欠けるのは「愛」 記者生活40年 業界紙に期待するもの 新聞記事は鮮度だ③
新聞記事は鮮度だ 空気や風を伝えよ
住宅新報も週刊住宅も1面は行政ニュースが多い。最近では宅建業法改正、空き家、民泊、所有者不明土地、安心R住宅、インスペクションなどが入れ代わり立ち代わり登場する。たまに評論家などのコメントを盛り込んでマンションやホテル、サ高住、ITなどについての総花的な縮刷版のような記事でお茶を濁す。
これはいかがなものか。行政の動きは無視できないが、新聞記事は鮮度だ。日々生起する出来事を活写し、空気や風を伝えるのが使命だ。欺瞞と打算に満ちた羽織袴と、腹黒の魂胆が透けて見える純白のウェディングドレスの結婚式のような記事に読者は辟易しているはずだ。
そして何より問題なのは、住宅新報も週刊住宅も週刊紙でありながら一般紙と同じブランケット版の形態を墨守し、都はるみさんの「三日遅れの便り」どころか一週間遅れの〝旧聞〟ニュースをそのまま発信し、かつまた、読者の関心が高いはずの出来事を小さく扱ったりすることだ。これが解せない。
例えば、3月22日に行われた「東京ミッドタウン日比谷」の記者内覧会。この商業施設は多くのテレビカメラも入ったように注目を浴びたが、3月27日号の住宅新報はわずか1段見出し扱いだった。前回書いた「今宵も一献」とスペース的には同じだった。
新聞は、見出しや写真の大きさによって社としての記事の軽重を示すから読まれる。Webと唯一といっていいくらい差別化できている優位性だ。それをかなぐり捨てて、どうでもいいような記事(失礼)と、初日の入場者が10万人を超える施設を同列に扱うのが信じられない。しかも、この記事は主語、述語、掛かり受けがよくわからない。
同紙はまた、3月20日号で、積水ハウスの土地取引詐欺事件に対応するガバナンス強化と木造強化の「ニュース」を報じた。他紙が10日前に報じた記事とほとんど同じだった。積水が記者会見を行ったのは3月8日(金)で、掲載しようと考えれば前号の3月13日号に間に合ったはずだ。
どうでもいいことだが、某社の野球部のかつての主砲は、前夜の食べ残しのカレーやスパゲッティをそのまま翌日の弁当に詰め込まれても文句ひとつ言わなかったが、記者のかみさんは前夜の刺身を翌日も出すようなことは絶対しない。逆に〝大丈夫だから〟といっても食べさせてくれない。
まだある。同紙は先日3月27日に行われた住友不動産の「シティタワー国分寺ザ・ツイン」の記者内覧会に欠席した。前号では同社の「八潮」を3段見出しの4面トップ記事にしていたのに…。当然のことながら、4月3日号には「国分寺」は1行も書かれていない。会社や記者の都合で取材を取捨選択すべきではない。重視すべきは読者の立場だし、企業存続の基盤であるスポンサーの意向を忖度しなければ、あとはもう飢え死にするしかない。
もう一つ、マンションや戸建ての見学会記事について。
〝講釈師見てきたように嘘を言う〟という諺がある。見もしないのに見たように講釈を垂れるという意味だ。それだけ〝事実〟が大事であるということでもあるが、業界紙は〝見たまま〟を伝えない。配布された資料をそのまま引き写したような内容のものも少なくない。
見る目がなく、何を見ていいかわからないと言ってしまえばそれまでだが、そんな記事を書いていたらいつまでたっても一本立ちできない。マンションなどの商品について基本的な知識が欠如していると断言できる。
当たり障りのない記事は、「客観報道」を心掛けているからと反論されるかもしれないが、そもそも「客観報道」などない。その会社の編集方針や記者のものの見方・考え方が記事に反映されるからだ。単に「事実」「真実」だけを伝えるなら新聞は1紙で十分だ。
しかし、この「事実」「真実」も曲者だ。あの松本サリン事件で、被害者であるにも関わらず警察とメディアに容疑者にされた河野義行氏の例が端的に示している。朝日と読売・産経が対極にあるのもある意味で読者が期待する〝偏向報道〟に応えているともとれる。
記者の私見だが、〝偏向報道〟は歓迎されるべきことだと思う。読者はそれが嫌なら読まなければいい。選択肢がたくさんあったほうがいいと思うから、記者は「業界紙頑張れ」とエールを送っている。独自性を発揮しろと。
欠けるのは「愛」 記者生活40年 業界紙に期待するもの ビーンボール②(2018/4/3)
欠けるのは「愛」 記者生活40年 業界紙に期待するもの ニュースを追うな①(2018/4/2)
東武スカイツリー大袋駅圏で10年振り 坪単価は157万円 リスト「越谷大袋」
「リストレジデンス越谷大袋」
リストデベロップメントが分譲中の「リストレジデンス越谷大袋」を見学した。東武スカイツリーライン大袋駅から徒歩2分の全121戸。同駅圏では10年ぶりのマンション供給で、約10カ月で3分の1強が成約済みだ。
物件は、東武スカイツリーライン大袋駅から徒歩2分、越谷市大字袋山に位置する14階建て全212戸。専有面積は65.04~70.02㎡、第2期(戸数未定)の予定価格は2,300万円台~3,600万円台(最多価格帯3,300万円台)。坪単価は157万円。竣工予定は2018年11月上旬。設計・監理・施工は川口土木建築工業。販売代理は長谷工アーベスト。
現地は、駅東口の商業地域。住戸プランは西向きで、専有面積は65㎡:70㎡が2:7の割合。
基本性能・設備仕様は直床、ディスポーザー、食洗機、床暖房、良水工房、一括受電など。
昨年5月から販売されており、これまでに3分の1強が成約済み。購入者は地元居住者が中心。レイクタウン越谷と競合しているとか。
◇ ◆ ◇
大袋駅圏のマンションを見学するのは10年ぶりで、そのとき見たのは「アンビシャス越谷」だった。
販売開始10カ月で3分の1強の成約が多いのか少ないのか、好調なのか不調なのか、判断は保留する。竣工までにどれだけ伸ばせるか。単価的にはこれ以上安い物件はまずありえない。
現地
三井不動産リアルティ 「三井のリハウス」直営体制へ完全移行
三井不動産リアルティは4月3日、不動産流通業「三井のリハウス」のフランチャイズ会社を完全子会社化することで4月1日をもって直営体制に完全移行したと発表した。移行により全国直営仲介店舗数は259 店舗から279 店舗となった。
完全移行は、顧客ニーズが高度化、複雑化、多様化しており、質の高いサービスと対応が求められる時代となったためとしている。
子会社化したのはちばリハウス、神奈川南リハウス、西愛知リハウス、西三河リハウスの4社。
欠けるのは「愛」 記者生活40年 業界紙に期待するもの ビーンボール②
記者のビーンボールを受けてみよ
2018年4月3日号「住宅新報」コラム記事
いきなりビーンボールを投げる。「神スイング」稲村亜美さんの球速100キロにはるかに及ばず、キャッチャーミットにまともに届かないボールだが、これを読んだらのけぞるはずだ。
その批判の矢面、先頭打者には、住宅新報の元編集長H氏に立っていただき、H氏の〝名物〟コラム「夢かうつつか 今宵も一献」を俎上にあげる。H氏こそが同紙の現状を如実に物語っており、コラムにも病巣が巣くっているような気がしてならないからだ。
記者はどちらかといえば〝一匹狼〟で、他の業界紙記者とほとんど交流しない。敵になっても味方になることはまずないし、フリーハンドで記事を書きたいからだ。徒党を組むのも好きではない。
そんな訳で、H氏ともあまり話をしたことがない。取材フィールドも異なっていたようだ。
それでも、最初に登場していただくのには理由がある。一つは、記者より確か3日早く生まれた同い年の〝先輩〟記者として親近感があり、記事の書き手と読み手としてキャッチボールができるような相手に思えるからだ。
もう一つ。これはあまり書きたくないのだが、書かざるを得ない。数年前だった。同社の当時の編集長が「うちには小姑が二人もいる」と、大勢の業界関係者がいる会合で冗談を飛ばした。その編集長は昨年会社を辞められ、後任の編集長もすぐ退社された。1年間に2人の編集長が辞めるのは異常事態だ。その後の展開は冒頭に書いた通りだ。
その二人の〝小姑〟のうちの一人がH氏であることは業界関係者であればすぐわかる。
いま〝小姑〟がどのような意味なのか問わないし、問題でもない。編集長を定年で辞め、いまも健筆を揮っていらっしゃる。ご同慶の至りだ。
しかし、文字数にして225字(写真含む)の小コラムはいかがなものかと思う。タイトルからしてすでに寝言のような、まともな批判を遮断する予防線のような、安さが売りの醸造メーカーのCMのような露悪趣味そのものだ。
これが〝全国の読者とともに71年〟の同紙の4本くらいしかない署名記事のうち1本というのは情けなさすぎる。それが「多くの方の声援に支えられている」というのだから、何をかいわんやだ。〝うつけ者の与太話〟と言っては失礼か。
どうして過去の実績・栄誉を帳消しにして余りあるこのようなどうでもいい飲み屋の紹介記事を書くのか。飲み屋の紹介など、吹き溜まりのゴミのように無料紙やネットに巻き散らかされているではないか。
夜な夜な、ぬゑか夜鷹のように場末の飲み屋街を徘徊し、とっくに賞味期限が切れた〝元編集長〟の印籠を振りかざし、熱燗一杯300円の安酒も身も心もすっかり芯まで冷めているのに、まさに羹に懲りて膾を吹くようにちびちびと飲み、酒の肴といえば、とっくに薹が立った蕗の薹か固くて歯が立たないスルメか、あるいは骨と皮だけの目刺しのような、誰にも相手にされない酌婦を口説くのならまだしも、そんな元気もなく、白内障の予兆のような白濁した胡乱な目で睨め付けるしかない、まるで記者と瓜二つの貴殿のそんな哀れな姿を想像するだけで腸が捩れるほど悲しくなるではないか。
連載は100回を超えたというから2年以上だ。まさかライフワークにするつもりではないだろうが…。〝ご隠居〟〝小姑〟の攪乱、錯乱として見逃すわけにはゆかぬ。晩節を汚してほしくない。
記者を見習いなさいよ。最近は量り売りよろしく計量カップでしか飲ませてもらえないお陰で糖尿の数値が劇的に向上し、トマトのアメーラを毎日のように食べている効果で血液サラサラの状態を維持している。
記事だって質はともかく、量は年間600~700本書いている。単行本なら数冊になる量だ。RBA野球の試合も年間100試合以上こなす。酒は百薬の長を実践しているのが記者だ。
貴殿はその真逆、つまり百害あって一利なしの酒におぼれる芥か病葉のような人生を送っているのではないか。このままだと業界妾だの御用評論家だのと不名誉な肩書を付けられるのがおちだ。これが心配でならない。
そんな時間とカネ(飲み代はほとんど会社持ちと聞いたが)があったら、1週間で1物件でもいいから現場に赴きマンション記事を書いてほしい。年間で約50本、3年で150本にもなる。まっとうすればいっぱしの住宅評論家としてデビューできるかもしれない。それでこそ男H氏だ。そうなったら、がっぷり四つに組み、万感の思いを込めて100年古酒を飲み交わそうではないか、3日早生まれの先輩!
欠けるのは「愛」 記者生活40年 業界紙に期待するもの ニュースを追うな①(2018/4/2)
ポラスグループ 木造3階建て新社屋「ウッドガーデン」竣工・公開
「ウッドガーデン」外観
ポラスグループのポラスガーデンヒルズは4月2日、オリジナル構造部材を使用した木造3階建て新社屋「ウッドガーデン」を報道陣向けに公開した。
新社屋は、JR常磐線・千代田線馬橋駅から徒歩1分、千葉県松戸市馬橋幸町の商業地に位置する3階建て準防火建築物で、延べ床面積約658㎡。構造は木造軸組工法。同社グループが設計・施工した。工期は約6カ月。総事業費は4億円。
エントランスに流紋岩の滋賀石を用い、外観は内部の木が見えるようにガラスカーテンウォールを採用。1階のショールームは床材にオーストラリア産のヒノキの突板を敷き詰め、2階のオフィスはクルミ材の白木をそのまま見せ、設計部署が使用する3階は床にナラ材の突板を使用し、壁など全体として黒を基調とすることでデザインを変えているのが特徴。天井高は1階が3.3m、2・3階が3.1m。
構造には、同社グループのポラス暮し科学研究所が開発した合せ柱、合せ梁、重ね梁、挟み壁(CLT耐力壁)を採用。住宅向けに流通している集成材を同社グループのプレカット工場で集束したり加工したりして耐震・耐火性能や強度を向上させ、コストを抑えているのが特徴。これによって約8.8mのスパンを実現した。柱はカラマツ、CLTは国産のスギ材を採用。
同社代表取締役・坂倉利昌氏は、「当社はポラスグループで唯一千葉県に特化した木造分譲住宅事業を展開する会社。設立した21年前はグループ全体で200戸程度の供給量しかなかったが、昨年度はグループ全体で714棟、当社だけで317棟に増加している。これまで5,000棟の住宅を目標に掲げ、目標を達成したら新社屋を建てる予定でいたが、中内(晃次郎)代表から〝木造の会社だから木造にしたら〟という話があり、グループが木造の非住宅に力を入れていることもあり、RCから木造にすることに変更した」と経緯を語った。
また、「今年度はグループ全体で800棟、当社は375棟が目標。工事の段階から〝何が建つの、今までとは違う〟などと地域の評判もよく、これを機会に新たなスタートを切り、デザイン性、耐震性、サービスにより磨きをかけ7~8,000棟を目指す」と述べた。
坂倉氏
◇ ◆ ◇
同社担当者は、CLTについてスギの3層クロスラミナパネルを開発し、一般的な耐力壁の約3.8倍の強度にし、表にビスを出さない工夫をしたなどとかなり難しい話をした。
そんな難しい話をされても記者はさっぱりわからない。注目したのはデザインだ。木造建築物は、耐火・防火の規制を満たしつつ木の美しさをいかに見せるのかがポイントだと思っている。
外観が木造に見えないのはいつものことながら残念だったが、内部は実によくできている。ポラテックの事務所や職業訓練校と比べ規模は小さいが、1階のヒノキ、2階のクルミ、3階のナラの突板が美しい。
3階のカラーリングは黒が基調だったのには面食らったが、デザイン監修を担当したガーデンヒルズ事業部設計部部長・安藤欣司氏は「これは私の趣味。設計部署にはこれがふさわしい」とこともなげに語った。
安藤氏とはどこかでお会いしたことがあると思ったら、学生コンペの実物化モデルハウスでお会いしていた。
なるほどと思った。ものごとに集中するには、周囲が明るいより暗いほうがいい。安藤氏はそのあたりをきちんと計算しているのだろう。
外構の滋賀石がまたいい。これも安藤氏が選んだもので、「星野リゾートで同じものが採用されていた」そうだ。
同社には、今回の事務所やボラティックのオフィス、職業訓練校を木造にしたことで社員の生産性は高まったのか、ストレスは軽減されたのか、ビフォー&アフターを公開するよう願いたい。
1階
2階
3階
外構
ポラス 学生コンペ 実物件化モデルハウスを公開 ミニ開発の難点を解消(2017/8/12)
〝オールポラス〟の木造建築物先導モデル「ポラス建築技術訓練校」が竣工(2016/4/15)
ポラスグループのポラテック 国内最大の木質ハイブリッド構造ビル完成(2012/2/22)
欠けるのは「愛」 記者生活40年 業界紙に期待するもの ニュースを追うな①
数回に分けて不動産業界紙について書く。昨年3月、東急不動産ホールディングス・金指潔会長が「このままでは業界紙は生き残れない」と発言して以来、事態はその通りに展開している。「週刊住宅」は自己破産し、その後復刊したもののページ数は半減した。創業70周年の老舗「住宅新報」は今年2月、分社化し、出版部門を切り離し、新聞部門は社名も「住宅新報社」から「住宅新報」に変更した。紙面が一新さることを期待したが、記事を読む限りではむしろ退化、劣化しているとしか思えない。忸怩たる思いがする。業界関係者からも批判的な声が頻々と発せられている。
批判記事を書くことは、さらに状況を悪化させないとも限らず、天に唾するようなものかもしれないが、M.J.アドラー/C.V.ドーレン「本を読む本」(講談社学術文庫)には「著者に語り返すことは、読者に与えられた機会であり、また義務でもある」とある。記者を育ててくれたのは不動産業界紙だ。書くことは業界紙への恩返しでもある。
年間100~200件の分譲マンションや戸建ての現場取材を40年近くにわたって行ってきた記者の経験、取材姿勢を伝えることは若い記者の方々に参考になるはずだ。
内容的にはかなり辛辣な言い回しもあるが、それは記者の品性の低さの反映であって、ためにするものではないことは読んでいただければ理解していただけるはずだ。なによりも業界の発展のための、記者なりのラブコールだと受け止めていただきたい。
記事量は400字原稿用紙にして18枚を超えるが、一言で結論を言えば、業界紙に欠如しているのは「愛」だ。「愛」とは、言うまでもなく惜しみなく奪う欲望であり、全てを与えたいという献身だ。
ニュースを追うな 勝てない記事を書くな
昭和60年11月7日号「週刊住宅」
〝お前はどうなんだ〟と言われそうなので書くが、記者は前職も含めてニュースを追うような記事を書いてこなかった。今も昔も業界紙は行政、民間、大手、中小、デベロッパー、ハウスメーカー、流通などといった具合に分野別に担当が振り分けられている。
記者が前職で最初に担当したのは行政だったが、当時、住宅新報には素晴らしい記者がいた。絶対勝てないと思った。なので、担当を外してもらい、〝遊軍〟記者にしてもらった。誰も競争相手がいなかった分譲マンションや建売住宅の取材をすることに決めた。
それで掴み取ったのが昭和57年11月、第1期分譲が平均41倍で即日完売した「広尾ガーデンヒルズ」の記事だ。記者は抽選会場に張り付いて〝熱狂ぶり〟をレポートした。
当時のデベロッパーは鷹揚なもので、会場には入れてくれなかったが、外で片っ端からインタビューするのを見て見ぬふりをしてくれた。
霧雨が降る寒い日だった。抽選に当たった人などに出会うことはほとんどなかったが、夕方近くだったか、満面に笑みを浮かべたきれいな女性に出会った。当選者だった。見出しにこう書いた。「その時、銀座クラブの美人ママはトイレに駆け込み歓びをかみしめた」と。
断っておくが、当時は、読売新聞などは平気で社会面の記事に「美人ママ」と書いた。記者が出会ったその銀座のクラブのママはぽっちゃりとした本当に美人(と記者は思った)だった。「今日はわたしの誕生日」とその38歳の独身美人ママは明かした。
昭和57年11月25日号「週刊住宅」
ニュースを追わなければこんな楽しい記事が書ける。もう一つ二つ紹介する。昭和60年11月の「出たァ!坪1億円」の見出しの記事も、担当を持たない軽薄短小の記者だからこそ書けたと思う。噂を聞いて銀座にすっ飛んだ。関係者に話を聞き、登記簿も調べた。確証は得られなかったが、この銀座の土地が初めて坪1億円で取り引きされたのは間違いなかったはずだ。
もう一つ、20年間くらい毎月2回発表したマンションと建売住宅の販売状況に関する記事だ。今でもそうだが、マンションと建売住宅の販売動向は不動産経済通信(同様の調査機関はほかにもあるが)の独壇場だった。他紙は「不動産経済通信の調査によれば」と二次情報として書かざるを得なかった。
ひねくれ者の記者は他人のふんどしで相撲を取りたくなかった。自らが情報発信者にならなければ記者として自立できないという自覚があった。意を決し自分で調べることにした。毎日、マンションの広告をながめた。
最初は容易ではなかった。取材意図が通じないモデルルームの現場からは「何? 『週刊住宅』? 知らねえよ。どこの馬の骨ともわからないお前に、どうして販売状況を教えなきゃならないんだ。しかもフリーダイアルの電話を使いやがって」と罵られた。
それでも、必死で訴えた。「コーヒー1杯分(新聞の料金)でお宅の物件も含めて全ての物件の販売状況が分かる。その数字が嘘か本当か、少なくとも1物件はあなたが知ることができる」と。訴えが通じたのか、協力してくれるデベロッパーが増えていった。
調査表には販売日、売主、用途地域、物件名、販売戸数、契約戸数(即日完売は最高、平均倍率)、月間契約率、交通便、最多価格帯、坪単価を掲載した。物件数は多い月はマンション、戸建て合わせて300件を超えたときもあった。これを約1週間で調べた。不動産経済通信より1~2週間早く発表した。
建売住宅の物件捕捉率は6割くらいに達した。不動産経済通信は今でも建売住宅の捕捉率は1~2割くらいではないか。
経験を積むうちに物件概要を読むだけで売れ行きが予測できた。いまでもマンションの坪単価を言い当てることができるのは、この調査のお陰だ。
ここに例示したのはバブルがはじけた平成4年3月の1面記事だ。見出しは「マンション市場に〝春一番〟」で、都内のマンション月間契約率は50.3%とある。白山が坪700万円、綱島が坪500万円、下総中山は坪370万円…、千葉県布佐の戸建ては6,000万円超だ。若い方は信じられないだろうが、それが〝バブル〟だった。
平成4年3月19日号「週刊住宅」
〝祝〟西武開幕3連勝 三重高ベスト4 住友不動産販売が全面広告に菊池雄星投手起用
4月2日付日経新聞 住友不動産販売の広告
わが西武ライオンズが3年ぶりに開幕3連勝を飾り、これまたわが故郷・三重県の三重高校が選抜高校野球で49年ぶりのベスト4進出を決めた。記者は朝から晩まで11時間、一滴の酒も飲まずカップラーメン一杯だけで、ハラハラドキドキ、テレビにくぎ付け、野球観戦に酔いしれた。
その翌日、4月2日付日経新聞の住友不動産販売の全面カラー広告に、何と西武の菊池雄星投手がサッカーの中村俊輔選手とバスケットボールの田臥勇太選手と並んでいるではないか。
キャッチコピーは〝プロだから、頼りになる。〟菊池投手も住友販売の広告に載るような世界に通用する投手になったかと思うと感無量だ。
住友販売はヤクルトのスポンサーだったような気がするが、どうやらここ2年低迷するツバクローに嫌気がさし、〝頼りになる〟西武ファンに寝返ったようだ。
非常に結構なことだ。記者も住友販売を応援しよう。〝野球は西武 不動産は住友〟。えっ、西武プロパティーズ? 西武不動産販売が不動産流通事業から撤退して18年になる。いまでもあれは間違っていたと思う。
「人間愛」「夢」「無形資産」を語る 積水ハウス仲井社長 入社式訓示
仲井社長
積水ハウス代表取締役社長・仲井嘉浩氏は4月1日、同社グループ入社式で次のように述べた。新入社員は同社487人、グループ会社179人の合計666人。うち613人が入社式に参加した。
◇ ◆ ◇
積水ハウスグループへの入社おめでとうございます。新しい仲間ができてうれしい、わくわくしているというのが、ちょうど30年前に皆さん側の席にいた私の率直な気持ちです。
当社グループの仕事は、人々の暮らしに不可欠な衣食住のうちの「住」を通じて社会に貢献でき、お客様を「幸せにできる」素晴らしい仕事です。そして住宅は地球上に皆さんの仕事の成果として残ります。このような経験は、他の仕事ではなかなか味わえません。当社の企業理念の根本哲学「人間愛」に「相手の幸せを願い、その喜びを我が喜びとする」と書かれているように、お客様の幸せを心から願って、仕事をしていただきたいと思います。これを忘れなければ必ず成果は出ます。
皆さんは新入社員ですが、私自身も社長としては新任です。私には「住宅を通じてお客様にもっと幸せを提供する」という夢があり、日々必死で勉強しています。当社はトップレベルの住宅の「安全性」やネット・ゼロ・エネルギー・ハウスをはじめとする「環境配慮」「快適性」などを追求してきました。今後、もう一段上の幸せを提供するために、IoTなどの先進技術の導入やハードだけでなく、新たなサービスの提供などが考えられます。皆さんも「夢」を持って働いてほしいと思います。
皆さんは今日から社会人であり、住宅のプロとしての自覚が必要です。どのような職業でもプロであり続けるためには、生涯にわたって勉強しなければなりません。住宅の建築法規や性能、資金計画、ライフサイクルコストなど、学ぶべきことはたくさんありますので、焦らずに 計画的にコツコツ勉強してください。成功のためには、マラソンのように一つのことに長い間じっくりと取り組んで 「やり抜くこと」が何よりも大切です。
人生100年時代には、住宅や土地などの「有形資産」だけでなく、家族や友人、健康、スキルなどの「無形資産」が大切です。当社も働き方改革を推進しています。メリハリをつけて一生懸命に働いて、オフの時間も家族や友人との時間を大事にしたり、習いごとをするなど、仕事と同じように自分の時間にもエネルギーを使ってください。これらがすべて自らの人生の財産となる「無形資産」になります。
当社は、グループ会社間の連携に力を入れています。これから皆さんはそれぞれ配属先で異なる業務に就きますが、グループで連携し、情報共有することでより、お客様により良い提案ができ、大きな成果を上げることができます。
本日は、積水ハウス、積和不動産、積水ハウスリフォームの新入社員が参加していますが、グループを超えた同期のつながりも大切にしてください。私自身もそうでしたが、つらい壁に当たった時、きっと支えになってくれるはずです。共に必死に勉強して、積水ハウスグループを発展させていきましょう。
住宅1,247戸など 複合の「白金一丁目東部北地区」権利変換認可 長谷工コーポ
「白金一丁目東部北地区第一種市街地再開発事業」
長谷工コーポレーションは3月30日、同社が事業参画している1.7haの “住・商・工”複合の街づくり「白金一丁目東部北地区第一種市街地再開発事業」が東京都から権利変換計画認可の許可を受けたと発表した。
東京メトロ南北線・都営三田線白金高輪駅に近接する市街地再開発事業として、超高層マンション1棟(地上45階)、高層マンション1棟(地上19階)を含む住宅約1,247戸のほか店舗、工場など “住商工一体”の街づくりを目指す。完成予定は平成34年度。
同社は検討段階より事業協力者として参画しており、コンサルタントの佐藤不動産鑑定コンサルティング、梓設計、上野計画事務所、日本工営などとともに事業を推進してきた。
参加組合員に東京建物、長谷工コーポ、住友不動産、野村不動産、三井不動産レジデンシャルなどが参画している。
4月1日発 都心のビッグプロジェクトは容積率無制限に RBAに国民栄誉賞
モリカケ問題の対応に苦慮する政府関係筋は4月1日、一発逆転、怒髪天の打開策を検討していることを明らかにした。
その目玉として、世界に冠たる国際都市にふさわしいプロジェクトを奨励するため都心の容積率を無制限にし、建物の絶対高さ規制もなくす。
これを受け、三菱地所は「常盤橋再開発プロジェクト」に坪単価5,000万円のペントハウスマンションを追加することを表明し、三井不動産は「(仮称)日本橋空中都市構想」を打ち出し、東京制圧を目指す住友不動産は都心5区を「東京マッドタウン」として商標登録することを決めた。
政府はまた、絶滅危惧種の大阪弁を臆することなく首都・東京で堂々と話し、戸建てでデベロッパーを圧倒している関西のハウスメーカー〝御三家〟の住友林業・矢野龍氏、大和ハウス工業・樋口武男氏、積水ハウス・和田勇氏を人間国宝として永久にその名誉を称えることを決定した。
さらにまた、国民の厭世気分が広がっていることを憂慮し、その気持ちを〝忖度〟し、だれもが活躍できる社会を構築するため、太陽は東から西へ沈み、水は上から下へ流れるのと同じように、野球こそが人類を熱狂させる普遍の真理であることに着目、今年30周年を迎えるRBA野球大会に国民栄誉賞を授与し、大会参加チームに無課税の使途を問わない金一封を贈与することを検討する模様だ。