RBA OFFICIAL
 

sec01_img01.jpg
「ルピアシェリール東久留米」

 ポラスグループ中央住宅が分譲中のコンパクトマンション「ルピアシェリール東久留米」を見学した。同社初の西武池袋線沿線のマンション分譲で、坪単価420万円には驚いたが、設備仕様レベルは極めて高いと思った。

 物件は、西武池袋線東久留米駅から徒歩5分、東久留米市本町一丁目の近隣商業地域、第一種中高層住居専用地域に位置する5階建て38戸。専有面積は28~53㎡、坪単価は420万円。1月下旬に販売予定の第2期(3戸)の専有面積は32.25~34.50㎡、価格は3,500万円台~4,200万円台、竣工予定は2025年10月中旬。施工は多田建設。売主は同社のほか三信住建。

 11月9日から販売を開始し、これまで第1期7戸が完売。購入者の属性は30代から40代の単身女性が中心。

 現地は、駅前の商店街から少し離れた中層の商業店舗などが建ち並ぶ一角。建物は西向きで、西側は3階建ての郵便局。住戸プランは未分譲の28㎡が5戸、メインの34㎡が15戸、32㎡が14戸、53㎡が4戸。

 主な基本性能・設備仕様は内廊下方式、リビング天井高2400ミリ、二重床・二重天井、食器棚、かくれんボックス、物干しポール、コンサバトリー(一部)、浴室タオル掛け2か所、おたすけバー、シャワー付き混合水栓、ちょいおきレール、「やさしい水工房」、ウォークスルークローゼットなど。

 同社マインドスクェア事業部マンションDv・春原真由氏は、「同業他社は共通モデルルームで顧客対応していますが、当社は、地域特性にあった物件ごとの商品企画を実物モデルルームで観ていただくのが基本。観ていただければその良さを理解していただけるはず。最近近分譲した『ルピアシエール』シリーズでは坪単価400万円の『武蔵浦和』と『浦和』の4物件がほぼ1年半で完売しています。今後もこのシリーズを強化します」と話した。

IMG_4230.jpg
現地

IMG_4247.jpg
模型

◇        ◆     ◇

 同社が11月末にこの物件の分譲を開始したと発表したとき、ぜひ見学しようと決めた。同社が西武池袋線でマンションを供給するのは初めてで、どうしてコンパクトなのか、さらに今後のコンパクトマンション市場の方向を探るためだった。

 基本性能・設備仕様レベルは上段で紹介した通り。床暖房、食洗機はないが、浴室タオル掛け2か所、浴室内のおたすけバー、物干しポールなどはいかにも女性目線のアイテムだ。一般的なアパートに住む単身者はそのレベルの高さに驚愕するはずだ。

 単価は決して安くはないが、都内23区内では一部城東エリアを除き、坪単価は軒並み500万円を突破している。同社は昨年分譲した「武蔵浦和」「浦和」などの売れ行きから、外周部でもニーズがあることをつかんだようだ。

 「東久留米駅」のポテンシャルも記者が予想した以上に高い。「日高屋」「ドトールコーヒー」「マクドナルド」の〝御三家〟が全て揃っている。首都圏コンパクトマンション市場は年間5,000~7,000戸と見ているが、今後はファミリーとの混在型や都心外周部での供給が増えそうだ。

slide01.jpg
モデルルーム

slide04.jpg
コンサバトリー

 bat_img01-02.jpg ame_img08.jpg bat_img01.jpg
左から浴室タオル掛け、物干しホール、おたすけバー

◇        ◆     ◇

 取材後、多摩センターに帰り、同僚と2人で「日高屋」で飲んだ。アジア初のノーベル文学賞を受賞したハン・ガン「菜食主義者」(クオン)を借り、話題はわが国のDXの取り組みが遅れていること(不動産も)、生成AIはもっと利用すべきこと、タブレットはますます普及すること、国内外の選挙で既成の大マスコミは惨敗したこと、樹木剪定はお金が掛ること、丸山健二と高倉健、中上健次と都はるみなど多岐にわたった。

 大声で話していたためか、何かをきっかけに我々より2回りは若そうな隣の男女二人組の方たちと話し合うことになった(多分、仏陀が説いた〝姦淫するなかれ〟などの十戒だと思う)。

 その女性の方の出自と話すことがすごかった。彼女は、第一子と第九子以外はすべて女性の9人兄弟姉妹の5番目で、生まれたのは高輪の家政婦付きの豪邸。9人兄弟というのはそう珍しくないが、お母さんは昭和41年1月から同50年12月までの約10年間に9人の子どもを産んだというから凄い。(ノーベル文学賞受賞作家・莫言「豊乳肥臀」は9人兄弟姉妹の物語。世界ギネスの多産女性は60人超というのは知っていた。いまネットで調べたら69人だった。この方は5つ子、4つ子を何度も繰り返した結果)。

 生まれも育ちも普通でないためか、また、お父さんは家政婦とも関係したためか、話すことも凄かった。「世の中は金しかない」「世の中の奥さんが求めるのは金だけ。愛はいらない。夫は他人」「世の男はおろか。女性の本心を理解していない」などと宣い、卑弥呼、平塚らいてうにも言及した。〝元始、女性は太陽だった〟-これはとてもよく分かる。

 日高屋もまたえらい!過ごしたのは5時間くらいか。店の人は何も言わなかった。料金は2人で5,000円くらいだった。

〝瓢箪から駒〟驚異的な売れ行きタカラレーベンのコンパクト「ネベル鶴瀬」(2024/11/29)

全戸南西向き幅員23mの桜並木・遊歩道・道路に隣接ポラス「武蔵浦和」(2022/5/19)

ポラス中央住宅 コンパクトマンション「南浦和」 順調な売れ行き(2020/10/16)

 


 

 

 日本不動産流通機構(東日本レインズ)は1211日、首都圏の202411月の不動産流通市場動向をまとめ発表。中古マンションの成約件数は3,207件(前年同月比10.6%増)、坪単価は262.0万円(同5.9%増)、成約価格は5,022万円(同6.1%増)、専有面積は63.24㎡(同0.2%増)となった。成約件数は5か月ぶりに前年同月を上回り、成約単価は55か月連続で前年同月を上回った。

中古戸建の成約件数は1,262件(同30.2%増)、価格は3,895万円(同2.1%増)、土地面積は140.16㎡(同5.5%減)、建物面積は104.59㎡(同0.6%増)。

IMG_7073-1.jpg
左から川口教授、同協会理事・室谷泰造氏、同協会理事・大島均氏、同協会代表理事・横田大造氏、自由⺠主党不動産クラウドファンディング振興議員連盟事務局長・宮路拓⾺氏、同所属・神田潤一氏、同協会理事・杉本宏之氏、同協会監事・成本治男氏

 一般社団法人不動産クラウドファンディング協会は12月10日、日本不動産クラウドファンディング協会との統合記念式典を衆議院第二議員会館で開催し、同協会代表理事・横田大造氏(クリアル代表取締役社長)と、新たに理事に就任した杉本宏之氏(シーラテクノロジーズ代表取締役会長グループ執行役員CEO)がそれぞれ業界の信頼性・透明性・認知度の向上に寄与し、業界の発展拡大を目指すとあいさつした。記念式典には多くの国会議員、国土交通省、金融庁、内閣府の担当者も出席し祝辞を述べ、早稲田大学ビジネススクール(大学院経営管理研究科)教授・川口有一郎氏による「新しい不動産金融とクラウドファンディング」と題する講演も行われた。式典には61名が参加した。

 横田氏は冒頭のあいさつで、統合により会員は41社、不動産クラウドファンディングサービスを提供する会社は81社にのぼり、累計出資額は1,206億円、利回りは2023年1月の6.20%から現在は9.16%と上昇トレンドにあり、「不動産クラウドファンディング業界の信頼性・透明性・認知度の向上に寄与し、業界の発展拡大を目指す」と述べた。

 杉本氏は、「業界には玉石混交の部分もあり、健全性と自主規制にしっかり取り組み、『貯蓄から投資へ』を後押しする使命感を持ち、業界全体を発展させたい」と語った。

 自由民主党不動産クラウドファンディング振興議員連盟事務局長・宮路拓馬衆議院議員は「不動産クラウドファンディングは金融商品、証券、あるいは地方創生の武器にもなりうる可能性を秘めた新しい業態。われわれもしっかりサポートし、消費者、事業者、国のWin-Winの関係を構築していきたい」と語った。

 川口氏は、過去30年間の国債金利は「水没」から「金利ある世界」へ移行し、現在、50兆円の証券化不動産は2050年までに100兆円に伸ばすのは無理なことではなく、25万人に達した不動産クラウドファンディング投資家を増加させ、ロボアドバイザー(ノボアド)の役割、不動産クラウドファンディング×REIT×ロボアドの重なり合うAPI(アプリケーションプログラミングインターフェイス)の重要性などについて話した。

 不動産クラウドファンディング協会は2023年8月設立。公平な視点でのデータベースの作成や事業者間の情報交換の機会、勉強会などの活動を行ってきた。日本不動産クラウドファンディング協会は2023年11月設立。自主規制ルールの策定や関係省庁への政策提言を行ってきた。両協会は2024年9月に統合した。

◇        ◆     ◇

 わが国の家計金融資産の半分以上を占める現預金が投資に向かい、「成長と分配の好循環」の実現を目指す政府の投資運用立国の取り組みもよくわかる。

 ただ、記者はマルコー、杉山商事、ライベックスの時代から投資用マンションを取材してきた。失礼だが、玉石混交の業界だと見ている。利回り優先で、質の向上は後回しにされてきた。本業以外の不祥事も発覚し、そのビヘイビアーが問題だと思っている(マンションデベロッパーにも言えることだが)。

 だからこそ、信頼性・透明性・認知度が協会の目的になっているのだろう。逆に言えば、この業界は信頼性や透明性が欠けているとも受けとれる。記念式典だから、主催者はもちろん国会議員、関係省庁の担当者が祝意を評すのはよくわかるが、川口教授には業界が抱える負の側面にも触れてほしかった。あまりにも楽観にすぎると正直感じた(川口氏は「賢い楽観主義」と自説をそう呼んだ)。「玉石混交の部分」について触れたのは、当の杉本理事一人だった。杉本氏は自主規制策定にも意欲を見せた。

 わが国のマンション市場は、都心の一等地では坪単価3,000~5,000万円、23区内の投資用・コンパクトマンションも坪単価は最低でも400万円以上となり、知裕子マンション価格が新築マンション価格を上回るなど1980年代後半のバブル期に近い投機的な取引も活発になっており、過熱市場に対する警戒感が増している。

 しかし、記者は「富の再分配・所得の再分配」が機能しているとはいいがたく、持つ者と持たざる者の格差は途方もなく拡大していると認識しているのだが、基本的には「貯蓄から投資へ」には賛成だ。「ミドルリスク ミドルリターン」のJリートとは別の選択肢があってもいいと思う。 

◇        ◆     ◇

 記念式典には、わが三重県の2区選出国会議員の川崎ひでと氏も参加し、川崎氏は「金をため込んでいる県」として三重県を紹介し「余計な規制があったら取っ払う」と語った。川崎氏は、三重県人ならだれでも知っている政治家・川崎秀二の系譜のようだ。

 総務省の家計調査によると、これまで都道府県別平均貯蓄額で三重県はベスト10に入っている。確かに田舎の各家庭は昔から結構お金をため込んでいた。県民性なのだろう。記者はどちらかといえば浪費家で、鉦があったらみんな使うタイプだ。Jリートが初上場したときはかなり儲かったが、その他株で儲けたお金はほとんど全て飲み食いに費やした。投資した会社が倒産し、紙くずになった株もある。

 先生、それよりも隣の選挙区の伊勢、松阪市は人口10万人以上の都市の地価下落率ベスト3に入っている。これを何とかしていただけないか。

令和6年地価公示バブル期の〝半値戻し〟上昇20市のみ福岡県4市がベスト10入り(2024/4/6)

「金利0.01%で55%が預貯金は正気の沙汰じゃない」「不動産は愛」シーラ杉本氏(2024/12/4)

シーラとクミカが経営統合クミカはシーラHDに社名変更/億ション即完(2025/12/2)

Screenshot 2024-12-10 at 09-43-23 【大和ハウス工業発表資料】業界動向勉強会<建設DX(2024年)篇>.pdf.png
大和ハウス工業の建設DX デジタルコンストラクションPJ変遷

 大和ハウス工業は12月9日、「業界動向勉強会<建設DX(2024年)篇」を開催し、同社技術統括本部副本部長上席執行役員・河野宏氏がDXの取り組みと今後の活動について、同社の合同会社全世界150か国に45万人を超えるエキスパートを抱えるコンサルティング会社・デロイト トーマツ コンサルティングが建築業界のDXに関するトピックス・大和ハウス工業の立ち位置についてそれぞれ説明し、建築現場体験会も行った。

IMG_4024.jpg
河野氏

◇        ◆     ◇

 スマホを満足に扱えず、SNSなど一度も利用したことがない記者でも、DXが世の中を劇的に変え、対応できなければ市場から退場を余儀なくされるであろうということは容易に想像がつく。

 それにしても、各社のDXの取り組みは凄い。同社が2019年に立ち上げたデジタルコンストラクションPJの人員は51名だったのが、翌年はほぼ倍増の98名に増え、現在は268名に増やしているではないか。

 同じような驚きは、今年8月に行われた三井不動産の「DX VISION 2030」記者説明会でも経験している。同社のDX本部人材は2009年の15名から140名超に増員されており、現在の年間DX投資額200億円を2030年には350億円に拡大し、社員の25%がDXに習熟することを目指すというものだった。

 三井不と若干異なるのは、三井不はエキスパートの中途採用は80名超なのに対して、同社は主に社内異動による教育で増強したということで、社員の約30%がDXに習熟することが目標というのはほぼ同じだった。ここにも2:6:2の法則があるのだろうか。

 記者がもっとも興味があるのは、この2割のDXのエキスパートはどのような頭脳の持ち主か、日々何を考えているかだ。ヒントが得られた。建築現場体験会で説明した同社南関東支社建築系工事部第一部主任・清水慶典氏が日ごろ読んでいる書籍だ。いくつか紹介する。

・LIMITLESS超・超加速学習
・Think Fast, Talk Smart
・名前のない仕事
・覚悟の磨き方 超訳 吉田松陰
・話が通じない相手と話をする方法
・とにかく仕組み化
・BIG THINGS―どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?

 一つも知らない。読む価値があるのかもわからないし、買うお金もないので図書館で探した。3冊がヒットし、「LIMITLESS超・超加速学習」はすぐ予約した。「覚悟の磨き方 超訳 吉田松陰」と「話が通じない相手と話をする方法」は予約待ちだ。この3冊を読んだら、同社広報を通じて清水氏にインタビュー取材を申し込みことに決めた。清水氏も応じてくれるはずだ。毎日、AIと〝会話〟を交わしているのだろうか。

 小生のお薦め小説も紹介する。丸山健二「千日の瑠璃 究極版」(求龍堂2014年)だ。最初に発刊された「千日の瑠璃」(文藝春秋、1992年)を丸山氏が大幅に加筆・修正したものだ。丸山文学にはまると〝中毒〟になること請け合いだ。それと最近再読したミラン・クンデラ「不滅」(集英社文庫、1999年)。親と子、姉と妹、夫婦、家族、愛などについて考えさせられる。

IMG_4031.jpg
清水氏

IMG_4032.jpg
清水氏が建築現場事務所に備えている書籍の一部

IMG_4221.jpg
記者のお薦め小説

 河野氏が説明した同社の建設DXについては、以下の図表を紹介する。

Screenshot 2024-12-10 at 09-43-58 【大和ハウス工業発表資料】業界動向勉強会<建設DX(2024年)篇>.pdf.png

Screenshot 2024-12-10 at 09-46-37 【大和ハウス工業発表資料】業界動向勉強会<建設DX(2024年)篇>.pdf.png

 第二部は、同社が昨年8月に開発した「D’s BIM ROOM(ディーズビムルーム)」を実体験できるもので、どこがそうだとは言い切れないのだが(記者に知識がない)、これまで体験したAR(拡張現実)、VR(仮想現実)、MR(複合現実)より優れていると思った。先週取材したCE、CD、CCと組み合わせることで世の中を劇的に変えると確信した。

IMG_4040.jpg
建設現場

IMG_4043.jpg

リサイクル部材だけの「循環する家(House to House)」 2050年に発売積水ハウス(2024/12/8)

驚嘆 2030年の年間DX投資額350億円に拡大三井不「DX VISION 2030」策定(2024/8/5)


 

 

 三菱地所は12月6日、廃棄物再利用率100%に向けた取り組み「サーキュラーシティ丸の内」の第5弾として、食品廃棄物やコルクをオーナメントにアップサイクルすると発表した。

 廃棄予定だったコルク栓を使ったオーナメントと、コーヒー粕・米糠を使ったオーナメントの2種類を制作。丸の内二丁目ビル内「Marunouchi Happ. Stand&Gallery」と「Marunouchi Happ. STORE」で2024年12月9日(月)から12月25日(水)まで販売する。オーナメントは、東京駅と丸の内仲通りを結ぶビルの通路空間「Marunouchi Bloomway(丸の内ブルームウェイ)」のツリーに飾り付けることも可能で、オーナメントの売上は丸の内エリアの保育園に寄付する。

 「サーキュラーシティ丸の内」は2022年から取り組んでいるもので、第1弾は食べきれなかった料理を持ち帰るための容器の無償配布、第2弾はペットボトルの水平リサイクル施策、第3弾は廃食用油を持続可能な航空燃料のSAFなどへの再利用、第4弾は常盤橋タワーで液肥化した生ごみを活用した農作物の育成および同ビル内での提供。

◇        ◆     ◇

 三井デザインテックのサーキュラーデザイン(CD)と、積水ハウスのサーキュラーエコノミー(CE)の記事を書いたからには、三菱地所のサーキュラーシティ(CC)の取り組みを紹介しないと公平ではない。

 記者は、これまでこの分野の取材はほとんど行ってこなかった。もうこれ以上、守備範囲を広げたくないのだが…。

リサイクル部材だけの「循環する家(House to House)」 2050年に発売積水ハウス(2024/12/8)

2030年の家具はサーキュラーデザイン(CD)が標準に三井デザインテックセミナー(2024/12/5)


 

 

 積水ハウスは12月4日、「循環する家(House to House)」プロジェクト発表会を開催し、住宅業界のサーキュラーエコノミー(以下、CE)移行を目指し、3万点以上からなる家の部材を見直し、リサイクル部材(リユース、リニューアブルなど含む)だけで構成された家「循環する家(Circular Design from House to House)」(House to House)を2050年までに発売すると発表した。

 発表会で同社代表取締役社長執行役員兼CEO・仲井嘉浩氏は、「当社は①脱炭素②生物多様性保全③資源循環を三本柱にCEに取り組んでおり、これまでに工場、新築施工現場、リフォーム、アフターメンテナンスにおいてゼロエミッションを達成しており、『資源循環センター』では80分別し再資源化している。この取り組みは、国際的な非営利団体CDPによる、世界でたった12社、国内に限ると2社(もう1社は花王)しかないトリプルA認定を取得している。今後も解体廃棄物の回収、製品化、リサイクル・リユース、さらに解体を前提とした新築段階での設計にも取り組み、本日、『循環する家(Circular Design from House to House)』プロジェクトの開始を宣言する」と挨拶した。

 その一方で、「しかし、これは非常に難しいプロジェクト。我々だけで実現できるものではない。すべてのサプライヤー、住宅業界、ステークホルダーと協力しないと実現しない。一致団結して開発・研究を重ねて住宅業界の未来を変えたい」と述べた。

 続いて登壇した経済産業省GXグループ資源循環経済課・水上智弘氏は、CEの市場(静脈産業)は今後大幅に拡大が見込まれるとし、日本国内では2020年50兆円から、30年80兆円、50年120兆円の市場規模を見込むとする一方で、マテリアル輸入の増大、価格高騰による国富流出、国内物価上昇のリスクもあり、CE性を担保しない製品は世界市場から排除される可能性があると図示し、対応が遅れれば、成長機会の損失だけでなく、廃棄物処理の海外依存の可能性があると指摘した。

◇      ◆     ◇

 記者はこの日(4日)、RBA野球大会の取材がありそちらを優先し、同社の発表会はアーカイブで視聴することに決めていた。視聴したのは昨日(7日)だった。その2日前(5日)には、「家具の買取再販は2030年にはサーキュラー デザイン(CD)のスタンダードになると聞いたのにいささかショックを受けた」と、12月3日に行われた三井デザインテックのメディア向けセミナーに関する記事を書いた。その2日後に「循環する家」だ。Wショックを受けた。

 三井デザインテックも積水ハウスもそこまでの具体的な工程表・タイムテーブルは示さなかったが、世の中は劇的に変わるということだ。

 一つ疑問も湧いた。CE、CDは避けられないにしろ、使用・流通しているケミカル製品などを回収し新たな製品に再生するのに要するコスト、CO2消費量と、ケミカルを中心とするマテリアル素材を使って同種の製品を製造するコスト、CO2消費量とをはかりにかけたらどうなるのかということだ。

 例えば、いま世界中で注目されているプラスチック規制。三井デザインテックのセミナーではプラスチック由来の「BENCH SOFA」も紹介されたが、多分、再生コストは新製品製造コストの数倍かかっているはずだ。(時価10万円と思われる本革の椅子を再生するコストはいくらもかかっていないはず)。つまり、仲井氏も話したが、解体を前提とした、環境に負荷を与えない部材の採用・設計が肝になると記者は思う。

 だとすると、住宅は木造以外ありえない。坂茂氏の「紙の家」もあるかもしれないが、そもそも木由来の紙をつくるのには大量の水を消費する。「紙の家」は限定的にならざるを得ない。

 発表会でもそれらしきヒントも与えられた。同社R&D本部総合住宅研究所長・東田豊彦氏は「かつてわが国の住宅は木と石でできていた。立ちどまることも必要」と語った。質疑応答では「もともとわが国の住宅はサーキュラーエコノミーだった。(それを壊したのは、大量生産・消費してきた)プレハブにも問題があるのではないか」という記者の質問も飛んだ。

 確かに、この記者の方の指摘は正しい。小生は昭和24年生まれだから、もちろん住宅は木と石(土と紙と植物も重要な役割を果たしていた)でつられていた。電化製品などなく、エネルギー源は薪炭だった。だが、しかし、質問した記者の方も化石燃料、ケミカル製品のおかげで生きているはずだ。小生などは薪炭時代への逆戻りなどまっぴらだ。

 もう一つ、考えたことがあった。仲井氏も紹介した環境省のCDの定義だ。同省は「従来の3Rの取組に加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動であり、資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止等を目指すもの」とある。

 この定義に照らせば、これまた木造しかありえないと思う。同社ESG経営推進本部業務役員環境推進部長・井阪由紀氏は「循環する家」はどのような工法かなどについては示さなかったが、築60年の「セキスイハウスA型」を紹介した。これもヒントになるのか。おそらく同社は、重量鉄骨と木造由来の2タイプを発売し、選択できるようにするはずだ。あと26年。記者が生きていたら100歳だ。予想は的中するか。

コルク・食品廃棄物をオーナメントに 三菱地所「サーキュラーシティ丸の内」第5(2024/12/8

リサイクル部材だけの「循環する家(House to House)」 2050年に発売 積水ハウス(2024/12/8

2030年の家具はサーキュラー デザイン(CD)が標準に 三井デザインテック セミナ(2024/12/5

01_大型LEDビジョンコンセプトルーム.jpg
大型LEDビジョン

 三井不動産レジデンシャルは12月6日、「三井のすまい 日本橋サロン」のメディア向け説明会を開催した。同サロンは、これまで「日本橋三井タワー」5階に設けられていたものを先月11月にリニューアルオープンしたもの。

 価値観やライフスタイルが多様化する中で、同サロンではバーチャルとリアルを融合させた展示により、より具体的にイメージできる、新しい“すまい探し体験”を体感できる拠点となっている。現在販売中の3物件と今後販売予定の1物件が対象で、三井不動産グループ各社と連携した住み替え、リフォームなどワンストップでサポートする。

 特徴の一つである最大幅約12m×4mの大型LEDビジョンでは実寸大の間取りや眺望を投影し、家具の配置などをイメージできるようにしている。

  コンセプトルームでは実際の室内空間を再現しており、各設備や家具に触れることができる。バルコニーにはLEDビジョンを設置し、検討住戸の室内からの眺望イメージを体感することもできる。

 大型モニターでは販売中物件のCG映像やデジタル模型、建設地周辺の動画などを映し出すことが可能で、外壁や共用部に用いられる石やタイルなどのマテリアルサンプルが物件ごとに展示する。

 専有部・共用部の設備を実際に確認できる実物展示コーナーも設けている。

 「日本橋サロン」は、東京メトロ銀座線三越前駅から徒歩2分、中央区日本橋本町2-2-2 日本橋本町YSビル9F。延べ床面積は約210坪。営業時間は月・金:11:00~16:00、土・日:10:00~17:00、定休日は火・水・木曜日。

 2025年1月下旬に第2期2次を販売する総武線浅草橋駅から徒歩2分の「パークホームズ浅草橋」(121戸)の坪単価は600万円。

 先着順で分譲中の東京メトロ銀座線浅草駅から徒歩9分の「パークホームズ浅草六丁目」(48戸)の坪単価は450万円。

 2024年12月上旬に第6期3次を分譲する東京メトロ東西線東陽町駅から徒歩6分の「パークホームズ東陽町」(97戸)の坪単価は427万円。今回が最終分譲となる。

 2025年2月下旬に分譲予定の東京メトロ日比谷線入谷駅から徒歩6分の「パークホームズ入谷」(37戸)の価格は未定。

04_コンセプトルーム.jpg
コンセプトルーム

07_専有部設備実機コーナー.jpg
専有部設備展示コーナー

◇        ◆     ◇

 記者はVRやらMRがよくわからないのだが、コンセプトロームは、同社が現在販売中の台東区などの物件の基本性能・設備仕様レベルがよくわかる。購入検討住戸からの眺望が見えるようにしているのは必須だと思う。同業他社はどうなっているのだろうか。

 従前の「日本橋三井タワー」に設けられていたサロンとはやや異なるが、エントランス正面の本物の木で作られた幅約2間(3.6m)、高さ2.4mの組子デザインの壁がとてもよかった。

IMG_3988.jpg
エントランス正面の組子デザイン壁

IMG_3989.jpg

わが国初 VRとMR組み合わせたモデルルーム三井不レジ「池袋サロン」(2024/5/21)

立地にふさわしい防音室、循環ライブラリ三井不レジ「文京本駒込」人気(2022/12/6)


 

 

IMG_3977.jpg
「Sumi-Ka+GYOTOKU(すみかプラス行徳)」

 ポラスグループ中央住宅は12月5日、分譲戸建て「Sumi-Ka+GYOTOKU(すみかプラス行徳)」のメディア向け見学会を行った。「Sumi-Ka+」のコンセプトは、「社会問題の解決を建築で目指す」という意欲的なもので、2022年にグッドデザイン賞を受賞した。今回はありきたりな都市型戸建てに満足できないコアなニーズに訴求し、周辺相場より1,000万円くらい高い価格設定にもかかわらず販売は好調に推移している。

 物件は、東京メトロ東西線行徳駅から徒歩12分、市川市新浜1丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)に位置する全18戸。土地面積は110.02~128.23㎡、建物面積は96.48~106.91㎡、価格は7,990万~9,490万円。完成予定は2025年3月上旬。

 現地は、フラットな行徳駅前通りから一歩入った住宅地。主な基本性能・設備仕様は、長期優良住宅、耐震等級3、ソーラーパネル搭載(1~10号棟)、リビング天井高2700ミリ、サッシ高2400ミリ、1階CP(防犯)ガラス、深型食洗機、床暖房、1.25坪浴室など。

 同社不動産ソリューション事業部不動産開発部企画設計課課長・村田嵩胤氏は、「当事業部は年間250棟くらい販売している部署で、不動産仲介などを担当したスタッフも多く、多様な顧客ニーズに応えられるのが強み。これまで供給し、グッドデザイン賞を受賞した『Sumi-Ka+』はファミリーだけでなく、DINKS、三世代同居、シニアなどのニーズを取り込んだ。部署内からは価格を抑制する必要はなかったのではないかという声があり、今回はコアなニーズを取り込むため付加価値を高め、敷地面積を100㎡ではなく110㎡確保し、外構も重厚感を演出し、モデルハウスも億ション並にした。価格は、周辺相場より1,000万円くらい高い強めに設定したが、供給した7棟のうち6棟が完売した。20代の購入者の方には、親からの援助や50年ローンを組み、投資目線で購入される方もいらっしゃった。残っているのは敷地延長のもっとも安い7,990万円の住戸」と語った。

1号棟内装②.jpg 1号棟内装④.jpg
価格がもっとも高い南西角住戸1号棟の内観(グレーが基調で、その狙いはすぐ分かった)

2号棟内装①.jpg 2号棟内装②.jpg
価格が1号棟より800万円安い2号棟の内観(〝耐えられない存在の軽さ〟ゆえ、記者はこちらの方が好きだ)

IMG_3964.jpg
村田氏

     ◇      ◆     ◇   

 いつものように道すがら、価格をはじいた。行徳はこれまでもマンションの取材などで結構訪れている。街路樹は貧弱だが、駅から徒歩12分のアクセスもまずまず。マンションだったら坪単価は300万円を超えると考えた。30坪で1億円だ。

 しかし、ポラスの戸建てだから8,000万円くらいで、商品企画によっては9,000万円でも売れると予想した。この時点で、物件を企画したのは同社不動産ソリューション事業部だとは全然知らなかった(最近は横着になり、マンションや戸建ても事前の調査をしなくなった)。

 現地に着いて、村田氏から「久しぶりです」と声を掛けられた。「えっ」(人の顔と名前が最近は全然覚えられない)。それでも、村田氏から「Sumi-Ka+」のプロジェクトの一つであるという説明を聞いて、ほとんど瞬時に企画意図を理解した。価格も予想した通りだった。村田氏と記者の考え方はぴたりと一致した。

 3年前に見学した「Sumi-Ka+」の「佇美の家(たびのいえ)」(市川市)」「空の稔」(松戸市)「新故郷」(松戸市)では、「従来の分譲戸建てのイメージ・概念の盲点をついた商品だ」と書いた。

 今回はどうか。特徴などについては上段で書いた通りだ。いくつか補足する。村田氏は「これまでのポラスっぽくない」と何度も語った。確かにそうだ。しかし、記者はこれまで同社の分譲戸建てを数えきれないほど見てきている。商品企画は極めて高い(同社の弱点を探すとすれば、他社物件と比べてどこがいいかを調べ切れていないことだと思う)。大手デベロッパーの物件とも互角に戦える。なので、「ポラスっぽくない」というのは「これもポラスの一つ」と記者は受け取った。

 モデルハウス2棟とも1階と2階の一部にはCPガラスが採用されていた。この前のリスト「リストガーデン武蔵新城セキュリティ・タウン」の記事を読んでいただきたい。「CPガラス」を採用し、「神奈川県防犯セキュリティ・ホーム認定」を受けたのちの来場者は6.5倍に増えた。価格は相場より1,000万円も2,000万円も高かったが、全10棟のうち残りは1戸だった。

 記者は、CPガラスは常識だろうと思っていたが、そうではないことも分かった。ポラスは1階部分の窓にCPガラスを標準としている(以前にもそう聞いたような気がする)。

 価格がもっとも高い9,490万円の南西角住戸の1階は掃き出し窓を設けず、高窓としているが、その企画意図をすぐ理解した。外からの視線を遮断したいと考える人はかなりいる。浴室も1.25坪で、食洗機は深型だった。

 村田氏の考えに一つだけ同意できないものがある。村田氏は「みどりの管理は大変だから、雑草を生えないよう防草シートを張り、その上に石を置いた」と話した。小生のマンションも5坪くらいの専用庭付きだから草取りなど管理が大変なのはよくわかる。しかし、真夏の地表温度は50℃にも60℃にもなる。緑は30℃強に抑えてくれる。地球温暖化防止に貢献するだけでなく、住宅の地域の街のポテンシャルを引き上げる。緑と地価形成は相関関係にあり、埼玉や千葉の住宅価格が相対的に低いのは、緑被率低いことに一因があると記者は見ている。

IMG_3966.jpg IMG_3975.jpg
パナソニック製の横並び三つ口コンロ(左)と深型食洗機

◇        ◆     ◇

 行徳駅前の街路樹の写真を撮った。見ていただきたい。樹種は常緑樹のクスノキのはずだが、強剪定されているため葉っぱはまばら、発狂寸前だ。どうしてこのように丸裸にされているのか、理由はすぐ分かった。ムクドリ対策だ。ムクドリは群れて生息するので、わからないわけではないが、これはあんまりだ。かつてムクドリは益鳥だった。生態系の崩壊は、人間にも大きな影響を与えることを考えないといけない。記者はスズメが激減しているのが気になる。高気密住宅はスズメの住処を奪っている。

IMG_3980.jpg
行徳駅前のクスノキの街路樹

IMG_3983.jpg
丸裸にされ、寒さに凍えるクスノキ(市民そのものか)

ショック!戸建ての防犯(CP)ガラス取り付け率はわずか4.3%日本サッシ協会調べ(2024/11/29)

全戸にCPガラス IoT駆使し快適性も県初のリスト「防犯セキュリティ・ホーム認定」(2024/11/28)

小家族向けに焦点面積・価格抑え大胆提案ポラス「Sumi-Ka+空の稔」に注目(2021/5/2)

コミュニティ育む仕掛けに驚嘆従来の常識覆すポラス「Sumi-Ka+ 新故郷」(2021/5/1)

 


 

 

1000004272.jpg
「レーベンプラッツ加須はなさき公園」(CUBEプラン)

 MIRARTHホールディングス(ミラースHD)グループのレーベンホームビルドは12月6日、埼玉県加須(かぞ)市の市街化調整区域内の平屋建てプロジェクト「レーベンプラッツ加須はなさき公園」見学会を行った。調整区域開発規制の逆手を取って全41区画を300㎡以上、建物も約100㎡とすることで豊かな暮らしを提案した企画がヒットし、9月から販売開始した25棟のうち13棟が契約済み。これほど大規模な平屋住宅地の開発はわが国初ではないか。来年8月の竣工を待たず完売する可能性もありそうだ。

 物件は、東武伊勢崎線花崎駅から徒歩7~9分、埼玉県加須市花崎字蓮田の市街化調整区域(建ぺい率60%、容積率200%)位置する全41区画。土地面積は構造・工法は木造1階建て(木造軸組み+パネル工法)。売主は同社のほか川口土木建築工業(一部)。12月中旬に分譲予定(戸数未定)の土地面積は302.74~303.57㎡、建物面積は98.54~101.44㎡。既契約の価格は3,600万円台から4,000万円台の半ば。全体竣工予定は2025年8月。

 主な基本性能・設備仕様はリビング天井高は3m台から最大4.4m、床暖房、食洗機付き。

 現地は、低層戸建てや畑などが混在するエリアの一角で、道路を隔てた隣接地は戸建て住宅街。従前は畑、あるいは荒れ地。同社は川口土木から土地を取得した。

 9月から分譲開始し、これまで供給した25棟のうち13棟が契約済み。契約者の属性は、居住地は地元加須市を中心とする近隣各市が過半を占め、都内居住者もあるという。年代は30代から60代以上のシニアまでまちまち。毎週30件の来場があるという。

 見学会でレーベンホームビルド代表取締役社長・有田卓二氏は「調整区域開発の第三弾? 探しているのだが難しい。ここはたまたま市街化区域に隣接しており、下水道なども整備されていたので許可が下りた」と語った。同社開発部企画課課長代理・瓦田しのぶ氏は「『南栗橋』をさらにブラッシュアップした」と、同社不動産事業本部戸建営業部戸建営業1課部長・下田裕一氏は「販売が好調。皆さんの声も聴きたい」とそれぞれ話した。

IMG_3992.jpg

IMG_4004.jpg
左から下田氏、同社総合企画本部経理財務部次長・東海林卓氏、有田氏、同社不動産事業本部開発部設計課係長・安田氏、瓦田氏

IMG_4008.jpg
左から下田氏、有田氏、東海林氏

IMG_4016.jpg
〝レディ・ガガ〟こと高荒氏(右)と有田氏

IMG_4006.jpg
見学会

◇        ◆     ◇

 花咲徳栄高校しか知らなかった花崎駅に初めて降りた。取材時間まで1時間近くあったので、どこかカフェか飲食店でタバコを吸おうと思ったが、2、3あった飲食店はすべて営業時間外。

 仕方なく早めに現地に着いた。待つこと30分超。所在なくあちこちぶらつき、時間をつぶした。会見は広場で始まった。小生の後方から〝タカハラ〟の言葉が聞こえた。パブロフの犬だ。これに鋭く反応した。後ろ振り返った。すぐ後ろに〝レディ・ガガ〟ことミラースHD執行役員グループ事業リーディング室長・高荒美香氏がいるではないか。同社が昨年、グッドデザイン賞を受賞したこの「加須」の物件で提案した「CUBEプラン」は高荒氏が所属する部署の提案だった。「CUBEプラン」は6帖大の居室で、多目的に利用できるよう独立した出入り口が設けられており、トイレ付き。

 開発地は2年前に取材した「レーベンプラッツ南栗橋」と同じ調整区域開発だろうと思ったが、その通りだった。「南栗橋」と比べ今回の「加須」は生活利便施設が乏しく、大きなハンディを抱えており、同駅圏の分譲戸建ての相場2,000万円台の倍以上という価格であるにもかかわらず売れる理由はよくわかる。100坪の住宅地など松濤、田園調布、大和郷くらいしかないのではないか。これほど大規模な平屋住宅地の開発はわが国初ではないか。

 有田氏は、住宅地内にパン屋やカフェを誘致するプランがあることを明かしたが、銀行からの融資が下りないのだそうだ。ならば、同社が「一号店舗(都市計画法第34条第1号)」として建物を建設し、住居と資金・賃金を保証し、全国から職人を募集したらどうか。島田和一社長、それが御社が目指す〝地域のタカラ〟になるのではないか。

IMG_4019.jpg
「CUBEプラン」

1000004270.jpg
モデルハウス

1000004271.jpg
モデルハウス

     ◇      ◆     ◇    

 こんなことを言っても詮無いことだが、この日午前中に行われた三井不動産レジデンシャルの「日本橋サロン」リニューアルオープン説明会には40人くらいが参加したのではないか。それからでもこの平屋建てプロジェクト見学会には間に合ったはずだが、取材したのは小生を含め2人とはどういうことか。現場を見ない限り〝平屋人気〟の理由は絶対わからないだろう。

調整区域&風致地区開発要件満たし生物多様性の取り組みに挑戦ポラス「馬込沢」(2024/11/19)

敷地100坪 建物30坪の平屋 ミラースHDの戸建て「南栗橋」企画ヒット(2022/11/13)

「目指すは企業価値の向上」タカラレーベン・髙荒美香氏女性活躍の視点から注目(2021/11/4)


 

 

IMG_3688.jpg
左から三上氏、田中氏、堀内氏(椅子などはCD家具)

 三井デザインテックは12月3日、恒例の「プレスセミナー&懇親会」をジョサイア・コンドルが設計した大正2年建設の迎賓館「綱町三井倶楽部」で開催した。セミナーで「家具の買取再販は2030年にはサーキュラー デザイン(Circular Design)のスタンダードになる」と聞いたのにいささかショックを受けた。わが国の家具製造業市場は2兆数千億円のようだが、その市場は激変するということだ。

 セミナーの冒頭、今年4月に同社代表取締役社長に就任した村元祐介氏はこれまでオフィス事業と住宅事業領域でそれぞれ半分ずつ携わってきたことを紹介し、「社長に就任して8か月、三井不動産グループの中でとても個性的な会社であることを改めて感じている。当社は空間創造を手掛ける会社ではあるが、意匠性だけでなく、ものごとを根本的に捉えなおすことをデザインの対象にしており、これまで幅広い領域で培った知見や実績を掛け合わせた、事業領域を超えたクロスオーバーデザインを強みに、今後とも豊かな暮らしと魅力ある社会づくりに貢献していくい」とあいさつした。

 同社フェロー・見月伸一氏は、最近同社が手掛けた主な作品20事例くらいを紹介した(このうち小生が取材見学したのは「HARUMI LLAG」「東京ドーム」「ららアリーナ 東京ベイ」くらいしかない)。

 今回のセミナーのテーマは「三井デザインテックの考えるサーキュラーデザインの現在と未来」で、資源循環コンサルティングなどの取り組みで実績のあるモノファクトリー常務取締役・三上勇介氏をゲストに迎え、同社クリエイティブデザインセンター長・堀内健人氏と同社デザインディレクター/グループ長・田中映子氏がトークセッションを行った。

 3氏は、わが国のサーキュラーデザイン(CD)の取り組みは欧州と比べ遅れており、脱炭素社会を実現するためには法整備を含め官民が一体となり、資源⇒素材建材⇒政策施工⇒利用⇒解体回収⇒再資源化の循環を推進すべきとした。

 同社は、3年半前からCDのプロトタイプ家具の実証実験を行っており、「MINI BAR」「NICHI TABLE」「BENCH SOFA」「BENCH」「CHAIR」などを開発した。

 これらの成果を踏まえ、同社は「サーキュラーデザイン構想」としてまとめ、⓪ロングライフ①CO2削減量の見える化②循環がしやすい③分解がしやすい④再利用材(再生可能)⑤認証材/推奨材⑥国産材/国内製作⑦製品製材トレーサビリティ-の「8つのポイント」を挙げている。

 同社は2026年度内にCDインテリアサービスを開始し、2030年度には家具の買取再販がスタンダート゜になるとしている。開発されたプロトタイプ家具も展示された。

IMG_3681.jpg IMG_3683.jpg
村元氏(左)と見月氏

IMG_3693.jpg IMG_3696.jpg
全て本革製の「CHAIR」(左)とプラスチック由来の「BENCH SOFA」

IMG_3697.jpg
このカウンターはジーンズ素材だそうだ

◇        ◆     ◇

 小生は、年に1回のこの同社のセミナー&懇親会を楽しみにしている。何が楽しみかといえば、何といっても〝記者〟というだけでジョサイア・コンドルが設計した「綱町三井倶楽部」にただで入れることだ。ロダンの彫塑、ターナー、ト一マス・ローレンスなどの西洋絵画や日本画、山水画などが至るところに展示されており、懇親会場はマンションの天井高の2倍はありそうな宴会場で、床は無垢材によるヘリンボーン仕上げ、細かな刺繍が施されたカーテンタッセル…これだけで金持ちになったようで、飲む前に酔うことができるからだ。

 この日、供された料理の一部を紹介する。食器類はみんなブランド物に違いなく、料理そのものが美しい。記者は、いつものように白ワインを何杯もお替りし、食べ物といえば〝名物〟と言われるビーフカレーとワカサギのカルピオーネ(甘酢漬け)しか食べなかった(供されたワイン、ウイスキーなどの酒類は、この施設を日常使いされている方々が飲まれる酒とは明らかに異なる-これだけが唯一惜しまれる)。

 宴もたけなわ、酒が飲めない、記事も〝甘い〟同業の記者は昨年同様、性懲りもなく意地汚くケーキをほおばっていた。勧められるままに1つ食べてみた。まろやかな甘みが口腔を満たした。ケーキが病みつきになるのも分かるような気がしたが、〝辛口記者〟の小生は絶対そのような甘い誘惑には屈しないぞと誓った。

IMG_3675.jpg
記者の一押しの作者不詳の18世紀の絵画(50号くらいか)

IMG_3698.jpg
カーテンターセル

IMG_3699.jpg IMG_3700.jpg
供された料理の一部

IMG_3703.jpg
同業の記者が食べていたデザート

IMG_3704.jpg
食べ放題のデザート

コルク・食品廃棄物をオーナメントに三菱地所「サーキュラーシティ丸の内」第5弾(2024/12/8)

リサイクル部材だけの「循環する家(House to House)」 2050年に発売積水ハウス(2024/12/8)

「協創」促す機能と美の融合オフィス「出社率高まる」三井デザインテック(2024/11/3)

Well-Being叶える「クロスオーバーデザイン3.0)」発表三井デザインテック(2023/12/7)

 

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン