東急不動産「BRANZ(ブランズ)」 リブランディングに注目・期待
東急不動産がマンションブランド「BRANZ(ブランズ)」のリブランディングに着手したのに注目し期待もしている。
同社は12月20日付のプレス・リリースで、2030年度までに全ての分譲マンションでZEHを標準仕様にするほか、ブランドスローガンに「住まいを、未来のはじまりに。」を掲げ、分譲・賃貸・学生レジデンス事業など住宅事業の全領域で「社会課題を、暮らし心地に変えていく」という行動指針のもと、"誰もが自分らしく、生き生きと輝ける未来の実現"を目指すとしている。2022年1月からは俳優の長谷川博己さんを起用した「BRANZ」の新CMを放映するとしている。
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バブル前から〝街づくりの東急〟を取材してきた記者は、同社が軸足を住宅からオフィス・商業施設に移すのは理解できても、何よりの財産であるはずの分譲戸建てが激減し、マンションもいま一つ伸び悩んでいるのに一抹の寂しさをずっと感じてきた。
今回のプレス・リリースは、翌日発表した東急ハンズの全株式をカインズへ譲渡することとセットだと記者は理解している。東急不動産や東急リバブルより一般に馴染みのある東急ハンズを身売りしてでも経営資源を住宅事業に集中する意気込みの表れのはずだ。
現段階でどのような戦略を打ち出すか分からないが、住宅事業で他の大手と互角に戦うには課題も多い。決算数字などから問題点を探ってみた。
同社のマンション事業の粗利益率はここ数年20%前後で推移している。大手他社と比較して低くはない。問題は売上高営業利益率だ。2021年3月期の同社の住宅事業は売上高1,463億円で、営業利益は84億円、営業利益率は5.7%だ。
この営業利益率は、20.5%と突出している住友不動産はともかくとして、三井不動産の12.3%(分譲戸建て含む)、野村不動産の8.2%(同)、東京建物の7.2%(2020年12月期)、三菱地所の6.6%と比較してもっとも低い。
粗利益率は高いのに営業利益率が低いのは販管費などの増大が利益を圧迫しているからだ。同社の2021年3月期の完成在庫は827戸だ。計上戸数1,777戸に対する割合は46.5%に達している。
同業他社はどうか。完成在庫の多いのは住友不動産も同様で、2021年3月期は1,184戸だ。しかし、同社の計上戸数は4,164戸なので在庫比率は28.4%だ。他では野村不動産が11.5%、三菱地所が6.1%、東京建物が14.8%となっており、三井不動産はわずか167戸(戸建て含む)で、割合は3.4%にしか過ぎない。
どうして東急不動産の完成在庫が突出しているのか。その原因を探るには詳細な分析が必要だが、やはりブランド力(価格競争力)、個別物件の基本性能・設備仕様レベルの差だろうと思う。
例えば、京王線調布駅から徒歩7分の「ブランズシティ調布」(305戸)で見てみよう。
この物件については2020年春ころ、同社に取材を申し込んだが断られているので、基本性能・設備仕様レベルは分からないのだが、現地周辺は分譲戸建てやマンションの取材で数回訪れている。布多天神社の緑が素晴らしく、敷地北側にはスーパー・マルエツもあり、敷地南側は第一種低層住居専用地域だ。甲州街道を渡らなければならないハンディがあり、当初聞いた坪単価320~330万円はやや高いような気もしたが、これは許容範囲というものだ。他の沿線と比べ割り負けしている京王線とはいえ、新宿から特急で15分のアクセスを考えたら妥当な単価だと思った。
売れ行きは好調に推移するのではと考えていたが、どうもそうではないらしい。もうすぐ竣工後1年が経過するが、相当数残っているようだ(同業他社から残戸数は聞いているが、未確認なので書かない)。物件ホームページで確認したら、12月下旬登録予定の5戸の専有面積は70.00~70.15㎡、価格は5,400万円台(1戸)~6,000万円台とある。坪単価に換算したら255~294万円だ。新築も中古もどんどん価格が上がっているというのに、この安さは何だろう。競合物件では最安値ではないか。
基本性能・設備仕様レベルも物件ホームページから確認した。大規模ならではのランドスケープデザイン、子育てサービスのほかディスポーザー、タンクレストイレ、トランクルーム、スロップシンクなどが確認できたが、このほかに特筆できるものはない。つつじヶ丘-調布-府中-聖蹟桜ヶ丘にかけて10物件くらい供給されている激戦区にしてはアピールポイントに欠けると言わざるを得ない。
参考までに、記者が大手と互角以上に戦えると思っているモリモト、大和地所レジデンス、ポラス中央住宅の〝中堅御三家〟の基本性能・設備仕様を少し紹介する。
この3社に共通しているのは完成在庫が少なく、どこにも負けない〝売り〟の商品企画があることで、それぞれターゲットは異なるが年間供給量も1,000戸くらいなのもよく似ている。
モリモトはデザイン・意匠のほかワイドスパン、設備仕様レベルが総じて高い。中堅で三菱地所、丸紅、東急不動産などの大手との共同事業(売主)の実績があるのは同社のみだ。〝モリモトファン〟は数万人いるはずだ。
大和地所レジデンスは、奥行き4m×幅4mのオープンエアリビングバルコニーや100㎡住宅などの商品企画が突出している。
ポラス中央住宅はキッチンとキッチンカウンター・ダイニングテーブルを一体化したピアキッチンがある。しかも価格にしたら数十万円はするはずのバックカウンター・食器棚付きだ。このほか、生活者目線の細かな工夫がユーザーの心を捉えている。最近は長谷工コーポレーション施工が増えているが、販売代理の長谷工アーベスト担当者も絶賛するほどだ。
東急不動産は他の大手から差を付けられ、後続の中堅の追撃も受けている。かつての輝きを取り戻すには2倍、3倍の努力、エネルギーを注ぐ必要がありそうだが、ヒントは現場にある。何が足りないかは現場担当者がよく知っているはずだ。それを企画に生かすことではないか。「プラウド」も「ブリリア」もヒットする前は〝並〟だったではないか。
バス便ながら半年で半数77戸成約 県立公園に近接 中央住宅「船橋行田公園」

「西船橋ソレイユプロジェクト(ルピアグランデ船橋行田公園)」
ポラスグループ中央住宅は12月21日、分譲中の「西船橋ソレイユプロジェクト(ルピアグランデ船橋行田公園)」のメディア向けモデルルーム見学会を行った。西船橋駅からバス9分徒歩6分の全154戸。立地にハンディを抱えながら価格の安さ(坪単価173万円)、県立行田公園に近接する住環境、近接する公務員宿舎の跡地開発などの将来期待が人気を呼び、6月の販売開始からこれまで約半数の77戸が成約済みとなっている。
物件は、JR・東京メトロ・東葉高速線西船橋駅からバス9分、バス停徒歩6分、船橋市行田3丁目の第一種中高層住居専用地域、第一種住居地域(建ぺい率60%、容積率200%)に位置する7階建て全154戸。12月下旬に分譲予定の第2期(戸数未定)の専有面積は61.65~70.64㎡、予定価格は2,700万円台~3,900万円台(最多価格帯3,200万円台)、坪単価は173万円。竣工予定は2022年2月中旬。設計・施工は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。
現地は社宅跡地で、約11.9haの県立行田公園も徒歩2分。敷地南側はスーパー、戸建て住宅街。周辺には船橋行田住宅跡地(5.6ha)、JR社宅跡地などがあり、中学校、小学校にも近接。
建物は3棟構成で、標準階は南向き13戸、東向き6戸、西向き6戸。間取りは61~63㎡台の2LDKが25戸、76~80㎡台の4LDKが4戸、他は70㎡台が中心の3LDK。
主な基本性能・設備仕様は、直床、リビング天井高2400ミリ、食洗機、ピアキッチン付き(約半数)、食器棚、かくれんボックス、マイギャラリーなど。
同社マンションディビジョン課長・湯村元昭氏は、「南仏プロバンスと船橋の花であるヒマワリをモチーフに世界観を演出した」と語った。
販売代理の長谷工アーベスト東京支社販売部門プロジェクトマネージャー・清水慎二氏は、「1月から資料請求を受け付けてからこれまで反響は800件、来場は300件、決定率(歩留まり)は25%に達している。駅からは少し離れているものの、複合開発期待、行田公園に近接する住環境、価格の安さと設備仕様レベルの高さが評価されている。購入者の居住地は地元市内が60%、市川市が10%、江戸川区が8%。世帯主の年収は300~600万円台が中心」などと語った。

エントランス
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見学会はモデルルームのみ。湯村氏や清水氏の話からは価格が安く、その割に設備仕様レベルも高いのはよく伝わってきたのだが、新船橋駅や塚田駅のように生活利便施設が整っているという印象を受けず、どのような立地条件なのかいま一つ分からなかった。このまま帰ったら「ボーっと生きてんじゃねーよ!」とチコちゃんに叱られそうなので、現地を見学することにした。
現地について驚いた。JRの社宅として利用されていた廃墟のような5階建て建物が5棟、戸数にして200戸くらいが建っていた。その先に中規模のスーパーと戸建て街区があり、マンションはその背後で建築中だった。その先、建物の北側にはフェンスで覆われた公務員宿舎が広がっていた。スーパーのほかに生活利便施設はほとんど皆無。立派な樹木が茂る行田公園も閑散としていた。
それでも同社のマンションがよく売れているのは、公務員宿舎やJR社宅跡地の再開発に期待している購入者多いということだろうと納得するほかなかった。
競合しているのではないかと思った大和ハウス工業「プレミスト塚田」(571戸)とは単価にして20万も差があり、「塚田」は先月で完売していると聞いた。確かに坪20万円の差は大きい。
見学会では話題に上らなかったが、中央競馬・中山競馬場は徒歩圏。マンションの上層階からはターフが見えるのではないか。

建築中の現地

県立行田公園
実質10か月で300戸超の驚異的売れ行き 大和ハウス「プレミスト船橋塚田」(2020/10/20)
全戸二重サッシ・樹脂サッシ 坪450万円にも納得 大京のコンパクト「新中野」

「ライオンズミレス新中野」
大京は12月19日、コンパクトマンション「ライオンズミレス新中野」の竣工販売を開始した。20日、メデイア向けにモデルルームを公開した。
物件は、東京メトロ丸ノ内線新中野駅から徒歩4分、JR中野駅から徒歩12分、中野区本町6丁目の商業地域に位置する10階建て35戸(特定分譲住戸10戸、一般分譲対象外住戸5戸含む)。第1期1次の専有面積は34.31~40.89㎡、価格は4,690万~5,540万円。坪単価は450万円。竣工予定は2022年1月13日。設計はSD建築企画研究所。施工は斎藤工業。デザイン監修は船田徹夫氏。
現地は、二方道路に接道。歩道を挟んだ北側は青梅街道。建物は内廊下方式を採用、1階エントランスにアートと各住戸専用の宅配ボックスを設置。住戸は2階からで、標準階は1フロア4タイプ4戸構成。うち3戸が角住戸(全35戸中26戸)。
主な基本性能・設備仕様は二重床・二重天井、二重サッシ・樹脂サッシ、リビング天井高2400ミリ、食洗機(25㎡の1DK除く)。
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価格はこんなもんだろうと思った。23区内のコンパクトは軒並み坪400万円を突破し、500万円以上というのも珍しくなくなってきた。今春分譲開始された、敷地北側が甲州街道に面している坪430万円の同じような条件の旭化成不動産レジデンス「アトラス笹塚駅前」(45戸)も残りはわずかだ。大京の物件は丸の内線で都心に繋がっているというのも強みなのだろう。対面にはスーパー三徳がある。
モデルルームは全4タイプ、コンパクトではあるが、間取りはよくできている。間口を4200ミリ確保することで居室を1~2室設けることができるようにしている。中野駅方面が見渡せる北西角住戸の専有面積は25.30㎡だが、バルコニーの幅は4m以上あった。
それより驚いたのは、道路側に面した窓は全戸二重サッシで、しかも居室側は樹脂サッシが採用されていることだった。同じような二重サッシ・樹脂サッシはコスモスイニシアの「大森町」で見学しているが、コンパクトでは極めて珍しいはずだ。
樹脂サッシのよさは実際に経験しないと理解できないかもしれないが、熱伝導率はアルミとは天地ほどの差がある。アルミは熱さも冷たさもストレートに伝わるが、樹脂は外気温をほとんど遮断できる。結露も生じない。同社はプレス・リリースにそのことを一切記載していない。ZEHマンションの供給実績が多く、当たり前と思っているからだろうか。記者などはこれが最大の売りだと思う。

1階エントランス
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見学会の席に案内された途端、記者が60年以上の西鉄・西武ライオンズファンであることを知ってか知らずか、知っていたとしても傷口に塩をすり込むような悪意は込められていないとは思うが、同社の女性広報担当者が「マンションの資料のほかオリックス・バファローズの来年のカレンダーも入っております」としらっと話したではないか。
とっくに忘れていたのに一挙に悪夢がよみがえった。わが西武は今季42年ぶりに最下位に転落した。オリックスにはコテンパンにやっつけられた。宮城には1つも勝てず6連敗、山本には5敗(1勝)し、通算8勝15敗(2分け)と惨敗。
あろうことか来季の西武は、前半戦の3連戦×3度=9戦の表ロードでオリックスと対戦することが決まった。山本と宮城が登板するのは間違いない。
家に帰って、もらった月めくり卓上カレンダーを見てみた。12人とも顔を見るのも嫌な選手ばかりだ。どうすればいいのか。2つもある。ほしい人がいたらくれてやるのに…。

現地
Four Seasonsとの複合 東建「堂島」第1期1・2次185戸 平均4.6倍で完売

「Brillia Tower 堂島」
東京建物は12月16日、ラグジュアリーホテルブランド「Four Seasons Hotel」と一体開発の複合マンション「Brillia Tower 堂島」(全463戸)の第1期1次130戸、第1期2次55戸の合計185戸に平均4.6倍の登録申し込みが入ったと発表した。
4月にオフィシャルサイトを開設し、9月11日にモデルルームをオープン後、11月29日までに問い合わせは6,300件超、モデルルーム来場者数は延2,700件を超えるなど、大きな反響を呼んでいる。
同社は、JR大阪駅から徒歩9分のロケーションや多様な住宅ニーズに対応する30~230㎡台の専有面積、約2.7~約4.0mの天井高などに高い評価を得ているとしている。44階以上の奥行の深いルーフバルコニー付き南東・北西角住戸(10 戸)も高い倍率になった模様だ。
登録期間は第1期1次が10月30日~11月15日(抽選日15日)、第1 期2次が11月26日~11月29日(抽選日29日)。登録申し込み件数は982件(第1期1 次・2次)、平均倍率は4.6倍、最高37倍。価格は5,280万~10億8,000万円(平均価格は約1億5,390万円)、坪単価は650万円。1億円超住戸は110戸。専有面積は38.71~236.06㎡。
登録申込者の属性は、年齢は50歳台(全体の25.7%)、60歳台(同23.4%)、30歳台(同20.6%)、世帯人数は2人(全体の36.9%)、1人(同31.7%)、4人(同15.3%)、職業は会社役員(全体の37.8%)、会社経営(同15.4%)、会社員(同14.9%)、医師(同10.7%)、居住地は大阪府(全体の63.5%)、うち北区(同17.7%)、中央区(同8.7%)。
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この物件については、11月25日付の記事と合わせて読んでいただきたい。取材した時点で、物件統括所長・加藍憲一氏はプレス・リリースを出す予定と話していた。
これまで坪単価400万円がアッパーだった大阪市内で、記録を大幅に更新する坪650万円のマンションがなぜこれほどの人気を呼んだか。基本性能・設備仕様レベルの高さはもちろんだが、記者はやはり「Four Seasons Hotel」との連携が富裕層の心を捉えたと思っている。上層階住戸からはエレベーターでホテルレストラン階に降りることができる。ラグジュアリーホテルレストランを日常使いできる分譲マンションは首都圏を含めてほとんどない。
外観・共用施設、モデルルームの〝美しさ〟については記事にも書いたが、日建設計のチーフデザインオフィサー・大谷弘明氏、オランダ生まれのピエト・ブーン氏を起用したのがヒットした。記者は三井不動産レジデンシャル「パークコート青山 ザ タワー」と同じくらいの衝撃を受けた。
残りは283戸もあるが、時期以降は価格の低い下層階の住戸が中心になる模様で、順調に推移するのではないか。
注目されるのは今後の大阪のマンション市場に与える影響だ。首都圏では、2015年分譲開始の同社「Brillia Towers目黒」が坪単価600万円の大台に乗り業界を驚かせたが、その後、都心物件の価格は上昇の一途をたどった。同じことが大阪でも起きるのか。住友不動産の期間75年の定期借地権付きホテル・商業・賃貸との複合「梅田ガーデンレジデンス」(584戸)の分譲も始まった。坪単価は600万円超となった模様だ。
〝どう見ても美しい〟大阪の市場を変える 東京建物「堂島」は坪単価650万円(2021/11/25)
マンションはアートだ 三井不レジ「パークコート青山 ザ タワー」竣工(2018/4/11)
東京建物 目黒駅前の再開発タワーは坪単価600万円になるか(2014/12/4)
新規登録・在庫単価は過去最高値更新 11月の中古マンション市場 レインズレポート

東日本レインズ 11月のMarket Wachiから
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は12月10日、首都圏の2021年11月の不動産流通市場の動向についてまとめ発表した。
中古マンションの成約件数は前年比5.6%減の3,416件と5か月連続で前年同月を下回った。成約坪単価は前年比7.1%上昇の201.0万円で、20年5月から19か月連続上昇し、成約価格は同3.8%上昇の3,897万円となり、20年6月から18か月連続で前年同月を上回った。専有面積は前年比で3.1%縮小し63.98㎡となっている。
中古戸建ての成約件数は前年比5.0%減の1,227件で、4か月連続で前年同月を下回った。成約価格は前年比10.1%上昇の3,579万円となり13か月連続で前年同月を上回った。土地面積、建物面積とも前年同月比で縮小した。
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首都圏の中古マンションの成約単価の上昇が続いている。成約坪単価は新型コロナの影響で昨年4月に167.9万円となり、同年1月の187.8万円から10.6%下落したが、その後は回復し、今年9月にはレインズデータのアーカイブで公表されている2002年以降では最高値の坪205.0万円を記録した。(関係者によると1990年5月の成約単価336.6万円が過去最高値)
11月の成約単価を地域別にみると、東京都区部は前年比6.9%上昇の296.5万円となり、20年5月から19か月連続で前年同月を上回った。多摩は152.2万円で、前年比プラス13.3%の2ケタ上昇、9か月連続で前年同月を上回った。
神奈川県の横浜・川崎市は前年比7.9%上昇の179.2万円で、20年6月から18か月連続で前年同月を上回った。神奈川県他は前年比16.5%の2ケタ上昇の115.5万円で、12か月連続で前年同月を上回った。
埼玉県は前年比11.4%上昇の126.4万円となり、20年6月から18か月連続で前年同月を上回った。
千葉県は前年比10.8%上昇の113.0万円となり、20年8月から16か月連続で前年同月を上回っている。
また、新規登録単価は前年比15.9%上昇の坪224.7万円となり、8か月連続して2けた上昇、20年10月から14か月連続で前年同月を上回るとともに過去最高値となった。
在庫坪単価は前年同月比14.8%上昇の過去最高値の230.9万円となり、7か月連続の2けた上昇、18年2月から46か月連続で前年同月を上回った。
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この数値をどう見るかだが、首都圏新築と比較して成約単価は6掛け、新規登録単価と在庫単価はそれぞれ7掛け前後だ。地域別では新築と比較して東京区部は6.7掛け、横浜・川崎は6.4掛け、埼玉は5.4掛け、千葉は5.5掛けだ。
この先の市況はいまひとつ読めないが、新築は総じて売れ行きが好調で、完成在庫数も漸減傾向にあることから下落に転じる可能性は少ないとみている。注意したいのは、平均価格は頭打ちの感があり、単価上昇を専有圧縮で吸収しようという動きが鮮明となり、合わせて階高・天井高の低下、設備仕様のグレードダウンが甚だしいことだ。ローン金利は引き続き低水準で推移すると思われるが、過度な基本性能・設備仕様レベルダウンをユーザーがどう見るかだ。
このような新築の懸念材料を考慮すると、記者は建築費が著しく上昇した数年前以前の中古マンションのほうが総じてレベルは高いとみている。新築との価格の乖離率を考え合わせると、中古市場の活況は当分続くのではないかと思われる。
ただ、新規登録単価が8カ月連続して2けた上昇しているのは実需というよりは買い取り業者が介在しているのではないかと思われ、この先どうなるかは今一つよく分からない。かつてバブル発生時は、新築より中古が市場をリードしたように今回もそのような状況になるのかどうか。〝まだはもうなのか、もうはまだなのか〟-中古市場は踊り場に差し掛かっていると言えなくもない。
活発な法人間取引 「買い」が「売り」上回る 関東圏の中古マンション市場(2021/10/19)
バブルだ すさまじい中古マンションの値上がり レインズの9月のレポート(2021/10/12)
反響3000件超 ランドスケープ抜群 三菱地所レジ他「板橋大山 楠ノ杜」

「ザ・パークハウス板橋大山 楠ノ杜」
既報の「ザ・パークハウス川越タワー」の取材の帰り、同じ東武東上線の三菱地所レジデンス・三菱倉庫「ザ・パークハウス 板橋大山 楠ノ杜」を見学した。昨年、現地を見た段階で「素晴らしいマンションになる。どうしても見学しよう」と思っていた物件だ。期待通りのマンションだ。
物件は、東武東上線大山駅から徒歩7分、板橋区大山町の商業地域・第二種住居地域(建ぺい率:角地緩和で90%・70%、容積率:500%・300%)に位置する14階建て全187戸(募集対象外住戸2戸含む)。専有面積は57.76~117.62㎡、現在、先着順で分譲中の住戸(8戸)の専有面積は59.66~97.66㎡、価格は6,498万~13,098万円。全体の坪単価は355万円。竣工予定は2023年10月上旬。施工は東亜建設工業。
現地は邸宅、店舗などの跡地で、敷地面積は約5,200㎡。道路を挟んで「ハッピーロード大山商店街」に隣接。敷地南側は川越街道に接道。
建物は、南北に長い敷地形状を生かし、東向きのワイドスパンの「桜館」、川越街道に面した「楓館」、中庭を挟んだ南向き「楠館」の3棟構成。意匠・デザインには、内蔵のベンガラ色の蔵扉をエントランスに移設し、縦格子や枡格子を新たな素材でリデザインするなど、幾何学的な造形美、石の肌触り、木目のぬくもりを演出する。
ランドスケープデザインに力を入れているのが最大の特徴。小川を配した1,000㎡超の中庭「翠園」には、敷地内に植わっていた樹齢300~400年と推定される樹高10mのクスノキの巨木2本や樹高12mのソメイヨシノをそのまま保存し、既存の蔵や井戸、母屋などを共用施設に面するように配置。三菱地所レジデンスがSDGsの一環として取り組んでいる「BIO NET INITIATIVE(ビオネット・イニシアチブ)」を導入し、生物多様性に配慮した「ABINC認証」を取得。屋上には庭園を設置する。
住戸の平均専有面積は72㎡で、主な基本性能・設備仕様は、ディスポーザー、食洗機、リビング親子ドア(クランクインリビング)、ワイドスパン(桜館)、ミストサウナなど。
11月中旬から販売を開始しており、これまで3,000件超の反響を呼び、全戸の約4割に該当する70戸が成約済み。100㎡超の億ション1戸も抽選になるほどの人気になっている。
契約者の居住地は、地元板橋区が35~36%、豊島区が10%、そのほかは23区など多岐にわたっている。年代は30~50代と幅広く、職業は会社員6割のほか、会社役員、医師など富裕層も目立つという。
レジデンスギャラリー副所長・伊藤一樹氏は、「想定を上回る数のお客さまからの反響に驚いています。地元の方のみならず、中広域で探されていたお客さまはアクセスやコンセプトを気に入っていただきご契約いただいている点が特筆すべき点です。中庭の素晴らしさを気に入っていただき、即決で決められた方もいらっしゃる」と話している。
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エントランス

中庭
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板橋区の物件として、価格(坪単価)は決して安くない。しかし、記者は駅からのアプローチ、ランドスケープデザイン、ワイドスパンの住戸プランなどを総合的に判断して、極めて妥当な価格だろうと思う。北区赤羽の再開発マンションは坪単価400万円をはるかに突破するのは間違いない。
広域から集客できているのもよく理解できる。「川越」の記事でも書いたが、23区内でこの単価の良好な住環境のファミリーマンションは湾岸・城東・城北の一部しかない。価格は安くても、震災のことを考えると二の足を踏む検討者は多いはずだ。
その点、板橋区の「ハッピーロード」は山の手ではなく昔ながらの店も多く、好きになれない人もいるかもしれないが、アーケード街なので駅から現地まで雨が降っても濡れずに済むのがいいし、女性は夜遅くなっても怖くないはずだ。
もう一つの推奨材料は再開発計画だ。商店街の中には2024年12月に竣工予定の住友不動産とフージャースコーポレーションが事業参画している「大山町クロスポイント」(0.7ha)と、今年度に都市計画決定予定の積水ハウスが事業参画する「大山町ピッコロ・スクエア」( 1.3ha)がある。
現段階で詳細は不明だが、「クロスポイント」(345戸)の坪単価は400万円に乗るのではないかと記者は見ている。「ピッコロ・スクエア」はその規模、計画から判断して緑に恵まれたいい街になる。月島のような、博物館入りしそうな古い街並みや店舗との共存を記者はこの街に期待している。
区内には、似たような街並みの十条駅前の39階建て再開発「J& TERRACE/MALL」(578戸)や「ザ・パークハウス 十条」(64戸)があり、検討者にとっては悩ましい選択になるが…。

既存樹のクスの巨木
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マンションの1階にある約140㎡超のジャグジーバス付きゲストルームが無料になることを伊藤氏から聞いた。詳しい経緯は分からないが、有料にすると旅館業法の許可要件「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」に抵触するおそれがあるからではないか(大規模マンションにはゲストルームはつきものだが、各管理組合は宿泊料として金銭を受領していないはずだ)。
細かいことだが、クローゼットには一時掛けハンガーが付いていた。外出時に何を着ていこうか迷ったときに複数の洋服などを見比べられるようにしたものだ。

一時掛けハンガー

プレミアム住戸のモデルルーム

モデルルームの食器類(記者はてっきり金製のナイフとフォークかと思ったら、同社の女性広報担当者は「ZARAなの」と瞬時に値段をはじいた)
「大山町クロスポイント」再開発着工 住友不・フージャースが事業参画(2021/9/15)
東京建物「Brillia大山Park Front」完成 ランドスケープ・外観が素晴らしい(2018/11/30)
東京建物「Bloomoi(ブルーモワ)」が企画 機能的で美しい 公園隣接の「大山」(2017/9/25)
駅前の免震タワーは坪320万円 京王・聖蹟桜ヶ丘を抜き去る 三菱地所レジ他「川越」

「ザ・パークハウス川越タワー」
三菱地所レジデンス(事業比率50%)と大栄不動産(同)は12月10日、東武東上線・JR川越駅から徒歩1分の川越市最高峰の免震タワーマンション「ザ・パークハウス川越タワー」のモデルルームを2022年1月8日にオープン、2月中旬から販売開始する発表。同日、メディア向けモデルルーム内覧会を行った。
物件は、東武東上線・JR川越線川越駅から徒歩1分、川越市脇田本町の商業地域(建ぺい率90%、容積率600%)に位置する25階建て全173戸(募集対象外4戸含む)。専有面積は44.36~117.16㎡、価格は未定だが、坪単価は320万円になる模様。竣工予定は2023年10月下旬。施工はフジタ・川木建設共同企業体。販売開始は2022年2月中旬の予定。
現地は、川越駅圏でごくわずかしかない容積率600%の商業地域の一角。敷地は埼玉りそな銀行と三菱UFJの店舗跡地。両者がそれぞれ用地を取得して共同で分譲することになったもの。敷地は四方道路に接道。
建物は2階建て商業棟と25階建て住宅棟で構成。「川越駅西口グランドデザイン」に基づき地域との共生を目指し、地元の農業協同組合や企業との連携による地産地消、間伐材を使用した家具・小物の活用を行うほか、川越に本社を置く「ヤオコー」のネットスーパー、ペットボトルの回収、電気自動車の充電ポート導入などサステナブルな取り組みも行う。また、防災の取り組みとして、各住戸に防災倉庫を設置し、防災イベントを行っていく予定。
住戸プランは70㎡台の3LDKを中心に40㎡台の2LDK、最上階は100㎡台のプレミアム住戸を用意。主な基本性能・設備仕様は、川越市初の免震、二重床・二重天井、リビング天井高2500ミリ(プレミアム住戸は2700ミリ)、食洗機、ディスポーザー、ミストサウナ、クオーツストーンキッチン天板など。クローゼットには一時掛けハンガーを設置している。共用施設はオーナーナラウンジ、スカイデッキ、クラブラウンジなど。
9月に物件ホームページを開設してからこれまで1,200件の反響がある。内訳は地元が4割、周辺エリアが1割、県内が2割、東京が3割。富裕層からの問い合わせも多いという。価格は2LDKが6,000万円台、70㎡台の3LDKが7,000万円台中心、最上階は1億1,000万円台の予定。
内覧会に臨んだ三菱地所レジデンス第一計画部長・浦崎康弘氏は、「駅1分の利便性と25階建てという市内最高層と免震、開放感、眺望は市のランドマークとなるはずで、地域との共生をテーマに持続可能な街づくりに貢献したい」と語った。


オーナーズラウンジ

間伐材を用いたモデルルームの畳数表示板
◇ ◆ ◇
記者の個人的な最大の関心事は坪単価が300万円を超えるかどうかだった。川越駅は池袋駅からちょうど30分。わが京王線の新宿駅から30分といえば聖蹟桜ヶ丘駅で、いま東京建物などが分譲中の「Brillia Tower 聖蹟桜ヶ丘BLOOMING RESIDENCE」(520戸)がある。免震タワーというのは一緒で、記者は「聖蹟桜ヶ丘」を見学はしていないが、基本性能・設備仕様レベルは同等で、街のポテンシャルもそれほど変わらないはずだ。唯一、京王線が負けるとすれば都心(東京駅など)へのアクセスだろう。
坪単価はどうか。記者は東京建物が計画を発表した段階で坪単価は300万円の大台に乗るのを期待していた。免震でZEH、多摩川がすぐそばならアッパーミドルの需要を総取りできると思った。ところがどうだ、坪単価が270万円と聞いて正直がっくりした。
川越はどうか。三井不動産レジデンシャルが数年前に分譲したマンションの坪単価は285万円だった。かなり高いと感じた。今回、それを上回るのは確実だと思っていた。三菱地所レジデンスは「価格は未定」としているが、予定価格からして坪単価は320万円になるはずだ。「聖蹟桜ヶ丘」との差は坪50万円。20坪にして1,000万円だ。
これは聖蹟桜ヶ丘と川越だけの話ではない。いかに他の沿線と比べ京王線のマンションが著しく割り負けしているか。東急線では代官山は坪900万円を突破し、自由が丘も600万円超、綱島だって400万円だ。小田急線の代々木上原は650万円、成城学園は500万円をはるかに超える。新百合ヶ丘も400万円以下はありえない。東上線だって住友不動産・大山は400万円に乗るかもしれない。伊勢崎線(千代田線か)の北千住は380万円だ。京王線のアッパーは調布の370万円だ(三井不動産レジデンシャルの初台の物件は500万円弱だか)。
マンション相場のみの評価ではあるが、京王は東急や小田急にその差を広げられ、ついに東武東上線に逆転された。勝てるのは西武と京急、相鉄、京成くらいか。その京急も相鉄も虎視眈々、都心部への進出を考えている。
京王も沿線自治体もブランディングを再検討したほうがいい。神奈川、埼玉、千葉から移り住みたくなるような街づくりをするべきだ。京王はサンウッドと資本提携したが、市場を劇的に変えるには力不足だ。
横道にそれすぎた。「川越」に戻す。モデルルームの仕様レベルは間違いなく水準以上だ。地価水準の高い東京23区内ではまず不可能なレベルだと思う。都内からの反響が3割というのも納得だ。

ザ・ホール
外貌の呪縛を解き放つか 「現しを求めるのは木造コンプレックス」三井ホーム小松氏

「MOCXION INAGI(モクシオン稲城)」
三井ホーム「MOCXION INAGI(モクシオン稲城)」のメディア向け完成現場見学会の取材を終え、帰りかけたときだ。同業の女性記者が「これって鉄かコンクリか木造か分かりませんよね」との趣旨の質問をした。すぐさま、同社技術研究所研究開発グループマネージャー・小松弘昭氏は「現しにしないといけないというのは木造コンプレックスの裏返し。木の性能、コストなど科学的・合理的なことのほうが大事」と言い切ったではないか。
この会話を傍で聞いていた記者は、一瞬「コンプレックス」は「complex=複合」という意味なのかとも考えたが、両者のやり取りから「complex」は明らかに「劣等感」という意味で小松氏は用いたはずだ。
記者は森林・林業、木造の取材を始めた10年くらい前から、建築基準法の耐火・防火基準は、わが国の伝統的な木造建築の歴史・文化をぶち壊し、欧米の鉄やコンクリで埋め尽くそうという陰謀であり、元に戻すには耐火・防火基準の緩和と、意匠・デザインは現しにすべきとずっと主張してきた。美しい木肌・木目を石膏ボードなどケミカル製品で覆い隠すのは、女性に例えればせっかくの美顔・美肌に安物のどうらんを塗りたくるのと一緒ではないかと。
それを小松氏は「木造コンプレックス」と昂然と語った。頭をどやされたような気がした。しばし考えた。なるほど。「皆さんは現しがいいと仰るが、確かに風雨にさらされ時と共に朽ちていくのも風流かもしれませんが、木の本質を知っていただけるなら、外観をどのように覆っていただいてもかまいません」とみどりの女神(いつの間にみどり=山の神は女神になったのか)が囁いているのだろうか。それでも記者は現しがいいと考えるが。
そういえば、「今度の美人会長も楽しみにしている」と発言した福島県相馬市の立谷秀清市長も、「顔のきれいな子は賢いことを言わないときれいに見えない」と語った静岡県の川勝平太知事も、女性の外形差別だと批判を浴び謝罪した。作家の西加奈子氏は「日本一賢い猫が、あなたの呪縛を解きほぐす 自分を『ぶす』だと思っている全女子におくります」という帯付きの「きりこについて」(角川文庫)という小説を発表した。
木も同じことなのか。この日、三菱地所、住友林業などは「一般社団法人日本ウッドデザイン協会」を設立した。関係者らで、現しを求めるのは木造コンプレックスなのかどうか論じていただきたい。小松氏の指摘は一考に値する。顔や外観の呪縛から解き放たれたら世の中はひっくり返る。

壁(左)と床の実物大模型
賃料は「調布並み」でも申し込み殺到 三井ホーム「稲城」の木造5階建て賃貸
美人を美人と褒めてどこが悪いのか/居直り記者が男女差別を考える(2021/11/15)
賃料は「調布並み」でも申し込み殺到 三井ホーム「稲城」の木造5階建て賃貸

「MOCXION INAGI(モクシオン稲城)」
三井ホームは12月8日、わが国最大級の木造5階建て(1階はRC造)賃貸マンション「MOCXION INAGI(モクシオン稲城)」のメディア向け完成現場見学会を行った。
物件は、京王相模原線稲城駅から徒歩3分、稲城市百村の第2種住居地域(建ぺい率80%、容積率200%)に位置する敷地面積約1,499㎡、5階建て(1階:RC造、2~5階:木造)延べ床面積約3,738㎡の耐火ハイブリッド構造賃貸マンション51戸。間取りは2LDK(50.82~56.10㎡)48戸と3LDK(69.89~96.14㎡)3戸。募集対象の2LDK・3LDK47戸の賃料は122,000~150,000円。共益費は8,000円。設計・施工は三井ホーム。デザイン監修はアーキヴィジョン広谷スタジオ。着工は2020年11月。竣工は2021年11月。
この物件についてはこれまで2度書いているので、そちらを参照していただきたい。今回の見学会では、同社担当者が〝安かろう悪かろうの木賃アパート〟〝木は燃える〟などのイメージ・課題が払しょくされたと胸を張り、何と賃料は「稲城」ではなく4割増しの「調布」の相場価格で募集したところ瞬く間に埋まったことを聞き、口から心臓が飛び出すほど驚いた。さらにまた、「現しにしないといけないというのは木造コンプレックスの裏返し」という言葉に頭をどやされたような気がした。リアル取材の大切さを改めて学んだ。
まずは、同社施設事業本部事業推進室営業推進グループ長&事業推進グループ長・依田明史氏が見学会の冒頭で語った内容を紹介する。
依田氏は、これまでこの種の賃貸マンションは「アパート」としてしか募集できなかったが、プレハブ協会と大手の募集サイト運営会社がマンションの定義を決め、首都圏不動産公正取引協議会の了解を得た結果、今年12月6日からは「マンション」として募集することが可能になったインパクトは大きく、「木造=安い」というイメージ・課題が払しょくできたと話した。
次に、劣化対策等級3、断熱等性能等級4、一次エネルギー消費量等級5、ZEH-Mなどを取得し、エンジニアリングレポートで鉄筋と同等の性能があることが可能となり、建物売却時の価格に反映されると強調。
そして、これまで行った現場見学会には不動産業、建設業、金融機関を中心に千数百人が参加し、11月12日から47戸を対象に入居者を募集したところ、9割強の申し込みがあり、賃料は「稲城」(6.5千円/坪)ではなく「調布」(8.4千円/坪)に設定したことについて、「かなり気をもんだが、びっくりするほどの反響を頂いた」と話した。
さらにまた、入居募集の際にアンケートをとったら、「稲城だから」という回答(30%)の次に「木造に興味がある」と回答した人は20%に上ったことについて「これほど木造に理解を示される方が多いのに驚いた」と述べ、「木造の概念を払しょくできた」と締めくくった。「払しょく」は少なくとも3度は使ったはずだ。

エントランスホール(木は本物で、三井不動産グループの北海道の社有林のトドマツ)

510号室のリビング(床はシート張り)

天然木のサイン
◇ ◆ ◇
記者はこの賃料設定に驚いた。分譲マンションの相場は、「調布」は坪単価350~360万円で、「稲城」の事例はないが、仮に同地で分譲したら坪単価は260~270万円だろう。同社の賃料設定と符合する。
驚いたのはほかにもある。見学会で公開された90㎡台の非賃貸住戸では、分譲マンション並みの性能を有することを実証する実験が行われていたが、同時にエアコン一つで全館空調を実現する実験が行われていたことだ。スペースは約半畳大で、いま市場に出回っている他社商品よりコストがかなり抑えることができる手応えがあるようで、三井不動産レジデンシャルの分譲マンションに採用することを視野に入れているとのことだった。
さらにもう一つ。RC造と比較してコスト・工期を約1割削減したのもさることながら、これまでの現場見学会、入居募集活動で、RC造1階のエントランスで受け付けを担当したスタッフは足腰の痛みを訴えたのに対し、木造部分の2階以上で対応した担当者はそれほどでもなかったということを聞いた。木の快適性はここでも証明されたということか。

全館空調の実験(エアコンは普通のものだそうだ)
外貌の呪縛を解き放つか 「現しを求めるのは木造コンプレックス」三井ホーム小松氏
「木」の中層マンション「MOCXION(モクシオン)」第一弾 三井ホーム「稲城」見学会(2021/7/7)
木造マンションの試金石目指す 三井ホーム5階建て延べ床3,700㎡の賃貸着工へ(2020/9/29)
土地の価値を最大限に引き出す好物件 コスモスイニシア「目黒学芸大学」
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「イニシアテラス目黒学芸大学」コリドー
コスモスイニシアが分譲中のタウンハウス「イニシアテラス目黒学芸大学」を見学した。駅から徒歩4分の第一種低層住居専用地域に位置するメゾネット型全15戸で、目黒通り沿いのインテリアショップ3店とコラボしたインテリアデザイン、限られた空間を有効利用したプランがいい。モデルルームには全て本物の観葉植物を配することで全体の美しさを引き立てている。土地の価値を最大限に引き出した好物件だ。
物件は、東横線学芸大学駅から徒歩4分、目黒区鷹番二丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率70%、容積率150%)に位置する地下1階地上3階建て全15戸。専有面積は60.94~87.05㎡、坪単価は480万円。2021年7月に竣工済み。施工は新三平建設。
11月13日から販売を開始し、これまでに供給した全11戸を成約。残りの4戸は年明けに分譲する予定。9月上旬から建物内モデルルームをオープン、約2か月で130件の来場者を集めている。
現地は、駅前東口商店街から一歩入った1低層の住宅街。住戸プランは全戸南向きで、地階・1階の66㎡が8戸、2階・3階の80~87㎡が3戸、60~65㎡が4戸。広いプライベートアプローチ、DEN、SOHO利用、グレーチング床のバルコニー、ルーフバルコニー、アトリエスペース、吹抜け、グラステラスなど多彩なプランを用意している。
モデルルームは、目黒通り沿いのインテリアショップ「karf」、「ACME Furniture」、「souks」の3社とコラボ。「karf」はアンティーク家具を多用した北欧タイプ、「ACME Furniture」はミリタリーグリーンを壁クロスに用いた個性的な空間演出、「souks」は木・ガラス・金属・レザー・大理石などの異素材を組み合わせた斬新なデザインとなっている。
一級建築士で同社分譲事業部分譲一部プロジェクトマネージャー・岡端知子氏は「全戸南向きで、構造、設備、デザインなどが高い評価を頂いている。残り4戸は60㎡、65㎡のタイプで年明けに分譲する予定」と語っている。

「karf」モデルルーム

「souks」モデルルーム

「ACME Furniture」モデルルーム

2階・3階の住戸は全てルーフバルコニー付き

コリドー植栽マス
◇ ◆ ◇
同駅圏では、モリモトが昨年分譲した全戸100㎡以上の億ション「ディアナガーデン鷹番」の現地を見ている。坪単価は500万円を突破していた。今回の物件は、住居表示は同じ「鷹番」だか、モリモトの物件とは駅の反対側で、タウンハウスなので坪500万円はしないと予測した。その通りだった。普通の低層マンションだったら、この単価では分譲できないはずで、リスクも伴う。価格を抑制し、かつ一定のニーズがあるタウンハウスにしたのは大正解だろう。
東西軸が長い敷地形状を生かし、全戸南向きを実現し、住戸南側には植栽帯(グラステラス)、北側には石とタイルを敷き詰め、植栽マス・壁面緑化を施した広いコリドーを演出しているのも目を引いた。
そして何よりいいのは、地域のインテリアショップとコラボして、それぞれ個性的なデザインを提案していることだった。使用されている家具・什器、クロスなどはそれほど高価なものではないと見たが、随所に本物の観葉植物を配することで、居住空間の美しさを一層引き出している。
同じような緑の演出は、同社の「イニシア中央湊」でも見学しており、そのときも岡端氏に説明を受けた。双方とも岡端氏が商品企画・デザインに深く関わっているはずだと思い、改めて名刺の肩書を確認したら「一級建築士」とあるではないか。深くかかわっているどころか、これは間違いなく岡端氏が主導しているプロジェクトだ。ただの一級建築士ではない。今回は、モデルルームのコーディネートも行っており、販売のプロでもある。
デベロッパーの皆さん、インテリアデザイナー・コーディネーターの皆さん、記者はこれまで何度も〝フェイクを止めよ〟と書いてきた。おもてなしの欠片もない、100円ショップで売っているようなまがい物の観葉植物がどれほどモデルルームを貧相なものにしているかを考えた方がいい。コスモスイニシアを見習ったほうがいい。
モデルルームで驚いたものは他にもある。階段下をオープンスペースにし、シェルフで“見せる収納”を実現したのは同社の「代々木上原」でも見たのだが、今回は何と地階・1階の8戸を洗濯機置き場にしているではないか。階段下の床を下げ、そこにトイレを設けていた戸建てを見学したことはあるが、洗濯機置き場というのは初めて見た。意表をつくアイデアだが、これはとても合理的な考えだ。約1畳大のデッドスペースを毎日使うスペースに転換させると同時に、その分だけ新たなスペースを生み出した。これまた凄い!

モデルルームの観葉植物(そんなに高価でもないし、手入れなども簡単)

階段下の洗濯機置き場(左)と収納
パーカーズとコラボの第三弾 コスモスイニシア「中央湊」の緑の質と量に感動(2019/6/3)
モリモト 全戸100㎡以上の億ション「ディアナガーデン鷹番」14戸分譲(2020/2/29)
「ザ・ロアハウス」⇒「テラス」第一弾 一低層のコスモスイニシア「代々木上原」(2021/2/12)
コスモスイニシア タウンハウス「吉祥寺」好調/「字か小さい!」「あんたがアホ」(2019/3/18)
敷地の難点を逆手に取る手法ヒット コスモスイニシア「ザ・ロアハウス杉並高井戸」(2014/4/18)
コスモスイニシア タウンハウス「代々木初台」見学会(2013/7/31)

