RBA OFFICIAL
 

クレヴィア西葛西_外観完成予想CG.jpg
「クレヴィア西葛西」

 伊藤忠都市開発は1月19日、「クレヴィア西葛西」のコンセプトルームを「ギャラリークレヴィア有楽町イトシア」1月21日にオープンし、可動収納やT字型ウォールドアを採用することで間取りを1LDKから3LDKまで自在に可変できる「間取りのない家」プランを提案すると発表した。販売開始は2月下旬。

 「間取りのない家」プランとは、キャスター式で設置位置を移動できる「可動収納」と、住戸内の間仕切りを自在に変更できる「ウォールドア」とを組み合わせ、広々とした1LDKから、間数を増やした3LDKまで、ライフスタイルに合わせて変更することを実現したプラン。具体例として1LDKは夫が30歳の夫婦のみ、2LDKは夫が36歳の夫婦と子ども2人(幼児・小学生)、3LDKは夫が50歳で夫婦と子ども2人(中学生・小学生)を提案している。

 物件は、東京メトロ東西線西葛西駅から徒歩6分、江戸川区西葛西六丁目に位置する12階建て49戸。専有面積は33.43~71.71㎡。坪単価は350万円を想定している。竣工予定は2024年2月中旬。設計・監理は三輪設計。施工は川村工営。

 「低炭素建築物」認定を取得し、スマートフォンで住宅設備や家電を操作できる「loT」設備を導入している。

1.jpg
エントランス

◇        ◆     ◇

 同社は、プレス・リリースで〝画期的な住まい〟と謳っているが、同様のプランは同社を含めてたくさん見学取材している。その多くはウォールドアが開発されていなかったころのものなので、あるいは今回の物件は〝画期的な住まい〟なのかもしれない。

 ライフステージにより間取りが変えられるのは当然といえば当然だ。田の字型プランから脱却できない業界に問題がある。

「カスタムプラン144+」秀逸 単価も割安 伊藤忠都市開発「クレヴィア浅草」(2017/2/1)

三井不レジ 可動間仕切りで間取り自由自在 「駒沢」に初採用(2014/5/27)

マンションの間取りは「自分で作る」時代へ(2013/10/4)

 

カテゴリ: 2022年度

 東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は1月13日、2022年12月の首都圏不動産流通市場動向をまとめ発表した。中古マンションの成約件数は2,835件で前年比1.6%減少し、5か月連続で前年同月を下回った。成約㎡単価は69.94万円(230.8万円)で前年比9.0%上昇し、20年5月から32か月連続、成約価格は4,373万円で同6.2%上昇し20年6月から31か月連続で前年同月を上回った。専有面積は62.52㎡で前年比2.5%縮小し、21年6月から19か月連続で前年同月を下回った。

 地域別では、成約件数は東京都区部以外の各地域が前年比で減少が続き、横浜・川崎市と埼玉県は12か月連続で前年同月を下回った。成約㎡単価はすべての地域が前年比で上昇が続き、東京都区部は32か月連続、横浜・川崎市と埼玉県は31か月連続、千葉県は29か月連続、神奈川県他は25か月連続、多摩は22か月連続で前年同月を上回った。

 中古戸建て成約件数は1,036件で前年比マイナス10.5%の2ケタ減となり、12か月連続で前年同月を下回った。成約価格は3,872万円で前年比8.7%上昇し、20年11月から26か月連続で前年同月を上回った。地域別動向では、成約件数は千葉県以外の各地域が前年比で減少が続き、東京都区部と多摩、埼玉県は12か月連続で前年同月を下回った。成約価格はすべての地域が前年比で上昇し、千葉県は22か月連続、神奈川県他は18か月連続、東京都区部は12か月連続、埼玉県は8か月連続で前年同月を上回った。

◇      ◆     ◇

 中古マンション、中古戸建とも成約件数は減少を続ける一方で、成約価格と㎡単価は上昇し、新規登録件数、在庫件数が増加し続けている。このデータをどう読むか。

 中古マンションの成約件数だが、コロナ前の2019年はほぼ毎月3,000件前後で推移しており、減少が顕著というよりはコロナ前の水準に戻ったと解すべきだろうと思う。

 それより注目すべきなのは価格・単価の上昇と面積の縮小だ。2022年12月と2019年12月を比較すると、価格は2019年12月の3,550万円から23.2%、㎡単価は27.4%それぞれ上昇し、逆に専有面積は3.3%減少している。

 価格・単価上昇率は異常とは言えないまでもかなり高く、専有面積の縮小と合わせ、市況は高止まり、踊り場に差し掛かっているのではないか。

 単価水準は平均的な需要層の取得限界に近付いている。記者は無理なく取得できる坪単価は今も昔も坪250万円とみており、それでも活況を呈してきたのは低金利のお陰だ。

 その肝心の金利が転換期を迎えた。日銀の金融緩和政策の軌道修正だ。長期金利の変動幅を従来の「±0.25%程度」から「±0.5%程度」に変更したのは、明らかに住宅市場にはマイナスだ。1.5%の変動幅自体は大きくないが、物価高もあり住宅購入検討者のマインドを冷やすことになるのは間違いない。中古マンション価格は4,000万円を超えると鈍くなると言われており、現状でもそれをはるかに超えている。価格を引き下げようにも、専有面積圧縮も限界だ。この先、どう動くか注視が必要だ。

 ひとつだけ楽観的な見方をすれば、新築マンション市場は引き続き供給減少が続き、価格も上昇する気配を見せており、その分だけ中古価格の割安感は増すことだ。基本性能・設備仕様レベルも現在分譲されている物件より10年くらいの物件のほうが相対的に高いものも少なくない。一筋縄では計れない市場に突入するのではないか。

 中古戸建ても同様のことが言えそうだが、成約価格は中古マンションと約500万円の差がある。これが今後の市場にどのような影響を与えるか。

 いずれにしろ、ここ1~2か月の動向から目が離せない。これまでの市場のターニングポイントはカレンダー変わりにあったからだ。年明けとか年度変わり、ゴールデンウイーク、夏休み明けだ。

 

カテゴリ: 2022年度

slide01.jpg
「ウエリス八千代村上」(物件ホームページから)

 NTT都市開発、名鉄都市開発、西日本鉄道、関電不動産開発、東方地所の5社は1月13日、千葉県八千代市内最大級となる総戸数967戸の大規模プロジェクト「ウエリス八千代村上」を着工したと発表した。2023年6月下旬から販売を開始する。

 駅とのつながり・商業施設とのつながり・自然とのつながり・人とのつながりを生み出す「ゆめいっぱいYACHIYO CONNECT TOWN」をコンセプトに、国民的人気アニメ「ちびまる子ちゃん」を広告キャラクターに起用する。

 物件は、東葉高速鉄道村上駅から徒歩3分、千葉県八千代市村上南1丁目に位置する敷地面積約23,292㎡、15階建て全967戸。専有面積は3LDK・70 ㎡超を中心に54.90~91.85㎡。設計・施工は長谷工コーポレーション。竣工予定はI工区が2025年2月上旬、II工区が2027年3月下旬。

position-fululu-img01.png

◇        ◆     ◇

 このプレス・リリースを見て、コロナ禍でも驚異的な売れ行きを見せた、坪195万円の東武鉄道他「ソライエグラン流山おおたかの森」(794戸)と、坪190万円の大和ハウス工業「船橋グランオアシス」(分譲は571戸)を思い出した。

 今回の物件は、施工が長谷工コーポレーション、都心の大手町駅まで50分前後という大規模開発というのがよく似ている。坪単価は200万円を突破しそうだが、果たして〝三匹目の泥鰌〟はあるのか。

 もう一つの注目点は「ちびまる子ちゃん」だ。過去、俳優などを起用したマンションはたくさんあり、概ね成功しているが、漫画・アニメとなると、記憶にあるのは「アルプスの少女 ハイジ」を新聞の2ページ見開き広告に登場させたリビング住販「ロワジール那須高原」(452戸、1992年11月竣工)くらいだ。

 版権は著名人よりは安いと思うが、果たして費用対効果は。肝心なのは商品企画だ。寄りあい所帯なのは気になる材料だ。

 記者が思い浮かぶ漫画・キャラクターを列挙する。イガグリくん、赤胴鈴之助、月光仮面、鉄腕アトム、スーパーマン、バットマン、ポケモン、ゴジラ、サザエさん、ドラえもん、キティちゃん、クレヨンしんちゃん、アンパンマン、忍者はっとりくん、タイガーマスク、巨人の星、たっち、キャプテン翼、セーラームーン、ゴルゴ13、ドラゴンボール、鬼滅の刃、キン肉マン…。(このうちよく知っているのは10個くらい)

 「ちびまる子ちゃん」が成功したら、もう何でもありだろう。ヤクルト村上選手の人気にあやかりたい。

◇        ◆     ◇

 記者がこれまで見学取材したマンションの中から、俳優など著名人をイメージキャラクターとして起用した物件を・著名人 売主「物件名」(総戸数)竣工年月順に紹介する。敬称略

・ハイジ リビング住販「ロワジール那須高原ハイジ」(452戸)1992年11月
・オードリー・ヘプバーン 有楽土地「ティアラシティ」(279戸)2000年8月
・城戸真亜子 総合地所他「ルネアクシアム」(721戸)2001年5月
・片岡鶴太郎 モリモト「クレッセント東京サウス」(113戸)2002年10月
・東儀秀樹 三井不動産レジデンシャル「東京パークタワー」(324戸)2003年3月
・三國連太郎 野村不動産他「神楽坂トワイシア」(237戸)2004年2月
・古田敦也&中井美穂 モリモト「クレッセント川崎センティア」(116戸)2004年2月
・飯島直子 東京建物他「ガーデンアソシエ」(1,502戸)2004年8月
・本木雅弘 三菱地所「Wコンフォート」(1,149戸)2005年2月
・米倉涼子 オリックスリアル他「横浜タワーリングスクエア」(625戸)2005年3月
・ジャン・レノ 東京建物「ブリリアタワー東京」(644戸)2006年2月
・スマップ 三井不動産他「芝浦アイランド」(約4,000戸)2006年11月
・新庄剛志 名鉄不動産他「スターコート豊洲」(740戸)2007年2月
・田原俊彦 アパ「アップルタワー東京」(440戸)2007年2月
・渡辺謙 野村不動産「プラウド新浦安」(733戸)2008年1月
・リチャード・ギア オリックス不動産他「THE TOKYO TOWERS」(2,801戸)2008年1月
・太田光 相鉄不動産他「サクラディア」(821戸)2008年2月
・黒木瞳 三井不動産レジデンシャル他「パークシティ豊洲」(1,481戸)2008年2月
・中山美穂 伊藤忠都市開発他「ザ・コスギタワー」(689戸)2008年5月
・ディカプリオ オリックスリアル「レコシティTOKYO」(450戸)2008年10月
・マドンナ 東京建物他「ブリリアマーレ有明」(1,081戸) 2009年3月
・オダギリジョー 東京建物「ブリリア有明スカイタワー」(1,089戸)2011年3月
・米倉涼子 丸紅他「AQUA VISTA(アクアヴィスタ)」(308戸)2015年2月
・江口洋介 三井不動産レジデンシャル他「東京ワンダフルプロジェクト」(1,110戸)2015年3月
・石川遼 三菱地所レジデンス他「ザ・パークハウス晴海タワーズ」(1,744戸)2016年4月
・江角マキコ 東京建物他「BAYZ TOWER&GARDEN」(550戸)2016年7月
・前田敦子 東武鉄道他「ソライエグラン流山おおたかの森」(794戸)2021年7月

◇     ◆     ◇

 リストを観ていただければお分かりのように、バブル崩壊後の大規模マンションが中心で、著名人などを起用することで大量集客・大量販売につなげようというデベロッパーの意図がうかがえる。デベロッパー別ではジャン・レノ、マドンナ、飯島直子、江角マキコなどを起用した東京建物や、スマップ、黒木瞳などの三井不動産レジデンシャル、リチャード・ギア、ディカプリオのオリックスグループが目立つ。

 記者がもっとも衝撃を受けたのはオードリー・ヘプバーンを起用した有楽土地(当時)「ティアラシティ」だった。故人であるため肖像権は知名度の割には破格の安さだったとも聞いた。パンフレットを入れる袋、テレカももらった。探せばどこかに保管しているはずだ。ヘプバーンは他の物件にも起用されているはずだが、どこだったか思い出せない。

 米倉涼子さん、モックン(本木雅弘氏)、オダギリジョー氏などはよく知らないので集客効果を疑った。スタイルのよさが強調された米倉さんのポスターに目を見張ったが、オダギリジョー氏は小田原城かと思ったほどだ。

 石川遼氏はイメージキャラに起用された途端成績が落ちたのも印象に残っている。地所の幹部が嘆いていたのも思い出す。

 このほかにもタレントマンションはかなりありそうだが、残念ながら記憶がない。

大和ハウス 再生可能エネルギー100%の街づくり「船橋グランオアシス」完成(2021/4/2)

4LDKは最高15倍 コロナ禍で驚異的売れ行き 東武鉄道他「流山おおたかの森」(2020/8/25)

東京建物・東武鉄道「ブリリア有明スカイタワー」モデルルームを披露(2009/12/14)

〝ハッとしてお台場、グッときて銀座〟〝トシちゃん〟マンション アップルタワーに注目(2005)

 

 

 


 

 

カテゴリ: 2022年度

IMG_5461.jpg
「TERRACE(テラス)浅草橋」

 大成有楽不動産は1月12日、同社の賃貸マンションブランド「TERRACE(テラス)」の「TERRACE(テラス)浅草橋」をメディア向けに公開し、1月14日から入居を開始すると発表した。

 物件は、JR・都営浅草線浅草橋駅から徒歩2分、JR浅草橋駅から徒歩3分、台東区柳橋1丁目に位置する13階建て全90戸。間取りは1K~2LDK(専用面積25.44~50.88㎡)、賃料は103,000~265,000円。管理費は12,000~20,000円。竣工は2022年12月。施工は大成ユーレック。

 同社の分譲マンションブランド〝OBER(オーベル)〟のオリジナル収納〝O-range STORAGE(オレンジ収納)〟を初めて賃貸で採用(一部)したほか姿見、コートフック、ソフトクローズ機能付き引き戸・開き戸、物干しポール、人感センサー玄関照明、Wi-Fiを装備。リビング天井高は2~11階が2450ミリ、12~13階は2500ミリ。12・13階の6mスパンの50㎡の住戸(6戸)はエリアの最高値となる賃料261,000万~265,000円(坪1.7万円)。フィオレストーンキッチン天板、食洗機、ハンスグローエ水栓、14×18浴室など、〝オーベル〟並みの仕様となっている。

 このほか、共用施設・設備として1階に約30㎡のラウンジ、屋上にはテラス(ともに利用時間は8:00~24:00)を設置したほか、全戸分の無料駐輪場や宅配ロッカー、バイク置き場、駐車場など。

 同社投資開発事業部事業室(第二)次長・前田慶介氏は、「リーシングはこれから本格的に開始しますが、直前の三連休で約40件の来場があり、募集開始して4日間の内覧会で17件の申し込みが入りました。極めて順調なスタートが切れた。平均賃料は16,600円」と語った。

 同社の資料によると、「TERRACE」シリーズは2014年竣工の第一号の「上石神井テラス」からこれまで22物件が竣工・着工済み(1,059戸)。

IMG_5465.jpg
屋上テラスからはスカイツリーも眺望できる

IMG_5462.jpg
物干しポール(家事労働をしたことのない人はこの価値が分からない)

◇        ◆     ◇

 前田氏から微に入り細を穿つ説明を受けた。以下、記者のやり取りの一部を紹介する。( )が記者。

 (これ、分譲にしたら単価はいくらですかね)

 「わたしは分譲担当でないので…」

 (坪430万円でどうですかね)

 「そんな安値では売りませんから」と前田氏ではなく記者もよく知るI氏

 (なるほど、ならば坪450~475万円でどうですかね。500万円は無理なような気がします。わたしは売る自信がない)

 「どうですか。この50㎡の中住戸。スパン6mですよ、キッチンはフィオレストーン、水栓はハンスグローエ。2畳大のワークスペース付き。浴室も1418。オーベル仕様かそれ以上」

 (わたしは「築地」を観ていますからね。あれは最高によかった)

 「この屋上テラスからはスカイツリーも富士山も見えますから…」

 (タバコは? 酒は飲めないの? )

 「禁止です」

 (ペットボトルに酒を入れて持ち込んだら…)

 「騒がれると問題になるでしょうから、大人の対応で…」

 (このエントランスの有孔ブロックはいいね)

 「そうでしょ。ブロックそのものは高くありませんが、基礎の部分にお金がかかりました」

 (浴室にタオル掛けが付いているのはきちんと書きますから。最近の郊外マンションは1本も付けていないのが多い。浴室にタオル掛けは必要だと思いません? 前田さんは独身? 奥さんと一緒のタオル使います? )

 「既婚です。かみさんと一緒のタオルでもわたしは構いませんが…」

 (うちはひどいもんですよ。わたしのタオルは何年もつかっているガバガバのもの。ふかふかのよりよく拭けるとは思うんですが…。かみさんはきっとふかふか)

 (浴槽を取り払ってシャワー室のみという提案はどうですか)

 「以前検討したことがあるんですが、コストは浴槽付きの倍だったのでやめました」

 説明はものすごく分かりやすかった。これが分譲だったら、ものの1~2分で設備仕様レベルを判断し、売れる単価もはじき出せる自信があるのだが、そもそも賃貸マンション市場はあまり取材したことがないし、同社の賃貸を見学するのは初めて。設備仕様レベルが他と比べていいのか悪いのかさっぱりわからない。

 賃料は正直高いと思ったのだが、高いからこそ賃貸脱出派が分譲マンション市場を支えているのだから、なんとも言えない。本来は分譲であろうと賃貸であろうと、戸建て、マンションの別なく自由に選べるのがあるべき姿だと思うが…。

IMG_5468.jpg
エントランス

樹脂サッシ、ミストサウナ…水準以上大成有楽不のコンパクト「両国」(2022/4/25)

大成有楽不動産「銀座築地」同業他社に一括売却か(2019/11/27)

 

カテゴリ: 2022年度

thumbnail_DSC07278.jpg
高松氏

 マンション管理業協会は1月12日、令和5年新年賀詞交換会を開き、同協会理事長・高松茂氏(三井不動産レジデンシャルサービス会長)は次のように挨拶した。

 皆さんあけましておめでとうございます。

 理事長の高松でございます。

 年頭に当たり新年のご挨拶を申し上げます。

 まず、本日は3年ぶりの賀詞交歓会に、斉藤鉄夫国土交通大臣をはじめとする国会議員の先生方そして国土交通省をはじめとする多くの関係者の皆様にご臨席いただき厚くお礼を申し上げます。

 丸3年となるコロナ禍は、日本政府の舵取り、医療関係者の努力により、経済活動が緩やかに再開しつつあります。

 一方で、ロシアによるウクライナ侵攻による資源価格の高騰など、コスト上昇圧力が、当業界含め、今後の国内経済の課題となっています。

 マンション管理につきましては、昨年は大きなトピックスがあった年でした。まず昨年4月に国の管理計画認定制度が施行されました。

 認定制度の目指すところは、適正な管理・修繕の実施により、マンションストックの長寿命化を図ることにあります。さらに12月には、同認定を受けたマンションを対象とした「マンション長寿命化促進税制」が与党税制改正大綱に盛り込まれました。

 当協会がかねてより要望を続けていた事項が初めて取り上げられたものと理解しており、ご尽力いただいた先生方、国土交通省はじめ関係者の皆様に深く感謝しております。

 次期通常国会で関連法案が成立した暁には、本税制を管理組合に適切に説明することで、将来に向けた修繕積立金の積み増しが可能となり、適時必要な修繕工事の実施につながるものと、大いに期待しているところでございます。

 また、当協会は、認定制度と同じく昨年4月にマンション管理適正評価制度を始動させました。

 評価制度は、管理組合が管理の状況を毎年チェックし等級評価するもので、いわば人の健康診断と同じく良いところ、悪いところを自己確認していくものです。

 令和5年1月5日時点で215件の登録があり、協会HP上で情報を公表しています。また、不動産ポータルサイトや流通事業者のHPともリンクしています。

 この「管理の見える化」によってマンションの良質な管理が、資産価値、居住価値の維持・向上にも繋がって行く大事な制度と考えています。

 当協会は、評価制度の社会的定着に向け、令和6年度末までの3年間で1万件を超える登録を目標とする機関決定を行いました。

 この実現に向け、今後、評価制度の適正かつ円滑な運用のためシステムの改善を継続して参ります。

 また国の認定制度と評価制度の一括申請を可能とするワンストップサービスを実施しておりますが、より申請者や地方公共団体が利用しやすいよう改善を図って参ります。

 合わせて評価制度の登録促進に有効な損害保険のインセンティブの実現に向け、引き続き関係機関との折衝を進めて参ります。

 建物と人、いわゆる2つの高齢化は待ったなしの状況です。築40年以上のマンションストックは2021年末現在で115万戸、10年後には2.2倍の249万戸、20年後には3.7倍の425万戸に急増する推計もあります。

 ここに住まう居住者の方々の高齢化も進んでおり、役員の担い手不足による組合運営の機能不全、積立金不足により適切な工事の未実施からなる建物の不具合の進行など、ソフト、ハード両面からの管理不全が懸念されます。

 このため当協会は管理組合活動をサポートするマンション管理会社の団体として、管理組合運営を円滑化するための諸施策を強く推進して参ります。

 一方、従前より申し上げているマンション管理業界の成長発展と社会的評価の向上、業界従事者の処遇の改善と社会的地位の確立については、評価制度による業務の「見える化」の推進、適切な業務水準の確保と幅広い人材活用ならびにDX化も視野を置いた、標準管理規約、標準管理委託契約書の改正について関係機関との協議を進めて参ります。

 また社会的評価の向上は業界の信頼確保と表裏一体のものです。このため協会の基幹業務である会員会社のコンプライアンス体制の整備、各種試験講習の的確な運用、厳正な入会審査と与信管理の徹底等、web化を含め進めて参ります。

 当協会は本年も様々な課題に積極的に取り組んで参ります。

 そして、こうした諸施策を次期中期事業計画としてまとめ、令和5年度より実施して参ります。

 結びに、関係各位の協会活動への一層のご支援とご協力をお願い申し上げますとともに、皆様のご健勝、またご活躍を心よりお祈り申し上げ、新年の挨拶とさせていただきます。

カテゴリ: 2022年度

14_メインストリートからの完成予想CG.jpg
HARUMI FLAG」メインストリート

三井不動産レジデンシャルなど「HARUMI FLAG」の売主10社は110日、「HARUMI FLAG」の最終章となる総戸数1,455戸の50階建て超高層ツインタワー「HARUMI FLAG SKY DUO」のメディア発表会を行い、マスターアーキテクトとして街全体のデザインを統括する光井純氏(光井純アンド アソシエーツ建築設計事務所代表取締役)と、タワー棟のデザインを担当する同社上席執行役員・緒方裕久氏が参加したトークセッションを行った。

発表会ではタワー棟の概要について、三井不動産レジデンシャル都市開発三部事業室・古谷歩氏が説明。

名称は「HARUMI FLAG SKY DUO」に決定し、東京最前列にふさわしい、今後のタワーマンションをけん引する、新たな一対のランドマークトなるようデザインしたと切り出し、建物は免震工法を採用、48階にはスカイラウンジ、ゲストルームを配置し、多様性を実現するため居住者だけでなくゲストも利用できる施設を整備、専有面積は40㎡台から100㎡超で、プラン構成は1LDK61戸、2LDK352戸、3LDK1,042戸。リビング天井高2600ミリ確保して間取りの更新性を高め、メーターモジュールの廊下幅、長期優良、わが国初の蓄電池とエネファーム全住戸に設置、低炭素住宅認定、4950階のプレミアム住戸には全館空調システムを採用するなどと話した。

4月上旬にモデルルームを公開、第1期の販売を6月下旬に予定しているとした。価格は未定で、4月に発表する。

物件は、50階建てSUN VILLAGE733戸)とPARK VILLAGE722戸)のツインタワーで、SUN VILLAGEの専有面積は49.38145.54㎡、PARK VILLAGEの専有面積は47.74161.12㎡。竣工予定は2025年秋。設計はSUN VILLAGEが三菱地所設計、前田建設工業、PARK VILLAGEが日建ハウジングシステム、三井住友建設、施工はSUN VILLAGEが前田建設工業、PARK VILLAGEが三井住友建設。

18_外観完成予想CG.jpg
完成予想図

n04tW0pQ.jpg
古谷氏

        ◆     ◇

トークセッションは、光井氏と緒方氏、三井不動産レジデンシャル都市開発三部事業室・高木洋一郎氏と同室・廣瀬俊輔氏の4氏で行われ、約1時間30分にわたり「SKY DUO」に込めた思いや「HARUMI FLAG」全体の街づくりなどについて語り合った。

光井氏は冒頭、廣瀬氏の問いに答える形で、かつてフランスのパリ博では都市軸をつくり、その中心部にシンボルとしてエッフェル塔を設置したことを紹介しながら、「今回のプロジェクトは、パリ博に負けないくらい大事な都市・街の開発であると考えている。『HARUMI FLAG』の最大の特徴は、非常に大きな敷地を一気に開発することができた。そしてまた、一気に開発するためには強いコンセプトが必要であったが、考えたのは都市軸。既存建物などがある内陸部では実現できない都市軸をつくることで、1キロ先、2キロ先の地球規模の空間を体験することができるデザインにした」と話した。

緒方氏は、デザインコンセプトであるわが国の伝統的なデザインを踏襲することについて、能の二人静の紫の色を盛り込んだことなどを紹介し「東京のビューを手中に収めることができる誇り高いタワー棟をデザインすることができた」と語った。

そして、最後に光井氏は「地下に駐車場を設置し、無電柱化も図ったので、地上部分は緑に覆われている。数値としてのSDGsはもちろん、視覚環境、体感環境として、快適な空間と空気、光を東京でもっとも感じていただけるはず」と締めくくった。

記者はトークセッションをワクワクしながら聴いた。とても分かりやすかった。聴きながら、この種の「住宅都市」の好事例である「幕張ベイタウン パティオス」や「ベルコリーヌ南大沢」と比較した。「南大沢」は施工不良が問題になったが、街づくり・デザインは双方とも素晴らしい。光井氏が力を込めたように「HARUMI FLAG」はまた異なるような気が気がする。「ここでしかできないデザイン」にしたのだろうと得心した。

ikbH4CVc.jpg
トークセッション(左から廣瀬氏、高木氏、緒方氏、光井氏)

026.jpg QEn9Sm5M.jpg
光井氏(左)と緒方氏

        ◆     ◇

記者は、光井氏のファンの一人だと自認している。最初にデビューされた物件は何だったのか思い出せないのだが、2013年以降の10年間の間に「光井純」に関わる記事を何本書いたか、RBAタイムズの「こだわり記事」で検索したところ35本がヒットした。

この35本がどのような意味を持つか、読者の方には伝わらないだろうから、他のワードと比較した。以下に列挙する。

・三井不動産    1,000件超※①
  ・三菱地所     1,000件超※①
 ・野村不動産     959
 ・積水ハウス     712
 ・ポラス         686
 ・住友不動産     543
 ・東京建物      533
 ・旭化成ホームズ   517
 ・長谷工       497
 ・ミサワホーム    496
 ・大和ハウス工業   487
 ・東急不動産     437
 ・リスト       357
 ・オープンハウス   343
 ・ナイス       333
 ・コスモスイニシア  330
 ・鹿島建設        275
 ・大京        238
 ・三菱地所ホーム   225
 ・ケイアイスター不    178
 ・サンフロンティア不 172
 ・小田急電鉄・不動産 166
 ・大成有楽不動産   165
 ・明和地所      153
 ・総合地所      131
 ・三井ホーム     116
 ・伊藤忠都市開発   115
 ・アキュラホーム   115
 ・モリモト      112
 ・大和地所レジデンス  103件※②
 ・日鉄興和不動産   103
 ・隈研吾       100
 ・飯田建設グループ   87
 ・NTT都市開発     61
 ・菰田正信       61
 ・吉田淳一      43
 ・安藤忠雄      39
 ・青木茂       37
  ・光井純      35
 ・吉永小百合     32
  ・沓掛英二       29
 ・芳井敬一        29
 ・仲井嘉浩     28
 ・岩沙弘道     26
 ・アーキサイトメビウス24
 ・坂茂       14
 ・山本理顕       6

※①1,000件を超えるとカウントされない※②大和地所レジデンスは日本綜合地所の記事も含む

皆さんいかがか。長々と書いてしまったが、ここを入れたらあそこはどうかと考えたら次々に入れざるを得なくなった結果だ。抜けているデベロッパーもほかにあるかもしれない。

リスとは、小生の主な取材フィールドは分譲マンションや分譲戸建てなので、その事業を展開している住宅・不動産会社が上位に並び、RBA野球大会でお世話になっている会社が多いのは記者の好みの反映だ。

注目していただきたいのは、個人名で検索した結果だ。菰田正信氏、吉田淳一氏、沓掛英二氏、芳井敬一氏、仲井嘉浩氏、岩沙弘道氏は業界・企業トップとして会見の回数が多いことと、記者の嗜好だ。

自分でも驚いたのは、建築家の隈研吾氏が実に100件も入っていることだ。これは〝木造ファン〟の記者が何かにつけ隈氏を取り上げるからだ。建築家では、安藤忠雄氏は隈氏の半分以下の39件で、その次は「リファイニング建築」の青木茂氏の37件。そして光井氏の35件と続く。光井氏は女優の吉永小百合さんの32件とほぼ並んでいる。ここが大事なことだ。(吉永さんの次位が沓掛氏とは。これはもう笑うしかない。沓掛氏も大満足のはずだ)

なぜ吉永さんかというと、記者が好きだからで、建築物の美しさを形容する形で、ご本人の了解は得ていないがよく名前を使わせていただいている。問題はないはずだ。共通するのは〝美しい〟ということだ。

光井氏はトークセッションで、「近景・中景・遠景がとても重要」と話したが、記者はその外観を遠くから見ただけでほとんど光井氏の作品であることが分かる。光井純=三井不動産レジデンシャルといえるほど記念碑的な物件も多く手掛けている。

デザインの特徴は、シャープで都会的であり、カラーリングではアースカラーのオレンジ、イエロー、赤などの暖色系を多用し、かつブルー、ブラウンなどの抑制的な色彩をマリオンに配したりしてバランスを保っていることだ。目立つのだが主張しないで周囲の街並みにしっくりと溶け合う-これこそ吉永さんではないか。こころの美しさが表情・外貌に現れる。

光井氏の作品(物件)でもっとも好きなのは「パークシティ大崎」だ。あの工場街のイメージを一新した。

そこで東京都と事業者にお願いだ。光井氏は「視覚環境、体感環境が大事」と話した。建物はほぼ完成しているのだから、メディアにも購入検討者にも現場見学会を行い、ランドスケープ・建物デザインを体感できるようにしていただきたい。

文句なしにいい 街づくり・基本性能 坪単価280万円か 「HARUMI FLAG」(2019/4/24

街の価値を評価したい三井不動産レジデンシャル他「パークシティ大崎 ザ タワー」(2013/11/27

 

 

 

カテゴリ: 2022年度

index.jpg

 東急不動産は1月10日、隈研吾氏がデザイン監修した免震工法で千代田区初のZEH-Mを取得したフラッグシップ「ブランズ千代田富士見」を1月14日から販売開始すると発表した。同日、隈氏も出席した記者発表会を行った。

 「環境先進マンション」のフラッグシップ物件と位置付け、建物は免震工法を採用し、千代田区で初の「ZEH-M Oriented」と低炭素建築物の認定を取得し、デザイン監修に世界的な建築家・隈研吾氏を起用しているのが特徴。

 外観デザインは「豊かな緑の中に浮遊する厳かな石のヴェール」がテーマで、外構に自然石を用いているほか、ロビー・ラウンジの前には大きな水景を設置。さらに本物の石の質感を上層階まで設えていくことで、先進的なデザインを目指しているという。

 主な基本性能・設備仕様は、免震、ZEHのほか、リビング天井高は2~15階のスーペリアが2750ミリ(16~18階のプレミアムは1フロア2戸で、専有面積は210㎡、リビング天井高は3000ミリ)、リビング・居室とも床暖房、挽板のリビング床、主寝室はオーク材のナグリ仕上げ(オプション)、ガス衣服乾燥機「乾太くん」、グローエ水栓、Miele食洗機、廊下幅1.2m、Low-Eガラス(プレミアムは二重サッシ・樹脂サッシ)、60cm角床タイル、框ドアなど。

 このほか、駐車場は全戸分設置し、緑化率22%、コンクリート型枠合板に認証材・国産材)を使用。マンションギャラリーのジオラマ模型や建物模型作成を行わず、デジタルツインを活用したデジタルコンテンツによる接客など。

 12月16日に物件ホームページを開設してからこれまで資料請求は約1,000件、2月までのモデルルーム見学はすべて満席。インナーセールで既に全住戸の4割が成約見込みとなっている。

 記者発表会に臨んだ隈氏は、「ここには、落ち着いた歴史を感じさせる雰囲気がある。陰翳礼讃と言われているように、今回のために自然石を特別加工し、全面的に採用することで繊細な細かい陰翳、ヒダを演出し、ヒューマンスケールのデザインとした。これまで木を多用してきたが、最近は石にも興味があり新しいデザインとして使うようになった」と話した。

 物件は、東京メトロ・都営新宿線九段下駅から徒歩5分、JR飯田橋駅から徒歩8分、千代田区富士見一丁目の第1種住居地域に位置する18階建て全69戸。専有面積は72.96~210.89㎡、坪単価は1,000万円強。竣工・引渡予定は2025年4月下旬。設計・施工・監理は東急建設。デザイン監修は隈研吾建築都市設計事務所。

 現地は、九段下駅など7路線が利用可能な「千代田区富士見」エリアの高台に立地。暁星小・中・高校、お茶の水小学校(仮校舎)、フィリピン大使館公邸、野村不動産「プラウドタワー千代田富士見」などに隣接・近接。

IMG_5453.jpg
隈氏

◇        ◆     ◇

 モデルルームを見学してすぐ、同社が過去に千代田区番町で分譲した2物件を含め見学取材した30物件くらいの中で最高レベルだと確信した(免震&ZEHは千代田区内に1物件もない)。

 隈氏のデザインによる総延長約35mの御影石張りの外構・エントランス、木調ルーバーパネル、水景を中心としたランドスケープデザインが圧巻だし、設備仕様レベルも極めて高い(もっと高いものもあったような気がするが)。鏡面仕上げの框ドアのデザインがいい(通常のドアの選択も可とか)。

 坪単価は、「番町」(現在、三菱地所レジデンスが分譲中で、隣接地では三井不動産レジデンシャルが『ザ』を冠した『パークコート』を今春に分譲する)もあるので1,000万円弱と読んだのだが、甘かった。同社は敢然と挑戦するようで、坪1,000万円を超えると話した(隈氏を起用したのだから、それも理解できる)。上層階のプレミアムは1,500万円と聞いて、これは安いと思った。現地を観ていないのでよく分からないのだが、眺望がよければ坪2,000万円でも安いと思う。2住戸をセットで販売することも可能ということなので、1フロア丸ごとで約25億円。360度丸ごと所有できるのだから安くはないか。

 記者は質疑応答で「総合的な評価は『番町』に負けないのではないか」と挑発的な質問をした。同社の担当者は「番町は邸宅街だが、当社の物件は利便性と再開発エリアという特性からして負けていない」と否定しなかった。

 参考までに、坪単価470万円の「プラウドタワー千代田富士見」(306戸)は2007年に一挙販売され、平均2.9倍で即日完売している。2012年に分譲された三井不動産レジデンシャル「パークコート千代田富士見ザタワー」は坪単価476万円で、全505戸のうち425戸が億ションだったが、わずか10か月で完売している。

◇        ◆     ◇

 もう一つ、この物件の特徴である容積率を消化しきれていない点について。現地は建ぺい率60%、容積率400%の第一種住居地域・文教地区に指定されているのだが、敷地の前面道路は6~7m弱であることから、容積率は約260%しか消化できていない。

 これは地価の減価要因になるが、逆手にとれば〝売り〟にもなる。小生は、駅前などの商業エリアのタワーマンションよりも、少し奥まった住居系エリアのマンションのほうが住むにはいいと思う。バブル崩壊までの億ションはほとんど全て住居系エリアに立地していた。

 ちなみに、千代田区には用途地域は第一種住居地域、第二種住居地域、商業地域の3地域が指定されており、第一種住居地域は皇居、日比谷公園、靖国神社、紀尾井町から富士見町にかけての一帯、容積率300%の地域は皇居、日比谷公園、靖国神社、紀尾井町の一部しかない。今回の物件と同じ容積率が400%のエリアは番町4~6番町もそうだ。

 東京都の人口予測で、向こう40年間の2065年までに増加すると見込まれているのは千代田区のみで、中央区、港区、渋谷区、新宿区、文京区などは2030年から2045年の間にピークを迎えると予測されている。

 このことを考慮すると、区内の主要エリアでマンションの坪単価が1,000万円を超えるのは当然か。

8物件目〝グラン〟「三番町26」 高値更新の坪1000万円前後 三菱地所レジ(2022/9/14)

これぞ正統派の億ション 話題の東急不動産「ブランズ ザ・ハウス一番町」竣工(2017/1/23)

東急不「BRANZ(ブランズ)」リブランディング 第一弾「四番町」

反響1万件!野村「プラウドタワー千代田富士見」(2007/5/17)

ひと・もの・かねの動きを一変 三井不動産「飯田橋」再開発が完成(2014/5/31)

江戸の「粋」と西洋の「エスプリ」を融合 三井不レジ「パークコート千代田富士見ザ タワー」(2012/11/5)

 

 

カテゴリ: 2022年度

完成予定CG.jpg
THE YOKOHAMA FRONT TOWER

今年も残りわずか。例年なら30年以上続けている記者が選ぶ「首都圏マンションベスト3」「話題のマンション」を発表するころだが、今年1年間に見学・取材したマンションは地方を含めて58物件しかない。例年の半分だ。新型コロナは取材機会を奪った。「ベスト3」「話題のマンション」に代えて印象に残った物件を紹介する。

もっとも印象に残ったのは、相鉄不動産・東急「THE YOKOHAMA FRONT TOWER」(459戸)だ。マンションのほか商業施設、ホテル、サービスアパートメントなどで構成される横浜駅直結の再開発複合物件だ。坪単価は717万円(記者発表会時点)で、都内以外では昨年分譲の東京建物「堂島」の650万円を上回ったが、第1期129戸がほとんど売れたのにも納得した。設備仕様レベルも極めて高い。

この両社の物件では、相鉄不動産「グレーシア湘南平塚海岸」(100戸)と、東急の期間70年の定期借地権付き免震タワーマンション「ドレッセタワー南町田グランベリーパーク」(375戸)が印象に残っている。

前者は海まで徒歩3分で、坪単価は175万円。施工は長谷工コーポレーション。床暖房も浴室タオル掛けもなし。徹底した経済設計に驚いたが、これもありかと思った。海好きにはたまらないマンションだ。

後者は2019年にリニューアルオープンした「町田グランベリーパーク」に隣接。第1期の坪単価は300万円。太陽光追尾採光システムを採用していた。

電鉄(系)会社の不動産事業は、これまで他のデベロッパーの事業にぶら下がったりゼネコンに〝丸投げ〟したりしていたが、主力の鉄道事業の成長は期待できないことから最近は多角化を進めている。本気を出したら怖い存在だ。沿線の顧客とは〝ゆりかごから墓場まで〟関わりあっているからだ。

全国区のJRをはじめ首都圏の小田急、京王、京急、東武、西武、京成、地方の近鉄、阪急阪神、京阪電鉄、名鉄、西鉄…デベロッパーの命運を左右するのは電鉄(系)会社ではないか。

相鉄不・東急 横浜駅直結タワマン 第1129戸完売 坪717万円(2022/1/26

床暖房もタオル掛けもなし 経済設計の極み それでも海好き惹きつける 相鉄不「平塚」(2022/4/13

11121戸 登録即完に納得 期間70年の定借免震タワー 東急「南町田」(2022/7/22

いつもなら「ベスト3」はすぐ頭に浮かぶのだが、今年は「THE YOKOHAMA FRONT TOWER」に続く物件がない。(記者の取材不足のせい)

それより、地方に目が移る。レベルの高さではタカラレーベンの会社設立50周年記念の免震フラッグシップ「レーベン福岡天神 ONE TOWER」(153戸)だ。「天神」アドレスは38年ぶりの供給とかで、坪単価(書かないという約束)もエリア最高峰だった。オプションだったが、2,0003,000万円を掛けたというモデルルームに記者は驚愕した。壁面に大理石を張るマンションなど首都圏にもないはずだ。

この九州圏最高峰の「福岡天神」を瞬く間に抜き去ったのが、坪単価520万円の大和ハウス工業「プレミスト大濠二丁目」(35戸)だ。残りは6戸だ。

しかし、これより凄い地方物件が分譲された。隈研吾氏が設計を担当した坪単価700万円超のプロポライフグループの「プロスタイル札幌 宮の森」だ。市内の高級住宅街・宮の森の第一種低層住居専用地域(建ぺい率40%、容積率60%)に位置する地下2階地上3階建て全20戸。

 これらの物件に象徴されるように、今年は大和ハウス、タカラレーベン、日本エスコン、フージャースコーポレーション、野村不動産、住友不動産、大京穴吹工務店などの地方物件の供給増が目立った。着工増も続いており、戸数は関西圏や中部圏より多い。地方の動向から目が離せない。

福岡の最高峰 第1100戸 圧倒的な人気 タカラレーベン50周年「福岡天神」(2022/3/15

坪単価520万円でも人気 最終分譲へ 大和ハウス「プレミスト大濠2丁目」(2022/11/1

隈研吾氏が設計 坪700万円超でも好調スタート プロポライフ「札幌 宮の森」(2022/9/23

首都圏に目を戻すと、高額物件では三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス グラン 三番町26」(102戸)が販売開始された。坪単価は1,000万円前後。第1期として販売対象の78戸のうち半数以上の40戸が供給された模様だ。

この物件の隣接地では、三井不動産レジデンシャル「パークコート ザ・三番町ハウス」(193戸)が来春に分譲される。「パークコート」に「ザ」が付くのは初めてではないか。〝三菱地所には負けないぞ〟という意思がこの「ザ」に込められていると思う。単価は1,000万円をはるかに超えるか。

8物件目〝グラン〟「三番町26」 高値更新の坪1000万円前後 三菱地所レジ(2022/9/14

1300万円でどうか 旧逓信省庁舎跡地の三井&三菱「三田ガーデンヒルズ」(2022/4/30

 三菱地所レジデンスの物件では、大栄不動産とのJV「ザ・パークハウス 川越タワー」(173戸)が印象深い。駅前免震タワーマンションで、坪単価320万円の高額ながら第11次~398戸が登録完売して話題になった。設備仕様レベルも水準以上。

三菱地所 駅徒歩1分、免震の「川越タワー」第11次~398戸に登録申し込み(2022/3/28

 三井不動産レジデンシャルでは、「パークホームズ文京本駒込」(88戸)を見学した。立地特性を踏まえ、入居者の読み終えた本を貸し出す「循環ライブラリ」のほか、ワークスペース、ピアノ・楽器の練習ができる防音室を設けたのが評価され、第144戸が完売した。坪単価は560万円。

立地にふさわしい防音室、循環ライブラリ 三井不レジ「文京本駒込」人気(2022/12/6

 三井と三菱でいえば、来春には三井不動産レジデンシャル・三菱地所レジデンス「三田ガーデンヒルズ」(1002戸)の分譲も始まる。記者は坪単価1,300万円と予想しているのだが、果たして当たるかどうか。両社はあるときは手を組み、またあるときは角突き合わせて激烈な競争をし、結果として他社の追随を許さないという戦略なのだろう。

この両社に割って入るのはどこか。その筆頭格の野村不動産や住友不動産は意外と都心の一等地での供給は少ない。坪単価2,000万円でも驚かない「西麻布三丁目北東地区」の再開発マンションの供給はもっと先だろう。住友不動産は好立地物件は分譲しないで賃貸として保有する戦略だ。

それでも、野村不動産「KAMEIDO CLOCK(カメイドクロック)」「プラウドタワー亀戸クロス」(934戸)と、複合免震タワーマンション「プラウドタワー目黒MARC」(301戸)は〝プラウド〟の存在感を示した。

「亀戸」は、全館空調「床快Full」(ワンルームタイプ162戸除く)とLowE樹脂サッシを採用した。「目黒」では、同社とJVを組んだJR東日本都市開発、施工・竹中工務店の矜持を見た。リビング天井高2700ミリを確保し、デザイン、ワイドスパンのプラン、設備仕様レベルも高い。

同社の常設モデルルーム「プラウドギャラリー武蔵小杉」はなかなかいい。

街のポテンシャル 劇的に変えた 野村不の商業施設「KAMEIDO CLOCK428日開業(2022/4/26

天井高2700ミリ 全戸ワイドスパンに高い評価 野村不・JR東日本都市開発「目黒」(2022/7/24

5社ブランドとの連携がいい 野村不の常設「プラウドギャラリー武蔵小杉」(2022/6/25

メジャー7の物件では、東急不動産(日鉄興和不動産とのJV)「ザ・タワー十条」(578戸)と、東京建物「ブリリア自由が丘」(61戸)を見学できなかったのは残念だ。「十条」の坪単価は470万円と聞いている。これが売れれば、準都心部のマンション市場を劇的に変えるはずだ。

「自由が丘」は、いつも〝住みたい街〟ランキングのトップ争いをしている自由が丘駅から徒歩2分。住みたい人にとっては垂涎ものだ。お金があったらという条件はつくが、小生がもっとも住みたいのは東京駅で、自由が丘クラスなら青山、麻布、六本木、表参道、神楽坂、神田神保町、二子玉川、下北沢なども引けを取らないと思うが…。

 垂涎ものといえば、リストグループのリストデベロップメント「リストレジデンス武蔵野御殿山」(45戸)もそうだ。「御殿山」アドレスでは9年ぶりの第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)という希少物件だ。残り1戸とのことだが当然か。敷地南側は道路を挟んで玉川上水。ひよっとしたら太宰治も歩いていたかもしれない。歴史と文化を感じさせる物件だ。坪単価は491万円。敷地形状からして設計にも苦労し、強気な値付けをできなかったのが惜しまれる。何といっても同社は〝サザビーズ〟だ。富裕層を狂喜させるマンションを分譲してほしい。

敷地南側は玉川上水 第1期は約30戸成約見込み1低層のリスト「武蔵野御殿山」(2022/10/2)

 

このほか、伊藤忠都市開発、大和地所レジデンス、タカラレーベンなどの商品企画が光った。

伊藤忠都市開発は以前からもそうだが、物件ごとにその土地の魅力を最大限に引き出している稀有なデベロッパーだ。今年は「三軒茶屋」「新御徒町」「西馬込」を見学したが、なかでも「三軒茶屋」が出色の出来だった。

退行する商品企画に一石 天井高2700ミリ&ワイドスパン 伊藤忠都市「新御徒町」(2022/6/18

ディスポーザー、玄関手洗い収納標準、選べる洗面、伊藤忠都市開発「西馬込」(2022/6/19

料理・風呂好きにはたまらない 設備仕様レベル突出 伊藤忠都市開発「三軒茶屋」(2022/11/23

大和地所レジデンスは、容積率に算入されない奥行き4m×幅4mの「オープンエアリビング」を開発してヒットしたデベロッパーだが、今年見学した「横濱山手」(JR西日本プロパティーズとのJV)「茅ヶ崎東海岸」「門前仲町」などが早期完売したのも当然だ。

風致地区の高台立地 設備仕様レベルも高い JR西日本プロ・大和地所レジ「横濱山手」(2022/8/11

希少の海に近い1低層 水準以上の基本性能・設備仕様 大和地所レジ「茅ヶ崎東海岸」(2022/4/12

最高7倍、平均1.5 75戸のうち64戸に申し込み 大和地所レジ「門前仲町」(2022/7/11

天井高3m超、20畳大の床下収納など 大和地所レジ「赤羽北フロント」竣工見学会

タカラレーベンは、先に紹介した「福岡天神」もそうだが、「東川口」「小田原」は〝駅近〟の特性を最大限に生かした好物件だ。

タカラレーベン 小田原駅徒歩1分「レーベン小田原THE TOWER」完売(2022/8/18

県初のPPP事業 4か月で全143戸完売 タカラレーベン・埼玉建興「東川口」(2022/7/14

 このところリビング天井高はどんどん低くなっているが、その低さを感じさせない工夫を凝らしていたのが日本エスコン「レ・ジェイド クロス 千代田神保町」(50戸)と、明和地所「クリオ川越大手町」(49戸)だった。

 「千代田神保町」は2400ミリだが、リビングに隣接する居室を主寝室とし、調光機能付きダウンライトをLD、キッチン、全居室に30か所以上設置することで難点の解消していた。

「川越大手町」は、地区計画により建築物の絶対高さが16m以下に定められていることからリビング天井高は23502400ミリしか確保できていないが、モデルルームは和モダンをテーマに、リビングは床に座って寛げる座卓タイプとし、目線を下げることで空間の広がりを演出していたのが見事だった。

歴史・文化を次代に繋ぐ 企画意図伝わる 日本エスコンの定借「千代田神保町」(2022/10/8

和モダン見事に表現 出色の出来アクタス・モデルルーム 明和地所「川越大手町」(2022/10/15

大和ハウス工業・京浜急行電鉄・長谷工不動産「プレミスト王子神谷」(227戸)は、日本製紙の工場跡地で、用途地域は工業地域だが、周辺はマンション化が進んでおり、嫌悪施設はない。物件はマンション群の南側最前線に位置しており、北側は公園。設備仕様レベルも高い。

大和ハウス 販売好調の「プレミスト王子神谷」 2期分譲開始(2022/2/19

 他の都県の主要都市の坪単価は300万円を突破しているのに、千葉県下では東京寄りの船橋や本八幡などほんの一部でしかなく、県都の千葉駅圏も価格下げ圧力が強い。中心市街地の千葉パルコ跡地の新日本建設など5JV「エクセレント ザ タワー」(397戸)の第11100戸が即日完売したが、坪単価は270万円だった。全国に20ある政令指定都市の中では最安値圏レベルのはずだ。

 同駅圏では、三越千葉店跡地で東京建物、野村不動産、中央住宅、ファーストコーポレーションの4JVのタワーマンション(491戸)が計画されている。坪300万円を突破するのは間違いない。

270万円 第11100戸 即完スタート 新日本建設など5JV「ザ タワー」(2022/4/1

 京王線はこのところの34年間、供給ラッシュが続いており、現在でも調布駅~聖蹟桜ヶ丘駅では十数物件2,000戸超が分譲されている激戦区だ。

そんな中で販売が好調に推移しているのが、飯田グループのパラダイスリゾート「調布ワンダーランドプロジェクト」(220戸)だ。調布駅から1駅先の西調布駅圏であることから、坪単価は260万円と抑えられているが、設備仕様レベルは高い。

大激戦地で販売好調 デベロッパーの良心を見た パラダイスリゾート「調布」(2022/5/25

 分譲開始は昨年の6月だが、今年5月の竣工までに完売したポラスグループ中央住宅「ルピアコート津田沼」(53戸)は、コロナ禍の真っ最中であったことから〝さわらない・もちこまない〟ノンタッチをテーマにしたマンション。坪単価215万円。「変身ラウンジ」「まもるんスペース」に記者は目を丸くした。

目からうろこ キッズスペースに一変「変身ラウンジ」 ポラス「津田沼」竣工完売(2022/6/16

 2019年に開業した相鉄・JR直通線羽沢横浜国大駅前の日鉄興和不動産「リビオタワー羽沢横浜国大」が好調なスタートを切った。記者は初めて降り立つ駅で、隣駅の武蔵小杉から1駅なのでものの数分で着くと思っていたら、何と15分もかかった。一駅でこれほど時間がかかる区間は首都圏では他にまずないはずだ。

 駅周辺は倉庫だった跡地で、駅前はドラッグストアなどがあるのみで、駅名にもある「横浜国大」は徒歩十数分というのに驚いた。さらに、坪単価360万円にも第1期に100戸以上の申し込みが入ったのにも、申込者の半分以上が県外というのにもまた驚いた。設備仕様は高い。 

1分の利便性・資産性受けたか 県外が5割 日鉄興和「羽沢横浜国大」好調スタート(2022/6/25

カテゴリ: 2022年度

img_display.jpg
「パークホームズ文京本駒込」

 三井不動産レジデンシャルが分譲中の「パークホームズ文京本駒込」を見学した。駒込駅から徒歩5分の全88戸で、入居者の読み終えた本を貸し出す「循環ライブラリ」のほか、ワークスペース、ピアノ・楽器の練習ができる防音室を備えているのが特徴で、第1期44戸が完売。好調なスタートを切った。

 物件は、山手線駒込駅から徒歩6分、東京メトロ南北線駒込駅から徒歩5分、文京区本駒込5丁目の商業地域・第一種住居地域(建ぺい率96.55%、容積率566.57%)に位置する14階建て全88戸。第1期2次(4戸)の登録受付は2022年12月9日(金)~12月9日(金)、抽選日は12月9日(金)。価格は1億458万円~1億4,758万円、専有面積は65.43㎡(1戸)・74.67㎡(2戸)・77.80㎡(1戸)。入居予定は2024年4月上旬。施工は村本建設。

 物件ホームページを7月に立ち上げ、案内は10月にスタート。11月25日に分譲した第1期44戸(専有面積57.83~90.52㎡、価格9,058万~20,858万円)が完売。第1期の坪単価は560万円。購入者は子育てファミリーが中心。これまでの反響は2,000件超。

 現地は、イチョウ並木が美しい敷地南側の不忍通りに接道しているほか、西側、北側、東側(一部)に接道。建物は内廊下方式で、標準階の住戸は6~7戸、最上階は5戸。

 主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2500ミリ、ディスポーザー、食洗機、キッチン・洗面フィオレストーン天板、食器棚、床タイルなど。

 同社都市開発二部事業室・中村信介氏は、「小学校の通学校が文京区内でも人気が高い『3S1K』(昭和小・誠之小・千駄木小・窪町小)の昭和小学校という立地に対する子育てファミリーの評価が高く、電子ピアノを備えた防音室や『循環ライブラリ』などの共用部施設も支持されています。競合物件は多くありません」と語った。

img_facade.jpg
基壇部の外観デザイン

◇        ◆     ◇

 ワークスペースや防音室、「循環ライブラリ」の共用施設がアッパーミドルの子育てファミリーに受けているのだろう。坪単価からして大半は1億円超の価格だが、凄い売れ行きだ。

 インター・プロデュースの澤村正人氏による三層構成のデザインがいい。とくに書架に蔵書が並ぶシーンをモチーフにした基壇部がとても印象的だ。また、1戸1戸のプランもよく練られているのも人気の要因の一つだと思う。ワイドスパンが中心で、北向きだが57㎡のプランでも間口は7770ミリ。よくある田の字型はひとつもない。

sub1.jpg
循環ライブラリ

IMG_5074.jpg
現地(クレーンの立っている部分)

◇        ◆     ◇

 三井日本橋タワー5階に設けられている同社の日本橋サロンを訪ねるのは初めてだったが、同業他社の常設モデルルームと比較して勝るとも劣らないのは間違いない。

 全体の広さは数百坪ありそうで、受付カウンターは江戸切子のデザインがあしらわれており、ラウンジ正面には「三井」の象徴でもある越後屋の店章(家紋)が染められた幅5mはありそうな暖簾が目を射た。日本橋を中心に忠実に再現したジオラマも目を引く。床も突板仕上げ。接遇スペースのテーブルは本物の原木で、椅子も本革張り。

 これだけで来場者を圧倒するはずだが、74㎡のコンセプトルームの基本スペックも価格に見合うレベルだし、華美でないカラーリング・デザインも優れている。

IMG_5068.jpg
「三井の住まい 日本橋サロン」

IMG_5063.jpg
接遇スペース

入居者の読み終えた本を貸し出す「循環ライブラリ」 三井不レジ「文京本駒込」(2022/8/6)

会話ができ、音も香りも風も吹く 日本橋「未来ののれん展」11/11まで開催(2019/11/2)

 


 

 

カテゴリ: 2022年度

 住宅着工と不動産グラフ.png

 全て疑ってかかれ-メディア(記者)の基本だ。マス・メディアであろうと個人がSNSを通じて発信する情報であろうと、その情報は発信者によって編集され、そこには何らかの意図・企みが隠されており、受け手は発信者が企図するものを読み取り、批判的に読み取らなければならない-メディア・リテラシーの原則だ。

 なぜ、こんなことに触れるか。デベロッパーもメディアも評論家も、マンション市場を語るとき、その論拠に必ずと言っていいほど不動産経済研究所(不動研)のマクロデータを利用し、受け手もまたそのマクロデータを無批判に受け取っているのではないかという疑問を小生はずっと抱いているからだ。

 断っておくが、不動研のデータを鵜呑みにするなと言っているのではない。同社のデータは、マンション市場を把握するにはとても貴重な資料だ。ただ、同社のデータは全体像の一部を捉えたもので、全てではないことをわれわれは忘れてはいけない。

 それがいいか悪いかはさておき、同社の調査対象は専有面積が30㎡以上で、30㎡未満のワンルーム・投資向けマンションや1棟売り、最近増加している再開発物件の地権者住戸などは調査対象外になっている。(同じような調査は、不動研のほかに東京カンテイ、工業市場研究所なども行っており、東京カンテイは30㎡未満も調査対象に加えており、工業市場研究所は最近はほとんど供給されなくなった公的機関のマンションなども対象にしている)

 別表・グラフを見ていただきたい。国土交通省の首都圏マンション着工戸数と不動研の首都圏マンション供給戸数の推移を比較したものだ。国交省の調査は着工時点での数字で、その後、賃貸用に用途変更されたり、確認申請が取り消されたりしたものまで追跡調査していない。一方で、不動研は上述したような条件を付しており、着工と分譲開始には1~3年くらいのタイムラグが生じるので着工=供給という意味ではない。

 それにしても、戸数の乖離率(着工を100とした場合の不動研のカバー率)が著しいと皆さんは感じないだろうか。例えば、2013年。着工戸数は約6.8万戸であるのに対し、不動研は約5.6万戸(カバー率83.0%)だ。

 それ以降のカバー率はほとんど50~60%台で推移しており、2020年は着工約5.4万戸に対して不動研は約2.7万戸で、カバー率は50.5%となっている。当時、メディアは不動研のデータをそのまま報じ、マンション低調・退潮イメージを拡散した。2010~2021年で見ると、着工戸数約73万戸に対して、不動研は約48万戸で、約25万戸の差(カバー率65.3%)がある。

 しかし、マンションの着工戸数は減少しているが、分譲戸建てが増加したため分譲住宅はそれほど減少していない。中古マンションの成約件数も最近は新築を上回っている。

 ここに注目する必要がある。情報発信者も受け手も分譲戸建てや賃貸市場を含めたもっと広い視野で眺めないといけない。消費者の視点からすれば、本来は新築であろうと中古であろうと、マンションであろうと戸建てであろうと、あるいは賃貸であろうと、自らのライフスタイル・ステージにふさわしい住宅を自由に選択できるのが理想的な姿だ。それを阻んでいるのは何かも考えたほうがいい。

 着工戸数と不動研の供給戸数の乖離については、2022年9月の記事で次ぎのように書いた。

 「記者は、当初分譲予定だったのをリートなどに1棟で売却する戸数は年間3,000~5,000戸、地権者向け・事業協力者向け住戸は年間7,000~10,000戸、30㎡未満のコンパクト・投資用は7,000~9,000戸、合計年間17,000~24,000戸くらいあるとみており、この数字を加えるとほぼ住宅着工戸数と一致する」

 メディア・リテラシーの基本に立ち返る必要性を最近強く感じているので書いた。

マンションの質の退行・劣化、着工戸数の捕捉率、新築・中古の価格などを考える(2022/9/5)
 

 

カテゴリ: 2022年度
 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン