RBA OFFICIAL
 

IMG_1057.jpg
約50人が参加した「ショートスピーチ」

 イヌイ倉庫は9月15日、乾康之・同社社長も参加して中央区月島三丁目のシェア型企業寮「月島荘」の秋まつりを行った。乾社長などのショートスピーチ、パネルディスカッション、「月島荘ごはん」などのイベントが行われた。全644室のうち26社二百十数名が入居済み。入居者の約7割が20歳代で、男女の比率は7:3。

IMG_1062.jpg
たこ焼きをつくる居住者

◇       ◆     ◇

 「月島荘」がどのようなシェア型企業寮であるかは様々なメディアが取り上げているし、記者も昨年の9月に竣工した際に見学し記事も書いているのでここでは詳細を省くが、乾社長の損得を抜きにした大いなる挑戦の一端を垣間見ることができた…これは正確ではない。乾社長はこのシェア型企業寮構想の実現まで9年間もかけたというのだから、用意周到、考えに考え抜いたに違いない。儲けるためだけなら他の選択肢もあったはずだが、単に住宅を提供するだけでなく人を育て、地域に貢献・還元する価値を十分計算に入れているはずだ。

 その用意周到にして大胆な計画は、まず、常識破りの取材対応に如実に表れている。マンションやビルの完成見学会はこれまでもたくさん経験してきたが、入居者から声を聴いたり写真を撮ったりすることはほとんど許されなかった。個人情報保護法が施行されてから異常、過剰といえるほど当事者はナーバスになっている。

 今回も入居者からたいした声は聴けないだろうと思っていたのだが、そうではなかった。ほとんどフリーだった。規制があったのは入居する企業名の公表を避けるということだけで、居住者インタビューは本人の了解さえ得られれば写真を撮ったり名前を公表したりすることも許された。施設内の写真撮影ももちろんOKだった。

 これには驚いた。なによりも自由なのがいい。自由だからこそ規律も規範も生まれてくるし人材も育つ。

 記者は居住者がつくった200円のたこ焼きと500円の「コロッケ、餃子の皮のピザ、サングリア」を頼み、居住者とビールを飲みながらフランクに話した。インタビューを拒否された人は一人もいなかった。3時間は瞬く間に過ぎた。

IMG_1063.jpg
「月島荘ごはん」コーナー

 居住者の一人で、世界中の人権侵害を監視し告発する人権NGOで働く女性(30)の話には胸を打たれた。

 この女性は高校のとき父親の勤務の関係で渡米。「渡米するとき日本は好きではなかった。みんな右向け右の日本人気質がいやだった。国連で仕事が出来ればと思っていた。しかし、外から眺めた日本の文化は素晴らしいと考えるようになった。大学は自分の意志で米国を選んだ。日本も世界もハッピーにしたいと」と夢を語った。

 やはり居住者で世界経済フォーラム(ダボス会議)など世界を舞台に活躍している男性も「世界で生起している出来事は他人事じゃない」と語ったが、これからの時代は国際的な感覚の持ち主が求められる。「月島荘」がそのような人材を輩出してくれるのではないかと思うと嬉しくなった。

 取材を終え、帰ろうと喫煙室でタバコを吸いながら話を聞いた3人組がまた素晴らしい。「イヌイさんがハードを造った。ソフトをつくるのは俺たちだ」と話した。

 「月島荘ごはん」の男性スタッフは「料理は何でもできる。完璧に主夫がこなせる。あとは相手だけ」と話したが、これもまたいい。ジェンダーフリーを実践しようという心構えが好きになった。

 普通の賃貸マンションだったら入居者同士の関係は希薄どころかコミュニティは絶対に生まれない。若い人たちがお互い刺激し合い、夢を語れる場があるというのは素晴らしいではないか。

 〝若者、ばか者、よそ者〟が街をつくり、世の中を動かす原動力になることをひしひしと感じた。

IMG_1061.jpg
居住者から寄贈された書籍

IMG_1071.jpg
月島荘の暮らしを紹介するMovieを見入る参加者

イヌイ倉庫 「企業寮をシェアする」新発想の「月島荘」が竣工(2013/9/29)

 pixlr_IMG_0967.jpg
石積みの街が美しい「スマートコモンシティちはら台」

 東日本大震災以降、積水ハウスが全国で展開している「スマートタウン」の一つ「スマートコモンシティちはら台」を取材した。

 現地は、JR外房線鎌取駅からバス約12分、徒歩4分の千葉県市原市ちはら台東に位置する全215区画。昨年7月から建築条件付き宅地や分譲戸建てとして分譲されており、現在まで約40区画が販売済み。

 団地は、平成21年から分譲開始された同社と大和ハウス工業による「かずさの杜 ちはら台」(326区画)に隣接し、一体として開発されたものだ。街づくりは、平成17年6月に施行された景観法の提案制度を使用し、事業者や住民が素案を添えて景観計画策定の提案を行い、その素案に基づいて市原市が策定した景観計画に沿って行われている。

 既存の地区計画で定められている最低敷地面積165㎡や屋根の色彩、道路境界からの壁面の後退距離、垣・柵の構造などに加え、屋根の形状、緑化の基準などが上乗せされている。違反者には罰則もある。

 「かずさの杜 ちはら台」は、全国で初の先進的な街づくりが評価され、2012年のグッドデザイン賞を受賞している。

 積水ハウスの「スマートコモンシティ」は、太陽電池と燃料電池搭載を基本とし、ゼロエネルギー住宅「グリーンファーストゼロ」などとともに「安全・安心」「健康・快適」「エネルギー」「見守り」をキーワードに「SLOW&SMART」な暮らしを提案する同社独自の取り組み。これまで全国16か所、総区画1,708区画のうち、578区画が販売済みだ。

pixlr_IMG_0970.jpg
中央側溝とクルドサックも特徴の一つ

◇       ◆     ◇

 同社の「スマートタウン」の取材は、昨年行った宮城県富谷町の「スマートコモンシティ明石台」に次ぎ2回目だった。隣接の「かずさの杜 ちはら台」は3年前、大和ハウスが見学会を行っているので、訪ねるのは2回目。

 「明石台」もそうだったが、タクシーを降りた途端、街路に沿った区画が昔懐かしい石積みが施されているのには驚いた。以前はこの種の石積みは珍しくもなかったが、最近はほとんど見なくなった。

 道路には縁石がなく、舗道と敷地の境界もフラットとし、一部は中央側溝を採用しているのも大きな特徴だ。行政の理解を得られるまで時間が掛ったが、粘り強く説得して実現したようだ。

 街づくりの基本設計は、同社とも縁が深い宮脇檀建築研究室で活動されていた二瓶正史氏が担当。「道」を大切にした宮脇氏の思想はこの街にも受け継がれている。

 

pixlr_IMG_0969.jpg
街並み

◇       ◆     ◇

 驚いたのはこれだけではない。販売責任者の同社千葉南支店不動産課課長・青木博氏(47)から街づくりについて説明を受けたのだが、同社の不退転の姿勢に胸を打たれた。すべてのデベロッパーが学ばなければならないと感じた。

 不退転の姿勢はどこから生まれたか。依拠する街が大きく影響しているのは間違いない。

 同社千葉南支店は木更津市にある。読者の皆さんもご存じのように、木更津市は土地区画整理事業が全国的に盛んなところで、かつて東京湾アクアラインの開通などをあてこんで各地で開発が行われた。前市長はその旗振り役として全国に名を馳せた。

 ところがバブル崩壊。土地区画整理事業は動き出したら止まらない特徴がある。多くの事業が破たん状態に陥った。2002年には前市長が業務上横領容疑で逮捕され、市長を辞任。駅前の大型商業施設の撤退も相次いだ。

 記者は当時、小雨が降る中、1日がかりで市内の区画整理事業を取材したことがある。赤土だらけの禿山をみて呆然としたのを鮮明に覚えている。工事を請け負ったゼネコンはその後、民事再生法の申請を行った。

 青木氏はそのころ住宅展示場の担当だった。「赤ん坊まで買っても土地は余ると言われていた」と青木氏が振り返るように、「地価下落日本一」という不名誉な新聞記事が躍った。当時千葉南支店の成績は全国の中で下位に甘んじていた。

 青木氏は5年前、当時の支店長から「かずさの杜 ちはら台」の販売担当を任された。   

 責任者として就任するとき、「覚悟を決めよ。時が経つほどに価値が高まる街にするために、緑化基準を含めた街づくりのルールをお客さんに徹底するよう重要事項説明はお前が一人で全部やれ」と言われたそうだ。青木氏はその指示を守り、5年間で自社が販売した166区画全てのお客さんに1人当たり2時間半かけて重要事項を説明したという。

 同社が販売した「かずさの杜 ちはら台」の166区画は5年間で完売した。今の時期、166区画の住宅を5年間で販売するのは容易なことではない。今回の「ちはら台」の年間40区画販売も驚異的な数字だ。地域に根ざさないとできないことだ。その後千葉南支店の成績も回復し、全国トップレベルになったというのもうなずける。

 同社の「5本の樹」計画はよく知られているが、宅地購入者に中高木の植樹をお願いするのもまた容易なことではない。いま全国を席巻している建売り販売会社の住宅を見ればよく分かる。敷地はほとんどコンクリで固められ、樹木どころか雑草すら生えないのが当たり前になっている。お客さんが「いやだ」と言ったらそれまでだ。

 同社の街づくりに掛ける熱意は居住者にも浸透している。月額1,000円の管理費を徴収して樹木管理などに充てる仕組みも構築しているのだが、いつも草取りをしている年配の人に青木氏が「その草取りは業者がやってくれますよ」と声を掛けた。その人は「美しい街をつくろうというのはみんなで決めたこと。私の姿を子どもたちが目にすることでいっそう街に愛着をもってくれたらと思ってね」と話したそうだ。

 記者はこの話を聞きながら、住民の街を大切にする意識の高さに感動したが、販売を終えた街にも足しげく通う青木氏のことを見事だと思った。一方で、マンションデベロッパーなどが事業回転を速めるために〝事業離れ〟をいつも口にするのを思い出した。

 青木氏は「私たちももちろん販売が終了した後もアフターサービスを通じて関わり続けますが、私たちが離れても街全体の評価が高まっていくようにと願っています」と語った-〝経年美化〟の実践だ。

IMG_0971.JPG
「かずさの杜 ちはら台」の街並み(当初計画では右の公園に隣接する部分はコンクリの擁壁だったが、緑化を図ったという)
 

街のレベル高い「かずさの杜ちはら台」 大和ハウス「xevo Li」見学会(2011/10/21)

 三井不動産リアルティは9月1日から「空家・空地巡回サービス」を開始した。

 居住していない一戸建て、マンション、土地を顧客に代わって定期的に巡回し、劣化防止・防犯をサポートするサービス。月に1回、メンテナンス確認、雨漏り・カビ確認、通気・換気・郵便物の確認、清掃、庭木の確認などを行い、書面で報告する。

 上記のサービスを行うマンション・戸建ての基本プランは月額7,650円。メンテナンス確認、清掃、庭木の確認のみを行う戸建て・土地のシンプルプランは月額5,400円。

◇       ◆     ◇

 この種のサービスがビジネスになるのかどうか記者は分からないが、同じようなサービスは同業では東急リバブルが今年4月から開始しており、住宅管理会社、介護関連の企業も行っているようだ。

 総務省の調査では、全国の住宅に占める空き家は13.5%、820万戸になっており、今後も加速度的に増えると思われる。国や自治体も空き家対策の取り組みを急いでいる。

 記者は一昨年、大量の空き家が発生しているある首都圏の郊外団地を取材したが、〝廃屋〟でも土地に対する固定資産税が大幅に軽減されている。ここにメスを入れない限り空き家は減少しないと思う。一方で空き家の再生・活用も大きなテーマになるはずだ。

観客席.jpg
「オーベルグランディオ横浜鶴見ナイター」

 大成有楽不動産、京浜急行電鉄、菱重エステート、長谷工コーポレーション、ナイスの5社は、現在販売中の新築分譲マンション「オーベルグランディオ横浜鶴見」(横浜市鶴見区・総戸数553戸)の契約者160人を無料招待し、地元の横浜DeNAベイスターズを応援するプロ野球の冠試合「オーベルグランディオ横浜鶴見ナイター」を8月31日(日)に横浜スタジアムで開催した。

 現在販売中の「オーベルグランディオ横浜鶴見」はマンションコミュニティを重視して、「交流の輪を、入居者に地域に都市に広げ、ともにコミュニティを育むこと」をテーマに、これまでの集合住宅にはなかったコミュニティ支援プログラム「マチトモ」プロジェクトを企画。地域の団体・企業の協力のもと、入居者間の交流に加えて地域との交流、多世代間の交流を実現することを目指している。

 今回のイベントは「マチトモ」プロジェクトの一環で、協賛企業の一社である横浜DeNAベイスターズと共同で開催した。

 マンション入居後も、横浜DeNAベイスターズとのコラボによる入居者対象の「プロ野球観戦ツアー」や、マンション内で開催する横浜DeNAベイスターズのマスコットとオフィシャルチアチームによるイベントを予定している。

◇     ◆   ◇

 デベロッパーのプロ野球の冠試合観戦イベントは、三菱地所レジデンスが東京ドームで昨年と今年行なったのを取材している。

 野球ファンの記者も、こうしたイベントをどんどんやって野球ファンを増やしてほしいと思う。もちろん入居者同士の交流を促し深めるためにも有効だろう。

スタメンキッズ2.jpg
横浜DeNAベイスターズのスタメン選手からユニフォームにサインをもらう「スタメンキッズ」

花束贈呈.jpg
マンション購入者による選手への花束贈呈

体操ニッポンが始球式に登場 三菱地所が新CM発表イベント(2014/8/30)

IMG_0964.JPG
「グレイプスガーデン西新井大師」 

 日比谷花壇と東京建物不動産販売は9月9日、足立区西新井に完成したサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)「グレイプスガーデン西新井大師」の記者内覧会を行なった。日比谷花壇が事業主・一部サービス提供事業者となり、東建不販が企業不動産(CRE)戦略支援として貸主・管理運営事業者、やさしい手がサービス提供事業者として参画する3社コラボレーションプロジェクト。

 物件は、東武大師線大師前駅から徒歩8分、足立区西新井6丁目に位置する7階建て全62戸。専用面積は19.08~30.66㎡、月額賃料は62,000円~140,000円、管理費は11,000円~15,000円、基本サービス料は35,640円。10月1日から開業する。  

 日比谷花壇が物流センター-駐車場として使用していた土地に建設したもので、同社としては初めてのサ高住。1階の庭園と6階屋上庭園に年間を通じて100種以上の草花を配し、大学などと共同開発した「フラワーアクティビティプログラム」、植物との関わりや園芸作業を通じて体や精神機能の維持・回復を目指す「園芸療法」、「看取り」や「日比谷花壇のお葬式」も提供する。

 内覧会に出席した同社宮島浩彰社長は、「サ高住は『花とみどりを通じて、真に豊かな社会づくりに貢献する』企業理念にマッチした投資で、当社の高齢者向けサービスを直接提供するとともに、東京建物不動産販売さんの企画・コンサルティング、やさしい手さん、医療連携する社団あすは会さんなどのサービス・ホスピタリティを結集したプロジェクト」と話した。

 また、東建不販・種橋牧夫社長は、「企業不動産(CRE)戦略として賃貸マンションなども検討したが、当社のサ高住と日比谷花壇さんの『ガーデン』を融合した提案を行なった。当社のサ高住としては4棟目の完成物件となるが、2016年までに11棟を予定している」と語った。

IMG_0951.JPG IMG_0953.JPG
宮島氏(左)と種橋氏

◇     ◆   ◇

 記者がこれまで取材してきたサ高住や民間の有料老人ホームは「自立」型のものが多かった。今回、日比谷花壇が「看取り」や「葬式」サービスを行い、医療連携する医療法人社団あすは会・髙本雄幸理事長が「医療難民をなくすためにも要介護度が高い方もどんどん受け入れていただきたい」と話したのにはやや驚いた。

 確かに「入院医療」から「在宅医療」「地域包括ケアシステム」へわが国の社会保障・医療制度が急展開すると聞いたのはもう20年以上も昔だ。特養は入りたくても入れず、病院は長期入院患者を受け入れなくなった。

 サ高住入居者の居住年数がどれくらいかよく分からないが、おそらく7~8年くらいだろう。東建不販が2009年に完成させた「グレイプス浅草」(98戸)ではこの5年間で30~40人が退去したという。退去理由は様々だろうが、死亡、長期入院、重度の要介護者がほとんどのはずだ。

 この傾向を今回の物件に当てはめ、「エンディング」サービスが行なわれると年間に数件にのぼる。住棟内で頻繁に「看取り」「葬式」が行なわれたら、入居者はどう感じるのか髙本氏に質問した。髙本は「見ず知らずの人なら違和感があるかもしれないが、人間関係が築かれ時間が経過すれば、居室内での『看取り』は自然な形になる。サ高住がパンク状態になっている病院に代わる第二のベッドの受け皿になる」と話した。

 特養との垣根も取り払われ、サ高住が終の棲家になるということか。

IMG_0959.JPG IMG_0955.JPG
1階の庭園(左)と屋上庭園

IMG_0963.JPG
ニッチの生け花

 先日、ポラス中央住宅が分譲する板橋区のマンションを見学したが、玄関ドアはリモコンで開閉できるようになっており、カギ穴なしが採用されていた。これまでもカギ穴なし玄関ドアは見たような気がするが、そこで今回は玄関ドアについて考えてみた。

 カギ穴なしの玄関ドアの是非はさておくとして、1964年完成の「川口アパートメント」(83戸)や1976年に建設された全892戸の「ニューステートマナー」、高級賃貸の「ホーマット」シリーズなどの玄関ドアは内開きだったように、現在はほとんど100%と言っていいくらい外開きになっていることの是非についてだ。

◇       ◆     ◇

 外開きか内開きかを考える前に、建築基準法など現行法ではどのような規定になっているか見てみた。

 建築基準法施行令第百二十五条2には「劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂又は集会場の客用に供する屋外への出口の戸は、内開きとしてはならない」とある。

 また、東京都の火災予防条例第五十四条三では、「避難口又は地上に通ずる主たる通路に設ける戸は、容易に開放できる外開き戸とし、開放した場合において、廊下、階段等の幅員を有効に保有できるものとすること。ただし、劇場等以外の令別表第一(マンションなどの共同住宅を含む)に掲げる防火対象物について支障がないと認められる場合においては、内開き戸以外の戸とすることができる」となっている。

 このほか、高齢者や身体障害者などが円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(ハートビル法)に関して東京都はQ&Aの形で「共同住宅の出入口は開閉動作の難易度からみると、引き戸が開き戸より簡単である。一般的に推奨される順位としては、1自動式引き戸、2手動式引き戸、3開き戸の順である」「共同住宅の住戸は利用居室に該当しないため利用円滑化経路に係る規定は適用されない」としている。

 つまり法律では、不特定多数の人が利用する施設は避難方向にドアが開くようにしなければならないよう定めているが、マンションなどの共同住宅の専有部への出入口となる玄関ドアについては規定がない。建築物の適合性を審査する建築主事や建築基準適合判定資格者の判断に委ねられているのが現状だ。

◇       ◆     ◇

 以上みたようにマンションの玄関ドアを外開きにしなければならない法律上の規制はない。ある自治体の担当者は「常識」といい、別の担当者は「外開きは避難時に有効で、防犯上は内開きがいい」と話した。

 つまり、劇場や映画館と同様、建築基準法施行令や火災予防条例などに準拠して施主や設計者が自主判断で外開きにしているのであって、管轄する行政担当者なども「常識」に従ってそう指導しているということになる。ホテルがほとんど内開きになっているのは、防犯・安全性を考慮したというより、欧米の様式をそのまま取り入れたのに過ぎないのではないかと思う。

 ここでは、ドアは引くより押すほうが力を入れなくて済む、内開きにすると外から雨やほこりが浸入しやすい・沓脱スペースが有効に使えない、外開きは通行・避難の邪魔になるなど巷間言われていることについては触れない。いちいちごもっともだし、どちらに軍配を上げるような問題でもない。

 最近のマンションの玄関にはアルコーブが付いているので、外廊下を歩いている人に怪我をさせるようなことはほとんどない。では内開きがどうかだが、ドアの機密性が高まっているので内開きでも雨水やほこりが室内に入ってくる心配もしなくていい。むしろ、戸建てなどは水害時にドアが開かないというニュースを見ると、内開きがいいともいえる。記者はもう20年以上も昔、千代田区の高級マンションで内開き玄関ドアが採用されていたのを見ている。

 そんな内か外かではなく、高齢者や身体障害者はもちろん大人も子どもも使い勝手がいい引き戸がいいのではないかということをいいたい。

 実際、積水ハウスは今年1月発売した自宅や賃貸住宅、店舗などの多様な用途に対応する4階建て複合型多目的マンション「BEREO PLUS(ベレオプラス)」に引き戸を提案することを盛り込んだ。記者はそのとき〝これは分譲マンションにも採用できる〟と考えた。

 ユニバーサルデザインの視点からも玄関ドアについて考えてみる価値はあるのではないか。引き戸にすればアルコーブ-玄関がパブリック、プライベートの中間的な空間として利用できるのではないか。横入りタイプにすれば玄関を開けたらリビングが丸見えということも防げる。「常識」を疑ってみることも必要だ。

 高齢者向けはともかく集合住宅向けの玄関引き戸はないのかと思ったが、そうではないようだ。三和シャッターが14年前から「BL玄関引き戸」を販売している。開き戸と比べて単価は高いようだが、最近は月間30枚くらい売れているそうだ。

過熱(加熱)に順応、冷え込みに強い「木造」証明

 積水ハウスは9月4日、2014年度第2四半期決算を発表。売上高9,101億円(前期比7.7%増)、営業利益717億円(同28.7%増)、経常利益752億円(同30.5%増)、純利益421億円(同23.9%増)となり、上半期過去最高の売上高となり、5期連続の増収増益。請負型、ストック型、開発型とも増収増益となり収益構造の安定化が業績を押し上げた。

 セグメント別では主力の戸建住宅は消費増税の反動減で影響は受けたものの1棟単価が上昇し、相続税対策などで大幅に伸びた賃貸住宅が戸建ての落ち込みをカバーした。また、リフォーム、不動産フィー事業も高水準で推移し、戸建て分譲やマンションは利益率が改善した。国際事業では政治・経済改革の影響を受けた中国は不振だったが、オーストラリア、シンガポール、アメリカはいずれも販売は好調に推移している。

 通期予想では売上高1兆8,200億円(前期比0.8%増)、営業利益1,420億円(同7.6%増)、経常利益1,490億円(同30.5%増)、純利益860億円(同7.8%像)を見込む。配当も期初予想通り50円(前期43円)に増配する予定。

 受注状況では、消費増税の反動減を受け、戸建住宅は期初予想の15.3%減を大幅に上回る33.3%減となり、他の事業でカバーしたものの全体で10.2%減となった。

◇       ◆     ◇

 記者は木造ファンだから書くのだが、同社の木造戸建てブランド「シャーウッド」が同社主力の「鉄骨戸建」を激しく追い上げ、消費増税の駆け込み反動減の厳しい環境下でも大健闘している。過熱(加熱)にも冷え込みにも「木造」は強いことを証明した。

 同社の当第2四半期の戸建請負事業の鉄骨戸建(以下「鉄」)売上げ戸数が4,941戸(前年同期比4.8%減)、売上高が1,502億円(同13.1%減)となっている。一方、木造のシャーウッド戸建(以下「木造」)は戸数が2,102戸(同1.8%増)、売上高が721億円(同1.2%増)となっている。

 また、分譲住宅事業の「鉄」の売上げ戸数が802戸(同8.7%減)、売上高が224億円(同9.2%減)となっている。これに対して「木造」は戸数が334戸(同5.9%減)、売上高が0.4%増)となっている。

 受注高も同様だ。「鉄の」戸建請負の第2四半期受注棟数は「鉄」が3,302戸(同40.7%減)で、「木造」は1,743戸(同29.8%減)、分譲の「鉄は」639戸(同29.9%減)で、「木造」は308戸(7.2%減)だ。

 絶対数が大きく異なるので単純比較はできないにしろ、木造が大健闘していると受け取れる。

 この傾向は今期だけではない。ここ数年来続いている。2011年度の戸建請負の「鉄」が10,905戸だったのに対し「木造」は3,807戸だった。2013年度は「鉄」は10,658戸(2011年比2.3%減)であるのに対し「木造」は4,392戸(同15.4%増)となっている。つまり「鉄」はやや頭打ちで、「木造」がものすごい勢いで「鉄」を追い上げている構図だ。このまま「鉄」が横ばいを続ければ、10年後には「木造」が逆転する可能性もある。

 この話をすると同社関係者は笑って取り合わない。営業マンの配置構成は「鉄」が7に対し「木造」は3だという。ならばこの比率を変えたらどうなるのか、あるいはまた鉄と木造の垣根を取っ払ったらどうなるか。これは興味深い。

 同社も営業マンも受注するのなら鉄だろうが木造だろうがどちらでもいいはずだ。決めるのはお客さんだ。これは言い過ぎかもしれないが、住むなら鉄より木がいいに決まっているではないか。国も木造の普及促進に必死だ。同社の鉄と木造の数値は今後も注視したい。

外観パース.jpg
「ルピアコート光が丘公園」完成予想図

 ポラスグループの中央住宅マインドスクェア事業部は9月4日、同社の分譲マンションの新ブランド〝LEPIA COURT(ルピアコート)〟の第一号物件「ルピアコート光が丘公園」の見学会を行った。光が丘公園に徒歩3分の立地で、価格は未定だが〝新価格〟になるのは間違いない。

 物件は、東武東上線成増駅から徒歩10分、東京メトロ有楽町線成増駅から徒歩8分、板橋区赤塚新町に位置する5階建て全50戸。専有面積は59.81~84.60㎡、価格は未定だが70㎡台で5,000万円を超える予定。完成予定は平成27年3月上旬。設計・監理はジェイ・ディ-・エス。施工は川村工営。販売代理は東京中央建物。10月中旬から販売開始する。

 「LEPIA COURT」とは、フランス語の定冠詞「Le」と「Utopia」(理想郷)を繋いだ造語で、「宮廷」を意味する「COURT」を合わせ「理想の空間」をコンセプトにしたもので、木の温かみを盛り込んでいる。

 商品企画は、50戸のうち54%にあたる27戸が角住戸タイプで、実用新案取得のピアキッチン、ライトコート付き、奥行き3mのテラス付き、新しい提案を盛り込んだ中和室付きなどが特徴。食器棚は標準装備、引き戸は開閉ともソフトクローズ機能付き。

 また、スマートキーシステムを採用し、カギ穴がない玄関ドア、不在でも玄関まで食品を届けるサービスも盛り込む。

 発表会で同社マインドスクェア事業部長・金児正治氏は、「従来のブランド〝ライフピア〟を残しながら、あるべき姿を提案するために新ブランドを立ち上げた。戸建て採用している木の素材を取り入れた。まだまだ足りない部分があるか今後進化させたい。3年後には現在30億円のマンション事業を100億円に、主力の戸建て事業を150億円にして合計250億円にしたい」などと意気込みを語った。

ピアキッチンプラン写真1.jpg
「ピアキッチン」

◇       ◆     ◇

 金児氏は冒頭、「挨拶は5分間の予定になっているが、それじゃ終わらない」と前置きし8分にわたってマンション、戸建て事業のほかジョイント・ベンチャー、リノベーション・リファイニング、再開発、建て替えなどについて語った。

 ここでは一つひとつについて触れないが、ポラスが本格的な戦いを挑むという意思表明と受け取ることができる。だからこそマンションブランドに定冠詞「Le」をつけたのだろう。ここ数年、同社がアピールしているピアキッチン。これに似たものは億ションのモデルルームで採用されていたようにスグレモノだ。モデルルームにはないが中和室の提案もなかなかいい。引き戸、鍵穴なしの玄関ドアもしかり。問題はこれらの商品企画をどうユーザーにアピールするかだ。

 「価格は未定」と担当者が強く言ったのでここでは書かない。2~3年前に成増駅前で分譲されたマンション坪単価より高いということにとどめておく。

 ポラスだから言うのだが、あえて注文もつけたい。気のぬくもりがコンセプトになっているはずだが、本物の木が採用されているのはピアキッチンのみだ。床のフローリングは無垢材と見まがうほどではあったが、シート張りだった。同社の戸建てでは無垢のフローリングは常識だ。それなのにマンションはどうしてそれをやらないのか。「傷がつかないから」というのは、本物が採用できないデベロッパーの言い訳だ。

 さらにもう一つ。これは他のデベロッパーも考えてほしい。モリモトのマンションについてだ。同社は8月8日付で「ディアナコート本郷弓町」(分譲40戸)が完売したとホームページで公開した。販売開始から2カ月くらいしかたっていないはずだ。

 詳細は別掲の記事を参照していただきたいが、徒歩4分で坪単価は410万円。4年前、野村不動産が東大赤門前で分譲したマンションの坪単価は360万円だった。

 分譲時期は異なるが、「プラウド」と互角以上の勝負をモリモトはやった。しかし、モリモトがここまで来るまでに20年かかっている。建築費を価格に転嫁しただけではユーザーを納得させることはできないということだ。

中和室プラン.jpg
「中和室」

あっぱれ!モリモト階数を2層分減らし天井高2.7m確保「本郷弓町」(2014/5/23)

 

 

 DSCF0168.JPG
国産の銘木

 日本木造住宅産業協会(会長:矢野龍住友林業会長、略称:木住協)の平成25年度の440社の会員による住宅着工戸数は97,479戸(前年度比107.5%)と5年連続して増加し、このうち木造戸建住宅は94,757戸で初めて9万戸を超え、国交省の新設木造戸建住宅着工に占める会員シェアは18.8%となった。9月3日行われた記者報告会&懇親会で発表した。

 このほか、平成25年省エネルギー基準適合住宅の戸数は5,348戸となり、次世代省エネルギー基準適合住宅と合わせ、会員の両省エネルギー基準の適合比率は74.5%で、前年比1.7%増加した。

 長期優良住宅戸建て着工戸数は31,390戸で、木住協戸建住宅に占める割合は33.1%となった。

◇       ◆     ◇

 木住協を取材するのは初めてだった。これまで縁がなかっただけで、会員会社が供給する分譲戸建ては結構取材してきている。

 さて、この木住協だが、木造建築工事業者だけでも約5万社もいるこの業界で会員が440社で、その会員の木造戸建住宅の着工戸数シェアが18.8%というのは高いのか低いのか。記者は判断材料を持たないが、会員の1社当たり着工戸数が約215戸で、省エネ基準適合住宅や長期優良住宅の着工比率などからすれば、わが国の木造軸組工法の普及・技術革新に貢献し、水準以上の〝良質住宅〟を供給している住宅メーカーの業界団体ということができる。

 記者は木造住宅のファンでもあるが、初めての取材で面白いことをいくつも発見した。以下に紹介する。

 ひとつは懇親会の乾杯について。同業の記者は40人くらいいたか。乾杯が始まるとき、甘い香りが漂った。スタッフが紙コップを配った。自分でビールを注げというのでもなかった。中に少量の水ではない日本酒が入っていた。

 これには驚いた。30数年間、業界の記者をしていて日本酒で乾杯する会合は初めてだった。いま日本酒で乾杯する行事は神事か鏡割り、正月のお屠蘇くらいだろう。

 挨拶に立った熊建夫・同協会専務理事は「木の文化は日本酒に通じる」と話した。なるほどと思った。いっぺんに熊氏が好きになった。熊氏は山口県出身だそうで、早速、記者と山口県の名酒「獺祭」の話になった。いつもは熊氏が手に入れた獺祭で乾杯するのだそうだが、最近は手に入らないので、この日は獺祭によく似た兵庫県の「龍力」が出された。誰も手を付けないから、記者は720mlの龍力をほとんど一人で飲んだ。熊氏は洒落者だ。龍力が獺祭に似ているのではなく、きっと矢野会長の「龍」にあやかったものだと思う。

 熊氏は絨毯敷きのマンションの床をフローリングにするかどうか奥さんと検討しているそうで、記者は熊氏を挑発した。「木住協の専務理事が輸入材では情けない。ここは絶対国産材」と。熊氏は「コストと相談する」と話した。さてどうなるか。

 もう一人は能勢秀樹・同協会運営委員長(住友林業顧問)の話だ。能勢氏は約5分間、住宅業界の近況を話したのだが、この間、「想像を超える苦戦」「こんなに悪いとは」「心配」「危惧している」「苦しい」「落ち込んでいる」「30代は住宅取得をあきらめざるを得なくなる」などと業界の置かれている状況を正直に話した。

 能勢氏は、他の木造住宅に関する会合などで何度も話を聴いているが、能勢氏に「マイナスのことばかりではなく、一つ前向きの話を聞きたい」と水を向けた。能勢氏は国産材の輸出の可能性を熱っぽく話した。暗い話はすっ飛び、話に花が咲いた。

 最近農産物の輸出の話はよく聞くが、国産材の輸出が有望な市場になるという能勢氏の考えは検討に値すると思う。木の話をさせたら能勢氏の右に出る人はいないのではないか。

 熊氏と能勢氏には「木造住宅の普及のため、厳しすぎる防火・耐火基準を緩和すべきだと思うが、私は〝それじゃ燃えていいのか〟という反論には黙らざるを得ない」とはなしたら、能勢氏は「確かに。木は火に弱いという刷り込みをなんとかしないといけない」と話した。

 ついでにもう一つ。会場となった木住協の会議室には225種くらいの世界の銘木見本が3つの額に収められ飾られていた。

 木住協の銘木見本は貰ったもののようで、かつて喫煙室にあったそうだ。タバコに燻されていい表情を出すのかもしれないが、木を大切にする木住協としてはいかがなものか。今はちゃんときれいに掃除して飾っているとのことだった。

 記者は戸建てやマンションの取材のとき、必ず使用されている床材や建具・家具の樹種を聞く。すぐに答えられる営業マンは少数だ。知らない記者も問題だか、どのような木が使われているか説明できない営業マンは失格だ。しっかり調べお客さんに説明すべきだろう。街路樹もそうだが、われわれは木について知らなさすぎる-ここに森林・林業の荒廃があり、鉄やらコンクリに押され気味の木造住宅の現状が象徴的に表れているような気がする。

DSCF0175.JPG
外国産の銘木

 

 学校法人高宮学園が経営する三大予備校の一つ、代々木ゼミナールが全国28校舎のうち本部校(新宿)など7校拠点に集約し、その他の校舎については平成27年度から募集を停止することが話題になっている。

 現段階では廃校になる校舎がどのようになるか代ゼミは公表していないが、校舎がほとんどすべて地方都市の一等地に立地することから、不動産業界が跡地利用に大きな関心を寄せている。

 記者は、学校法人のことや廃校となる校舎の敷地規模、権利関係はいっさい分からない(抵当権などはついていないと思われるが)ので適当なことは言えないが、学校法人のまま不動産事業を展開するにはハードルが高すぎるような気がする。

 代ゼミが「受験人口の減少や現役志向の高まりに伴う浪人生の減少」を理由に校舎の集約を行い、27年度以降も継続して募集すると発表したのは、本部校(新宿)、札幌校、新潟校、名古屋校、大阪南校、福岡校、および造形学校(渋谷区原宿)の7拠点。

 廃止するのは仙台校(仙台駅東口前)、高崎校(高崎駅東口前)、大宮校(大宮駅西口2分)、柏校(柏駅西口4分)、津田沼校(津田沼駅南口1分)、池袋校(池袋駅東口5分)、立川校(立川駅南口5分)、町田校(町田駅東口5分)、横浜校(横浜駅東口5分)、湘南キャンパス(大船駅5分)、浜松校(浜松駅1分)、京都校(京都駅中央口8分)、大阪校(江坂駅2分)、神戸校(三宮駅2分)、岡山校(岡山駅8分)、広島校(広島駅5分)、小倉校(小倉駅10分)、熊本校(熊本駅1分)など21校。

 各校の交通便を見ると、すべてが最寄駅から10分圏内というより、かつて丸井がCMでヒットしたのと同じ〝駅のそば〟だ。もっとも駅から遠い小倉校も川を挟んだ対面は北九州市役所。ここも市内の一等地であるのは間違いない。首都圏の池袋校、柏校、大宮校、津田沼校、町田校、横浜校などは仮に分譲マンションだったら坪単価は最低でも二百数十万円はするし、池袋校なら400万円を突破する。敷地規模がまったく分からないが、すべての校舎の資産価値は千億円単位だろう。

◇        ◆     ◇

 デベロッパーならずとものどから手が出るほど欲しい物件だが、処分するなり代ゼミが不動産業を営むのはかなり難しいハードルがある。

 学校法人は、その公共性・公益性を考慮して様々な税制上の優遇措置が講じられている。法人税・事業税は収益事業から生じた所得に対してのみ課税され、税率も軽減措置が取られている。国税の所得税などは非課税だし、校舎などの不動産については不動産取得税・固定資産税、都市計画税などが非課税となっている。

 収益事業とは日本標準産業分類に定められている18業種で、ほとんどの事業ができることになっている。禁止されるのは投機的事業、風俗業、規模が学校の状態に照らして不適当なもの、その他学校法人としてふさわしくない方法によって経営されるものなどだ。

 代ゼミが廃校する施設を売却するなり自らが事業を興す場合は、法律に基づき管轄する東京都の許認可が必要になる。

 これが難問だ。東京都は「現在、代ゼミさんからは何の相談もないのでコメントできませんが、学校経営より収益事業が大きくなる場合は難しいですし、売却する場合でもきちんと審査します」と話している。

 小泉内閣による一連の規制改革で、設立認可の弾力化によって学校法人を作りやすくし、株式会社による学校法人の経営参画をやりやすくする方針が打ち出された。 

 代ゼミの問題はその逆だ。「受験人口の減少や現役志向の高まりに伴う浪人生の減少」を理由に、いとも簡単に廃校-収益事業に転換できるとしたら「教育」を隠れ蓑に課税を逃れ、営利事業ができることにならないか。とはいえ、廃校となった一等地の不動産をどう活用するのかはしっかり論議すべきだ。

 

 

 

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン