駅近の免震 最初で最後 三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス 多摩センター」
「ザ・パークハウス 多摩センター」完成予想図
三菱地所レジデンスの「ザ・パークハウス 多摩センター」を見学した。駅からペディストリアンデッキを通り徒歩4分の、多摩センター駅圏初の免震19階建て。予想平均坪単価は200~210万円程度。敷地の南側と西側には駐車場ビルがあるが、同駅圏の「駅近の免震」では最初にして最後のマンションになりそうだ。
物件は、京王電鉄相模原線京王多摩センター駅・小田急電鉄多摩線小田急多摩センター駅から徒歩4分、多摩市落合1丁目に位置する19階建て全175戸の規模。専有面積は72.41~86.50㎡、価格は3,900万円台~6,200万円台、坪単価は200~210万円程度と思われる。竣工予定は平成27年10月下旬。施工はフジタ。販売は平成26年7月下旬。
最大の特徴は、多摩センター駅圏初の免震マンションで、駅の南側立地としてはもっとも駅に近い最初にして最後のマンションになりそうなことだ。敷地の南側と西側には駐車場ビルが建っているのが難点と言えば難点だが、敷地との距離は22~31mもある。敷地の北東側は都の埋蔵文化財センターの公園が隣接。
駐車場は全戸分設置(うち地下が76台分)。建物は白のマリオンとグラデーションがかかったガラスバルコニーが美しいデザイン。上層階のバルコニーには東京ガスの太陽熱集熱パネルが設置されている。設備仕様では、キッチンカウンターは御影石、食洗機、ミストサウナが標準装備。
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わが街、多摩センター駅圏では大成有楽不動産「オーベルグランディオ多摩中央公園」(358戸)と大京「ライオンズ多摩センター ステーションブライト」(45戸)以来3年ぶりのマンション分譲だ。
同駅圏で分譲されたマンションの坪単価の最高値は約200万円。この最高値をどれくらい上回るかが記者の最大の関心事だった。記者は内心230万円くらいつけてほしいと願っていた。残念ながら(ユーザーにとっては朗報だが)、そこまではいかないようだ。
当欄で何度も書いたが、富裕層・アッパーミドル向けは高値追いをどんどん行っていいが、第一次取得層向けは極力価格を抑えるべきだと思っている。しかし、ものにはバランスも必要だ。多摩センターのマンションも第一次取得層向けが中心ではあるが、坪単価についていえば〝不当〟に価格が抑制され、株の世界でいう割負けがはなはだしい。これは解消されなければならない。
割り負けは、人が不幸になることを心のどこかで願っているリテラシーに欠ける無責任なマスコミが〝オールドタウン〟などと書きまくり、それを真に受けたユーザーがそっぽを向いたのが最大の要因だ。記者はささやかな抵抗を示したが、誰も聞く耳を持ってくれなかった。反撃しなかったURや行政の責任も大きい。
どれほど安いか。例えば、小田急線の新百合ヶ丘。ここで三菱地所レジデンスのマンションと同じ立地、レベルの物件が供給されたら、坪単価は250万円どころか280万円くらいするはずだ。中央線立川駅前の野村不動産の物件の単価はここでは書けないが、聞いたら仰天するだろう。先日取材した柏駅前の大京の再開発マンションは坪230万円だ。同じ京王線の調布駅前の住友不動産の物件より坪で100万円も安い。このままでは、リニアが停まる「橋本」に一気に抜かれるのは必至だ。
坪単価200万円のマンションといえば、都内では多摩エリアの遠隔地か、埼玉なら所沢、大宮、志木以遠、千葉県なら千葉、松戸以遠、神奈川県なら戸塚、上大岡、長津田以遠しか供給できないだろう。いかに安いか。次の記者の独断と偏見に満ちてはいるが、核心をついた記事を読んでいただければ分かるはずだ。
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多摩センターの魅力を書けば原稿用紙にして10枚くらいは一挙に書けそうだが、先輩記者に「書きすぎ」と怒られるのでここは最小限にとどめる。
まず、特筆すべきなのは「パルテノン大通り」だ。多摩センター駅からまっすぐ正面の丘の上にあるパルテノン宮殿に似ていることから名づけられた多目的ホール「パルテノン多摩」までのレンガ敷きの遊歩道のことを言うが、距離は約400m、幅は約50mだ。これほどの歩道空間がある街は日本全国どこを探してもないはずだ。
この空間の価値をさらに高めているのが街路樹のクスの大木だ。数えたことはないが40本くらいはある。クスノキの足元にはアダプト制度により植えた四季折々の草花が美しい街並みに彩りを添えている。クリスマスの時期になると、街全体が幻想的なイルミネーションで満たされる。
文化の香りも他の街に勝るとも劣らない。大通りに面した三越の上層階にある「ココリア多摩センター」内の「丸善」は売り場面積約3,700㎡。カフェコーナーはないが、広さは本店に次ぐ。これも多摩センターが誇れるものだ。
前出のパルテノン多摩では、かつては世界の小澤征爾の定期コンサートが行われていた。京王プラザホテルの和食は安くておいしい。多摩市限定の日本酒「原峰の泉」も絶品だ。
これだけではない。多摩センターの素晴らしいのは住環境と自然環境だ。歩車分離が徹底されている多摩センターは、駅から徒歩30分圏どころか、車道とは立体交差になっているので徒歩や自転車で隣の永山や唐木田まで行ける。車の排気ガスにさらされなくても済む。信号もない。通学中に車が突っ込んでくることなどまったくない。子どもの交通事故の心配がない、親にとってこれほど安心なことは他にあるだろうか。
緑の豊かさについては言うまでもないことだが、ただ緑が多いというだけではない。駅から10分も歩けば、季節になると絶滅危惧種のキンラン、ギンランが咲く。ホタルブクロ、曼珠沙華が群生するところもある。車の排気ガスにまみれていないヨモギやツクシも採り放題だ。どうしてそのようなかわいそうな名前が付けられたのかしらないが、ハーブと同じ解毒作用や鎮静作用があるドクダミは今が旬だ。ドクダミ茶を作ろうと思えば、1時間くらいで抱えきれないほど採取できるはずだ。
街路樹のケヤキ、クスノキ、ユリノキなどは道路が広いから電信柱のように剪定する必要がないので伸び伸びと育ち、なおも成長し続けている。胴回りや高さは他の街の2倍くらいあるものも珍しくない。手を伸ばせば香しいクスの香りをかぐこともできるし、少し足を伸ばせば「一本杉公園」のように昔の「里山」に近い雰囲気のある雑木林や森もある。「一本杉公園」ではプロ野球の2軍戦や高校野球の都の予選が行われる。「炭やき名人」にも出会える。
多摩センターの魅力はまたまだある。これは異論が出るかもしれないが、市の職員の給与が日本一と報じられたことがある。記者の団地仲間の退役サラリーマンは「給与に見合う仕事をしてくれたら異存はない」と言い放った。同感だ。職員が委縮し、市民に背を向けるほうが怖い。
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さて、ここまで辛抱強くつたない記事を読んでくださった読者のみなさんは、多摩センターの価値をどう判断されるか。やや我田引水的な部分もあるかもしれないが、間違ったことを書いたとは全然思わない。この魅力、価値を正当に評価すればおのずと答えは導き出される。三菱地所レジデンスのあとに控える清水総合開発はどんな値付けをするか、これも注目だ。
先日は、同じ京王線の若葉台駅に近い大成有楽不動産「オーベル若葉台ヒルズ」の記事も書いたので、こちらも読んでいただきたい。子育て世代はどちらを選択するか、悩ましい問題だ。
エントランス部分は表からだと4層分ある
みらい・三井不 国内最大級の植物工場「柏の葉スマートシティ」に完成
「柏の葉第2グリーンルーム」
みらいと三井不動産は6月5日、1日1万株の野菜を生産する国内最大級の植物工場「柏の葉第2グリーンルーム」見学会を行った。
植物工場は、「柏の葉スマートシティ」の取り組みの一つである「ベンチャーを地域で支援する」一環として事業化したもので、三井不動産が工場事業主となり、みらいが工場を運営する。生産された野菜は、JAグループをはじめとする系列団体が国と連携して設立した6次産業ファンドからの出資を受けたみらいトレーディングがパッキングして出荷する。
工場は、三井ホームが2×4工法で建設したもので、同社の過去最大の約150坪の無柱大空間を実現した。
野菜は、外気を遮断し、無菌状態に保つ環境で栽培するために農薬は必要なく、また、天候や環境の変化を受けないので安定的効率的に供給することができる。清潔で苦みが少なく栄養価の高いものが生産できるのも特徴。
発表会に臨んだみらい・嶋村茂治社長は、「おいしさにはものすごくこだわった。自負がある。絶対自信がある」と強調した。
嶋村社長
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嶋村社長が「味には絶対の自信がある」と断言した。〝疑ってかかる〟のが記者の習性だ。ならば自分の味覚で試してみようと思った。見学会には試食用として4種のレタスが用意されたので、それぞれ2枚(レタスの葉っぱは1枚、2枚と数えるのかどうか)以上だから10枚は食べた。
しかし、トマトなら味が分かるが、レタスのおいしい不味いは即断できなかった。ならば、自宅のレタスと食べ比べようと考えた。駅前のららぽーとに出店している東急ストアで売っていると聞き、買いに行った。1人でレタスを買うのは10年ぶりくらいだ。
ついでだが、先週の金曜日は、みらい平のスーパーで地元の農家が生産したトマト1パックを240円で買った。夕方予定されていた大京の広報や記者の方たちとの飲み会で食べるためだった。これは抜群においしかった。月曜日は、郊外の100円回転すし屋に入った。注文の仕方が分からず、となりのおばあちゃんから頭上のボタンの押し方、ワサビや醤油の使い方、お茶の入れ方を懇切丁寧に教えてもらい、イワシとイカを頼んだ。ややあって寿司が飛んできた。あまりにも不味く店を飛び出した。216円だった。あのイワシは間違いなく家畜に食べさせるアンチョビだ。職もそうだが、わが国の食はどうなっている!
話しをもとに戻す。驚いた。記者の前にいたいかにもサラリーマン風の中年の人が買い物籠も持たず何と5袋も鷲づかみにして買ったではないか。送迎のバスを降りて真っ先にスーパーに入ったのは記者だけだった。レタスを買った人は絶対に同業ではない。まさか。記者が買いに行くのを知ったみらいが、売れていることを思い込ませようと送り込んだ回し者、サクラでもないはずだ。
記者も負けずに5袋買おうと一瞬考えたが、思いとどまった。家に帰って怒られるのが落ちだ。結局、3種くらいあったうちの1種1袋を買った。消費税込で204円だった。サラリーマン風の人は1000円分のレタスを買ったことになる。
夜、酒と一緒に自宅のレタスと混ぜて食べ比べた。「あなたね、これ高いわよ。うちは1個150円。値段? 野菜は価格があってないようなもの。この前までこのレタスは1個300円」と言われながら食べ比べたが、結局、味は同じだった。嶋村社長に軍配を上げるわけにはいかないが、洗わなくても食べられるのはいい。しかし、やはりやや高いか。スーパーで買った人はベジタリアンにしては太っていたし、富裕層が勤務中にレタスを買うはずがない。いまだに謎だ。
こんなことを書くから「お前ねぇ、書きすぎだよ」と先輩記者にいつも怒られるのだが、自分の目や足、時には味覚まで動員して記事を書くから読まれるのだと思う。それにしてもやはり書きすぎか。これだけで900字近く。1行15字の新聞が発行されているときだったら60行。即刻クビだろう。当時、この先輩記者からは1本の記事は50行にとどめるよういつも指導されていた。先輩は「…の時代だ」などと預言者のような記事をいつも書いていた。
記者が買ったのは左のほう(右のほうはよりシャキッとしたものだったか)
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だらだらとつまらない記事を書いてしまい申し訳ないが、もう少し辛抱して読んでいただきたい。嶋村社長は、この植物工場を南極昭和基地でも稼働させ、同様の工場を何とモンゴルに輸出したと話した。
記者は零下20~30℃の極寒のモンゴルに3回くらい行っている。モンゴルでは野菜は全て輸入。水と同様、貴重だ。工場とはいえ野菜が作れるはずがないと思った。プレハブのような工場で暖房施設がなければ水は一瞬にして凍るし、できた野菜は冷凍で出荷するのならともかく、暖房費用を考えれば中国、ロシア、カザフスタンなどの輸入品に勝てるわけがないと考えた。
そこで、嶋村社長に「暖房をかけまくってCO2をまき散らす気か」と食い下がった。嶋村社長は平然と答えた。「冬でも工場内は暖房はいらない。冷房をかけているくらい。野菜に照射する電気の温度だけで大丈夫」と。後で聞いたら、工場の断熱材は15センチほどのサンドイッチパネルを使用しているとのことだった。三井ホームが建設した今回の工場では厚さ18.4センチの壁が用いられている。三井ホームの技術者によると「断熱性能の高いものならモンゴルでも可能」と話した。
発表会に同席した千葉大学名誉教授・古在豊樹氏(哲学者・故古在由重の長男)は、「工場で使用する水は90%再利用できる。データはないが、中国などから貨物で輸入する植物の輸送コストを比較したらそんなに高くないはずだ。10年以内にコストは半分になる」と、価格競争でも十分勝算があると語った。
もう一つ、疑問に思っていることがある。今回の施設は「工場」だ。〝農のある街〟が植物工場の目指すものだそうだが、街中に工場を作って農地並み課税なら理解できるが、宅地並み課税されて、果たして農地で作られる野菜と競争できるのか。また、農地や調整区域に「工場」を建てるのは許可が必要で容易でないはずだ。
この点について、三井不動産ビルディング事業企画部長・小野雄吾氏は「工場のあるところは準工地域。投資額は6億円。宅地並み課税だが、収支はあう」と自信をのぞかせた。
工事中の植物工場(どうしてこれほど美しい木組を他の工場と同じサイディングボードで覆わなければならないのか。記者は全く理解できない)
「加速度的に進む2つの高齢化に対応」山根理事長 マンション管理協が総会
山根理事長
マンション管理業協会は6月3日、総会後の懇親会を開き、山根弘美・理事長(ダイワサービス会長)は、①管理業に関する中長期を見据えた調査・研究②防災・減害の取り組み強化③管理組合に対するコミュニティ支援④法令遵守の徹底⑤対外研修の実施-など平成26年度の方針について挨拶した。
山根理事長は、26年度の活動方針について5点を指摘。「一つは、建物と組合員の高齢化に対応する調査・研究の強化で、『マンション長寿命化協議会』を『2025ビジョン懇話会』に改組して、激増する高齢者人口と駐車場の収入減など未知の世界に突入する2025年を見据えたハード・ソフトの取り組みを強化する」と語った。
二つ目として、防災・減災に関連して、多数決でマンションの敷地の売却が可能となる「マンション建替え円滑化法改正」について触れ、「建て替えの選択肢が増える意味で評価したい」と述べた。
3点目の管理組合のコミュニティ活動支援については、「様々な組合の活動を紹介する仕組みをつくる」と話した。
4点目で取り上げた法令遵守については、「法令違反は少なくなってきてはいるが、満足できるものではない。金銭の毀損をなくすよう業界のプライドとして結果を出す」と強調した。
5点目の対外研修では「若手を対象とした台湾への派遣を考えている」と語った。
消費増税については、「8%については概ね適正に転化されているが、10%は手ごわい。単年度で赤字になる組合も出てきそうだ。マンションの共用部分は社会的資産。緩和策が必要ではないか」と、緩和を要望していくことを示唆した。
◇ ◆ ◇
来賓として登壇した自民党マンション対策議員連盟会長・山本有二氏が絶妙のリップサービスで会場を沸かせた。まず俎上に上げたのが山根理事長。「今朝も家内に言われてゴミを出した。管理人の方とは顔見知り。山根理事長は管理人をやっていたというから、そのプロセスをゆっくり聞いてみたい。大変な人物。ヘブライ語が話せる、とんでもない博識の持ち主。オール・オーバー・ザ・ワールドです(世界をまたにかける男という意味か)」と持ち上げた。
山口那津男・公明党代表、井上義久・同党幹事長(公明党マンション問題議員懇話会会長)らたくさん参加していた同党への牽制球も投げた。「井上さんたちがいたからマンション円滑化法ができた。公明党とわれわれはぶれない。集団的自衛権も円滑化法と一緒になってやれるはずだ」と、きわどいボールを投げた。
このあと登壇した井上氏も山口氏も集団的自衛権についてはまったく触れず、牽制をかわした。
◇ ◆ ◇
山根理事長は、ヘブライ語が話せる理由として「ヘブライ語もギリシャ語も、僕は元牧師だから常識、必須ですよ」と、すらすらと自分の名前を記者のノートに書いた。
総会後の懇親会(泰一ホテル東京)
「パピプペポ」野村不動産パートナーズ関敏昭社長新社名秘話を語る(2014/6/4)
「パピプペポ」野村不動産パートナーズ関敏昭社長 新社名秘話を語る
マンション管理業協会の懇親会で挨拶する関社長
今年4月1日に野村リビングサポートと野村ビルマネジメントを統合し、新会社「野村不動産パートナーズ」の社長に就任した関敏昭氏(前野村リビングサポート社長)が、6月3日に行われたマンション管理業協会の総会後の懇親会で新社名誕生の秘話を明かした。
「新社名は少しこだわった。パピプペポです、パピプペポ。うちの新社名、知ってますか? そうパートナーズ。マンションもビルもブランドはパピプペポが多い。他社のことは言わない。他社批判は絶対にしない。業界標準は何の価値もない。私がいつも見ているのはお客さまのことだけ」
◇ ◆ ◇
記者は2006年~2007年、大手のマンションブランドが全て「ハ行」であることに注目して記事にしたことがある。そのブランドとは次の通り。
・三井不動産「パークホームズ」
・三菱地所「パークハウス」
・野村不動産「プラウド」
・東京建物「ブリリア」
・東急不動産「ブランズ」
・藤和不動産「ベリスタ」
関社長はどうして破裂音にこだわったのか聞かなかった。「プラダ」「ピエールカルダン」もあるが「ブルガリ」も「ビトン」もあるではないか。
◇ ◆ ◇
関社長がマンション管理業協会の副理事に就任したのが昨年5月。この日は、副理事長として懇親会の席上で乾杯の音頭を取った。「私たちの業界は社会から期待され、要請も高まっているが、その一方で、年々日々、厳しい視線にもさらされている。雇用の問題や新しいビジネスモデルの構築など、社会から信頼されるよう努力を惜しまない」と簡単明瞭、完璧に初めての挨拶をこなした。
「挨拶? どうだった。緊張した」と、立派な体躯に似合わない繊細な一面も見せた。「士」について関社長は「ぼくも宅建もマンション管理士の資格も持っています。管理士は第1回目の試験で1発合格した」とコメントした。
平成13年度の第1回目のマンション管理士の試験では、記者は苦い経験がある。宅建主任者と異なり「士」を冠するのだから不動産鑑定士並みの難易度にすべきと主張、合格点は42点くらいと記事にしたところ、「厳しすぎる」とお叱りの電話が朝から殺到した。結局、40点以上だと数百人くらいしか合格しないことになり、合格点は38点(合格率7.4%)に落ち着き、約7,200人が合格した。
「加速度的に進む2つの高齢化に対応」山根理事長 マンション管理協が総会(2014/6/4)
宅建取引士への名称変更立役者の平口議員は体重80キロ「名は体を表す」(2014/6/3)
宅建取引士への名称変更 立役者の平口議員は体重80キロ「名は体を表す」
平口衆院議員
「宅地建物取引主任者」(宅建主任者)を「宅地建物取引士」(宅建取引士)へ名称変更することを主な内容とする「宅地建物取引業法の一部を改正する法律案」が6月3日、衆議院本会議で可決された。国会での審議はほとんど行なわれていないが、参議院での審議を経て成立する見通しとなった。
こ日行なわれたマンション管理業協会の総会後の懇親会に来賓として出席した法案提出の立役者、自民党の平口洋・法務大臣政務官は、「名は体を表す。宅建主任者は一般の従業員から独立したベルの高い仕事をしている。『士』としてきちっと責任を果すよう資質の向上も求めた。より一層の消費者保護を図らないといけない」と語った。
◇ ◆ ◇
恒例の懇親会の取材をほぼ終え、酒も少し入り、そろそろ退散しようかと思ったときだった。司会者が「国土交通部会…」と国会議員を紹介した。この言葉が記者のうろんな頭を刺激した。宅建主任者の呼称変更のことがピンと来た。すぐ取材モードに切り替え、国会議員の先生方に片っ端からコメントを取ろうと決めた。
議員バッジを確認して最初に聞いたのは佐藤英道・衆院議員と河野義博・参院議員だった。失礼ながらどこの会派のどのような方かは全然知らなかった。公明党の方だった。
佐藤議員は、「応援のコメント。主任者の業務はこれまで以上に複雑、高度化していく。『士』として責任を持って業務に励んでほしい」と語った。側にいた河野議員は「100点満点のコメント」と佐藤議員を褒め、自らは「私は99年だったか、銀行マンのとき宅建資格を取得した元商社マン。全力で応援する。これって200点の回答」と手放しで改正案を支持した。
河野議員に「あの人が詳しい」と紹介されたのが冒頭の平口議員だ。平口議員は「毛利くん(太田国交相の代理として挨拶した毛利信二土地・建設産業局長)らと一緒になって円滑法の法案を作ったんだ」と国交省出身であることを明らかにした。
頂いた名刺の裏に広島事務所が書かれていたので、「先生、広島は自民党の牙城じゃないですか。何期目ですか」と聞いたら、「いや、そうじゃない。2期目だが、2回落ちている。民主党に負けた。選挙は難しい」と話した。
記者はいつものへそ曲がり根性をむき出しにしてさらに突っ込んだ。〝名は体を表す〟という言葉の信憑性が疑問だったので、「先生、先生も相当メタボではないですか」と質問した。「うん、いま80キロ。60キロに落とす」(先生)「先生、それって公約ですか」(記者)「うん、検討する」(先生)と、最後は言葉を濁した。
記者の口車に乗って「80キロの体重を60キロに落とす」などといくら頑張ってもできないことを口走るから民主党に足元をすくわれるのではないかと思った。平口先生には「口は災いの元」の言葉をお贈りしたい。
ついでだが、懇親会には海江田万里・民主党代表も挨拶し、リバースモーゲージについて力説された。これはこれで重要な問題だが、管理協の会場で話すことではない。ピントがずれている。自民党や公明党のようにマンションについてもっと勉強すべき。再浮上はきわめて難しいと見た。平口先生は失言さえ気をつければ当分安泰だろう。
山根弘美・マンション管理業協会理事長にも「士」について聞いたら、山根理事長は「僕は宅建もマンション管理士もビルクリーニング技能士も持っている。管理業務主任者も『士』にしてほしい」と話した。山根理事長は「牧師」の資格も持っている。ヘブライ語を話せるのはこのためだ。
佐藤議員(左)と河野議員
「加速度的に進む2つの高齢化に対応」山根理事長 マンション管理協が総会(2014/6/4)
大成有楽不「オーベル若葉台ヒルズ」平均90㎡ 随所に新提案
「オーベル若葉台ヒルズ」完成予想図
多摩ニュータウンの2つの注目物件、大成有楽不動産「オーベル若葉台ヒルズ」と三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス多摩センター」を見学した。価格がどんどん上昇する中で双方とも極めて割安感がある。まずは「若葉台」から。
物件は、京王相模原線若葉台駅から徒歩5分、稲城市若葉台二丁目に位置する5階建て全115戸の規模。専有面積は78.60~m100.99㎡、価格は未定だが坪単価は170万円強になる模様。竣工予定は平成27年3月上旬。施工は不二建設。販売代理は大成有楽不動産販売。
現地は、若葉台駅からフラットなアプローチの南東傾斜の高台最前席。駅周辺の開発はほぼ終了しており、このマンションが新築としては最後になる可能性が高い。
住戸プランは平均90㎡超、100㎡以上が34戸というのが最大の特徴だが、この広さだからこそできる提案が随所に見られる。約4.6畳大の大型マルチクロークをはじめ約13.1%の収納率がそうだし、リビングに面したバルコニーの一部はほぼ2.5m四方のリビングの延長として多目的に利用できるスペースの提案が行われている。浴室は1620サイズ、LDは約20畳大、主寝室は7畳大だ。玄関収納はどんどん進化する同社オリジナル。
もう一つ。これまで見たことがないパッシブデザインが施されていた。玄関ドアは表から見ると普通のドアだが、内側の下部には自然換気口が設けられていた。ドアの最下部から空気を取り込めるようにしているものだった。
これだけではない。リビングドアはデザイン処理された通気口が設置されていた。さらに、バルコニーのサッシはサブロック付きでバルコニー-リビングドア-玄関に風が流れるようになっていた。外出時に開けっ放しにしなくても自然換気ができる〝スグレモノ〟だ。
内装の提案としては、自然石をスライスして壁に貼り付けたものが提案されていた。オプションで50~60万円だそうだが、これがまたいい。
販売は7月下旬。販売を担当する大成有楽不動産販売・輿水光樹氏は、「問い合わせは約600件。2週前からの事前案内会への来場者は100組弱。オリジナル収納、自然換気システム、広々としたキッチン、マルチクローク、多目的に利用できるバルコニー提案などが好評」と話していた。
大成有楽不動産のマンションの商品企画は劇的に変わったが、このマンションも人気は必至と見た。
玄関ドア 室内側
◇ ◆ ◇
若葉台でこれまで分譲されたマンションは全て見学している。いずれもUR都市機構が土地を売却したもので、売買契約の条件として戸数(面積)規制があるため、居住面積が広いものばかりだ。
これはこれで結構だが、少子高齢化が加速度的に進んでいる現状を考えれば、プラン提案はデベロッパーの自由裁量に任せるべきだ。20年も30年も一度決めた約束事を墨守するから存在意義が問われるのだ。今回も40㎡くらいの単身者向けを盛り込んでいたら飛ぶように売れたはずだ。単価は極めて割安感があるが、すべて広い分だけ価格は普通のサラリーマンの取得限界にある。
高さ規制も取り払うか緩和すべきだ。今回のマンションもリビングの天井高は2450ミリだったが、これは建物の高さが15mまでに規制されているためだ。せめて居住性の高い建物についてはあと1mでも規制を緩和していたらもっと豊かな居住空間が確保されていたはずだ。
若葉台がどのような街であるかは省略するが、駅周辺の街づくりはほぼ終了した。空き地になっているところもテレビ朝日などにすべて売却済みだという。わが街、多摩センターには総合力で劣るが多摩エリアではもっとも活気のある街だろう。
稲城市の人口増加率は東京都市部でトップだ(多摩市は19位)。マンションが位置する「若葉台2丁目」の平均年齢は36.7歳で、稲城市全体でも41.4歳(東京都の平均は43.8歳、多摩市は44.0歳)と若い。公園、運動場などが占める割合も多摩市を上回るトップだ。
とても学校とは思えないデザインの若葉台小・稲城第六中学校が人気なのも理解できる。後ほど書く三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス多摩センター」とはもちろん単価差(多摩センターは200万円を突破する)はあるが、グロスは似たようなものになる。子育てファミリーにとっては悩ましい選択だ。
リビングドア(左)とバルコニー側のサッシ
大京「ライオンズタワー柏」 竹中の免震で坪単価は230万円
「ライオンズタワー柏」完成予想図
大京は5月30日、柏駅東口の再開発タワーマンション「ライオンズタワー柏」の第1期分譲を6月14日から登録開始すると発表した。駅から徒歩3分の商・公・住の免震複合物件で、施工は竹中工務店。坪単価は230万円だが、子育てファミリーから高齢者まで各層の支持を集めており、圧倒的な人気を呼びそうだ。
物件は、JR柏駅から徒歩3分、柏市柏1丁目に位置する27階建て全265戸(非分譲住戸26戸含む)。専有面積は40.05~90.64㎡、価格は2,700万円台~7,800万円台、坪単価は230万円。竣工予定は平成28年4月28日。設計・施工は竹中工務店。
現地は、柏駅東口の繁華街の中心地。再開発タワーマンションとしては大和ハウスが6年前に分譲した29階建て190戸のタワーマンションに次いで2棟目。地権者は23名。構想から25年のプロジェクトで、同社は平成23年8月の事業コンペで当選、参加組合員として開発を進めてきた。容積率は400%から600%の緩和措置を受けている。
建物は中間層免震工法を採用。斜めスラブにすることで遮音性能を高め、すっきりとした居住空間を実現した。基壇部はアルミプレート、コンクリートなどから構成し、中間層はベージュとガラス、上層部は白の縦マリオンと水平ラインを強調した3層構成のデザイン。1~2階が商業施設、3階が公共施設、住居は4階以上。
発表会に臨んだ同社執行役員本店長・世利幸仁氏は、「当社の再開発案件としては27件目だが、創業50周年の年でもあり、記念の物件でもある。竹中さんとは『エルザタワー』など久々のお付きあいだが、竹中さんは免震実績ではナンバー1。もっとも優れていると思っている」と語った。
◇ ◆ ◇
千葉市を上回る千葉県でもっとも住宅地として人気が高い柏駅近のこのマンションがいったいいくらの単価になるのかずっと注目していた。230万円というのはどんぴしゃりだった。240万円でも売れるかもしれないが、建築費が上昇しているからと言って安易にあげるべきではない。低めに抑えることこそが、同社が掲げる〝顧客第一主義〟だ。10万円分はお客さんへの還元だ。
価格設定がリーズナブルだからこそユーザーに支持される。これまで来場者は約360件だが、年代ではもっとも多い30歳代の28%についで60歳代が22%に達しているのもよく理解できる。柏市はポテンシャルの高い地域だ。周辺の一戸建てに住んでいる人が子供世帯に譲ったり、あるいは買い増ししたりするケースが多いと見た。
同社は第1期として80~90戸を予定しているようだが、価格が高い上層階には購入希望がほとんど入っており、即日完売の可能性もあるとみた。ネックは、どこの商業地でもそうだが周辺の商業施設がかなりうるさく汚いことだ。
デザインでは基壇部の緑をモチーフにしたアルミのプレートが気に入った。設備仕様は普通だ。
野村不動産「オハナ八王子オークコート」上々のスタート
「オハナ八王子オークコート」完成予想図
野村不動産の第一次取得層向けのマンションブランド〝オハナ〟の11番目の物件「オハナ八王子オークコート」を見学した。JR八王子駅から徒歩10分の全346戸で、坪単価は147万円。5月16日に第1期として130戸を分譲、上々のスタートを切った。
物件は、中央線八王子駅から徒歩10分、八王子市子安町1丁目に位置する14階建て全346戸。専有面積は65.84~83.83㎡、第1期2次(戸数未定)の価格は2,600万円台~3,900万円台(最多価格帯3,200万円台)、坪単価は147万円。竣工予定は平成27年7月中旬。施工は長谷工コーポレーション。販売代理は野村不動産アーバンネット、長谷工アーベスト。
現地は、大手企業のオフィスビル跡地。既存樹のケヤキやサクラなども残している。隣接してフージャースアベニューが分譲戸建てを建設中。
建物は東南向きと南西向きのT字型で、間口5800ミリ、6000ミリ、6150ミリ、6300ミリ、6450ミリのファミリー向けが中心。設備仕様などはこれまで分譲してきた〝オハナ〟とほとんど同じ。
販売担当者は、「第1期終了後も1週間で来場者は約40組。コンスタントに集客できている。3,000万円前後の価格が評価されている」と話している。
現地
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この物件の情報は以前から聞いていたが、いったい価格がいくらになるのか注目していた。建築費の上昇で〝オハナ〟は供給できなくなるのではとも思っていた。その疑問を5月15日に行われた不動産協会の総会後に行われた懇親会で、同社中井加明三社長にぶつけてみた。中井社長は「そんなことはない。エリアにおける割安感は必ず出る。今後2年間は、いやずっと大丈夫」と話し、この「八王子」は「坪単価150万円を切る。これはいい」と自信満々だった。
確かに坪150万円切るのは安いと思った。近隣物件と比べると設備仕様は異なるだろうが、単なる単価比較からすれば2割近く安い。これから新規に供給される物件はどんどん価格が上がってくるだろうから、間違いなく割安感がある。
〝オハナ〟だからゲストルームなどはなく、設備仕様は〝プラウド〟より劣るが、かといって劣悪ではない。植栽計画もしっかり行っている。水準以上のマンションだと思う。このレベルのマンションが供給できるというのであれば、〝オハナ〟は健在だ。
ただ、坪150万円という単価は住戸面積20坪として3,000万円だ。第1次取得層向けの取得限界に近い。この150万円を上回ってくるようだとどうかという懸念もある。
〝オハナ〟はこれから分譲する「鶴間」(307戸)を含め12物件、戸数は2,726戸となる。これまで供給されたものは一部を除き竣工前に完売となっている。
完成予想図
フージャースコーポ シニア向け「つくばみらい」 新しい選択肢として人気
「デュオセーヌつくばみらい」完成予想図
フージャースコーポレーションのシニア向け分譲マンションの第一弾「デュオセーヌつくばみらい」を見学した。坪単価170万円で、同社が隣接地で分譲しているファミリー向けと比べ坪50万円高いが、天然温泉付き・ダイニング&レストラン付き、24時間の医療・看護・介護サービス付きというこれまでにない商品企画が人気で、全150戸のうち3分の1強が契約済みだ。
物件は、つくばエクスプレスみらい平駅から徒歩7分、茨城県つくばみらい市陽光台二丁目に位置する9階建て全150戸。現在分譲中の第3期(30戸)の専有面積は51.19~75.40㎡、価格は2,398万~4,348万円(最多価格帯2,700万円台・2900万円台)、坪単価170万円。竣工予定は平成26年12月中旬。設計・施工・監理は長谷工コーポレーション。購入するには満50歳以上、自身で身の回りのことができることが条件となる。事業者は同社のほかダイヤモンド地所。
現地は、全体で約6,000坪の開発地の一角にあり、すでに入居済みのファミリー向けマンション「デュオTXみらい」(106戸)と、現在分譲中の「デュオTXみらいヒルズ」(132戸)が隣接。坪単価約120万円の「デュオTXみらい」は約1年半で完売。「デュオTXみらいヒルズ」は坪単価120万円強で、半分弱が契約済みだ。
シニア向けは昨年11月から分譲開始しており、角住戸の73㎡タイプ6戸は完売するなど全体で3分の1が契約済み。購入者の属性は、東京都、千葉県在住者がそれぞれ40%くらいで、茨城県居住者を上回っている。平均年齢は約70歳で、単身世帯と2人入居が半々という。
所有権付きなので、相続も売却も賃貸も可能。マンション内に訪問介護事務所と訪問介護事務所・居宅介護支援事業所を併設。24時間体制で医療相談、緊急対応が受けられる。協力医療機関とも連携している。
住戸プランは、携帯用のコールボタンが1~2個のほか、浴室とトイレに各1カ所付いていた。ドアは全て引き戸。玄関はフルフラット。レストランの料理はカロリー、塩分計算付きで、外部からの利用も可能。
建築中の現地
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現地で話を聞いたのは娘ほど若い同社の入社8年という女性社員Fさん。Fさんは、「大変好評。特養やグループホームは入りたくても競争が激しく入れない、有料老人ホームも必要ないサービスが付いたり利用料金が高かったりなどといった問題があり、所有権付きの当社のマンションは新しい選択肢として理解されています。ご両親などの介護を経験されている方はとくに決断が早い。立地がどうかなどロジカルではないんです。〝明日はどうなる〟という不安を取り除こうという情緒的判断をされる方が多い。私もホームヘルパー2級の勉強をして対応しています」と語った。
記者も「高齢者」の仲間に入れられてしまったが、「高齢者専用」という触れ込みに付いていけない。天然温泉付き、レストラン付き、医療サービス付きというのは魅力だが、前居住地にいた友人、仲間との絆を断ち切ることなどができるのだろうかという疑問もわいてくる。おそらく、他人事として考えていては高齢者の考えや姿は見えてこないということだろう。
天然温泉浴場
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「みらい平」では開業まもなく、ある中堅デベロッパーが駅前で600戸を超えるマンションを坪160万円で売り出し、さっぱり売れなかった。大幅値下げしたが、それでも完売するまで5~6年かかったはずだ。
そんなところでファミリーマンションもシニア向けも好調に売れているというのも信じられないが、このFさんやファミリーマンションの販売担当者Tさんの接客対応がいいのが印象に残った。Tさんは、イギリス人の心の故郷「コッツウォルズ」のような田園都市を目指すのだと熱っぽく語った。
廣岡社長!どんどん女性を重用してデベロッパーの見本になるようにしてください。
食事メニュー例(朝食380円、昼食580円、夕食680円)
ひと・もの・かねの動きを一変 三井不動産「飯田橋」再開発が完成
「飯田橋グラン・ブルーム」(左)と「パークコート千代田富士見ザタワー」
三井不動産は5月29日、「飯田橋グラン・ブルーム」&「パークコート千代田富士見ザタワー」の竣工披露内覧会を行なった。内覧会は3時間近くにわたるもので、ひと・もの・かねの動きを一挙に変える同社のすごさを見た。
飯田橋駅から徒歩1分、区域面積約2.5ヘクタールのオフィス・商業、住宅、教会の複合再開発で、街全体の名称は「飯田橋サクラパーク」。まちづくりの検討が始まってからわずか13年で竣工を迎えた。
オフィスワーカー約7,000人、505世帯の安心・安全、新たな賑わいの創出、環境負荷低減、地域との共生がテーマ。千代田区で初めて防災用飲料水供給設備を導入したほか、帰宅困難者の受け入れ、10種類の桜約40本の植樹などを施している。街全体の緑化率は約40%確保している。
「飯田橋グラン・ブルーム」は、30階建て延べ床面積約12万㎡のオフィス・商業ビル。熱源トータル最適制御システム「E-SCAT(イースキャット)」を導入して、年間約40%の二酸化炭素の削減を図る。オフィスはほぼ満室稼動するという。1~3階の商業施設「飯田橋サクラテラス」は10月10日グランドオープンする。
40階建ての住宅棟「パークコート千代田富士見ザタワー」は全505戸のうち425戸が億ション。坪単価は476万円。わずか10カ月で完売した。
教会は、120年余の歴史を持つ日本基督教団に属する「富士見町教会」。偶像崇拝を排除するため屋内には1つも十字架を掲げていないのが特徴。戦中でも欠かさず礼拝を行ったという。1955年にヘレンケラー女史が来日した際の講演会場となった。
「富士見町教会」(左)と「飯田橋グラン・ブルーム」
遊歩道(江戸城と同じ工法を用いた石垣)
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見学の途中、マンションのエントランスホール付近の壁に掛かっていた絵画が目に留まった。8号くらいの日本画だった。近くに寄って銘板を見た。「加山又造」とあった。「まさか」と思った。同社の担当者は「本物ではありません。レプリカです。それでも相当な額です」と話した。それにしても名画とは不思議なものだ。絵のほうから呼びかけてくる、どこかで見たような既視感がある。
レプリカではあるが加山又造の絵画がさりげなく掲げられていることが、このマンションのレベルの高さを象徴している。グランドホールに掲げられていた刺繍絵画は縦数メートル、横3メートルくらいあるもので、担当者によれば価格は「外車1台分かそれ以上」とのことだった。
旧江戸城や熊本城などの城壁修復などを手がけたという日日石材の石匠が担当した住宅棟の石垣には見とれてしまったし、いたるところに専門家によるオブジェ、絵画が配置されていた。共用施設には紫檀、チークなどの高級材がふんだんに使用されていた。内廊下は高級ホテルでもないようなふかふかのジュータン張り。1泊7,000円のゲストルームは、ホテルならルームチャージで十万円はしそうな豪華なものだった。
ただ、個人的な好みからすれば、ハーシュ・ベドナー・アソシエイツ(HBA)が手がけた〝和〟のデザインには違和感を覚えた。とくに床などに用いられていた七宝文様は大柄すぎないか。和と洋の融合はしっくり溶け合っていないように感じた。その一方で、いろいろな壁にアクセントとして用いられていた桜の文様は美しいと思った。
マンション外観(左)とグランドエントランス
グランドホール
ライブラリー(左)とパーティルーム
加山又造の絵画レプリカ
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マンション505戸の購入者の属性は不明だが、間違いなく富裕層が多数を占める。千代田区の納税義務者は約2.8万人。課税標準額が2,000万円以上の階層は港区に次ぐ多さで、比率にすれば4%くらいに達するはずだ。東京都全体では1%くらいだから、いかに港区や千代田区が突出しているかが分かる。
今回のマンション購入者のうち課税標準額が2,000万円を超える人は少なく見積もっても300人いるはずだ。つまり、同区の高額納税者比率を1%引き上げる力を持つということだ。
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開発スピードも刮目に値する。再開発計画がスタートしたのは2001年。旧東京警察病院の移転が決定したことが契機だった。その後、再開発組合が設立されたのが2010年。その翌年に着工。そして今年6月に竣工。この間、わずか13年しか経過していない。
再開発は20年、30年の歳月が掛かるのか普通だ。三井不動産がどの段階から再開発計画に携わったか分からないが、地権者は同社や前田建設工業、教会など12名と少数だったからでもあるだろうが、このスピードは驚異的だ。2001年といえば、同社などが東京ミッドタウンの用地を取得した年だ。そして、その6年後には竣工した。この2つのプロジェクトもそうだし、「柏の葉キャンパスシティ」もつくばEXの開業から10年もたたないうちに完成形に近づきつつある。このスピードには感嘆の声を上げるしかない。
教会のパイプオルガン
ヘレンケラーが講演したという講演台