ペンブローク ミッドタウン隣接ビル着工 施工は竹中、デザインに光井氏
「TRI-SEVEN ROPPONGI(トライセブンロッポンギ)」完成予想図
米国ボストンに本社を置くペンブローク・リアルエステートの日本法人ペンブローク・リアルエステート・ジャパンは10月28日、ペンブローク日本初のオフィスビル「TRI-SEVEN ROPPONGI(トライセブン ロッポンギ)」の工事に着手したと発表した。
「TRI-SEVEN ROPPONGI」はペンブロークが日本で手がける4件目のプロジェクトで、初の商業施設併設型のオフィスビル。東京ミッドタウンの向かい、外苑東通りに面したグレードA品質の14階建て延べ床面積約31,500㎡。竣工は2016年春の予定。
設計施工は竹中工務店、外装コンセプトデザインに光井純&アソシエーツ建築設計事務所、マネージメントアドバイザーとして東京ミッドタウンマネジメントを起用。世界水準の技術とノウハウを有する開発チームを組成した。
「ザ・リッツ・カールトン京都」 HICAPの今年の最優秀ホテルに選定
積水ハウスが開発し、今年2月オープンした「ザ・リッツ・カールトン京都」が10月17日、香港で開催された「アジア・パシフィック・ホテル投資会議」(HICAP)でこの1年間に開業した最優秀のホテルに贈られる「Reggie Shiu Development of the Year」」に選ばれた。
HICAPは、世界のホテル投資家や開発事業者、設計事務所、ホテル事業者、コンサルタントなどを対象とするホテル投資会議。「Reggie Shiu Development Of the Year」はアジア・パシフィックのホテルのパイオニアの一人であり、スマトラ沖地震により犠牲となったReggie Shiu氏にちなんだ賞。
同賞には「マリーナ ベイ サンズ」(シンガポール、2010年)、「ザ・リッツ・カールトン香港」(2011年)、「パレスホテル東京」(2012年)、「パークロイヤル オン ピッカリング」(シンガポール、2013年)などが選ばれている。
積水ハウス、「ザ・リッツ・カールトン京都」完成 2月7日開業(2014/1/15)
日本の通勤時間 2年前と比べ片道9分伸びる リージャス調査
日本の通勤時間が2年前と比べ9分伸びる-多様化する働き方を支援するワークプレイス・ソリューションプロバイダーのリージャス(本社:ルクセンブルク)がこんな調査結果をまとめ発表した。
世界100カ国の2万2,000人以上の経営者や経営幹部から回答を得たもので、その結果、グローバルの片道通勤時間の平均が32分30秒に対して、日本は39分6秒であることが分かった。
日本は、往復で1時間30分近くの時間を通勤に費やしており、片道通勤時間を2年前の調査と比較すると9分6秒増加している。
グローバルで片道通勤時間の平均の最長はセネガル共和国の67分30秒、最短はキプロス共和国の12分12秒。
日本人の通勤中の過ごし方は、スマートフォンやタブレットでニュースをチェックする(63%)やメールをチェックする(56%)、読書する(46%)が上位の回答を占めた。
この結果についてリージャスの日本リージャス代表取締役・西岡真吾氏は「通勤時間を短縮することは、従業員の生産性やモチベーションを向上させることが立証されています。たとえば、リージャスのようなサービスオフィスの活用は、通勤時間を短縮するひとつの選択肢ではないでしょうか。毎日オフィスに出社することなく、必要に応じて自宅や取引先に程近いサービスオフィスを利用することは、通勤時間を短縮し、さらなるフレキシブル・ワーキングの実践につながるでしょう」とコメントしている。
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日本の通勤時間が伸びたというのはやや理解に苦しむ。地方は知らないが、首都圏では分譲マンションも分譲戸建てもここ数年というかバブル崩壊後はほぼ一貫して都心回帰が進行しているはずだ。
郊外の緑環境や子育て環境、居住面積より通勤や買い物などの利便性を重視しているのではないか。〝駅近〟なる言葉が流行っているくらいだ。
三井リアル 都心の1棟リノベーションマンション加速 「南青山」で見学会
「THE UPPER RESIDENS AT MINAMI-AOYAMA」外観
三井不動産リアルティは10月28日、都心の1棟リノベーションマンション「THE UPPER RESIDENS AT MINAMI-AOYAMA」のプレス向け案内会を行った。バブル期に外国人向け賃貸マンションとして建設されたもので、内外装を一新させて富裕層向けに販売する。立地に恵まれた都心部のリノベーションマンションは、新築と比較し価格的に優位にあり、都心部での仲介で他社をリードする同社はこの分野での事業を加速させるとみられる。
物件は、東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅から徒歩6分、港区南青山5丁目に位置する7階建て全41戸(住戸36戸、店舗3戸、倉庫2戸)。建物完成は平成4年。既存建物施工は竹中工務店。改修工事施工は三井不動産リフォーム。今回分譲は4戸で、専有面積は115.82~166.51㎡、価格は19,800万~35,000万円。坪単価600万円。売主はTSMアセットマネジメント。媒介は三井不動産リアルティ。
設備機能の劣化、デザインの劣化に対応するため、大規模修繕を実施し30年の長期修繕計画を策定、外観デザイン、専有部デザインにもプロを起用して再生を図っている。
建物は現在、一般賃貸借契約による入居者もいることから、契約解除できたものから順次リノベーションし、一般に販売していく。全住戸の販売には3年くらいを見込んでいる。
もう一つの大きな特徴は、同社が売主になるのではなく、不動産・債券などの流動化・証券化事業のプロ集団TSMアセットマネジメントを核に事業リスク回避のためのスキームを立ち上げていることだ。
モデルルーム リビング
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個人的なことで申し訳ないが、案内会はサプライズの連続だった。最初に同社の富裕層向けビジネスであるリアルプラン事業について挨拶したのが執行役員・石井雄二氏だった。続いて、都心部のマーケットについて説明したのがコンサルティング事業部部長・佐藤邦弘氏だった。そして、今回の物件について説明したのが同部営業グループ主査・神義一氏だった。
何がサプライズかと言えば、同社は26回目を迎えたRBA野球大会で初の東京ドームでの決勝進出を決めたのだが、石井氏は応援団長的な存在だ。佐藤氏も野球部を応援しており、今回の案内会では完璧の説明を行った。
ここでは詳しく紹介しないが、同社がリアルプラン事業を立ち上げたのは、バブル崩壊で新築も中古市場も氷河時代に突入しようかという20年前だ。その後、どんどん店舗数を増やしてきた。この間、閉鎖した店舗もあるが、アッパーミドル・富裕層向けビジネスは不動産分野だけでなくあらゆる分野で注目されており、どこもこの分野に力を入れている。
どこよりも同社が早くこの分野の取り組みを強化してきたからこそ今がある。同社は都心のプレミアムマンション148物件、約17,000戸のマーケットを抑えている。佐藤氏の説明は詳細な情報に裏打ちされていたから説得力があった。
2009年から取り組んでいる1棟リノベーション事業は2014年度の9月末時点で取扱高121億円45戸(平均17,800万円)の実績をあげている。この数字は2013年度の通年実績とそれほど変わらない。
神氏
さて最大のサプライズは神氏だった。石井氏と佐藤氏の話を聞きながら「みんなRBAの応援団ではないか」と勝手な解釈をしていたら、〝大トリ〟に何と同社の野球チームの主砲が登場したではないか。これには飛び上がらんばかりに嬉しくなった。すかさずシャッターを切った。
神氏は同社のリアルプランチームが〝出ると負け〟を繰り返していたときからの主砲だ。今回決勝進出を果たした立役者の一人だ。野球で長い間チームを引っ張ってきた人物が、会社を代表してこれからも成長分野の事業について堂々と話したことが嬉しかった。リノベーション事業を立ち上げたときは神氏ともう一人の2人だけだったスタッフは現在13人に増えたという。
今回の物件は、専有部の内装にもうすこしグレード感のある自然素材を採用してほしかったという希望はあるが、坪単価600万円というのは割安感がある。すぐ近くで大手デベロッパーが工事を進めているマンションは間違いなく坪800万円を超えるはずだ。
野球大会の決勝で対決する旭化成ホームズには歯が立たないだろうが、野球はやってみないと分からない。神氏が相手エースを叩き、石井氏や佐藤氏が大応援団を繰り出せばあわやのシーンもあるかも。
アプローチ
ついでながら余分なことを書く。この記事を含め三井不動産グループの記事が昨日から連続して4本目になった。同社だけを選んで取材しているのではない。たまたま現場案内会が集中したためだし、現場取材は極力参加することに決めている。その点で、デベロッパーは記者を育てる意味でも重要な現地見学会などを増やすべきだと思っている。
もう一つ書く。一昨日の三井ホームの見学会では同社関係者などが一生懸命説明しているとき、メモも取らず舟を漕いでいた若い見慣れない記者がいた。叩き出したくなったが、その記者とはかなり離れていたので声が掛けられなかった。そのあとの懇親会で注意してやろうと思っていたが、いつの間にか姿を消していた。
外観
緑・子育て環境のよさも好調要因か 三井不レジ「流山おおたかの森」
「パークホームズ流山おおたかの森ザレジデンス」完成予想図
三井不動産レジデンシャルが分譲中のマンション「パークホームズ流山おおたかの森ザレジデンス」を見学した。同社が同じ沿線で分譲中の「パークシティ柏の葉キャンパス二番街」(880戸)とどちらがいいとは言えないが、沿線のマンションとしてはトップクラスの質だと思う。
物件は、つくばエクスプレス(東武アーバンパークライン)流山おおたかの森駅から徒歩3分(4分)、に位置する11階建て全257戸。専有面積は58.86~90.67㎡、坪単価は190万円前後。入居予定は平成27年12月上旬。施工は長谷工コーポレーション。今年6月から販売を開始しており、これまで約150戸販売済み。
建物のデザイン監修は建築家の藤原益男氏。全戸南西向き3棟構成で、外壁にレンガやライムストーンなどの自然素材をモチーフとした色調のタイルを組み合わせることで各棟の表情を微妙に変えている。「樹木は限りなく多く、高さ10mクラスの高木もできるだけ取り入れています」(パンフレット)とあるように植栽にも配慮している。線路に沿って「フォレストコリドー」を設置し3棟を繋げているのも特徴。
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まだ販売開始して間もないがよく売れている。これまで同駅圏で分譲されたマンションがどれだけあるかデータはないが、2006年に分譲された第一号のオリックス不動産・東京建物「ザ・フォレストレジデンス」(524戸)をはじめ、住友不動産が4棟590戸を供給しており、そのほかプロパスト、藤和不動産(現三菱地所レジデンス)、大成有楽不動産、三交不動産などの物件をトータルするとこの8年間で2,000戸をはるかに突破しているはずだ。
この数字は驚くべき数字だ。隣の「柏の葉キャンパス」では三井不動産レジデンシャルが「一番街」(977戸)と「二番街」(880戸)を分譲しており、他を合わせるとやはり合計では2,000戸を突破しているが、「流山おおたかの森」は今回の物件を含めると「柏の葉キャンパス」よりは多いはずだ。
そして、特筆できるのは不振物件がほとんどないことだ。第一号の「ザ・フォレストレジデンス」は坪単価160万円だった。当時の相場より2割くらい高かったが、瞬く間に売れた。プロパストの物件は185万円もしたが、これも早期に完売した。
新しい街の「駅力」ランキングを相撲の番付表に例えれば、西の正横綱は間違いなく「武蔵小杉」だし、東は総合力で勝る「柏の葉キャンパス」が正横綱だろうが、「流山おおたかの森」はかつての「張り出し横綱」か「大関」だろう。
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なぜ「流山おおたかの森」のマンションや戸建てが高くても売れるのか、その理由の一つに、子育て環境がなかなか充実していることがあげられる。
今回の同社のマンションにも保育所が併設されるが、これは大規模な住宅開発には併設することが市から要請されていることを受けて設置されたようだ。
市は昨年6月、「流山市子育てにやさしいまちづくりの環境を整えるための大規模な共同住宅等の建築における保育所設置の協力要請に関する要綱」を施行した。地域の保育園の状況から判断して200戸以上のマンションなどを建設する事業者に市が設置を要請するという内容だ。要請を拒否しても罰則は書かれていない。
考えてみれば、この程度の規模で保育所が併設されるのはあまりないかもしれない。要綱ができる前に建設が始まった住友不動産「シティテラスおおたかの森ステーションコート」(328戸)には保育所はない。
もう一つ、「保育送迎ステーション」制度。市が平成19年に導入したもので、「流山おおたかの森」と「南流山」にそのステーションはあり、朝は7時以降、保護者が通勤途中に連れてきた子どもを送迎ステーションが預かり、バスでそれぞれの保育所に送迎(ただし、バスを利用できる園児は安全性の確保等から概ね2歳以上)し、夕方は18時までに保護者が送迎ステーションに迎えに行けばよいというサービス。午後9時までの延長保育(有料)も行っている。ステーションで預かっている時間はもちろん普通の保育サービスも受けられるというものだ。
1回(1日)の利用料金は100円/月額2,000円。平成25年度の利用登録者は全保育園利用者の10%弱で、年間の利用者は約56,000人(回)だという。
待機児童がほとんどゼロの横浜市でも同様の取り組みを行っている。厚労省にこの「保育送迎ステーション」について聞いたが、その実態を国は把握していないということだった。
モデルルーム
三井ホーム 和モダンの「川越モデル」がヒット 2カ月弱で7件成約
「川越モデルハウス」
川越エリアとの親和性を高めた三井ホームの商品企画モデルハウスがヒットした。日本古来の風情が色濃く残る小江戸文化をモチーフにし、現代風にアレンジした「川越モデルハウス」を8月末に開設してから来来場者は他社を大きく引き離し、2カ月弱で7件を成約するなど上々のスタートを切った。10月27日、報道陣向けに見学会を行った。
初代「オークリー」の発売から15年が経過するが、川越エリアでも従来から和風を要望する顧客が多かったためにモデルチェンジしたもので、粋でお洒落な小江戸文化のモチーフを、現代風にアレンジして外観デザイン、設備仕様に取り込んでいるのが特徴で、人を招き入れる、人とつながる家という「ジャパニーズモダンインテリア」がコンセプト。
コイズミ照明とコラボし、LEDの特徴や光と心理の関係性をとらえ、必要なところに必要な光を配することで心地よい暮らしを提案しているのも特徴。
見学会で挨拶した同社埼玉支店支店長・幸田知久氏は「来場のすごさに驚いている。立地はくじ引きでそれほどいい立地ではなかったが、これまでの来場はトップ。他の大手の2倍、3倍くらいある。オークリー仕様での契約は従来も年間で10件くらいあったが、今回はすでに7件。成約単価も従来と比べ上昇傾向にある。アッパーミドル・富裕層も多い川越エリアで三井らしい和風の提案を行ったのが人気の要因」などと語った。
スキップライブラリー
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写真を見ればよく分かるが、外観が美しい。ほぼシンメトリーでレットシダーの天然木に塗り壁、石を想起させるタイルを多用し、縦と横のラインを強調することで品格を醸し出している。玄関には本物の大谷石とタイルを組み合わせ、壁などにはナグリ調の化粧板やウォールナットの床・建具・格子を多用。
圧巻は光壁のあるリビングと4段の階段でつながるスキップライブラリー。高さ約5.4mの吹き抜けまで届く本棚の演出が見事だ。
また、広い土間や和室の「おもてなしの間」など人を迎え入れる空間設定にも力を入れており、多目的に利用できる「三和土」がまたいい。関係者らは商品開発に当たって隈なく市内を練り歩いたというが、このあたりがその成果ではないか。三和土は「勝手口」に近いものだが、それよりやや広く腰掛けるベンチもあり、畑仕事やら近所づきあいのスペースとして適している。2階に設けたチーク材のヘリンボーンの寛ぐ空間「リトリート」もなかなかいい提案だ。
記者は木造の時代が到来したと思っているが、同社も今回の和モダンがヒットしたことから木の良さを前面に打ち立てて攻勢に出るのではないか。
モデルハウスの建築費は8,000万円(70坪、坪単価114万円)。
「おもてなしの間」
リビングルーム
ダイニングキッチン
リトリート
「新宿中村屋ビル」オープン 必見の「中村屋サロン美術館」所蔵作品
「新宿中村屋ビル」
昨日(10月27日)は、朝から記者が書いた街路樹の記事に対する賛意を示す嬉しい社員のコメントをもらい、昼は三井不動産がマネジメントした「新宿中村屋ビル」の記者見学会で中村彝(つね)などの名画を鑑賞させてもらい感動し、夕方は三井ホームの和モダンをテーマにした素晴らしい川越モデルハウスを見学できた。おまけに夜の懇親会では記者の出身高校の後輩女性記者に会うことができて舞い上がった。話すことに夢中になったおかげで深酔いもせず、興奮のあまりほとんど寝ていない割に頭は冴えている。楽しい記事が書けそうだ。
まず「新宿中村屋ビル」。完成した新しいビルは、三井不動産が事業主である中村屋から委託を受けて建物の開発計画の立案から設計・施工管理、テナント誘致などを行ったもので、東京メトロ丸ノ内線新宿駅と直結、地下2階地上8階建て延べ床面積約6,400㎡。中村屋がレストランなど4フロアを自社で利用し、他は「COACH」の日本初となる新コンセプト店など全12店舗が入居。10月29日にグランドオープンする。
中村彝「小女」
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「中村屋」と言えば印度カレーとパンやお菓子だろうが、是非お勧めしたいのが3階に設置された「中村屋サロン美術館」だ。「中村屋サロン」の言葉は知っており、中村彝の「小女」、鶴田吾郎の「盲目のエロシェンコ」、荻原守衛の「女」などは他の展覧会で見たことがあるが、ほかにも中村不折、高村光太郎、會津八一らの美術品約90点を所蔵していることを初めて知った。額にして数十億円に達するはずだ。
10月29日から2015年2月15日までは、長野・碌山美術館の協力を得て特別展「中村屋サロン-ここで生まれた、ここから生まれた-」を開く。入場料は一般が300円。
中村彝「小女」(部分)
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中村屋のご厚意によりWebで一挙公開する。中村は印象派の影響を強く受けた画家で、ルノワールと同じ、普通の女性をモデルにした裸婦像も多く描いている。記者の好きな画家の一人。
今回展示されてている「小女」(69.8㎝×65.3㎝)は、相馬家の長女俊子をモデルとして描いたものだ。作品に添えられている開設や館内に展示されている「中村屋サロン」の人物相関図を読むと明治末期から大正にかけての社会・政治状況などが絵を通じて伝わってくる。少し紹介する。
中村は明治44年、中村屋の相馬愛蔵、黒光夫婦が愛蔵と同郷の荻原守衛ら芸術家・文化人を支援していたことから中村屋裏のアトリエに移り住む。そこで相馬一家と家族ぐるみの付き合いをしながら制作活動に励んだという。
中村は俊子と結婚したかったそうで、俊子も裸体モデルになることをいとわなかったという。ところが大正3年、俊子の裸体像を展覧会に出品したところ、当時俊子が通っていた明治女学校の逆鱗に触れることとなり、相馬家と感情的な溝を作ってしまい、中村は肺を患っていたこともあり結婚はかなわず失意のうちに中村屋を去る。そして大正13年、肺結核により37歳の若さで生涯を閉じる。
俊子は、思想家・頭山満や犬養毅からの勧めもありインド独立運動活動家・ラスビハリボースと結婚。イギリスから国外追放されていたボースをかくまうのは大変だったようで、俊子は過労のため夭折。ボースは恩返しのために印度カレーを振る舞ったことが縁となり、中村屋のインドカレーの開発につながったという。
特別展には俊子の裸婦像習作も展示されている。浴衣から膨らみ始めた乳房が少し見え、俊子は温かいまなざしでまっすぐ中村を見つめている。小品だが静物画もいい。「小女」や「盲目のエロシェンコ」とともにこれらは必見。
中村彝「牛乳瓶のある静物」
中村彝「麦藁帽子の自画像」
高村光太郎「自画像」
中村不折「始制文字の下図」
荻原守衛「女」
荻原守衛「坑夫」
會津八一「双幅:林下十年夢/湖辺一笑新」
三交不 「グッドデザイン・ベスト100」に選出 特別賞候補にノミネート
「MSストラクチャー」
三交不動産が今年初めてエントリーした「グッドデザイン賞」で木造軸組構造「MSストラクチャー」、品質管理「C値測定による施工品質向上」、オリジナル杉合板「APボードが作りだすこれからの山のすがた」の3点が受賞した。このうち「MSストラクチャー」は「グッドデザイン・ベスト100」にも選出され、特別賞候補にノミネートされている。
「MSストラクチャー」は三重県の宮川流域の木材を積極的に用いた構造体。宮川森林組合から良質な木を確保し、大台町との第三セクターでプレカット工場を設立することで地元に雇用を生み出し、加工まで品質を確保する取り組み。「地場の林産業、木材産業、木材加工業から伝統工法を用いる住宅提供までをひとつのサイクルにまとめた総合的な木造住宅供給モデルとして、高く評価できる」「派生する端材や下等級材の二次利用などを含めた大きな構想に期待感がある」というのが受賞コメント。
「C値測定」は住宅の気密性能を測る尺度で、同社が請け負った全住宅に測定を実施。自社基準に達しない場合は再施工する。
「APボード」は構造用合板で、宮川森林組合と京都府立大学大学院の研究データに基づき、立木や丸太の時点で角材に向くものと向かないものを予測し、角材に向かないものを利用したもの。
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今年もたくさんのハウスメーカー、デベロッパーが「グッドデザイン賞」を受賞し、各社から受賞のニュースリリースが届いた。それらを記事にせず、三交不動産だけを取り上げる不公平をお詫びする。
なぜ同社だけなのかだが、記者は三重県出身で同社のファンだからだ。受賞は知らなかったのだが、同社の戸建事業本部注文住宅事業部長・小井(いさらい)智之氏に東京で行なわれた日本木造住宅産業協会のイベント会場でお会いし、そのニュースをもたらされた幸運もあった。
「MSストラクチャー」が「グッドデザイン・ベスト100」に選ばれたのは嬉しい。住宅・不動産業界から「ベスト100」に選ばれたのは「MSストラクチャー」を含め7件しかない。森林・林業の再生・活性化は喫緊の課題でもあり、特別賞を受賞するよう祈っている。特別賞は11月4日に発表される。
三交不動産をご存じない方もいるだろうが、同社は三重交通グループの中核企業で、マンション分譲、注文住宅請負、戸建住宅分譲、不動産賃貸などの事業を展開。これまでに注文住宅は約20,000棟を完工、分譲戸建住宅では1,800戸の「杜の街」などを分譲中で、これまで約17,000戸・区画を供給している。いくつか見学したが、レベルも高かった。
木住協 第17回「木の家・こんな家に住みたい」作文コンクールに最多応募24,000作
第17回「木の家・こんな家に住みたい」作文コンクール表彰式
日本木造住宅産業協会(木住協)が主催する第17回「木の家・こんな家に住みたい」作文コンクール表彰式が10月25日行われ、応募があった約24,000作品の中から入選した8作品を本人が朗読し、保護者らも感想を語った。
作文コンクールは、小学生の1年から3年の低学年の部と、4年から6年までの高学年の部に分けそれぞれ「木の家や建物」をテーマに最大1200字以内に綴ってもらうもの。全国47都道府県と海外4カ国の日本人学校5校の1,636校から過去最多の24,079点の作品が寄せられた。
審査の結果、国土交通大臣賞、農林水産大臣賞、文部科学大臣賞、環境大臣賞の大臣賞のほか住宅金融支援機構理事長賞、木住協会長賞、朝日小学生新聞賞、審査員特別賞、木住協支部長賞の全28点が発表された。
冒頭挨拶した木住協・矢野龍会長は「私も皆さんの作品を読ませていただきましたが、木の家を通して、木のぬくもり、優しさ、頑丈さ、さらには将来の夢や、おじいさんおばあさんを思う優しい心、自然災害や環境問題、バリアフリーなど、どの作品も小学生らしい純粋な視点で書かれており、とても心を打たれました」と語った。
来賓として参加した国交省住宅局住宅生産課長・林田康孝氏は「衣食住の中で住まいはもっとも大事な基盤。日本の住宅は森と木をつなぎながら独自の様式を築いてきた。日本が誇れる文化。みなさんがみずみずしい言葉で木の優しさ、香りなどを言葉にして表現されていることに驚きました。みんな素晴らしい作品」と祝辞を述べた。
審査員を代表してイラストレーターの平松尚樹氏は「心ときめかせて審査しました。視点が広くなり太くなったのを感じました。畑に野菜の種をまくように感動の種を心に育てましょう」と講評した。
矢野会長
◇ ◆ ◇
約24,000作品も寄せられたというからすごい数だ。低学年は原稿用紙100字から1,200字、高学年は400字から1,200字が応募条件。1作品を400字原稿用紙2枚(800字)として48,000枚。小説なら世界最長、ギネスブックものだ。わが国の最長小説は中里介山の「大菩薩峠」で17,000枚といわれるから、その3倍近くだ。審査する人も大変だったはずだ。入選しなかった作品の中にも素晴らしい作品があるはずで、子どもたちはめげずにどんどん応募して欲しい。
応募作品の多さは都道府県別で茨城県、群馬県、福島県の順。茨城県は3,226作品。入選作28作品のうち茨城県が4作品、鹿児島県が5作品、福島県が4作品で、上位3県で13作品を占めた。
作文のテーマとして「家」というのは子どもにとってもっとも取り組みやすいはずだ。各県の教育委員会、学校が競えあえば子どもの書く力を向上させることができるのではないか。森林・林業県のわが三重県は44作品しかなかった。これは情けない。記者は小さい頃、囲炉裏で漢字や算数、村の経済・文化を学んだ。
文科省、学校に注文するとすれば、もっと森林や樹木について教えるべきではないか。河川や草花は教科書に結構出てくるが、樹木は50種もないのではないか。われわれは木の名前を知らなすぎる。
◇ ◆ ◇
表彰式は約2時間半。そのうちの過半は各賞の発表と受賞者による朗読、インタビューだった。みんな素晴らしい作品であることは、矢野氏や林田氏の話や、審査に関わった木住協担当者の「福島の作品にはもらい泣きした」という言葉からも伝わってきた。
作文はプロジェクターでも映し出されたが、前方の人しか読めなかったのではないか。後方に設けられた記者席からは読めなかったし、子どもの朗読もほとんど聞き取れなかった。保護者の人も「内容は全然分からなかった」と話していた。
作品は冊子としてまとめられるというが、入選作品くらいは会場で配布すればもっと理解は深まるはずだ。それにしても子どもたちは立派。途中騒ぐことも退席する子どもはほとんどいなかった。記者はいつも廊下に立たされていた。
続々「街路樹が泣いている~街と街路樹を考える」 支離滅裂の「新三郷」
【写真1】JR武蔵野線新三郷駅西口の街路樹(左がクスノキ、右がケヤキ)
【写真1】JR武蔵野線新三郷駅西口の街路樹(左がケヤキ、右がクスノキ)
【写真1】は、JR武蔵野線新三郷駅西口の街路樹だ。右側と左側でかなり差が違うことが分かる。右は「ケヤキ」、左は「クスノキ」だ。「ららぽーと新三郷」が2009年にオープンした時にも植えられていたから、それから5年が経過する。当時、ずいぶん貧弱な街路樹だと思ったが、それでも5年経過して右のケヤキの樹高は10m近くになり、逆箒型に育っている。
左のクスノキはどうか。樹高はせいぜい4mくらい。幹周りは20㎝くらいしかなかった。どうしてこんなに差が出るのか。市のみどり公園課によると「風通しが悪く生育がよくない」ということだった。
成木は高さ20~30mにもなるのは同じだが、ケヤキは落葉樹でクスノキは常緑樹だし、樹形がまったく異なる。メインストリートの両側でそんな高木を植えるのは理解できない。これでは永遠に新三郷駅前のメインストリートの街路樹は非対称、不ぞろい。支離滅裂といっては失礼か。市が掲げる「きらりとひかる田園都市みさと~人にも企業にも選ばれる魅力的なまち~」の看板に偽りはないのか。
しかしその一方で、写真のメインストリートの奥に左右対称の立派な円錐形をした高木が植わっているのが分かる。昭和48年に開校した市立桜小学校の敷地内に植えられているヒマラヤスギだ。樹高30mはあるはずだ。あまりにも市の街路樹とは対照的だ。
読者の皆さんはあと20年、30年待てばケヤキもクスノキもそれくらいになるというのかもしれないが、街づくりはスピードも大事だ。せめてメインストリートくらいは街びらきの段階で立派な高木を植えてほしい。
「LaLa新三郷」の「センペルセコイア」
【写真2】は、三井不動産レジデンシャルの「LaLa新三郷」の敷地内のエントランス正面に植えられている高木「センペルセコイア」だ。樹高は優に10mを超えていた。ネットで調べたら、常緑樹で「世界一背の高いことで知られる」とあった。雌雄異株と理解されていたが、同じ葉っぱに雄花と雌花が咲く雌雄異花だそうだ。
【写真3】は、「LaLa新三郷」のエントランスアプローチ部分に植えられている「セコイア」などの高木だ。セコイアも成木は数十メートルにもなる。こちらは落葉樹だ。見事な「ヤマザクラ」も植わっていた。
さすが三井だと思った。エントランスに落葉樹ではなく常緑樹を植える-これはかつてのデベロッパーの常識だったが、同社はいまもその姿勢を貫いているのが嬉しいではないか。
「LaLa新三郷」のエントランスアプローチ