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 「これからのマンション管理と管理会社の活用」(千代田区役所で)

 「これからのマンション管理と管理会社の活用」と題するマンション管理セミナーが3月22日、公益財団法人まちみらい千代田が主催して千代田区役所で行われた。約60人が参加した。

 まちみらい千代田は、ワンストップでマンション管理に関する助成制度や相談に応じる公益財団。区内には約400の分譲マンションが存在し、人口約52,000人の8割以上がマンション居住者であることから、マンションでのコミュニティ形成、管理会社の役割、防災対策などが話し合われた。

 コーディネーターはまちみらい千代田の顧問でマンション管理士の飯田太郎氏、パネラーはマンション管理業協会理事長・山根弘美氏、明海大学教授・齋藤広子氏、千代田区長・石川雅巳氏。

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山根氏

 さすがマンション管理のプロ中のプロ。山根氏の話は非常に面白かったし、最後はドキリとさせられた。普段は業界の会合などでしか話を聞かないが、一般の人にどのように話せばいいかよく分かっていらっしゃる。面白すぎて「みなさん、私の話など終わった瞬間から忘れるでしょうから」と、忘れないでほしいことを3点ぐらいに絞った。それも自らの体験に基づいたことだから説得力がある。以下に紹介する。

 「私は結婚して35年。単身赴任で20年。子どもは6人いた(これは後述する)。今日終わったら、かみさんに会いに行くんです。鞄にはいつも非常時に備えてカロリーメイトなどを入れている。首都直下型の地震の確率は向こう30年で70%ですから、宝くじに当たるより、タクシーの運転手が事故を起こすよりはるかに確率が高い」

 「大事なのは自分の子どもなど大事な写真などを身に着けておくことです。工事関係者などは手袋に子どもの写真を縫いこんでおくことは気の緩みをなくすことにつながる。災害時には高齢者だけでなく、乳幼児が災害弱者になる。その一方で、中学生は体力もあり災害時には戦力になる」

 「私は500戸のマンションに住んでいるが、メールボックスに名前を表示しているのは私だけ。『山根弘美』ですから男だか女だか分からないので、管理人さんは『止めたほうがいい』という。これが現状。どこにだれが住んでいるか分からなければ災害時にどうなるか。福岡ではありえない話です」

 「災害時にマンション管理会社は当てにならないと考えたほうがいい。委託管理契約に災害時対応をする条項などないからです。これは別バージョンで考えないといけないこれからの課題」

 「これはまだ正式に決まっていないが、コミュニティ形成に成果を上げている事例を管理組合から募集して紹介する事業も行う」

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齊藤氏

 齋藤氏は学生さんにいつも講義をされているから当然と言えば当然だが、割り当てられた20分間しゃべり続けた。ほとんど息継ぎをしない。立て板に水とはこのことをいう。「私は無口なタイプですので、資料は多めにしました」と話したときは唖然とした。

 自らが居住する新浦安の例を紹介しながら、マンションは地震に強いこと、共助の管理組合がしっかりしていれば災害時に大きな力を発揮すること、顔を知る・助け合い・共同管理の3つのコミュニティが連動すればより強固なマンション管理ができることなどを話した。

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石川区長

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 石川区長は、「災害時には行政の力には限界がある。最後は人力。まちみらい千代田を窓口にして防災隣組を組織する」と語った。耐震補強については、「区の補助金で改修工事をして価値をあげても、固定資産税や都市計画税は都税だから、区民感情としては理解されない。税の仕組みも問題。また、個人の財産にどのように行政が支援していくか理論構築も必要」などと話した。

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 取材後、山根氏に「しゃべったこと記事にしていいですか」と尋ねたら、山根氏はポケットからネーム入りのボールペンを取り出した。「これぼくの死んだ子どもの誕生日。1988年7月25日です」「命日は1989年7月26日。生まれた翌年の翌日に死んだんです。10㎝しか水が入っていなかった浴槽に伝え歩きして入ったんです。だれも気が付かなかった。ぼくはこの子と二人分生きている」(記者は前職を辞めたとき、二人の女性からネーム入りの万年筆をもらった。最近、それを飲み屋でなくした。それでも10年以上使い続けたのは記録的だ)

 「そうなんです山根さん。住宅内での死亡事故で結構多いのは溺死なんです。だから、積水さんは溺死しない浴室のドアを開発したんです」(記者)「そう、そりゃ積水さんに負けちゃおれない。うちもちゃんと取り組まなくちゃ」(山根氏は大和ハウス工業の管理会社ダイワサービスの会長)

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飯田氏

積水ハウス 藤井瑛美氏が「建築・住宅技術アイデアコンペ」最優秀賞(2014/2/28)

 

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新社長に就任する池田氏

 旭化成ホームズは4月1日付で副社長の池田英輔氏が社長に、現社長の平居正仁氏が旭化成の副社長に就任する人事を発表しているが、3月24日、両氏が出席して記者会見を行った。

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 記者は会見の時間を間違ったため、新しい社長に就任する池田氏の第一声を聞き逃した。同社はこの日付で、台湾最大の民間企業グループと台湾での個人向け住宅の試作棟の建設を行うと発表したが、基本的には「方向性は変わらない」(池田氏)ようだ。

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 この日の会見でもっとも注目したのは〝企業は人なり〟-平居氏がどのようにして人を育ててきたのか、今後本体で担当する人事・総務などでどのような舵取りをするかである。

 記者は「これからの時代はいかに優秀な人材を確保するか、ユニバーサルデザインと同様、男も女も高齢者も身障者も働きやすいユニバーサル就労を目指すべきではないか」と聞いた。これに対して、平居氏は次のように語った。

 「考え方はシンプルです。みんなが交流を深めてどう目標に向かっていくか。これはトップダウンでできるものではない。みんなが作り上げていくものです。RBA野球も同じ。ミッションは1つ〝勝ち続けること〟です。これからも同様に応援していきます」

 同社は平居氏が社長に就任してからの4年間で売上を3割、利益を倍増させた。市況の追い風もあっただろうが、業績アップは「社員が育ったから」という声を内外から聞く。平居氏は「業績アップ? 記事にならないファクターが多い」とはぐらかしたが、「僕は会社にいたら仕事にならない」といつも現場に飛び、社員と交流を深めてきたのが実ってきたということだろう。

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 新社長に就任する池田氏について平居氏は「私はわがままだが、池田は堅実。自分の意見を持っているし、やりたいようにやってくれるはず。僕が抜けたら池田が社長になることはみんな分かっていたはず。既定路線。私は何年も前から考えていた」と紹介。

 池田氏は人柄やこれまでのエピソードを記者団から聞かれると、「ないんです。一日一日仕事をこなしてきたとしか言いようがない。営業マンとして働いていたときは、最初に契約を断られたお客さんから契約したこともありますが、どうして最初で契約できなかったかを考えるタイプです。劇的なことなどない。ドラマ作れない」と話した。

 この言葉こそ池田氏の真骨頂だ。話は変わる。記者は20年以上RBA野球大会で同社チームを見てきた。RBA野球は住宅・不動産・建設など業界を横断する野球大会で、毎年50チームくらい参加している。過去24年間に同社は11回優勝し、勝率は.862の最強チームだ。平居氏が人事担当の時に育てたチームだ。なぜ強いのか、一言でいえば〝フォア・ザ・チーム〟に徹しているからだ。断っておくが、選手の多くは全国レベルの優秀な営業マンだ。今の時代、野球やスポーツだけできる新卒などどこも採用しない。

 あるとき同社の選手が中堅前安打を放ち、走者を生還させた。「よかったですね」と声を掛けたら、「監督の指示はゴロを打てだった。間違いなく生還できたからだ。ライナーを打った僕のミス」と反省した。この選手と池田氏は同じことを話していると思う。

 この日、日本航空を再建した京セラ、KDDIの創業者である稲盛和夫氏は、60年に及ぶ経営者人生について朝日新聞に「経営の目的は、全従業員の物心両面の幸せの一点」と話している。

 分かりやすくてシンプルな経営哲学が大事だということではないか。

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池田氏(左)と平居氏

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完成した「千駄ヶ谷緑苑ハウス」

 築43年の旧耐震賃貸住宅(一部事務所)を耐震補強し、内外装や設備を一新するリファイニング手法を用いた分譲マンション「千駄ヶ谷緑苑ハウス」が完成し、3月22日、関係者に公開された。約140人が参加した。

 物件は、JR中央線千駄ヶ谷駅から徒歩3分、渋谷区千駄ヶ谷5丁目に位置する7階建て全17戸(事務所3/住戸13)。専有面積は30.50~86.12㎡。建設年は昭和45年(築年数43年)。事業者はハチハウス。設計・監理は青木茂建築工房(意匠設計)、金箱構造設計事務所(構造設計)。施工は山田建設。竣工は平成26年3月。

 建物は、道路を挟んだ北側に新宿御苑があり、屋上からは新宿のビル群や神宮外苑花火が眺められる好立地にありながら、旧耐震であるうえ間取り・設備の陳腐化が進んでいた。建物を建て替えずに先代から譲り受けた建物をそのまま残したいという意向を受けてハチハウスが物件を取得。

 改修にあたっては、耐震性能を向上させるため構造・計画上不要な部分を撤去して軽量化を図り、使い勝手や意匠を損なわないよう補強をバランスよく行い、北側や南側の開口部を大きく取る工夫を行っている。

 外壁は中性化対策としてタイルを使用。屋上は外断熱として緑化も図っている。防音対策としてはスラブ厚が120ミリだったため、遮音性能の高いフローリングを採用。設備計画では縦配管を共用廊下側に設置することでメンテナンス性を向上させた。

 建物の価値向上のために1,600ページに及ぶ補修個所の全数を記載した「家歴書」を作成。耐用年数は第三者機関の調査の結果、推定耐用年数は残り50年と診断された。耐震性の確保、建物の長寿命化、適法性の確保、商品競争力を確保したことなどで住宅ローンが借りられるようにもした。

 現在まで13戸が全て契約・申し込み済み。坪単価は290万円。

 設計・監理を担当した青木茂建築工房・青木茂主宰は、「リファイニングによる住宅の再生は、賃貸の再生、居ながらの再生、分譲の再生、賃貸から分譲への再生をこれまで行ってきた。金融も含めどのようなケースでも対応できるという意味で集合住宅の再生は完成した」と話した。

 ハチハウスのオーナー・岡本軍八氏は、「私は74歳。これまで50年間、不動産事業にかかわってきた。最後の仕事として社会に還元したいという思いで取り組んできた。当初予算は坪70万円と想定していたが、耐震補強費などがかさみ結果的には坪100万円になった。しかし、分譲単価は想定していた240万円から290万円に上昇しても、お客さんが商品性を評価してくれた。内覧会でみなさんびっくりしていた。〝死ぬしかない〟と思っていた建物がリファイニングによって生まれ変わり、十分採算に乗ることが実証できた。夢のチャレンジが成功した」と語った。

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岡本氏(左)と青木氏

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 「千駄ヶ谷 緑苑ハウス」については、工事中の段階でも記事にしているのでそちらも参照して頂きたい。百聞は一見に如かず。青木先生のすごさが分かった。デザイン力も素晴らしい。倉庫だった1階は天井高が4mあったことから、ロフト付きにし、耐震性を確保しながら開口部を大きくしたこと、梁やカーテンレールの部分はライティングを施し、最上階は外廊下部分を専有化するなどの工夫を凝らしている。リフォームや今流行のリノベーションとは全く異なるものだ。

 もうひとつ驚いたことがある。岡本軍八氏が登場したことだ。岡本氏については別掲の記事を読んでいただきたい。記者は9年前、岡本氏にお会いし、記事にもしているが、すっかり忘れていた。岡本氏には失礼だが、もう過去の人だと思っていた。岡本氏自身も「浦島太郎になっちゃった」とその時話している。

 昨年取材したとき「ハチハウス」はどこかで聞いたような気がしたが、ハチハウス・青木歩実社長が軍八氏の娘さんだとは全然思わなかった。「ハチ」はロッキード事件のハチのひと刺しか連想できなかったし、青木茂氏の娘さんかと思って質問したぐらいだ。軍八の「ハチ」を社名に使うなどやはり岡本氏は只ものでなかった。

 岡本氏は、「山田建設の山田社長は長いおつきあい。どこも工事を受けてくれなかったのに意気に感じてやってくれた。近く中堅のデベロッパー向けに説明会をやる」と意気込んでいた。すっかり旬が過ぎた岡本氏がよみがえったのが何よりうれしい。リファイニングは人間再生にも応用できるのか。

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梁の部分をライティング処理               屋上の緑化

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窓の外は新宿御苑                 倉庫だった1階部分の天井高は4mのロフト付き

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リファイニング事例のひとつ「清瀬けやきホール」のビフォー(左)とアフター(写真撮影は「イメージグラム」)

千駄ヶ谷のリファイニング建築に見学者300人(2013/11/12)

岡本軍八氏に久しぶりにお会いして(2005/3/3)

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、「住まい手からみる木造住宅の未来」シンポジウム(ヤクルトホールで)

髙田・京大大学院教授 「平成の京町家団地」紹介

 日本ぐらし館木の文化研究会(委員長:髙田光雄京都大学大学院教授)とJAHBnet(主宰:宮沢俊哉アキュラホーム社長)は3月18日、「住まい手からみる木造住宅の未来」と題する第3回シンポジウムを行なった。会場にはほぼ満席の約420人が集まった。

 主題解説を行なった髙田教授は、わが国は木の文化国ではあるが、木材自給率は27%にとどまっており、山が荒れ災害の危険が増大しており、木造住宅は6割にのぼっているとはいえ、その多くはプレカットでできており、現状は木の文化の継承・発展にはなっていないと指摘。自然と街と人がつながっている京都の町家の例を紹介しながら、日本の居住文化を住まい手の視点から考えるべきと問題提起したうえ、「住まい手が住まいに働きかける価値とも言うべき『住みごたえ』『住み心地』『住みこなし』が重要」と述べた。

 続いて基調講演を行なった居住環境学が専門の檜谷美恵子・京都府立大学大学院教授は、社会経済環境の変化によって狭小住宅団地などでは空き家が進み、高齢者向けのサービス付き高齢者住宅のニーズが高まっていること、子育てファミリーは十分な広さの住居を確保できていないことなどから、コレクティブハウスやシェアハウスなどの共助、協同する住まいが注目されると話した。

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髙田氏

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 シンポジウムでは髙田氏がコーディネーターを務め、檜谷氏、京都大学大学院教授・鉾井修一氏、同・林康裕氏、京都工芸繊維大学大学院准教授・矢ケ崎善太郎氏、木村工務店 大工棟梁・木村忠紀氏、京都庭園研究所 庭師・比地黒義男氏がそれぞれの立場から「手を入れること」の重要性を語り合った。以下、主な声を紹介する。

鉾井氏 開いたり閉じたりする空間を確保することで暑さや寒さに対応することが重要

林氏 メンテフリーを売りものにする住宅があるが、これは住まい手から働きかける機会を奪うもの。メンテしやすい構造、装置をつくるべき

矢ケ崎氏 世界最古の木造住宅である法隆寺はなんども手入れされてきた。手を入れることで長持ちさせる技を大工は持っていた。庭は贅沢ではなく必要であったから設けた。公私をまぎらす、環境をあやふやにし、グラデーションのように深まっていく機能を備えている

木村氏 いまの消費者は「住みこなす」ということを知らない。私は賢い消費者をつくることが建築を育てると思っています。木造の家は手入れをしっかりすればそんなに潰れません

比地黒氏 庭は心を癒すところ。木を1本植えることが庭づくりの基本。最近の樹木剪定は枝もない丸く刈り込むことしか考えないが、すかし技術などを使えは気持ちいい風を取り込むことができる

檜谷氏 家政学はもともと男性の学問。もっと男性も参加してほしい(これに対して髙田氏は「京の町家の保全は女性が担っている」と苦笑い)

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 シンポジウムはそれぞれ専門の立場から各氏が話され課題が示された。木造住宅の一層の充実を願う記者にとっては、やや論議が散漫になり深まりに欠けたのが残念だったが、髙田氏が話題提供として「平成の京町家 東山八坂通」を紹介されたのに注目した。

 八坂神社、建仁寺にも近く、八坂通から少し入ったところで、全体敷地面積は約1,100㎡で、建基法86条の一団地認定を受けた区分所有方式の8戸の木造2階建てだ。共用の庭のほか専用の庭もあり、建物は土間、縁側を設け引き戸を多用することで風通しのいい造りとなっており、2戸連棟だが「けらば」(切妻側の意匠)を残すことなどを条件に戸別の建て替えも可能だという。

 首都圏ではほとんど見かけなくなったが、建て方はかつて昭和50~60年代にたくさん供給された「タウンハウス」に似ている。共有の「コモン」スペースを持ち、専用の「庭」もある低層住宅だ。

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「平成の京町家・東山八坂通」(株式会社ゼロ・コーポレーション提供)

 

職人の技は無形の文化財 「日本ぐらし館木の文化研究会」第2回シンポ(2013/4/8)

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「セントラルレジデンス調布ステーションコート」完成予想図

 京王線調布駅前の再開発マンション住友不動産「セントラルレジデンス調布ステーションコート」を見学した。整備が進む駅前広場に面した一等地のマンションだ。

 物件は、京王線調布駅から徒歩2分、調布市布田4丁目に位置する16階建て全190 戸(事業協力者住戸29 戸含む)。専有面積は41.71~82.47㎡。価格は未定。竣工予定は平成27年1月。施工は清水建設。

 マンションは、京王線の地下化に伴う市の駅前広場整備事業を中心とした街づくり方針に沿って建設されるもので、公益施設・商業・業務施設からなる複合開発。地下に市の自転車置場が設置され、3階までは業務・商業施設となる。

 建物は、北側コーナーにガラスカーテンウォールを配し、全体的に落ち着いたモノトーンの素材・色調を採用し、白い縦ラインのアクセントを入れることで端正な表情にしているのが特徴。住宅部分は4階からで、70㎡が中心、その他41㎡のコンパクトタイプや54㎡の小家族向けタイプが約4割。一部の住戸は、足元から天井近くまで設置した大型窓「ダイナミックパノラマウインドウ」を採用している。

 販売を担当する同社住宅分譲事業本部首都圏営業所主任・長嶋史和氏は、「3月1日から予約で見学を受け付けているが、毎週土日に設けた各日の予約枠18組はほぼ満席。分譲を待ち望んでいた方が多い。私がこれまで15年間担当したマンションの中でこの物件が一番立地がいい。府中?桜上水? 負けません。仙川? 予算的に難しい方は仙川を検討されると思います」と話した。

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 調布は、記者が結婚して最初に住んだ街。京王線沿線の中ではもっともポテンシャルの高い街だった。最近は伊勢丹が進出した府中に押され気味だったが、京王線の地下化にともなう整備計画の進行によって再び輝きを取り戻しつつある。線路だったところに京王電鉄が商業・業務ビルを3棟を計画しているが、現段階で詳細は不明。

 マンションでもっとも気になるのが価格だ。長嶋氏は「南向きの価格の高いところから分譲する予定で、70㎡台で6,000万円台の後半」としか話さなかったが、府中にも桜上水にも負けないということからおのずと単価は推測される。

 徒歩5分圏には大型商業施設や市役所、図書館、コンサートホールが揃っている。単身者・DINCSを含め申し込みが殺到するかもしれない。

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外観

 平成26年の地価公示が発表された。全国的には住宅地、商業地とも依然として下落をしているものの下落率は縮小傾向を継続。三大都市圏では、住宅地の約2分の1の地点が上昇、商業地の約3分の2の地点が上昇。その一方で、地方圏では住宅地、商業地ともに約4分の3の地点が下落。大都市圏と地方圏の地域格差は解消されないどころかむしろ拡大していることが地価公示も裏付けた。

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 別表  Book1.pdf  は、平成26年と平成16年の大都市圏を除く人口が10万人以上の市の住宅地の平均価格を比較したものだ。

比較可能な市は全国で103市あり、唯一平均地価が上昇しているのは滋賀県草津市だ。10年前は1㎡あたり98,400円だったのが、今年は106,000円と7.7%上昇している。

 どうして草津市が上昇しているのか。地元・大津市の不動産会社ラフィナータ・山田幸秀社長は、「草津市は京都、大阪への通勤圏。快速で京都へは20分、大阪は50分。住環境もいい。急激に地価が上昇しているという印象はないが、ジワジワと上昇しているのは間違いない。大手も軒並み進出しており、激戦地となっている」と話した。

 パナソニックなどの大手企業や立命館大学などの大学も進出し、利便性が高まっているという。

 他は悲惨だ。下落率が10%以下なのは札幌市の5.5%、福岡市の5.6%、那覇市の7.6%、仙台市の8.6%、浦添市の8.6%のみ。他は鳥取市の56.3%、小樽の53.2%、秋田市の52.8%と半値以下になったところも3市ある。40%以上下落は約3割の30市にのぼる。

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 2020年のオリンピック開催効果もあり前年の860,000円から954,000円と10.9%上昇した東京都中央区勝どき3-4-18の平成16年地価公示は680,000円だった。10年間に40%の上昇だ。

 大都市圏の一部がこの10年間で40%地価が上昇し、その逆に地方都市では40%も地価は下落し、底這い状態が続いているということだ。

 

 

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「首都大学東京リーディングプロジェクト最終成果報告会」(都庁で)

 首都大学東京と東京都は3月17日、大都市東京の課題解決に向けた取り組み「首都大学東京リーディングプロジェクト最終成果報告会」を行い、同大学都市環境学部特任教授・山本康友氏が「新省エネ東京仕様開発提示プロジェクト研究」について、同大学都市環境学部特任教授・青木茂氏が「リファイニング研究開発プロジェクト研究」について、同大学理事・上野淳氏が「郊外型都市賦活更新プロジェクト研究」についてそれぞれ報告した。

 山本氏は、今年1月に竣工した都有施設の事例を紹介。IT技術の採用はもちろん、再生可能エネルギーの導入、地中熱利用ヒートポンプ、木材の利用、壁面緑化など現状で最高水準の省エネと省エネ仕様で整備したと話した。今後、計測データを蓄積して検証するとしている。

 青木氏は、これまで手掛けてきたリファイニング建築事例を紹介。リファイニングを行う際は、既存建物が建てられてから現在までの約30年を一区切りに、今後2度の再リファイニングを想定しトータルで120年使用できるよう考えるべきで、構造的には耐震性はもちろんだが、コンクリートや鉄筋の劣化を十分調査すべきと強調した。意匠も外観は30年ごとに見直し、内観は5~10年ごとに手を入れるべきとした。さらに用途についても時代の変化に沿うよう変更を加えることが建築物の長寿命化につながると語った。

 今後の課題として、技術の伝承、雇用の促進、耐震診断のデータベース化、現行法との矛盾の解消、教育の重視などをあげた。

 上野氏は、多摩ニュータウンの賦活について、「世界的に稀有な事例」である公園・緑地をペディストリアンで結ぶ緑のネットワークや歩車分離の街づくりをどう継承していくかが鍵だと語った。また、高齢化やバリアの解消などの課題はあるが、多様な主体が主役になる街づくりを行なえば未来都市・多摩ニュータウンには大きな可能性があると力説した。

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 最近は、マンションだけでなく他の分野の取材も増やしているが、それぞれ一つひとつがみんなつながっていることが見えてくる。こんがらかったタコ糸をほぐしたように、知恵の輪を解いたときのように、あるいは「カチリ」と音がして玉手箱の鍵か開いたときの、極上の酒が五臓六腑にしみわたる快感だ。これが取材の楽しさだ。

 例えば、今回の取材で言えば青木氏の「30×4=120年ターム」説。これは単に建築だけでなく、サステイナブル社会の構築と結びつく。上野氏が力説した街全体をペディストリアンで結ぶ緑のネットワークの価値は、もう一度再認識する必要がありそうだ。

 山本氏が紹介した「新省エネ東京仕様開発提示プロジェクト」はまだオープンになっていない施設で、都は一般公開も含めて検討するとしている。

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 上野氏が「書いてもいい」と仰ったから書く。昨日記事にもした「サードプレイス」の「福祉亭」は上野氏もよく利用されているようで、「私は福祉亭に焼酎のボトルをキープしている。どなたでも寺田さん(理事)に言って飲んでもらっても結構」「福祉亭にはお世話になってきたから、(恩返しの意味か)施設のスタッフになるか、調理人として雇ってもらうかしたい」と話した。

 上野氏の調理人としての腕前がどんなものかは不明だが、先生の話がただで聞けるとなれば「福祉亭」の価値は倍化する。学生さんなどの若者も大挙して押しかけるのではないか。

 

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「Brillia 狛江Farm&Garden」完成予想図

 東京建物がモデルルームをオープンした「Brillia 狛江Farm&Garden」のモデルルームを見学した。現段階で価格は未定だが、周囲は第一種低層住居専用地域だけに人気を呼ぶ可能性は十分と見た。

 物件は、小田急小田原線狛江駅から徒歩8 分、狛江市中和泉3 丁目に位置する5階建て全39戸。専有面積は60.28~90.40㎡、価格は未定。入居予定は平成26 年11 月下旬。設計・監理はコモン・リンク一級建築士事務所。施工は南海辰村建設。

 敷地の東側は道路に面しているが、それほど交通量は多くなく、敷地南側も西側も用途地域は第一種低層住居専用地域。典型的な「狛江」の住宅街だ。

 39戸という小規模物件の特性を活かし、居住者の顔が分かる「食べられる景観」をテーマにした「コモンファーム(菜園)」や「コモンガーデン(庭園)」を設置しているのが特徴。また、バルコニーには花台とスロップシンクを設けている。

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 取材した段階では価格は公表されなかったが、記者の想定内に収まるのではないかとみている。

 面白いのは、住戸プランは多くが東向きで、バルコニーに花台を設けていることだ。住戸の外廊下側に花台を設置している例はたくさんあるが、バルコニー側に設置しているのは見たことがない。しかし、バルコニーにプランターを設置するマンション居住者はたくさんいる。これは歓迎されるはずだ。

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「コモンガーデン」(左)と「コモンファーム」

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港区「芝の家」

 日本建築学会の建築計画委員会に属する「ライフスタイル小委員会」が3月13日に行なった公開研究会「もうひとつの居場所(サードプレイス)をどこに持つ? 」を取材した。

 同委員会は、少子高齢社会における家族と住まいの現状と課題を共有し、これからのライフスタイルに対応した住宅・地域の在り方を検討することを目的に設けられているもので、この日は港区の「芝の家」を見学し、多摩ニュータウンの「福祉亭」、墨田区の「コレクティブハウスかんかん森」の事例が紹介され、「自宅」や「職場」などの居場所以外の「もう一つの居場所」の今後の可能性などが話しあわれた。

 研究会では、同委員会主査の湘北短期大学准教授・大橋寿美子氏が、「家族機能が弱体化した少子高齢社会では、人と人のつながりが希薄になっている。もう一つの居場所としてのサードプレイスは3.11以降、より一層重要性が増している。孤独や孤立からの開放、生きがいにつながる可能性を探るのが、この研究会の目的」と、概要について説明した。

 「芝の家」は2008年、港区と慶應大学とが連携して設けられた芝3丁目のコミュニティ拠点。民間のオフィスを賃借しているもので、大人から子どもまで年間1万近くの利用者がある。事業費は年間950万円。

 慶應大学特任講師・坂倉杏介氏は、「緩やかなつながりを求める人が多い。単体ではなく、いろいろな組織と連携して自主的で多様な取り組みがインフォーマルな『共』をつくり出す」と語った。

 「福祉亭」は、多摩ニュータウンのUR賃貸空き店舗を利用してNPO法人福祉亭が2003年から運営している施設で、飲食提供のほか、高齢者支援事業、街づくり事業などを行なっている。これまで100近いテレビ、新聞、雑誌などに取り上げられており、認知度は全国区になった。

 福祉亭の理事・寺田美恵子氏は、「セーフティネットの網を広げているつもりだが、漏れることもある。初期投資、立ち上げ支援、運営補助の仕組みが大切。近隣には株式会社方式も含めて、同じような施設が4カ所でき、激戦地になってきた。売上げは年間約800万円。トータルで約900万円。補助金は60万円しかない」と笑った。

 「かんかん森」は2003年、わが国初のコレクティブハウスとして誕生。人員構成は0歳~88歳まで48名。子どもが13名、大人が35名。夫婦7組、単身女性16名、単身男性5名という構成だ。

 居住者でコレクティブハウスの社長・坂元良江氏は、「誕生してから10年以上が経過したが、毎年子どもが生まれ居住者の自主管理、自主運営は発展している。コモンスペースは時には居酒屋状態になることもあるが、週に2~3回のコモンミール(食事当番)は作る人のレベルも上がってきており、レベルの高い食事が提供できている」と話した。

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「芝の家」

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 「サードプレイス」は、アメリカの都市社会学者Ray Oldenburg氏の著作「The Great Good Place」(1997年)の邦訳で、「ファーストプレイス」である自宅、「セカンドプレイス」である職場などとは別の居酒屋、カフェ、本屋、図書館など情報・意見交換の場、地域活動の拠点として機能する概念のことだ。
 
 このようなサードプレイスは、普通の人にとってはごく当たり前の施設だ。ことさら「サードプレイス」として注目されるのは、家庭も職場も自分の拠りどころではなくなっていることの証左なのだろう。無縁社会、格差社会、パワハラ、ワーキングプア、パラサイト・シングル、ネットカフェ難民…およそ20年前にはそんな言葉すらなかった深刻な問題が生起し、日常茶飯となっている。

 ならば「サードプレイス」はこれらの問題を解決してくれる万能薬になるか問えば、答えは「ノー」だろう。万病に効く処方箋はないし、「サードプレイス」に過大な期待をかけるのは酷だ。性急に成果を求めない緩やかで多様なつながりを辛抱強く続けることしかないのではないか。

 次は、数年前からナイスが取り組んでいる「住まいるCafé」を紹介する。住宅の売買・仲介店舗を地域の居住者に開放したCSR活動だ。

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大橋氏

 「サードプレイス」を取材しながら、これは社会的弱者にとってこそ必要な施設ではないかとずっと考えていた。

 そうした社会的弱者に対して、社会学者の上野千鶴子氏が近著「女たちのサバイバル作戦」(文春新書)で心強いメッセージを送っている。少し長いが、以下に紹介する。

 「日本の女のこれからを思うと、サステイナブルよりサバイバル、の方が切実だとわたしは思えます。たとえ日本が『沈没』して難民になっても、亡命してでも、どこででも生き延びていけるスキルを身につけてほしい、と思うようになりました」「自分のことは自分で。他人とは関係ない。集団で活動するのはうざいし、ださい――こういうメンタリティがネオリベ的感性です。ネオリベは強者と弱者を生みますが、問題は、弱者も強者と同じメンタリティを共有していることです。強者はつるむ必要がありません。ですが弱者は弱者だからこそ、つるむ理由があります」「制度も政治も変えられないかもしれないけれど、自分の周囲を気持ちよく変えることは自分と仲間の力でできるかもしれない」

 「たとえ目の前の問題がただちに解決できなくとも、たった今の苦しみを共有してくれるひとたちがいることで、困難にへこたれないでいられる、問題に立ち向かう元気がもらえる――そうやって女たちは生き延びてきた…傷の舐めあい――と揶揄する人がいました。それでけっこう。傷ついた者たちは、傷を舐めあう必要がありました。女性はその必要があったからこそ、つながりをつくってきました」

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左から坂倉氏、寺田氏、坂元氏

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「コレド室町3」エントランス(乃村工藝社・小坂竜氏によるアート。ツガやスギ、ヒノキなどと石、タイルなどを組み合わせた壁、床は芸術品)

 三井不動産は3月20日、日本橋再生計画の第二弾「コレド室町2」「コレド室町3」を開業する。開業に先立つ17日、開業記者会見・内覧会を行い、数百人の報道陣が詰めかけた。

 「日本橋再生計画」は、伝統ある老舗など街の文化を残し、水と緑の賑わいを甦らせ、新たな街の魅力を創っていく、「残しながら、蘇らせながら、創っていく」をコンセプトに再開発を進めているもの。

 「コレド室町2」「コレド室町3」は、再開発の第一弾ともいうべき「コレド日本橋」(2004年竣工)、「日本橋三井タワー」(2005年竣工)、「コレド室町」(2010年竣工)に次ぐもの。今後も「室町三丁目」「室町一丁目」「日本橋一丁目」「日本橋二丁目」「八重洲二丁目北街区」「八重洲二丁目中地区」など再開発計画が目白押しで、面的な再開発が進められる。

 新しく開業する「コレド室町2」「コレド室町3」には、外国人コンシェルジュによるインフォメーション・ガイドツアー(日本橋案内所)を開始するほか、和のおもてなしレンタルスペース「橋楽亭/囲庵(COREDO 室町)」を設置。外国人が無料でインターネットを利用できるWi-Fiを整備する。

 記者会見に臨んだ同社飯沼喜章副社長は、「今回のコレド室町2とコレド室町3の開業と日本橋三井タワーのリニューアルオープンは、江戸の往時の賑わいを取り戻す再生プロジェクトの一環であり、今後も日本橋の新たな魅力を発信し続けていく」と話した。

 年間の来街者は1,700万人、売上高は110億円を見込む。

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「コレド室町2」(スーパーポテト代表・杉本貴志氏のアート。石器質タイルの組み合わせが妙)

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 マンションブランドなら100も200も価値判断ができるが、飲食・ファッションなどの商業施設はさっぱり分からない。しかし、三菱地所が進める「丸の内再構築」と同社の「日本橋再生」は明らかに街づくりのコンセプトが異なるぐらいは素人目にも分かる。

 三菱地所は「世界でもっともインタラクションが活発な街」を掲げ、アジアの国際拠点都市としてグローバル化に取り組んでいる。仲通りにはティファニー、エルメス、バカラ、プラダなど世界的ブランドと流行を発信する国内のセレクトショップが軒を連ねる。20年前は土曜、日曜日となるとほとんど人通りが途絶えた「過疎」はいまでは日本一の賑わいのある街変わった。

 一方の「日本橋」は前面に「お江戸日本橋」を打ちだしている。桜、祭り、着物、茶道などのイベント積極的に行い、店舗も榮太樓、にんべん、木屋、小津和紙、鶴屋吉信、千疋屋などわれら団塊世代にもなじみのある店が多い。

 両社が狭いエリアで競り合ってどうなるのかという心配もあるが、おそらくこのコンセプトの違いで住み分けができ、相乗効果となってより賑わいを増すのだろう。両社のこれからの投資額はそれぞれ数千億円、双方では1兆円を間違いなく突破する。

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「コレド室町2」(杉本氏のタイル文様をふんだんに用いた店舗デザイン)  

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「これど室町3」(小坂氏のツガを用いた壁)

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「橋楽亭/囲庵(COREDO 室町3)」と日本橋 芳町の売れっ子芸妓さん「おもちゃ」さん

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小坂氏のアートな壁(石とツガ、ヒノキ、スギの組み合わせ)

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左は「牡蠣場 北海道厚岸」(生カキは1ピース290円から。記者が食べたのは590円。1年を通じて生カキが食べられるのは厚岸のみとか)。右は本物の出汁を販売する「茅乃舎」

三井不動産 ビルも賃貸も億ション並み「和」盛り込んだ「日本橋再生」(2014/1/29)

 

 

 

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