アナログの世界に楔 IoT活用で物流市場を変える Hacobu多業種と連携し課題解決構想

左から三木氏、桜井氏、佐々木氏、土川氏、浦川氏(東京ミッドタウン日比谷で)
企業間物流の最適化を目指す2015年創業のスタートアップ企業Hacobuは9月19日、他業種企業との取り組みを通じ、オープンな物流情報プラットフォーム「MOVO(ムーボ)」上で物流ビッグデータを蓄積・利活用することで、ドライバー不足等の物流課題を解決する「Sharing Logistics Platform®(シェアリング・ロジスティクス・プラットフォーム)」構想を発表した。
同社は既に大和ハウス工業やアスクルと連携し物流拠点を軸とした課題解決に取り組んでおり、今回、日野自動車と三井不動産との資本業務提携を締結した。
構想を発表した背景には、10兆円以上と言われる企業間物流は紙・Fax・電話などのやり取りが多い〝アナログの世界〟であるため、①入荷・出荷計画がスムーズに進まず車両の待機時間が長い②車両手配が煩雑、属人化③車両位置、配送状況が見えない-という物流の三重苦を抱え、ドライバー不足、46%と言われる低い積載率、温室効果ガスの排出や騒音などの環境問題、廃棄ロスなどの多くの問題を抱えていることから物流クライシスと呼ばれる状況がある。
こうした課題を解決する同社のIoTテクノロジーを活用した物流情報プラットフォーム「MOVO」上でやり取りされる物流ビッグデータの種類と量は飛躍的に伸びており、2018年8月の3万件から2019年8月は16万件と5倍強に増加。同社は2023年までに我が国全体の10%当たる480万件の月間トランザクションを目指し、2030年には自動運転トラック輸送サービスの土台にする構想を持っている。
パ-トナーシップを結んだのは大和ハウス工業、アスクル、Sony Innovation Fund、日本郵政キャピタル、日野自動車、三井不動産。以下、以下、記者発表会に出席した各社代表のコメント。
Hacobu代表取締役社長CEO・佐々木太郎氏 「物流クライシス」という大きな社会課題を解決するために心を一つにして取り組むことに大きな社会的な意義を感じている。粉骨砕身していく
大和ハウス工業取締役常務執行役員・ダイワロジテック代表取締役社長・浦川竜哉氏 2017年9月にHacobuと資本業務提携を締結した。次世代型物流ネットワークの実現を目指し、更なる付加価値を提供できる物流施設開発を進めていく
アスクル執行役員 フューチャープラットフォームアーキテクチャECR本部プロキュアメント統括部長・桜井秀雄氏 2019年2月に旗艦センターのAVC関西で「MOVO」を導入し、大幅な待機時間削減を実現した。今後も対象センターの拡大に取り組んでいく
ソニーVP Sony Innovation Fund Chief Investment Manager・土川元氏 Hacobuの将来に大いに期待している。同社のテクノロジーは、実効性のあるソリューション提供ができることを証明してきた
三井不動産常務執行役員 ロジスティクス本部長・三木孝行氏 他業種企業の皆さまと社会的物流課題の解決に向け共に取り組んでいけることは大変嬉しい。Hacobuとの連携強化を図っていく

「Sharing Logistics Platform®(シェアリング・ロジスティクス・プラットフォーム)」概念図
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物流は門外漢だが、三井不動産や大和ハウス工業などの記者発表会、施設見学会は極力参加するようにしており、今回の佐々木社長の話は分かりやすく非常に勉強になった。
よく分かったのは、トラック市場は企業間物流が10兆円以上、宅急便が3兆円という巨大市場(分譲マンション市場はせいぜい6兆円か)であり、上場会社も40社近くあるにもかかわらず〝アナログの世界〟(佐々木社長)であることで、だからこそ〝物流クライシス〟という言葉に象徴される危機感を抱いているということだった。
大和ハウス工業や三井不動産などのどちらかといえば後発のデベロッパーの物流事業が大幅に伸長しているのは、様々な手法を駆使し〝アナログの世界〟からの脱却を目指してきたからだろうと思う。今回の「Sharing Logistics Platform®(シェアリング・ロジスティクス・プラットフォーム)」構想は物流市場を一変させるのか。
◇ ◆ ◇
どうしても理解できなかったことが一つあった。佐々木社長が「46%という低いトラック積載率」と話したことだ。46%は当たり前ではないかと記者は考えた。A地点から荷物を満載してB地点に運び、荷物を降ろしてA地点に戻れば積載率は50%ではないかと。
そこで、佐々木社長に聞いた。佐々木社長は即座に「まともな運送会社は帰りも荷物を見つけて運ぶんです」と。
なるほど。紀伊國屋文左衛門と一緒だ。文左衛門は大坂からミカンを積んで江戸に運び、帰りは塩鮭を満載して大坂に運んで巨万の財をなした。
もう一つ、突っ込んだ。「社長、社長はデジタルプラットホームの提案を行ったら〝絵に描いた餅〟と受け入れてくれなかったと話したし、2023年には月間トランザクションは日本全体の10分の1にするとも話したが、残りはどうするのか」と。佐々木社長は「残りも必ずやります」ときっぱり。三木氏が「佐々木社長のパッションに惚れた」というのも納得した。
客室数 全国最大の2,311室「アパホテル&リゾート」開業 元谷代表 高稼働に自信

「アパホテル&リゾート<横浜ベイタワー>」
全国最大の542ホテル約9万室を展開するアパホテルは9月30日、ホテル単体の客室数としては日本最大の2,311室を誇る「アパホテル&リゾート<横浜ベイタワー>」を開業した。開業式典と開業フェスティバルを合わせて2,016名が参加した。
同日、記者発表会に臨んだアパグループ代表・元谷外志雄氏は、「今日は読売新聞全ページ、昨日は産経新聞見開きの広告を出した。今日は天気も非常によく日本晴れ。『JAPAN』の中心は『アパ(APA)』です。前から読んでも後ろから読んでも『アパ(APA)』。2002年に本社機能を東京に移し、2010年から『頂上作戦』を展開し、(このホテル用地を)高値買いしたが、最高級の4,600人が泊まれるホテルが完成した。常識的には〝儲からない〟かもしれないが、2007室ある『幕張』は90%の稼働率。横浜エリアで駅から3分の立地ならビジネスにも内外の観光客とさらにプール、大浴場などを備えたリゾート感覚を味わえるホテルにした。早期の高稼働が期待できる。1日売りではなくタイムセールを導入しており、2回転、3回転できるようにした結果、東京の稼働率は100%を超えている。リーズナブルな価格設定と、環境にやさしい設備仕様にし、無駄を省けばまだまだ伸ばせる。2020年には10万室を目指すが、その3倍でも選んでいただけるホテルにできる。わが国のホテルは当社のような新都市型ホテルに収斂していく」と、約30分にわたって熱弁をふるった。
アパホテル社長・元谷芙美子氏は「言葉は慎まなければなりませんが、〝アパじゃない〟と思えるほど立派なホテルが完成して感動しました。ホスピタリティ溢れる運営を行い、高稼働できるよう頑張ります。日本一のホテル社長を目指します」と話した。
主な参加者は三井住友銀行副会長・成田学氏、コートジボワール共和国大使館特命全権大使 ジェローム・クロー・ウェヤ閣下、ジャマイカ大使館特命全権大使クレメント・フィリップ・リカード・アリコック閣下、東京国際大学理事長 総長・倉田信靖氏、外交評論家・加瀬英明氏のほか、国会議員の原田義昭氏(前環境大臣)、馳浩氏(元文部科学大臣)、櫻田義孝氏(前国務大臣)、鷲尾英一郎氏、片山さつき氏(前内閣府特命担当大臣)、和田政宗氏(国土交通大臣政務官 兼 内閣府大臣政務官)など。

元谷アパグループ代表(左)と元谷アパホテル社長
同ホテルは、みなとみらい線馬車道駅から徒歩3分、横浜市中区海岸通五丁目に位置する35階建て全2,311室(シングル736室、ダブル630室、スタンダードツイン458室など)。ルームチャージは11㎡シングル・ダブルが1.8万円、14㎡のツインが2.6万円、15㎡のトリプルが4.35万円、120㎡のスイートが30万円など。デザイン監修は新居千秋都市建築設計。設計は久米設計。施工は大林組。
共用施設は、最大約600名収容できる宴会場、約200名が利用できるレストラン、112のロッカーを備えた大浴殿(男性向け)、屋外温水プール、フィットネス、カフェなど。約50㎡の滝を配した1,957㎡のイベント広場も備えている。
客室は、50型以上の液晶テレビを設置。テレビ画面から大浴殿の混雑状況を把握でき、チェックアウト時間の延長手続きもテレビリモコンで操作できるセルフ機能を搭載している。
また、自動チェックイン機にQRコード決済が可能な新機能を搭載、ルームキーを投函するとリアルタイムでチェックアウト処理が行えるようにしている。

壁面緑化を施して低層部

メインエントランス

3層吹き抜けロビー

温水プール

自動チェックイン機

宴会場

宴会場

インペリアルスイート

スーペリアツイン
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元谷節がさく裂した。いきなり、最近の用地の上昇などに触れ、「先ほど(用地の)入札を行ったが、1.5倍高値で学校法人に負けた。2010年に東京で『頂上作戦』を開始した時の一種単価はせいぜい100万円だったが、いまは400万円以上。建築費も倍に上昇しているが、アパの収益力をもってすれば、競争に勝てる。現在、53のホテル、19,000室を計画・建築中だが、全ての費用を賄って利益は362億円確保できている。韓国の訪日客が48%減少したが、当社は中国も含めて韓国のお客さんの比率は高くない。欧米が増えている。ドミナント戦略に沿って福岡ではFCも含めて8つのホテルを建設するし、六本木では6つで1,000室を超えるホテルをつくる」などと話した。
客室を見て回ったが、驚いたのは「バリアフリーツイン」と謳ったトイレ・浴室の段差がない19㎡の客室のほかはほとんどすべてのいわゆる洗面・トイレ・浴槽の3点セットの出入り口は約20cmの段差があったことだ。欧米ではこれがスタンダードなのか。

テープカット

テープカット(もっとも国民によく知られている国会議員の片山さつき氏や櫻田義孝氏の姿も)

祝賀会
全国的に地価回復傾向強まる 令和元年 都道府県地価調査コメント(順不同)
令和元年 都道府県地価調査コメント(順不同)
さまざまな社会課題を解決し、経済の成長に貢献する
不動産協会理事長・菰田正信氏
今回発表された都道府県地価調査では、全国平均、三大都市圏ともに上昇が継続し、地方圏では下落幅の縮小傾向が続くとともに商業地では28年ぶりに上昇に転じた。我が国経済が緩やかな回復を続け、地方においても経済の好循環の前向きな動きが生まれ始めていることが地価に反映されたものと評価している。
一方、世界情勢の不確実性が増し、先行きは不透明な状態にある中で、こうした経済の好循環を更に持続、拡大させ、力強い経済成長を実現するには、東京オリンピック・パラリンピック後の対応も見据え、都市・地方ともに更なる活性化を図ることが重要である。
とりわけ、土地・不動産ストックの有効活用を図り、企業立地・産業立地の転換を円滑にし、成長産業によるイノベーションや企業の生産性の飛躍的向上を実現するためには、国内設備投資を安定的に促進し成長力を強化する施策が不可欠だ。
当協会としても、引き続き、時代を先取りした魅力的なまちづくりの推進と豊かな住生活の実現を通じて、さまざまな社会課題を解決し、経済の成長に貢献して参りたい。
地方中核都市でも再開発・コンパクトタウン推進
野村不動産 代表取締役社長・宮嶋誠一氏
今回の地価調査では、全国的に地価回復の広がりが見られ、全用途平均は2年連続で上昇、全体として上昇基調を強めている。地方圏では商業地が28年ぶりに上昇に転じており、とくに地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)における住宅地および商業地の上昇幅は、三大都市圏平均を大きく上回っている。雇用・所得環境の改善や低金利環境の継続を背景に、交通利便性等に優れた地域を中心に住宅需要が堅調であることや、安定した企業業績、インバウンド需要の増加、再開発事業の進展により不動産投資ニーズが高く、オフィスやホテル、商業施設等への投資意欲が旺盛であることが要因と考えられる。
住宅市場に関しては、職住近接や生活利便性を求める共働き世帯やアクティブシニア層を中心に、需要は堅調であり、東京圏を中心に新築分譲マンションの販売価格は引き続き高い水準にある。とくに都心立地や駅前再開発等の新築分譲マンションの評価は高く、この傾向は大阪圏や名古屋圏をはじめ、地方圏への波及も見られる。当社は、三大都市圏に加え、高崎市や岡山市などの地方中核都市においても、再開発事業や多様な機能を集積させた都市型コンパクトタウンの開発に積極的に取り組んでおり、街づくりを通じて豊かなライフスタイルを提供し社会に貢献していく。
オフィスビル市場に関しては、働き方改革や採用強化に対応したオフィス環境の改善ニーズに支えられ、主要都市での需要は引き続き堅調、空室率は過去最低水準であり、賃料の上昇が進んでいる。商業施設・ホテル市場に関しては、外国人観光客をはじめとする国内外からの来訪者増が続いており、主要都市を中心に進出意欲は旺盛である。物流施設市場に関しても、eコマース事業者を中心に先進的な大型物流施設への需要は引き続き堅調に推移するものと想定される。当社は、オフィスビル、商業施設、物流施設、ホテル等においても、マーケットインの発想に基づく開発力を活かし、社会や顧客ニーズの変化を的確に捉えた独創性の高い商品・サービスを生み出しながら、積極的な展開を続ける。
地価調査のトレンドは、不動産取引動向を反映したものとなっており、今後も不動産市場の中長期の指標として注視していく。
ホームグラウンド渋谷で「100年に一度」の開発に注力
東急不動産代表取締役社長 大隈郁仁氏
今回の基準地価では、全国の全用途平均は2年連続で上昇が続くなど地価の回復傾向が全国的に広がっていることが 明らかになった。東京など三大都市圏で住宅地・商業地ともに上昇が継続していることに加え、地方圏でも商業地が上昇に 転じるなど地価上昇の流れが広がっている。これは景気の回復や外国人観光客の増加、雇用・所得環境の改善、低金利 の継続などを背景に地価の上昇基調が全国に波及しているものと捉えている。
住宅地については住宅ローン減税等の政策的支援などもあり、都心立地の物件や駅に近いなど交通利便性の高い地域、住環境の良い地域を中心に地価が上昇している。当社では首都圏の湾岸部で高層分譲マンション「ブランズタワー豊洲」の開発を進めているほか、住まいを起点としたライフスタイル提案型のまちづくり「ライフストーリータウン」として神奈川県内の十日市場や大船でプロジェクトなどを進めている。また、子育て世代への支援サービスを付けた「ブランズシティ調布」、クリニックや当社グループのスポーツプログラムをセットにした「ブランズシティあざみ野」など付加価値を付けた物件開発をしている。関西でも利便性の高い大阪メトロ御堂筋線『中津』駅直結の高層タワーマンション「ブランズタワー梅田 North」を開発し、高級住宅地の兵庫県・芦屋では「ブランズ芦屋 ザ・レジデンス」を展開している。地方圏でも札幌中心部で「ブランズ円山外苑前」の販売を進めている。
商業地では雇用・所得情勢の改善が続く中で、「働き方改革」に合わせたオフィス環境の改善、採用増によるオフィスの拡張を目的とした移転増加などにより都心部を中心にオフィス需要は好調で、新規オフィスビルの竣工が相次ぐなかでも依 然空室率は低い状況が続いている。特に渋谷ではオフィス需要が供給量を大きく上回る状況が続いており、移転などでオフィスに空室が出てもすぐ引き合いがある状況が続いている。また、外国人観光客の増加などで三大都市圏のほか、地方部でも中心都市、観光都市を中心に商業施設、ホテルの需要も高止まりしている。当社グループでは渋谷駅を中心とする「広域渋谷圏」の開発に注力しており、8月には「渋谷ソラスタ」に東急不動産ホールディングスの本社を移転した。ホームグラウンドの渋谷で「100年に一度」となる大型開発を進めており、今後も物件開発を加速する方針だ。2023年度の竣工を目指した「渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業」も順調に進行している。スタートップとの共創を加速するための施設「GUILD(ギルド)」の開設も進めている。商業施設では12月に渋谷駅前に成熟した大人をターゲットにした商業施設「東急プラザ渋谷」が開業予定だ。広域渋谷圏以外では浜松町・竹芝エリアでも約20万㎡の大型開発を進めており、そのオフィス部分にはソフトバンクグループ本社の入居も決まり、IoTを活用した最新オフィスとなる予定だ。
地方圏は地方4市(札幌、仙台、広島、福岡)での地価上昇が加速するなど地価の上昇基調が広がっている。なかでも国 内外の観光客が増加したり、交通利便性が向上したり、再開発が進んだりしているエリアでは上昇傾向が目立つ。当社グループもインバウンドの動向をにらみ、グループ会社の東急ステイが中長期滞在型ホテル「東急ステイ」の展開エリアをこれまでの東京都心から札幌、京都、博多など首都圏以外にも広げている。また、リゾート地では北海道・ニセコエリアでスキー場やホテル、別荘の売買事業などをグループ企業とともに展開している。
今後の不動産市場については、国際情勢の変化や10月の消費税増税などの不確定要因はあるものの、企業収益や雇用情勢の改善、設備投資への資金流入、資金調達の良好な環境などが続くことが想定され、2020年の東京オリンピック・ パラリンピック以降も継続して堅調な状態が続くとみている。少子高齢化による単身世帯の増加や空き家問題、「働き方改革」によるオフィス環境の変化等で市場環境の変化が続くなか、ハードだけでなく当社グループの持つ幅広い事業領域という利点を生かしたソフトサービスという付加価値付けをして事業展開を進めていく必要があると考えている。
ビル、マンション事業好調 新規ホテルも続々開業予定
三菱地所執行役社長・吉田淳一氏
令和元年(2019年)の都道府県地価調査は、全国全用途平均が2年連続で上昇したほか、地方圏の商業地が28年ぶりの上昇に転じた。良好な資金調達環境のもと、景気回復や雇用・所得環境の改善が続いており、堅調な住宅需要やオフィス市場の活況はもとより、外国人観光客の増加などを背景に需要が拡大、全国的な地価回復および上昇を実感している。
当社ビル事業においては、魅力ある職場環境の提供による優秀な人材の確保や働き方改革への対応、立地改善といったオフィス環境の改善を目的とした需要が継続している。JR 新宿駅とデッキで直結し、この8月に竣工した「リンクスクエア新宿」は早期に満室となったほか、8000坪超の大型退去があった「日比谷国際ビル」は、専有部の天井高アップ等のリニューアルに加え、ワークスタイルの変化に対応してテナント専用のビジネスサポートラウンジを新設、リラックスしながら働くサードプレイスを提案し、早期埋め戻しと賃料の上昇に成功した。
住宅事業においても共働き世帯やシニア世帯を中心にマンション取得ニーズは底堅く、特に駅近物件や、住環境や交通・生活利便性が優れたエリアに立地する物件の人気が強い。JR恵比寿駅徒歩4分の「ザ・パークハウス恵比寿」(総戸数102戸)や、東京メトロ市ヶ谷駅徒歩4分の「ザ・パークハウス市ヶ谷」(101戸)などは特に好調に推移している。
外国人観光客をはじめ来街者の増加は、商業施設やホテルといった事業展開を加速させている。全国各地で展開する「プレミアム・アウトレット」の「御殿場」は、第4期増床に着手しており、2020年春に増床オープンする。それに先駆け、増床エリア内では小田急グループがホテルや日帰り温泉施設を年内にも開業、滞在型施設としての新たな魅力を付加する。また、当社グループのホテルも20年春~22年秋にかけて、「大阪御堂筋」(352室)、「京都梅小路」(約250室)、「京都二条」(約180室)、「神戸三宮」(約170室)、「京都烏丸御池」(約200室)、「銀座6丁目」(約160室)を続々と開業していく予定。
そのほか、EC市場の拡大やロボティクスの進展といった物流業界の構造的変化により、物流施設需要が引き続き伸長していることから、当社でも首都圏で新たに「海老名」、「蓮田」、「春日部」、「船橋」、「座間」の5物件を開発していく。
積水ハウス「上町一丁目タワーPJ」 経産省「超高層ZEH-M実証事業」に採択
積水ハウスは9月18日、全住戸燃料電池採用の36階建て超高層マンション「(仮称)上町一丁目タワーPJ」が、今年度から新たに開始された経済産業省「平成31年度 超高層ZEH-M(ゼッチ・マンション)実証事業」に採択されたと発表した。
高性能真空ペアガラスの採用により、広い開口面積を維持しながら、北海道の基準を超える断熱性能を確保し、家庭用燃料電池エネファームを全住戸で採用している。
韓国からの訪日客が激減 8月は前年同月比48%減の31万人 全体も11カ月振り減少
韓国からの訪日客激減-国際観光振興機構が9月18日まとめた2019年8月の訪日外客数は前年同月比2.2%減の252万人となり、台風第21号や北海道胆振東部地震の影響を受けた昨年9月以来、11か月ぶりに前年同月を下回った。
前月に続き訪日外客数が単月で100万人を超えた中国市場や、全市場で訪日外客数が前年同月を上回った欧米豪市場では、前年同月比で2けたの伸びを記録したが、韓国からの訪日外客数は日韓関係の悪化の反映か、前年同月比7.6%減の約56万人だった7月よりさらに少ない前年同月比48.0%減の308,700人と激減した。
8月の日本から韓国への入国者数はまだ発表されていない。
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心配はしていたがまさか半減するとは。どうしてこんな現象が起きるのかまったく理解できない。国民性の違いか国家のプロパガンダが奏功しているのか、近親憎悪極まれりの観を呈している。
テレビは連日連夜、反日、反韓を煽るどうでもいいような番組を垂れ流している。安倍さん嫌いの焼き肉好きの、テロップ付きの韓流ドラマを毎日観ているわがかみさんも、いざ日韓関係になると目を三角にして怒る。あ然とするほかない。
岡倉天心は「亜細亜は一つ」(海外侵略に利用されたが)と言ったではないか。日本、中国、韓国が手を結び、他のアジア諸国と連合すれば世界を制覇できるのに…。(力で牛耳るという意味ではなく、世界を平和にするという意味)
韓国からの訪日客7.6%減少 日本から韓国への出国者は前年同月比19%増 今年7月(2019/8/23)
「選手村マンション増収分折半」 選手村裁判の原告団が声明文
晴海選手村裁判の原告団は9月13日、下記の「選手村マンション増収分折半」に対する原告団声明を発表した。
「選手村マンション増収分折半」の都知事発表に対する原告団の見解」
2016年12月、東京都は晴海選手村用地(13.4ha)を相場の1割弱(1㎡当たり96,700円)で特定建築者(三井不動産レジデンシャルを代表とする11社の企業連合体)に譲渡しました。選手村要因を考慮しても1,653億円にもなる土地を129.6億円で譲渡したので都民の損害額は1,420億円に上ります。いま私たち原告を中心に多くの都民が「投げ売り価格」の是正を求めて立ち上がっています。
こうした中で7月26日、小池都知事は「最終的な住宅分譲販売収入が当初の想定を1%以上上回った場合、増収分の半額を特定建築者が東京都に追納することで合意した」と発表しました。各メディアが一斉に報道したところです。
都知事は今回の措置について「土地の売り渡し価格の問題とは別のカテゴリーの問題である」と説明しており、譲渡価格も「定められた基準に基づき、適正な鑑定の上で決定した」として選手村用地の「評価格(額)」は「適正」であるという態度は変えようとしていません。適正な価格で土地を譲渡したと言うなら、儲けすぎたら増収分折半という今回の措置は何なのでしょうか。適正価格なら事業者がいくら儲けようが構わないことです。
晴海選手村土地譲渡契約書には、異例にも「著しい収益増がある場合譲渡金額の変更を別途協議する」旨の特別条項(土地譲渡契約第2条第2項)が規定されています。激安譲渡価格に対する世論の厳しい批判をかわすための「逃げ道」「目くらまし」として予め設けられたのではないでしょうか。
この規定を適用したという今回の措置・内容にも疑問や曖昧な点があります。
第一に、将来の追加払いがゼロということもあるという点です。販売が完了し、収益がほぼ確定するのは早くても2025~2026年です。激変が予想される厳しい経済環境の下、マンション大不況が晴海フラッグをいつ襲うとも限らないのです。
第二に、何を根拠に「増収分折半」なのか、都の幹部が言う「事業の公共性」云々では説明になっていません。
第三に、なぜ都知事は今回の措置やその発表を急いだのかの疑問です。特別条項では「著しい収益があった場合」ということですから、マンション販売完了予定の6~7年先の協議でもよい筈です。恐らく「土地投げ売り」に対する世論の批判の高まりの結果追い込まれたという面もありますが、その目的は世論・住民訴訟対策、来夏の五輪、都知事選対策であると言っても過言ではありません。
第一期分の住宅販売に関し一部週刊誌は、購入者層は超富裕層及び不動産投資目的の人が多いと報じています。この現実に改めて怒りを禁じえません。私たちは「選手村土地譲渡価格」が適正な評価を踏まえたものとなるよう裁判の取り組みを中心に引き続き頑張る決意です。
以上原告団の見解表明といたします。
2019年9月13日
晴海選手村裁判 原告団
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声明文に口を挟むのもどうかと思うが、以下、記者の考え。
声明文は「激変が予想される厳しい経済環境の下、マンション大不況が晴海フラッグをいつ襲うとも限らない」というが、これは記者も分からない。国内情勢というよりは、米中関係、イギリスのEU離脱、中東情勢など外的要因により我が国経済が大打撃を受けることはありうることだろう。ただ、現在のマンション価格は基本的には実需によって支えられていると思うので、社会経済状況が激変しない限り、「大不況」はあり得ないのではないか。従って、「HARUMI FLAG」の価格が暴落することもないと思う。
声明文は「何を根拠に『増収分折半』なのか」説明になっていないというが、これはそうではない。極めて明白だ。記者は2月の段階で都に「著しい」とはどの程度か問い合わせた。都は、「弁護士などと相談しながら『著しく』という文言も含めて何が協議対象になるか判断していく」(都市整備部)と答えた。(2019/2/12記事)そして、5月の段階で、当初事業計画で示された販売価格の1%を超えたら「著しい利益増」とすることを決定している。1%を超えたら著しいというのは、事業者に酷だと思うが、これはこれで分かりやすい。選挙対策云々はどうか。
声明文が言う「購入者層は超富裕層及び不動産投資目的の人が多いと報じています。この現実に改めて怒りを禁じえません」というのは理解不明。
「超富裕層」とはどのような層を指すのか知らないが、中心層はアッパーミドルであるのは間違いないとても、小生が考える「富裕層」はむしろ少ないのではないかと思う。「投資目的」の人はいるかも知れないが、記者がお金持ちなら買わない。もっと別のマンションを買う。
「怒りを禁じえません」という矛先は購入者ではなくて東京都に対してだろうが、売れないよりは売れたほうがいいに決まっているではないか。もし、東京都がメダリストのサインや魚拓ではなくて人拓でも壁に残し、オークションにかければ1戸数十万円から数千万円の価値はあると思うが…。何? メダルの総数は1000個くらい? ならば、人気選手も含めて分譲戸数分集めればいい。
原告団関係者も支持者の方も、湾岸でマンションを探している人は選択肢の一つに加えるべきだと記者は思う。価格が高いか安いかはともかく、街全体のレベルは極めて高いと断言できる。(地下駐車場は当初約2,300台が約1,200台に減少した理由は聞きたい)
黒白を付ける意味はあるのか オリンピック選手村裁判 双方の舌戦にうんざり
「官民癒着」「官製談合」「名誉棄損」「誹謗中傷」などと激しい言葉が飛び交う割には、どこか空疎な揚げ足取りの論議にも聞こえなくもない今回のオリンピック選手村裁判の原告と被告の舌戦にうんざりした。
どうも弁護士は国会議員と一緒のようだ。法廷内では相手を罵倒しようと冷水を浴びせかけようと甘言を弄して丸め込もうと、よほどのことがない限りその発言は罪には問われないようだ。法廷は治外法権の場に映った。
裁判はどちらが勝つか負けるか、率直に言ってあまり興味はない。この前も書いたように、それぞれの不動産鑑定士の鑑定評価に多少の見落とし、計算違いがあったとしても違法とまでは言えず、事業者選定の手続き上も瑕疵がないとすれば、この際、引き分け、和解するのがもっとも現実的な判断ではないかと思う。どこまで行っても裁判は平行線だろう。考え方の相違だ。白黒をつける問題ではない。
原告側の皆さんの指摘はよく分かる。中央区晴海の都有地が「檜原村の住宅地」並みで(記者は調整区域並みと書いた)民間に売却されるのは、社会正義を第一義とする皆さんにとって耐え難いことかもしれないが、国家的プロジェクトを成功に導くためには官と民が手を携えることが必要で、多少の犠牲・損失も多とする寛容さもあっていいのではないか。
「儲かったら双方で山分け」というのは何だか山師の談合のように思えなくはないが、皆さんの頑張りがそのような回答を引き出したと言えなくもない。
一方、「専門家の判断に瑕疵はない」(かんぽの宿の前例はどう理解したらいいのか)を盾に逃げ切りを図る被告の東京都は形勢有利と判断したのか、相手の弱点を徹底してつく戦法に出た。
しかし、それにしても、都民の財産をどうして地価公示の10分の1、原告が言うところの「檜原村の住宅地」並みの価格で売却したのか、「開発法」について分かりやすく都民に説明すべきだった。
「東京2020オリ・パラ選手村 敷地売却価格は地価公示の10分の1以下の〝怪」との見出しの記事を書いてから3年が経過した。アクセスが殺到した。日経のWeb「住宅サーチ」を合わせれば数万件に達したはずだ。その後もこの問題を追っかけてきた。その意味はあったはずだ。
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原告、被告の意見陳述について。まず、原告側。「官民癒着」「官製談合」などと相手を糾弾するのはいかがか。それを証明するには「いつ」「どこで」「だれが」「何を」「なぜ」「何のため」-いわゆる5W1Hの事実を完璧に証明する必要があるのではないか。「のり弁」だらけの鑑定報告書のようだが、主張は格好の揚げ足取りにされかねないと思う。
原告側はどうか。「現在の『晴海フラッグ』の分譲価格でさえ『高い』という専門家の意見があるのは周知の事実」というが、記者はその種の意見を寡聞にして知らない。「周知の事実」であるならば、是非とも「専門家」とはどなたか聞きたい。
少なくともわが業界には、デベロッパーの事業担当者以外にそのような人は存在しないと思う。「専門家」とは身内の人なのか、それとも鑑定報告書を作成した鑑定士のことか。これが藪蛇にならないことを祈る。
〝レガシーマンション〟にする事例の一つに、約1,200台の地下駐車場を整備することを上げたのはいい。これほどの地下駐車場を整備した分譲マンションは過去にないはずだ。小生は青山学院グラウンド跡地の「グリーンサラウンドシティ」しか知らない。ここは総戸数945戸分の駐車場を地下にした。
分譲価格を抑え、かつ質の高いマンションにするため土地を安く売却したと正直に言えば都民は納得するはずだ。
裁判長!ここは是非とも大岡裁きで幕を下ろしていただきたい。
とここまで書いて、ン…。重大なことを発見した。記者もうかつだった。昨年10月31日に事業者が記者発表したとき、駐車台数分(2,318台)をすべて地下化すると発表した。それが、今年の4月の時点では1,300台になっていた。そして、今回被告側は1,200台へさらに減らした。これはどういうことか。
オリンピック選手村裁判 安値売却は都と事業者の筋書き通り 原告側が意見陳述(2019/9/16)
オリンピック選手村裁判 原告側桝本鑑定士の意見書は証拠価値なし 被告側が意見陳述(2019/9/16)
和解、ノーサイドの道はないのか オリンピック選手村裁判 第7回口頭弁論(2019/9/13)
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三井不 銀座エリア4施設目のホテル「銀座五丁目」開業 近接に約2000室ホテル林立

「三井 ガーデンホテル銀座五丁目」( 右側の既存ビルは鹿島がホテルを建設する)
三井不動産と三井不動産ホテルマネジメントは9月26日、銀座エリアで4施設目となる「三井 ガーデンホテル銀座五丁目」を開業する。開業に先立つ17日、プレス内覧会を行った。
同ホテルは、東京メトロ銀座駅から徒歩4分(東銀座駅から徒歩1分)に位置する15階建て338室。客室面積は約17~34㎡(103室あるメインのツインは24㎡)。ルームチャージは約3.2万~6.5万円。
歌舞伎座や新橋演舞場に近接していることから、館内一部のアートは松竹の監修の下、日本の伝統芸能である「歌舞伎」をモチーフに、最先端の「粋な空間」を表現している。同社グループが運営する銀座エリアの施設では初めて大浴場を設置したのも特徴の一つ。
今回のホテル開業により、同社グループのホテルは全国で29施設目で、銀座エリアでは4施設目となり、4施設で客室数は1,000室を超える。

フロント

ラウンジ(檜舞台)
◇ ◆ ◇
同社のホテルは先月に「三井ガーデンホテル京都駅前」を取材し、体験宿泊もしたばかりだ。
その記事も参照していただきたいのだが、もっとも目を引いたのは1階のフロント・ラウンジ空間だ。「京都駅前」では組子デザインが最高に素晴らしかったが、今回は「朱」をテーマにしたフロント正面のきものデザイナー・斉藤上太郎氏が制作したアートが存在感を示している。
業務用「花王レアーナ」シャンプーも浴室にあった。これも褒めたいのだが、使用した者でないと分からないだろう。

2階エレベーターホール

レストラン

メディア向けに試食会が行われたSHARI和食膳(イメージ)
◇ ◆ ◇
今回のホテルの斜向かいには、サンケイビルが開発を担当する日本初進出のマリオット・インターナショナルの〝ALOFT(アロフト)〟ブランドのセレクトサービスホテル「ALOFT TOKYO GINZA(アロフト東京銀座)」(客室数206室)が2020年春に開業する。
その近接地では、東武鉄道が所有する土地に、これまたマリオット・インターナショナルが運営するアジア初のライフスタイルホテル「ACホテル・バイ・マリオット東京銀座」(客室数296室)が2020年夏に開業する。「ACホテル」の隣接は既存の「コートヤード・マリオット銀座東武ホテル」(客室数206室)がある。
さらにその先の銀座8丁目には「三井ガーデンホテル銀座プレミア」(客室数361室)があり、また、手前には東銀座駅すぐの「ミレニアム 三井ガーデンホテル東京」(客室数329室)もある。
今回のホテルと合わせ1,736室にも上る。これだけかと思ったら、今回のホテルの隣接地では鹿島建設が15階建て延べ床面積約8,170㎡のホテルを計画している。同社は「どこが運営するかも含め現段階では公表できないが、客室数は100室を超える。近接ホテルに負けないものを目指す」としている。
それぞれのホテルは徒歩5分圏内だ。単体ではわが国最大の2.311室の「アパホテル&リゾート〈横浜ベイタワー〉」があるが、それに匹敵する規模となる。コンセプトは異なるのだろうが、他人事ながら心配になってくる。大丈夫か。
いっそのこと、ホテルが面する「日比谷通り」を「ホテル銀座通り」に変更したらどうか。

朱色の歌舞伎「連獅子」デザインの客室(トリプル)

大浴場(パジャマで出入り可能)
オリンピック選手村裁判 安値売却は都と事業者の筋書き通り 原告側が意見陳述
オリンピック選手村裁判 原告側桝本鑑定士の意見書は証拠価値なし 被告側が意見陳述(2019/9/16)
和解、ノーサイドの道はないのか オリンピック選手村裁判 第7回口頭弁論(2019/9/13)
「官民癒着」と原告 「誹謗中傷」と被告応酬 第6回 選手村住民訴訟 口頭弁論(2019/5/18)
9月13日行われた、いわゆるオリンピック選手村裁判で、東京都を訴えている原告側代理人弁護士・千葉恵子氏は次のような意見陳述を行った。
◇ ◆ ◇
1 原告らは、本日、準備書面6、準備書面7、準備書面8、調査委託申立に関する被告意見書に対する反論書を提出しました。
2 準備書面6では本件土地価格に関する主張を行いました。
土地価格については、既に桝本鑑定士による鑑定評価(甲68)、意見書(甲77)を提出していますが、今回、修正意見書(甲92)を提出しました。これは、被告から日本不動産研究所作成の調査報告書が改めて提出され、以前黒塗りだった部分が一部明らかになったり、その後公表された資料などで明らかになった事実を踏まえて作成されたものです。この修正意見書に基づいき、いわゆる「選手村要因」を考慮した本件土地の評価に関する主張を行いました。
修正意見書は、オリンピック要因を考慮し、調査報告書が用いた数値のうち、明らかになっていない数値や明らかになっていても適正とはいえない数値については桝本鑑定士による分析に基づく数値が用いられています。修正意見書は、調査報告書の内容の不備として土地譲渡価格の90%が後払いであることが考慮されていないこと、建築工事費が不相当に高く計算されていること等を指摘しています。修正意見書によれば、「選手村要因」を考慮しても、本件土地価格は1653億2100万円に上ります。
被告が決定した本件土地処分価格は129億6000万円であり、上記金額の8%にも満たず、坪単価で比較すれば東京都西多摩郡檜原村の住宅地や商業地域と同程度の価格です。この事だけでも異常な安値であることは明らかです。さらに、修正意見書では、桝本鑑定士により、その知識と良心に従ってオリンピック要因をも考慮した適正価格が導かれているのであり、適正価格に比して処分価格は異常な安値であることは明らかです。
被告は、これほどの財産価値を有する不動産を、わずか129億6000万円と鑑定による価格の92%も減額して処分する、すなわち東京都民の財産を約1480億円も失わせるのですから、かかる減額の根拠を明確に示すべきです。
にもかかわらず、被告東京都は、価格算定の唯一の根拠である調査報告書に基づく具体的な主張はほとんどせず、調査会社の権威を根拠に適正な調査である旨の主張を行うのみです。このような態度は到底許されるものではありません。
3 準備書面7では原告らは、どのようにして処分価格がそのような異常な安値になったのか、その処分価格とする方策の検討がどのように行われたかについて、2013年9月にパシフィックコンサルタンツ株式会社が作成した「選手村開発方針検討支援業務報告書」(甲93)(以下「支援業務報告書」と言います)がその筋書きを作り、それに基づいて進められたと評価できると主張しました。
(中略)
本件土地価格の不当な低廉さは、このように被告東京都と事業協力者の(支援業務報告書に記載されている)上記シナリオに基づく綿密な事前協議のもとに実現しており、行為の違法性は明白です。
支援業務報告書も多くの部分が黒塗りのため明らかでない部分があります。原告らは黒塗りにした部分が時の経過とともに明らかにならないか、と期待し、東京都に対して開示を求めました。開示決定の時期が延期されて、その結果を待っているところです。(開示された模様)
4 原告らは、被告と事業協力者との協議記録に関して、被告に対して情報開示請求の方法をとりましたが、「既に全て廃棄して開示できない」という理由で開示されていませんでした。地方自治体は、本件のような公共的な事業に関しては、事業協力者との協議記録は公文書として保管して、住民に全て開示すべきです。それが開示されなかったために、やむなく調査嘱託の申立を行いました。調査嘱託の採用を求めます。
そして、被告には再度、電子データで保管されていないか、など探索をし、保管されている場合には明らかにするように求めます。
オリンピック選手村裁判 原告側桝本鑑定士の意見書は証拠価値なし 被告側が意見陳述
和解、ノーサイドの道はないのか オリンピック選手村裁判 第7回口頭弁論(2019/9/13)
オリンピック選手村裁判 安値売却は都と事業者の筋書き通り 原告側が意見陳述(2019/9/16)
「官民癒着」と原告 「誹謗中傷」と被告応酬 第6回 選手村住民訴訟 口頭弁論(2019/5/18)
9月13日行われた、いわゆるオリンピック選手村裁判で、被告(小池百合子都知事)側代理人弁護士・薮田広平氏は次のように述べた。
◇ ◆ ◇
原告らの主張及び提出した書証に多くの問題があることは、既にこれまでにも述べたところですが、今回甲92号として提出された桝本鑑定士の修正意見書にも、明確な問題・矛盾が含まれています。
第一に、甲92号証の修正意見は、価格時点を「平成28年5月25日」とした上で、本件土地の価格の算出を行っていますが、不動産鑑定士が遵守すべき国土交通省の定める不動産鑑定評価基準運営上の留意事項(乙28号証)によれば、算出に当たって参照すべき基礎資料も価格時点である「平成28年5月25日」に近い時点において入手可能であったものでなければなりません。しかしながら、桝本鑑定士は、甲92号証の修正意見書において「令和1年7月22日時点の晴海フラッグの販売価格表」に記載された販売価格に言及する等、価格時点近辺においておよそ入手し得なかった資料を価格算定の基礎資料として使用しているため、まさに論理が破綻している上に不動産鑑定評価基準違反による算定を行ったものと言わざるを得ません。これは、桝本鑑定士の意見、そしてひいてはこれに依拠する原告らの主張かぜ根拠のないものであることを如実に顕すものです。
第二に、原告らが甲68号証として提出した桝本鑑定士の作成にかかる不動産鑑定評価書においては、最有効使用を前提とした正常価格として、本件土地の価格を1611億1800万円と算出している一方で、甲92号証の修正意見書では、本件土地の価格を1653億2100万円と算出しています。すなわち、桝本鑑定士の価格算出結果によれば、最有効使用を前提とした正常価格よりも選手村要因に基づく様々な負担を考慮した価格の方が高く算出されているという結果となっており、これも論理的な整合性を欠いたものであり、算定のいい加減さを顕すものと言わざるを得ません。
第三に、甲92号証の修正意見書においては、実際には本件土地上に建築が予定されている建物には大規模(合計100台以上分)もの地下駐車場が設けられることになっているにもかかわらず、この点が価格算出の基礎とされていません。地下駐車場の設置は、土地の掘削等のために多くの工事費の発生を伴うものであり、共用部分とは言え、居住部分を繋ぐ共用廊下の施工に要する工事費と同列に扱うことは出来ません。(後略)
第四に、仮に、原告らが適正価格であると主張する価格で東京都が特定建築者に本件土地を売却することを想定した場合には、特定建築者がその取得に要する費用がおよそ1500億円増額となるため、現在「晴海フラッグ」として販売が開始されている分譲マンションの土地代込みの開発費用は、その分増加することになります。現在の「晴海フラッグ」の分譲価格でさえ「高い」という専門家の意見があるのは周知の事実ですが、これが更に大幅に高額化し、本件開発事業が事業として非現実的なものになってしまうことからも、原告らの主張のいい加減さを顕すものと言わざるを得ません。
「晴海フラッグ」は、いわゆるオリンピックレガシーの一部として後世に残すべきものであり、これは東京都が立候補ファイルにおいて公約している事項です。そして、このような趣旨に鑑みれば、適正な価格の範囲でできる限り多くの人に購入の機会が確保されるのが望ましいものです。仮に、原告らが適正価格であると主張する価格で特定建築者に売却した場合には、この趣旨の反するものと言わざるを得ない点も、被告弁護団として付け加えさせていただきます。
第五に、原告らは、「土地譲渡価格の90%が後払いであることが考慮されていないこと」に言及した上で、日本不動産研究所の調査報告書の内容を批判してもいますが、そもそも、不動産鑑定士が遵守すべき国土交通省が定めた「不動産鑑定評価基準運用上の留意事項(乙28号証)に拠れば、「マンション等の販売総額」と「建物の建築費及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用」は割り戻し計算の対象となりますが、土地価格はその計算の結果として算出される額であるため、土地の譲渡価格の支払条件を考慮して土地価格自体の割り戻し計算を行うことは許されません(略)。この点についても被告は追って詳細に主張いたしますが、桝本鑑定士の意見及びこれに依拠する原告らの主張はこの点を看過した不当なものと言わざるを得ません。
(中略)
そもそも、公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会鑑定評価基準委員会が定めた「『価格等調査ガイドライン』の取扱いに関する実務指針」によれば、原告らが主張の根拠としている修正意見書は(中略)、「価格等調査ガイドライン」の適用を受けるものとなります。ところが、当該修正意見書には、価格等調査ガイドラインの定めた必須記載事項を未記載としている問題点があります。(中略)桝本鑑定士の意見書は不動産鑑定士が作成した書面としての証拠価値を認めるには足りないものに過ぎません。
加えて、先ほど原告ら代理人はこのような、不動産鑑定士が遵守すべき義務に従うことなく作成された文書のみをもって、本件土地の譲渡価格を「不当に低廉」と強弁し、これを実行するため東京都と事業協力者が綿密な官製談合協議を行ったなどと、再び関係者に対する重大な名誉棄損行為を行いました。しかしこれまで再三に亘り、被告からその官製談合協議が行われたことを示す証拠を提出するよう原告らに対して求めていたにもかかわらず、結局今回、原告らが提出した証拠は、第三者が作成した文書一つのみであり、相当な証拠に基づかずに原告らがこれまで名誉棄損行為に及んできたことが明白になったといえます。このような極めて恣意的かつ悪意を持った原告らの官製談合などという言いがかりは、第1回期日で被告代理人が原告らに申し上げたところですが、重大な人権侵害であり、根拠づける証拠の提出を原告らが出来ないことも明らかになった以上、即刻取り下げて然るべきものです。
冒頭に述べましたとおり、被告は、次回、ここで意見として述べた点を含め、今回原告らから提出された主張に対して網羅的かつ具体的に反論を行うとともに、その反論の基礎付けとなる書証を提出する予定です。
なお、原告らは、原告らとして出すべき主張及び証拠はすべて今回までに提出するとの前提の下、およそ6か月もの準備期間を経て、今回準備書面及び書証を提出するに至っているものであり、既にすべての主張及び立証を尽くしているものと理解しております。このような状況を踏まえ、裁判所におかれましては、今後提出を予定している被告の反論及び書証の提出が済みましたら、速やかに弁論を終結の上、ご判断を賜り、早期解決にご尽力いただけますよう、切にお願い申し上げます。

