桜上水団地の建て替え 野村不動産・三井不動産レジデンシャル「桜上水ガーデンズ」
「桜上水ガーデンズ」鳥瞰図
分譲坪単価は「月島」や「富久町」と同じ330万円 調布より高い?
野村不動産と三井不動産レジデンシャルは9月10日、旧住宅公団「桜上水団地」の建て替えマンション「桜上水ガーデンズ」の記者発表会を行なった。1964年の東京オリンピックの翌年に竣工した17棟404戸を9棟878戸に建て替えるもので、全棟免震構造を採用、約4.7haの広大な敷地を生かした住棟配置が特徴。
物件は、京王線桜上水駅から徒歩3分、世田谷区桜上水四丁目に位置する6~14階建て全878戸(非分譲364戸含む)。専有面積は58.48 ~ 111.84㎡、価格は未定だが、坪単価は330万円前後になる模様。入居予定は平成27年8月下旬。設計・監理は日建ハウジングシステム。施工は大林組・清水建設。
敷地が位置する地域の建ぺい率は60%、容積率は200%で、地区計画によって高さ制限が45mに定められていることもあって、建物の建ぺい率は約41%、容積率は約161%に抑えられている。広大な敷地を生かして既存樹約180本を残し、新たに約360本の高木を配し、緑を再生した。全住戸の54%に相当する476台の駐車場は全て建物内と敷地内の地下に配し、人工地盤上の緑化も図っている。
住戸プランは3戸から5戸に1基の割合でエレベータを設置し、両面バルコニータイプを多く取り込んだ。天井高は約2.6m。2.2mのハイサッシも採用している。
モデルルームは今週末からオープンし、11月に第1期(マックスで278戸)を分譲する。資料請求は約5,000件で、京王線沿線だけでなく山手線内の居住者の問い合わせも多いという。
従前団地は、平成元年に建て替えを目指す「考える会」が発足。バブル崩壊を経て同18年に建て替え決議を行なったが、全体の5分の4の同意は取りつけたものの、棟別の3分の2以上の同意が得られず成立しなかった。結局、同21年の3度目の集会でようやく建て替え決議が成立した。両社は同14年から事業協力者として参画していた。
発表会に臨んだ野村不動産 執行役員 開発企画部住宅事業本部 プロジェクト開発グループ担当の松崎雅嗣氏は「これまで大変な苦労があった。法を整備して建て替えの迅速化を図るべき」と語り、同部マンション建替推進部長の森重克人氏も「全員合意を前提とする一団地認定の廃止に4年も要した。13人17件を裁判に持ち込まざるをえなかった」と、建て替えを迅速に進める法の整備を訴えた。
エントランスゲート
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もっとも注目したのが坪単価だった。関係者から単価は300万円をはるかに越えるということは聞いていたが、京王沿線に三十数年住む記者にとっては「これは高い」というう印象を受けた。同沿線でもっとも街のポテンシャルが高いのは調布、府中、聖蹟桜ヶ丘で、街の機能が揃っているのは多摩センターだ。住むにはいい街では千歳烏山、仙川、若葉台あたりか。明大前は便利だが、富裕層・アッパーミドルが住む街ではない。
桜上水もいい街ではあるが、商業施設など生活利便施設が乏しいのが最大の難点だ。坪330万円というのは「富久町」や「月島」と同じ単価だ。「武蔵小杉」よりも「晴海」よりもはるかに高い。同じ京王線では三井不動産レジデンシャルの「浜田山」が坪単価400万円だったが、こちらはいかにも富裕層向けのマンションだ。近く調布駅前で分譲される再開発マンションはひょっとすると300万円を切るかもしれない。
この単価設定について「高くないか」と質問した。同社広報部長の北井大介氏は「マンションの価値は単価だけではない。二度と出ない立地で、免震や緑化も図った。最上級のマンションで、価格は妥当と考える。お客さまにも評価されるはず」と答えた。確かに。北井氏が話したように、高いか安いかはお客さんが評価することだ。
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話題を提供しよう。このマンションの設備仕様は野村不動産の「プラウド」でも三井不動産レジデンシャルの「パークホームズ」でもない。事業比率は公表されていないが50:50のはずだ。まさか「アトラス ブランズタワー三河島」のよう「プラウド桜上水パークホームズ」などの名称は付けられないだろうが、双方のブランド名がないのも「おやっ」と思った。これは組合の意向だろう。
さらにもう一つ。この前の「富久町」では「第九」がBGMに使用されていたが、今回はバッハの有名な「G線上のアリア」のバイオリン独奏音楽が流れた。
記者は来年、野村不動産が仙川で分譲する駅7分の275戸のマンションに注目している。単価にして「桜上水」より50万円は安いはずだ。こちらは何とか京王線のサラリーマンにも手が届くか。「桜上水」と「仙川」は競合するのかしないのか。
中庭
東京建物「Brillia Tower池袋」はなぜ売れたか
「アベノミクス・豊島区ナンバー一」に反応した富裕層・アッパーミドル
当欄でも紹介したが、東京建物・首都圏不燃建築公社「Brillia Tower池袋」全322戸がわずか7週間で完売した。7,000万円超の住戸が80%以上で、2億円台の住戸2戸も8倍と6倍の競争倍率をつけ、現金での購入も4割あったというから驚きだ。平均の競争倍率が2.7倍というのは、倍率優遇があったバブル期なら10数倍になる。
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実はこのマンションについては、人気になりそうな7月あたりから「なぜ、なぜ、なぜ」という疑問が澱・トゲのように心にわだかまっていた。記者発表時のときに予想した「坪単価330万円」をはるかに上回る「340~350万円になりそうで、それでも売れる」という情報を関係者から聞いたからだ。最多価格帯にすれば500万円の差だ。単価予想には絶対的な自信があっただけに、それが覆されることにショックを受けた。
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この疑問が、6日に行われた「契約者来場イベント」の取材でいくらか解けた。単価予想を外した理由、どうして人気になったかの要因が分かったからだ。
まず単価から。記者は「区庁舎との一体開発」「隈研吾氏のデザイン監修」「駅直結」「堅固な建物」などは評価しつつも、「池袋駅圏」をマイナス評価した。アッパーミドル・富裕層が住む街ではないと判断したからだ。
ところが、購入者の判断は異なっていた。確かに池袋駅圏のマンションではあるが、繁華街の池袋ではなく、文京区に近い豊島区のナンバー一のマンションであるとユーザーは判断したようだ。確かに、これまで池袋駅周辺を含め豊島区ではアッパーミドル・富裕層の心を動かすマンションはあまり供給されてこなかった。地元から離れたくない方が港区や渋谷区、湾岸の高額マンションに興味を示さないというのもよく分かる。
その典型的な例の方から話を聞くことができた。石神井公園の一戸建てに住む購入者の一人、元会社経営者のAさん(84)だ。
Aさんは「自宅の手入れは2人では手に負えなくなってきた。もう終活の一つですよ。息子と一緒に二つ買ったから2億円。ローン? 私にはローンを借りる資格はない。自宅の売却?将来的にはあるかもしれないが、今回の購入には関係ないし、消費増税も関係ない。分相応の税金を払うのは当然の義務」と話した。
また、他のマンションのとの比較については、「利便性が一番。それに眺望。近くには眺望のいいマンションはない。隈研吾さん? もちろん世界的な建築家というのは知っていますよ。それも選択枝の一つ」と語った。
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Aさんが語ったように、富裕層にとっては坪単価の20万円の差はたいしたことがないということだ。しかし、このところの都心・準都心部のマンション単価は続々記者の予想を超えてきている。記者はアッパーミドルの購入限界能力は坪単価にして250万円、グロスにして6,000万円と見ていたが、アベノミクス効果は50~100万円ぐらい引き上げたとみる。最近人気のマンションは軒並みこの単価に属する。
月島の「キャピタルゲート」も新宿御苑の「富久町」も330万円だし、桜上水の建て替えも330万円ぐらいになる模様だ。新豊洲の「スカイズ」の260万円というのも、納得はするが記者の相場観からすればやや高い。
アベノミクスにもっとも敏感に反応したのは富裕層・アッパーミドルで、いまのマンションブームを支えているのもこの層だ。「池袋」は「豊島区ナンバー一」との相乗効果が驚異的な売れ行きとなった理由だ。さっき書いた「晴海」も間違いなく坪300万円が相場になる。
【お断り】「Brillia Tower池袋」の単価については、当初は坪330万円と書き、先日の記事でも「340万円でないか」と書いたが、実際は350万円でした。訂正します。
東京建物「Brillia Tower池袋」わずか7週間で全322戸が完売
オリンピック招致決定 三菱地所レジデンス「晴海」に予約殺到
2020東京オリンピック招致決定で三菱地所がコメント
三菱地所は9月9日、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定したことについて杉山博孝社長名でコメントを発表。
杉山社長は、「開催をきっかけとして、東京が世界から注目され、世界中から多くの来日者を迎えることが期待できる。日本や東京の素晴らしさを世界中の人々に知って頂く機会になると期待したい」「不動産業界にとっては、アジアの諸都市との国際都市間競争が激しくなる中で、東京のより一層の国際化を促進する契機となることを期待する」などとし、同社としても「国際競争力を向上させることを期待してサービスアパートメントや高級日本旅館などの導入を決めているが、今後もハード・ソフト両面において街のグローバル化を進めていく必要があり、オリンピックの東京開催をきっかけとして弾みをつけていきたい」としている。
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記者は開催都市が決まる2日前に、選手村が建設される「中央区晴海」がどのような街になるかの近未来像を記事にした。
招致が決定し、早くも予想通りの展開になってきた。晴海で分譲中の三菱地所レジデンスのマンション「ザ・パークハウス晴海タワー」への予約・来場が8日の早朝から殺到。通常の2倍に上ったことから、スタッフが対応できなくなり予約なしで見学できる措置をとったという。
同社広報によると「様子見をしていた人が、改めて来場されて購入を決断された方もかなりいらっしゃる」とのことだった。
当然のことながらオリンピック関連株も軒並み上昇。不動産株では「晴海」でSOHOを含むタワーマンション1450戸を予定している住友不動産は前場で一時約8%の400円高の値をつけた。
東京オリンピック招致が決定すれば晴海の街はどうなる(2013/9/6)
「質が量を呼ぶ」 積水ハウス阿部社長が業績アップを評す
質が量を呼ぶ-積水ハウスは9月6日、2014年1月期第2四半期決算説明会を開き、阿部俊則社長は主力の戸建住宅をはじめほとんどの事業が好調に推移し、通期でも売上高・利益とも過去最高を予想したことについて「かねて質が量を呼ぶと言ってきたことが現実となっている」と評し、さらに量的拡大を目指す姿勢を見せた。消費増税の影響については「限定的」と語り、それほど業績に影響を受けないとした。
上期の売上高は8,452億円(前年同期比11.5%増)、営業利益は556億円(同67.4%増)、経常利益は576億円(同68.2%増)、純利益は340億円(同99.4%増)となった。
セグメント別では、売上高は戸建住宅事業が254億円(前年同期比11.4%増)、賃貸住宅事業が227億円(同16.3%増)、分譲住宅事業が113億円(同19.4%増)、マンション事業が100億円(同49.6%増)、不動産フィー事業が80億円(同4.1%増)、リフォーム事業が70億円(同12.8%増)それぞれ伸ばした。その要因として外部要因としてアベノミクス効果による円安・株高・企業業績の回復や相続税改正の動き、金利先高感、消費増税の動きなどをあげた。
通期予想も期初予想の1兆7,400億円から12.5%増の1兆8,150億円に上方修正し、配当金も1株36円から43円に増配する。2014年度も売上高は1兆9,000億円に伸ばし、ROE10%(2013年度は9.1%)を達成する見通し。
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「量から質へ」ではなく「質が量を呼ぶ」というのは言い得て妙だ。記者の取材フィールドは主に分譲だが、確かに同社のマンションや戸建て分譲住宅は他社との差別化が徹底しており、質的にもワンランク高い。環境問題にいち早く取り組み、外構・植栽計画やメーターモジュールの積極採用、ソフトクローズ引き戸などユニバーサルデザインの取り組みでも抜きん出ている。
こうしたワンランク上の事業展開が、アベノミクスに敏感に反応した富裕層・アッパーミドルのニーズにマッチし、今回の大幅な業績アップにつながっているとみた。戸数だけではなく1棟当たりの単価が戸建住宅で3,369万円(2010年度比7.0%増)、賃貸住宅で5,944万円(同11.6%増)と高まっているのも、付加価値の高い住宅が評価されているのだろう。
オリンピック開催地 決定まであと2日
東京の招致が決まれば選手村が予定されている晴海はどうなるか
2020年のオリンピック開催都市がいよいよ8日の未明に決まる。外電によれば東京が有利とも伝えられているが、汚染水問題も浮上している。どうなるかは神のみぞ知るだ。前回も失敗しているだけに何とか招致が決まって欲しいと願うばかりだ。ここでは招致が決まれば選手村が建設され、多くの競技が行なわれる湾岸エリアの中心地、晴海のマンション開発の近未来像を描いてみた。
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まず、晴海一丁目。ここにはすっかり街が熟成した「トリトンスクエア」がある。敷地面積は約60ha。就業人口約2万人、住宅戸数約2,000戸の商住一体型の複合都市だ。街開きからすでに12年が経過する。オリンピック招致が決まれば、商業施設が大賑わいになるのは間違いない。
晴海2丁目では、三菱地所レジデンスと鹿島建設が49階建てのツインタワーマンション「ザ・パークハウス晴海タワーズ クロノレジデンス」(883戸)と「ザ・パークハウス晴海タワーズ ティアロレジデンス」(861戸)を分譲中だ。
「クロノ」は今年11月、「ディアロ」は2016年4月にそれぞれ完成する予定だ。分譲坪単価は275万円と見られる。中央区アドレスで現時点で最高レベルのマンションでありながら、豊洲や武蔵小杉の単価より安いのは、最寄り駅の勝どき駅から徒歩11分とややあることや、通勤時の混雑もユーザーの決断を鈍らせている要因だ。しかし、招致が決まれば豊洲や武蔵小杉に割り負けするはずはなく、申し込みが殺到する事態になるかもしれない。
三菱地所レジ1,744戸に続き三井不レジは約2,000戸予定
招致でもっとも恩恵を受けるのが三井不動産レジデンシャルかもしれない。同社は昨年11月、約8,800㎡の都有地を約90億円で取得しているが、数年前に隣接地を太平洋セメントから約10,000㎡の土地を取得済みで、合わせて2,000戸ぐらいの規模のマンションになるはずだ。取得額からして原価はかなり安い。招致が決まれば「市場価格」で分譲するはずだ。
この三菱地所と三井不動産の物件の隣接地には約18,000㎡の太平洋セメントの生コン工場があるが、工場は来年末で稼動を停止することが決まっている。その後の土地利用については現段階では決まっていない。招致が決まれば複合開発となる模様だ。
住友不動産は3丁目でSOHO付き1,450戸分譲
晴海3丁目で52階建てツインタワーマンション「DEUX TOURS CANAL&SPA (ドゥ・トゥール)」1450戸を分譲するのが住友不動産だ。詳細は未定だが、分譲開始予定は来年1月。専有面積は44.67~123.77㎡。このほかSOHO216区画(32.34~57.05㎡)を分譲するのも特徴の一つだ。このエリアでSOHO需要があるのかという声も聞かれるが、招致が決まれば国際的に注目を浴びるわけだから十分売れると記者は見る。
問題の価格だが、招致を逸すれば坪300万円がアッパーだろう見るが、決まれば320万円でも安いと考えるがどうだろう。同社のマンション分譲が遅れたのは震災の影響が大きいのだろうが、ここでチャンスがめぐってきた。
この晴海3丁目では、住友不動産のマンションの隣接地「晴海三丁目西地区」では再開発マンションB棟として前田建設工業が33階建て350戸のマンションを建設中だ。同社が分譲するのかデベロッパーに卸すのかは現段階では未定のようだ。住友不動産の動向をうかがいながら事業を進めるということのようだ。
晴海3丁目ではこのほか1.5haの「東地区」があるが、一部をUR都市機構が取得し再開発計画を進めている。URの資料によれば、招致が決まれば「メインスタジアムの門前町としての役割も期待される」としている。一気に再開発計画が進行するはずだ。
4~5丁目の選手村には恒久住宅5,000戸前後
晴海4丁目、5丁目には、オリンピック招致が決まれば選手村が建設される。招致委員会の資料によれば、都が所有する約40haを含む約44haにユニバーサル・デザインの考え方に基づいて約17,000室が確保される。例示されている居室面積は63㎡の4人用住戸から136㎡の 8人用住戸まで様々なタイプが用意される。全ての住戸にはリビングルームも設けられる。
選手村用地の所有者である東京都は、公募条件を示し、民間事業者にコンペ方式で建設させることになっている。恒久住宅部分については、大会期間中、大会組織委員会が賃借し、大会終了後の恒久住宅は民間事業者に返却する。民間事業者は、後利用計画に合わせて住宅を改装し、分譲または賃貸することで開発資金を回収する。
招致決定すれば開催時には1万数千戸のマンションが完成
いったい恒久利用の住宅規模がどれくらいかは明示されていないが、仮に17,000人を3~4人で割れば4,300~5,600戸ぐらいの計算になる。
現在、約100haの晴海1~5丁目にあるマンションは賃貸を含めて約3,300戸。これから建設されるマンションは約5,500戸だ。これに恒久住宅が加われば住宅戸数は1万数千戸になる。アクセスを含めて交通システムをどう整備するかが大きな課題となってきそうだ。財政難の折から地下鉄の延伸までは無理だと思う。BRT(Bus Rapid Transit)、LRT(Light Rail Transit)、あるいは乗り合いタクシーなどの新交通システムが考えられるのではないか。
選手村(完成予想図)
三菱地所レジデンス 全1744戸の「ザ・パークハウス晴海タワー」
前回2016 オリンピック招致失敗時の記事
三菱地所の新CM発表会「三菱地所を、見に行こう。ナイター」
東京ドーム 日ハム-ソフトバンク戦に1200人招待
子どもた100人が参加したベースランニング
三菱地所の新CM発表会を兼ねた東京ドームでの「三菱地所を、見に行こう。ナイター」を9月5日取材した。プロ野球日本ハムの主催試合「日ハム-ソフトバンク」公式戦の試合前30分間で行なわれたもので、1万数千人の観客が見守る中、「三菱地所を、見に行こう」のTシャツを着た招待客の子どもたちがグラウンドを駆け巡り、子どもたちによる日ハム・栗山監督、ソフトバンク秋山監督への花束贈呈、CMの主役を務める女優の桜庭ななみさんの始球式も行なわれるなど盛りたくさんな内容。観客の感想も好意的なものが多く、三菱地所も日ハムも招待客も観客も〝3方よし〟のイベントだった。
受け付け
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CMイベントは、日ハム球団の営業サイドから同社に持ち込まれた企画で、同社は新しいCMの発表会とCSR活動の一環である「三菱地所を、見に行こう」を兼ねることで実施に踏み切ったものだと思われる。
同社グループの三菱地所レジデンスクラブ会員や丸の内のカード会員に参加者を募り、1,200名を招待したものだ。試合開始の30分前、招待客の子どもたち100人がグラウンドに下り、全員がベースランニングを行なったほか、招待客の中から選ばれた4人が栗山監督と秋山監督に花束贈呈した。同社のCMの主役・桜庭ななみさんの挨拶、新CM、始球式の模様がオーロラビジョンに映し出された。イベント終了後は、この日登板予定のない木佐貫投手が子どもたちを見送った。
ベースランニング
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西武ファンの記者は同社の広報から取材の誘いを受けたとき、主旨もよく分からなかったし、日ハム-ソフトバンクの試合など見たくもなかった。ただ、昨年、「三菱地所を、見に行こう」を取材しているので、今回はどのようなものなのかを確かめるために取材した。昨年も感動的な取材が出来たのだが、今回もとても面白い取材ができた。
グラウンドの降りるのは、RBA野球大会で60回以上も取材しており、アンチ巨人の記者にとって全然面白くないのだが、何と同社の杉山博孝社長が日ハムの関係者らしき人と談笑していた。
早速、声を掛けた。「社長、どっちのファンですか? もちろん三菱地所ファンですよね」社長が笑った。「もちろん」 聞きもしないのに社長は言った。「プロ野球はアカ(思想ではない)が好きでね」「エッ、広島? どうして」「よくわかんない。僕は東京出身だけどね、小学生のころからのファン」 さらに一言「パリーグは日ハム」「どうして? 」「ハムがおいしい」
このとき、隣にいた人が破顔一笑した。(秘書らしき人から「取材はお控えください」と言われたが、後の祭り。聞きたいことはすべて聞いた後だった。隣の方は日ハムの社長だった)
左から杉山社長、竹添昇・日ハム社長、加藤譲・三菱地所専務執行役員、桜庭さん
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今回のイベントのCM効果だが、同社の広報マンは明言を避けた。しかし、1,200人の招待客の子どもが東京ドームのグラウンドに降り、ベースを1周できるなんて経験はまずできない。プロ野球は興行でもある。ファンサービスの一環としこのようなイベントを行なうのは大賛成だ。
観客にとっては退屈な30分かもしれないが、何人かの観客にも声を聞いた。以下に紹介する。
「選手を絡めたらもっと面白い」「CMソングは結構耳にしている」「赤いTシャツがよかった」「ベースランニングがかわいい。私は子どもはいないが、いたら参加したい」「桜庭さんが可愛い」
選手の反応もうかがったが、日ハムの陽選手や大塚コーチはとても楽しそうに見ていた。栗山監督は今季の成績がいまひとつなのと昨日はパリーグ史上最長の6時間1分の試合に敗れたためか、終始むっつりとしていた。ウルフの投球練習も見た。やはりすごい。大引選手が2回に満塁弾を放ったところで帰った。試合は11-5で日ハムが大勝。に
子どもたちを見送る木佐貫投手
2020年東京オリンピック スポンサーによる収入見込みは9億米ドル 竹田理事長
東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会は9月4日(現地時間)、アルゼンチン・ブエノスアイレスで行なった記者会見の概要をまとめ発表した。
竹田恆和招致委員会理事長は、「東京での開催は、若者にとって新しい刺激をもたらすとともに、革新的なマーケティングモデルも示される。スポンサーシップによる収入見込みは9億3200米ドルで、これは日本企業がいかにオリンピック・パラリンピックを支援したいと思っているかの表れとなる」などと語った。
また、張富士夫氏(日本体育協会会長/トヨタ自動車名誉会長)は、「東京での開催が実現すれば、ビジネスという側面だけではなく、日本、アジア、そして世界にスポーツの価値を広めることに貢献できるという点からも、多くの日本企業が国内スポンサーに集まると確信している」と話した。
地揚げから30年 坪330万円のマンションに再生「Tomihisa Cross」
野村不動産のすごさを見た 「第九」に「1000のイゴコチ」
野村不動産(事業比率41%)、三井不動産レジデンシャル(同35%)、積水ハウス(同14%)、阪急不動産(同10%)の4社JV再開発マンション「Tomihisa Cross」の記者発表会が9月5日、現地の近くで行なわれた。敷地面積は約2.5ha、山手線内の最高層となる55階建てタワーマンション(1,093戸、非分譲住戸含む)をはじめ、賃貸住宅、ペントハウス住宅を含めると全1,230戸の規模で、大型スーパー、認定子ども園、区の防災倉庫なども備えた大規模複合物件となる。
物件は、東京メトロ丸ノ内線新宿御苑駅から徒歩5分、新宿区富久町に位置する全1,093戸。専有面積は36.22~120.65㎡、価格は未定だが、最多価格帯は6,800万円台、坪単価は330万円前後になる模様。設計・監理は久米設計、施工は戸田建設・五洋建設。
現地は、昭和60年代の前半に激しい地上げが行なわれたエリアの一角で、1990年に地元住民らが「まちづくり研究会」を立ち上げ、早大の支援などを受けながら計画を進めてきた。2008年に野村不動産を中心に4社が参加組合員として事業に参画した。「産・官・学・民」が街づくりを配信するプロジェクトでもある。
商品企画に当たっては、〝世界一のイゴコチ〟を目指し、2013年から「Tokyoイゴコチ論争」を開始し、WEBやアンケート、座談会を通じ約10万件もの声を集め、その寄せられたアイデアを1000個の「イゴゴチ」にまとめて公表している。
建物は地震の揺れを低減させる制震柱と、強風による揺れを軽減する粘性ダンパー・プレースを組み合わせた「デュアル制震構造」となっている。
住戸プランは22階以上が無償のプランセレクトと有償のオーダーチョイスを、27階以上は間取りの一部を自由に変更できる有償のゾーンオーダーを、43階以上は水回り以外の部分の位置が変更できるオーダーメイドが、46階以上は隣接する2つの住戸を一つに合わせられる2戸連結が、49階以上は水回りを含めた部分を含めたプレミアムオーダーメイドが受けられるのが特徴。
春から物件告知を開始し、これまで問い合わせは1万件を突破し、来場者は約3,500件に達している。第1期分譲は9月中旬で、500戸近い戸数を供給するという。オーダーメイドの要望は約150件あり、今後も増加するようだ。億ションは23戸だが、一挙に販売する模様だ。2戸連結についても20件ぐらい検討している人がいるという。地権者のほとんどは65歳以上のようだが、数は未公表だった。
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記者にとっても感慨深いマンションだ。記者はバブル発生前から10年間ぐらい新宿御苑で勤務しており、周辺の飲み屋はほとんど網羅した。現地のある靖国通りの北側のほうは道も狭く、雑多な街だったのでほとんど行かなかったが、それでも地上げ(地上げの関係者は、その土地の権利を引き剥がすという意味で『地揚げ』という言葉を使っていた)については富久町から新宿ゴールデン街、西新宿を取材して歩いた。
地揚げ前は坪200万円もしなかった土地がバブルの絶頂期には坪2,000万円に暴騰し、道路付けに必要な要の土地は坪1億円で売買されていた。国土法の規制区域や監視区域制度を守る地揚げ屋などほとんどいなかった。無法地帯と言ってもよかった(最上恒産が告発されたのはずっと先だ)。
そんな虫食いとなった土地が30年経過して立派なマンションになる。隣接地では10年ぐらい前、同じ再開発マンションを近鉄不動産が分譲したが坪単価は260万円ぐらいだったはずだ。
なぜこれほどまで再開発に時間がかかったのか。関係者が地権者の数を公表しなかったことに、欲と傷の深さが凝縮されているように思った。余談だが、藤圭子さんが地揚げの舞台となったマンションで自殺されたが、記者は地揚げに翻弄された新宿の飲み屋を歌った曲が一番好きだった。
◇ ◆ ◇
驚いたことがある。シアターで「第九」の第4楽章がBGMとして流れたのだ。長い記者生活の中で「威風堂々」は何回か経験したことがあるが、第九が流れたシアターなど寡聞にして記憶がない。
幸運にして、この第九を採用することを提案したスタッフの一人、野村不動産住宅事業本部営業企画部営業企画課の佐々木まどかさん(さん付けがぴったりの若い方)に話を聞くことができた。佐々木さんは「私はここで生まれて育ちました。日本一のイゴコチのいいマンションにふさわしい、自信が持てるマンションにぴったりだと思って第九を選びました」と話した。
この言葉に同社のすごさを感じた。あの雑多な街をよくぞ「日本一イゴコチのいい街」としてアピールし、第九をイメージ戦略として採用したものだ。一挙に500戸近くを供給することなど信じられない。「1000のイゴコチ」を詳細に紹介したリーフレットは新聞紙の大きさで全8ページ、コート紙が使用されているので重さは138グラムあった。同社の「桜上水」もこれまた坪330万円ぐらいになるのではないか。
◇ ◆ ◇
比較にはならないが、見学会の帰り、御苑の駅前で一建設の「プレシス新宿御苑」(32戸)のモデルルームも見学した。新宿駅から徒歩4分、または新宿三丁目駅から徒歩2分で、坪単価は350万円。4月末から分譲開始されており、残りは1戸。購入者は単身者やDINKSだそうだ。
モデルルーム
東京建物他「BrilliaTower 池袋」わずか7週間で全322戸が完売
池袋駅圏では記録的な売れ行き
「BrilliaTower 池袋」完成予想図
東京建物と首都圏不燃建築公社は9月3日、豊島区本庁舎との一体超高層マンション「BrilliaTower 池袋」(全432戸、分譲戸数322戸)を9 月2 日に全戸契約完売したと発表した。4月にモデルルームをオープンして以来3 千組超の来場者を集め、最高18 倍、平均2.7 倍の競争倍率となり、7 月13 日の第1期分譲から約7 週間で全戸完売となった。
契約者の年齢は、40歳代~50歳代が全体の約50%を占め、家族数は2人が約40%、3人が約25%。職業は会社員が約30%、医師が約17%、会社役員が約15%。
物件の専有面積は31.25~161.26㎡、価格は3,398万~2億998万円(最多価格帯7,800万円台)。
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人気にはなると思っていたが、わずか7週間で完売するとは驚きだ。これまで池袋駅圏でタワーマンションはかなり分譲されているが、300戸超がこれほど速く完売したのは過去に例がない。
単価は記者発表されたとき坪330万円前後とはじいた。物件の質としては最高レベルだが、やはり池袋駅圏で立地、アクセスなどを考えるとこの単価が上限で、近隣物件も苦戦していることからはじき出した単価だった。坪320万円なら即日完売するとみていた。
しかし、実際はもっと高く最終的には340万円ぐらいになったのではないか。億ションはそれほど多くないはずだが、それでもこれほど速く完売したのは初めてだ。
やはり区庁舎との一体開発で、東池袋駅直結、長期優良住宅、耐震性能などに加え、隈研吾氏がデザインを監修したというのも人気を呼んだ要因だろう。大胆な壁面緑化やせせらぎを建物の外周にめぐらすなど、民間のマンションでは考えられないような贅沢な造りが評価されたのだろう。「区庁舎一体」「隈研吾」ブランドが信じられないような人気を呼んだということか。記者発表のとき、隈氏のデザイン監修は「坪当たり10~15万円の価値」があると書いたが、大変失礼なことを書いた。この人気ぶりからすればもっと高い。
明日は「富久町」の記者発表会があるし、来週には「桜上水」の発表会もある。強気な価格設定になるのは間違いない。
「サステナブル・コミュニティ研究会」セミナーに200人
実証実験の知見を社会に還元し、人材育成、SC検定などにも取り組む
「サステナブル・コミュニティ研究会」セミナー(秋葉原コンベンションセンター)
挨拶するアドバイザリーボードの浅見泰司・東大大学院教授
三井不動産レジデンシャル、三井不動産住宅サービス、外部団体、有識者からなるアドバイザリーボードで構成される「サステナブル・コミュニティ研究会」は9月3日、「コミュニティ力が創る新しい暮らし~集合住宅から暮らしが変わる~」をテーマにセミナーを行ない、これまでの実証実験の報告と今後の活動について報告した。約200人が参加し、関心の高さをうかがわせた。
同研究会は、東日本大震災後の集合住宅のあり方として、住民同士の共助や地域住民との連携による持続可能な地域づくりが重要として2011年7月に発足。サステナブル。コミュニティ(SC)指標を作成し、新築マンションや既存マンションを対象に実証実験を行なってきた。
SC施策はコミュニケーションの深化に効果があると報告された一方で、必ずしもコミュニティに対する関心・意識が高くないことから「懇親会」+「防災訓練」など住民の関心の高いテーマにイベントを工夫する必要があるとした。また、居住者の自主的な活動を支えるコーディネータの育成や、キーマンが承認・応援されるような環境づくりも重要であることなどが報告された。
今後は居住者内部で得られた知見を地域に還元することも必要とし、管理組合向け人材育成セミナーやSC検定などを行なっていくとした。
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驚いたのは参加者の多さだった。会場となった秋葉原コンベンションホールは満席となった。集まるのは三井不動産の関係者や報道陣ぐらいではないかという予想は外れた。
驚いたのは参加者の数だけではなく、その属性にも驚いた。勤務先が不動産業というのは8.9%で、建設業、コンピュータ・情報通信、製造業、サービス業の4業種がそれぞれ14.6~10.4%と不動産業を上回った。官公庁も4.6%あった。商社マンやコンサルタント、弁護士などの参加もあった。企業規模は1万人以上が13.9&を占め、1,000人以上が約34%に達した。職種でも経営者・管理職、専門職が60%近くにのぼった。役職では会長・社長が11.1%もあった。
マンションのコミュニティ形成についてはここ数年関心が高まっており、同研究会のほかにも国交省の「マンション管理の新たなルールづくり検討会」、マンション管理業協会の「マンション長寿命化協議会」などでも活発な論議が行なわれてきた。今回の参加者の多さは主催者サイドの動員力もあるのだろうが、官民の取り組みの成果であり、われわれが考えている以上にマンションのコミュニティ形成に大きな関心が寄せられている証左だ。
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興味深い報告もあった。三井不動産レジデンシャル市場開発部 商品企画グループ兼総務部環境推進室主管・川路武氏が先進的な事例として紹介したもので、「柏の葉キャンパスシティ」のマンションでは、こどもが生まれたときやサークル・ボランティア活動、上下階の交流会などへ町会からコミュニティ支援として祝い金や助成金が支給されるというものだ。これはこれからの地域連携を考える意味で参考になる。
また、基調講演を行なった英国王立芸術大学院のへレン・ハムリン・センター・フォー・デザイン シニアリサーチフェロー ジュリア・カセム氏は「イギリスにはマンションは少なく、人生をケアするシステム、選択肢が協会やチャリティなどを通じて行なわれている」と話した。わが国には大きな影響力のある協会などは存在しないが、かつては冠婚葬祭や町内会がその役割を果した。昔のままというわけにはいかないだろうが、現代に即した新しいデザインを考える必要がありそうだ。
左からパネルディスカッションのモデレータを務めた日経エコロジー編集長・谷口徹也氏、パネリストの明海大教授・齊藤広子氏、三井不動産住宅サービス マンション管理本部業務推進部 業務推進課課長代理・木村貴一氏
ひだりから川路氏、ジュリア・カセム氏