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「ディアナコート用賀」完成予想図

 モリモトが5月に一般分譲する「ディアナコート用賀」を見学した。用賀駅から徒歩1分で、敷地面積が約1,700㎡という規模のマンションは24年振りの供給という。デザイン監修はいつもの今井敦氏で、インテリアデザインは鬼倉めぐみ氏。坪単価500万円をはるかに突破しても売れると読んだ。

 物件は、東急田園都市線用賀駅から徒歩1分、世田谷区用賀2丁目の第1種住居地域に位置する6階建て全52戸。専有面積は37.90~107.36㎡、価格は未定。竣工予定は平成31年2月下旬。設計・監理はIAO竹田設計。デザイン監修はアーキサイトメビウス。施工は森本組。

 現地は、低中層のビルなどが建ち並ぶ2方道路の角地(敷地北側に一部私道あり)。

 建物は、同社が得意とする中廊下方式のワイドスパンが特徴。南向きの住戸のスパンは65㎡でも9,800ミリあり、72㎡で11,200ミリ、80㎡で9,200ミリ、最上階の115㎡では15,950ミリ。外壁には一部織部を採用。

 設備仕様は、イタリア・マラッツィ社の大判タイルと挽板フローリングが無料選択制になっている。

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 今井氏のデザインはたくさん見ているが、これもまたいい。完成予想図を見ていただきたい。実に美しい。用賀駅東側のシンボルのとなるのは間違いない(道路を隔てた南側は雑居ビルなどが建ち並ぶが)。

 そして、鬼倉氏のインテリアデザインだ。同氏がデザインを担当したマンションは「パークコート千代田富士見」「東京ミッドタウン・レジデンス」「ディアナコート本郷弓町」「ドゥ・トゥール」「パークコート赤坂檜町ザ タワー」があるが、今回も最高にいい。

 玄関に入ったとたん、あのイタリア・マラッツィ社の大判タイルに魅入られる。タイルは廊下、リビング、収納、洗面、トイレなど全面(主寝室はカーペット)に張られており、うっとりしてしまうほどだ。担当者によると「女性の評価が特に高い」そうだ。

 同氏のデザインにどうして惚れこむのか。その理由が分からないのだが、美醜を分かつ眼力がすこしは身についているからか。一度取材を申し込もうかしら。

 これは美醜と関係ないのだが、校正について。記者は自分のミスは気が付かないのだが、他人の書いた文章のミス、誤字脱字を探すのに結構自信がある。誤字・脱字が〝わたしを見つけて〟と呼び掛けてくる感覚があるのだ。莫言の850ページもある「豊乳肥臀」(平凡社)では、20年間誰も気が付かなかった重大な日本語訳のミスを発見したし、最近ではある著名な作家(名前はいえない)の新刊本で10カ所以上の誤字脱字などのミスを指摘してやったこともある。

 肝心なことを忘れていた。坪単価だ。モデルルームをみてすぐ、競合すると思われる住友不動産「シティタワー駒沢大学」と、三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス二子玉川 碧の杜」と比較した。双方とも坪500万円(住友の物件は当初450万円だったが、500万円くらいなっているはず)を突破しているが、モリモトの物件は同じ単価でも負けないと思う。

 同社が高値追究するかどうかは分からない。北向きのコンパクトは当然500万円以下だから申し込みが殺到するかもしれない。「ディアナコート目黒」は今一つ読めないが、こちらは自信がある。

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72㎡で11,200ミリのプラン

曰く言い難し 三条実美の邸宅跡地 価格はいくらか モリモト「ディアナコート目黒」(2018/3/2)

住友不動産 どんぴしゃり坪450万円 「シティタワー駒沢大学SC」各層から支持(2017/9/6)

「音がしない」「静か」 三菱地所レジ エリア最高値「二子玉川碧の杜」に高い評価(2017/10/13)

あっぱれ!モリモト 階数を2層分減らし天井高2.7m確保「本郷弓町」(2014/5/23

江戸の「粋」と「エスプリ」を融合 「パークコート千代田富士見ザ タワー」(2012/11/8)

 

 

 

カテゴリ: 2017年度

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「広尾ガーデンヒルズ」

 三井不動産リアルティが4月1日付で組織改正すると発表した。流通業務本部、首都圏流通営業第一本部、首都圏流通営業第二本部、地域流通営業本部を再編し、リテール売買仲介事業を担う流通業務本部、首都圏流通営業第一本部、首都圏流通営業第二本部、地域流通営業本部を統合し「リテール事業本部」とする。

 これに伴い、首都圏流通営業第一本部と首都圏流通営業第二本部の各営業部を「流通営業一部」「流通営業二部」「流通営業三部」「流通営業四部」「流通営業五部」「流通営業六部」「流通営業七部」「流通営業八部」「流通営業九部」に改称する。同時に、富裕層を中心に都心の不動産売買仲介に特化する組織として「リアルプラン営業部」を新設する。

 また、事業用、投資用不動産市場におけるソリューションサービスの強化するため、各営業本部を統合し「ソリューション事業本部」とする。

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 不動産流通のことはよく分からないのだが、意思決定が迅速に伝達され、なおかつきめ細かなサービスが提供されるための組織改編だろう。

 記者が注目したのは「リアルプラン営業部」の新設だ。同社は他社に先駆け、1985年にリアルプランセンターを立ち上げた。その後、バブル崩壊を経験しながらも店舗数を増やしてきた。現在では都心の5店舗だが、一時は9店舗くらいあったはずだ。

 富裕層向けビジネスは間違いなく拡大する。国内だけでなく海外富裕層の投資需要も見込める。もちろんリテール事業部との連携は必要だが、通常のアプローチではケタ違いの富裕層に対応できないと思う。時々刻々と変わる生きものとしての不動産の実相はプロしか伝えられないのではないか。

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 さて、そこで「リアルプラン営業部」が取り扱ういわゆる「ヴィンテージマンション」について考えてみた。

 まず、定義。そもそも「ヴィンテージ」は、ワインの年代物・名品に付される代名詞か冠詞のようなものだ。記者は日本酒や焼酎、泡盛、紹興酒、モンゴル酒の古酒は飲んだことがあるが、ワインやウィスキーはほとんど飲んだことがない。

 日本酒の古酒は高級ワインのようにすっきりしているし、泡盛の古酒を飲んだら他の酒など飲めないくらい美味しい。しかし、経験したことがないものを中古マンションにたとえることなどできない。記者は億ション中の億ションと理解している。御三家をあげれば、三井不動産レジデンシャル「麻布霞町パークマンション」、三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス千鳥ヶ淵」(三井「千鳥ヶ淵」もいいが)が東西の横綱で、住友不動産、三井不動産、三菱地所、第一生命保険の「広尾ガーデンヒルズ」が名誉会長のような存在だ。「パークマンション檜町公園」はシートがかかった外観しか見ていないので評価のしようがない。

 三井リアルがどう定義付けしているかわからないが、東京カンテイは2016年のリポートで、「少なくとも築10年以上(2015年12月時点)を経過していること。専ら住宅地(≒住居用途地域)に所在していること。物件の平均専有面積が100㎡前後であること(少なくとも90㎡以上であること)。物件から発生する中古流通事例の90%以上が坪300万円以上であること」とし、その数は237物件としている。

 これには同意できるものも同意できないものもある。築年数は関係ないと思う。確かに時を経ても資産性が保たれているという意味では「築10年」は一応の説得力があるが、分譲開始の時点で将来にわたりその価値が維持されるであろうと思われる物件はある。

 「専ら住宅地に所在」もどうか。確かにバブル発生前は〝億ション〟といえばほとんど100%近く住居系エリアに所在した。商業系や準工地域で億ションが分譲されるようになったのはバブルの最盛期のころからだ。今では、タワーマンションを含め商業系エリアのほうが多いくらいだ。

 富裕層の選好基準も変化している。「専ら住宅地」に限定するのは適当ではない。三井レジの「赤坂」「青山」(これをヴィンテージと呼べばだが)は商業立地のタワーだ。

 「物件の平均専有面積が100㎡前後」はまずまず同意できる。これを絶対条件とするには疑問もあるが、コンパクトマンションをヴィンテージと呼ぶには抵抗がある。

 「坪300万円」も根拠が希薄だ。「広尾ガーデンヒルズ」だって坪3,000万円を突破したこともあるし、リーマン・ショック後は坪300万円まで下落したこともある。坪単価は重要な基準ではない。郊外エリア№1の物件も該当するようにすべきだと思う。

 同社の定義で欠落しているのは、基本性能・設備仕様、住環境・居住性能だ。これらの価値は自ずと坪単価に反映されるが、定義として外すわけにはいかない。絶対条件だ。売主や施工会社のブランドも加えるべきだ。そうすればランク外になる物件は続出する。

 ここまで書いてくると、「ヴィンテージマンション」なるものはあるようでないともいえる。前提条件が異なれば、結果は全く違ったものになるということの証左だ。

 本物の億ションは、東京カンテイが示している237物件のうち半分は減り、一方で加えるべき物件も増えるのではないか。

 そこで、不動産流通各社に提案だ。自社の基準を設け(設けているはずだ)、それこそランキングとして公表したらどうか。なによりも物件の特性、価値を知っているのは流通会社だからだ。それぞれ評価が異なったら面白い。ヴィンテージマンションを事業主に順位付けするのもいい。三井レジが3~4割を占めるのか。

三井不レジ「檜町公園」 わが国の最高価格マンション1戸55億円 成約済みか(2017/7/15)

歴史は繰り返す――バブルから何を学んだのか(2008/10/27)

カテゴリ: 2017年度

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「ディアナコート目黒」完成予想図

 モリモトが4月に分譲する「ディアナコート目黒」を見学した。東京建物「目黒」とは反対側、駅から徒歩5分の落ち着いた雰囲気がある第1種中高層住居専用地域の一角。敷地は三条実美の邸宅跡地の一部。いったいいくらになるのか、普段は口が軽い(失礼、正確には自信たっぷり)同社関係者も口をつぐんでいる。

 物件は、JR山手線目黒駅から徒歩5分、目黒区目黒1丁目に位置する敷地約2,392㎡の7階建て(建基法では地下2階地上5階建て)全89戸。専有面積は32.04~87.07㎡、価格は未定。竣工予定は2019年8月下旬。設計・監理はIAO竹田設計。デザイン監修はアーキサイトメビウス。施工は東亜建設工業。

 敷地は南北軸が細長い長方形で、西下がりの傾斜地。敷地東側はホテルプリンセスガーデンに隣接。道路を隔てた南側には2000年の募集時に入居希望者が殺到した賃貸マンション「アクティ目黒」(234戸)が、北側には目黒合同庁舎がある。同社が取得したのはホテルの敷地の一部で元駐車場。

 建物のデザイン監修は、同社の〝定番〟ともいえるアーキサイトメビウスの今井敦氏で、南側の正面は黒御影石とライムストーンの縦と横ラインを強調した端正な表情が特徴。

 住戸は内廊下方式の西向きと東向き。西向きは間口7.7~11.3mのワイドスパンで、最上階は20.40m(194㎡)と18.25m(164㎡)。

 専有部のインテリアデザインは、「ディアナコート浜田山」も担当した西山建築デザイン事務所・西山広朗氏。床は敢えて凹凸を出したタイルを採用。壁はオークの突板、リビングドアはオリーブウォールナット。玄関扉も木製。

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 敷地が三条実美の邸宅跡地であることは、記事を書く段階で分かった。現地を見たときは、ホテルの真後ろ(西側)で敷地が真っ二つに切られていたので、ホテルが敷地の一部を売却したのだろうということは容易に想像がついた。

 そのホテルの敷地は見事だったが、エントランスの案内表示は一部壊れており、廃業でもしたのかと思える風情だった。コーヒーでも飲もうかと入ったが、そのようなサービスはされていなかった。

 ホテルとモリモトのマンション敷地を一体として再開発したら間違いなく坪1,000万円でも売れると思った。

 どうして三条実美の邸宅跡地に〝プリンセス〟などの名がついているのか不思議に思い調べた。人様の記事を引用するわけにはいかないが、フジモリ大統領、亀井静香、ライベックスなどが登場する。曰く言い難し、そのものだ。

 さて、肝心の坪単価だが、これが読めない。建物の正面には7階建てのマンションが建っており、全8スパンのうち3スパンくらいは影響を受けそうだ。これはマイナス材料だ。また、東向き住戸は日照が確保できないことなどを考慮すると平均単価は650万円がアッパーと見たがどうだろう。最上階は坪2,000万円でも安いかもしれないが、同社はそんな高値を追求しないのではないか。

 高値で始まった年初の株価からそのまま都心部は突っ走ると予想したが、その後、株価が急落し、変調を来した。各社とも値付けに慎重になっているようだ。森本浩義社長も頭を悩ましているのではないか。

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10.2mスパンで専有面積は74.52㎡

カテゴリ: 2017年度

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完成予想図

 野村不動産が2月22日、恵比寿の旧国家公務員宿舎跡地の再開発プロジェクトを着工した。

 「2020年に開催される国際競技大会時等の観光客の増加に伴い不足する都市部の宿泊施設の整備」と「高齢者・子育て支援施設整備」という国の定める条件を満たして選定された事業。

 物件は、JR恵比寿駅から徒歩5分、渋谷区恵比寿南3丁目に位置する敷地面積約4,035㎡、11階建て延床面積約16,078㎡。主要用途はマンション(88戸)、ホテル(82室)、介護施設(デイサービス)、保育施設。設計は日建ハウジングシステム、鴻池組。施工は鴻池組。マンションの入居開始は2020年3月下旬。

 マンションは、駅近と高台立地を活かし、敷地面積の約21%を緑地とするほか、重厚感のあるファサードデザイン、オーダーメイド対応とする。併設するホテル、介護施設、保育施設とのサービス連携も行う。専有面積は約60~200㎡。

 ホテルは、プリンスホテルの次世代型宿泊特化ホテルブランド「プリンススマートイン」として開業する。

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 記事をアップするのが遅れたのは忙しかったこともあるが、どうしても単価予想をしたかったからだ。

 いま、恵比寿駅圏では住友不動産が分譲中で坪単価は700万円。順調に売れているそうだ。三菱地所レジデンスも分譲を開始した。取材を申し込んでいる。坪単価は700万円を切っているようだ。モリモトがこれから目黒駅5分で分譲する。坪単価は600万円を下回らないと思う。パナホームが代官山で分譲するが、こちらは読めない。900万円はあるかどうか。取材を申し込む予定。

 さて、これらと比較すれば、野村不動産のマンションは立地条件を考慮すれば坪単価800万円以下はあり得ないと思う。では900万円はどうかといえば自信がない。三井不動産レジデンシャルの青山を超えることはないと見たが、敢然と挑戦する可能性は否定できない。同社は代官山や六本木で味を占めた。

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「ルネ北綾瀬」(バルコニーに注目)

 総合地所は3月1日、「ルネ北綾瀬」のメディア向け見学会を行った。1月末から竣工販売を開始しており、全58戸中25戸を成約するなど順調なスタートを切った。しっかり造りこみを行った好物件だ。

 物件は、東京メトロ千代田線北綾瀬駅から徒歩6分、足立区東和5丁目に位置する7階建て全58戸。専有面積は59.97~77.08㎡、予定価格は3,300万円台~5,300万円台。坪単価は214万円。建物は2018年1月9日竣工済。施工は長谷工コーポレーション。

 現地は、商業地からやや離れた戸建てや中層マンションなどが建ち並ぶ住宅街。近くにはスーパー、公園、保育施設がある。

 現在、北綾瀬駅は綾瀬駅から乗り換えで0番線から発着しているが、遅延解消と利便性の向上のため、駅のホームの延伸を行い、代々木上原方面の直通運転を来春に開始する予定で工事が進められている。開業すれば1番線となり、現地から駅までは徒歩5分と短くなり、大手町へは23分となる。乗り換え時間を考えると数分は都心に近くなる。キャッチフレーズで「東京0▷1」とうたっているのもそのためだ。

 住戸プランは南向きが中心。グッドデザイン賞を受賞した可動収納ユニット「ウゴクロ」を竣工物件では初めて14戸に装備しているほか、競合物件には付いてないディスポーザーや食洗機、カップボード付き。

 バルコニーはアルミ格子やガラス・パネル手すりでなく、5階部分まではコンクリートを立ち上げ、その上にガラスルーバーを添えることで縦のマリオンと横のルーバー、ガラスが印象的なデザインとしている。内廊下側も壁はタイル仕上げとし、面格子は、光を取り込みながらプライバシーも確保する機能を持つ上下セパレート型。

 今年1月20日にモデルルームをオープン。来場者は約150件で、これまでに25戸を成約。DINKS層も多いのが特徴。現居住地は足立区が55%、年収は400万円台が20%、500万円台が15%、600万円台が20%。

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 いま、供給物件すべてをメディアに公開しているのは同社だけだ。しかも、坪単価から販売状況、顧客の属性・特徴など細かなデータまできちんと別紙に添え発表している。こうした企業姿勢に頭が下がる。その割に見学するメディアが少ない。情けない。ものを見ないと絶対成長しない。記者の優劣はどれだけものを見たかで決まる。

 商品企画もいい。同社は安宅地所当時から施工は長谷工コーポが圧倒的に多かったが、〝丸投げ〟はしなかった。マンション不況の時などは需要を喚起する物件をたくさん供給した。記憶は確かでないが、施工は長谷工で、設計は日建だったか東急設計だったかを起用した「ルネ蒲田」が大ヒットした。長谷工が変るのもそのころか。双方はとてもいい関係にあった。

 今回の物件も、足立区居住者には申し訳ないが、外観にタイルを張り巡らし、この程度の規模にディスポーザーを採用するデベロッパーは少ないはずだ。

 グロスを抑制するため専有面積圧縮型もあるが、これは致し方ない。普通のサラリーマンが無理なく取得できる住宅政策を取らない政治が悪い。このままだと23区で子育てファミリーがゆとりあるマンションを買えなくなる時代がやってくる。もうやってきたか。

 長谷工コーポには自社ブランド「ブランシエラ」があり、首都圏では「板橋西台」と「浦和駒場」でパイロット的事業を行った。これからは総合地所がその役割を担うようにすればどうだろう。長谷工の技術とルネの商品企画が融合したら素晴らしいマンションができる。

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エントランス

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 どうでもいいことだが、面白い話を2つ。先日の長谷工コーポ「東十条」の賃貸・有料老人ホームの見学会で外を歩く時のスリッパにカイロが入れられていたことを書いた。今回は、暖かくカイロは必要なかったのだが、外用のゴム製スリッパがまたよかった。土踏まずの部分が盛り上がっており、ネコの肉球のように柔らかく足の裏にフィットした。これは同社が長谷工グループ入りした効果の一つか。それとも長谷工が真似をしたのか。

 もう一つは「ウゴクロ」。記者も試してみた。軽くはないが両手を使えば移動できる。そこで「兄弟姉妹が陣取り合戦をやるのではないか」と発したら、別の記者は「通知表の出来で決めればいい」と言った。なるほど。(彼も兄弟だか姉妹がいたはずだ。彼は勝ち目がないということか。勝ちを譲るなんてえらい)。

 記者などは兄姉が3人いたが、束になっても記者にはかなわなかった。しかし、出来の悪い長兄は10畳間を独り占めしていた。記者はわずか2畳間で冬は震えながら勉強した。

 総合地所に提案。65㎡の田の字型3LDKはリビング・ダイニングが10.6畳大、洋室が5.8畳大、5.4畳大、5.0畳大だ。仮に夫婦と子ども2人だったらどう使うのか。夫婦が一番大きな部屋を使うとしても1人当たりにすると子どもより狭い。これはいかがなものか。

 子どもの寝室は2畳大あれば十分だ。大きな部屋を与えたら出来のよい子どもに成長するとは限らない。どこかチャレンジするデベロッパーは現れないか。マンションの間取りは劇的に変わる。

 あっ、そうだ。このマンションは「駅から7分以内」だし「マンションは足立区を買え」にも合致する。

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「ウゴクロ」(梁を隠しているのがポイント)

また怒り沸騰 「マンションは『駅7分以内』しか買うな!」の本は買うな!(下)(2018/2/1)

総合地所 長谷工コーポ・不二建設の子会社に(2015/4/23)

カテゴリ: 2017年度

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「ブランズ横浜」

 東急不動産と髙島屋グループの東神開発は2月27日、JR横浜駅から徒歩6分の大規模分譲マンション「ブランズ横浜」が竣工したと発表した。

 住宅などの立地が禁止されている「業務・商業専用地区」に隣接しており、横浜駅西口徒歩10分未満の場所での供給は過去約50年間で初となる200戸以上の17階建て全210戸のマンション。設計は東急設計コンサルタント・西松建設。デザイン監修はNAP建築設計事務所。施工は西松建設。

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 分譲開始時に取材したが、いいマンションだ。ランドスケープデザインが秀逸。

外構も素晴らしい東急不動産「ブランズ横浜」 「銀座」同様〝大人〟向け(2016/4/6)

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「グランドメゾン上町台 ザ・タワー」完成予想図

 積水ハウスと大阪ガスは、家庭用燃料電池エネファームとスマートエネルギー蓄電システム(SHE)を採用した世界初の40階建てマンション「グランドメゾン上町台 ザ・タワー」244戸を発売したことを1週間前に発表した。これによりCO2排出量が52%、購入電力が97%削減できるというからすごいが、マンションも発売以来1カ月で244戸のうち半数以上が成約済みというから驚きだ。坪単価は非公表だが300万円を突破しているのは間違いない。

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 記者は、東京ガスのエネファームが搭載された2014年の第1号マンションをはじめいくつか見学している。しかし、IHが初めて搭載されたマンションが販売された2001年のようにはならなかった。

 最初にIH付マンションを発売したのは野村不動産、三井不動産、東急不動産などの大手だった。デモンストレーションを経験した主婦が仲間と「ずごいわよ、すぐ湯が沸くのよ」「煙が出ないのよ」「かき混ぜるだけ」「油の上に紙が置けるのよ」「絶対買いよ」とまるで子どものようにはしゃいでいたのをよく覚えている。当時は共働きと専業主婦が拮抗しており、昼間でもたくさんの主婦にインタビューすることができた。IHは口コミで瞬く間に広まった。主婦の力は大きい。

 いまは、子どもを外で遊ばす主婦がめっきり減った。子どもが砂場に駆け込もうものなら「ダメ、ネコがウンチしている」と一喝するはずだ。杉並区だったか、砂場にネコ除けの網が張ってあるのをみて愕然としたことがある。

 ネコと言えば、昨日も書いた。野良ネコもすっかり減った。記者が愛した耳を三角形に斬られた去勢ネコも数年前姿を消したままだ。そのネコを観察したことがある。驚いたことに去勢されてもなおかつ、尻尾をおっ立ててプルプルと振りながら近づくのはスカートを穿いた女性ばかりで、ズボンの女性にはそっぽを向いた。そんな去勢ネコにスカートの中を覗かれることなど全然意に介さないのか、ほとんどの女性は糞尿まみれの尻尾を撫でた。そこに雄と雌の本能を記者はかぎ取って感動すら覚えたものだ。

 ばかなことを書いた。話を戻す。玄関の近くにあんな大きなものをデンと据えられたら誰もが購入をためらい、これでは販促につながらないと思った。〝世界初〟〝日本一〟ももっと分かりやすく女性に支持されるように伝えないとだめだ。(最近はずいぶん改善されているが)

 ところが、今回、マンションに搭載される大阪ガスのエネファームは世界最高の発電効率52%を達成し、発電ユニットに貯湯タンクを内蔵し、通常のガス給湯器に接続する仕組みとしたことで世界最小の機器本体サイズを実現したもので、SHEもまた購入電力の大幅な削減につながるという。

 確かに、大阪ガスのエネファームは東京ガスのそれよりかなりコンパクトだ。高さ1,195ミリ×幅780ミリ×奥行き330ミリで、バックアップ用熱源機を含めても広さは約1.4㎡(メンテスペース含む)で済む。一方の東京ガスは燃料電池ユニットだけで1,750×399×395の容積があり、このほか貯湯ユニット、バックアップ熱源機を含めると、大阪ガスのそれより3~4倍くらい広さが必要だ。

 大阪ガスはこの新製品を2016年2月発売して以降、劇的に採用マンションを増やしている。それまでは2物件だったのが、現在14物件(1,400戸)に増えている。更なるコンパクト化も進めるという。価格約178万円にも自信があるようだ。

 東京ガスも手をこまねいているわけではない。2014年に第一号を発売した時より寸法はそれほど小さくはなっていないが、搭載マンションは36物件(3,000戸)に上っている。

 記者などは汎用性を持たせて、大阪ガスの製品を東京でも売れるようにすれば(大阪のマンションデベロッパーの進出はすごい。逆もあるが)、東京ガスを圧倒できるのにと思うが…縄張りがあるのか、そうもいかないらしい。それぞれ独占しているから安心してガスを供給してもらっていると考えるほかない。双方が競ってよりよい製品を開発してほしい。CO2削減は喫緊の課題だ。

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 それにしてもマンションの売れ行きがすごい。記者は最近、三菱地所レジデンス他「ザ・パークハウス 中之島タワー」、三井不動産レジデンシャル他「北浜ミッドタワー」、東急不動産他「心斎橋SOUTH」を見学したが、大阪の市場はまったくわからない。「上町台」もネットで調べておおよその位置が分かるくらいだが、すごいことくらいはわかる。最近は都内でも坪単価が300万円を突破するマンションが一挙に120戸以上も売れる例は少ない。〝世界初〟が販促につながったことを祈りたい。 

 ついでに一言。昨日はネコもそうだが、「和解の道を探ってほしい 積水ハウス・和田勇会長『解任』報道に接して」の記事の中でメディア・リテラシーについても書いた。今回の「上町台」だって同社に問い合わせれば半数以上が売れていることを書けたはずだ。リリースをそのまま引き写すのは記者じゃない。ただのリライターだ。

負けへんぞ横浜北仲に ここは〝北浜〟の一等地三井レジ他「北浜ミッドタワー」

負けたらあかんぞ東京に わが国初免震最高階数55階建て 地所レジ他「中之島」竣工

坪260万円はすごく安いと感じたが…東急不他「心斎橋SOUTH」竣工 見学会

 

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「DISCOVER ★TERRACE★ ファインシティ武蔵野富士見」

 恐るべき敵なのか頼もしい味方と考えるべきなのか、いま京阪電鉄不動産が神出鬼没、東奔西走の活躍を見せている。鉄道会社の売上高では大手にはるかに及ばずベスト10にも入っていないが、マンション事業では本拠の関西は言うまでもなく、北は札幌から首都圏、名古屋、福岡まで全国を網羅し、昨日の友は今日の敵、敵の敵は味方とばかり、時にはぶら下がり時には堂々とメジャーを張る。

 冬季オリンピック競技でいえばショートトラックだ。大きな先行選手の陰に隠れて力を温存し、最後は内を突いて舌ではなく足を出す。かと思えば果敢に先行し、抜かれそうになると違反すれすれの肘をつき、ダメだと思うと大げさにこけて見せる。

 こんなことを書いたら、もう書いてしまったが、二度と取材させてくれないかもしれないが、そんなことにはならないと読んだ。激烈な市場環境に晒されている会社だ。馬鹿な(大阪弁はアホな)記者の記事など馬耳東風、「勝手にせいや」と笑い飛ばすはずだ。

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モデルルーム

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 独白が長くなってしまったが、ここからが本題。同社(事業比率60%)・日本土地建物(同20%)・菱重プロパティーズ(同20%)3社JVの「DISCOVER ★TERRACE★ ファインシティ武蔵野富士見」を見学した。

 パンフレットのヘッドコピー〝遊び、学び、つながりながら、たくさんの喜びや感動を「発見」しよう〟に嘘はない。これまでにない盛りだくさんな仕掛けをユーザーに訴えきれるかどうかに事業の成否がかかっている。中央線の潜在顧客の琴線に触れれば大ヒットするかもしれない。本日(24日)、モデルルームを一般公開した。分譲開始は3月13日。

 物件は、西武国分寺線・拝島線小川駅から徒歩11分、東村山市富士見町1丁目に位置する敷地面積10,947.46㎡の10階建て全293戸。専有面積は68.64~87.61㎡、予定価格は1,900万円台~5,100万円台(最多価格帯3,500万円台)、坪単価は165万円。設計・施工は長谷工コーポレーション。竣工予定は平成31年2月上旬。

 現地は官舎跡地。敷地南側は奥行き約170mの南台公園と明治学院中学校の敷地・グラウンドで、南台幼稚園、東村山市立第一中学校に近接。同じエリアには大成有楽不動産、日土地、NTT都市開発などのマンションがあり、隣駅の「萩山」では野村不動産が〝オハナ〟91戸を分譲する郊外の激戦地。

 建物は中央に中庭を配したコの字型で、住戸は南向き、東向き。基本性能・設備仕様はリビング天井高2500ミリ、ディスポーザー、人造大理石カウンター、「長谷工のトイレユニット」など。

 「コミュニティ」がテーマになっており、webアンケートをもとにアスク、ロゴスコーポレーション、パーク・コーポレーション、ボーネルンド、イリー、マイファーム、ビクセン、青山ブックセンター、DIYファクトリー、アソシエイテッド・アーツ、日本冒険遊び場づくり協会の11の企業・団体とコラボし、入居後の2年間はコミュニティ支援を行うなど「コト」プログラムを実施する。

 これまで資料請求は都下№1の約1,800件、事前案内会来場者は4週で約300件。来場者の居住地は地元が40%、中央線居住者も多いという。緑の環境、新宿へ27分という利便性、価格の安さ、カフェ、セキュリティ、中庭などに対する評価が高く、シアターやモデルルームも好評とのことだ。

 同社首都圏事業部東京営業部所長・高橋和寿氏は「当社は札幌、中之島、北浜、福岡などでもタワーを共同で手掛けており、ターゲットに合わせて幅広く展開している。子育て社員もプロジェクトに参加している。『かもめのジョナサン』文化を継承したい。今回の物件では普通の会社員の手が届く3,500万円台を死守しつつ、戸建てではできない企画も盛り込んだ。将棋、囲碁などのプログラムを用意したが、『孫に教えるか』という親世代の反響もあり、思わぬ副産物も生まれている。〝安売り〟でないことを証明して業界を元気にしたい。第1期は100戸くらい供給できればと考えている」と話した。

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星の観察

◇       ◆     ◇

 シアターを見てすぐ企画意図を理解した。冒頭に82%が「マンションにコミュニティは必要」と答えたアンケート調査の回答を示し、「マンションとは思えない暮らし」の具体的な取り組みを紹介するその手法はストレートにユーザーに伝わるはずだ。 

 コミュニティをテーマにしたマンションは思い出せないくらい見学している。〝思い出せない〟というのは、つまり〝印象がない〟と同義語だ。コミュニティが大事なのはみんな分かっているが、それが販促につながるかといえばそうではない。

 しかし、同社は敢えてそれに挑戦した。「横浜江ヶ崎」の成功で自信を持ったのだろう。その進化型で需要を創造する戦略だ。

 確かに「マンションとは思えない暮らし」-記者も観たことがない提案がいくつも用意されている。「火おこし」=「たき火」がそうだ。少なくとも我々の世代にとってたき火は日常だった。たき火を囲んで大人が政治やら経済やら男女の仲やらをあけすけに語るのを聴き成長した。

 「星の観察」もしかり。公園に面した8階以上の購入者にはプロ仕様の天体観察望遠鏡と双眼鏡がプレゼントされるという。記者などは「おりひめ・ひこぼし」はどこにあるのかと星空を眺めながらかなわぬ恋にはらはらと涙したものだ。(記者は目が悪いが)いま都心で見えるのは金星くらいか。北斗七星はどこに行ったら見えるのか。小川は星が見えるそうだ。

 販売事務所の造りもよくできている。入口の壁にはカスケードと呼ぶには貧弱で、キャピトルホテル東急のようなきらびやかさはないが、水を流す演出がうれしいではないか。「香り」もそうだ。子育て中という同社首都圏事業部東京営業所の爪川恵未氏の発案なのか、ここ武蔵野の樹木を使ったオリジナルのアロマが楽しめるという。

 イベントでやってほしいことに☆印のシールを張ってもらうという意表をつく仕掛けがまた面白い。「ホタル見学」があったのでそこにシールを張り、「わたしの小さいころは『蛍川』そのものだった。真っ暗な寝床の蚊帳の中にホタルを放って遊んだ。小川にホタルがいるのか」と聞いたら爪川氏は「探してくる」とその気だった。

 肝心の単価とモデルルームについて。高橋氏は「近鉄不動産の田中専務(孝明氏、当時常務)と同じように『このマンションは坪単価では語れない』と言いたいところだが、いずれ分かることだから。坪単価165万円」と自信たっぷりに話した。

 モデルルームは〝非常によくできている〟としか書かない。来場者が評価した通りだ。

 書き出したら切りがないのでもうやめるが、この記事はぜひ「東松戸」「横浜江ヶ崎」の記事と一緒に読んでいただきたい。不動産コンサルの長嶋修氏にも現地に足を運び、モデルルームを見学してほしい。ユーザーの味方なら「駅から7分以内」の主張を撤回するはずだ。

 記事を書き終えたら、あの「タケツー」を思い出した。30年も昔だ。武蔵藤沢か入間か、100だか108だかの「魅力」を前面に打ち出し、首都圏デベロッパーを唖然とさせた。

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〝郊外不振〟跳ね返す 京阪電鉄不動産他「イマジンテラス」(2016/9/21)

負けたらあかんぞ東京に わが国初 免震最高階数55階建て 地所レジ他「中之島」竣工(2018/2/20)

負けへんぞ横浜北仲に ここは〝北浜〟の一等地 三井レジ他「北浜ミッドタワー」(2018/2/20)

三方一両損〟で3,500万円の3LDKを死守 京阪電鉄不「東松戸」が大健闘(2016/8/26)

近鉄不・京阪電鉄不・長谷工コーポ 実利を取る戦法か「王子飛鳥山」(2014/4/23)

カテゴリ: 2017年度

 大和地所レジデンスは2月22日、今期(2017年4月1日~2018年3月31日)引渡予定マンション総戸数929戸全戸を完売し、今期末の未契約完成在庫ゼロを達成したと発表した。

 929戸の内訳は、期初の未契約完成在庫が29戸のほか、「戸塚ブロッサムテラス」116戸、「ヴェレーナ新鎌ヶ谷」81戸、「ヴェレーナ松戸秋山駅前」67戸、「ヴェレーナシティ パレ・ド・シエル」3・4街区(150戸)、「ヴェレーナグラン浦和仲町」30戸、「ヴェレーナ横浜 掃部山公園」37戸、「ヴェレーナ綾瀬」87戸など15物件(未契約完成在庫除く)。

◇       ◆     ◇

 この15物件のうち記者が見学したのは「パレ・ド・シエル」と「浦和仲町」しかないが、「新鎌ヶ谷」「松戸秋山駅前」「川口元郷」など販売が楽そうでない物件のほうがむしろ多いくらいだ。それらを含め完売したのだから立派というほかない。年間1,000戸くらいを供給するマンションデベロッパーで期末の完成在庫がゼロという会社はここ数年ではないはずだ。もっとも少ないと思われる明和地所の平成29年3月期は売上計上戸数881戸に対して完成在庫は16戸だった。

 同社を会社設立の1993年2月(当時日本綜合地所)のときからずっと応援してきた記者も大変うれしい。ご存じない方に1つだけ紹介しておく。同社はマンションの値付けの常識を根底から覆したデベロッパーだということだ。

 いまでもそうだが、中高層マンションで一番売りづらいのは1階部分だ。日照・通風、防犯面などで難点を抱えていることが多いからで、その分値段を下げるのが常識だ。つまりその分だけ「価値」がないとデベロッパー自らが認めている。

 ところが同社は、商品企画・販売を担当した「グランシティ中野島」43戸(平成11年竣工、売主はニチメン)に不二サッシが開発した全開口サッシを初採用し、リビング-バルコニー-テラス-専用庭とつなげ内と外の住空間を創造した。1階住戸の価格も上層階より数百万円高くした。これが見事にヒットした。確か真っ先に1階住戸が売れははずだ。革命的な出来事だった。これがきっかけで他社も「戸建て感覚」の開発に取り組むようになった。

 商品企画力はこの業界でトップクラスだった。-過去形で書くのは、まだあの当時の世の中をひっくり返すようなマンションをいまは供給できていないと思うからだし、それだけ同社に対する期待値が高いからだ。

 「それだけ同社に対する期待値が高いからだ」と書いた。「それだけ」とはいったいどれだけの期待値かといえば、例えは適切ではないかもしれないが、競馬は賭けた時点で25%が天引きされるから理論的には期待値は75%にしかならない。現実のマンション市場も、買った価格を維持し中には値上がりするものもないわけではないが、圧倒的多数の物件は中古になると値下がりする(戸建てでは買う前から〝中古並み〟ときちんとお客さんに説明する優秀な営業マンもいる)。

 「それだけ」とは、中古になってもある程度の資産価値、居住価値を保持できるようなレベルということだ。

カテゴリ: 2017年度

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「hitoto 広島The Tower」(左右の樹木がアメリカフウ)

 三菱地所レジデンスは2月21日、中国・四国・九州地区で最高階数となる広島大学本部跡地の53階建て免震タワーマンション「hitoto 広島The Tower」のプロジェクト発表会・モデルルーム内覧会を行い、モデルルームを2月24日(土)にオープンし、4月上旬に販売開始すると発表した。

 物件は、広島電鉄宇品線日赤病院前電停より徒歩5分、広島市中区東千田町1丁目に位置する19,869.35 ㎡の53階建て全665戸。専有面積は55.04~143.78㎡、価格は未定だが、80㎡台で5,000万円台(坪単価200~210万円)の予定。設計監理は三菱地所設計。施工は前田建設工業。竣工予定は2020年4月下旬。

 現地は広島大学本部跡地で、広島市と広島大学が行った「知の拠点」をテーマとした公募型プロポーザルに応募した4グループの中から選定されたプロジェクト。事業主は同社のほか三井不動産レジデンシャル、菱重プロパティーズ、トータテ都市開発、広島電鉄の4社。

 全体敷地約3.8㏊にマンションのほか学生・留学生向け賃貸住宅、学生の就職・アルバイト・ボランティア活動支援窓口、ベンチャー支援オフィス、スポーツクラブ、病院、シニア向け住宅などを整備する。総事業費は約300億円。

 マンションは隣接する約30,000㎡の公園と一体として開発し、タワー形状にたことから空地率70%を確保し、37タイプの多彩な住戸プランを北東向き、南東向き、南西向き、北西向きにバランスよく配置しているのが特徴。環境に配慮したランドプランによりいきもの共生事業所認定証(ABINC認証)を取得したほか、openA監修による共用棟を整備、共用施設の充実も図っている。

 プロジェクト発表会で同社広島支店長・小玉英司氏は「広島市の昨年のマンションマーケットは供給量が約1,800戸で予想より15%下回ったが、坪単価172万円、平均価格4,030万円はほぼ前年通り。当プロジェクトは〝広島で一番愛されるマンションにしよう〟というのが基本コンセプト」と〝愛〟に力を込めた。

 これまで約1,600件の反響があり、3月中旬までモデルルーム見学予約は満席という。

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響生の森

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コミュニティプラザ

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 広島のマンション・戸建ての取材は今回で3回目。まったくの素人だが、それなりに感じたことを述べる。

 驚いたのは、30名はいたと思われる取材記者の数もさることながら、発表会の前後に拍手喝さいが沸き上がったことだ。まず首都圏ではありえない。司会を務めた同社・U氏の男前にほれ込んだのだろう。

 感動したのは、やはり小玉氏やその他の関係者が何度も「愛されるマンション」と「愛」を語ったことだ。今年の年初、大和ハウス工業がTVCMで「流通に愛(AI)を」謳ったが、今度はズバリ「愛」だ。

 記者のモットーは〝記事はラブレター〟。〝返しのない愛ほど悲しいものはない〟と言ったのは確かレーニン。取材のお礼も兼ねてたっぷり「愛」を込めて返そうと考えた。

 そこで一発。「これまでの広島のマンションは愛がなかったのか」と質問した。小玉氏は明確に示さなかった。当たり前だ。〝これまでは愛がなかった〟と答えたら、同社も同業他社も袋叩きにあう。小玉氏は記者の挑発に乗らなかった。

 が、しかし、高さが中国・四国・九州最高階数の免震で共用施設の充実を図り、他の複合施設と合わせ「知の拠点」を作ろうという熱意は十分伝わってきたし、ワイドスパンのプランがいい。

 モデルルームは3タイプで、直床だが標準階の天井高は2500ミリ(50階以上は2600~2700ミリ)、ディスポーザー、食洗機、浴室シャワーの2か所スライドバーなどが標準。億ションタイプは小上がりの和室提案をするなどよくできていた。

 広島を愛するが故の異議も申し立てたい。マンション敷地内には既存樹のアメリカフウ(モミジバフウ)の高木19本を残す計画だが、「アメリカ」の言葉を聞いた途端、むらむらと反米感情がこみ上げてきた。その名の通りアメリカフウはわが国の在来種ではない。よしんば戦前から植えられていたとしてもあの原発で死滅したはずだ。戦後、アメリカから持ち込まれたのはほぼ間違いない。

 アメリカフウに思想があるわけではなく、三菱地所にも責任はないが、寄りにもよってなぜ広島の「知の拠点」広島大学に植えられたか(先日、ポラスの北越谷取材では、宮内庁「鴨場」にメタセコイアが植えられていたのと同じ)。市民感情を逆なでするものではないか。

 腹の虫がおさまらない記者は、取材の後、原爆記念館を訪れた。修学旅行で長崎の原爆記念館を見たときはとめどもなく涙が流れたのをよく覚えている。今回もまた慰霊碑をみたとたん景色がぼやけた。

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慰霊碑

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原爆ドーム

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資料館(外国人の姿が目立った)

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被爆した少年の学生服

 平和記念公園内には被爆したアオギリとハマユウが植わっていることは、資料館で自ら「原爆二世」と名乗った女性スタッフから聞いていたが、予想した通り外来種の樹木はほとんど見当たらず、圧倒的に多いのはクスで、ほかはマツやケヤキ、サクラなど普段見る樹木だった。

 原爆ドームを見て、外来種がないことを確認して資料館に戻ろうとしたときだ。それまで気が付かなかったカイズカイブキが異形の形で迫ってきた。数十本もの「きのこ雲」が一斉に〝わたしを忘れないで〟と呼び掛けてきた。息が詰まりそうになった。

 先の原爆二世の女性にまた聞いた。彼女は「職人さんによると特別の意図はないと話しています。管理する市も問題視していないようです。きのこ雲に見えました? 父? 鬼畜米英と罵った世代です」と笑った。

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被爆アオギリ(左)とハマユウ

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カイズカイブキ

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ヒマラヤスギ

 取材を終え、タクシー乗り場の近くにある喫煙所でタバコを吸った。その傍には在来種ではない差し渡し1mはありそうな「ヒマラヤスギ」が植わっていた。資料館でコピーしたピース・ボランティアの恵美勇作氏による「平和記念公園の樹木マップ-寄贈樹・記念樹・被爆樹篇-」には昭和32年に広島を訪れた「ネルー首相より贈られた記念樹」として「ヒマラヤスギ」が紹介されており、「私は心から皆さんに共鳴して戦うつもりである…私は『ヒロシマに学べ』と世界に訴える…九日間の滞在スケジュールのうち、広島訪問の一日が特にネルー首相の要望で組まれたという」と述べている。

 駅に向かうタクシーの中で、「オバマさんはたった30分しかいなかった。市民との交流もなかった。警備の異様さにびっくりした。あのときもオバマさんは核のボタンを持っていたはず。日本がまだ植民地であるような気分にさせられた」と運転手さんが語った。

 パンフレットが入った紅白の紙袋の「赤」は三菱地所の赤ではないので、赤ヘルと一緒かと駅で聞いた。カープ女子は「そうかも」と話したが、おじさんたちは首を傾げた「もっと明るい」と。お土産に「カープの鯉人」のお菓子を買った。広島頑張れ! 

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手前の紙袋はカープのレッドか

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 駅前では現在、住友不動産が2016年12月に入居が始まった免震の52階建て「シティタワー広島」513戸(非分譲42戸含む)を分譲中で、坪単価は300万円近いが9割が契約済み。契約者は6割が経営者・医者・弁護士で、50歳代以上の層が過半を占める。地所のマンションに抜かれるまではここが最高層だった。

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本屋に了解の上撮った広島カープコーナー(お菓子から塩まで売っていた)

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「シティタワー広島」

 

カテゴリ: 2017年度
 

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