予想図より「金沢」の建設現場の写真のほうが大きく掲載されている。
不動産流通研究所の「R.E.poot」はどうか。このWebは日々生起する、あるいは住宅・不動産会社が発表するニュース・リリースをそのまま紹介することに重点を置いており、評論記事などはほとんどないの論評は期待していなかったが、それでも週刊住宅や住宅新報より要領よく概要をまとめていると思った。
記者はどうかというと、情けないかな「聞きたいこと(知りたいこと、伝えたいこと)は不明」「記者が馬鹿だった」という見出しの記事を書かざるを得なかった。完敗。
恥ずかしいことだが、そもそも東京都と組織委員会が全費用を負担するスケルトン「仮使用」などまったく想定していなかった。天井高は2500ミリになりそうなのにも、内装も最低レベルになりそうなのに失望した(解体費用を含めて1戸当たり1,000万円という価格が妥当かどうかは現段階でわからない)。購入者は、その住戸にどのような選手が一時使用したのか知らされないのは不幸だし…購入申し込み予定した住戸がどのように「仮使用」されたのか知る権利はないのか…不正利用されたら解約できる特約はないのか…。スケルトン賃貸だから、レガシーの痕跡は全く残さないと見た。
聞きたいことは不明 オリ・パラ選手村の街の名称「HARUMI FLAG」来春分譲(2018/10/31)
記者が馬鹿だった…選手村はスケルトンで都と組織委が賃借し、解体費を含め全額負担(2018/11/1)
「ザ・晴海レジデンス」に続き圧倒的人気 コスモスイニシア「晴海テラス」(2009/9/11)