ターナー発見 椿姫 乾杯の歌に「ブラヴォー」 三井デザインテック セミナー・懇親会
三井デザインテック懇親会(椿姫「乾杯の歌」演奏場面)
三井デザインテックは11月30日、プレスセミナー・懇親会を綱町三井倶楽部で行った。
第一部のセミナーでは、同社ワークスタイル戦略室マネージャー・大川貴史氏が「働き方改革」につながるオフィス事業について講演した。第二部の懇親会では、ベルディの代表作「椿姫」の「乾杯の歌」とプッチーニの名作「ラ・ボエーム」が演奏され、粋な演出に参加者から「ブラヴォー」の歓声が上がった。
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同社常務取締役スペースデザイン事業本部長デザインマネジメント部長・飯田和男氏が「クライアントのニーズは複雑多岐にわたっている。足りないものは何か、残すべきものは何か-この当たり前のことにわれわれはきちん提案していく」と懇親会で締めの挨拶をしたとき、会場がシーンと静まり返ったのがとても印象に残った(三井倶楽部の雰囲気もそうさせた一因だろう)。
同社のデザイン・意匠は、マンションやホテルなどでたくさんお目にかかっており感服させられるだが、最近はソリューション事業に力を入れているようだ。この日、大川氏が講演した東京大学大学院・稲水伸行准教授との共同プロジェクト「クリエイティビティに関する調査研究」もその一つだし、先に発表した職業能力開発総合大学校・橋本幸博教授との「オフィス空間における植物配置の好ましさに関する共同研究」も非常に参考になった。
懇親会ではインテリアデザイナー・小野京子氏としばし歓談した。「小野」と聞けば記者はすぐ同じデザイナーの小野由記子氏を思い出すのだが、小野京子氏の〝作品〟もたくさん見ている。最近では「武蔵小山」がそうだ。「パークコート山下公園」も見学取材する予定だ。
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同社によると、「椿姫」と「ラ・ボエーム」の演奏は、ソプラノ・髙橋絵理氏、テノール・所谷直生氏、ピアノ・松岡なぎさ氏、演出・大澤恒夫氏。企画・制作はオペラの普及活動を行っているNPO法人オペラ普及団体ミャゴラトーリ。
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会場の三井倶楽部に着いたときは2部の懇親会が始まる直前だった。えっ、2部? 何のことはない。セミナーの開始時間を1時間間違えたのだ。恥ずかしいやら情けないやら。もう帰ろうと思ったが、関係者に勧められてほんの数分講義を聴いた。
セミナーが終わり、せっかくだからワインを頂こうと宴会場に向かうとき、高校の同窓の後輩女性記者と出くわした。彼女が「帰る」というので、「馬鹿だね。ここの施設をきちんと見なければだめだ」と引き留め、まずロダンの彫刻を見せた。大した反応を見せないので、すぐ近くにあるルネサンス時代の裸婦像(記事参照)を紹介した。これも反応なし(刺激が強すぎたか)。
なので「もっといいのがある」と、中庭を見せようとホールに向かったとき、正面に50号くらいのターナー(1775~1851)と思しき絵画が掛かっていた。「ほら、ひょっとしたらあれはターナーかも」と、近づいて銘板を確認した。確かに「ターナー」とあった。えっ? すぐ値段をはじき出そうと頭を回転させたが、見当もつかなかった。
懇親会の後で渋谷忠彦社長に聞いたら、ターナーの絵はもう1点あるそうだ。この日見た絵より小さい作品が50億円台で落札された事例があるようなので、2点で100億円はどうだろう。
三井倶楽部にはいったいいくらの所蔵品があるのか。隣のアパのマンションは賃貸になった。
昨年の懇親会
三井レジ・JX日鉱「武蔵小杉」 第1期は409戸 単価は330万円(2015/6/24)
三井レジ他「パークコート渋谷大山町」 低層住宅街の大規模 単価は470万円(2014/12/3)
デザインが企業・経営者、住宅を変える 三井デザインテックが第2回セミナー(2016/10/20)
「ポプラ文庫」がすごい 「マンションいい話コンテスト 2017」マンション管理協
マンション管理業協会は12月1日、第3回「マンションいい話コンテ スト 2017(一般編)」の受賞作品を発表した。全国から応募があった426通の中からグランプリ(賞金30万円)は横山千尋さんの「マンション文庫『ポプラ文庫』ただいま8年目」が受賞した。
このほか準グランプリ1点(同5万円)、特別賞3点(同3万円)、佳作9点(クオカード3千円分)が選ばれた。
グランプリ作品は、「ごく限られたコミュニティでの活動であったものが、『読書』や『本』を媒介に、口コミを通じてマンション居住者ばかりではなく、近隣住民の方々も交えた地域コミュニティ形成の場へと発展し、マンション内外に広く認知された好事例」というのが審査員の講評。
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グランプリ賞に輝いた作品のストーリーがすごい。前回は10人くらいしか集まらなかった子ども向けの童話読み聞かせ「ポプラ文庫」に、東日本大震災の6日後に100人超が集まるというシーンがある。フィクションでもあり得ない話だが、事実は小説より奇なり。いかにわれわれは危うい社会に生きているかを思い知らされる。
会社員は仕事があり気がまぎれるが、家庭の主婦は話し相手がいないマンションという箱の中に閉じ込められ、現実とは思えない悲惨な被災地の状況をテレビでのべつ幕なし垂れ流されればパニック状態に陥るのだろうか。
学校もまた社会と隔絶された世界だ。しかも教師の女性比率は6~7割に達する。恐慌状態を来すことがありうるのかもしれない。
作家の金原ひとみさんは2015年に発表した「持たざる者」(すばる)で、3.11によって人生が狂った4人の主人公の孤独と喪失を描いた。ご本人も放射能汚染を恐れ東京から父親の実家である岡山に移住して次女を出産した。
「ポプラ文庫」は恐ろしい世界を活写したのかもしれない。
震災後〝絆〟が流行語になったが、今の世の中は社会も企業も家庭も絆を断ち切る方向に突き進んでいないか。そうした動きに抵抗する「ポプラ文庫」の活躍に期待したい。
過去2回の「マンションいい話コンテスト」は報道陣を集めて盛大に授賞式が行われたが、今回はないのだろうか(管理会社編の受賞はイベントが行われると聞いているが)。
気になったことが一つ。第1回の応募作品は1,015通、第2回目は806通だった。今回は426通だからほぼ半減した。賞金が過去2回は50万円だったのが今回は30万円に減額されたのが響いたのか。
東急不動産 インドネシア初〝オールジャパン〟のマンション上棟
建築中の「BRANZ SIMATUPANG」
東急不動産は11月30日、現地子会社・東急不動産インドネシアを通じて開発を進めているジャカルタの分譲マンション「BRANZ SIMATUPANG」(381戸)が上棟したと発表した。
建設を大林組が、ランドスケープを石勝エクステリアが、管理・運営を東急不動産インドネシア社がそれぞれ担当するなど商品企画-施工-管理まで全て日系企業が関与するインドネシア初のプロジェクト。
2015年10月から販売を開始しており、南棟は完売。北棟も着実に販売が進んでいるという。販売価格は完成に向けて徐々に上昇していくのが一般的で、当物件も販売開始時より約10%上昇している。引き渡しは2018年12月。
東急不動産他 豊洲の50階建てマンション1,230戸など 都市計画決定
「(仮称)豊洲地区1-1街区開発計画」
東急不動産、NIPPO、大成有楽不動産は11月30日、江東区豊洲五丁目大規模プロジェクト「(仮称)豊洲地区1-1街区開発計画」が都市計画決定されたと発表した。
事業地は、東京メトロ有楽町線豊洲駅から徒歩4分、江東区豊洲五丁目1号に位置する敷地面積約24,300㎡。住宅棟は地上50階建て約1,230戸。このほか生活利便施設棟、保育所棟が併設される。竣工は2021年度。
水辺へのアクセス機能とにぎわいを創出する広場機能を備えたプロムナードの整備をはじめ、水域や公園と連続する多様なオープンスペースを創出する。住宅棟の一部住戸に東京ガスのマンション向け家庭用燃料電池「エネファーム」を導入する予定。
マンションの坪単価は400万円をはるかに突破するとみられている。
耐力壁ジャパンカップ 最後の第20回大会で最強壁をつくったポラス・大浦和香子氏
大浦氏
阪神大震災後の平成10年、木造住宅の構造耐力向上、伝統工法の継承を目的としてスタートした「木造耐力壁ジャパンカップ」が今年の第20回大会をもって終了した。この最後の大会でもっとも強度の高い耐力壁としてトーナメント優勝した壁「SHINMEI」を作ったのはポラス暮し科学研究所の生産プロデュースグループ主任・大浦和香子氏だ。
「昔からやってみたい壁の構想はあったのですが、ルールが変更になり、450ミリ×450ミリ以上の開口部を設置しなければならなくなり、大慌てで設計し、修正を加え3カ月で完成させました」
壁は、伊勢神宮に代表される神明造の破風が伸びて千木となる形をイメージして作ったそうだ。材料は、土台がベイマツ集成材、柱・桁・貫がヒノキ、楔がカシ。
「強いか弱いか、予測はしましたが、戦ってみないとわからない部分も多くて…勝因は斜材を土台・梁の部分まで通したのが効果的だったと思っています。またチームの皆が図面通りに精度よく加工・施工してくれて、耐震性で高得点したのがとてもうれしい」と振り返った。
決勝戦で戦ったのは、矢はず張りのデザインが美しい、昨年度決勝戦で敗れた〝宿敵〟の「メケメケ」だった。参加者の多くは昨年度覇者の「メケメケ」の勝利を予想していたようで、それを覆しての勝利だったのがポラス関係者を喜ばせた。
それでも大浦氏は「デザインで点数が伸びなかった。総合優勝できなかったのはそのせいかもしれない」と悔しさをにじませた。
上司で同研究所生産プロデュースG主席研究員・上廣太氏は「この壁は、“固い”? それとも“堅い”? そうではなく〝手堅い〟」と大浦氏の作品を評した。
大浦氏は2003年、木質構造研究室院を経て同社入社。以来、同研究所勤務。耐力壁ジャパンカップにはずっとスタッフの一員として参加してきた。昨年、トーナメントで優勝を逸し、今回、設計を担当することになった。
大会はトーナメント戦を勝ち抜いたもっとも強度の高い耐力壁に贈られるトーナメント優勝と、強さ(耐震評点)に加えて環境負荷費、デザイン評点、材料費、加工費、施工費など総合的に優れた耐力壁に贈られる総合優勝(ジャパンカップ)の2つのタイトルがある。毎年、大学、専門学校、住宅関連企業、設計事務所などが参加している。今年は静岡県富士宮市の日本建築専門学校で開催され、13体の耐力壁が出場した。同社チームは今回を含め8度トーナメント優勝している。
上廣氏(左)と大浦氏
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インタビューは、大浦氏のほか、上廣氏、同社広報担当者を交え約1時間、侃々諤々の論議を行った。
冒頭のインタビュー記事はそのごく一部だ。同社チームは職業訓練校も含めて第4回大会から出場しており、今回で8度目のトーナメント優勝であり、〝女性〟の大浦氏が設計を主導した初めての耐力壁であることに〝価値〟があるのは確かだ。
戦った相手は東京都市大学、東京大学、東京工業大学、東京理科大学、滋賀職業能力開発短大など上司も苦汁を飲まされてきた男性のその道のプロばかり。若い女性の大浦氏がそれらを打ち負かしたのだから、マスコミ受けするトピックスでもある。
しかし、どうして20年も継続して行ってきた大会が終了となるのか、この間の成果、課題は何だったのか、今後はどうなるのか最大の取材テーマだった。男性vs女性などの視点から取材する意図は全くなかった。
取材の成果は十分あった。例えばデザインとは何か。これは永遠のテーマだ。小生は、「美しいものこそが機能的だ。機能的なもののみが美しい」と語った丹下健三を支持するのだが、その伝でいえば、今回優勝した「SHINMEI」がもっともデザイン的に優れているということになるのだが、そうならなかった。もっともデザイン的に優れていると評価された壁は「紬~final~」の81点で、「SHINMEI」は68点だった。
記者個人は、見た目が一番美しいと思う「rhombus」は0点(予選敗退したため)だし、黒い鋼板を採用したポラスハウジング「わでぃん」は他を圧していると思ったが60点(これも決勝トーナメント初戦で敗退したから低得点は納得)だった。
この点について上廣氏は「どうしても主観が入る」と語り、大浦氏も「デザインは狙っていませんでしたが、大差をつけられた。これが敗因かも」と振り返った。
機能的=美しいと評価されなかった。耐力壁ジャパンカップもこの永遠のテーマに正解を出すことができなかったということだ。(記者は〝馬子にも衣裳〟を信じない。大事なのは美醜を分ける眼力だ)
このほか、レギュレーションが毎年のように変わる問題、ケヤキ、クス、クリ、サクラ、カシ、コクタンなどの高級材が利用できない理由、CLTは輸送に問題があること(現場施工ができない)、金物は悪か(記者はハイブリッドがいちばんいいと思うが)、安全性は担保されているか、解体を採点項目に加える是非、大会会場の利便性などについてもたくさん聞いたが、今回はこのあたりにとどめる。
大会事務局は20年間を振り返って記念誌を発行する予定のようで、しっかり検証していただきたい。来年から装いを新たにスタートする大会は、「安全性が確保され、だれでも参加できるシンプルな規定にして、便利なところでやっていただきたい」と上廣氏の言葉と同じだ。
アキュラホーム 第20回木造耐力壁ジャパンカップで総合優勝 大会はいったん幕(2017/9/25)
オーナーの思い×ポラスのこだわり 駅近と同額でもほぼ満室稼働 戸田の賃貸住宅
「CHOCOLAT(ショコラ)」
オーナー・峯岸氏
ポラスグループの賃貸住宅を手掛けるポラスグランテックは11月30日、埼玉県戸田市に完成させた南欧風デザインで街並みを形成した賃貸住宅「CHOCOLAT(ショコラ)」の報道陣向け見学会を行った。北戸田駅から徒歩16分の立地で、個性的な〝魂を込めた〟企画がヒットし、家賃は駅徒歩5分圏とほぼ同じ額ながら全4棟21室のうち入居を前に19室が契約済みだ。
物件は、JR埼京線北戸田駅から徒歩16分、埼玉県戸田市笹目1丁目に位置する敷地面積1,629㎡(511坪)の全4棟。A棟は1LDK8世帯、延べ床457.89㎡、B棟は2LDKメゾネット2世帯・1R4世帯、 延べ床323.62㎡、C棟は2LDK2世帯、2LDKメゾネット1世帯、延べ床253.60㎡。D棟は2LDK4世帯、延べ床258.36㎡。投資額は約3億円。
中庭を囲むように建物を配置。それぞれ城門(A棟)、ステンドグラス(B棟)、赤、木製ドア(C棟)、個性的な窓枠(D棟)などを設けているのが特徴。
一般的な設計なら25~30世帯が建てられるが、差別化を図るためあえて21世帯に抑制。短期的な利回りよりも入居者が「長く住みたい」「家族が増えたら敷地内の広い間取りの部屋に移りたい」と考えてもらえるよう長期安定経営に主眼を置いている。
中庭には石畳調のスタンプコンクリートを採用、街路灯も設置、夜はライティングで表情を変える演出を行う。駐車場は敷地外に確保して景観を守っている。
同社部長・篠田則夫氏は「戸田市は人気が高いが、ライバルも多いので差別化を図る意味で他社と一線を画し、サブリース・利回り優先ではない、街並み形成、コミュニティ醸成などに力を注ぐなど魂を込めた。〝一生賃貸〟という最近の若者のニーズも吸収した。地主向け内覧会には2日間で50名が参加したように評価を得た」と話した。
オーナーの峯岸昭幸氏(55)は、「映画の舞台にもなった『世界一美しい村』ともいわれる仏フラヴィニー村に感銘を受け、その世界観に最も近かったポラスの分譲住宅の街並みを取り込めないかと同社を選定した。9割以上思っていたことが実現できた」とコメントした。峯岸氏は2年前にIT企業を退職してストレージ・ソリューション社を設立。現在、賃貸住宅27棟(計画中含む)118室(同)を所有・管理している。
関係者などによると、入居者募集は7月末から開始し、これまでに19室が契約済み。坪単価は駅5分圏内の相場とほぼ同じくらいの約6.1~7.5千円。実質利回りは8%確保できているという。
夜景
中庭
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賃貸住宅のことはよくわからないのだが、なぜ駅から16分もあるのに、駅近の相場と同じ賃料でほぼ満室稼働できるのか信じられない。オーナーの熱い思いと、ポラスグループの地主にこびない企業姿勢がぴったり合致したのが成功した要因のすべてだろう。以下、感じたままを記す。記者の心の動きが分かっていただけるはずだ。
ゲート
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戸田駅に着いたとき、昼過ぎなのに空は暗く冷たい雨が降っていた。嫌な予感がした。同社が手配したタクシーに乗ったのはいいが、現地まで10分近くかかるではないか。いくら経済設計の利回り優先の賃貸でも、これでは歩けない(あとで聞いたが、北戸田駅から徒歩16分)。最初は入居者が決まるかもしれないが、空いたが最後。ずっと空き家になるのは必至だ。誰が入居するのか。安かろう悪かろうの賃貸など見たくない。気安く見学の誘いを受けなければよかったと悔いた。
現地の建物を見たときは、嫌な予感はいくらか薄れた。間口が23m以上あるシンメトリーの建物はなかなか見栄えのするものだった(これがA棟)。中央にゲート(城門)が設えてあった。外観の素材はともかく邸宅ともいえるデザインが美しかった。
そのゲートを潜ったとたん、景色が変わった。広いパティオ(中庭)が広がっていた。一世を風靡したセボン(大伸フード)を思い出した。南欧風のRC造の分譲タウンハウスに購入希望者が列をなしたあの光景がよみがえった。
それでも期待が膨らむことはなかった。〝利回り優先とは一線を画した〟〝街並みを造った〟〝コミュニティを育む〟〝魂を込めた〟〝これしかないと即決した入居者もいた〟〝通る人がみんな眺める〟〝ポラスの街並みが気に入った〟-など関係者、オーナーが熱っぽく語っても半信半疑で聞いていた。地主の道楽で建てたのではないかと。
配布された資料の図面を見て、疑念がまた湧いてきた。プランはよくできているとは思ったが、図面ではB~D棟は接道しているようには見えなかった。つまり〝違法建築〟ではないかと。
しかし、その疑念は設計監理を担当した同社係長・岸野真奈美氏の説明で氷解した。敷地は3方に接道しており、幅2mの避難通路も確保されていた。これには驚いた。普通ならレンタブル比率を高めるため分棟などしないで戸数を増やすはずだ。
それ以降は驚きの連続だった。一番びっくりしたのは本物の木製玄関ドアが採用されていたことだ(他は普通のスチールドア)。法令にも対応しているとのことだった。
手すりなどにはオーダーの鋳物が使用され、立派なステンドグラスも2カ所に設置されていた。壁の張替のコストを考え、クロスは上部と下部を分けるボーダーを設けている-なるほど、これがメリハリか。愚鈍な記者にも知恵の輪が解けた。〝魂を込める〟ことがどれほど大事かまた学んだ。
居室
駅から15分 克服できる商品企画 大和地所レジ「ヴェレーナ浦和ザ・ハウス」
「ヴェレーナ浦和 ザ・ハウス」完成予想図
大和地所レジデンスが12月下旬に分譲する「ヴェレーナ浦和 ザ・ハウス」を見学した。浦和駅から徒歩15分とややあるが、周囲は低層住宅街で希少な中層マンション、戸建て感覚のオープンエアリビング付き1階住戸、6,6mのワイドスパン、屋上ペントハウスプランなどの特性をアピールできるかどうかが成否のカギを握る。
物件は、JR京浜東北線、湘南新宿ライン、上野東京ライン浦和駅から徒歩15分、さいたま市南区太田窪二丁目に位置する6階建て全52戸。専有面積は65.26~80.20㎡、価格は未定。竣工予定は平成31年2月下旬。施工は森組。設計はオンズデコ一級建築士事務所。
現地は、第一種住居地域(建ぺい率60%、容積率200%)に位置。元企業の研究所跡地。周辺も同じ用途地域だが、ほとんど戸建て用に土地は細分化されており、高い建物が建つ可能性は低い。
建物は美しいシンメトリーのデザインが特徴。住戸プランは一部を除き6.6mのワイドスパン、角住戸にコーナーガラスを採用し、1階オープンエアリビング付き、屋上ペントハウスプランなどとし、御影石のキッチンカウンター、食洗機などが標準装備。廊下はメーターモジュールを採用している。
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駅から徒歩15分(バス2分徒歩3分)と学区の小学校・中学校の距離がマイナス要素と思われるが、これをどう覆すか。
第一は価格だ。同社は未定としているが、記者は坪単価220万円なら十分勝負できると思う。70㎡で1階住戸は5,000万円、その他は4,700万円くらいだ。最上階の13~16mスパンペントハウスタイプとルーフバルコニー付きで6,500万円でも売れるとみた。それだけの商品企画力がある。
第二は、この優れた商品企画をどうアピールするか。1階住戸と最上階住戸はよさが分かるから問題はない。他の住戸をどうするかだ。設備仕様・仕上げは他の郊外型と比べても勝てるはずだ。駅と反対側の徒歩15分なら坪単価は280万円だろうし、低層の良好な住宅街なら300万円はする。これをきちんと説明できるか。
メーターモジュールを採用した郊外のマンションはまず埼玉県にはないし、6.6mスパンもない。
ついでだが、記者も見学し記事にも書いた「ヴェレーナグラン大宮大門町 瑞景」は残り1ケタもないようだ。記者が予想した坪単価280万円よりずいぶん低いようだ。
住友不「シティテラス杉並方南町」竣工 「外観美しい」完成後に来場が倍化
「シティテラス杉並方南町」サウス棟
住友不動産は12月1日、東京メトロ丸ノ内線方南町駅から徒歩1分の国家公務員宿舎跡地に完成した大規模マンション「シティテラス杉並方南町」の報道陣向け竣工内覧会を行った。2016年7月の第1期~3期まで半数以上の約160戸が契約済みで、建物が竣工してからは「外観がきれい」というお客さんの購入が目立ち、来場ペースがそれ以前より倍増しているという。関係者は完売まで1年はかからないとみている。累計問い合わせ件数は約4,000件、来場者は約1,400件。竣工を待って現地棟内にモデルルームを新設した。
物件は、地上6 階建て・11階建て2棟全298戸。専有面積は54.68~85.07㎡。坪単価は370万円。竣工は2017年11月30日。設計・施工は三井住友建設。
購入者のうち30~40歳代が全体の約6割。大手町、霞が関勤務のアッパーサラリーマン層がメイン。現居住地は区内が約3割。隣接区を含めると約6割。
都心の駅近大規模で、資産性・利便性を求める幅広い層から支持を集めている。現在、方南町駅ホームの延伸工事が進められており、2019年度に完成すれば中野坂上止まりなのが都心方面まで直通運転される。
ノース棟
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一昨年4月に取材したとき、「外観デザインが美しい。コンクリート打ち放し風の外壁は一部有孔コンクリが採用されており、風情がある。坪単価は未定だが、ほぼ予想したとおりだ。坪400万円はないとみた」と書いた。
関係者も、「竣工してからコンクリート打ち放しのきれいなのを見て購入を決断される方が多い」というのもうなずける。外階段のルーバーとのコントラストも美しい。
坪単価もこれから割安感がでてくるはずだ。
外階段ルーバー
駅1分、外観デザインがいい 住友不動産「シティテラス杉並方南町」(2016/4/22)
〝丸の内愛してる〟 過去最多870名が参加 第9回「東京エキマチ キラピカ作戦」
第9回「東京エキマチ キラピカ作戦」
東京ステーション運営協議会、NPO大丸有エリアマネジメント協会、八重洲・日本橋・京橋地域の3者は11月30日、東京駅周辺を掃除する第9回「東京エキマチ キラピカ作戦」を実施した。約70万㎡のエリアの就業者や在住者など71の企業・団体が集まり、ゴミや落ち葉などの清掃を行った。参加者は過去最多の約870名に上った。
「キラピカ作戦」は、きれいで快適な駅でお客さまを迎えようという趣旨で2002年に始められた自主的な清掃活動。毎年、夏休み前と年末の年2回、行われている。
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午前8時15分、東京駅丸の内側の駅前広場に全員が集合。関係者からの挨拶、注意事項などを確認し、東京駅、大丸有、八重洲・日本橋・京橋地域の3つのエリア・班に分かれて8時30分から作業開始。9時30分まで約1時間、清掃活動を行った。
参加者の一人、日本郵便に勤務する30歳代の女性は「参加は今回で2度目。強制ではありません。作業は苦になりません。丸の内を愛していますから」と、数人の仲間と舗道のイチョウの葉っぱを拾っていた。
また、東京駅八重洲口でゴミを拾っていた大丸に勤める30~40歳代の男性は「東京駅を誇りに思っている」「吸い殻は2本のみ。めっちゃきれいな街」と、感嘆の声を上げた。
清掃のプロ、JR東日本テクノハートの社員は「通勤時間と重なったので、安全面に配慮して作業しました。まったく問題なかった」と話した。
左から〝丸の内愛してる〟日本郵便の社員と〝東京駅が誇り〟の大丸の社員
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〝丸の内を愛している〟-このコメントだけで取材した意味があった。大丸有エリアは掃除の必要など全くないほどきれいだった。日常的に清掃・管理が行き届いているからだろうし、在勤者のマナーもいいからだろう。100尺ラインの建物も美しい。マンションが建ったら坪3,000万円どころか5,000万円の評価も当然だ。
時間の都合で八重洲エリアは見て回れなかった。雑居ビルも多く、汚い看板が目立つので大丸有というわけにはいかないだろうが、これから再開発が本格化する。大丸有とままた違った美しい街並みが形成されるのに期待したい。
〝目標は1,000人です。皆さん頑張りましょう〟
三菱地所レジデンス 戸建て分譲 全戸に「エネファーム」採用
三菱地所レジデンスは11月29日、東京ガスの供給エリアで分譲する戸建住宅シリーズ「ザ・パークハウス ステージ」全戸に家庭用燃料電池「エネファーム」を標準採用すると発表した。
「エネファーム」は、都市ガスから取り出した水素を空気中の酸素と化学反応させて発電し、発電した電気を家庭内で利用するほか、その際に出る熱も給湯に利用するなど送電ロスがなく、発電時に出る熱を無駄なく活用できる環境にやさしいシステム。
東京都の物件には、停電時発電継続機能を内蔵した「エネファーム(レジリエンスモデル)」を原則標準採用する。これによって、停電時の発電継続期間が最長約8日間となる。
同社は、戸建住宅シリーズ「ザ・パークハウス ステージ」を年間約300戸、将来的には年間400~500戸供給することを目標としている。
東京ガスによると、2009年に販売を開始して以来、着実に伸ばしており平成29年11月現在、累計販売台数は9万台を達成した。
デベロッパーでは、三井不動産レジデンシャルは2014年に「エネファーム」の全戸導入を決定し、野村不動産もほぼ同じころに全戸に導入した大規模戸建てを分譲している。
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結構なことではあるが、先行する三井不動産レジデンシャルや野村不動産に肩を並べるには今一つインパクトに欠ける。記者は三菱地所ホームの全館空調システム「エアロテック」を全戸標準装備して差別化を図るべきだと思う。