「太陽熱戸別給湯システム」を採用した大京「ライオンズ練馬レジデンス」竣工
「ライオンズ練馬レジデンス」(写真提供は同業の岡本郁雄氏。ご本人は「クレジットはいらない」と仰ったが、これは礼儀。岡本氏は精力的にマンションの取材をされている方。以下同じ)
大京は3月11日、日本初の「太陽熱戸別給湯システム」を採用したマンション「ライオンズ練馬レジデンス」が竣工したのに伴い報道陣向けに内覧会を実施した。
「太陽熱戸別給湯システム」は、屋上で集熱された熱を利用して貯湯タンクの湯を沸かし、高効率の熱源機エコージョーズと組み合わせることでバスやキッチンなどに効率よく給湯するシステム。
太陽光パネルのエネルギー変換効率が10~20%であるのに対し、太陽熱のエネルギー変換効率は40~60%と高く、現地は周辺に高い建物が建つ可能性が低い第一種低層住居専用地域に立地し、最大限に屋上を利用できることから同社は採用に踏み切った。 「ソーラー追い炊き」と「風呂熱回収」が行えるシステムは今回が初めて。
システムの採用には1戸当たり約80万円のイニシャルコストが掛かっているが、このうち3分の2は経産省と東京都環境公社の補助事業で賄われている。入居者は3人家族で給湯使用量の約25%を太陽熱で賄うことができ、CO2削減量を約37%削減できるとしている。
マンションは西武池袋線練馬駅から徒歩11分の4階建て全61戸。坪単価は247万円。残りは2戸。
屋上の太陽熱集熱パネル(左)とバルコニーに設置されている貯湯ユニット(寸法は70㎝四方、高さは2mくらいか)
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なかなかいいマンションだ。「太陽光」か「太陽熱」か、記者もまだよく分からない部分もあるが、今回のシステムは触媒を屋上までポンプで揚げるのは12mが限度のようで、低層マンションにしか採用できないのがネックのようだ。
61戸の戸数の割には立派な水盤とミスト散布装置があり、同社独自のパッシブデザインも採用されている。この水盤・ミスト散布・パッシブデザインは大きな威力を発揮するのではないか。
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今回の「太陽熱戸別給湯システム」は「日本初」と同社は謳っているが、「日本初」は=「世界初」だそうだ。先日、記者発表会を行った東急不動産「ブランズ品川勝島」の「マンション戸別エネファーム」は「世界初」と謳っていた。
「日本初」と「世界初」は雲泥の差があるような気がするが、わが業界はこの種の「初」をここのところ連発している。「世界初」はさすがに「品川勝島」だけだが、「日本初」「業界初」「首都圏初」「○○区初」「○○エリア初」「○○駅圏初」などあげたらきりがない。しかも「初」を謳うのは設備機器だけでなく、規模や高さにも用いられるから「初」もの尽くしだ。
だれかが「2番じゃダメなんですか」としゃべり大ひんしゅくを買ったが、1番じゃなきゃダメな場合と2番でも3番でもいいのはケースバイケースだ。日本で2番目に高い「北岳」は記者も含めてほとんどの人は知らないだろうが、知らなくたって問題はないし、北岳に怒られることはない。
先の冬季オリンピックでわれわれは羽生結弦さんの金メダルに沸き返った。しかし、その一方で、メダルが取れなかった高梨沙羅さんや浅田真央さんにも拍手喝采したではないか。
「初」を謳うデベロッパーは根拠を示しているので問題はないのだが、いったいその「価値」はどの程度のものなのか「見せる化」を図らないと、みんな希薄化してしまうだろう。ユーザーはそんな「初」に惹かれてマンションを購入しているとは思えないし、そもそも不動産は〝唯一無二〟の特性を備えている。その土地の魅力を最大限に引き出すのがデベロッパーの役割だ。
1階の水盤(ミスト散布機能付き)
三井不動産リアルティ「三井のリハウス赤坂店」4 月1 日開設
三井不動産リアルティは3月11日、「三井のリハウス赤坂店」を4 月1 日(火)に開設すると発表した。
東京メトロ銀座線・丸ノ内線赤坂見附駅から徒歩1 分、青山通りに面した赤坂見附KITAYAMA ビルの9 階。周辺既存店舗の「麻布店」「青山店」との連携強化、周辺リアルプランセンターとの補完体制強化による相乗効果を高めるのが狙い。
野村不動産 成城・祖師谷で都市型戸建て27戸
「プラウドシーズン祖師谷 空の街」完成予想図
野村不動産が4月に分譲する都市型戸建て「プラウドシーズン祖師谷空の街・緑の街」を見学した。最寄駅の祖師ヶ谷大蔵駅や成城学園前駅にはややあるが、人気エリアだけに人気を集めそうだ。
物件は、小田急線祖師ヶ谷大蔵駅から徒歩13分、又は成城学園前駅から徒歩16分、世田谷区祖師谷4丁目に位置する17戸の「空の街」と10戸の「緑の街」からなる全27区画。先行する「緑の街」の土地面積は96.34~109.73㎡、建物面積は96.19~104.71㎡、価格は未定だが7,000万円台~9,000万円台の予定。構造は木造(2×4) 2階建て。設計・施工は西武建設。入居予定は2014年6月下旬・9月中旬。
舗道はインターロッキングとし、石貼りのコーナーウォールやアクセントウォール、ジャワ鉄平の石積み、チムニー(煙突)風デザイン装飾、水平ラインを強調したモールディングなどを施し重厚感を演出。エントランスなどにはロートアイアンを採用。住戸の設備・仕様も全体的に高い。
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都市型戸建ての分野で三井不動産レジデンシャルを急追している同社だが、現地担当者からは近く「井の頭公園」に隣接した「プラウドシーズン井の頭公園」(20戸)を分譲すると聞いた。地図で確認したら、「ジブリ美術館」にも近接しており、玉川上水にも一部接している。価格は1億円を突破しそうだ。
三菱地所レジ「ザ・パークハウス晴海」 モデルルーム分譲3戸に申し込み24件
「ザ・パークハウス晴海タワーズクロノレジデンス」
三菱地所レジデンスと鹿島建設は3月10日、「ザ・パークハウス晴海タワーズクロノレジデンス」で建物内モデルルームとして使用していた3戸が3月8日に抽選分譲した結果、最高倍率14倍、平均倍率8倍で即日完売したと発表した。3戸の価格は6,688万~7,998万円。専有面積は74.39~81.61㎡。
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モデルルームは先日行なわれた記者見学会でも公開された。抽選になるとは思ったが、3戸に対して申し込みが24件。2020年のオリンピック開催が決まったとはいえ、この倍率はすごい。同社は引き続いて分譲する隣接の「ティアロレジデンス」の単価については公表していないが、この調子だと坪300万円近くになるかもしれない。
記者は、このマンションが分譲する前は坪単価320万円とはじき出した。それぐらい価値のあるマンションだと当時は思った(戸数が多いので300万円前後だろうとは予想したが)し、先日、完成した建物を見学してその評価は間違っていないと思う。約50平方メートルある高級ホテル並み仕様のゲストルームの宿泊費(リネン代)が3,500円というのも破格の値段だ。
今回の即日完売にほくそ笑んでいるのは住友不動産かもしれない。「ドゥ・トゥール」は320万円くらいになるか。三菱地所レジデンスの隣接地でタワーマンションを分譲する三井不動産レジデンシャルはどういう戦略に出るか。豊洲の「ららポート」と結ぶ渡し舟は中央区や江東区、地域住民の後押しがあればひょっとしたら実現するか。都は反対する理由がない。
「エコボイド」「ソラテラス」が圧巻 三井不動産レジ「パークタワー東雲」完成
「パークタワー東雲」完成予想図
三井不動産レジデンシャルは3月7日、江東区東雲の大規模タワーマンション「パークタワー東雲」が竣工したのに伴い、報道陣向けに竣工見学会を行った。タワーマンションではほとんど前例がないと思われる躯体に「エコボイド」「ソラテラス」を設置し、上昇気流によって心地よい空気の流れを生み出す工夫を施した物件で、その良さを目の当たりにした。
詳細は、別掲の記事を参照していただきたいが、震災後の逆風をもろともせず早期完売したマンションだ。第1期の販売開始は2012年9月。それから第4期の2013年10月までわずか1年2か月で全585戸を完売した。価格は2,978万~6,960万円(最多価格帯4,500万円)、坪単価は224万円。
東雲エリアでは、第一弾の三菱地所レジデンス「Wコンフォート」が超割安単価だったことも手伝って記録的な売れ行きを見せたが、その他の物件は完成後も残っていたのではないか。近接するマンションなどは完成後1年以上経過しているが完売になっていない。「豊洲」より単価は安いが、生活利便施設やアクセスの差が売れ行きに出ている。
このマンションも、先行する野村不動産の後で、震災による逆風も吹き荒れていたときに分譲開始された。普通だったら苦戦はまぬかれないところだが、商品企画が図抜けていた。「エコボイド」「ソラテラス」は業界の常識を破るものだった。隣接する「キャナルコート」には山本理顕氏、隈研吾氏、伊東豊雄氏など錚々たるメンバーが企画に参画した「ボイド」付きの賃貸があるが、タワーマンションでは初の試みだろうと思う。
実際にこの「エコボイド」も「ソラテラス」も体験したが、キャッチボール、バスケットボール、駆けっこ、体操、ドッグレース(ラン)が建物内のオープンスペースでできるなんて信じられない。(管理規約でスポーツは禁止されるようだが)
免震工法を採用したのは最初からそのようにしていたもので、震災によって変更したのではない。長期優良住宅認定、都の「マンション環境性能評価」制度で満点の星15個も獲得しており、最高レベルのマンションを体験した。1階の茶室は、女性記者から「ここに和服を着て入る勇気がない」という声も聞かれた。なるほど衆人〝監視〟ではそうかもしれない。ただ、同社はなかなか考えている。ボイドに面した廊下手すりの高さは一般的な1110ミリではなく、1350ミリにして眺めるときの恐怖感を軽減しているという。つまり、上からは誰が茶室に入ったかは、背の高い人しか見えないということだ。
もう一つ、なるほどと思ったのはボイドに面した壁面はセラミックコーティングを施しており、反射によって下層階も明るくなる工夫を行っている。
茶室
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取材の帰り際に「シガーバー(喫煙所)」が1階エントランス部分にあることに気が付き利用した。大規模だから設置したのだろうが、喫煙者にはうれしいスペースだ。関係者にそのことを話したら、このシガーバーの設置を提案したのは、見学会で商品企画について説明した同社都市開発部開発室・永田愛理氏だった。
記者は女性だから男性だからと差別する気は全然ないが(知らず知らずのうちに色眼鏡で見ているのだろうが)、おそらく同社も男性優位の社会が形成されているはずだ。嫌煙ムードが蔓延・充満する中で、永田氏が堂々と提案できるのは、いかに顧客満足に応えるかを最優先しているからだろうと思った。本来、商品企画に女も男もない。家事労働について疎い男性に問題があるのだ。
永田氏としばし歓談して気分よく帰ったが、そのあとの積水ハウスの決算発表会で今年2月に設置されたばかりの「ダイバーシティ推進室」室長・伊藤みどり氏とも話ができた。とてもハイな気分になった。
ソラプラザヘルス(左)とソラプラザギャラリー
ソラプラザヒーリング(左)とソラプラザビュー
ブルースタジオ 木のぬくもりが伝わる「青豆ハウス」完成
「青豆ハウス」(手前は区民農園)
ブルースタジオが設計・監理を担当している賃貸住宅「青豆ハウス」を見学した。木造3階建てのトリブレット住宅で、入居者が共に育む住環境というコンセプトがヒットし、完成前に全8戸の入居者が決まった。
物件は、東京メトロ有楽町線平和台駅から徒歩10分、練馬区田柄1丁目に位置する木造3階建て全8戸。専用面積は57.60~63.36㎡。月額賃料は159,000円〜174,000円。設計・監理はブルースタジオ。ランドスケープデザインはチームネット・エーピーデザイン。施工はコラム。事業主はメゾン青樹。
特徴のひとつ、3層トリブレットは機能的ではないので、賃貸であろうと分譲であろうと記者は好きではないが、若い層には人気なのだろう。小さな一粒の豆が大地から芽を出し、空に向かってらせん状に成長していくイメージを具現化したようだ。完成前に全戸契約済みという。
もう一つの特徴は、国産材や自然石を多用した優しいデザインだ。庭にはピザ窯が設置される予定で、大谷石が敷き詰められていた。建物の外壁は下地に不燃処理を施したうえ、表面にレッドシダー(スギの一種)を貼っているのが印象的だ。外階段や共用部はヒノキの国産材間伐材を多用。室内の床もヒノキ材。キッチン天板などはラワン材。
階段室
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階段やエントランスなどの共用部にヒノキの節だらけの岡山産の間伐材が使用されていたのには驚いた。建物ばかりか参拝用の舗道にも節ひとつないヒノキ材を使用している伊勢神宮を見慣れている記者にとってはむしろ感動的だった。
室内の床はほとんど節目がないヒノキだった。幅が均一ではなかったような気がしたが、これもまたいい。ラワンを面材にしたキッチンもなかなかいい。昔のイメージと異なり、ラワンは高級材だそうだ。
このような造り手の思想が伝わってくる住宅を見るのはとても楽しい。このような賃貸をデザイナーズ賃貸と呼ぶのだろう。
2階部分
東急不動産 省CO2推進プロジェクト第一弾「ブランズシティ品川勝島」
「ブランズシティ品川勝島」完成予想図
東急不動産は3月7日、国土交通省「住宅・建築物省CO2先導事業」に採択された「東急グループで取り組む省CO2推進プロジェクト」第一号マンション「ブランズシティ品川勝島」のモデルルームを3月下旬にオープンすると発表した。同日、記者発表会を行った。
物件は、京浜急行本線鮫洲駅から徒歩11分、品川区勝島一丁目に位置する18階建て前356戸(分譲は335戸)。専有面積は71.01~90.23㎡、予定価格は4,400万円台~6,900万円台(最多価格帯5,200万円台)、坪単価は230万円。設計は日建ハウジングシステム。施工は大豊建設。竣工予定は2015年7月下旬。
世界初のマンション向けエネファームを導入するほか、エネルギー、モビリティ、勝島の森、パッシブデザイン、防災、コミュニティの6つを“シェア”することで、省エネ・省CO2の暮らしを実現する「BRANZ SHARE DESIGN」をコンセプトとして採用しているのが特徴。東京都の「マンション環境性能評価」では満点の星15個に1つ欠ける14個を獲得している。
発表会に臨んだ同社広報・CSR推進部長・熊沢基好氏は、「昨年からリブランディングに取り組んでおり、当社のマンションブランド〝ブランズ〟の認知度は高まってきた。今回の物件は、住環境を創造し、トータルで生活をシェアする提案を盛り込んだフラッグシップ物件として位置づけている。CSR活動としても先進的な取り組みができた」と挨拶した。
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単価については、先ごろ行なわれた同社ループの記者懇親会で、担当役員の大滝岩男常務に「230万円ぐらいでしょ」と話したら常務は「いい線だね」と答えた。東京競馬場へは歩いて行ける。競馬場は嫌悪施設では全然ない。厩舎の匂いは風向きもあるだろうが、ここまでくれば匂わないのではないか。
省CO2の取り組みでは、居住者の使用エネルギーやライフスタイルなどの情報を東急住生活研究所と東京都市大学が産学共同で分析・検証し、今後の商品企画などに生かしていく。また、省CO2行動を促進するため東急ストアの買い物優待を行なうほか、国が運営する排出権取引スキーム「J-クレジット」に登録・売却することで年間100万円の収入を見込む。
シェアガーデン
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意欲的な取り組みは理解できるが、記者は「世界初のマンション向けエネファームを全戸に導入」と前面に謳っているのはいかがなものかと正直思う。
今回のエネファームは東京ガスとパナソニックが共同開発したものだが、他のガス会社やメーカーも戸建て向けに取り組んでいる。「世界初」というのはあくまでも「マンション向け」であり、総合地所も同じタイプのものを採用するので。正確には「同時世界初」ではないか。また、この種の機器は日進月歩のはずで、同業他社がもっと優れたものを開発すれば「世界初」の価値は薄れていく。1基200万円とコストもかかるし、約2㎡のスペースを小さくするのも課題だ。
「世界初」を強調すればするほど、他の取り組みの良さ、訴求力が薄れてくるような気がしてならない。
エネファーム
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もう一つ。細かなことだが、モデルルーム提案について。いまマンション業界は、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、住友不動産、野村不動産の4強がトップ争いを演じている。
記者は判官贔屓だから、この4強のうちどこが抜け出すか脱落するかを注目している。各社とも必至だろう。競えあえばあうほど商品企画はよくなるだろうから、ユーザーにとっては歓迎すべきことだ。一方で、2番手グループの同社や東京建物、大京、新日鉄興和不動産、NTT都市開発などには頑張ってほしい。戸数では勝てなくていい。供給量など何の価値もない。それよりも商品企画であり、それぞれ特徴を打ち出すべきだ。
なぜ、今回のモデルルームの提案を持ち出したかというと、造花の壁掛けが設置されていたのだが、どうして本物の観葉植物にしなかったかだ。同社はどこよりも早く壁面緑化提案(本郷、川口など)を行なっている。同社の本社の玄関や受付などには同社とグループ会社の石勝エクステリアが共同開発した素晴らしい壁面緑化のアートが掲げられている。前日(6日)の三井不動産レジデンシャルの「武蔵小杉」の各エレベータホールには「ミドリエ」が掛かっていた。ユーザーはこうした何でもないようなことに感動するのだ。
さらに言えば環境・ユニバーサルデザインの取り組みだ。記者は、同社こそがもっとも早く環境共生やユニバーサルデザインに取り組んできたデベロッパーだと思う。パッシブの取り組みでも他を圧していた。熊沢氏も言った。「当社にはそのDNAが受け継がれている」と。「世界初のエネファーム」より、こちらのほうがはるかに価値がある。ランドスケープデザインは石勝ではないのか。リリースには載っていないが、建物の設計は日建ハウジングシステムだ。
販売事務所に設けられたシェアガーデン(本物の草木は無理だろうが、もっと工夫できたはず)
三井不動産レジデンシャル 「パークシティ武蔵小杉」3棟目が完成
「パークシティ武蔵小杉ザ グランドウイングタワー」
三井不動産レジデンシャルは3月6日、東急東横線・目黒線「武蔵小杉」駅前の商住一体開発のマンション「パークシティ武蔵小杉ザ グランドウイングタワー」(506戸)が竣工したのに伴い記者見学会を行なった。
このマンションの特徴は、第一に「武蔵野の森の再生」をテーマに、完成済みの2つのタワーマンションとデザインを統一。既存樹を残したり新たに植樹するなどして緑のネットワークを整備した。第二は、駅前の広場と商業施設の一体開発により、屋根付きの専用デッキで駅と直結したこと。商業施設には「ららテラス武蔵小杉」が近くオープンする。第三は、東日本大震災の教訓から、2013年度グッドデザイン賞を受賞した防災プログラムを盛り込んでいること。
見学会に臨んだ同社横浜支店副支店長・各務徹氏は、「3つの特徴のうち防災にはもっとも力を入れた。このエリアには5,000戸を超えるマンションが完成したが、人気エリアの象徴的な存在のマンション」と自負した。
マンションは506戸が販売開始の2012年4月から20133月までの1年間に完売。価格は3,300万円~1億280万円(専有面積39.77~112.46㎡)、坪単価291万円。
左から2008年竣工の「ステーションフォレストタワー」(643戸、単価238万円)、2009年竣工の「ミッドスカイタワー」(794戸、単価260万円)、2014年竣工の「ザ グランドウイングタワー」(506戸、単価291万円)
左は2層吹き抜けのエントランスホール(壁は堀木エリ子氏の手すき和紙アート)、右は5階スカイゲートブリッジ
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このマンションについては2度見学会が行われており、その都度記事にしているが、完成した物件を見学して改めてレベルの高いマンションであることを認識した。防災システムはとくに素晴らしかった。防災システムの構築に参画したNPO法人プラス・アーツ理事長・永田宏和が「画期的」と話したように、今後のタワーマンションのモデルになるのではないか。
非常時には72時間使用可能の非常用発電機を設置しているほか、1世帯当たり1,000リットルの水を確保。各フロアには防災備蓄倉庫や災害時非常水栓も設置している。トイレ対策としては約3日間、自宅のトイレで使用できる汚水槽を備えている。
記者が注目したのはトイレ対策だ。震災時にはトイレが使用できないのは深刻な問題になるのは新浦安で経験した。男性は庭先や空き地に用を足すこともできるが、若い女性などはなかなかできないそうで、寒くて暗い中、液状化でガタガタになっている道を10分以上も駅まで歩いたという話を何人にも聞いた。
このマンションには、水の要らない「ラップポン」が各フロアに設置されている。ボタンを押すと排泄物がビニール袋に完全に密封されるもので、そのままゴミとして捨てられ、匂いがしないという。値段は約10万円。管理組合に備蓄するのに最適だと思った。
このほか、光井純氏の計算し尽くされた3つの棟のデザイン・ティアラにはただたが感心した。光井氏は少なくとも10年前には現在のデザインが描かれていたのだろう。
われわれ記者(記者だけかもしれないが)は坪単価でしかマンションの価値を計れない習性が見に染み付いている。このようなタワーマンションや大規模マンションの価値は、また別の評価方法を考えないといけない。共用施設や環境・省エネ・防災システム、コミュニティづくりなどを定量的に計算できないものだろうか。記者は分譲開始時に「ホテルなら5つ星」と見出しをつけたが、これは間違っていなかった。
屋上スカイデッキ(左)と各階 床下防災倉庫
水の要らない簡易トイレ「ラップポン」
各エレベータホールの壁に設置されている壁面緑化 サントリー「ミドリエ」(ここまでやるのはおそらく業界初)
積水ハウス〝快晴〟の好決算 2つの嬉しい話題提供
阿部社長
積水ハウスは3月7日、2013年度決算説明会・2014年度経営計画説明会を行なった。2013年度の売上高は18,051億円(前期比11.9%増)、営業利益は1,319億円(同53.1%増)、経常利益は1,377億円(同50.2%増)、当期純利益は798億円(同71.8%増)と、過去最高売上げ・利益を更新した。
説明会に臨んだ阿部俊則社長は、好業績について「グリーンファーストの拡販、施工力の強化によるコア事業の請負が堅調に推移し、安定的な収益源のストック型も積みあがり、利益率の改善が見られた開発型の3つのビジネスモデルの多角化が進んだ結果。2014年度も収益率をさらに高める」と話した。
懸念される建築費の上昇、職人不足については平準化・機械化を進めると語った。
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すごい数字だ。天気に例えれば一点の曇りのない快晴だろうか。デベロッパーの売り上げと比較すると三井不動産と東急不動産ホールディングスを合せたような数字だ。
ただ、決算数字は遅行指標だ。現場を見ていると、同社が過去最高の売上高、利益を計上したのは当然の結果のように思う。5本の樹計画による植栽・環境への取り組み、ユニバーサルデザイン、キッズデザインなどの人に優しい取り組みなどは突出している。テーマ、コンセプトが明確であることが消費者に評価された当然の帰結だ。
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記者が嬉しかったのは、この2月に「経営企画部ダイバーシティ推進室」を同社が設置し、その室長に就任した伊藤みどりさんが説明会に出席されたことだ。
伊藤氏は、「女性の活躍推進については2006年から取り組んでおり、社外に訴求する取り組みが弱かったかもしれないが、営業の現場のほか、ユニバーサルデザイン、キッズデザイン、技術部門などで女性の登用は進んでいる(女性管理職はグループ全体で65人。女性比率で1.5%。これを2020年までに5%、その後10%にする目標)」と語った。
阿部社長も「女性の登用はもちろん、身体障害者、高齢者雇用なども積極的に進めていく。ダイバーシティの考えは必要」と後押しした。
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説明会ではもう一つ嬉しいニュースがもたらされた。東急不動産グループの石勝エクステリアの元社長で、東京都市大学教授・涌井史郎氏が4月1日付で同社の取締役に就任することだ。記者は20数年前、涌井氏から「樹の名前と、虫の名前と鳥の名前を覚えると、1歩歩くごとに人生3倍楽しくなる」-つまり自然と親しむことの大事さ、虫の視点、鳥の視点でものを見る目を養うことを教わった。涌井氏の取締役就任で環境対策やランドスケープデザインに磨きがかかるのは間違いない。
三菱地所グループ 食の東北復興支援オリジナル缶詰販売
「はらくっつい東北」お披露目会(丸ビルで)
三菱地所グループは3月6日、食の復興支援活動「Rebirth東北フードプロジェクト」第6弾のオリジナル缶詰「はらくっつい東北」2品が完成し、同日から販売すると、丸ビルで行なわれたお披露目会で発表した。
販売開始された缶詰は「とろとろさんまとフカヒレと大島ゆずの味噌煮(気仙沼)」と「山椒香る金華さばとムール貝とたっぷり野菜のお椀(石巻)」の2品。宮城県の方言で「お腹いっぱい」を意味する「はらくっつい東北」シリーズとして販売する。
商品化にあたっては、丸の内エリアに店舗を構えるレストランのシェフなどが食に関する提案・発信を行なうプロジェクト「丸の内シェフズクラブ」のメンバー、丸ビル「ミクニマルノウチ」のオーナー・三國清三氏や新丸ビル「恵比寿笹岡」の笹岡隆次氏も企画段階から参画。地元シェフや加工会社などと開発した。
値段は各450円(税抜き)。丸ビルに出展する店でも販売するほか、三菱地所が運営するオフィスビル入居企業に防災備蓄品として紹介したり、三菱地所レジデンスが分譲するマンションの居住者用サイトで販売したりする。
「Rebirth東北フードプロジェクト」
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この日、丸ビル1階で行なわれた「丸の内東北応援フェアオープニング」には主催者として三菱地所・杉山博孝社長と河北新報社・一力雅彦社長が挨拶。
杉山氏は「当社は仙台でも事業を行なっており、何とかお手伝いできないかと丸の内で食育に取り組んでいることから食に注目し、3年前からスタートさせた。年を経るごとに3.11が忘れられることのないように思いを新たにしていただければ幸い」と語った。一力氏は、「被災地ではまだ26万人を越える人が仮設住宅住まいを余儀なくされている。東北は震災の風化と原発による風評被害という二つの風に悩まされている。このフェアが少しでもこの風を払拭できればと願っている」と話した。
杉山氏(左)と一力氏
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酒もそうだが、毎日のようにトマトを食べている記者はフェアでトマトを買って食べた。甘くてとてもおいしかった。あまりにもおいしかったので、次の取材先の主催者や記者の方におすそ分けした。
フェアは3月16日まで丸ビル1階「マルキューブ」で行なわれる。オリジナル缶詰が販売されるほか、丸の内シェフズクラブの6人のシェフが考案したおひたしのセットメニュー販売や地酒が販売される。
フェア会場