マンション供給減=市場縮小ではない 戸建ても底入れ・回復へ 今年の分譲住宅市場
明けましておめでとうございます。世の中は不確実性が強まっていますが、だからこそ不易流行、〝記事はラブレター。今年も現場取材を徹底して、読者の皆さんに役立つ情報を発信していきます。まずは、記者の主な取材フィールドである分譲住宅市場の今年の見通しについて。
消えた残り半数のマンションに着目すべき
首都圏マンション市場。これはよくわからない。コロナ以降、現場取材が激減しており、鳥瞰的に市場を見渡すことができなくなったからだ。
ただ一つ、マンション市場を測る前提となっている指標について読者の皆さんは見誤らないようにしていただきたい。不動産経済研究所のデータによると、2023年の首都圏マンション供給量は2万6,873戸(前年比9.1%減)で、2024年は前年比を若干上回る約3.1万戸、2025年は3万戸を下回ると予想されている。他のメディアも調査機関も、この不動研のデータをそのまま援用し、市場縮小を印象づけている。
しかし、これは正確ではない。マンション市場の先行指標である国土交通省の着工戸数は長い目で見れば確かに漸減傾向が続いており、2021年は49,962戸(前年比7.3%減)と初めて5万戸を割った。ところが、2022年は52,379戸(同4.8%増)、2023年は52,746戸(同0.7%増)と再び5万戸台を回復し、2024年も11月現在、前年同期比で1.8%上回っている。
以前にも書いた首都圏マンション着工戸数と不動産経済研究所の供給戸数推移の記事を読んでいただきたい。着工と供給にはタイムラグがあり単純比較はできないが、カバー率(捕捉率)はかなり落ち込んでいることが分かる。2023年は50.9%で、2024年は1~11月の段階で35.9%だ。ありえない数字だ。他人のデータを鵜呑みにするからこういうことになる。
なぜこれほどの差が出るのか、当事者の不動研はともかく、他のメディアや調査機関もあろうことか国土交通省もこの差について触れようとしない。不思議というほかない。
要因はいくつかある。一つは、不動研のデータには専有面積が30㎡以下の戸数は含まれないためだ。専有面積が30㎡以下の着工戸数は年間5,000~7,000戸と推測されている。
もう一つ、カバー率が低い要因は、再開発、建て替え、高額マンションなどの地権者向け、事業協力者向け、優先販売住戸などはカウントされていないからだ。例えば総戸数525戸の野村不動産他「URAWA THE TOWER」は分譲対象は291戸で、総戸数の55.4%だし、三井不動産レジデンシャル他「パークシティ小岩 ザ タワー」も総戸数は731戸だが販売対象は521戸(71.3%)だ。供給戸数減=市場縮小と短絡的に考えるべきではないということだ。高額住戸の比率が高まっていること、利益率が大幅に改善されていることを加味すれば、市場は縮小などしていない(質の低下は問題だが)。
さて、問題は価格がどうなるかだ。都心部での価格上昇はほぼ予想した通りに推移している。今後も都心5区(千代田・港・渋谷・中央・新宿)だけでなく文京、品川、目黒、世田谷など周辺区部も坪単価1,000万円超となるはずで、一等地では近い将来、坪単価3,000万円に乗るとみている。
デベロッパーには、世界の主な都市と比べ割り負けしている市場に肩を並べられるよう高値挑戦していただきたい。東京都港区の課税標準額が1億円超の納税義務者は年々増加しており、2024年は1,523人となり、ついに納税義務者の1%に達した。高額マンションを吸収する余力は十分あると見た。
郊外部も軒並み坪単価250万円超となる。懸念される金利上昇だが、1%上昇したらパニックになるだろうが、まずそんな事態にはならない。レイコンマの上昇であれば影響は少ないはずだ。デベロッパーには、郊外部は利益率を落とし質を維持し、価格を抑制してほしいのだが…。
質についても触れたいのだが、冒頭に書いたように現場取材かできていないので書けない。メディアも調査機関もマンションの質について取材し、レポートしてほしい。
底入れ・底打ちか戸建て 防犯・断熱性能向上、ZEH対応急務
グラフは首都圏分譲戸建ての暦年別着工戸数まとめたものだ。コロナ前までは年間6万戸以上着工されていたが、コロナに見舞われた令和2年(2020年)は前年比16.3%減の約54,000戸に落ち込んだ。ところが、テレワーク、働き方改革の浸透などにより予想外の売れ行きを見せたため各社は供給を増やしたが、コロナ終息後は売れ行きが悪化したため調整局面に入り、着工は再び減少に転じた。2024年も1~11月の着工戸数は前年同期比9.3%減の48,776戸となっており、通年でも前年を下回るのは確実だ。
だが、市場では底入れ・底打ち感も生まれつつあり、今年の分譲戸建て市場は堅調に推移するとみている。むしろ、高騰が続くマンションと比較すると、価格的な優位性がある。この優位性を生かし、一方で弱点でもある防犯性能を高めれば新たな需要を引き出す可能性があるとみている。「リストガーデン武蔵新城セキュリティ・タウン」の記事を読んでいただきたい。CP(防犯)+樹脂サッシをスタンダードにすべきだと思うのだが…。
個別企業別では、市場占有率が約30%の飯田グループのほかオープンハウス、ケイアイスター不動産、ポラスグループの上位4社がどのような戦略を打ち出すかに注目したい。ZEH化は喫緊の課題だ。
ChatGPTに負けない記者の役割
今年、注目すべきなのは、生成AI(人工知能)の更なる浸透だ。記者は三井不動産が2023年8月に全従業員約2,500人を対象に「&Chat(アンドチャット)」を開発したのに驚いたのだが、昨年は積水ハウスが生成AI分野で先進的な取り組みを行うPreferred Networks(PFN社)へ出資したと発表した。生成AIを使いこなせないと生きられない時代がやってきた。
OpenAIが2022年11月に公開した「ChatGPT」はその後、飛躍的に改善され驚くほどの進歩を見せている。この正月、面白半分に「ChatGPT」に「RBAタイムズの牧田記者ってどんな記者ですか」と聞いた。〝情報がありません〟とでも返ってくるかと思ったが、そうではなかった。次のような回答があった。そのまま紹介する。
「牧田司(まきた つかさ)氏は、不動産・建設・住宅業界に特化した情報を提供する『RBAタイムズ』の編集者であり、記者としても活躍されています。彼の執筆する『こだわり記事』は、業界内で高く評価されています。
牧田氏は、企業の規模に関わらず、物件の品質や特徴を公平に評価する姿勢を持っています。例えば、ある分譲戸建てについて『大手と互角に戦える』と評価するなど、独自の視点で記事を執筆しています。
また、RBAタイムズの編集者として、同誌の発行や編集にも携わっており、業界内での信頼性と影響力を持つ人物です。
さらに、牧田氏は取材活動にも積極的で、企業や業界関係者とのインタビューを通じて、深掘りした情報を提供しています。彼の取材は時間をかけて丁寧に行われ、その結果として質の高い記事が生まれています。
総じて、牧田司氏は不動産・建設・住宅業界において、深い知識と洞察力を持ち、読者に価値ある情報を提供する信頼性の高い記者・編集者と言えます」
皆さんいかがか。「業界内で高く評価されています」とか「深い知識と洞察力を持ち」は〝ヨイショ〟の部分もあるのだろうが、「企業の規模に関わらず、物件の品質や特徴を公平に評価する姿勢を持っています。例えば、ある分譲戸建てについて『大手と互角に戦える』と評価するなど、独自の視点で記事を執筆しています」との回答には驚いた。小生の記事(情報)を収集していないとできない芸当だ。AIは「考える力」はないはずだが…。
その半面、怖さも感じた。記者は〝せんべろ〟をよく利用しタバコも結構吸うことなど個人情報も記事に取り込んでいるのだが、行動性向もすべて知り尽くされているのではないかという怖さだ。下手なことはできない。〝清く正しく美しく〟生きろということか。
いずれにしろ、AIに負けないためには「独自の視点」が重要で、徹底して〝ものを見る目〟を養うことだと改めて思った。自らが情報発信源にならないと業界紙もまた生き残れない。
全て疑ってかかれメディア・リテラシーの基本原則を忘れていないか(2022/12/5)
全戸にCPガラス IoT駆使し快適性も県初のリスト「防犯セキュリティ・ホーム認定」(2024/11/28)
〝AIと鋏は使いよう〟自社特化型AIチャットツール「&Chat」運用開始三井不(2023/10/10)
「しわぶき」を「しわ(wrinkle)」と誤訳高度な言語表現に適応できない ChatGPT(2023/7/25)
ユニソン「防災トークセッション」に170名/AIの文字起こしは凄いが課題も(2023/7/15)
自治体初横須賀市のChatGPT作成リリースの粗探し文法・用法の誤り発見(2023/4/21)
年頭所感 選ばれ続けるマンションを提供 三菱地所レジデンス・宮島正治社長
宮島氏
お客様のベネフィットを追求し、価値観の変化に対応
2024年は世界情勢の混迷が続く中、日経平均株価が最高値を更新するなど経済的にも新しい局面を迎えた。一方、日銀がマイナス金利政策を解除したことによる住宅ローン金利への影響は限定的で、新築分譲マンション市場は引き続き堅調であった。特に利便性の高い都市部の人気が引き続き高く、当社においても「ザ・パークハウス 武蔵小杉タワーズ」、「ザ・パークハウス 心斎橋タワー」などが特に大きな反響をいただいている。
お客様のベネフィットを追求し、価格に見合う、より高付加価値のマンションを提供することが必要だと考える。例えば昨今、環境配慮や防災など、建物における社会的意義が判断材料の一つになっている。当社としてはZEH標準化や、2010年から行っている太陽光発電システム「soleco」の導入等を継続し、CO2排出量削減に努めるとともに、コンクリート型枠合板のトレーサビリティ確保など業界に先駆けた取り組みを進めている。防災については当社の有志社員などが組成する「三菱地所グループの防災倶楽部」を中心に、居住者の皆様との防災訓練や、オリジナル防災ツールの一般公開などを通じて災害に備える。また間取りや住宅設備についても、お客様の声を反映し、収納や設備の改善、テレワーク対応など需要をくんだマンションづくりを行っている。
2025年は、住まいにおける社会的意義がますます重要になっていく。立地や仕様だけで選ばれる時代ではなくなりつつあり、住む方だけでなく、社会やまちに良い影響をもたらす住まいが求められている。引き続き主に労務費等の上昇を背景に建築工事費の高止まりが見込まれるが、お客様の声によく耳を傾け、お客様の購入目的や価値観の変化をしっかりと把握し、選ばれ続けるマンションを提供していきたい。
年頭所感 アセット・ノウハウ・人財を総動員し社会課題解決へ 三菱地所・中島篤社長
中島氏
グループ一丸となり世界一のデベロッパー目指す
2024年は、「変化の年」となった。日銀によるマイナス金利解除や日経平均株価が史上初の4万円台を記録するなど、日本経済における大きな転換点が訪れた。一方、世界に目を向けると、出口の見えない紛争により地政学的リスクは依然として高まり続けている。また各国の政治体制や方針にも変化が見られた。このような状況下で、持続可能な成長を遂げるためには、内外の課題に的確に対応し、価値観や環境の変化を見据えた柔軟な取り組みが求められる。
ビジネス環境の変化・高度化が進み、企業は人的資本経営へシフトを加速させている。オフィス整備をコストではなく投資と捉え直す流れが顕著になってきており、不動産デベロッパーには「床貸し」を超えた付加価値提供が求められている。当社も昨年9月「グラングリーン大阪」の先行開業を迎え、今年3月には南館の開業も予定されているが、「みどりとイノベーションの融合」という新たな価値提供には強く手応えを感じている。国内外各都市で、まちにどのような価値を生み出すべきかを柔軟に考え、求められる魅力的なまちづくりを進めていく。
2025年は、長期経営計画2030の折り返し地点を迎え重要な年となる。2024 年に「Be the Ecosystem Engineers」を共通基本方針とし、「Return to Basics(原点回帰)」を目標達成に向けた一つの指針として掲げた。変化の時代だからこそ原点に立ち返って不動産事業の「稼ぐ力」を底上げするとともに、当社グループと社会、双方の持続可能性を確立すべく、アセット・ノウハウ・人財を総動員して事業を通じた社会課題の解決を目指す。
まちづくりを通じた付加価値提供を加速させ、それを当社リターンにしっかりとつなげていく1年になる。グループ一丸となって未来を見据えた挑戦を続け、世界一のデベロッパーを目指していく。
年頭所感 大義あれば「妄想」⇒「構想」⇒「実現」へ 三井不動産・植田俊社長
「産業デベロッパー」という「プラットフォーマー」として
社会のイノベーション・付加価値の創出に貢献
謹んで新年のお慶びを申しあげます。
昨年は歴史的な選挙イヤーとなり、米国大統領選挙でのトランプ氏勝利、日本では衆議院総選挙の結果、石破首相による少数与党政権となりました。日本経済においては、日経平均株価が34年ぶりに最高値を更新、実質賃金がプラスに転じ、日銀の利上げにより「金利のある世界」が戻り、デフレから脱却し成長型経済へ向かう「時代の転換点」ともいえる歴史的な1年となりました。
このような転換期において、昨年、当社グループは、新経営理念と長期経営方針「& INNOVATION 2030」を策定し、「新たなスタート」を切りました。これからは、付加価値が正当に評価され、イノベーションが加速する時代です。不動産デベロッパーの枠を超えた「産業デベロッパー」という「プラットフォーマー」として、社会のイノベーション・付加価値の創出に、これまで以上に貢献してまいります。個別プロジェクトでは、当社初のアリーナ事業である「LaLa arenaTOKYO-BAY」が開業、「築地地区まちづくり」では、事業予定者に選定され、東京の国際競争力を高め、都民に愛され、世界中から人々が集まり、賞賛されるような、魅力的で先進的なまちづくりを進めていきます。
今年は、長期経営方針2年目の年として真価を問われる1年と捉え、一人ひとりがいかに付加価値を創出し高められるかを念頭に置き、事業に取り組んでまいります。突拍子もない「妄想」でも、そこに大義があれば仲間が集まって「構想」になり、勇気があれば「実現」につながっていきます。多様な変化に適応しながら、イノベーションを起こし、付加価値を創出することで、日本の産業競争力に貢献していきたいと考えています。また、首都圏・愛知・台湾で7物件の商業施設の開業を予定しており、当社の強みであるリアルの場の優位性を活かして、スポーツ・エンターテインメントの力を活用し、付加価値を最大化させる街づくりを推進いたします。
最後に、サステナビリティ・環境との共生については、代表事例として、昨年、日本橋にて国内最大級の木造賃貸オフィスビルに着工しました。国産木材の使い道を広げる挑戦を通じて、森林資源と地域経済の好循環への貢献を目指す取り組みを推進しています。100年先の未来の子供たちへこの地球環境を受け継いでいく想いで、持続可能な社会に貢献してまいります。
皆様のこの一年のご健勝とご多幸をお祈り申しあげます。
年頭所感 新中計「新たな始まりと成長」達成に向け全力 東京建物・小澤克人社長
小澤氏
社会課題解決と企業としての成長を両立させ「次世代デベロッパー」へ
昨年は日経平均株価がバブル期以来の最高値を更新したほか、日銀が金利政策を見直し、いわゆるマイナス金利政策を解除して17年ぶりの利上げを実施するなど、日本経済は大きく転換したといえる1年だった。そのような中でも当社は安定した成長を続けることができ、2024年を最終年とする中期経営計画を無事達成できる見込みである。
本年は新中期経営計画を1月16日に公表する。新中期経営計画では、長期ビジョン「次世代デベロッパーへ」で掲げている「社会課題の解決」と「企業としての成長」をより高い次元で両立することを目指し、東京建物グループの更なる成長と発展を目指す計画となる。
事業環境の面では、エネルギー価格や建築費の高騰など、我々の事業を取り巻く環境は予断を許さない状況が続いている。
オフィス市場では空室率の低下や平均賃料の上昇がみられるが、リアルなコミュニケーションの場としてのオフィスの重要性の再認識に伴う更なる付加価値の提供が求められている。分譲マンション市場も高価格での成約が続いているが、物価上昇や金利の動向次第では市場に変化が現れる可能性があり、Brilliaブランドの更なる価値向上が重要となる。
当社が参画する東京駅前八重洲一丁目東第一種市街地再開発事業(A地区・B地区)については、2026年の竣工に向けて順調に進捗している。当社も本社移転を予定している本プロジェクトB地区のオフィスでは、心身の健康だけでなく、仕事における満足度ややりがいを含む、総合的な幸福を意味する「ウェルビーイング」をテーマとしている。この言葉は当社グループの役職員にとっても大事な考え方で、これを実現するためには、一人ひとりが自らの仕事に誇りを持ち、最大限の力を発揮できる企業文化を育むことが大切だ。その中で、持続的な企業価値の向上を実現し、社会にとって必要とされる会社であり続けるために新社長として全力で取り組みたい。
本年は新しい中期経営計画をスタートさせる当社グループにとって「新たな始まりと成長」を象徴する年である。次のステージへの第一歩を進む年ともなるよう、社員一丸となって、目標達成に向けて邁進していきたい。
年頭所感 5月に新中計「強靭化フェーズ」発表 東急不動産HD・西川弘典社長
テーマは都市間競争力強化 GX実現、地域資源価値最大化の3つ
昨年はインフレ経済への転換点という大きな節目を迎えた。足元の不動産市場は仲介市場の好調など良好な状態を維持している。ただ、国内の金利情勢など、そして海外に目を向ければ米国でのトランプ政権への政権交代、ウクライナ戦争、そして韓国の内政不安などリスク要因は枚挙に暇がないが、今こそこれまでの傾向延長にない高い成長や売上拡大を図り、利益を生み出す好循環へのシフトを模索する機会だ。金利のある世界を意識して、顧客に本当に価値があると認められる商品・サービスの提供に加えて、「スピード感」を今まで以上に意識しながら事業に取り組んでいきたい。
最重要拠点の「広域渋谷圏」では、昨年4月に新しい体験価値を享受できる場所「創造施設」を目指す東急プラザ原宿「ハラカド」が開業し、昨年7月には渋谷最大級のスケールとインパクトを誇る“次世代型ランドマーク”「Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)」の街開きを迎えるなど、複数の大型再開発で旺盛な不動産需要の取り込みを図ったほか、線路や幹線道路をまたぐデッキを新設するなど課題だった渋谷駅周辺のバリアフリー化も同時に進めることができた。また当社グループは「環境経営」に注力しており、具体的には再生可能エネルギー100%のデータセンターを北海道石狩市で着工するなど再エネ電気を活用した事業展開のほか、広域渋谷圏や長野県の蓼科でTNFDに基づく生物多様性の取り組みを積極的に進めてきた。
当社グループは今年5月、新しい中期経営計画を発表する。2030年度までの 10年間の長期経営計画における前半戦の再構築フェーズは、外部環境の追い風もあり全ての財務目標を2年前倒しで達成することが出来た。後半戦の「強靭化フェーズ」では、強固で独自性のある事業ポートフォリオを構築していく。新中期経営計画の6年間では、金利上昇影響の顕在化に加え、AIの技術革新による付加価値の定義の変化や、富裕層、アッパー層が増えたことによる消費の二極化の進行、また脱炭素などの環境価値が事業活動の「付加要素」から「前提条件」となり転換していくと考える。新しい中計では、強靭化フェーズにおける重点テーマとして、広域渋谷圏戦略を推し進めることによる「国際的な都市間競争力強化」、再生可能エネルギー事業を中心とした「GXの実現」、そしてリゾート事業に代表される「地域資源の価値最大化」の3つのテーマが重要だと考えている。その実現のために財務面と非財務面を統合した価値創造を推進していく。
年頭所感 3月に複合施設「ポラステクノシティ」開業 ポラスG・中内晃次郎代表
中内氏
木の魅力や交流と学びの場提供し、地域との繋がり強化
2025年は、昨年7月の日銀による政策金利の引き上げ以降、「金利のある時代」が復活したことにより、長く続いたデフレ経済からインフレ経済に切り替わるとともに、モノの価格を上回るレベルで賃金レベルの上昇を目指すことになります。
国際情勢に目を向けると、ウクライナ情勢、中東の動きやトランプ氏のアメリカ大統領就任など日本経済に影響を及ぼす大きな出来事が予定されており、引き続き注視していく状況にあります。
一方で国内では、昨年1月1日に令和6年能登半島地震が発生し、夏には南海トラフ地震臨時情報の発表がされるなど今後も更なる災害等の対策及び備えが必要となります。
2024年の住宅業界は、土地や資材価格の高止まり及び新設住宅着工戸数の減少による市場規模が縮小傾向となっております。当社においては、地域密着経営により地域の魅力を維持、向上させる街づくりを推進し、新築戸建事業、不動産仲介事業が堅調な一年となりました。
本年は、4号特例の縮小による構造計算業務の拡大が予想されます。当社では、予てより全棟構造計算を行ってきましたので引き続き注力していく所存です。また、プレカットと設計業務を合わせたサービス提供により安心、安全な木造建築の供給に寄与できると考えております。
3月には、ポラスグループ初の複合施設として、「ポラステクノシティ」がオープンします。木の魅力や交流と学びの場として地域との繋がりをより一層大切にしてきたいと思います。
予測困難な時代だからこそ、どのような局面においても、冷静に対応し、お客様にご満足いただける商品・サービスの提供に努め、困難を乗り越えていける一年にしたいと考えております。
年頭所感 今年を表す私の一文字は「心」 大和ハウス工業・芳井敬一社長
芳井氏
人材育成 社内起業制度に総数約900件の応募
2024年は、元日に「令和6年能登半島地震」が発生し、さらに9月には「能登半島豪雨」にも見舞われたことにより、13万棟以上の住宅が被害を受け、住まいのあり方が問われた年でした。また、住宅業界では政策金利の引き上げや物価上昇などが影響し、厳しい環境が続きました。このような状況下、当社グループは開発物件売却の順調な進捗や海外事業の業績拡大などもあり、2025年3月期の第2四半期決算において過去最高の業績を達成することができました。役職員全員の頑張りに心から感謝申し上げます。
しかし、好業績でも決して慢心してはいけません。挑戦し続ける企業として、常に変化し、成長していくために、新年のスタートに際して、皆さんにお願いしたいことを3点お伝えします。
1点目が、創業100周年をつくるリーダー人財を育てることです。当社の社是は「事業を通じて人を育てること」から始まります。人を育てることが事業の始まりであることを説いていますが、企業の発展も衰退も従業員の育成にかかっているということです。現在、当社では30年後の2055年に“将来の夢”を実現できる人財を育てるため、様々な制度を拡充させています。昨年に開始した、人財育成を兼ねた社内起業制度では、総数約900件の応募がありました。広い視野・視点で世の中の変化を捉え、次のビジネスの創造や業務改革に取り組むことは成長の大きな機会となります。皆さんも部下や後輩、そして自らを成長させるチャンスと捉え、積極的に挑戦してください。
2点目が、本年を表す私の一文字「心」です。日々の業務において「その行動、発言、対応に心がこもっているか? 」「それは真心か? 」と自問してください。大和ハウスグループは、協力会社や取引先などお世話になっている多くの方々の力添えがあってこそ成長して来られました。社員一人ひとりが相手の立場に立ったコミュニケーションを大切にして、感謝の気持ちを忘れず、真心を持って行動し続けてください。
最後に、「会社は社会の公器」です。当社は本年4月に創業70周年を迎えます。これは多くのステークホルダーに支えられてきた証しであり、人々に喜ばれる事業を通じて社会に還元しなければいけません。本社のある大阪では、2025年日本国際博覧会や大阪マルビルの建て替えなどを通じて、地域社会への貢献を進めています。各事業所でも地域と共にあることを改めて認識し、お客さま、取引先に感謝の意を示す機会を設けてください。
本年も様々な課題があると思いますが、皆さんとともに全力で取り組んでいくことをお伝えし、私の挨拶とさせていただきます。
持家2か月連続増 分譲戸建ては25か月連続減 ホテル激増 11月の新設建築物着工
国土交通省は12月27日、令和6年11月の新設住宅着工戸数をまとめ発表。総数は65,037戸で、前年同月比1.8%減、7か月連続の減少。内訳は持家19,768戸(前年同月比11.1%増、2か月連続の増加)、貸家26,717戸(同5.5%減、2か月連続の減少)、分譲住宅18,146戸(同7.3%減、7か月連続の減少)。分譲住宅の内訳はマンション7,895戸(同2.9%増、4か月ぶりの増加)、一戸建住宅10,124戸(同14.5%減、25か月連続の減少)。
首都圏マンションは総数4,276戸(同2.5%減)で、都県別は東京都2,193戸(同9.2%増)、神奈川県576戸(同61.1%減)、埼玉県645戸(同3.4%増)、千葉県862戸(同214.6%増)。
首都圏分譲戸建ては総数4,328戸(同17.9%減)で、都県別は東京都1,333戸(同13.4%減)、神奈川県1,123戸(同22.5%減)、埼玉県1,045戸(同22.6%減)、千葉県827戸(同11.3%減)。
建築物着工では、ホテルが中心とみられる宿泊業,飲食サービス業用は461棟(前年同月比20.4%増)、延床面積245千㎡(同166.1%増)で、1~11月は4,810棟(前年同期比5.7%増)、2,515千㎡(同42.2%増)となっている。
RBA野球記事120本 こだわり記事450本 今年1年を振り返る
今年は、日経平均株価が34年ぶりに最高値を更新し、実質賃金もプラスに転じ、「水没下の金利」から「金利のある世界」に戻り、懸案だったデフレ脱却を強く印象付けた1年だった。
しかし、その半面、ロシア-ウクライナ戦争はドロ沼化し、イスラエル・ガザ戦争が勃発し、シリアの政変など世界の武力紛争は収まる気配はなく、韓国の政変は、北朝鮮との戦争状態が74年間も続いていることを改めて思い知らされた。
国内の出来事では、元日に能登半島地震が、翌日には羽田空港の飛行機衝突事故が起き正月気分は吹っ飛び、その後も地球温暖化による自然災害の激甚化、闇バイトによる住宅侵入・強盗、通り魔殺人、政治家の不倫騒動・パワハラ、政治と金問題などが連日のように報じられた。甲高い司会者・コメンテーターの声が雨あられのように降り注いでは三半規管を狂わせられた。外に出れば発狂寸前の街路樹虐待を見せつけられた。かつてにらみ合っていたカラスは激減し、高気密住宅に棲み処を奪われたのか、スズメは姿を消した。人間だけでなく、あらゆる生き物の命が軽んじられている印象を強く受けた1年でもあった。
小生といえば、今年4月に「後期高齢者」の烙印を押された。恩恵といえば医療費の自己負担額が1割になったことくらいで、いいことはあまりなかった。わが西武ライオンズは歴史的な底這い状態が続いた。かみさんはどこで仕入れるのか、野球選手の不倫などネガティブ情報を機関銃のように乱発し、脛に傷持つ小生の古傷をこじ開け、塩を刷り込んだ。だんまりを決め込むと「あんたは私の話を聞かない」と攻め立てた。試合が終わるころは眠っていた。
それでも、仕事(取材)に関しては、見当識障害は進行する一方で人の話すことばが聞き取れなくなったが、幸い、糖尿病の数値は安定して推移した。取材後はビールとイワシフライで1,000円でお釣りがくる「日高屋」の〝せんべろ〟を満喫することができた。「日高屋」「DOOTOL」「マクドナルド」が街のポテンシャルを測る〝御三家〟であることを業界紙記者のFさんから教わったのも、今年の大きな収穫の一つだ。
そのお陰で、RBA野球記事は約120本、「こだわり記事」は約450本書くことができた。合計570本。土曜、日曜も関係なく書いた。400字原稿用紙にして1本当たり4~6枚だから、年間で2,280枚から3,420枚の計算になる。大河小説1冊分だ。
RBA野球大会は、様々なことがあり、日曜、水曜ブロックとも決勝戦は12月にずれ込んだが、各チームの絆が強化された1年だった。優勝された日曜ブロック・青山メインランド、水曜ブロック・東急リバブルの選手の皆さん、おめでとうございます。
「こだわり記事」の内訳は、マンションが約150件(賃貸含む)、一戸建てが約50件。その他が250件だ。
記事は〝現場主義〟〝記事はラブレター〟を貫いた。コピペ記事は極力避けた。記者の視点から〝事実〟(これは曲者だが)をストレートに伝えることを心がけた。つたない記事を読んでいただいた読者の皆さんに感謝申し上げる。
一つひとつ記事について振り返ることはしない。わが業界紙がこの1年間をどう振り返っているのかを紹介する。
住宅新報の10大ニュースは次の通り。
・中野洋昌氏が国交大臣に就任
・大手住宅、M&Aで海外事業を拡大
・首都圏マンション価格、高騰続く
・省エネ性能ラベル、空き家対策推進プログラム
・住宅ローン金利が上昇
・住宅セーフティネット法改正
・マンション管理で指針策定 外部管理者方式など
同紙は、このほか箇条書きで次の事象を重大ニュースとして紹介している。
・「令和6年能登半島地震」で最大震度7を観測
・日本銀行がマイナス金利を解除、大規模金融緩和政策を終了
・国内外の企業から半導体工場の誘致で地価急上昇に注目
・脱炭素社会に向けて大手住宅・不動産会社もGXの取り組みが進む
・単身者の増加が顕著に。全世帯に占める1人暮らしの割合は東京は54.1%
・空室率の低下と賃料の上昇でオフィスビル市況がコロナ禍から回復へ
・不動産クラウドファンディング協会と日本不動産クラウドファンディング協会統合
・北陸新幹線の金沢~敦賀間が延伸開業。東京と福井が直通で結ばれる
・インバウンド回復、訪日外国人客数が3337万人余りで過去最高を記録
・日経平均株価が34年ぶり更新。円安も34年ぶり水準に
・日本銀行が20年ぶりに新紙幣を発行
・気象庁が宮崎県沖で8月発生の地震で「南海トラフ地震臨時情報」を発表」
・三井不動産など明治神宮外苑の再開発で樹木伐採を始める
週刊住宅タイムズの重大ニュースは次の通り。
・新築マンション価格の高騰進む
・国交省が「不動産業者による空き家対策」を推進
・インバウンドが回復、コロナ前を超す勢い
・国交省が「不動産情報ライブラリ」の運用開始
・能登半島地震が発生、石川県能登に大きな被害
・東京都心部に大型シニア住宅相次ぎ開業
・省エネ基準適合の全面義務化が正式決定
・不動産の相続登記の義務化が始動
・最高裁判断、「傍系の相続人の範囲、厳格に」
・板橋区に都内最大の街づくり型物流施設が竣工
皆さんはこれをどう受け止められるか。これらについてコメントする立場にはないが、記者の感想を以下に紹介する。
両紙とも首都圏マンションの価格高騰を上位に選んだ。その通りだと思う。しかし、今に始まったことではないが、元データは不動産経済研究所に依拠しているもので、独自の視点が欠落している。〝他人のふんどしで相撲を取る〟ようなことはやめるべきだ。(かくいう記者もマンションの現場見学・取材を行ったのは50件あるかどうか。肝心のメジャーセブンの物件は10件くらいだから、語る資格はないのだか)。
価格高騰は地方圏にも及んだ。岡山駅前の坪単価355万円の再開発マンションが人気になったのに記者は驚いた。長野県白馬村では坪単価600万円(記者予想)の分譲ホテルが、沖縄県中頭郡北中城村では坪単価250万円の多目的マンションがそれぞれ人気になった。これらについても触れるべきだった。
中古マンションの価格上昇についても両紙は取り上げているが、これもマクロデータに頼っているのみ。都心部のいわゆるヴィンテージマンションは新築価格を上回って取引されているように、中古が新築マンション上回るというバブル期と同じ様相を呈している。これらについて言及が両紙には全くない。
賃貸市場にも触れてほしかった。記者は三菱地所レジデンスの家具・家電付きCo-Living、野村不動産の「TOMORE(トモア)」が市場に変革をもたらすと考えているし、サービスアパートメントでもコスモスイニシアなど5社が会見を開くなど新しい動きがあった。
このほか、DXや建築着工、住宅着工動向について言及がないのはなぜか。DXはあらゆる分野に浸透し、対応できなければ市場から退場を余儀なくされることを示唆している。持家と分譲戸建ての着工減に歯止めがかかるのか、ホテルの着工激増をどう見るべきなのか、触れるべきではないのか。
「空き家」問題だが、これはテーマが大きすぎて記者は取材をあきらめた。手に負えない。業界紙には具体的な取り組みについて報道してほしい。
住宅新報は中野洋昌氏が国交大臣に就任したことを選んだ。これは全く理解不能。国交大臣の交代は、もとをただせば、自民・公明の与党が選挙に敗れ、公明党の石井啓一代表も落選し、代表を辞任したことから後任に国土交通大臣の斉藤鉄夫氏が選ばれ、空席を埋める形で公明党の中野氏が国交大臣に就任したということだ。大臣交代によって国土行政も変わるのなら重大ニュースになるだろうが、三権分立を揺るがすようなことは絶対あり得ない。
週刊住宅の「東京都心部に大型シニア住宅相次ぎ開業」「板橋区に都内最大の街づくり型物流施設が竣工」を選んだのも首を傾げざるを得ない。都心の大型シニア住宅は相次いではいない。三井不動産レジデンシャル「西麻布」のみだた。住宅などの建築が不可の工業専用地域でどのような街をつくるのか。それが実現したら拍手喝采だ。
それより、物流では、シンガポールに本拠を置く日本法人「日本GLP」による約65haという桁違いの物流施設「GLP ALFALINK 昭島」がどうなるのかに注目したい。昭島市は、この物流施設計画を含む約81.5haの「玉川上水南側地区地区計画」(素案)を発表した。
住宅新報は「三井不動産など明治神宮外苑の再開発で樹木伐採を始める」ことも重大ニュースの一つとして取り上げているが、わが多摩センターや日比谷公園など全国の公園改修による巨木の伐採、街路樹の伐採・強剪定が行われている。〝街路樹のイチョウを伐らないで〟とイチョウに抱きつく住民らを千代田区はあろうことか〝暴力行為〟とし、住民ら10人に対して「立入行為禁止仮処分命令申立」を提訴した。〝話し合う〟ことが原則の民主主義は死滅した。
千葉大学名誉教授・藤井英二郎氏が三鷹市で行われた講演会で「強剪定された街路樹は委縮した心と社会の表れです。だから、木とお互い様だよ、共認しあえば涼しくもなるし、心も豊かになる。そういう社会を目指そうじゃありませんか」と締めくくったとき、会場に集まった約100人の聴衆からコンサートのアンコールのような拍手が巻き起こった。
重大ニュースと関連することだが、記者がいささかショックを受けたのは、国内外の大メディアは存在感を失い、SNSが選挙や世論に大きな影響を及ぼしていることだ。記者はアナログ人間だから、SNSなるものを全く知らないが、世の中が劇的に変わっているということなのだろう。
日本新聞協会によると2024年10月現在の一般紙、スポーツ紙の発行部数は約2,662万部(前年同月比6.9%減)で、1世帯当たり部数は0.45部(同0.04ポイント減)となっている。2008年に1世帯当たり部数が0.98部と1部を下回ってから漸減を続けており、一度も反転したことがない。15年後には新聞は死滅する計算だ。
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余談だが、女性としてアジア初のノーベル文学賞を受賞した韓国のハン・ガン氏の代表作の一つ「菜食主義者」(クオン)について。友人から借りて読んだ。文章は平易で、登場人物が少ないのですらすら読める。家族とは、愛とは何かを考えさせてくれる作品だ。菜食主義者(拒食症)が主人公の一人となっているのは、パオロ・ジョルダーノ「素数たちの孤独」(早川書房)と、姉妹と性関係を持った姉の夫が登場するのはミラン・クンデラ「不滅」(集英社文庫)とそれぞれよく似ている。
ハン・ガン氏のもう一つの代表作「少年が来る」(クオン)を図書館で借りて読もうとしたら予約数は100件を上回っている。借りるのは一人1週間として2年待ちだ。買って読もうとまでは思わないのであきらめた。韓国の作家といえば、「血と骨」などで知られるとヤン・ソギル氏(享年87歳)が今年亡くなった。
今年鬼籍入りした人では、八代亜紀さん(享年73歳)にはショックを受けた。アンチ巨人の記者は〝ナベツネ〟こと渡辺恒雄氏(同98歳)は大嫌いだったが、考えを改める必要がありそうだ。「わが人生記」(中公新書)を読むことにした。