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 法廷では「どのような答えが返ってくるか分からない質問はしてはならない」というのは弁護士の鉄則だそうだが、われわれ記者も同様だ。懇親会や記者発表会ではいつもそれを心がけている。

 その意味で、記者は昨年も今年も掟破りの質問を敢えて行なった。住宅金融支援機構が11月29日行った恒例のプレスセミナー・懇親会の場で、リスク管理債権について質問したことだ。当然のことながら昨年は明快な答えが返ってこなかった。そのような質問が飛ぶことなど機構は予測していなかったはずだ。それでも質問したのは、機構もそうだが同業の記者にもこの問題について考えて欲しかったからだ。機構に対する質問というより、同業の記者に向けて発した質問だった。

 今回も同じ質問をした。質問は概ね次の通り。「私は、住宅ローン債権は優良債権だと思うし、それを前提としてお聞きしたい。リスク管理債権のうち、既往債券は償還が増え、不良債権が沈殿し濃縮されていくのでのリスク債権比率が高まっていくのは理解できるが、額としては2兆円もあるのは由々しき問題。買取債権のリスク債権比率は金額的には1,000億円しかないが、今後どんどん積みあがっていく。機構は健全なリスク債権比率をどの程度に設定しているのか」

 質問の背景にあるのは、ローン審査の選別融資(厳格化)の問題だ。審査を厳しくすれば不良債権は減るだろうが、その一方で中・低所得者のマイホームの夢がしぼむ。いわば両刃の剣だ。記者は旧公庫から機構に移行してから、審査の厳格化が進み、時計の針でいえば右から左へと振り切った状態にあると考えており、振り戻し、つまり中・低所得者のマイホームの夢をしぼませてはならないという考えがあるからだ。

 今年も機構側からたいした答えは返ってこないだろうと思いつつ、あるいはしっかりした答えが返ってくるのではという期待もあった。融資のプロが同じ轍を踏むとは思えなかったからだ。

 答えは期待以上だった。同機構経営企画部長・池谷(いけのや)文雄氏は、質疑応答の大半の時間を割いて次のように説明した。平成24年度末のリスク管理債権比率は7.47%で、金額は約2兆円。このうち半分は(債務者の再建、支援を目的とした金利の減免、利息の支払猶予など)支払い条件の緩和を行なったもので、この方たちの約7割は7年後には正常に戻っている。既往債権の回収は順調に進んでおり、買取債権のリスク管理債権は、まだ始まったばかりで、7年後当たりに増えだし10年後から安定した数値で推移するというものだ。

 民間のリスク管理債権比率については、都銀が1.9%、地銀が2.94%、第2地銀が3.81%、信金などが4.87%で、機構の7.47%は決して低くないことを明らかにした。池谷氏は「システマティックな融資を行なってきた旧公庫の反省を踏まえ、『貸さない親切』をわれわれは学んだ。以前と比べ確かに厳格化は進んでいる」と話した。

◇     ◆   ◇

 記者は、支払い条件緩和者の7割が正常に戻ると聞いたのがうれしかった。機構は以前のように(貸した金を返せというような)督促状を何度も送りつけるようなことはしないで、今年度からは(デフォルト化しない事前相談の)「ご案内」の送付、カウンセリングなどキメ細かな対応を行なっているそうだ。

 池谷氏は、民事再生法の住宅ローン特約を利用することも勧めた。住宅ローン特約とは一定の要件を満たせば、競売にかけられずに返済期間を延長してもらえるものだ。

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 機構のリスク管理債権が約2兆円もあることは重大な問題だ。人数にしたら数万人に上るはずだ。何とか救済する方法はないものかと頭をひねるが、妙案はない。バブルが崩壊してほぼ一貫して資産デフレが続いているのがこうした悲惨な事態を招いている最大の要因だ。

 しかし、記者は「買う勇気」をとくに一次取得者には持って欲しいと思う。賃貸住宅は基本性能、居住性能も分譲より比べようもないほど劣っているし、ばかばかしい「賃貸か分譲か」などのマスコミの記事など読まないでいただきたい。「賃貸か分譲か」の選択肢があるのは富裕層だけだ。しっかり生活設計、資金計画を練ってチャレンジして欲しい。

 マンション管理組合には、大規模修繕や建物の耐震化の工事を無担保で融資する「マンション共用部分リフォーム融資」を積極的に利用して欲しい。建て替えは一部の条件のいいものを除き絶望的だと思う。

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 平成24年度決算では2,000億円余の当期総利益を計上し、2期連続で黒字となったことなどから、宍戸信哉理事長の機嫌がすこぶるよかった。東南アジアからわが国の住宅金融システムについての問い合わせが殺到していることも明かした。そのうちにシステム丸ごと輸出できるのではないか。

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「ライオンズ港北ニュータウンローレルコート」

 大京(事業比率70%)と近鉄不動産(同30%)は11月27日、横浜市都筑区のマンション「ライオンズ港北ニュータウンローレルコート」の記者発表会を行い、12月中旬に分譲開始すると発表した。「スマートマンション導入加速化推進事業」4つ星を獲得した物件で、徹底した環境共生の取り組みがされている物件だ。

 物件は、横浜市営地下鉄グリーンライン北山田駅から徒歩12 分、または同ブルーライン・グリーンラインセンター北駅から徒歩17 分、横浜市都筑区北山田5 丁目に位置する7階建て全221戸の規模。専有面積は67.02~108.54㎡、予定価格は70㎡台で3,900万円台~、坪単価は201万円。1期分譲は72戸を予定。竣工予定は2015 年8 月24 日。基本設計はIAO竹田設計。設計・監理・施工は三井住友建設。販売は大京。

 開発開始から約40年が経過した港北ニュータウン内で、残りは2区画しかない住宅用地の一つという希少性の高い大規模物件で、約8,600㎡の敷地にパッシブデザインとスマートシステムを融合した環境共生住宅であるのが最大の特徴。

 創エネ・畜エネ・省エネを組み合わせてマンションの維持・管理費の削減を実現したほか、自然の力で快適な室内環境を生み出した。経済産業省の「スマートマンション導入加速化推進事業」で4つ星を獲得した。持続可能な生態系を保つため入居3年間はランドスケープ設計会社が樹木剪定やビオトープの管理を提案し、入居者の「体感し、学び、育む」をサポートしていく。

 住戸プランでは、妻側住戸の窓を淡い色つきガラスにしているのが特徴で、外観にアクセントを与えている。

 発表会に臨んだ同社首都圏第二支店長・立石恭司氏は、「住宅用地としてニュータウン内に残り2区画しかないという希少立地にふさわしいグリーン・マトリックス・システム、せせらぎ計画など新しい取り組みを盛り込んだ」と話した。

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 環境共生住宅はこれまでも大京が積極的に取り組んできたテーマだが、今回の物件は最高レベルの取り組みだと思う。まず、せせらぎとビオトープ。深さ約90mの井戸を掘り、井戸水を散水に使用するほか全長約60mのせせらぎ・ビオトープに利用する。井戸水は飲めるほどの水質のいいもので、非常時には防災井戸として近隣にも利用できるようにする。

 せせらぎ・ビオトープの取り組みとしては、もう20年も前に埼玉県住宅供給公社が分譲した「大宮」のマンションがもっともすぐれていると思う。全長は数十メートルあり、カモがたくさん飛来していた。ここは水田や畑もあり、入居者がみんなで収穫もしていた。(企画意図が購入者に全然伝えられなかったため、大量の売れ残りを出すなど事業しては大失敗だったが)

 今回の両社の取り組みは「大宮」には劣るかもしれないが、ビオトープの面積は約100㎡というから相当なものだ。

 このせせらぎ計画の「水」ほか、ソーラーパネルと蓄電池の「光」の利用、敷地全体を緑でつなぐ「緑」の活用、パッシブデザインを取り込む「風」によって、維持管理コスト「ゼロ」を目指す。年間約180万円の維持・管理費を削減する。

 パッシブデザインでは、これまでの換気機能付き玄関ドアのほか、室内扉の換気ルーバーを新たに採用する。換気口も高機能のものにする。

 今回採用するパッシブデザインは、省エネ等級4・エコガラスを採用し、換気機能付き玄関ドア、通気ルーバー付扉、大型給気口、グリーンカーテンを採用していない一般的なマンションと比較して夏場の換気量は約4倍、室温は最大で4.9℃も差が出.るデータも得ている。

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 持続可能な生態系配慮型植栽管理も注目できる。生態系を保存するため、コンペ形式により植栽管理会社を選定。さらにランドスケーププラス社が竣工後3年間、植栽やビオトープの維持・管理をサポートしていく。これらを通じて、居住者のコミュニティ形成をサポートする。

 先の「大宮」のマンションでは、せっかく立派な環境共生マンションにしたにもかかわらず失敗したのは、入居者や管理業者に丸投げしたためだ。3年間管理サポートすれば、入居者が自発的に取り組むようになるのではないか。

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 「CASBEE」についてもひとこと。これまでも何度も書いてきたが、独自のマンション環境性能評価制度を採用している東京都はともかく、神奈川も埼玉も千葉県もどうも制度はつくっていても魂が入っていない。杓子定規に物事を計るから国の「長期優良住宅」認定を得ながら「CASBEE」ではSランクが取得できない事態が続出している。「CASBEE横浜」ではSランクは数えるほどだし「CASBEE神奈川」も1つあるぐらいだ。

 自治体が独自の基準を設けるのはいいことではあるが、レベルの高いマンションも並みの「A」(Aは低いわけではないが、決して高いものばかりでもない。はかりの目が粗すぎるのだ)と一緒ではデベロッパーが泣く。

 大京は「S」ランク取得を目指したそうだが、「バリアーフリーの対策よりも、仕上げ材(タイル、床仕上げ、手すりなど)に『再生材』を用いることというのが大きな壁となった。再生材はお金をかけて設置することは可能だが、耐用年数が短く取り換えスパンが短いため、結果的に長期修繕の費用が増え、お客様の負担になってしまうため今回は断念した」(広報)とのことだ。

 読者の皆さんは、この理由をどう読むか。コストをかけて「S」を取得するか(これもユーザー負担だが)、コストを削減して並みの評価で我慢するか。点数偏重の弊害がここにもある。 

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ビオトープ

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グランプリ作品 「入学の日(hanaさん)」
 

  野村不動産アーバンネットは11月28日、同社の不動産情報サイト「ノムコム」で募集していた「家族の幸せな時間」フォトコンテストの入賞作品を発表した。

 グランプリは「入学の日(hanaさん)」。

 キャンペーンは「ノムコム」の公式Facebookページ 「おうちに帰ろ」(http://www.facebook.com/ouchinikaero)の 「いいね!」数3万人突破を記念して行われたもの。9月26日~10月31日のキャンペーン期間中、全国から765作品が寄せられた。入賞作品は14作品。「家族の幸せな時間」フォトコンテストサイト: http://www.nomu.com/ouchi/enjoy/photo/で公開されている。

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パーティ ルーム銘板

 このほど竣工したNTT都市開発の高額マンション「ウェリス有栖川」を見学した。2カ月前に見学した同社の「ウェリス代官山猿楽町」(44戸)も素晴らしかったが、「有栖川」も甲乙つけがたい本物の億ションだ。

 物件は、東京メトロ日比谷線広尾駅から徒歩4 分、港区南麻布五丁目の第1 種中高層住居専用地域に位置する5階建て全57戸。専有面積は56.18~247.41㎡、価格は7,180万~59,900万円、坪単価は585万円。建物は2013 年11 月に竣工済み。販売代理は三菱地所レジデンス。設計・施工は清水建設。現在までに52戸が販売済みだ。

 特徴は、①中層でありながら免震構造を採用②敷地外周に赤外線センサーや防犯カメラを配備したセキュリティ③ワンフロアを3つのコアに分節し、3基のエレベーターを設置④共用部に左官職人・挾土秀平氏のアートや希少な天然石のエントランスドア、3層吹き抜けのラウンジに設置された約9メートルの水景壁を配置⑤本物志向のワインセラーを設けたパーティールーム⑤シンプルな住戸デザイン・カラーリング-など。

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完成予想図

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 恐るべしNTT都市開発。前回の「代官山」でも書いたが、まさか同社がこんな素晴らしい億ションを供給できるなんて全然思っていなかった。NTTファシリィーズが設計・監修し、鹿島が施工した「代官山」もいいが、今回の「有栖川」もまたいい。億ションは1戸44億円(1棟ではない。念のため)の「ドムス」をはじめたくさん見てきたが、この「有栖川」は富裕層の〝心〟をくすぐる好物件だ。

 外観はいかにも高額マンションらしい雰囲気をかもし出しているが、この物件の特徴はディティールの細やかさだ。例えばパーティールーム。床は挽板材。ワインセラーは18区画あり、18本入るという。月額賃料は3,000円。一般サラリーマンにとっては3,000円は2~3本の値段だろうが、富裕層にとっては1杯分の価格かもしれない。ヴィンテージものを見せびらかして飲む富裕層が目に見えるようではないか。酒を介してサロンになるはずだ。かつての億ションにはこういう発想はなかった。

 共用部分のイタリアだかインドだか、見たこともないような自然石がまたいい。自然光が降り注ぐラウンジに設けられた挾土氏の作品や水景壁に囲まれたラウンジの照明やソファはアルマーニ。エレベータホールには鮮やかな赤と黒の漆塗りのアート。ダストルーム(ゴミ出し室)のドアの把手はデザイン処理されたもの…etc。

 モデルルームはいたってシンプル。しかし、ドア把手、巾木、塗装や布クロス、4ミリ厚の挽板材フローリング、4.5センチ厚のドア、ドア枠、ドイツのドンブラハ社製の水栓、アンモナイトの化石がちりばめられた天然石などは成金には理解されないかもしれないが、本物志向の富裕層の満足度を高めるのは間違いない。

 最近の話題の億ションでは三菱地所レジデンスの「千鳥が淵」があるが、これは皇居が見下ろせる別格の物件。これを除けば同社の「代官山」「有栖川」、積水ハウスの「白金台」が現段階で今年のベスト3億ションだ。三井不動産レジデンシャルは「パークマンション」を今年は1棟も供給していないはずだ。「代官山」も残り1戸というから驚きだ。

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高さ9mの水景壁(左)とパーティルーム(左奥がワインセラー)

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左からダストステーション、エレベータホールの案内板、リビングドア(アルミの鍛鉄製)

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建物外観

本物の億ションを見た NTT都市開発「ウェリス代官山猿楽町」(2013/9/20)

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完成した建物

 三井ホームは11月28日(木)、都内初のツーバイフォー(2×4)工法による木造耐火建築5階建て店舗併用住宅が銀座2丁目で完成したのに伴い、完成現場見学会をおこなった。国交省の「平成24年度木造建築技術先導事業」に採択されたプロジェクトでもある。

 建物は、中央区銀座2丁目に位置するツーバイフォー工法(枠組壁工法)5階建て(1階はRC)耐火建築物。敷地面積は59.69㎡、延床面積は212.05㎡、最高高さは18m。総工費は約1億2,000万円、本体工事費は約8,700万円。補助金額は約2,000万円。

 都心の繁華街のRC造7階建てのビルをRC造1階+木造2~5階に建て替えるもので、建築に当たっては①社独自の中層建築に特化した改良型建て起こし工法を採用②パネル工法を併用して工期を短縮③耐力壁の高強度化のために独自のダイダウンシステムを導入④I型複合梁による耐火構造床を採用⑤湿式外壁による耐火外壁ダブルファイヤーブロック(DFB)ウォールを採用-したのが特徴。

 建物を受注した同社東京東支店支店長・五井尚人氏は、「当初は鉄骨造の8階建てが計画されていたが、エレベータを設置しなければならないこと、柱型が出るため有効面積が確保できないことなどから計画がとん挫していた。当社の技術で階数を5階建てに下げても、昇降機を設置し、居住性能が確保でき、さらに工期の短縮、工事費の圧縮が図れたので実現した。オーナーの方は開業医で、木造にも興味をもたれ、環境や人にやさしい点なども評価された。オーナーの方によるとRC造と比較して2~3割安いとのことだった」と話した。

 建物は1階が喫茶店「グラムール」で、2~3階が賃貸住居、4~5階はオーナーが利用する。

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正面外観

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 素晴らしいプロジェクトだ。敷地がわずか約60㎡、延床面積が約212㎡という狭小敷地の建築物だが、木造耐火の建築物を広げる意味で意義は大きい。

 見学会では専門的な言葉がたくさんでてきたので説明が難しいが、簡単に言えば、RCでは足場の確保やエレベータの設置義務などにより、狭小敷地では建設が難しいのを、現場で床を組み立て、壁を作り内側からジャッキで建てて上方に組み立てていく作業としては簡単な工法を同社が開発して実現したものだ。

 記者は、森林・林業の再生という視点からも極めて意義のあるプロジェクトだと思っている。外観も内装も鉄筋やコンクリート住宅とそれほど変わらないのは残念だが、構造材と4階と5階の縦枠に北海道産のカラマツが使用されている。

 この種の見学会では必ずRC造とのコストの比較になるが、記者はもちろんこれも大事だが、人にやさしい、環境にやさしい木造の良さを金額に換算したら比較ならないほど木造のほうが優れていると考える。ハウスメーカーは、経済合理性だけでなく木の持つ社会的有用性を粘り強くアピールすることが求められる。コスト論争に巻き込まれない強い心を持ってほしい。

 国もまた木材の利用率を高めるため思い切った規制緩和を進めるべきだ。わが国の気候風土にもっとも適しているのは木と紙と土の住宅ではないのか。日本の美しい文化と技術を伝承しているわが故郷の伊勢神宮を見習ってほしい。専門家でも理解できない複雑な耐火・準防火の基準緩和は待ったなしだ。

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室内(左)と昇降機     

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 1階の喫茶店も紹介しておく。なかなかおしゃれな店だ。写真のように無垢材、突板、銅版などが多用され、コーヒーカップはマイセン、ヘレンド。ゆったりくつろげる空間がコンセプトだ。松屋、三越、歌舞伎座の帰りに立ち寄る人にお勧めだ。近くには馬券売り場もあるが、馬券を買う人はタバコが吸えないのでどうか。味は保障するが…。

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喫茶店「グラムール」

公共建築物の木造化 24年度は100戸のマンション1棟分(2013/11/9)

「木づかい」を国民運動にするシンポジウム(2013/10/8)

鹿島建設・住友林業 スギ耐火集成材を初採用「oto no ha Cafe」(2013/5/15)

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「北品川五丁目第一地区」の街並み

 三井不動産レジデンシャル(事業比率45%、以下、他社は非公表)、日本土地建物販売、大成建設、大和ハウス工業、新日鉄興和不動産は11月26日、品川区の大規模開発「パークシティ大崎ザタワー」(総戸数734戸)の第1期分譲288戸を12月1日に抽選分譲すると発表した。

 物件は、JR大崎駅から徒歩6分、品川区北品川5丁目、全体約3.6haの「北品川五丁目第一地区」再開発事業区域の一角に位置する40階建て全734戸(うち一般分譲566戸)の規模。専有面積は43.89~116.89㎡、1期の価格は4,580万~1億8,500万円(最多価格帯9,000万円台、平均8,042万円)、坪単価368万円。設計・監理は日本設計。施工は西松建設。デザイン監修は光井純&アソシエーツ建築設計事務所。竣工予定は平成27年5月下旬。

 主な特徴は、①平成25年の地価公示で都内の住宅地地価上昇率1位の「北品川5丁目」に立地②30年に及ぶ市街地再開発「GARDEN CITYS構想」の集大成③山手線内初の「パークシティ」④オーガニックシティとして7つのガーデンを配置し、緑化率30%以上を実現⑤おしゃれな街の理想的な子育てを実現するため各界のスペシャリスト(桐島かれん氏、滝沢眞規子氏、青山有紀氏、西畠清順氏、石戸奈々子氏)の提案を採用-など。

 発表会で三井不動産レジデンシャル開発事業本部都市開発第一部長・山田貴夫氏は「全体約60haの再開発事業のなかで、今回は最大規模となる3.6haの住・商・業一体の複合開発でこの街の集大成のプロジェクト。11月から始めたモデルルームには1,700組の来場があり、分譲566戸の半分以上の288戸を供給するが、登録即日完売の勢いにある」と自信を見せた。

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コミュニティガーデン             ウェルカムスクエア

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 坪単価について。業界の一部から400万円を超えるのではないかという声も聞かれたが、それはないとみていた。街の将来性を加味すればあるいは400万円もあるかもしれないが、そんな高値追求はしないという確信があった。

 368万円というのは極めてリーズナブルな価格だと思う。発表会で三井不動産レジデンシャル都市開発一部営業室主査・大栗裕樹氏も「お客さんからは街の将来性、希少性が評価された。単価は決して安くはないが適正な価格と考えている」と話した。

 今回も、街並みはデザインガイドラインに沿って整備されており、今回も長さ約250m幅約16mの道路・歩道空間が整備される。沿道には街路樹のシラカシが2段植栽され、その他の樹木が混植される。

 共用施設はもちろんだが「街づくり」を評価すべきマンションだ。難点と言えば敷地と道路を挟んだ南側に31階建ての業務棟が建設されるので、その日影の影響を受ける住戸があることだ。

 大崎のマンションでいえば、2001年竣工の「オーバルコート大崎」が印象に残っている。どちらかと言えば住宅や工場、倉庫などが混在し、色でいえば〝グ レー〟の街を、光井氏が得意とする温かみのあるアースカラーの外観デザインで一変させた。当時の坪単価は320万円だった。よくぞここまで街のポテンシャルを上げたものだ。

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カスケードホール                キッズガーデン

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 各界スペシャリストの提案を盛り込んだ70㎡のモデルルームはよく分からなかった。リビングの隣の6畳大をスライドドア付きのオープンな子ども部屋にし、ダイニングに大きなボードを設けたものだが、リビングの隣に子ども部屋を設ける発想が理解できない。その一方で、主寝室は6.3畳大しかなかった。

 他の2つのモデルルームはよくできていた。住戸プランはワイドスパンが中心で、3~4畳大のDENの提案、5畳大のキッチン、1620の浴室などがいい。設備仕様は天然石、フィオレストーン、標準仕様のバックカウンター付きなどが特徴。

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70㎡のモデルルーム キッチン ダイニング      70㎡のモデルルーム子ども部屋

  野村不動産アーバンネットは11月25日、同社の仲介店舗「国立センター」を12月2日(月)に開設すると発表した。

 「国立センター」は、JR中央線国立駅北口から徒歩1分、駅前ロータリーに面したマンションの1階(クレッセント国立・ディアナプレイス1階、電話:042-580-1581、FAX:042-580-1582)に出店。今年度の新規出店は「国立センター」で5店目となり、仲介店舗数は首都圏50店舗・関西圏3店舗の合計53店舗となる。

 同社は、昨年発表した中長期経営計画に基づき営業店舗と人員を向こう10年で倍増する計画。10月には新ブランド「野村の仲介+(プラス)」を立ち上げた。

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 正確には分からないが、三井不動産リアルティが平成22年度に全国で15店舗(うち首都圏9店舗)を出店したのが近年では最多ではないか。野村不動産アーバンネットの出店ラッシュも注目される。

 

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左から中村氏、田中氏

 積水ハウスが11月21日、一般財団法人国際ユニヴァーサルデザイン協議会(IAUD)が主催する「IAUDアウォード2013」の未来世代部門で金賞を受賞した。大賞を受賞したのは本田技術研究所。

 同社が金賞を受賞したのは、2011年から取り組んでいる「ドクターユニバーサルデザイン授業プログラム」。「座学」と「実習」を2時間のパッケージとして小学校へスタッフらが出張して授業を行うもので、座学ではUDを知ると優しくなる、社会に役立つことなどを教え、実習では学内の様々な施設で実証するもの。全体を通じ「知性」「感性」「社会性」「(健康な)身体」を身につけてもらう取り組み。豊中市の小学校で一昨年と昨年の2年間で4回実施した。

 表彰式に参加した同社総合住宅研究所部長・中村孝之氏は、「UDの取り組みはまだユニバーサルデザインの言葉が世の中に知られていないときから行ってきた。最近はUDで通用するようになってきた」と喜びを語った。また、同研究所技術研究室課長・田中眞二氏は「今後は健康、空気環境など研究テーマを広げ、メニューをそろえていく」と話した。

 受章者のIAUDは、ユニヴァーサルデザインの普及と実現を目指す団体で、2003年11月に設立。設立時に総裁を務められた故・寬仁親王は「100%の障害者はいない。100%の健常者もいない。人間は皆、身体(又は精神)のどこかに障害部分を持っており、なおかつ健常なる部分をも合わせ持っている。ユニヴァーサルデザインとは、誰でもが豊かで快適な生活を送るためのものである」(同協議会ホームページ)と述べられている。

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 記者は20年以上前からユニバーサルデザインを取材してきた。中村氏が語ったように、読者にユニバーサルデザインを伝えるのに難儀した。デベロッパーが取り組みだしたのはこの20年だ。ニチモが企業スローガンに掲げたときはうれしかった。その後、扶桑レクセルが積極的にマンションに採用した。社内で認定制度を設け、設備仕様も一新した。

しかし、最近はほとんどのデベロッパーがパンフレットなどでユニバーサルデザインを謳うようになってはきたが、設備仕様面ではむしろ後退している。

どこよりも早くこの問題に取り組んできた積水ハウスの受賞は当然だ。メーターモジュールの廊下・階段などの採用はどこよりも早かった。他のハウスメーカーやデベロッパーももっと真剣に取り組んでほしい。このままではいつまでたっても差は縮まらない。

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 住宅関連では、積水ホームテクノの「ユニットバス」が医療福祉部門で金賞を受賞した。浴槽の位置が変えられ、介護者の負担も軽減できるものだ。浴室の寸法が2m×2.5mとややスペースを取るのが難点と言えば難点だと思った。

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約200人が参加した会場

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「ドゥ・トゥールキャナル&スパ」(写真左端は竣工済みの賃貸マンション)

価格は公表されずオリンピック効果をどうみるか

 住友不動産は11月21日、来年1月に分譲する中央区晴海の大規模ツインタワーマンション「ドゥ・トゥールキャナル&スパ」の記者発表・モデルルーム見学会を行った。数年前から計画されていた案件で、東日本大震災で計画見直しを行い、2020年の東京オリンピック開催決定を受けて分譲するもの。「災い転じて福をなす」の典型的な物件だ。

 物件は、都営大江戸線勝どき駅から徒歩9分、中央区晴海三丁目に位置する52階建て2棟の全1,450戸とSOHO216区画の規模。住戸の専有面積は44.67~123.77㎡、SOHOは32.34~57.05㎡。価格は未定だが、第1期は上層階を中心に分譲する予定で、価格は6,000万円台~7,000万円台が予定されている。竣工予定は平成27年9月下旬。設計・施工は三井住友建設。

 最大の特徴は、2020年開催の東京オリンピック選手村に近接していること。この価値をどう見るかだ。建物は免震構造を採用、ガラスを多用したファサードで、運河沿いという立地を生かし水辺を含む空地、スカイデッキを整備。幅15mもの巨大な浴槽を備えた広さ約200㎡の「サウナ付き大型スパ」、広さ約150㎡の「ビューラウンジ&バー」などの共用施設を整備する。

 また、逆梁工法を採用して室内の梁型が出にくくするとともに、足元の床近くまで視界がすっきりする新ダイナミックパノラマウインドウ」を採用する。同社としては初の「長期優良住宅認定」を受けており、「カスタムオーダーマンション」対応ともする。

 会見に臨んだ同社執行役員住宅分譲住宅事業本部副本部長・青木斗益氏は「現行消費税率の適用期限の9月を過ぎてもその反動はない。今後も売れ行きは好調に推移する。今回のマンションは当社のタワーマンションの集大成と位置付けているもので、エリアを代表するランドマークにする」と語った。

 「ドゥ・トゥール」は、コーヒーのブランドではなく、フランス語から取った「ツインタワー」という意味だ。

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 最大の関心事はいったい価格(坪単価)がいくらになるかだが、発表会ではいっさい公表されなかった。記者も質問したが、「ご想像にお任せする」としか返ってこなかった。

 そこで記者の予想。同じ晴海エリアの三菱地所レジデンスのツインタワーも坪単価にして320万円の価値があると読んでいたが、オリンピック開催が決まり、今回のマンションも320万円以下はないと読んだ。東京のど真ん中の中央区アドレスで、江東区の豊洲、川崎市の武蔵小杉に負けるようでは情けないし、新宿区の「富久町」と同等の価値があるとみている。ひょっとすると坪330万円もあるかもしれない。郊外部のマンションは価格上昇してほしくないが、都心部のマンションは大手が競い合って高値追求しても問題ない。

 ただ、価格上昇を押しとどめる要因がないわけではない。同じ勝どき駅圏には鹿島建設などの大規模マンションがほぼ同時期に分譲されるし、同じ晴海エリアで三井不動産レジデンシャルが大規模マンションを計画している。

 オリンピックまであと7年もある。それまで分譲しないのなら坪単価は400万円近くになるのではと考えるが、同社は「約2年で完売したい」意向だから、「ワールドシティ タワーズ」で行ったようなオークションも行わないようだ。

 物件の設備仕様そのものもオリンピック特需を見込んだ富裕層向けのものではなく、同社のこれまでのタワーマンションの延長線上にあるものだ。鹿島のマンションがいくらになるかも値付けを難しくしている。

 SOHOはちょっと読めない。少なくともオリンピックが終わるまでは相場の2倍ぐらいの賃料設定でも申し込みが殺到するのではないか。所有権にしても面白い。

◇       ◆     ◇

 同業の記者からはオリンピック選手村について質問が飛んだが、青木氏は「非常の魅力的な開発。当社も手を挙げる」と話した。

 現段階では、選手村は17,000人収容の規模しか公表されていないので何戸建設されるかわからないが、5,000~6,000戸に収まるものとみられる。住戸面積もそれほど大きいものはつくらないだろうし、閉幕後は賃貸利用が過半を占め、分譲も定期借地権付きになるような気がする。交通アクセスが悪いのがネックだ。場所にもよるが歩けば駅まで20分はかかる。

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2階デッキ

 

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受賞の喜びを語る杉山社長

 公益社団法人企業メセナ協議会が11月21日、「メセナアワード2013 贈呈式」を行い、三菱地所が「特別賞文化庁長官賞」を受賞した。同協議会は、企業による芸術・文化振興による社会創造(メセナ)活動への参加を促す目的で1990年に発足。全国各地の優れたメセナ活動を行っている企業や企業財団などを表彰してきた。今回23回目を迎えた「メセナアワード2013」では全国から107件の応募があり、メセナ大賞1件、メセナ各賞5件、文化庁長官賞1件が受賞した。

 特別賞の文化庁長官賞を受賞した三菱地所は、障害のある子供たちの絵画コンクール「キラキラっとアートコンクール」を毎年主催していることに対して受賞したもの。

 贈呈式に出席した同社・杉山博孝社長は、「賞は、ご協力いただいている社会福祉法人の東京コロニー様などを代表して頂戴したのだと思っております。障害のある子どもたちがプロとしての作家活動ができるように今後も支援していきたい」と受賞の喜びを語った。同コンクールは2002年から実施しているもので、今年は2050作品の応募があった。

 メセナ大賞にはNPO全日本製造業コマ大戦協会が、メセナ各賞には岩波不動産、損保ジャパン/損保ジャパン美術財団、トヨタ自動車、SCSK、村上町屋商人会がそれぞれ選ばれた。

◇   ◆   ◇

 記者はこの日、別の取材があり、弊社の若い女性2人に杉山社長のコメントをテープに収め、写真を撮り、記事も試しに書くよう指示した。2人はこれまで取材などまったく行なったことなどない入社1~2年生だ。2人が書いた記事は主体と客体、主語と述語の関係がはっきりせず、誤字・脱字もあり、そのままでは記事にはならないものだった。

 しかし、文末に書かれた「子供たちの話をするとき、無意識なのだろう、顔を緩める杉山社長が印象的に写ったスピーチだった」という文章に目が吸い寄せられた。

 「写った」のはご愛嬌。やはりここは「映った」の誤植。それでも「無意識に」顔を緩める杉山社長の表情や、2人の若い女性の視線がストレートに伝わってくるではないか。

 記者はこうであらねばならないと思う。コピー&ペーストで記事はいくらでも書ける。しかし、そんな記事は何の値打ちもない。知ったかぶりなどもってのほかだ。見る目を養わなければならないのはいうまでもないことだが、記者自身が感じたこと、見たことをストレートに伝えるから読者の心を捉えるのだ。

 「キラキラっとアートコンクール」は記者も一度取材している。そのときも、杉山社長は自分の孫に対するかのように話したのを覚えている。杉山社長のやさしい一面を見ることは、本業の取材でも生きてくる。作品は丸ビルに展示される。ぜひ見学を勧めたい。

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贈呈式

 

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