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「デュオアベニュー東伏見」

 フージャースアベニューが分譲中の分譲戸建て「デュオアベニュー東伏見」を見学した。東伏見駅から徒歩4分の全21区画で、昨年6月の分譲開始からこれまでに17区画を成約。残りは未竣工とモデルハウスを合わせた4戸のみ。

 物件は、西武新宿線東伏見駅から徒歩4分、西東京市富士町五丁目に位置する全21区画。現在分譲中の住戸(3戸)の土地面積は86.70~115.11㎡、建物面積は81.56~91.60㎡、価格は5498万~6098万円。竣工予定は2021年4月下旬・9月上旬81棟は竣工済み)。建物構造・規模は木造2階建て・2×4工法。施工はイトーピアホーム。販売代理はフージャースコーポレーション。ランドスケープデザインはノマドクラフト・森山大樹氏、ファサードデザインはアレス建築設計事務所デザイナー・平田川奈氏。

 昨年6月から分譲開始されており、残りはモデルハウスを含めて4戸。好調に推移している。

 現地は、戸建て住宅が建ち並ぶ第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)の住宅街の一角。

 5~6戸で構成するオープンコートを3か所設置し、その周りに住宅を配置することで各住戸の日照・通風・駐車スペースを確保しているプランが特徴。

 主な設備仕様はLow-Eガラス、食洗器、床暖房、壁・出隅R、自転車置き場、散水栓など。

 販売担当のフージャースコーポレーション営業本部営業二部営業二課課長代理・大岩忠之氏は、「コロナが流行り出したころは、在庫が続出するのではないかと心配していたのですが、今期の売上計上進捗率はほとんど100%近く、ここも今期経常予定の13戸は引き渡し済みで、残りは4戸のみ。竣工予定の6月ころには完売できそうです。仕入れが厳しく、いまのところ次の現場は決まっていません」と話している。

 大岩氏はまた、「周辺の戸建てを見ている方には『高い』と仰る方もいれば、それらに飽き足りない方、マンションを探している方も多い」とも話した。

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モデルハウス

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階段部分にアクリルガラスの引き戸を設置したのが好評とか

◇       ◆     ◇

 添付した記事の通り、フージャースホールディングスの業績が絶好調だ。分譲マンションは今期引き渡し予定戸数1,205戸に対して12月末の契約進捗は1,199戸(進捗率99.5%)、分譲戸建ては引き渡し予定123戸に対して124戸(同100.8%)となっている。

 その売れ行きを確認すべく、「デュオアベニュー東伏見」の取材を申し込み、快く受けていただいた。同社に感謝する。

 「東伏見」を選んだのは、その立地条件と全21区画という規模に注目したからだ。「東伏見」は、飯田グループのタクトホームの本社所在地だし、同じ西武新宿線には田無駅のアーネストワン、花小金井駅の東栄住宅の本社がそれぞれ存在する、いわば飯田グループの本丸・牙城だ。ここに攻め入り(用地取得)したのは立派の一言だ。敷地は駐車場だったようだ。まだ用地争奪戦が始まる前に取得したのだろうか。

 同社の分譲戸建てを見学するのは久々だったが、まずまずの商品企画だ。オープンコートを3か所に設置し、敷地延長の難点を克服しているのがいい。敷地面積が地役権部分を除き100㎡以下というのは残念ではあるが、どんどん狭くなる最近の傾向を考えればやむを得ないのか。他社が用地を取得していたら敷地は20坪くらいで3階建てになっていたかもしれない。西東京市には開発行為(基本的に500㎡以上)に伴う最低敷地面積を定めた条例はあるが、戸建てに対する規制は緩く、対象となる事案は少ないはずだ。

 もう一つ。同社が2017年に分譲開始したつくばエクスプレス柏たなか駅から徒歩3分の「トレジャーランドプロジェクト(デュオヒルズ・ザ・グラン)」253戸(坪単価150万円)が前期までに完売していることを聞いた。

 4年前に取材したとき、記者は年に50戸として完売まで5年はかかるのではと思ったので、その通りに質問した。ところが、取材している途中で「〝ひょっとしたら年間80戸、3年間くらいで売れるかも〟に変わった。それだけ友野氏の説明は説得力があった」と書いた。

 結果は後者だ。とても嬉しくなった。友野さんはいま何を担当されているのか。取材を申し込んだら受けてくれるか…。

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フージャースHD 今期分譲引き渡し予定1,632戸に対して契約進捗は95.6%(2021/1/14)

沈滞ムードを吹き飛ばすか フージャースコーポ「柏たなか」(2017/3/17)

環境難をランドスケープデザインで克服するか 「デュオアベニュー東府中」(2016/6/14)

大手の商品企画に学ぶ フージャース「デュオアベニュー八王子」(2014/9/29)

フージャースの戸建て「デュオアベニュー成城」早期完売か(2014/2/10)

〝大手と互角に戦える〟フージャースアベニュー「デュオアベニュー国立」(2013/10/15)

 

 


 

カテゴリ: 2020年度

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 昨日(2月19日)は、スタイルアクトの調査による首都圏分譲戸建て市場に関する記事を書いた。住宅着工戸数を上回る戸数が新規発売され、着工戸数を1万戸以上も上回る戸数が成約したなどとする吃驚仰天の記事なのだが、その真偽のほどを確認する材料を記者は持たない。

 新型コロナの影響で時間はあるのに分譲戸建ての取材が激減し、どうなっているのかさっぱりわからない記者に、万里の長城のような〝ビッグデータ〟を持ち出されたらぐうの音も出ない。

 だが、しかし、各社が発表する決算数値などから市場動向の一端を捉えることはできる。以下、ガリバー企業の飯田グループホールディングスをはじめ供給2位グループのオープンハウス、ケイアイスター不動産、ポラス、さらにはこれら各社とは一線を画す三井不動産、野村不動産の分譲戸建ての動向について書く。スタイルアクトのレポートが事実なら記者は大恥を〝書く〟ことになるが…。

◇       ◆     ◇

 まず、分譲戸建て市場の30%を占めるガリバー企業・飯田グループホールディングスから。

 飯田グループ6社の2020年3月期の戸建事業の売上高は1兆2,159億円で、売上棟数は45,773戸だ。2020年度の分譲戸建ての着工戸数は146,154戸なので、同社のシェアは30.8%にも達する。今期も業績を伸ばしており、土地仕入れ原価、建築費の上昇を価格に転嫁できており、売上高、棟数、利益とも上昇し、課題だった在庫数も減らしている。

 同社の最大の強みは47都道府県のうち営業拠点の空白県は鳥取、島根、長崎県のみ(前期は高知、大分、宮崎に進出)という全国展開力と他社を圧倒する価格の安さだ。

 価格の安さでは、同社の1戸当たり全国平均価格は2020年3月期で2,650万円だ。エリア別は公表されていないが、首都圏でも3,000~3,500万円くらいではないかと記者は予想する。

 どれだけ安いか。仮に建物を30坪としたら飯田グループは坪117万円だ。マンションならどうか。首都圏のどんな山奥でも坪150万円以下は絶無だろうから20坪でも3,000万円、30坪だと4,500万円だ。飯田グループにかなわないことが素人でもわかる。

 しかし、一口に分譲戸建てといっても他の商品と同様ピンとキリがある。飯田グループと対極に位置するのが三井不動産(三井不動産レジデンシャル)だ。

 同社の2020年3月期の売上戸数は481戸で、1戸当たり価格は6,785万円だ。これには地方物件も含まれるはずで、首都圏に限れば7,000万円を突破するのではないか。つまり、飯田と三井の首都圏戸建て価格は1:2ほどの差がある。

 これほど差があるのに、三井不動産は売れていないわけではない。その逆だ。同社は2015年3月期、過去最多の916戸を計上したが、その時の1戸当たり価格は5,425万円だった。その後、戸数を減らしているが、1戸当たりの価格は6年間の間に1,360万円も上昇している。戸数をほぼ半減させながら、売上高は496億円から328億円へと34%減にとどまっている。ここが機を見るに敏な同社のすごいところだ。競争力の強い利益率の高い都心部に注力しているのは間違いない。

 それでも売れ行きは好調だ。2020年3月期末では58戸だった完成在庫は2020年12月末で36戸しかない。(飯田グループの2020年3月期末の完成在庫は10,104戸)

 他社はどうか。〝東京に、家を持とう〟〝オペンホウセ〟をキャッチフレーズに別表のように驚異的な伸びを見せるオープンハウスは、2021年9月期を初年度とする中期経営計画の中で「行こうぜ1兆!2023」を打ち出し、2023年9月期のグループ売上高1兆円を目標にすると発表した。

 大手デベロッパーでも売上1兆円以上は数えるほどしかないのに、1997年創業の、人間でいえばまだ20歳を少し超えたばかりの企業がそれを眼前に掲げるまでに成長したのに驚くほかない。

 記者は2012年、荒井正昭社長にインタビューしたことがある。その時、荒井社長は将来の目標について「夢は1兆円といいたいところだが、売上は2,000~3,000億円ぐらいには伸ばしたい。飯田一男さんを見習いたい。不動産会社を興した人で、いまも伸ばしているのは飯田さんとこぐらい。最近、お会いした」と話した。

 「飯田一男さん」を知らない人は多いだろうから少し書く。記事も添付したので読んでいただきたい。

 飯田一男氏は、飯田グループの核をなす一建設の創業者で、荒井社長と会ったその翌年の2013年12月に亡くなられた。その1か月前には飯田グループホールディングスが設立され、グループ会社の合計売上高は9,075億円だった。

 飯田氏には年に1、2度うかがい、「数字だけは教えるが、オレのことや会社のことについて記事にするな。写真はもちろんメモも取るな」「ただで話すのだから新聞購読料をただにしろ」という条件つきで取材し、1時間も2時間も話し込んだ。当時の本社屋は駅から遠く、プレハブ造りでエアコンなどなく、コンクリ床にストーブが1つしかなかった。

 荒井社長と飯田氏がどのような話をしたか知らないが、荒井社長はその時から売上1兆円を夢に描いたのは間違いない。荒井氏ほど時代を読む能力の高い人を記者はしらない。

 同社の2020年9月期の分譲戸建て計上戸数は2,804戸で、ポラス、アイダ設計、ケイアイスター不動産などを一挙に抜き去った。注目すべきは1戸当たり平均価格が前期比140万円減の4,160万円に抑制できたことだ。比率にすれば3.4%だがこれは大きい。

 同じように業績が急伸しているケイアイスター不動産はどうか。同社は2月9日、2021年3月期通期業績予想を上方修正。売上高1,480億円(前期比22.6%増)、経常利益116億円(同83.6%増)、当期利益70億円(同95.3%増)と全段階で過去最高を予想。期末配当も前回予想の44円から95円へ増配すると発表した。

 ものすごい数字だ。記者はこの会社が急成長したのは、ポラス出身の専務取締役・瀧口裕一氏と取締役第二分譲事業部長・浅見匡紀氏の功績が大きいと思っている。オープンハウス荒井社長にインタビューした翌年の2013年、瀧口氏にインタビューしている。瀧口氏は2008年1月、同社に請われて入社。いきなり常務取締役に就任した。浅見氏は瀧口氏より2か月後の2008年4月に入社している。お二人の記事も添付したので読んでいただきたい。

 同社には大変失礼だが、瀧口氏を最初に取材したときは、本社屋は高崎線の本庄、しかもバス便で、地元や群馬県、栃木県が営業エリアだったので、ポラス商圏では戦えず、せいぜい埼玉県の北西部から群馬県、栃木県のビルダーにとどまるのだろうと思った。とんでもない見込み違い誤算だった。

 同社は2015年に東証2部、翌年に東証1部に指定替えとなり、東京本社を設置したあたりから業績が急伸した。2016年は43店舗だったのを今期末には121店舗に拡大する。この間、ローコストの商品開発、FC展開などを矢継ぎ早に打ち出し、M&Aも進めた。現在のグループ販売棟数は4,457棟に達するというではないか。

 オープンハウス、ケイアイスターの後発の急襲を受け、売上戸数では瞬く間に抜かれたポラスはどうか。

 グループ代表の中内晃次郎氏の本心は分からないが、唯我独尊我が道を行くではないかと思う。上場する気などまったくなく、越谷にある本社から車でスピーディーに駆けつけられる埼玉県・千葉県・東京都の一部エリアのみを商圏とする方針に変わりはないはずだ。

 同社の2021年3月期業績予想は、売上高2,300億円(前期比1.9%増)、経常利益170億円(同10.4%増)、純利益47億円(同7.4%増)と過去最高を目指すが、関係者からは〝絶好調〟の声も聞かれる。業績予想を上回る可能性が高いと見た。

 デベロッパーでは、野村不動産が2018年に初めて三井不動産を上回る607戸(三井は501戸)を計上したが、その後はやや頭打ちだ。最近は準都心・郊外の大規模から三井不の独壇場だった都心部への攻勢を強めている。

 この二強に割って入るデベロッパーはないのか注目しているのだが、いまのところその気配はない。

 分譲戸建て市場は、好況と逆行するように首都圏着工戸数は2019年の63,360戸から2020年は54,340戸へと14.2%も減少しており、用地争奪戦が激化していることを裏付けている。これが質の低下につながらないことを願うほかない。

驚天動地 首都圏着工を上回る新規戸建て分譲 成約戸数!スタイルアクト調査(2021/2/19)

旧聞のみ 実態に迫れず羊頭狗肉の記事 週刊住宅1/18号〝ミニ戸建てがブーム〟(2021/1/21)

敷地60㎡未満の分譲「狭小住宅」 都心部は軒並み50%超 最少の練馬は1.9%(2019/8/19)

建売住宅のガリバー企業誕生 飯田グループホールディングス(2013/11/2)

オープンハウス荒井社長「いまは踊り場。成長戦略を構築する」(2012/1/19)

〝不惑超え〟エース 本業も率先垂範 好調ケイアイスター・浅見匡紀氏(41)に聞く(2020/7/7)

「人は宝」 急伸するケイアイスター不動産 瀧口専務が語る(2013/10/22)

カテゴリ: 2020年度

 小規模開発が圧倒的に多く、杳として知れないのが実態とされてきた新築分譲戸建て市場が、ひょっとしたらこのコロナ禍にもかかわらずバブル期を凌ぐ活況を呈していると受け取れるデータの出現などについて書く。

 不動産経済研究所は昨年3月、数十年間にわたって調査を続けてきた首都圏の建売住宅市場動向調査(以下、分譲戸建て市場)をやめた。調査対象を原則として10戸以上の開発規模としてきたため、市場全体の1割未満しか捕捉できないことが大きな理由だと思われる。

 同社の決断は正解だと思う。そもそも十把ひとからげのマクロデータはあてにならない。株価だってバブル崩壊後最高値を付けたからと言ってみんな上昇しているわけでも、実体経済を反映しているわけでもない。

 分譲戸建てでいえば、直近のテータによると飯田グループの1戸当たり平均価格は2,756万円で、三井不動産のそれは6,663万円だ。これを足して2で割った4,710万円が平均価格なのか、そして飯田グルーフの住戸が売れて三井不が売れ残り、あるいはその逆だったら、契約率は50%でも中身はまったく異なる。好調なのか不調なのか誰も正解を出せない。

 ところが、不動研の〝撤退〟に呼応するのか待ち構えていたのかよくわからないが、分譲戸建て市場の全体像に迫ろうとする調査がある。

 一つは、2015年4月から公表されている東京カンテイの「一戸建て住宅データ白書」だ。最新の2020年版では全国で110,938戸、首都圏で52,193戸がそれぞれ供給され、首都圏の1戸当たり平均価格は3,997万円、平均土地面積は115.7㎡、平均建物面積は98.9㎡とある。

 国土交通省の2020年の分譲戸建て着工戸数は全国で130,753戸、首都圏で54,340戸だから、同社レポートの捕捉率は驚異的だ。刮目に値する。

 レポートでは首都圏供給戸数は着工戸数より約2,100戸少ないのは、同社は調査対象を最寄駅から徒歩30分以内かバスで20分以内、さらに土地面積が50㎡以上で300㎡以下としているからだと解すれば、東京都で増加していると思われる土地面積が50㎡以下の相当数の物件がこの中に含まれていると合点がいく。

 ただ残念なのは、同社のレポートは分譲された物件のうちどれだけ売れたのか、成約価格は売り出し価格とどれほどの乖離があるのか、売主ごとの販売状況はどうなのかはわからないことだ。冒頭にも書いたように、分譲戸建てをマクロデータにまとめただけでは参考にならない。詳細な分析結果を知りたい。   

 さらに言えば、同社は各社の物件ホームページや住宅検索WEBなどから調査しているはずなので、広告する前に売れてしまった物件の調査漏れはないのか、その逆に多数あるといわれるダブロカウントはないのかも気にかかる。

 それにしても、よくぞここまで捕捉したものだ。脱帽するしかない。記者も昔、分譲戸建ての販売動向を調べていたことがあるが、捕捉率は5~6割くらいだった。

 もう時効だろうから書く。同社は1979年10月、都心部でレベルの高いマンションを分譲していた朝日建物の子会社として設立された。同時期に取材したのを覚えている。目黒駅前の小さな雑居ビルだった。規模は数人だったはずだ。

 親会社の朝日建物はマンション専業に徹していればよかったのだが、バブル期にマンション転がしに手を染めたのがいけなかった。創業社長の長田高明氏の実兄が東京相和銀行(現・東京スター銀行)の頭取だったことから湯水のように事業資金が注ぎ込まれ、同社はそれで中古マンションを買い漁った。年間数百戸を転がしていたはずだ。

 そして、バブル崩壊後の1999年に朝建は破綻した。その後、セコムが営業権を譲り受け、やはり破綻したホリウチコーポレーション(堀内建設)と合併させてセコムホームライフとしてマンション分譲を継続してきた。そのセコムホームライフは昨年10月、穴吹興産グループ入りし、社名もあなぶきホームライフに変更された。

 朝日建物のブランドはこれで完全に消えたが、東京カンテイとマンション管理の朝日管理は健在だ。社長は長田千江美氏とあるから、長田家と姻戚関係のある方だろう。現在の従業員は250名とある。すごい会社に成長したものだ。

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 東京カンテイのレポートに驚嘆するのだが、もっとすごいのが出現した。〝住まいサーフィン〟〝沖式儲かる確率〟で知られるスタイルアクト(旧社名:アトラクターズ・ラボ)の「首都圏新築分譲戸建の市場動向2020年のまとめ」と題するレポートだ。おおよそ次のようにある。

 ・年間売出戸数は57,331戸で住宅着工戸数とほぼ同数(売出時期は着工時期とほぼ同じ)
 ・年間販売戸数は65,104戸で、年間売出より約1,000戸上回る
 ・在庫戸数は2019年12月の32,437戸から、2020年12月の24,664戸になり、7,773戸と大幅減少した
 ・販売月数は首都圏平均で4.9か月まで下がり、売れ行き好調の目安である5か月を割り込んでいる
 ・2020年12月には24,664戸と5か月分の適正在庫に収まっており、売れ行きは順調である
 ・首都圏の平均売出価格は4,105万円、㎡単価は41.6万円で前年水準を維持した

 これを読んで、記者はわが目を疑った。年間売出戸数は東京カンテイの調査より約5,000戸も多いのはさておくとして、2019年度末で32,437戸もあった在庫(完成在庫の意味か)が2020年12月末で24,664戸へと年間で7,773戸減少し、一方で新規売出戸数が57,331戸ということは、32,437戸+57,331戸-24,664戸=65,104戸が成約することなどありうるのか。これが事実なら、かつてのバブル期など比較にならない。狂乱どころではない。驚天動地だ。

 信じられないのは他にもある。レポートは「年間売出戸数は57,331戸で住宅着工戸数とほぼ同数(売出時期は着工時期とほぼ同じ)」としているが、これはありえない。明らかに間違いだ。前述したように2020年の首都圏着工戸数は54,340戸だ。それより約2,700戸も多く分譲されるはずがない。着工=建築確認済みとは限らないだろうが、建築確認前に分譲すれば宅建業法違反になるではないか。推察するに、この約2,700戸はいわゆる売り建てか、2019年に着工した63,360戸のうちの相当分が2020年に分譲されたのではないか。これだと辻褄があう。そうであればきちんとレポートに書くべきだ。

 「販売月数は首都圏平均で4.9か月まで下がり、売れ行き好調の目安である5か月を割り込んでいる」「5か月分の適正在庫に収まっている」としているのもいま一つよくわからない。売り出しから4.9カ月で完売するのなら、着工から完成まで3~6カ月と仮定すれば、完成まで完売になる計算だ。在庫となるのは9月以降に分譲した数千戸くらいにとどまるはずだ。どうして桁違いの在庫が出るのか。そしてまた、在庫が順繰りに売れればいいが、そうでないと「新築」として売れなくなるのではないか。適正在庫が年間供給の5か月分というのも信じられない。在庫を抱えないのが分譲事業の鉄則ではなかったのか。年間分譲の5か月分の完成在庫を抱えたら社長のクビは飛ばないのか。

 これも善意に解釈すれば、在庫とは完成在庫ではなく、仕掛物件も含まれると理解すればそれなりに納得はいくのだが…。

 解せないのはまだある。「首都圏の平均売出価格は4,105万円、㎡単価は41.6万円で前年水準を維持した」とあるが、日本不動産流通機構(東日本レインズ)は2020年の新築戸建住宅の成約件数は6,334件(前年比7.9%増)で、成約価格は平均3,486万円(前年比0.7%下落)と発表した。レポートでは成約価格の値引き率は売出価格の2.2%(約90万円)としているが、この乖離はどう説明するのか。また、「㎡単価」はいったい何を指すのか。土地面積なのか建物面積なのか説明しないとわからない。

 これらの疑問点について同社にメールで問い合わせているのだが、10日以上経過しても回答が得られない。記者は9年前、同社を批判する記事を書いたが、それが影響していると思いたくないが…。疑問に答えていただきたい。

アトラクターズ・ラボ「格安マンション転売ビジネス」中止(2012/6/27)

業界とユーザーを冒涜するアトラクターズ・ラボ「格安マンションの転売」ビジネスやめるべき(2012/6/8)

カテゴリ: 2020年度

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「戸建てのことなら細田工務店」CM

 細田工務店の分譲戸建て「グローイングスクエア成城学園前」を見学しているときだった。話題は「長谷工だからわかるんだ」CMの細田工務店バージョンに移った。

 同社分譲企画部広報課・北村義博氏が、「そうそう、あのCMはここで撮影したんです。私はロケに立ち会いました。出演者はみんな社員で総勢36人。事前にPCRの検査を受けて朝の8時からまる1日間かけて撮影しました。出演料? あるわけないでしょ。おいしいロケ弁は食べましたが…。効果? 当社ホームページへのアクセス数が倍増しました。社員も街を歩いていて『出ていたわね』などと声をかけられるようです。従業員満足度、士気もあがっています。当社の企業広告? かつて物件広告は全5段とか全10段とかは出していましたが、企業広告は新聞も含めて出したことは一度もありません」と話した。

 これはもう、物件紹介よりCMの話のほうがおもしろいと方向転換。こちらから先に紹介する。

 〝♪いいなあ こんな一戸建て〟から始まり〝♪戸建てだったら ♪戸建てのことならわかるんだ ♪技術があるからわかるんだ ♪木造のこだわり丁寧に ♪戸建てのことなら細田工務店 ♪コダテダッタラ ♪タララッタタ〟-こんな長谷工グルーフの細田工務店のCMがここ最近、毎日のようにつけっ放しのテレビから流れてくる。耳にたこができるほどだ。

 細田工務店バージョンは、2013年から開始されている「長谷工だからわかるんだ」CMの一つで、昨年11月1日の全日本大学駅伝(名古屋-伊勢神宮)から放映されている。同社社員が軽妙な7拍子の音楽に乗って楽しそうに踊る内容だ。放映時間は30秒。

 戸建てメーカーでは〝家に帰れば…〟は別格として、市川海老蔵さんの「すまいいーだ」や、ずいぶん手の込んだ「オペンホウセ」と比べたら細田の事業規模は一桁どころか二桁くらいも差がある。出演料だって細田はゼロだから比較にならない。なのにこの2社を凌駕しそうなインパクトがある。

 ロケ舞台となった「グローイングスクエア成城学園前」は、小田急線成城学園前駅から徒歩16分、調布市入間町三丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率40%、容積率80%)に位置する全29区画。土地面積は112.74~115.71㎡、建物面積は88.60~91.08㎡、価格は6,000万円台~8,000万円台。昨年8月から分譲開始し、第1期10戸は即日完売するなど好調なスタートを切り、モデルハウスを除き残りは2戸のみと好調。

 アドレスは調布市だが(京王線仙川駅までバス13分徒歩5分)、小田急線成城学園前駅まではバスで数分の立地。国分寺崖線景観形成重点地区に指定されている周辺には数億円はしそうな立派な戸建てがたくさん建っている住宅街の一角。建物は「認定低炭素住宅」。

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「グローイングスクエア成城学園前」ホームページから

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現地に隣接する国分寺崖線

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モデルハウス植栽

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 このCMは、ミリ単位の精度を求められる長谷工や細田の仕事からすれば、メロディにやや合わず字足らずか字余りなのが気にならないわけではないが、まあそんなことはどうでもいい。小生がどうしてこのように過剰に反応するかは少し説明が必要かもしれない。

 若い読者の皆さんは「細田」と聞いても知らない人が多いかもしれないが、バブルがはじけるまでの建売住宅市場での同社の位置は、東急不動産・東急電鉄、西武不動産、三井不動産、木下工務店、日本新都市開発、日本電建、殖産住宅などと肩を並べていた。我々団塊世代以上の年代の人にとっては「細田」はメジャーブランドの一つだった。自社分譲は年間で700戸くらいはあったのではないか。

 その後、バブルがはじけて市場は一変した。詳しくは書かないが、三井不動産は団地型から都市型に転換してバブル崩壊後もコンスタントに数百戸供給してきたが、〝街づくり〟が代名詞の東急は電鉄・不動産含めて年間供給量は200戸あるかどうか。西武はほとんど撤退した。木下は多角化に成功したが、日本新都市開発、日本電建、殖産などは姿を消した。飯田グループはバブルをしのいだが、一時期は危機も伝えられた。

 このように激変した市場の中で細田は生き延びてきた。そして昨年4月、長谷工グループ入りすることになった。今後どのような展開を見せるかわからないが、長谷工グループにはマンションだけでなく戸建ての実績も多い総合地所もある。細田と総合地所が組んだら素晴らしい戸建てができるはずだ。

 戸建ての法人施工では、最近は西武建設、イトーピアホーム、エスケーホームなどが目立つが、細田はどう動くのか。

 かつての「戸建てのことなら細田工務店」の輝きを取り戻すことができるかどうか。平野富士雄社長のかじ取りに注目だ。

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「長谷工だからわかるんだ」別バージョン

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「長谷工だからわかるんだ」別バージョン

長谷工コーポ 建売住宅の老舗・細田工務店をTOB 子会社化 一抹の寂しさぬぐえず(2019/12/25)

約1000区画の「成田はなのき台」 細田工 分譲開始8年で約9割完売(2014/4/21)

細田工務店「賢い子どもに育てる家」がテーマ「グローイングスクエア調布多摩川」見学(2012/2/6)

匠の技を見た 語り尽くせぬ魅力 細田工務店「グローイングスクエア杉並和泉」(2008/2/6)

カテゴリ: 2020年度

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「Lifegenic W(ライフジェニックダブリュー)」

 大和ハウス工業は2月1日、Web限定の木造戸建住宅商品「Lifegenic W(ライフジェニックダブリュー)」を2021年4月1日に発売すると発表した。

 同社は2019年11月、Webサイトを通じて楽しく簡単に家づくりを体験できる戸建住宅商品「Lifegenic(ライフジェニック)」を発売しており、これまでにWebサイトへのアクセス数は135万回以上に及び、約600棟を販売するなど好調であることから、「ライフジェニック」のバリエーションを拡充し、都市部をターゲットにし、建物が近接する密集地や旗竿地にも対応できる敷地対応力に加え、近隣からの目線に配慮し、光・風の採り方にも工夫を凝らしているのが特徴。

 「テレワークスタイル」を選択可能としたほか、ウイルスなどをリビングに持ち込まないよう動線に配慮し、「家事シェアハウス」を選択できるようにもした。都市部に多い狭小地にも対応するため、間口のモジュール4 m55cmから45.5cm単位で広げることの出来るプランを用意。ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)にも対応する。

 プランは室内への光の採り方が異なる「コの字型」「Lの字型」「スクエア型」 の3タイプ。

 2月4日から首都圏と関西圏でプレ販売を開始し、4月1日から沖縄と一部を除く全国で販売する。販売目標は年間800棟。「Lの字型」プラン(延床面積89.42㎡)の参考価格は2,035万円(税込)。プランは15タイプ45プラン。構造は軸組工法2階建て。

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内観


 

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 東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は1月22日、首都圏の2020年(2020年1~12月)の不動産流通市場の動向をまとめ発表した。

 中古マンションの成約件数は35,825件(前年比6.0%減)で2年ぶりに前年を下回った。

 成約物件の1㎡当たり単価は首都圏平均で55.17万円(前年比3.2%上昇)で、8年連続の上昇。この8年で44.5%上昇している。

 成約物件価格は3,599万円(前年比4.6%上昇)で、1㎡当たり単価と同様に8年連続で上昇。5,000万円超の各価格帯が成約件数、比率とも拡大している。

 成約物件の平均専有面積は65.24㎡(前年比1.3%拡大)と2年ぶりに拡大、平均築年数は21.99年(前年21.64年)で、経年化が進んでいる。

 中古戸建住宅の成約件数は13,348件(前年比2.4%増)と2年連続で前年を上回り、2016年(13,195件)以来4年ぶりに過去最高を更新している。

 成約物件価格は首都圏平均で3,110万円(前年比0.2%下落)と2年連続で前年を下回った。

 成約物件の平均土地面積は147.99㎡(前年比0.8%拡大)、建物面積は105.24㎡(同0.3%拡大)となっている。平均築年数は21.62年(前年21.38年)で、経年化が進んでいる。

 新築戸建住宅の成約件数は6,334件(前年比7.9%増)と、2年連続で前年を上回った。

 成約物件価格は首都圏平均で3,486万円(前年比0.7%下落)と、2年ぶりに前年を下回った。

 成約物件の土地面積は122.95㎡(前年比0.3%縮小)、建物面積は98.40㎡(同0.5%縮小)となっている。

 土地(100~200㎡)の成約件数は5,828件(前年比0.02%増)で、ほぼ横ばいながら前年を上回った。

 成約物件の1㎡当たり単価は首都圏平均で19.41万円(前年比2.8%下落)と、2年連続で前年を下回っている。

 成約物件価格は2,810万円(前年比3.0%下落)で、2年連続で前年を下回っている。


 

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 〝ミニ戸建てがブーム〟などと新型コロナの変異種が発生したかのような衝撃的な見出しを掲げ、大上段に構えたものの、ぬゑのようなつかみどころのない相手にたじろぎ、結局は腰砕けとなり、太刀を振り下ろすどころか鞘に収めることすらできずすごすごと逃げ去った-こんなたとえがぴったりの記事が1月18日付「週刊住宅」に掲載されていた。

 読んだのはWeb版なので紙媒体ではどのように扱われているのか分からないが、かなりのスペースを割いているはずだ。記事の書き出しはこうだ。

 「コロナの蔓延(まんえん)で新築戸建ての需要が伸びている。中でも急伸しているのがミニ戸建てと呼ばれる物件だ。いまなぜミニ戸建ての需要が伸びているのか。その理由を探るとともに、戸建てブームは今後も続くのか考察してみたい」

 小生は、この段階で地団太を踏んだ。〝抜かれた〟と思った。小生も一昨年、「狭小住宅」の実態に迫ろうと挑戦したことがあるからだ。その時の記事を添付する。3週間くらいにわたり資料をあさり、現場を見学し、狭小住宅専門の業者に取材を申し込んだがかなわず、結局はなにも分からずじまいに終わったことが読んで頂ければわかるはずだ。

 狭小住宅が隠花植物のようにじわじわと領域を広げているのはなんとなくわかるのだが、そもそも建売住宅のデータはほとんどないし、住宅着工統計では戸数や住宅の面積は把握できるが、敷地面積の記載はない。民間の調査会社もどこも市場を把握できていない。

 なのに、ミニ戸建てがブームであることを週刊住宅が突き止めたとなれば、脱帽するほかない。

 ところが、同紙の記事をどこまで読み進めても、新築や中古マンションのデータや住宅購入予定者の意識調査結果ばかりで、肝心のミニ戸建てについての言及がない。同紙は「新築戸建ての需要が伸びている」と書くが、本当だろうか。住宅着工統計では持家も分譲戸建てもこの1年間というもの毎月ずっと二ケタ近い減少を示している。着工と分譲とは時差があるので、あるいは需要増を背景に今後は着工も伸びるのか。(その可能性はあると思う)

 やっと登場するのは、全体の分量2,000字の半分を過ぎたころだ。

 だしぬけに「業績がV字回復したのがオープンハウスだ」(これは誤り。落ち込んだのは緊急事態宣言時のみ。同社はずっと業績を伸ばしてきた=記者注)とあり、「オープンハウスが取り扱う物件は都心の戸建てが中心。それもミニ戸建てと呼ばれる物件が多い。ミニ戸建ての厳密な定義はないが、多くの場合狭い土地に建てられた建て売りを指し、敷地面積は60~80平方メートル以下、1階に駐車場を持つ3階建てタイプが標準と言えるだろう。

 オープンハウスの戸建て仲介契約件数は、20年4月は前年同月比39.1%減であったが、5月には反転し43.0%増、6月には52.3%増と大幅に伸長した。その結果、20年9月期の連結経営成績は前年度の約540億円(5,403億円の誤り=記者注)から575億円超(5,759億円の誤り=同)に伸びている。

 コロナ禍を受けての好況はオープンハウスに限らず、ケイアイスターの不動産(これもケイアイスター不動産の=記者注)分譲住宅契約金額の対前年比増加率は32%と急伸しており、新築戸建て人気は数字の上でも見て取ることができる」とある。

 長々と引用したが、ここで初めてミニ戸建ては敷地面積が「50~80㎡以下」ということが分かる。そして、その代表格としてオープンハウスとケイアイスター不動産を取り上げた。よく読むと、両社の決算数字など開示データをそのまま記しているに過ぎないのだが、それにしても何の根拠も示さずミニ戸建て=オープンハウス、ケイアイスター不動産と断定的に書くのは乱暴に過ぎる。

 そこで、小生はオープンハウスに確認した。同社広報によると、グループの分譲戸建てを展開するオープンハウス・ディベロップメントが展開する分譲戸建ての敷地面積が「60~80㎡以下」の供給比率は50%に達しており(2020年9月期の戸建て計上戸数は2,804戸)少なくはないが、ミニ戸建て=オープンハウスにはならない。また、記事にある同社の営業成績の数値は一桁少ない。売上1兆円を目指す企業だ。荒井正昭社長が知ったら激怒するのではないか。(笑い飛ばすか)

 そして同紙は「都心のマンション需要は高値の花になりつつあり、加えて部屋数の少なさがマンションの弱点として露呈した。持ち家事情の変化は、選ぶ側のニーズに対応して今後も(ミニ戸建て人気が)加速する気配が濃厚だ」などと遁辞でもって締めくくっている。

 はっきり言って記事のすべてが旧聞で、自らの足で書いた真新しい事実は皆無だ。結局、「60~80㎡以下」のミニ戸建ての市場は〝闇〟のままだ。ひょっとしたら、書いた記者の方は一度もミニ戸建ても建売住宅も見ていないのかもしれない。そうでなければ、記事に添えられている立派な分譲戸建ての街並み写真を使うはずがない。この写真は敷地規模が60~80㎡以下のミニ戸建てでないことは明らかだ。どうしてこのような写真を使ったのか。写真も記事のうちだ。刺身のツマのように扱うのはいかがか。

 ここまで結構辛辣なことを書いた。〝何もここまで〟と思う読者の方もいるかもしれないが、同紙は数少ない業界紙として影響力を持っているはずだし、持つべきだと思うからこそ、誤った記事に対してはきちんと記事で批判すべきというのが小生の立場だ。他意はない。小生の願いはいい記事を書いてほしい-この一点だ。

 この小生の批判記事を同紙も読んでくれるはずだ。今度は素晴らしいミニ戸建ての第2弾、第3弾の記事を発信してほしい。小生が知りたいのは、ミニ戸建てが中古市場でどのような評価を受けるのかということだ。ここに焦点を当てるのもいいのではないか。不動産流通会社やレインズは狭小住宅のデータはないのだろうか。スムストックはきちんとデータを収集しているではないか。

敷地60㎡未満の分譲「狭小住宅」 都心部は軒並み50%超 最少の練馬は1.9%(2019/8/19)

 


 

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「リーフィア世田谷喜多見」

 小田急不動産は1月20日、昨年10月31日から販売を開始していた分譲戸建て「リーフィア世田谷喜多見」(総戸数10戸)が11月22日に完売したと発表した。

 2020年7月に公式ホームページを公開してから、資料請求は441件、9月からの来場者は155組に達した。

 人気の要因として、同社は①新しい生活様式に対応したプランニング②街並み・外観のデザイン性③生活利便性と緑あふれる住環境など、コロナ禍で定着した「在宅勤務」やステイホームによる「おうち時間」に対応した商品展開がニーズとマッチしたとしている。

 物件は、小田急線喜多見駅から徒歩12分、世田谷区喜多見七丁目に位置する全10棟。敷地面積は106.66~116.34㎡、建物面積87.79~98.01㎡。構造・規模は木造2階建(2×4工法)。施工は細田工務店。

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モデルホーム

◇       ◆     ◇

 この物件は昨年11月上旬に見学している。その時も残り1戸だったので、早期に完売となるのは間違いないと読んでいた。

 ランドスケープデザインが抜群で、平均6,000万円台後半の価格もものすごく安いと思った。

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ダイニングスタディカウンター

残り1戸 すこぶる好調 小田急不動産の戸建て「世田谷喜多見」全10棟(2020/11/9)
 

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「マインドスクェア ヘリテージ光が丘 つむぎのまち」

 ポラスグループ中央住宅は12月3日、近代建築家・木下益治郎が手がけた昭和初期の農園別荘(旧邸宅)の意匠デザインなどを引き継ぎ、敷地内にあった樹齢約100年(記者の推定)のイロハモミジを住戸の商品企画に取り込んだ「マインドスクェア ヘリテージ光が丘 つむぎのまち」(全9戸)の販売が好調と発表。同日、報道陣に現場を公開した。

 物件は、都営大江戸線光が丘駅から徒歩19分、練馬区旭町1丁目に位置する全9戸。土地面積は100.00~128.32㎡、建物面積89.25~103.27㎡、価格5,990万~7,590万円、平均6,723万円。建物は木造2×6工法2階建て。建物は竣工済み。

 主な基本性能・設備仕様は、2×6工法、リビング天井高2.7m、スキップDEN(ワークスペース)、ウイルス除去効果がある「可視光線型光触媒」床、珪藻土塗壁、シダーパネル「木もれ美」壁、つむぎケーシング、スピーカー付きダウンライトなど。

 9月19日に広告を10月10日に販売をそれぞれ開始。これまで148件の反響を集め9戸のうち8戸を成約。購入者の平均年齢は41歳、世帯年収は1,000万円前後。

 旧邸宅は、三菱財閥創業者・岩崎弥太郎の姻族である各務鎌吉が昭和8年に建設した敷地面積約1,000㎡、延べ床面積423㎡。アメリカン・アール・デコ様式の設計を得意としていた近代建築家・木下益次郎が設計を担当した。

 同社は昨年末建物ごと用地を取得。屋敷に刻まれた歴史と記憶を後世につなげる商品企画にするため解体を3週間延期し様々な調査を行うとともに、旧所有者の親族縁者や郷土史家研究者などを招き、神職による棟下式(むねおろしき:建物への、感謝とお別れの儀式)を実施した。

 商品企画には、邸宅にあった樹齢約100年のイロハモミジをそのまま残し、旧邸宅の石畳などの古材も配置した小庭園「槭樹(もみじ)の間」「道しるべの小径」(60.17㎡)として整備。「槭樹(もみじ)の間」「道しるべの小径」に面する5戸の敷地の一部に地役権を設定し、共同で管理するように定めている。3年間はポラスが剪定費を負担する。

 さらに、旧邸宅の格式、佇まいを記憶として残すため、特徴的だったいぶし瓦の屋根をモダンな和瓦で表現し、縦格子、丸窓、造作門柱などを採用。天然銘木のフローリング床には、室内照明が当たるだけでカビやウイルス、VOCなどを水や炭酸ガスに分解・除去する「可視光線型光触媒」を、玄関ホールに抗アレルゲン壁紙「アレルブロック」を、玄関手すりには抗ウイルス機能ビオタスクをそれぞれ採用している。

 見学会に臨んだ同社マインドスクェア事業部取締役事業部長・金児正治氏は「一般的な分譲事業は回転率を高めスピードを重視するが、今回の既存建物は使われている材料、仕上げ、デザインなど普通ではなかったので、解体を3週間延ばし、歴史をたどりそれを残していく企画にした。同時に安心・安全を担保するためストレスフリーの床、壁材などを採用することでプラスアルファの価値を実現した。販売も好調なので、今後は当社の最上位モデルとしてこの〝ヘリテージ〟をマンション、複合開発に採用していく。用地取得でも優位に立てる」などと差別化に自信を見せた。

 販売担当の同部東京西営業所所長・金井秀徳氏は、「周辺相場の5,000万円の半ばから後半よりかなり高い価格設定でも他社にない2.7mのリビング天井高、2×6工法、設備仕様レベルが評価された。ムービーパンフを採用することで接客時間の短縮もできた」と話し、プロジェクトリーダーの山口太郎氏は、建物調査で見つかった「棟札」や手斧(ちょうな)仕上げの面材を示しながらコンセプトなどについて熱く語った。

 同社はまた、今期4~11月までの分譲戸建ての契約棟数は前年同期比126%と好調に推移していることを明らかにした。2019年に分譲した戸建ての残戸数は10戸程度とのことだ。

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本物のポプラに手斧仕上げを施したタブロー窓

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2階リビングの窓際には鏡面仕上げのフローリングとすることで、モミジが映り込むようにしている

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旧邸宅のスケッチ

◇       ◆     ◇

 コロナ禍での同社の分譲マンション・戸建てメディア向け見学会は今回で4回目だ。他のハウスメーカー・デベロッパーはほとんど行っていないので、同社が独走している。

 小生は、ハウスメーカー・デベロッパーは記者を育てる役割を担っており、記者は現場(商品)を観ないと成長できないと思っているので、同社の決断を支持する。

 今回も見どころの多い見学会だった。正味は1時間半だったが、記者は取材の帰り、光が丘公園を歩き、あれやこれや見て回ったので都合3時間くらい掛けた。

 光が丘の戸建てと言えば、金児氏がこの日「うちが(入札に)負けた土地」と明かしたコスモスイニシアが4年前に分譲し、人気になった光が丘公園に近接する「グランフォーラム光が丘公園」(16戸)を真っ先に思い出す。

 今回の物件は、光が丘公園に近接していたコスモスイニシアの物件と立地条件は若干異なるが、設備仕様レベルなどを考慮すれば価格は割安感があると思う。

 モミジの既存樹を商品企画に取り込んだのもヒットした要因の一つだろう。モミジは「あと100年は持つ」とのモミジ専門の川口市安行の植木屋さんのお墨付きを得ているという、樹高にして7~8メートルくらいの巨木だ。

 マンションや大規模戸建て開発では、既存樹をそのまま残し、あるいは移植しシンボルツリーとする事例が少なくないが、10戸くらいの規模で約60㎡の植樹帯を設け、企画に反映させたものは三井不動産レジデンシャルの〝ファインコート〟にいくつかあるくらいではないか。

 その三井不動産は〝経年優化〟を積水ハウスは〝経年美化〟をそれぞれ掲げている。山万は〝千年優都〟だ。そしてまたポラスの〝ヘリテージ(遺産)〟が誕生した。半端でない取り組みが消費者に響くのだろう。

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現地(手前に「道しるべ」の文字が彫られた石塔)

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「槭樹(もみじ)の間」

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光が丘公園

感動の金児氏vs宮崎氏トーク 全196戸のポラス「柏」3カ月で100戸成約(2020/10/10)

調整区域の市民農園付き200㎡邸宅 ポラス「ハナミズキ春日部・藤塚」企画秀逸(2020/7/3)

Afterコロナ先取り ポラス「東京5LDK@練馬光が丘」テレワーク想定した企画ヒット(2020/6/19)

公園に近接 電線地中化、2階リビング天井高3.8m コスモスイニシア「光が丘公園」(2016/11/7)

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「リーフィア世田谷喜多見」完成予想図

 すこぶる売れ行き好調のタカラレーベンのマンション「レーベン戸田公園GRANVARIO」58戸と、小田急不動産の戸建て「リーフィア世田谷喜多見」10戸を見学した。記事を書いているうちに完売するかもしれないので、先に「世田谷喜多見」から紹介する。

 物件は、小田急小田原線喜多見駅から徒歩12分・成城学園前駅から徒歩16分、世田谷区喜多見七丁目の第一種低層住居専用地域に位置する全10戸。価格は6,000万円台の後半が中心。現在販売中の住戸(1戸)の土地面積110.05㎡、建物面積91.49㎡、価格6,928万円。建物は竣工済み。施工は細田工務店(建物・外構)。

 法定建ぺい率は40%、容積率は80%地域だが、緑化率を高め良好な住宅地を形成していることから一部住戸を除き建ぺい率は45%、50%、容積率は100%に緩和されているのが特徴。幅員約5メートルの舗道はインターロッキング舗装。

 10月24日から分譲を開始し、現在、残りは前述した二方角地の1戸のみ。販売を担当する同社住宅事業本部住宅販売部・金子秀太朗氏は、「休日の来場者は3サイクル全て満席で15件くらい、平日も少なくありません」と話している。

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モデルホーム

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ダイニングスタディカウンター

◇       ◆     ◇

 記者は今年2月、人気になった同社の「リーフィア狛江 イデアカーサ」21戸も見学しているのだが、今回も現地をみて〝すぐ売れる〟と読んだ。価格も予想通りだった。高値追及をしないという読みは的中した。

 同社の戸建てを取材すると、同社が同社の経営理念に掲げる「お客様にご満足いただくこと(顧客満足)を第一義に、安心、安全、快適な生活・環境の創造とその価値の向上に全力を尽くし、お客様からの信頼を日々積み重ねていくことを使命とする」を愚直に実践していることが伝わってくる。

 今回の物件でも、もう少し価格をあげてもいいのではないかと思ったが、「浮利を追わず」なのだろう。流れに乗じて吹っ掛けることもせず、市況が弱含みだからと言って浮き足立つこともしない。いい会社だ。

 残り1戸。高いか安いか、マンションか戸建てか-これは消費者が判断することだが、喜多見駅圏で近く分譲されるマンションは坪300万円をはるかに突破する。

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街並み

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分譲中の住戸

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外構

小田急不 分譲戸建て商品PJ第4弾 在宅勤務に対応した「ウチBiz(ビズ)」販売(2020/10/28)

建ぺい40%、容積80%の邸宅跡地に21区画 売れ行き好調の小田急不「狛江」(2020/2/11)

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