〝時短〟テーマ 袖壁・庇・通風窓付き 総合地所「キラリスナ」 紅白ランが歓迎
「キラリスナ」の袖壁・庇・通風窓
総合地所(事業比率60%)は6月12日、NIPPO(同20%)と名鉄不動産(同20%)とのJVマンション「TOKYOキラリスナPROJECT」の記者見学会を行った。アルコーブの代わりに袖壁・庇・通風窓を設けているのが特徴で、そのアイデアに唸ってしまった。販売事務所には両性具有の紅白のランの花が飾ってあったのにも驚愕した。
物件は、東京メトロ東西線南砂町駅から徒歩13分、江東区東砂8丁目に位置する15階建て267戸。専有面積は65.04~80.00㎡、予定価格は3,900万円台~6,800万円台、坪単価は約250万円。設計・施工は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。第1期は6月下旬で約70戸を供給する。
現地は準工エリアだが、マンション化が進み、嫌悪施設は見当たらなかった。敷地東側のスーパー堤防までは徒歩2~3分。小学校は徒歩2分、中学校は徒歩3分。建物内に認可保育園を併設する。
建物は、荒川の花火大会が眺望できる(5層以上か)東向きと南向き中心の3棟構成。共用施設には大型ランドリーも設置する。専有部はディスポーザー、食洗機、2.1メートルハイサッシなど。
記者発表会で同社分譲事業部営業二部営業課主事・石井大祐氏は「都心への利便性に加え、共用施設・専有部分の〝時短〟に結びつく商品企画にこだわった自信作」とアピールした。
「TOKYOキラリスナPROJECT」完成予想図
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坪単価250万円は相場か。高くもないが安くもない。グロス価格を抑えるため戸当たり面積を圧縮(69㎡の3LDKが中心)する一方で、間口を6メートル確保し、アルコーブの代わりに袖壁・庇・通風窓を設けているのが特徴。モデルルームも69㎡のタイプ。
これには正直驚いた。この種のアイデアを見たことがない。庇付きというのはおそらく業界初だろう。袖壁の奥行きは約50センチ。これ以上奥行きをとると外廊下に影響するためか。お客さんの評価も高いという。
記者は、そこまでやるなら室外機の上には花台を設けるとか、室外機に面する居室は腰窓にするなどしたほうがよかったと思った。
玄関を入ってすぐにメニュープランの「グリーンパティオ」を提案しているのもいい。半畳ほどの広さだが、フェイクでなく本物の観葉植物を展示していた。ここにフェイクの観葉植物を置いたら、間違いなくお客さんからは総スカンを食らったはずだ。他の専有部にも本物の観葉植物が配されていた。記者の主張が少しは理解されたかと勝手な解釈をした。
モデルルームを見学しながら競合物件のことを考えた。販売担当は「当社も売主になっている『ALOHA(アロハ)』と競合している。部署は隣りあわせ。お互いが相乗効果となり成功するように願っている」と話した。
モデルルーム(観葉植物はほとんどが本物だった)
ガーデニアラウンジ
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どうでもいいことを一つ。販売事務所に入ってすぐ、立派な3鉢のランが目に飛び込んできた。記者の目を射たのはランの花そのものではない。そのうちの1つの鉢は3本立てだが、何と花は赤と白に分かれていたからだ。フェイクかと思って触ってみたが本物だった。訳知り顔が気になったが、受付の女性も「こんなの見たことない」と、驚きを隠さなかった。
もう取材どころでなくなった。紅白に二分されたランの花などどこかで見たような気もするが、突然変異か新種か、ノーベル賞ものか、ずっと考えた。
帰りしな、失礼だとは思ったが、スカートの裾をめくるように重なっている花の後ろ側と花弁の裏をのぞいた。瞬時に理解した。地は白。花弁の表がスプレーか何かで着色(今回は赤)されていたのは間違いない。
これにはもう絶句。称賛もした。本物とフェイクを越えたと。しかし、すぐばれるような嘘はつかないほうがいい。記者は裏の裏をかくのが仕事だ。記者のような助平もいることを念頭に入れるべきだった。
紅白に2分されたランの花
〝待つわ〟ピアキッチン4割に設置 レベル高いが一層の差別化を ポラス「浦和美園」
「ルピアグランデ浦和美園」完成予想図
ポラスグループの中央住宅は6月1日、グループ最大級のマンション「ルピアグランデ浦和美園」の第1期分譲(50戸)を6月16日(土)から販売開始すると発表した。坪単価は150万円。同社オリジナルの「ピアキッチン」付きを約4割に高め、食洗機、ディスポーザー、バックカウンター・吊戸棚、98センチの廊下幅、複層ガラスなどを標準装備。この単価でこれほどの設備仕様を確保しているマンションはまずない。それをいかに訴えられるかがカギを握る。
物件は、埼玉高速鉄道線浦和美園駅から徒歩8分、さいたま市岩槻区美園東一丁目に位置する15階建て全340戸。専有面積は65.41~83.39㎡、第1期(50戸)の予定価格は2,400万円台~4,500万円台、坪単価は150万円。竣工予定は2020年1月下旬。施工・設計は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。
現地は、総開発面積約313ヘクタールの「みそのウイングシティ」の一角で、徒歩1分には約14,000㎡の浦和美園4丁目公園が完成し、竣工までに保育園や学童クラブ、クリニック、小学校などが開設される。
建物は、ほぼ南東向きで、平置駐車場が238台、サイクルポートが340区画、近隣住民にも開放する「パームガーデン」、街とつながる「エントランスガーデン」などを整備する。敷地面積12,000㎡には約13,000本の樹木を植栽する。
住戸プランは、「ピアキッチン」付きを132戸(全体の約38%)採用。廊下幅約98センチを確保し、ダウンライトを天井の中央ではなく一方の壁側に寄せることで〝ギャラリー〟空間を演出。ディスポーザーもシンクの端に寄せることで、シンク下の収納スペースが有効に使えるようにしている。このほか、食洗機、「かくれんBOX」などを標準装備、埼玉県初のセキュリティシステム「ワイレモ」を導入している。
見学会に臨んだ同社取締役事業部長・金児正治氏は「12年前、イオンモールがオープンしたのと同時期に172棟の戸建てを分譲したエリア。ここで340戸の大規模マンションを分譲することになって感慨深い。街のランドマークになるよう隣接する戸建て街区との複合開発として位置づけた。2018年3月期のマンション事業の売上高は102億円となり、初めて100億円を突破した。近くシニア向け、コンパクト、つなぐをコンセプトにした新しいファミリー向けも投入し、果敢にチャレンジしていく」などと語った。
「パームガーデン」
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この日は、梅雨入りはまだなのに初夏のように暑かったのだが、金児氏と同社マインドスクェア事業部 マンションディビジョン部長・中島教介氏、販売代理の長谷工アーベストの担当者がそれぞれ熱く語ったのに圧倒された。
中でも、中島氏がピアキッチンについて触れ、「これまで分譲したマンションのピアキッチン付きは人気が高く、早く売れてしまい、購入できなかったお客さん数十組から『次のピアキッチン付きを待つわ』と仰っていただいている」と語ったことに驚愕もし、さもありなんとも思った。
ピアキッチンは同社が初採用したときから称賛し、折に触れ記事にもしてきた。ショートスパンでは採用が難しいからだろうが、これまでの供給物件では3割くらいしか設置されてこなかったのではないか。
今回は一挙に4割近くに増やす。大正解だ。見出しにはあみんさんの「待つわ」を取った。ただ、いつまでも待たされたらそっぽを向かれるぞ!
キッチンの天井高もしかり。一般的なマンションのキッチンの天井高は2200ミリくらいしかない。床下に通す排水管は勾配を持たせなければならないからだが、ピアキッチン付きはリビング天井高(今回は2500ミリ)と同じ高さで設置できるのが特徴だ。その他の商品企画レベルも高い。
しかし、その一方で注文もある。記者は同社のマンションを8割くらいは見学している。最近では「新小岩」「西大宮」「妙典」などだが、きめの細かい商品企画は舌を巻くほどだ。
一つだけ例を示す。引き戸がいいのは言うまでもなく、最近はどこもソフトクローズ機能付きにしている。これをいち早く採用したのが同社だし、開閉両方をソフトクローズ式にしたのは同社が初めてではなかったかと記憶している。今回の物件はそうではなかった。収納もこれまでの物件と比べ仕上げレベルは明らかに劣る。
坪150万円だからと、他社と同じだからと納得してしまう部分もあるが、同社の戸建てと同様、マンションでも圧倒的な差別化を図り、今後参入する事業でも存在感を示そうとするのであれば、利益率を落としてでも仕様レベルを上げるべきだ。外観も、大規模マンションは分棟はともかく分節手法を用いたデザインにすべきというのが記者の持論だ。
さらに言えば、商品企画レベルの高さをパンフレットやホームページでは訴え切れていないと思う。それしかないのならともかく、価格の優位性だけでは訴求力は弱い。
ついでに、同業の記者にも一言。その商品が優れているか劣っているのか、判断するにはたくさん商品をみないと分からない。ハウスメーカーの記者はデベロッパーのマンションをほとんど見ないのではないか。
見る目を養わないと、いつまでたってもニュース・リリースを引き写すことしかできない。リライターに成り下がっていいのか。
ピアキッチン
ディスポーザーの位置に注目
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産休・育休から復帰したわが娘のようなマンションディビジョン部の西牟田奈津子氏に約1年ぶりにお会いし、二人の初々しい新入社員を紹介され舞い上がった。もう10年くらい前か、西牟田氏が商品企画開発に熱心だったので、当時、業界の最先端を走っていた大京に頼んで、あるマンションのモデルルームを一緒に見にいったことがある。いまは完全に立場が逆転した。教わるのは記者だ。
もう一つ。帰りの電車でも同社のこれまた育休明けのかわいい神田氏と話すことができたのが何よりうれしかった。阿波踊りより一緒に酒を飲みたい。
販売事務所の入口で、サッカーワールドカップ日本代表に選ばれた浦和レッズの槙野選手の等身大に近いボードに接することができたのは、フェイクの観葉植物を見たのと同程度の印象しか受けなかった。
左端が新入社員の塚本雅美氏と、右端が川尻裕貴氏(左から2人目が槙野選手)
埼玉県最大級 1,400戸の「SHINTO CITY(シント シティ)」始動 東京建物ほか
「SHINTO CITY(シント シティ)」
東京建物、住友不動産、野村不動産、近鉄不動産、住友商事、東急不動産は5月31日、さいたま市新都心エリアで埼玉県最大級の総戸数約1,400戸の分譲マンション「SHINTO CITY(シント シティ)」の開発に着手したと発表した。2018 年秋にモデルルームをオープンする予定。
埼玉県内で駅徒歩5 分以内かつ1,000 戸以上の物件は22 年ぶりの供給で、約2,880 ㎡の緑地空間やオープンスペースを確保し、居住者のコミュニティを支援する。開発に当たって、共用施設は1 万人以上の生活者を対象に実施した「幸せに関するアンケート」に基づく意見をもとに商品・ソフトサービスをHITOTOWAと提携して提案する。
物件は、JR京浜東北線・東北本線(宇都宮線)・高崎線さいたま新都心駅から徒歩5分の都市計画事業北袋町一丁目土地区画整理事業施工地区7 街区に位置する総開発面積26,000 ㎡超の15 階建て約1,400戸。第I・第II街区は約1,000戸で、専有面積は66.40 ㎡~92.15 ㎡。施工は長谷工コーポレーション。竣工予定は第I街区が2020年12月下旬、第II街区が2021年12月中旬。
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まだ先の話だが、果たして単価はいくらになるか。坪単価230万円くらいだったらよく売れると見たが、そこまでは安くないはずだ。坪250万円はないのではないか。
〝二者択一は終わりにしよう〟 川口初の免震×長期優良 絶好調 野村不動産のタワー
「プラウドタワー川口」完成予想図
さすがプラウド-野村不動産が先月から分譲を開始した「プラウドタワー川口」を見学した。川口駅西口の環境が整ったエリアの一角に位置し、川口市初の免震×長期優良で、第1期1次の100戸がほぼ完売し、引き続き第1期2次18戸が今週末に追加販売される。坪単価は市最高峰の290万円。
物件は、JR京浜東北線川口駅から徒歩4分、川口市飯塚一丁目の商業地域に位置する21階建て全200戸。専有面積は57.48~81.55㎡。坪単価は290万円。竣工予定は2020年1月上旬。施工は三井住友建設。設計・監理はジーエー建築設計室。
現地は、再開発によって街並みが整備された駅西口の商業地域のはずれ。川口総合文化センターと約3万㎡の川口西公園に隣接。再開発が進行中でデパートなど商業施設が集積する駅東口とはぺディストリアンデッキで結ばれている。現地の道路を挟んだ南側は準工地域だが、嫌悪施設はほとんどなく、50mの高さ規制(商業地は100m)も敷かれていることから、将来にわたって日照、眺望などが担保されている。
川口駅圏のタワーマンションとしては16棟目(東口が10棟、西口が6棟)。免震マンションは川口駅圏で2棟目(もう1棟は東口の大成有楽不動産の物件)、長期優良住宅認定は、埼玉県で4棟目(他は同社の「大宮」「武蔵浦和」と三井不動産レジデンシャル「三郷中央」)。免震×長期優良は川口市初。
建物はL字型で、南向きが約70%、東向きが約30%。1階部分に地域貢献施設(認可外保育施設)、コミュニティパークなどが整備される。住戸プラン・商品企画は、トータルで1万件を越えるセレクトシステムを採用しているのが特徴。例えば、使い勝手重視のシステムウォール吊戸棚、収納重視の4ドア吊戸棚、開放感重視の背面上部吊戸棚がセレクトでき、食洗機の代わりに収納を増やすことが可能。キッチン天板も天然御影石と人造大理石(天板+側面)が選べる。ディスポーザー、ミストサウナ、マルチストレージなどが標準装備。
販売を担当するマンションギャラリーのチーフ・平野拓也氏は、「西口のタワーは10年ぶり。申込者の4割が市街で、うち23区が3割。広域から集客できており、一挙に100戸を供給するのは埼玉県では久々ではないか」と話している。
エントランス
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熟知とまではいかないが、川口市内のマンションは100件は見学しているはずだ。主だった物件は全て網羅している。
今回のシアターを見てもう笑うしかなかった。これほど過不足なく物件特性を8分間の間に表現しきった物件はあまりないはずだ。〝二者択一は終わりにしよう〟-商品企画担当の皆さんはこんなコンセプトを打ち出せるか。
ナレーションは他と同じ、手垢にまみれた歯が浮くような言葉に満ちていたが、立地・物件特性に嘘は一つもなかった。過去25年間で免震×長期優良は24件しかなく、しかも、そのほとんどは中央線より南側で、それより北はこの物件だけと強調するあたりはさすがというべきか。シアターを制作した読売広告社ともども称賛に値する。
モデルルームもよく出来ている。引き戸を多用しているのもそうだが、携帯電話やスマートスピーカーなどの充電ができるカウンター付き収納が標準装備されていた。
様々な機器の充電ができる収納
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坪単価はひょっとしたら川口駅圏の過去最高値285万円を突破し、300万円台の大台に乗るのではないかかと思ったが、平野氏はあのジャパネットたかた高田明会長のような甲高い声ではないが、自信たっぷりに「290万円です」と答えた。もちろん市内の高値更新だ。(数年後には駅東口の同社の再開発マンションが300万円を突破かるのは間違いないが)
平野氏はまた「社内では安すぎたのではないかという声が上がっています」とも話したが、高値追究しなかったのは正解だと思う。腹八分というではないか。残りの2分はお客さんが「安く買ってよかった」と満足するようにしたほうが後々の効果となって返ってくるはずだ。
それにしても、あの坪単価265万円だった「プラウド赤羽」が中古で坪単価400万円に跳ね上がっているとは…。
記者は都民で、荒川を越えて埼玉県や千葉県民になろうとは思わないが、川一つ隔てるだけでこんなに単価が違う。平野氏は「川口は〝埼玉の武蔵小杉〟と言われています」と言ったが、誰がそんなことを言いだしたのか。ここでどっちがいいかコメントしないが、タワーの数はいい勝負か川口が上か。単価は小杉が上で350万円が相場。
川口駅西口(左の建物が川口総合文化センターで、その右にマンションが建つ)
住友不動産 武蔵小山の駅前再開発着工 41階建てタワー棟などの複合
「武蔵小山駅前通り 地区第一種市街地再開発事業」完成予想図
住友不動産は5月9日、同社が地権者と参加組合員として事業参画している「武蔵小山駅前通り 地区第一種市街地再開発事業」を4月23日に本格着工したと発表した。2021年竣工予定。総事業費は約300億円。
事業地は、東急目黒線武蔵小山駅の南側徒歩1 分に位置。施行区域は0.7haで、地上41階建ての住宅を中心とした超高層タワー棟と商業店舗や公益施設などが入る中層棟、低層棟で構成される総延べ床面積約53,460 ㎡の大規模複合開発。
景観風致地区の一角 大和地所レジデンス「ヴェレーナグラン山手」
「ヴェレーナグラン山手」完成予想図
大和地所レジデンスが近く分譲開始する「ヴェレーナグラン山手」を見学した。「山手地区景観風致保全要綱区域」内に位置する官舎跡地の全116戸。坪単価260万円弱リーズナブルで早期完売しそうだ。
物件は、みなとみらい線元町・中華街駅から徒歩12分、横浜市中区千代崎町2丁目に位置する7・6階建て2棟の全116戸。専有面積は70.38~102.53㎡、価格は未定だが、坪単価は260万円弱になる模様。竣工予定は平成31年8月中旬。売主は同社のほか三信住建。設計・監理はスタイレックス。施工は大勝。
現地は、元町・中華街駅6番出口からなだらかな坂をくだった高さ規制20mの「山手地区景観風致保全要綱区域」内。「港の見える丘公園」へは徒歩6分。
建物は2棟構成で、住戸はほぼ南向き。駐車場(設置率約70%)は地下方式を採用。外周に緑を配置し、敷地の中央に水盤を設けたオーナーズラウンジを設置している。
住戸プラン・基本性能・設備仕様は、オープンエアリビング(12戸)、プライベートテラス(16戸)のほか、玄関・廊下は大理石、メーターモジュールの廊下幅、キッチンサイドも含む黒御影石のカウンター、二重床・二重天井、食洗機、ミストサウナ、玄関折上げ天井(一部住戸)など。
モデルルーム
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現地を見るまでは、駅からの坂がきついので住むにはいいが、通勤・通学には難儀するのでマイナス材料と考えていた。ところが、販売を担当する同社の堀川知宏氏から「6番出口からは坂はなだらか」と聞き、合わせて坪単価が260万円弱であることを知らされて〝これは売れる〟と直感した。
設備仕様レベルも高い。81㎡のモデルルームのインテリアデザインを担当したのは三井デザインテックの女性のようだが、凹凸を施した黒の建具・面材や黒御影石のキッチンカウンターなどが美しい。そして何より、リビングの梁の部分に一部細工を施したガラスを張ることで、その低さを全く感じさせない工夫がいい。
梁の処理が抜群(リーリングの影がガラスに映り、梁がないように見える)
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港が見える丘公園の「イングリッシュローズガーデン」のバラの写真をたくさん撮ったので紹介する。ややピントが甘いのは、さわやかな薫風にほほを撫でられてのぼせ上り、バラの香りに酔いしれ、バラと一緒にゆらゆらと身体を揺らめかせた結果、高くもない安くもないカメラも揺れたからであります。とにかく、ここに住めばこんな美しい眺めが日常手に入るということです。
ヒルトップの社宅跡地 「オレンジラボ」がいい 大成有楽不「鷺沼」
「オーベル鷺沼マスターレジデンス」完成予想図
大成有楽不動産が分譲中の「オーベル鷺沼マスターレジデンス」を見学した。鷺沼駅から徒歩4分、ヒルトップのNHK社宅跡地の中層全56戸。商品企画「オレンジラボ」が秀逸で、売れ行きも極めて順調だ。
物件は、東急田園都市線鷺沼駅から徒歩4分、川崎市宮前区鷺沼一丁目に位置する5階建て全56戸。専有面積は58.37~75.13㎡、5月下旬分譲予定の第3期(3戸)の予定価格は5,400万円台~6,500万円台(58.37~72.40㎡)。坪単価は320万円。竣工予定は2018年5月下旬。設計・監理は安宅設計。施工は大末建設。
昨年11月から分譲開始し、これまでに45戸が成約済み。販売を担当する同社マンション事業部事業室(第一)主任・勝亦啓介氏は「いいペースで売れています。購入者は地元と隣接区、世田谷区などで約8割。ヒルトップなので上階からは住宅街が見渡せ、西側住戸からは富士山も眺望できる。収納などお客さんの評価も高い」と話した。
現地は、戸建てや中層マンションが建ち並ぶ同駅圏でもっとも標高が高い閑静な住宅街の一角。敷地はNHK社宅跡地。
建物は、高さ規制(15m)があるため5階建てで、コの字型の配棟計画。外壁に大判のタイルを張り、黒のアルミ素材やアースカラーを採用するなど縦と横のラインを組み合わせた端正な外観にしている。
住戸プランは、ファミリー向け3LDKが中心。設備仕様は、同社オリジナルの商品企画「オレンジラボ」をフル装備しているほか、ディスポーザー、食洗機、フィオレストーンキッチン天板、二重床・二重天井、壁付け水栓など。
モデルルーム
収納
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モデルルーム、現地を見て売れるのは当然だと思った。現地の近くには鷺沼駅圏の坪単価最高値327万円のコスモスイニシア「イニシア鷺沼レジデンス」(28戸)があるが、それより単価は若干低目だが、絶好の住宅地であることに変わりはない。昨年見学した「オーベル東林間レジデンス」と同じ印象を受けた。
モデルルームもよくできている。同社の「オレンジラボ」についてはこれまでたくさん書いてきたので省略するが、こと収納に関しては同社が№1ではないか。今回も、玄関収納の「マルチシューズシェルフ」の鏡面仕上げ、キッチンサイドに設けた大型の「マルチシェアストレージ」がいい。リビングには物干しポールを設置し、壁付水栓、扉裏収納、引き戸の多用など、とにかくかゆいところに手が届くきめ細やかさだ。
もう一つ嬉しかったこと。販売事務所とモデルルームには小物を除きほとんどが本物の観葉植物が置かれていた。壁面にもたくさん植物が飾られていた(サントリーミドリエでなかったような気もする)。
どことは言わないが、販売事務所のエントランスに5本立てのフェイクのランが置かれていたのに記者は驚愕した。広告代理店から贈られたものだが、こんな失礼なことを平気でするわが業界が情けない。お客さんを何だと思っているのか。代理店はスポンサー(デベロッパー)の顔色(企業規模や取引額の多寡)をうかがいながらフェイクにしたり本物にしたりしているのか。
勝亦氏にも聞いてみた。「ここにもまさか造花のランを置かなかったでしょうね」と。勝亦氏は笑って「いえいえ、当初は本物のランをちゃんと置いていました」と答えた。
エントランス
現地近くの桜並木
明和地所 コンパクト〝ラベルヴィ〟販売好調 完成在庫はほぼゼロ
「クリオラベルヴィ新御徒町」完成予想図
明和地所のコンパクトシリーズ〝ラベルヴィ〟が好調だ。2016年の第一弾「クリオラベルヴィ市ヶ谷」31戸をはじめ、これまで東京、神奈川、福岡で10棟を分譲しているが、いずれも販売は好調に推移しており、完成在庫はほとんどない。最近分譲開始した「日本橋浜町」と近く分譲する「新御徒町」も販売担当者は手応えを感じているようだ。
同社はまた先月、福岡市に「クリオライフスタイルサロン福岡」をオープンし、今後分譲する「博多」56戸、「天神」65戸の販売拠点にする。
先月末に分譲を開始した「クリオラベルヴィ日本橋浜町」は、都営新宿線浜町駅から徒歩4分の10階建て24戸(分譲21戸)。専有面積は25.22~43.44㎡、先着順(5戸)の価格は3,385万~5,397万円。坪単価390万円。
近く分譲する「クリオラベルヴィ新御徒町」は、都営地下鉄大江戸線・つくばエクスプレス線新御徒町駅から徒歩3分の13階建て69戸(分譲66戸)。専有面積31.51~53.47㎡、第1期(8戸)の予定価格は3,400万円台~6,300万円台。坪単価390万円。
現在分譲中の物件では、今年1月分譲の東急東横線・目黒線新丸子駅から徒歩4分の「武蔵小杉」32戸(坪単価340万円)は残り7戸。
今年1月から分譲の都営浅草線馬込駅から徒歩5分の「馬込」28戸(坪単価336万円)は残り2戸。
昨年6月スタートの東京メトロ南北線志茂駅から徒歩1分の「赤羽東」58戸(坪単価290万円)は残り3戸。
銀座7丁目にある常設の「ライフスタイルサロン」で、販売を担当する勝遼氏は「日本橋エリアは乱戦模様ですが、コンパクトタイプは意外と少なく、坪単価も400万円を切るなど価格的優位性もある。『仲御徒町』も駅に近く、反響もいい。当社の女性によるコーディネートの評価も高い」と販売に自信を見せていた。
「ライフスタイルサロン」
1カ月で半数が成約 伊藤忠都市開発「クレヴィア碑文谷一丁目」好調スタート
「クレヴィア碑文谷一丁目」完成予想図
伊藤忠都市開発が分譲中の「クレヴィア碑文谷一丁目」を見学した。渋沢栄一が開発した「碑文谷」アドレスで、サレジオ教会、円融寺に近接し、桜並木に面する立地が評価され、分譲1カ月で半数が成約するなど好調なスタートを切った。
物件は、東急東横線学芸大学駅から徒歩15分、目黒区碑文谷一丁目に位置する5階建て全42戸。専有面積は57.24~114.16㎡、坪単価は390万円。竣工予定は2018年11月下旬。売主は同社のほか三信住建。設計・監理はアーキサイトメビウス。施工は谷津建設。
今年1月から案内会を実施し、これまでに全42戸のうち約60%が成約・申し込み済み。好調なスタートを切った。
現地は、桜並木に面した南西角地。サレジオ教会、円融寺にも近接。徒歩3分の「碑文谷二丁目」バス停から「目黒」駅まで直通約12分のアクセス。目黒区立碑小学校、目黒サレジオ幼稚園、ひもんや保育園など幼稚園・保育園から中学校までが徒歩10分圏内。
建物のデザイン監修はアーキサイトメビウス(今井敦氏)。白が基調の外観デザインで、住戸プランはワイドスパンの70㎡台、80㎡台のファミリー向けが中心。
設備仕様は、ディスポーザー、食洗機、陶器ボウル、ミストサウナが標準装備。このほか「良水工房」を採用したほか、玄関と廊下には折上天井を施している。
モデルルーム
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同社のマンションは先月、「クレヴィア文京関口」を見学した。坪単価は410万円だった。今回は「目黒区碑文谷」だ。駅からはかなりあるが、住宅地の格からしたら互角以上だ。坪400を超えるのか越えないのかが最大の関心事だった。
販売担当の伊藤忠ハウジング・倉津崇宏氏から坪390万円と聞いて、なるほどと思った。もう少し高くても売れるのだろうが、専有面積は70㎡台、80㎡台、100㎡超だから、グロスを抑えるために低めに設定したのだろう。
それが正解だったようだ。「歩留まり率は22~23%と高いのが特徴」で、1億5,000万円台の最高価格住戸も売れたという。
モデルルームは87㎡のタイプ。キッチンの対面にある約5畳大の洋室を親子のコミュニケーションの場や仕事場など多目的に利用できる造作家具付きのDENにしているのがなかなかいい。
DEN
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販売事務所の接客ブースに案内されてすぐ「亀屋万年堂」のお菓子を頂いた。倉津氏によると、地元のお菓子(亀屋万年堂は自由が丘)などをお客さんに提供することを伊藤忠都市開発に提案し、それが採用されたとのことだった。もちろん費用負担は伊藤忠都市開発。
何でもないことのようだが、お客さんはこのような〝おもてなし〟に感動する。このところ〝モデルルームのフェイクの観葉植物は止めよ〟としつこく書いているのも同じことだ。商品企画そのものがよくなければ話にならないが、接遇にもっと力を入れるべきだ。
歩留まりについても一言。業界の皆さんは、昭和58年の土砂降り市場の中、あの日本ランデッィク「パークハイツ鶴見」(378戸)がほぼ50%の歩留まりで即日完売したのをご存じか。需要は創造するものだ。
頂いた「亀屋万年堂」のお菓子
デザイン秀逸 第1期1次43戸が即日完売 伊藤忠都市・東急不「文京関口」(2018/4/7)
ポラス 1か月間で3割以上成約 キッチンテーブルに本物の花 「市川妙典」
「ルピアコート市川妙典」完成予想図
ポラスグループの中央住宅が分譲中の「ルピアコート市川妙典」を見学した。妙典駅圏では4年ぶりのマンション供給で、同社オリジナルのピアキッチンのほか、6つの生活提案「ポラスのしあわせメソッド」を盛り込んだ企画が評価され、この1カ月で31戸を成約するなど好調なスタートを切った。
物件は、東京メトロ東西線妙典駅から徒歩13分、千葉県市川市塩焼三丁目に位置する7階建て88戸。専有面積は58.57~83.65㎡、坪単価は230万円。入居予定は平成31年3月中旬。設計・施工は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。3月から販売を開始し、これまでに31戸が成約済み。
現地は、整然と区画割された区画整理事業地内の三方道路の角地。足元の外構部やアプローチに石積みの自然石をあしらうなど、外構に力を入れている。バルコニーはガラス手摺と木目調のアルミルーバー手摺を組み合わせ、縦のマリオンを際立たせるデザインが特徴。
住戸プランは、柱型の出ないアウトフレーム工法を採用。同社オリジナルのピアキッチン付きを23戸盛り込んだほか、玄関シューズインクロークに電動自転車用のコンセントを設置し、手をかざすだけで止水できるタッチレス水栓、スイッチ付きエコふるシャワーなど、同社グループの戸建てからヒントを得た6つの生活提案「ポラスのしあわせメソッド」を盛り込んでいる。
エントランス
モデルルーム
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妙典は久しぶりに訪れた。いい住宅街であるのは分かっているが、月に10戸も売れればいいと予測していた。販売事務所の申し込み状況を知らせるボードにバラの花がたくさん咲いているのにびっくりした。1カ月で全住戸の3割以上売れているではないか。
さらに驚いたのが、ピアキッチンのテーブルには本物のフラワーアレンジメントが飾られていたことだ。記者は同社にも「あなたたちは挽き板の床や無垢のドア、建具、壁などを標準装備としながら、どうしてまがいものの造花などをあちこちに置くのか」と挑発してきた。
それに今回は答えてくれたようで、同社マインドスクェア事業部マンションディビジョン参事・林弘之氏は「フェイクを使うなといつも言われるので活けている。10日間は持つ。販売事務所の観葉植物も全て本物、エントランスの壁も本物の石」などと胸を張った。
これでこそポラスだ。他社より優れた本物の木や石を多用しているのに、まがいもののケミカル製品で飾り立てるのは愚の骨頂だ。高い花を飾れと言っているわけではない。埼玉県には野草、雑草がたくさん咲いているはずだ。それを飾ればお客さんは感動するはずだ。
改めて書く。同社が年間2,312棟(29年3月期)もの分譲戸建てを計上できるのは圧倒的な商品企画力があるからだ。マンションは供給量が少ないのでブランド浸透はいま一つかもしれないが、ピアキッチンやしあわせメソッドなどはどこと比較しても負けない。
販売を担当する長谷工アーベスト東京支店受託販売部門プロジェクトマネージャー・鈴木勝博氏は「長谷工のマンションとは思えない。ピアキッチンは他の長谷工の物件にも採用させてほしいくらいだ」と語ったのが、同社の商品企画が評価された何よりの証明だ。
リビングダイニング(モデルルーム)