マンションは資産になるか 進む分断社会 都心部は坪1000万円以上が相場に
今年9月、分譲マンションとシニア住宅の複合開発「世田谷中町プロジェクト」の完成を祝う「世田谷中町まつり」で、奥さんと小さな子ども2人の4人家族の入居者(35)は「定期借地権付きなので娘に資産を残せないのが気掛かり。終の棲家にするかどうかは…」と語った。
この言葉にショックを受けた。このマンションの定借期間は70年。定借マンションは更地にして返却しなければならないので、その時点での不動産の価値はゼロになる。親の気持ちは痛いほどよくわかる。
深刻なのは、このように将来の不動産価値がゼロになると示されている定借だけでなく、これからは一部のエリアを除き第一次取得層向けの郊外マンションは〝二束三文〟の価値しか残らないと考えられることだ。すでに郊外部の築年数が古いマンションは坪20~30万円が相場となっている。昭和50~60年代に建設されたマンションは、取得価格の2割、3割に過ぎないのではないか。
株の世界では〝半値八掛け二割引〟という格言がある。仮に取得価格を1,000円とすると半値で500円、これが80%になるから400円、さらに2割引きで320円まで下落するというものだ。マンションも同様で、バブル期の物件はほぼこの水準以下だろう。
人口減少・世帯減少がこれから加速度的に進行する。マンションの需要層も様変わりした。単身者、DINKS、高齢者が相当数のシェアを占めるようになっている。富裕層による投資需要も活発だ。
ファミリー層向けも共働き世帯が専業主婦世帯を逆転して20年が経過する。〝職住近接〟が絶対条件になった。働き方改革を進めない限り、郊外型ファミリーマンションは大きなハンディを抱える。価格の問題ではない。
分譲と同じレベルの賃貸が圧倒的に少ないことが分譲マンション市場を成り立たせているのだが、これも未来永劫続くのか不明だ。富裕層はともかく、一般のサラリーマン層にとって土地・住宅が資産にならないという論調は認めざるを得ない。朝日新聞が「負動産」特集を行っているが、もう笑うしかない。
◇ ◆ ◇
普通のサラリーマン層にとって不動産は資産にならないのではと書いたが、その逆に〝富める者〟とっては千載一遇、超然絶後のチャンスが到来し、われわれが経験したことがない「格差社会」「分断社会」が進行・実現するような気がしてならない。
人口・世帯減少、空き家、相続放棄の激増などはあまねく全国均等に進行するわけではないからだ。一極集中は加速し、東京都千代田、港、中央などの都心部では2050~2060年までは人口が増加すると予測されている。
例えば港区。港区では昭和36年(1961年)の256,088人をピークに一貫して減少し続け、バブル崩壊後の平成8年(1996年)には149,716人へと40%以上も減少した。コミュニティの崩壊を恐れた同区などは、一定規模以上の建築物に対して住宅を付置する条例を設けたほどだ。
その効果というより、都心回帰のマンションブームの効果のほうが大きいとみているのだが、その後は徐々に人口が増え始め、現在は249,242人までに回復した。富裕層も増える一方だ。平成72年(2060年)には過去最多の260,805人になると推計している。
千代田区も同様だ。同区の総人口は平成7 年の34,780人まで減少したが、その後増勢に転じ、平成29年は60,940人(9月1日現在)と実に36年ぶりに6万人の壁を突破した。同区の描く出生率高位シナリオによれば、平成72年(2060年)には98,810人に達すると見込んでいる。現在の約62%増だ。
現在人口73,800人の中央区も平成36年内(2024年)に20万人を突破すると予測している。
需要と供給の市場原理が貫徹されると考えれば、これらのエリアのマンション価格はまず下がらない。港区や千代田区などは軒並み1,000万円を突破し、いわゆるビンテージマンションは坪2,000万円、3,000万円となっても不思議ではない。都心に隣接する江東区湾岸や周辺各区もつられて高くなるのは必至だ。
その一方で、地方の人口が半減し、限界集落が激増したらどうなるか。都心に一部の超富裕層が住むようになったら、郊外にはどのような階層の人が住むのか。
「デフレ脱却絶望的。郊外マンション価格は下がらない」トータルブレイン・久光社長(2017/5/30)
第一次取得層向けの郊外マンションは復活するのか(2016/8/30)
唯一無二「公園・眺望価値」はいくら 三菱地所レジ「新宿御苑」は坪500万円以上?
「ザ・パークハウス 新宿御苑」
三菱地所レジデンスは10月16日、最高価格2億6,900万円を含む全47戸をわずか3カ月間で完売した「ザ・パークハウス 新宿御苑」が竣工したのに伴う見学会を行った。当日はあいにくの雨天で御苑は霧にかすんでいたが、メディア関係者は歓声やらため息やらを漏らした。
物件は、東京メトロ丸の内線新宿御苑前駅から徒歩1分、東京都新宿区新宿2丁目に位置する14階建て全52戸。専有面積は55.46~100.63㎡、第1期の価格は6,400万~26,900万円。坪単価は570万円。施工は日本国土開発。設計は日建ハウジングシステム。
昨年5月7日に第1期47戸を抽選分乗し、最高8倍、平均2.1倍で即日完売していた。駅から徒歩1分で、敷地南側が道路を隔てて新宿御苑に面しているのが高い評価を得た。
この希少立地を生かすため、見学会で設計監理を担当した日建ハウジングシステム設計監理部・横手和宏氏は「(御苑を)取り込み、感じる、溶け込むをコンセプトにした」と語った。
基壇部
◇ ◆ ◇
ここ1~2年、大きな公園に隣接・近接するマンションを結構見学してきた。野村不動産「プラウドタワー木場公園」、三井不動産「パークコート浜離宮ザ・タワー」、東京建物「BrilliaTower上野池之端」、東京建物「Brillia Tower代々木公園」、三菱地所レジデンス「ザ・ パークハウス 国分寺四季の森」、住友不動産「シティテラス小金井公園」、住友不動産「ガーデンヒルズ四ツ谷 迎賓の森」、伊藤忠都市開発「クレヴィア日本橋浜町」、東京建物「Brillia大山Park Front」、住友不動産「シティタワーズ東京ベイ」などだ。
「公園眺望」の価値を考えてみた。今回の「新宿御苑」は、南側眼下に公園が見渡せる14階住戸は100㎡で価格は2億6,900万円。坪単価は891万円だ。一方、ビルの壁面しか見えないであろう北側住戸の最低価格は55㎡で6,400万円。坪単価は380万円だ。その差は約510万円。平均坪単価よりも300万円以上高い。
この唯一無二ともいうべき「公園・眺望価値」は絶対的なものなのか相対的なものか、記者もわからない。最近見た例では東建「Brillia大山Park Front」、大和地所レジデンス「ヴェレーナグラン大宮大門町 瑞景」だ。最高価格住戸はいったいいくらの値をつけるか。三井不動産レジデンシャル「ザ・タワー横浜北仲」の最高価格は坪単価1,200万円らしい。
エントランスホール
「音がしない」「静か」 三菱地所レジ エリア最高値「二子玉川碧の杜」に高い評価
「ザ・パークハウス 二子玉川碧の杜」完成予想図
三菱地所レジデンスが11月に分譲する予定の「ザ・パークハウス二子玉川 碧の杜」を見学した。全戸にマンション用全館空調システム「マンションエアロテック」を搭載した第一種低層住居専用地域に建つ全20戸で、坪単価はエリア最高値の500万円超を予定している。専有面積が最低でも85㎡あるのですべて億ションとなるが、戸建て検討者や三菱地所ホームの「エアロテック」を知っている富裕層からは〝音がしないね〟などと高い評価を得ているという。
「マンションエアロテック」は、24時間・365日、住戸内のすみずみまで換気冷暖房して快適な温度に保てる空調システム。三菱地所ホームが20年以上前に開発した戸建て用をマンション用に改良させたもの。これまで都心の高額マンションなど7物件に採用しており、今回が8棟目。
このほか、節湯型シャワー水栓・保温浴槽・節水型便器など高効率機器を採用することなどよって「低炭素建築物」認定を取得しているほか、人の健康を見守る緊急通報サービス「マイドクター」を全戸標準装備している。
販売担当者は「エアロテックのよさは短時間では実感していただけないが、グループの三菱地所ホームの戸建てを検討された方が結構多く、『音がしないね』『壁にエアコンなどの出っ張りがないね』と感心される方も多い。専有面積が広く、価格も飛びぬけているだけに即売れるというわけではないが、周辺物件は面積が狭いものが多い。広さを求めている富裕層にアピールできるはず」と語っている。
エントランスラウンジ(完成予想図)
◇ ◆ ◇
「エアロテック」の良さについてはこれまでかなり記事を書いてきた。それらを参照していただきたい。取材の目的は、お客さんの反応を聞くことと、モデルルームの出来、外観、植栽などをチェックすることだった。
お客さんの反応は予想通り。「音がしないね」「静かだね」と来場者は声を上げるという。同社もその効果をわかってもらうため音楽を流さないのだという。記者などはエアコンだろうが換気扇、テレビ、時にはかみさんのおしゃべりなど〝雑音〟には鈍感だが、一般の人はかなり不快感、ストレスを感じているのだろう。
その良さについては、そもそもどこのマンションでもモデルルームはエアコンをフルに動かしているので、なかなか実感できないのではないか。
外観、植栽は億ションにふさわしいもので、設備仕様レベルも高い。坪単価は高いような気がしたが、駒沢大学や武蔵小山などでも坪400万円の半ばから500万円近くする。特殊なエリア「二子玉川」ならこれもありかなと思う。
現地
ハナミズキ通り
三菱地所を、見に行こう。地所ホームで家を建てよう〟赤坂に素晴らしい施設(2017/7/13)
大和地所レジ 人気になった「大宮大門町」に隣接 坪300万円はないと見たが…
「ヴェレーナグラン大宮大門町 瑞景」完成予想図
大和地所レジデンスが近く分譲する「ヴェレーナグラン大宮大門町 瑞景」を見学した。大宮駅東口から徒歩5分の商業地域立地で、南西角地に建設中の全45戸。坪単価は未定だが、強気の設定でも売れると読んだ。
物件は、JR大宮駅東口から徒歩5分、さいたま市大宮区大門町三丁目に位置する13階建て全45戸(会員分譲住戸9戸含む)。専有面積は60.60~83.82㎡、価格は未定だが、平均坪単価は300万円を突破することはない模様。竣工は平成31年1月。設計・監理はオンズデコ。施工は大木建設。
現地は、商業エリアの一角で、南西角地。オフィス・商業・公共施設が入居する再開発事業に近接。
建物は南西向きで1フロア4戸。商品企画は、二重床・二重天井、廊下幅はメーターモジュール、キッチン、洗面などは天然御影石トップ、食洗機、ミストサウナ、天井高は2500~2600ミリ。南西角住戸の7階以上はコーナーサッシを採用。
同社は「氷川参道にも近く、北陸新幹線の延伸でさらに注目されている大宮駅」をアピールしている。
◇ ◆ ◇
どこかで見たような気がしたら、3年前、同社がまだ日本綜合地所の社名のとき取材した「ヴェレーナ大宮大門町」の隣接地だった。
「ヴェレーナ大宮大門町」の坪単価は220万円くらいだった。当時よりマンション適地と建築費は上昇しているので、坪単価は最低で270万円、最高で290万円と読んだ。
坪300万円も考えないではなかったが、もう一つ強気になれないのはやはり住環境だ。現地の用途地域は商業。いかがわしい店舗などはなさそうだが、飲食・サービス業が蝟集している。これはマイナス材料だ。
ただ、同じような浦和駅の商業エリアで駅近の三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス浦和タワー」は330万円台で早期完売し、地所レジはまた昨年、大宮駅西口から5分の「ザ・パークハウス大宮」第1期72戸を坪単価293万円で即日完売している。
これらを勘案すると、今回の同社の物件は上層階の住戸は坪300万円を突破しても不思議ではない。最上階の83㎡のタイプは四方八方が開けており、8か所に窓・採光部があり、ルーフバルコニーは18坪以上ある。1億円はしないと思うが、申し込みが殺到してもおかしくない。値付けに同社も悩んでいるはずだ。
商品企画はいつもの同社の物件とほぼ同じ。2スパンある中住戸のうちの60㎡台の間口は6mだが、もう一つの68㎡台は6.7m。廊下もメーターモジュールを採用しているのがいい。モデルルームは派手だが、これはこれでいい。非日常を演出するのもありだと思う。
隣接する「ヴェレーナ大宮大門町」の1階にはスーパー「マルエツ」が入居しているが、この店は1965年(昭和40年)4月開業のマルエツ創業2号店で、レジ付きのセルフサービス食品スーパー1号店だそうだ。
三菱地所レジ・小田急不「二子玉川」 全館空調「エアロテック」 マンションに初装備
「ザ・パークハウス 二子玉川碧の杜」完成予想図
三菱地所レジデンスと小田急不動産は10月4日、マンション用全館空調システム「マンションエアロテック」を全戸標準装備した世田谷区の「ザ・パークハウス 二子玉川碧の杜」のモデルルームを10月7日にオープンすると発表した。
「マンションエアロテック」は、24時間365日、住戸内のすみずみまで換気冷暖房して、快適な温度に保てる空調システム。1995年、三菱地所ホームが三菱電機と共同開発して第1号棟を完成させている。マンション用の開発を三菱地所レジデンスと進めていた。
東急田園都市線・大井町線二子玉川駅から徒歩10分、世田谷区玉川四丁目に位置する3階建て20戸。専有面積は85.68~106.85㎡。価格は未定。施工は大豊建設。2017年7月に竣工済み。「低炭素建築物」の認定を取得している。
穴吹工務店 日本初のマンション入館&宅配ボックス顔認証システム導入
大京グループの穴吹工務店は10月3日、フルタイムシステムと共同で日本初のマンション共用部分のオートロックと宅配ボックスに顔認証技術を組み合わせた「サーパスエスコートサービス+“F-ace”(フェイス)」を開発、富山市と広島県呉市のマンションに先行導入し、順次導入していくと発表した。
従来の「サーパスエスコートサービス」は非接触IC カードの認証機能を利用したセキュリティシステムで、対応キーでマンション共用部分のオートロックを解除し、宅配ボックスの荷物取り出しができるものだったが、「認証キーをかざすのが面倒」「忘れて外出した場合に入れなくなる」などの意見があったことから、今回の「鍵を落とす・忘れる」「なりすまし」の心配のない入館システムを開発したもの。より強固なセキュリティを採用することで便利で快適な暮らしを提供するとしている。
鍵やカードを使うことなくエントランスホールのセキュリティエリアに入館でき、宅配ボックスが利用できるほか、子どもの帰宅を保護者にメールで自動的に知らせることも可能になる。従来のキーヘッドやカードも利用可能。
顔認証セキュリティシステムを採用したマンションは、2012年分譲の山万「ユーカリが丘 スカイプラザ・ミライアタワー」が首都圏初とされており、賃貸ではレオパレス21が今年7月、麻布のマンションに導入すると発表している。
長谷工コーポ 「長谷工版BIM」をバージョンアップ 販売ツールへも導入強化
「長谷工オリジナルBIMビューワー」による3次元CG画像
長谷工コーポレーションは10月4日、「長谷工版BIM」のデータから直接3次元CG化する「長谷工オリジナルBIMビューワー」をパナソニックのエコソリューションズ社の協力を得て開発、VRを利用してマンションの販売ツールとしても積極的に活用していくと発表した。
同社は 〝マンション特化〟と〝設計・施工比率の高さ〟という特徴を生かし「長谷工版BIM」の水平展開と関連技術の開発を進めており、今回の開発によってBIMで設計したマンションの住戸全タイプを〝迅速かつ安価、そして綺麗に〟3次元CG化することが可能になった。3次元CG化されたデータは、VR(ヴァーチャルリアリティ)体験機器を利用してマンションの販売ツールやホームページ等BtoC領域での援用が期待できるとしている。
その第1号として総合地所「ルネ八王子トレーシア」へ採用する。今後は、同社が設計・施工する物件の事業主に対し、グループ会社の長谷工システムズを通じて積極的に導入提案をしていく。
同社設計部門エンジニアリング事業部統括室長・堀井規男氏は「BIMを2014年に開発して以来67件のプロジェクトで採用してきた。バージョンアップも図ってきた。現在は全体の2割強の採用率だが、3年後には100%にする計画だ。設計・施工のリソースを使って販売や管理、大規模修繕にもつなげていきたい」と話した。
「BIM」(Building Information Modeling)は、コンピューター上にパーツを組み上げて作成した3次元の建物のデジタルモデルに、仕上げや管理情報などの属性データを追加した建築物のデータベースのことで、同社は2020年3月期中にBIMによる実施設計100%の体制とし、2021年3月期からは板状型の全物件がBIM化される予定。同社の設計・施工比率は2017年3月期末で95.0%に達している。
◇ ◆ ◇
これはこれで結構なことだが、記者は各階層からの眺望画像を見えるようにすることも実現してほしいと思う。現在、そのような対応を行っているのはごく限られた物件で、一定の階層からの眺望しか体験できないのがほとんどだ。
ユーザー側にしてみれば、自分が購入しようと考える住戸の設備仕様・仕上げなどはモデルルームで確認することができ、VR機器を使った疑似体験も当たり前のようになってきた。
しかし、青田売りがほとんどのマンションで、自分が購入したい住居からの眺望を体験するすべはない。その一方で、デベロッパーは1層ごとに価格を上下させ、物件にもよるが、最下層と最上階とでは数百万円、中には1層あたり100万円以上の差をつける物件もある。
それだけ眺望に「価値」をつけているからだ。ならば、誰がそのコストを負担するかという問題もあるが、ユーザーにきちんと眺望を体験させることくらいやっていいはずだ。
長谷工システムズ取締役常務執行役員・篠﨑松雄氏は「技術的には問題なくできる。中住戸と両端の住戸くらいは用意することはコスト的にも障壁とならない。うちがそれを最初にやりたい」と語った。長谷工に期待したい。日影図も含めて〝見える化〟に力を入れてほしい。
VR体験機器を用いた実演(新橋駅前ビル1号館で)
大激戦区 鹿島の免震構造の相鉄不他「グレーシアタワーズ海老名」 坪単価は240万円
「グレーシアタワーズ海老名」
相鉄不動産(事業比率50%)・伊藤忠都市開発(同30%)・鹿島建設(同20%)3社JVマンション「グレーシアタワーズ海老名」を見学した。「ららぽーと海老名」に隣接する鹿島施工の免震25階建てツインタワー477戸。エリア全体で約2,000戸が供給される注目物件の一つだ。
物件は、相鉄本線・小田急小田原線海老名駅から徒歩5分、海老名市扇町に位置する25階建てツインタワー全477戸(イースト棟239戸、ウエスト棟238戸)。専有面積は56.95~107.29㎡、価格は未定だが、坪単価は240万円くらいになる模様。竣工予定はイースト棟が平成31年5月下旬、ウエスト棟が32年1月下旬。販売代理は野村不動産アーバンネット、伊藤忠ハウジング、相鉄不動産販売。設計・施工は鹿島建設。販売開始は10月下旬。
現地は「ららぽーと海老名」に隣接。このエリアでは、このマンションのほか、小田急不動産がメインのタワーマンション3棟約900戸を駅前で予定しており、サンケイビル他「海老名 ザ・レジデンス」(412戸)、三井不動産レジデンシャル「パークホームズ海老名フォレストプレミア」(84戸)などトータルで約2,000戸が分譲される激戦区。
建物は鹿島の免震構造と柱・梁型の突出が少ないダブルチューブ構法が最大の特徴。天井高2600ミリ、サッシ高2170ミリ、シーザーストーンのキッチンカウンター、良水工房、ミストサウナ、食洗機などが標準装備。最上階はプレミアム仕様で、天井高は2750ミリ、オーダーメイド。
8月に行われたプロジェクト発表会には約300組が参加しており、ユーザーの関心は高い。
スカイラウンジ
◇ ◆ ◇
坪単価は想定通りだった。今年6月、「海老名 ザ・レジデンス」の記事を書いたとき、相鉄のマンションは坪230~250万円くらいと予想した。ちょうどその中間に落ち着きそうだ。ということは、10月末にモデルルームがオープンする予定の小田急不動産のマンションは駅に近接している分価格は高くなり、坪単価は250万円くらいになるはずだ。
駅からややあるサンケイビルや三井不動産レジデンシャルの物件は単価も異なるので競合はしないが、ユーザーにとって小田急か相鉄かの選択は悩ましい。双方を見比べて決断することになるはずだ。
小田急のモデルルームがオープンしたら見学して、改めてこの海老名のマンションについて触れたい。
イーストラウンジ
東京建物「Bloomoi(ブルーモワ)」が企画 機能的で美しい 公園隣接の「大山」
「Brillia大山Park Front」完成予想図
東京建物が10月下旬に分譲開始する「Brillia大山Park Front」を見学した。同社女性社員を中心とする働く女性が提案する住まいの共創プロジェクト「Bloomoi(ブルーモワ)」の企画商品が随所に採用されている、出色の出来のマンションだ。
物件は、東武東上線大山駅から徒歩7分、板橋区大山西町に位置する7階建て135戸。専有面積は56.91~83.16㎡、予定価格は4,400万円台~8,000万円台(最多価格帯5,900万円台)、坪単価は270万円台。竣工予定は平成30年10月下旬。設計・施工・監理は長谷工コーポレーション。分譲開始は10月下旬。
「Bloomoi(ブルーモワ)」は、平成24年10月に発足した、同社女性社員を中心とする組織で、翌年にはメンバーが考案した商品企画を盛り込んだ第一弾マンション「Brillia大山 The Residence」「Brillia下丸子」が、一昨年には第二弾「Brillia日本橋三越前」が分譲されている。
今回の「大山」は、昨年2月、「理想のリビング空間」として公開したものを採用しているのが特徴。
1階には小規模認可保育園が設置され、隣接する公園と調和するようファサードデザインに木調横ルーバーを採用している。
物件ゲストサロンのチーフアドバイザー・島田康光氏は「構造やらを廃したBloomoi(ブルーモワ)に特化した事務所の設えやモデルルームの評価が高い」と話している。
モデルルーム リビング
◇ ◆ ◇
いま、「マンションは『駅7分以内』しか買うな!」という、デベロッパーが卒倒しそうなおどろおどろしい帯がついた本が店頭に並んでいる。記者はこの種の本を読まないので中身はわからないが、いかにもじり貧の出版業界がやりそうな一発逆転の、あるいは当たりそこないのポテンヒットを狙ったハウツー本であるのは間違いない。
その伝でいえば、この「大山」は駅から徒歩7分、坂もないからぴったり。関係者は胸をなでおろしているかもしれないが、そんな些末(これは言い過ぎか)なことよりはるかにアピールできる魅力をこの物件は持っている。
それは、敷地南西側は区立板橋公園に隣接しているということだ。もともと敷地は区立小学校が建っていたところで、隣接地は交通公園と一体として整備される。
もう一つの特徴は、「Bloomoi(ブルーモワ)」の商品企画を世に問う第一号案件ということだ。詳細は添付した記事を読んでいただきたいが、昨年2月、「理想のリビング空間」としてメディアに公開された「アイランドキッチン」「ブルーモワライブラリー」「ブルーモワポケット」「壁面収納」などが商品企画に盛り込まれている。
モデルルームは76㎡の東南角の住戸だから表現できた部分もあるが、とにかく機能的でかつ美しい。一つひとつ紹介しないが、玄関の見せ方が巧みで、5畳大の子ども部屋もうまく処理している。特に記者がほれ込んだのは細い木調枠を施したキッチン収納だ。この木調枠と白の面材は絵画のようだ。住戸内の床はシート張りフローリングだが、突板仕上げのように映る。
辛子色や淡いブルーのクッションを配したキャンパス地のようなL字型ソファーセットは、〝こんな提案がしたかったのよ〟と言いたそうな、「Bloomoi(ブルーモワ)」のメンバーの誇らしげな顔が目に浮かぶ。
この〝最強〟の女性目線のマンションの販売を担当するのが、RBA野球にも参加している加覧憲一氏をリーダとするチームだ。加覧氏はかつて国学院久我山の選手として、今でいえば清宮くんみたいに騒がれた人だが、本人とチームメンバーの加齢により弱体化する一方で、今では〝最弱〟チームに成り下がっている。
この最強と最弱の取り合わせが面白い。販売事務所は商品企画意図を最大限表現できていると記者はみた。販売動向に注目だ。加覧氏の名誉のために言い添えるが、加覧氏は同社のヒット作をたくさん担当している。
「Bloomoi(ブルーモワ)」収納
◇ ◆ ◇
公園に隣接・近接するマンションをここ1~2年たくさん取材してきた。同社のマンションでいえば、加覧氏がリーダーを務めた「Brillia上野池之端」がそうだ。
今回の「大山」は、都の民設公園制度を活用した第一号「Brillia萩山四季の森公園」を彷彿とさせるような物件だ。詳細は省くが、この民設公園制度はその後一件も供給されていない。残念だ。
美しく機能的な「Brillia大山Park Front」を演出する東建・加覧-磯田コンビ(2017/9/19)
東京建物 「Bloomoi(ブルーモワ)」が「理想のリビング空間」公開(2016/2/18)
「緑環境と広い空が最高」入居者 東急不 「世田谷中町プロジェクト」 完成祝うまつり
「世田谷中町プロジェクト」
東急不動産は9月18日、分譲マンションとシニア住宅の都内屈指の大規模複合開発「世田谷中町プロジェクト」のマンション「ブランズシティ世田谷中町」第2工区が竣工し、全ての街区が完成したのに伴う「世田谷中町まつり」を開催した。
様々な縁日のほか洗足音楽大学学生による金管5重奏コンサートや地元学童クラブのソーラン節、東急ハンズの手作りワークショップ、ヨガ教室、マンション見学ツアーなど多彩な催しに、マンションやシニア・ケア住宅の入居者を始め近隣住民など数百人が参加し賑わった。
まつりに参加した70代の奥さんとマンションに住む80代の男性は、「6年前にグッドデザイン賞を受賞したM社の等々力のマンションを買った。中庭もあって住居そのものは天井高が高く快適だったのだが、集会室など共用部分が狭かった。ここ(世田谷中町)は車で通って、これはいいと一発で購入を決めた。私は緑の環境、家内は空の広さに満足している。駅から遠い? 車もバスもある。毎日が日曜だから不便さは全く感じない。終の棲家にしたい。娘夫婦は桜新町の中古だが120㎡のマンションを買った」と、環境のよさにほれ込んでいた。
また、主催者がセットしたマンション入居者インタビューでは、85歳の男性Kさんは、「購入を決断した理由は2つ」とし、「一つは、これまで住んでいたたまプラーザの家は坂が多く、家内(82歳)の通院、リハビリにも何かと不便だった。ここは、姪から『いい物件がある』と紹介された。ケアに移り住めるシステムが気に入って購入した。もう一つは、私は世田谷生まれの世田谷暮らし。岡本の社宅に住んだこともある。皆さんは知らないだろうが、世田谷区の鳥はオナガで、昔はたくさんいたんだよ」と、地縁があるのも大きな購入動機と話した。
もう一人、奥さんと2歳の娘さんの3人家族のSさん(35)は、「結婚して子どもが生まれ、賃貸より分譲がいいと判断し、また、私は高津駅に勤務しているので通勤、通学の便、沿線イメージを考慮して田園都市線を選択した。道路沿いは嫌だったので、緑が豊富なここが気に入った。バス便はハンディにならなかった。一つ気掛かりなのは、定期借地権付きなので娘に資産を残せないこと。終の棲家にするかどうかは…」と語った。
「ここにはオナガがたくさんいたんだよ」Kさん 「娘に資産を残したいが…」Sさん
◇ ◆ ◇
「世田谷中町プロジェクト」は、第一種低層住居専用地域に位置する約1万坪のNTT社宅跡地で開発が進められているもので、分譲マンション「ブランズシティ世田谷中町」252戸(うち第一工区131戸は分譲中)と、シニア住宅「グランクレール世田谷中町」251戸(シニアレジデンス176戸、ケアレジデンス75戸)、地域住民も利用できる「コミュニティプラザ」、認可保育園などからなる複合開発。第一種低層住居専用地域の複合開発としては都内屈指。
東京都の「一般住宅を併設したサービス付き高齢者向け住宅整備事業」第一号選定プロジェクトでもあり、地域包括ケアの拠点として子育て期から高齢期までの多世代が気持ちよく暮らすことができる「世代循環型」の街づくりを目指す。
シニアレジデンスからケアレジデンスへの住み替えが可能。マンションからケアレジデンスへの住み替えに際してはマンションの買い取り保証サービスも実施する。
様々な社会課題に対する取り組みを行うのも大きな特徴の一つで、シニア向けワンストップ型生活サービス「ホームクレール」では、介護予防プログラムや入居者自身が講師として活躍できるカルチャースクールなどのメニューを提供する。また、英国スターリング大学、順天堂大学、東京都市大学などの「学」との連携も行う。
分譲マンションの第1工区131戸は90戸が分譲済み。第2工区はこれから分譲される。シニアレジデンスは176戸のうち100戸超が契約済み。
洗足音楽大学学生による金管5重奏コンサート(左)と地元学童クラブのソーラン節
◇ ◆ ◇
以前にも書いたが、この分譲マンションの購入者の約4割が高齢者だ。果たして、ケアレジデンスへ移り住むことができるというだけの理由なのか、ほかにも高齢者を引き付ける何かがあるのか興味深い。
また、Sさんの「定借は子どもに資産として残せない」という言葉にドキリとさせられた。定借も含めてマンションは資産になるのかどうかも考える必要がありそうだ。
この問題については稿を改める。
直線距離100m、臨棟間隔25mの舗道空間
東急不「世田谷中町」シニア向け 契約は過去最高ペース 分譲の4割が60歳以上(2017/6/29)
東急不動産 「世代循環型」の街づくり「世田谷中町プロジ ェクト」一部完成(2017/4/28)
東急不動産の記念碑的マンション 定借「ブランズシティ世田谷中町」は坪308万円(2016/9/3)