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清掃ロボット「Whiz(ウィズ)」(丸の内パークビルで)

 三菱地所は122日、先に100台導入を発表したわが国初のAI搭載バキューム清掃ロボット「Whiz(ウィズ)」の実証実験内容を報道陣に公開した。

Whiz」はソフトバンクロボティクスが開発したもので、幅約474mm×全長約455mm×高さ約653mm。重量は約32㎏。1時間で500㎡、最大約3時間稼働する。充電時間は約5時間。ロボットはリース制で、25,000円/月。

同社はグループ各社が所有、運営管理する全国のオフィスビル・商業施設・物流施設・空港・ホテル・マンションなどに約100台を順次導入していく。同社が施設管理・運営するする沖縄県宮古島市・下地島空港や静岡空港での導入も決まっている。

同社は本格導入に先立ち117日(木)~23日、大手町パークビルで実証実験を行い、清掃性能や省人化の効果などの知見を蓄積する。

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清掃ロボについて説明する渋谷氏(手前のロボの改良型が奥の「Whiz」)

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 この日(22日)は多くの報道陣が詰めかけ、本来は夜中の12時から朝方の6時まで、ほとんど人がいない時間帯に仕事をする清掃ロボットも寝不足なのか、動き回る報道陣にパニック状態に陥ったのか、あるいはまたあちこちから発せられる無責任な質問やカメラマンの要求に腹を立てたのか、さらにまた発表会の責任者、同社ビル運営事業部兼経営企画部DX推進室統括・渋谷一太郎氏と仲たがいをしたのかご機嫌斜め。かすかに揺れるカーテンにもおびえる始末で、あげく渋谷氏の指示に梃子でも動かない頑固な一面も見せた。

 渋谷氏によると、「ティーチング」(指示)さえきちんとしていれば、手抜き作業(記者の得意な丸く掃く)は行わないそうだ。

 「Whiz」をずっと観察した。ロボットに負ける記者ではない。欠点もすぐ分かった。第一は一番肝心の隅っこは掃除できないことだ。「手が届かないところをやってほしい」という圧倒的多数の人の要望には応えられない。カーペットはともかく、隅に集まる傾向が強いタイル・リノリューム床のゴミをどう吸引するのか。 

 もう一つは札束、コイン、家の鍵、指輪首輪鼻輪(イヤリング、ピアス)、入れ歯などの価値判断ができず、吸えるものはなんでも吸い込み、強奪・着服してしまうことだ。分別ができたら褒めてやる。わがオフィスビルを清掃しているプロに聞いたら「たまにイヤリングや100円玉が落ちていることがある」と話した。

 さらにまた、充電の長さだ。3時間働いて充電に5時間ということは、フルに働いて19時間。われら労働者とたいして変わらない。しかも、充電は自分でできない。充電くらいは自分でやらないと。

 参考までに。人による清掃は300㎡で約20分だそうだ。記者はかつて、大京アステージの掃除のプロから「掃除は科(化)学」「床は朝日新聞、窓ガラスは読売新聞」「ホコリは取るもの、誇りは持つもの」などと語り、実演も体験した。その域にロボットはどこまで近づけるか。頑張れ。人は時給1,000円とか。あなたはいくらになるのか。

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清掃中の「Whiz」

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 Whizもすごいが、同社が出資して開発中で、今年中の実用化を目指すSEQSENSE(シークセンス)の警備ロボット「SQ2」がまた素晴らしい。大きさは子どもくらいで、ゆるやかな曲線を描いたデザインが美しい。同社の女性が〝かわいい!〟と歓声をあげるほどだという。

自然界にあるものに例えようと必死で考えたが浮かばない。マグロの胴体や葉っぱにも似ているが、若い女性の体の線のようでもある。もっともよく似ているのは新宿モード学園の外観か。

もちろん機能も優れている。指示したチェックポイントを正確にたどり写真を撮り、データに保存し、レポートも作成する。顔認証も可能で、闖入者も判定できる。関係者は定点カメラなどと連携させればより機動的、効果的に警備が可能になると話した。

 なにより驚いたのは、人間を感知し、声はいかにも合成した声だったが、倒れているような人には声掛けも行い瞬時に警備室に報告もすることだった。熱や煙に反応させることも、トイレに入ったまま出てこない人の安否確認、生体反応などの把握も技術的には可能なようだ。

階段を上り下りするのはハードルが高いそうだが(骨が折れるのか)、エレベータに乗降する研究は行われているという。

 考えることはみな同じだ。泥棒や暴漢に反撃し撃退するためのピストルなどの所持はできないのかと質問が飛んだが、現行法では銃刀法違反となり出来ないそうだ。残念。

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警備ロボットについて説明する渋谷氏

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警備中のロボ

三菱地所 わが国初 清掃ロボット「Whiz ウィズ」100台導入 人手不足に対応(2019/1/13

掃除は科学 床は朝日、窓は読売〟 マンション管理員のスゴ技を1日体験(2017/3/25)

 

 

 

 

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「アトラス加賀」オープンテラス

 旭化成不動産レジデンスが近く分譲開始する「アトラス加賀」227戸を見学した。加賀藩前田家下屋敷があった「加賀一丁目」に位置し、三方が石神井公園・加賀公園・板谷公園という稀有な立地で、旭化成不動産レジデンスが国有地の払い下げを受け、研究所としても利用されていた経緯のあるマンションだ。

 物件は、都営地下鉄三田線新板橋駅から徒歩9分、板橋区加賀一丁目に位置する15階建て全227戸。専有面積は72.20~94.91㎡、予定価格は5,800万円台~9,300万円台(最多価格帯6,500万円台)、坪単価は290万円。竣工予定は2020年7月下旬。施工は長谷工コーポレーション。デザイン監修はアーキサイトメビウス。販売開始は2月上旬。

 現地は、敷地北側に桜並木が美しい石神井川、東側に加賀公園、南側に板谷公園という3方が自然・公園という都内でも稀な立地。旭化成グループ創始者・野口遵が後世に残した「野口研究所」として利用されていた由緒ある土地でもある。

 建物は南西向きが135戸、南東向きが79戸という配置で、歴史や自然、地域とのつながりを意識した建物・外構デザインにしている。

 主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、御影石キッチンカウンター、ディスポーザー、食洗機、ミストサウナ、スロップシンク付き洗面室、室内物干し金具、Low-Eガラス、ピクチャーレールなど。

 同社開発営業本部販売部第一課・富永高弘氏は「三方向が自然と公園という物件は調べてもなかなか出てこない。稀な物件であるのは間違いない。『加賀』エリアではどこにも負けない立地で、南向きが中心という住棟配置でも優れていると思う。設備仕様もオプションを少なくして、盛り込めるものは全て盛り込んだ」と話している。

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中庭

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 立地がよく、設備仕様レベルが高い物件だ。モデルルームでもっとも驚いたのは洗面室にスロップシンクが備えられていたことだ。この種の企画は初めて見た。

 子どもの靴や上履きの洗濯をされる主婦、あるいは主夫を経験している人ならわかる。寒い冬などに外で洗うのは大変苦痛だ。寒いし冷たいし。泣けてくる。記者は、洗面所で靴を洗うのは抵抗があったが、やむなくそうした。洗濯干しも同じ。だから室内物干しポールも30年前から推奨してきた。

 いまはコストを抑えるためにバルコニーにスロップシンクを設置する物件すら少なくなった。

 公園隣接・近接マンションは最近たくさん見学しているが、3方を自然・公園に囲まれているマンションは、民設民営の東京建物「Brillia L-Sio 萩山」くらいしか思い浮かばない(この物件は公園の中にある)。

 「加賀」といえば、〝これほど美しいマンション見たことない〟と見出しに着けた12年前の鹿島建設「加賀レジデンス」を思い出す。坪単価250万円だった。単価は安いと思ったが、平均90㎡という広さとリーマン・ショックの影響で早期完売とはならなかった。

 しかし、あの感動は忘れられない。近いものでは三井不動産レジデンシャル「パークコート一番町」があることを付け加えておく。

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都の民設公園第1号「萩山 四季の森公園」開園祭り(2009/10/5)

その美しさに声を失った 商品企画も秀逸 三井不レジ「パークコート一番町」(2017/2/21)

これほど〝美しい〟マンション見たことない鹿島建設「加賀レジデンス」(2007/5/18)

集合住宅の最高傑作の一つ 鹿島建設「加賀レジデンス」が完成(2008/9/16)

 

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「ノブレス日吉WEST」

 「免震以外はやらない」と決めているナイスの免震マンション「ノブレス日吉WEST」を見学した。全92戸のうち残りは27戸。入居開始を2カ月後に控え、販売に拍車がかかるか。

 物件は、横浜市営地下鉄グリーンライン高田駅から徒歩2分、横浜市港北区高田西1丁目に位置する7階建て全92戸。現在分譲中の住戸(27戸)の専有面積は55.65~78.47㎡、価格は4,520万~6,800万円(最多価格帯5,100万円台)、坪単価は270万円。入居予定は平成31年3月末。設計・施工は長谷工コーポレーション。昨秋から分譲開始しており、残りは27戸。

 現地は準工業地域だが、マンションなどの住宅化が進んでおり、敷地南側は戸建てが建ち並んでいる。

 建物は免震構造で、ほとんどか南向き。食洗器、ディスポーザー、良水工房、ミストサウナ、スロップシンクなどが標準。

 残り2カ月で完売するかどうか微妙だが、同社の販売責任者、マンション事業部部長・砂川信之氏は「オールスペックで挑んだ。販売は順調。日吉駅圏では坪300万円を突破してきているので、割安感も出てきた」と鷹揚に構えている。

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モデルルーム リビング

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 免震マンションは3.11後のタワーマンションでかなり採用されたが、最近はまた少なくなってきた。東洋ゴムやKYBの問題もあるかもしれないが、コストを抑制するためであるのは間違いない。

 板状型マンションで免震を採用しているのは同社のほかではスターツくらいだ。他にあるか記憶をたどっているのだが、2012年の鹿島建設「センチュリーフォレスト」、2013年の大成有楽不動産・大成建設の「オーベル明石町レジデンス」くらいしか思い浮かばない(どこかの高級マンションもそうだった)。それくらい貴重だ。

 最近の〝駅近〟マンションはとんでもない値段が付いている。「免震」の希少性と合わせどうアピールするか。

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「多摩市街路樹よくなるプラン改定委員会」左から池邉氏、沼田氏、野村徹郎委員(日本造園建設業協会)、仙仁氏、曽我昌史委員(東大大学院農学生命科学研究科助教)

 多摩市は1月20日、「多摩市街路樹よくなるプラン改定版(原案)に関する市民説明会」を開催した。市は「多摩市街路樹よくなるプラン(街路編)」を平成20年度に策定してからから約10年が経過し、課題が生じてきたために「多摩市街路樹よくなるプラン改定委員会」を立ち上げ、プラン改定作業を進めてきた。今年度末に改定版をまとめる予定。

 冒頭、挨拶に立った多摩市街路樹よくなるプラン改定委員会委員長・池邊このみ氏(千葉大学大学院教授)は、「昨年の災害で街路樹がたくさん倒木するなど問題になっており、財政の厳しい全国の各自治体は維持管理費を削減する傾向にあるが、多摩市はそうではない。街路樹が愛され、他の地域から移り住みたくなるようなプランにまとめたい」と語った。

 同委員会専門委員でパルテノン多摩学芸員の仙仁径氏は、「街路樹はパートナー」と題する講演を行い、シンガポールでは街路樹など緑を管轄するのは国立公園庁で、街の価値を向上させるため一括管理を行い、データベース化している例を紹介しながら、緑の管理に市民も積極的に関わっていくことが大事であり、様々な可能性があると話した。

 また、同委員会副委員長・沼田真也氏(首都大学東京大学院教授)は、「他の自治体は予算、お金がないといっている。どこも〝窮すれば鈍す〟だ。しかし、我々はそうした傾向に抗いたいと考えている。次世代に継承できる向こう10年間のプランを作成したい」と述べた。

 約30名の参加者は、市の目指す今後10年を見据えた持続可能なみどりの形成とビジョンに耳を傾け、「多摩は日本一美しい街だった」「素人でも参加できる勉強会などをやって」「樹木にQRコードを付けて」などの意見を述べた。

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左から池邉氏、仙仁氏、沼田氏

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 「40年前までは多摩は日本で一番美しい街だった」-確かこう聞こえた。はっとした。緑が劣化しているという意味で発言されたのだろうか。

 記者が多摩ニュータウンに移り住んで約30年だ。「40年前まで」といえばニュータウン開発が真っ盛りのころで、街路樹もそんなに成長していなかったのではないか。

 その頃より劣化しているとすれば、どこがそうなのかもっと詳しく知りたかったのだが、記者は逆ではないかと思う。多摩ニュータウンの緑環境は成長し続けており、一段と美しさを増している。課題はあるだろうが、大きな価値だし、市民の誇りだ。池邊氏も話したように都民の誇りかもしれない。

 発言者の声を借りれば今後も「多摩は日本一美しい街」であり続けてほしいし。

 樹木も生きものだから、「交通の安全性に支障を来している」との理由で伐採されたり間引きされたりするのは忍びないが、「事故を起こしていいのか」といわれると反論もできないので、改定版の方向性に同意せざるを得ない。

 一つだけ言わせていただければ、そもそもケヤキ、クスノキなどは環境にもよるが樹高が20mくらいに育つ。街路樹を植える段階で分かっていたことだ。樹種の特性を考えなかった都市計画に問題がある。

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 女性の参加者が「わたしは素人」と断り、「みんなが参加できる勉強会などを行ってほしい。樹木にQRコードを付けていただきたい」と話した。

 同感だ。「樹名板」の表示は世田谷区が積極的で、ハウスメーカー・デベロッパーも分譲地やマンション敷地内の樹木にQRコードを付けるようになりつつある。市内では2011年に「緑の都市賞」内閣総理大臣賞を受賞したNPO多摩グリーンボランティア森木会が「樹名板」の表示活動を行っている。市のプラン策定にも関わった涌井史郎氏の名言を紹介する。「木の名前と虫の名前と鳥の名前を覚えると、1歩歩くたびに人生3倍楽しくなる」

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 委員会を主催した道路交通課には注文を付けざるを得ない。説明会が行われた永山公民館ベルブホールの定員は150名だが、参加者は約30名。これはいかにも少ない。池邉氏など委員に失礼ではないか。

 参加者といえば、昨年2月の第6回多摩NT再生プロジェクトシンポでも書いた。以前は定員いっぱいの300名が集まっていたのに半分近くの約160名しか集まらなかった。市の情報発信力の低下は否めない。

 市の人口は今年1月1日現在、約14.8万人で前年比93人減となった。西浦定継・明星大学教授は6年前、「何もしなければ50年後の多摩市の人口は半減する」と警告した。〝日本一美しい多摩〟を担保するはずの「プラン改定版」はどうなるのか。

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 池邉氏や参加者から「美しい」の言葉が再三再四発せられた。説明会の主旨ではないのであまり触れないが、究極・永遠のテーマである「美」とは何かについても考える必要がありそうだ。記者はマンションを見るときも街路樹などを眺めるときいつも美しいかそうでないかを最優先している。

 肝心なのは、対象物そのものが美しいかどうかというよりも、ロダンが言ったように美醜を分ける審美眼であり、美意識だと思う。市の道路交通課の職員の方は「公園緑地課と理念は同じ」と話したが、「交通安全」「道路の付属物」(道路法第2条では並木)のフィルター越しに見る街路樹、緑地帯は果たして公園緑地課などの職員と同じか。違うのではないか。

 多摩市のことを言っているわけではないが、色眼鏡をかけず邪心を捨てて街路樹を眺めたら絶対電柱のような街路樹にはならない。街路樹が消え、「サクラ商店街」「ユリノキ通り」「けやき通り」「くすのき通り」の名前だけが残るような世の中になってほしくない(そうなりつつある街がある)。道路課の方たちは「市民の要望」というが、それを言えば市民も行政も哲学がないということだ。

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 これまで街路樹や緑などについて30本くらいの記事を書いてきた。下記にアドレスを張り付けるので、興味のある方は読んでいただきたい。

あの熱気どこに 多摩市 第5回 多摩NT再生プロジェクトシンポ(2018/2/5)

都市計画の母が泣く たまプラーザの「ユリノキ通り」が消える!? 市が伐採計画(2017/8/22)

涌井・都市大特別教授 「わが国の自然はかみさんと一緒。美しいが扱いも難しい」(2016/12/11)

異形のスカイツリーに怒れるスズカケ 押上の街路樹 続々「街路樹が泣いている」(2015/3/20)

またまた「街路樹が泣いている」 千代田区 街路樹伐採で賛否両論(2016/9/8)

「何もしなければ多摩NTの人口は50年後に半減」西浦・明星大教授(2014/1/29)

多摩ニュータウン学会 「みどり」について意見交換会〝愛でるみどりから関わるみどりへ〟(2013/5/16)

街路樹が泣いている ~街と街路樹を考える~⑧(2012/6/5)

「さらし首」にされていた菊名・錦が丘のサクラ(2012/5/17)

街路樹が泣いている ~街と街路樹を考える~ ④植栽枡・ツリーガードだけ クスは高さ5m 柏の街路樹(2012/5/14)

街路樹が泣いている ~街と街路樹を考える~ ② 少ない街路樹に関する公表データ(2012/5/10)

街路樹が泣いている ~街路樹と街を考える~  ①(2012/5/1)

街路樹比較 戸田市は35人に1本 多摩市は15人に1本の割合(2012/3/14)

貧弱な戸田市の緑・街路樹 市民の満足度が上がらないのは行政の責任(2012/3/13)

多摩グリーンボランティア森木会10周年&「緑の都市賞」内閣総理大臣賞受賞記念講演会(2011/11/29)

114日付「週刊住宅」に掲載されたハウジングライター・藤原利彦氏(76)の連載コラム「住宅評論 トレンドを斬る」を興味深くかつ感慨をもって読んだ。

コラムは今回で1,000回に達したのを機に、特別編として「トップに聞く」とし、3月まで合計14名くらいの企業トップを登場させる企画のようだ。

1,000回といえば年間約50回として約20年になる。連載漫画などは50年というものもあるので、それらと比べると少ないかもしれないが、不動産業界紙にはそんな例は少ないはずだ。小生が師と仰ぐ故・佐藤美紀雄先生の同紙連載コラム「ワンポイント時評」は1,000回ちょっとで終了したはずだ。藤原氏の連載は間もなくそれを突破する。

藤原氏は同紙の元編集長で、定年退社されてからも、このコラム記事などでずっと支えてきた。

若いころからデベロッパーやハウスメーカーなどのトップ取材を得意としていた。今日では信じられないことだが、アポなしで各社の広報部に堂々と入り込み「何かネタはない? 」と動き回るのを日課としていた。文句をいう広報マンはいなかったはずだ。

趣味はゴルフだった。バブルのころは週に1回、年間で50回くらいこなしていたようだ。「俺はグリーン上で記事を書く」と豪語していたように、企業の幹部と一緒に回りながら記事ネタを引き出しものにしていた。常に新しい情報を発信せよというメッセージ、叱咤激励だった。

その趣味は実益の記事に生かされた。せっかちな性格もそうさせたのか(失礼、何しろ食べるのが速く小生の2倍はあった)、とにかく、どこかで仕入れた新ネタ(裏を取っていたかどうかは不明)を大げさに書く傾向があった。まるで「奈良」が「平安」に、「江戸」が「明治」に、「昭和」が「平成」に変わるかの如く、「不動産流通はFCの時代」などとセンセーショナルな大見出しが毎号の紙面を踊った。ゴルフのように的(穴か。穴といえば藤原氏は競馬好きで、大穴を的中させたことはほとんどなく、財布にぽっかり大きな穴を空けていた)を外していなかった。

しかし、原稿の締め切りが迫るとキリキリと胃が痛み、言葉をひねり出すのに呻吟する毎週だった駆け出しの記者にそんな芸当ができるわけがない。〝これは勝てない〟とあきらめ、苦しみから逃げるように〝戦って負ける記事は書かない〟と決断した。「人」ではなく、マンションや戸建てなどの「モノ」の現場取材に転向した。ゴルフとは50歳で決別した。糖尿を発症したのもそのころだが…。

あのときの決断がいまも生きている。藤原氏には感謝してもしきれない。数少ない尊敬するライターの一人だ。自ら「評論家」などと名乗らないのも小生=記者は見習っているつもりだ。

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「トップに聞く」第一弾は、アールシーコア・二木浩三社長だ。小生はアールシーコアがどのような事業をされているのかよく知らないのだが、ログハウス(別荘)からスタートし、年間1,000棟も販売する会社のようだ。

記事には「BESSブランド」「LOGWAYクラブ」が頻繁に登場するのに閉口もしたが、「展示場という呼称にはしたくなかった」「異端でメジャー」「〝業界最狂、ハピネス拡散〟」「住宅も建てる動機は無限」などの魅力的なフレーズが二木氏から発せられている。実に心地よい。

そして、小生が唸ってしまったのは、「LOGWAYクラブ」の会員からは年1万円の会費を徴収し、成約時には「それまで納めていただいた会費も8倍にして返却する仕組みにしている(最大64万円)」というくだりだ。会員は255人もいるというではないか。

これはすごいと思った。さすがに64年間も会員でい続ける人はいないだろうが、8年間、つまり8万円払えば8倍の64万円が戻ってくる計算だ。

もちろん、二木社長も会員もそんな打算で動くはずはない。お金を払う以上はそれなりの決談は必要だし、同社も適切な対応をしなければすぐ退会される。企業と顧客のこの自由ではあるが張り詰めた関係が面白い。

次はどなたが登場するのか、14人のメンバーはどうなるのか楽しみだ。読者が次号を楽しみにするようにしなければ業界紙は生き延びられない。

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 中身、料理は最高なのに、レイアウト、盛るお皿が問題だ。コラムは本文だけで約2,200字。400字原稿用紙で約5.2枚。普通の新聞なら最低半10段(紙面を縦に15段に分け、下の広告部分を除いた10段の1/2)のスペースを割くはずだが、同紙は101/3くらいしか割り当てていない。

 よく撮れている二木氏の顔写真も小さすぎるし、見出しもつまらない。

 小生は昨年、業界紙のデザインについても注文をつけた。見本とすべき美しいレイアウトの新聞が毎日発行されているのに、業界紙は全然学ぼうとしない。「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と5才のチコちゃんに怒られるぞ!

ピント外れの住宅新報1面 週刊住宅は東急の記事に拍手  冷たくないか全宅連(2019/1/9

流れに乗れず逆らえず 記者は病葉か 「週刊住宅」破たんに思う(2017/5/9

欠けるのは「愛」 記者生活40年 業界紙に期待するもの 新聞は絵画と同じ⑤(2018/4/6

業界の羅針盤」住宅評論家の佐藤美紀雄氏逝く(2005/9/20)

 

 

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「アトラス荻窪大田黒公園」エントランス 完成予想図

 旭化成不動産レジデンスの同社グループの社宅跡地と、旭化成初代社長の研究所跡地で、双方が大きな公園に隣接する極めて希少性の高いマンション2物件を見学した。「アトラス荻窪大田黒公園」と「アトラス加賀」だ。どのような売れ行きを見せるか見ものだ。「荻窪大田黒公園」から紹介する。

 物件は、JR中央線・総武線、東京メトロ丸ノ内線荻窪駅南口から徒歩8分、杉並区荻窪3丁目の第一種低層住居専用地域に位置する敷地面積約3,562㎡、地下1階地上3階建て全41戸(広告募集対象外8戸含む)。専有面積は64.31~112.69㎡、価格は未定だが、坪単価は460万円前後になる模様。完成予定は2020年2月下旬。設計・監理はアーキサイトメビウス。施工は森組。販売は3月上旬。

 現地は旭化成の社宅跡地で、敷地北側の杉並区が管理する約8,972㎡の大田黒公園に隣接。

 建物は公園に添うように東西軸が約100mもある細長い地下1階地上3階建て。ほぼ中央に内廊下を配し、住戸は雁行設計の南向きと公園に面した住戸がそれぞれ半分。立地・形状の特性を最大現に引き出すよう、白を基調としたデザインで、バルコニーは透明ガラス張り、スパンは最低でも7.9m、10m以上が24戸あり、最大は14mが3戸。

 4つの中庭を設け、中庭上部をガラス張りの吹き抜けとし、内廊下・空中廊下の実現で、各住戸ごとの独立性を高めているのも特徴の一つ。

 同社は「資料請求は11月末~12月末のわずか1カ月の間に550件に達しました」とリリースしたように、想定外の反響の多さだったようで、この日(18日)に見学したときもお客さんが見学中で、連日にぎわっているようだった。

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大田黒公園(物件ホームページから)

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 まず単価。記者は坪500万円を突破するのではないかと思っていた。昨年、三井不動産レジデンシャルが荻窪駅から徒歩7分のやはり第一種低層住居専用地域に位置し公園に隣接する「パークホームズ荻窪 ザ レジデンス」30戸を分譲して人気になった。坪単価は440万円だった。

 旭化成の物件は、同駅からほとんど同じ距離圏だが、敷地に「大田黒公園」が隣接しているのは三井レジより優位にあると判断し、設備仕様レベルを挙げれば坪550万円くらいでも売れると読んだ。

 ところが、三井レジの物件と比べそんなに高くならないことが分かった。まだ正式な価格は決まっていないようだが、平均すると坪450~460万円くらいに落ち着くのではないか。

 グループ間の土地取引がどのように税法上で処理されるのか分からないが、用地費が安く、この単価でも十分利益が出ると判断し、設備仕様を極端にハイグレードにしすぎないことで、早期に完売しょうという戦略なのだろう。仮に入札方式だったら坪500万円では済まなかったのではないか。

 プランは圧巻だ。モデルルームは公園に面した13mスパンの99㎡。リビング天井高は高さ規制もあるので2400ミリだが、バルコニー奥行きは最大で2.2m。ペニンシュラキッチンもいい。公園の借景はたまらないはずだ。

 大田黒公園についてはホームページで調べていただきたい。知る人ぞ知る公園のようだ。記者も名前だけは知っていたが、どのような公園なのか全然知らなかった。利用時間は午前9時から午後5時まで。夜間はシャットアウトされる。

 みんな1億超えだから即完売というわけにはいかないだろうが、公園隣接とその借景を取り込んだプランをどうアピールできるかだ。

 旭化成の関係者がどれだけ購入するかも興味深い。幹部クラスでないと手が出ないし、購入したらしたでお互い懐具合や性行を探られかねないので敬遠する人もあるかもしれない。旭化成の社長などは目立ちすぎるので買わないだろう。

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大田黒公園入口

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入り口すぐのイチョウ(樹齢100年とか)

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 アーキサイトメビウス・今井敦氏について。この日見た「荻窪大田黒公園」と「加賀」も三菱地所レジデンス「高輪フォート」もそうだった。

 記者は年間100件くらいのマンションを見学している。数えたわけではないし、同社が設計・デザイン監修した物件を優先的に見ているわけではないが、ここ10年、年間数件~10件くらいは同社がデザイン監修している物件のはずだ。突出した数だ。

 売主別でもっとも多いのはモリモトではないか。同社は年間5~6物件を供給しているが、最近はほとんど今井氏がデザイン監修を行っている。

 ほかでは、旭化成不レジもそうだが、三井不動産レジデンシャル、東京建物、野村不動産、東急不動産などが目立つ。記者が絶賛した鹿島建設の「センチュリーフォレスト」もそうだった。

 これでお気づきか。今井氏が関わった物件は間違いなくレベルが高いと言える。実施設計を行わないから可能なのだろうが、これほど多くの物件に関わっていたら寝る暇はあるのだろうかと考えてしまうほどだ。

 今井氏のデザインは、これ見よがしの派手なものはなく、シャープでシンプルなそして何よりも端正なものが多いのが特徴だ。とにかく美しい。

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建設現場

久々に1低層の〝パークホームズ〟 三井不レジ「荻窪」売れ行き好調(2018/12/9)

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「ザ・パークハウス高輪フォート」完成予想図

 三菱地所レジデンスは1月18日、JR山手線新駅「高輪ゲートウェイ」の開設と周辺の再開発によって劇的に変わろうとしている高輪・三田エリアで4物件580戸の販売を予定していることから、営業・情報発信拠点として常設マンションギャラリーを設置すると発表し、第一弾「ザ・パークハウス高輪フォート」のモデルルーム見学会を行った。発表会に臨んだ脇英美社長は都心の資産性の高い開発に注力し、全体収益の約3割の比率にすると話した。

 常設ギャラリーは都営浅草線泉岳寺駅から徒歩2~3分のビル内にあり、広さは約1,500㎡。100㎡超のモデルルームを3つ設けることが可能で、第一弾の「高輪フォート」43戸を皮切りに、4月には「(仮称)三田二丁目計画」111戸、「(仮称)三田五丁目計画」266戸、「(仮称)高輪一丁目計画」164戸の4物件合計580戸の合同モデルルームを公開していく。

 脇社長は、「マンション市況は今年も堅調に推移すると考えるが、二極化の傾向は鮮明になってきた。多様化するニーズに応えるものづくりが肝要。昨年供給した『津田沼』は全759戸のうち9割が成約するなど完売間近。一方、都心では『渋谷南平台』は第1期で半分を供給し8割が完了、先日オープンした『本厚木』、来週にオープンする『千住タワー』なども手応えがある。利便性をベースに好立地、好環境など資産性の高い開発を積極的に行い、今後は収益の2~3割を再開発や建て替えで、3割は都心の開発に注力していく。年間では3,500~4,500戸くらいをコンスタントに供給していく」などと語った。

 「高輪フォート」は、JR山手線・京浜急行本線品川駅高輪口から徒歩9分、港区高輪3丁目に位置する地下1階地上5階建て全43戸(事業協力者住戸3戸含む)。専有面積は68.82~141.06㎡、予定価格は12,000万円台~28,000万円台(最多価格帯18,000万円台)、坪単価は640万円。販売開始は2月中旬。施工は東亜建設工業。デザイン監修はアーキサイトメビウス。

 現地は、東禅寺の緩やかな参道を上った突き当り。敷地は元ソニーの迎賓館。幅約6mの路地の奥に建物は建つ。

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脇社長

◇       ◆     ◇

 同社は先日の「本厚木」を皮切りに、この日の「高輪」と来週の「北千住」を合わせ立て続けに見学会を3度行う。昨年後半には「渋谷南平台」も行っており、同業大手と比べ突出した多さだ。

 頻繁に見学会を行うのは、本社機能を移転し士気が上がっており、脇社長も販売好調なのに気分をよくしているからだろうと読んだ。挨拶でも話したように、「津田沼」が驚異的な売れ行きを見せ、最近供給した「渋谷南平台」100戸、「代々木上原」47戸、「和光市」158戸などが好調に推移し、先日見学会を行った「本厚木」163戸も人気を呼ぶ気配が濃厚。坪単価350万円と思われる「千住タワー」184戸も自信があるから見学会を行うのだろう。

 「高輪フォート」は、せっかく隈研吾氏が設計した新駅の名称が決まり、エリアの人気を高めるため、さらには国際都市として内外にアピールするためにも設備仕様レベルを上げ、高値挑戦をしてほしかったので、「代々木上原」の単価647万円より安かったのには正直に言えばがっかりもした。

 新駅の出入り口がどこに設けられるか分からないが、記者は北・中央・南のそれぞれ2カ所合計6カ所くらいに設置されるとみているのだが、そうすれば駅から6分くらいの表示になるのではないか。

 坂は気にならないし、今井氏がパンフレットで「懐の深さと奥行きを演出する上では、私道である坂の存在が大きな役割を果たしました」と記述しているように、東禅寺と対面の公園、さらにはグランドプリンス高輪に続く緑は得難く、隠れ家のような雰囲気がするいいマンションになる。モデルルームの設備仕様は〝ザ・パークハウス〟の上位クラスだろう。

 同社に「高値挑戦してほしかった」と質問したら、同社第二販売部長・岡橋志郎氏は「この価格で購入されたお客さまに資産価値を転換できたらうれしい」と答えた。

 この前取材したコスモスイニシアの「高輪」もそうだったが、まだ街の将来像が描き切れておらず、ユーザーも判断しかねていることを読んだ値付けとみたい。高値挑戦し失敗でもしたら、それこそ「ゲートウェイ(Gateway)」ならぬスティーブ・マックイーンの主演映画「The Getaway=逃げる・逃亡」になる。ここで一挙に販売し、続く物件に勢いをつける戦略だろう。

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モデルルーム

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ダイニングにはエルメスの皿とロスチャイルドのシャンパンと明らかにフェイクと分かるマツの盆栽(「エルメスの皿は1500円? 」と女性スタッフに聞いたら笑われた)

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東禅寺(左)と建設現場

隈研吾氏「高輪ゲートウェイ」&泉岳寺に近接 コスモスイニシア「高輪」は腹八分か(2019/1/7)

地元富裕層を中心に人気 坪単価260万円の三菱地所レジ「本厚木タワー」(2019/1/16)

三菱地所レジデンス 最高値更新の坪850万円 「ザ・パークハウス渋谷南平台」(2018/10/4)

駅4分の1低層 息をのむほど美しいサペリの建具 三菱地所レジ「代々木上原」(2018/12/14)

三菱地所レジ他「津田沼 ザ・タワー」 第1期は半数以上の340戸 絶妙の値付け(2018/3/23)

 

 

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「xevo Gran Wood都市暮らし森が家コンセプトモデル(森が家)」

 大和ハウス工業は1月17日、予防医学研究者の石川善樹氏とのコラボレーションで実現した人生100年を見据えた「都市ストレスから解放する」木造3階建てモデルハウス「xevo Gran Wood都市暮らし森が家コンセプトモデル(森が家)」を1月19日に「品川シーサイド展示場」でオープンすると発表した。

 人生100年時代を迎え、心身ともに健やかな暮らしを営むためには「都市ストレスからの解放」がカギと考え、予防医学研究者の石川善樹氏の知見を得て、森の香りや音、植栽、火のゆらぎなど「五感のゆらぎ」「人とのつながり」を盛り込んだ商品。

 開発・販売開始に至った背景について、同社上席執行役員・林直樹氏は都市部では3階建てが増加し、年代別では若年層より50歳以上の人が建てる比率が高いことに着目したと話し、「省エネ性・耐震性・耐久性すべて含め進化させたシステムを導入する。今年は東日本が対象だが、来年からは全国営業所で展開する」と語った。

 石川氏は、「都市ストレス」は造語であることを断ったうえで、「森が家」には都市住宅では得られない「五感のゆらぎ」を再現し、都市が与える心身のストレスを解放した結果、ストレス度、インタレス度、認知テストの実証実験でも効果が得られたと話した。

 モデルハウスは、3階建て延床面積約312㎡。1階は落ち着きのあるダークのカラーリングが基調の「森の入り口」。アロマや自然の音が演出されている。2階は天井高約2.6mのリビング中央に暖炉(フェイク)が据えられており、3面に広がる最大奥行き2mのワイドバルコニー・オープンエアリビング・ダイニングの「森の隠れ家」。3階はチーク材のへリーボーン仕上げの寝室とワイドバルコニーがある「森の寝室」。グーグルホームも置かれていた。

 当面は東日本の富裕層をターゲットにするが、来春からは全国販売する。モデルハウス仕様の価格は坪120~130万円。

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石川氏(左)と林氏

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モデルハウス 1階

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モデルハウス 2階

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モデルハウス 3階

◇       ◆     ◇

 とても面白い発表会だった。記者は三重の田舎の薪炭・囲炉裏・焚火が日常だった自然の中で生まれ育ったから、石川氏から森の効能を聞かなくても「森が家」がいいのはよくわかる。

 嬉しかったのは、タバコ、酒、運動不足、メタボなど健康長寿を阻害する要因を語ったうえで、石川氏は「孤独はタバコより悪い」と言い切ったことだ。

 「孤独」とは、石川氏はそのように語ったわけではないが、つまるところは〝社畜〟なる言葉で象徴されるように社会から隔絶され、家でも職場でも狭い箱の中に閉じ込められ、他人との会話(私語)も遮断され、太陽がどこから昇りどこに沈むのかの確認もできず、満天の星を観察できない不夜城の、さらにまたどうでもいい戦争ごっこに国民を巻き込み不安をあおり、限られた自分自身の時間をスマホゲームで空費させる都市環境・生活が人の健康にいい影響を与えるわけがないということだ。「個」は「孤」の同義語だ。

 社会はタバコの弊害をまき散らしているが、その前に「孤独」からどうして解放するか考えたほうがいい。

 石川氏はもう一つ面白い話をした。記者はここ数年、モデルルームやモデルハウスのフェイク(造花)をやめよとしつこく書いてきた。今回公開された「森が家」には1本の造花も置かれていなかった。数えなかったが数十鉢の本物の観葉植物・低木が植えられていた。

 そこで、石川氏に「フェイクでもいいのか」と質問した。石川氏はやや考えた末、「分からない。フェイクを超える緑のフェイクが現れるかもしれない。設置した暖炉はフェイクだが、これは間違いなく効果がある」と答えた。

 「フェイクを超える緑のフェイク」はひょっとしたら実現するかもしれないので深入りしないが、フェイクの暖炉は効果があるのは理解できる。

 記者は実際の暖炉を経験したこともあるし、夜中に静かな音楽を流しながら暖炉のゆらぎを静かな音楽とともに放映していたテレビに魅入ったことがある。先に書いたようにエネルギー革命が起きる昭和40年代までは薪炭の環境で育った。父親が灰に書く字で漢字の書き順を覚えたし、焚火で田舎の経済を学んだ。

 残念なのは、今回の「森が家」はモデルハウス仕様で坪120~130万円もし、土地持ちでない限り普通のファミリーには手が届かないということだ。仮にお金があって建てられたとしても、あの鉢の数からして旅行など自宅を留守にするときはどうするのだろうと考え込んでしまった。水遣りロボットは開発されるのか。

 もう一つ。参考までに。同社がオープンする「品川シーサイド展示場」の隣接地では積水ハウス「グランドメゾン品川シーサイドの杜」が分譲されている。〝5本の樹計画〟をモデルルームにも再現している。よく売れているのはその圧倒的な緑も要因だと記者は考えている。

 三菱地所ホームのtvkハウジングプラザ横浜内のモデルハウス「ONE ORDER(ワンオーダー)」と、浜田山ホームギャラリーの「ボタニカル リラクゼーション」も必見だし、昨年書いた「1週間に5件 全て売れ行き好調 マンション・戸建ての販売現場に本物の生花・観葉植物」の記事も読んでいただきたい。

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フェイクを超えるか? コスモスイニシア・豊田通商「イニシア高輪プレシアスコート」のモデルに採用されているアーティフィシャル・フラワー(花器はカキの殻で造ったもの)

1週間に5件 全て売れ行き好調 マンション・戸建ての販売現場に本物の生花・観葉植物(2018/4/19) 

三菱地所ホーム 家の中に自然の中低木 最新モデルハウス「ONE ORDER」横浜に開設(2017/10/20)

ボタニカルが最高4つの商品・開発を発表 三菱地所ホーム(2018/5/30)

呉越同舟効果 「5本の樹計画」の本領発揮 積水「品川シーサイド」1期207戸!(2017/3/24)

 

 

 

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岡本理事長

 マンション管理業協会(理事長:岡本潮・東急不動産コミュニティ社長)は1月17日、2019年新年賀詞交歓会を行った。岡本理事長は次のように挨拶した。

◇        ◆     ◇

 本年は、新たな元号が始まる年。また当協会においては創立40周年の節目となる年でもあります。経済の先行き不安、自然災害の懸念等、様々な不安要素はありますが、これらの不安を払拭する明るい一年となることを期待したいと思います。

 さて、マンションは全国で644万戸を超え、日本の住宅の約12%となっていますが、都市部においては、東京23区で31%、都心三区では約80%の世帯がマンションに居住しています。マンションは明らかに都市生活の一般的な住居となっています。

 とは言え、言われて久しい少子高齢化問題、またマンションを巡る「二つの高齢化問題」は日々進行しており、様々な問題を顕在化させています。

 マンション管理組合においては、居住者の高齢化等に伴う想定以上の収入減少、また建物の高経年化等に伴う想定以上の支出増が深刻で、管理組合財政は徐々にひっ迫の度を深めています。

 加えて、管理組合では、役員のなり手不足・人材不足が顕著となっており、こうした面からも、管理組合のマネジメントは益々厳しくなっています。

 また、マンション管理会社においては、人手不足・人件費の上昇が一段と進んでおり、管理会社のマネジメントも一段と厳しさを増しています。

 管理組合、また管理会社のこのような趨勢が継続すると、社会生活の基盤であるマンションの劣化、スラム化が将来にわたって進行しかねないという状況が現実となっています。

 当協会では、昨年「中期事業計画2018-2022」を策定し、業界レベルアップにむけた2つのミッションを掲げ、各般の施策を展開しています。

 その中で、昨年の一つの成果として、皆様のお手元にパンフレットをお配りしております「災害対策出動保険」を3月より募集開始いたします。台風による水害や地震など災害発生時には多くの緊急費用が発生しますが、この保険で費用を補填することにより、管理会社が大規模災害発生時の対応に費用の不安を抱かずに対応業務に邁進する道を開くものです。

 さて、迎えた2019年、当協会として、特に注力する課題は、大きく三つあります。

 一つ目は「管理組合の財政の健全化」、二つ目は「マンション管理会社の経営の安定化」、そして三つ目は「マンション管理がマンションの市場価格へ正しく反映される仕組みづくり」です。

 管理組合財政の健全化において、赤字からの脱却は大前提ですが、良好な居住環境の確保を図る上で、コストダウンには限界があります。あらゆる形での増収策を模索しなくてはなりません。

 また、管理会社の経営の安定化においても、収益増が大前提ですが、管理会社の収益増は管理組合の収益増なしには成り立ちません。

 こうしたことから、「管理組合の原資拡大に向けた抜本的な増収策」が喫緊の大変重要な課題です。

 現状では、マンション管理のレベル差が、不動産流通市場において、市場価格・流通価格に正しく反映されているとは言えません。

 しっかりとした維持・管理がなされ、資産価値・居住価値の向上が図られるマンションが、不動産流通市場においても、市場価格・流通価格が高まる、ということになれば、区分所有者が自身の資産売却時により高い価格で売却できることになります。

 このことは、区分所有者の管理に向けた支出のマインドを上げることになります。

 そして、区分所有者の支出のマインドが上がれば、管理組合の原資の拡大に道が開かれます。

 適切・的確な良い管理が行われ、資産価値・居住価値が上がるマンションに住みたいと思う社会的機運を醸成して行くことが必要です。

 このことはまた、社会資産であるマンションの将来的な価値を維持向上させることにもなります。

 しかし、マンション管理のレベルを適切に市場価格・流通価格に反映することのためには、外部からその価値を客観的に評価するための仕組みづくりが不可欠です。

 とは言え、この「外部からの客観的な評価」の仕組みづくりは、私どもの業界・協会のみで出来ることではありません。

 管理組合、関係諸団体、そして行政の皆様等々、関係各位のお力をお借りしていかなければ叶わない大変大きな課題です。

 マンション管理の問題は、単にマンション管理の問題に止まらず、更に住宅問題のレベルにすら止まらず、日本の大きな社会問題となって来ている現状で、様々な重い課題の解決への道筋はなかなか見通せない状況にあります。

 関連各位の皆様の様々な力強いご支援・ご協力を心からお願いする次第です。

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◇       ◆     ◇

 「199cm、国会議員の中で一番背が高い」と誰かが挨拶されたのに記者は反応した。自由民主党参議院議員の朝日健太郎氏だった。Wikipediaで調べた。朝日氏は1975年生まれで、「元・男子バレーボール、ビーチバレー選手。熊本県熊本市北区出身。身長199cm、体重95kg、血液型A型」とあった。ご本人に確認した。「日本国憲法が施行されてから70余年の中で一番背が高いのはわたし」と断言された。

 そこで衆参両議院の事務局・広報に確認もした。衆参とも議員の数はきちんと把握していた。衆議院は実数で3,088人の方が議員を経験されており、参議院は1,538人(平成29年6月現在、現議員は除く)がいらっしゃる。しかし、議員個人の身長、体重などの個人情報は調査しておらず、朝日氏がもっとも身長が高いかどうかについては当然のことながら「分かりません」という答えが返ってきた。

 あちこち調べ、関係者にも質問した。アントニオ猪木氏は190~191cm、江本孟紀氏は188cm、中曽根康弘氏は178cmなどがすぐ確認できた。アントニオ猪木氏もこれ以上成長されることはないだろうし、プロレスに復帰してコブをつくったとしても朝日氏に肩を並べるような高さにはならないだろうから、やはり朝日氏がナンバーワンだろう。RBAの選手もこれほど背が高い選手は過去も今もいない。

 一方で、管理協の関係者は「身長はともかく、一番腰が低い政治家は〇〇首相」と言い放った。(名前は差しさわりがあり、反論もありそうだから伏せる)

 社に戻り、この話をスタッフに話した。79歳の女性は「人間の価値は背が高いとか低いとかで評価すべきでない」と反論を食らった。また別のスタッフは、「元自民党の埼玉選出のYさんが中国を訪問したとき、ある会議で警備員に誰何され『ここは子どもが来るとこじゃない』と入室を拒否されたのを見た。確かにYさんは背が低かった」(このYさんは記者もよく知っている)と、背の高さに言及した。(わが社のスタッフは優秀だ)

 わが不動産業界の歴代団体理事長・会長といえば、十中八は短躯で肥満体だった。現理事長の岡本潮氏はスマート(体つきだけでなく聡明という意味も含めて)稀有な方だ。二人のツーショットは最高ではないか。

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岡本氏(左)と朝日氏(岡本氏は決して背が低いわけではない。念のため)

◇       ◆     ◇

 記者は約40年間、この種の会合を取材してきた。政治家の方もたくさん参加され話されたが、公明党副代表・井上義久氏ほど区分所有法に詳しい人はいないと思う。政治家にしておくのがもったいない。次期管理協の理事長に推薦したい。

 その井上氏が今年も最高の挨拶をされた。井上氏は、マンションが抱える諸々の問題は「社会問題」とし、「その問題を解決するための知見を持っているのはマンション管理業以外ない。いつもやってくる災害に対する対策の柱の一つともいうべき共助を担っている」と挨拶した。

 もう一人、政治家ですごい発言をされた方がいた。「住まいは人権」と。タバコも人権だと考えている記者はこの言葉にいたく感動した。すぐ協会事務局と議員秘書に確認したところ、日本共産党参議院議員の山添拓氏だった。1984年京都府生まれで、2007年東大法学部卒。同党がこの種の会合で登壇、挨拶されたのを記者は初めて経験した(かつてある野党の方がしどろもどろの挨拶をされたのは記事にしたことがある)。

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井上氏

◇      ◆     ◇

 不動産経済研究所の前社長で、取締役特別顧問の角田勝司氏のコメントも紹介する。記者より確か年が2つ上で、憎たらしく記者の「司」に「勝」が付いている方だ(うがった見方をすれば「司」どるに「勝」つ。親は反逆児を期待して名付けたのか)

 角田氏いわく。「今年は気力、人の話を聞かないこと(記者は昔からそうで、角田氏とよく似ている)、街歩きをして衝動買いをすべき(小生はそんなお金を持たせてもらっていません。この前の取材でも帰りの電車賃しか残っていませんでした)。

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角田氏

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「ザ・パークハウス 本厚木タワー」完成予想図

 三菱地所レジデンスは1月16日、本厚木駅前の再開発制震タワーマンション「ザ・パークハウス 本厚木タワー」の報道陣向け見学会を行った。駅とぺディストリアンデッキで結ぶ163戸の規模で、坪単価は260万円。地元の富裕層を中心に人気とかで、第1期は80~100戸くらいの供給になりそうだ。

 物件は、小田急小田原線本厚木駅(南口)から徒歩1分、厚木市旭町1丁目に位置する地下2階地上22階建て全163戸(事業協力者住戸4戸含む)。専有面積は55.20~113.49㎡、価格は未定だが、坪単価は260万円になる模様。完成予定は2020年12月下旬。売主は同社のほかフージャースコーポレーション。施工はフジタ・小島組建設共同企業体。事業コンサル・デザイン監修はアール・アイ・エー。販売開始は2月中旬。

 現地は、2005年に再開発準備組合が設立され、2016年に事業認可、2018年に着工された約8,000㎡の本厚木駅南口地区第一種市街地再開発事業地内。事業では駅前に広場を整備し、駅前広場からマンションエントランスまでペディストリアンデッキ(共用開始2021年2月予定)で結ぶことになっている。

 建物は制震構造を採用。3階までは駐車場、商業・業務施設などで、住戸は4階以上。内廊下方式で、標準階は1フロア8~9戸。最上階は6戸。角住戸比率46%、ワイドスパンが特徴。

 基本性能・設備仕様は、逆梁、二重床・二重天井、食洗機、ディスポーザー、廊下幅芯心1m、リビング天井高2550~2600ミリ、クォーツストーン天板(最上階のみ)など。

 昨年8月からの反響は1,000件超、12月からの事前案内会来場者は300件超。7割が地元厚木市内居住者で、40歳以上の医者、経営者、弁護士などの富裕層が目立つほか、市内の研究所などに勤務するアッパーミドルも見られるという。

 販売担当者は、「本厚木駅圏でのマンション供給は5年ぶり。厚木市は奥深いものがある。駐車場には超高級車が並び、最上階の億超6戸は全て購入検討者で埋まっている。複数住戸を購入予定ひともいる。反響も多いことから第1期は80~100戸くらい供給したい」と話している。

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眺望イメージ図

◇       ◆     ◇

 坪単価の高さには正直驚いた。海老名駅前の小田急不動産「リーフィアタワー海老名アクロスコート」の坪260万円は頷けるのだが、本厚木はマイナーなイメージしかなく高いと感じた。

 しかし、これは記者の認識不足だった。マンションについてはあまり取材したことがないのが原因だ。かつて6,000~7,000万円の分譲戸建てが飛ぶように売れていたのは知っていた。後背地にはたくさんお金持ちが住んでいることをうっかりしていた。

 そして、何より記者を納得させてくれたのは同社担当者の説明だ。本厚木駅は交通の要衝で、1日約15万人の乗降客がある(わが多摩センターは京王と小田急、多摩モノレールを合わせると同じくらいかやや多いくらいだ)。大企業の工場、研究所や物流施設も多いという。

 さらにまた、隣の海老名の居住者はどちらかといえば都心志向だが、相模川を越えた厚木市の人は職住近接を望む人が多いというのだ。海老名のようにマンション供給を待ち望んでいた人が多いということなのだろう。

 そういえば、駅の反対側には坪200万円以下から220~230万円くらいの物件が数棟ある。その数は約700戸に上るようだ。

 その一つ、坪単価200万円弱の総合地所の「ルネ本厚木」(222戸)も好調で、第1期として100戸が成約したと聞いた。要するにそれぞれ棲み分けができているということだろう。「ルネ本厚木」は今月末に見学会がある。出席してレポートしたい。

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屋上デッキ イメージ図

満を持して登場 全3棟900戸の第一弾 小田急不の免震タワー「海老名」304戸(2017/12/6)

 

 

 

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