波乱万丈30年の「仕事」を語る コスモスイニシア商品企画部部長兼一級建築士事務所所長・南光浩氏
南氏
いまデベロッパーは総じて元気だが、〝いい仕事をしている〟という条件を付けるなら、真っ先にコスモスイニシアをその1社にあげる。マンションは、創業40周年のフラッグシップ「イニシア武蔵新城ハウス」をはじめ、「笹塚」「豊洲」「大井町」「西新井」「松陰神社」「草加」「志木」(順不同)などのマンションが次々に目に浮かんでくるし、分譲戸建て「石神井」「光が丘」「練馬田柄」なども出色の出来だった。リノベーション「INITIA ID」も素晴らしいし、最近はアパートメントホテル事業に進出した。
その商品企画の旗振り役が同社建築本部商品企画部部長兼一級建築士事務所所長・南光浩氏だ。南氏に波乱万丈の約30年の「仕事」について聞いた。
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「入社するときはリクルート事件の真っただ中でしたが、事件をそれほど深く考えていなかったですね。面接を受けたとき、やりがいがあると感じて入社を決めました。当時、本社建築監理部から部門名を変更して一級建築士事務所を立ち上げ本格的に動き出すときで、マンションのほかホテルやビルなども始めたころでした。以来ずっと商品企画を中心に建築の仕事全般に携わってきました」
南氏は1966年生まれの51歳。1990年、早稲田大学理工学部建築学科卒。同年4月、リクルートコスモス入社(現コスモスイニシア)。建築部門の商品企画で大規模分譲マンション・タワーマンション・戸建て事業開発・アパートメントホテルなどに関わる。2005年から産学民共同研究COCOLABOを、2013年から慶応大学SFC研究所とシェアタウンコンソーシアムを立ち上げ、行政・民間企業などと研究を継続中。一級建築士事務所としては社内外の集合住宅・ビル・ホテルなどの企画監修・設計監理・コンストラクションマネジメント業務に取り組む。グッドデザイン賞受賞作品も多数。
プロフィールでもわかるように、入社はバブルの絶頂期の平成2年4月。その秋、うたかたのごときバブルははじけた。
いまの若い業界関係者はご存じないかもしれないが、バブル絶頂期の同社の首都圏マンション供給量は5,000戸くらいに達していた。約1万戸の大京には及ばなかったが、ダイア建設と2位、3位の座を競っていた。
戸数の多さだけではない。そのうちの約1,000戸が億ションの「グランフォルム」だった。大京はもちろん三井不動産などもはるかに及ばなかった。三井不動産の社長(だったと思う)をして「大京の足腰と、リクルートコスモスの頭脳が欲しい」と言わしめた。世間では「リクルート事件」の嵐が吹きまくっていたが、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いにあった。
ところが平成2年3月、それまで垂れ流し状態だった不動産業向け銀行融資がバルブを閉めるように閉じられた。総量規制と呼ばれた金融政策だ。デベロッパーは息の根をとめられた。
同社も奈落の底に突き落とされた。同4年には親会社・リクルートの創業者・江副浩正氏が保有株をダイエーに売却し、同社もダイエーグループ入りすることになる。その後、紆余曲折があって同17年、MBO(マネジメント・バイアウト)によりリクルートグループから独立、翌年に現社名に商号変更した。
それでも苦境は続き、ついに同21年、事業再生ADR手続により社員739人のうち360人程度の希望退職を募ることになった。
この間、資産・子会社売却、社長交代、減資、継続企業の前提に関する疑義の発生などが毎年のように報じられた。バブル期には数万円だった株価は平成23年には120円まで下落した。そして同25年、大和ハウス工業グループに入った。
「何度も潰れそうになった。こんな会社は他にないでしょうね。一番ショックだったのは、平成2年から3年ころ、当時1,000人を超えていた社員が毎月のように大量に転籍・退社していき、一挙に500人くらいに減ったことでしたね」
しかし、記者はこの会社は潰れないという確信があった。なぜか。先に「頭脳」と書いたように、同社の商品企画力は業界に不可欠だと思っていたからだ。
皆さんは昭和60年に完成した12階建て「コスモ蕨」150戸をご存じか。分譲されたのは大量供給下のマンション不況という最悪の事態に陥っていた同58年ころだ。最大の特徴は7,900mm×7,650mm=60㎡、つまりほとんど正方形の間取りで、南面3室を確保し、廊下スペースをなくすことで60㎡でありながら居住性を高めた住戸プランだった。高層マンションではありえないプランに記者は驚愕した。〝この会社はものすごいことをする〟と。
同社のその頭脳はバブル崩壊によって大量に流失した。救いなのは、「卒業」(同社には退社をそう呼ぶ社風がある)した多くの方が他のデベロッパーや異業種で活躍されていることだ。同社は人材の宝庫でもある。
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同社の分譲マンションで特筆できるのは、2014年に分譲された創業40周年のフラッグシップ「イニシア武蔵新城ハウス」だ。
「武蔵新城は、当時の30歳代のメンバーが中心となって自社で設計した物件でした。わたしがスタッフに言ったのは〝売れるマンション〟ではなく、10年後、20年後につながるものを造ろうということでした。これほどの規模になると、2戸分を共用施設にあてたりしますが、本当にそれは必要か。外壁にタイルを張らなくても綺麗にできるではないか、その代わり中庭を充実させ、クランクインにして玄関周りに光と風を取り込む工夫をする、洋室に収納を設けなくても1カ所にまとめていいではないかなどと様々なアイディアが出ました」
この「武蔵新城」の企画は、2015年に立ち上げた新ブランド「INITIA CLOUD(イニシアクラウド)」に引き継がれることになる。スライドウォールを開閉することでさまざまな間取りやレイアウトが可能になるプランで、その後、他社がこぞって真似をすることになった。
「可動式の間仕切りシステムはすでにリーマン・ショック前後(2010年に分譲した「横濱鶴見」が実験的プロジェクトだった)から採用していましたが、クラウドでは全部しまっちゃおうと。そのような商品はそれまでなかったですね」
「この30年くらいで考えますと、昔は結婚して、子どもを産んで育てるという15年から20年の典型的なライフスタイルが顕在していました。ところが最近は単身世帯、アクティブシニアが増加する中で、専業主婦が減少しマーケットは劇的に変化しました。
いろいろシミュレーションすると、間取りをいくつか用意し、カラースキームの中で選びなさい、家はこういうふうに住みなさいといったものはデベロッパーサイドが生み出した幻想のマーケットではないかと。そこまでどこも青田売りしていませんから。
当社の提案しているホームデコレーションサービスは、ある程度決まった間取りとカラーで、お客さまサイドが暮らし方のボリューム調整でき、好みに応じてプロが施工するというものですが、これがヒットしましたね」
一昨年分譲の「INITIA CLOUD(イニシアクラウド)渋谷笹塚」も企画が光った。間仕切り・扉の位置や納まりを工夫することによって、住まい手が最大限自由に空間の広さや動線を設定できるように設計したマンションだ。
「グッドデザイン賞を受賞した『笹塚』は間取りが秀逸でしたね。審査員の方にも建築的アプローチとしても非常に意義深いという評価を頂いた」(南氏はこの「武蔵新城」「渋谷笹塚」「西新井」などについてかなり時間をさいて話したが、書き出すときりがないので省略する。詳細は別掲の記事参照)
「イニシア武蔵新城ハウス」
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分譲戸建ても最近は目を見張るものがある。1億円前後の高額を半年もかからずに売り切った全11戸の「グランフォーラム石神井公園」がその代表だ。「光が丘公園」や「練馬田柄」では天井高約3.8mの2階リビングを提案した。他社の吹き抜け空間と異なるのは、その空間に魂を込めていることだ。苦しいときも継続して分譲してきたことがいま開花している。
「マンションとの複合開発とかリビングインの階段とか先駆的なことをやってきましたが、無電柱化も以前からこだわってきました。10数戸の小規模でも、ミニ開発ではない、そこにしかない価値を創ろうと。2階リビングもダイナミックな展開ができていると思います。
今は、グロスは張るけれども駅近の戸建て用地の取得ができています。マンションの値段が上昇したために、場所にもよりますが、マンションより戸建てを買うという昔と逆の現象も見られるようになってきました」
「グランフォーラム練馬田柄」(緑はすべて本物)
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最近力を入れているのがアパートメントホテルだ。先に第1弾「MIMARU 東京 上野NORTH」を開業したのを皮切りに、2020年までに1,500室の開業を目指している。キッチンやリビング・ダイニングスペースを備えた4名以上の中長期宿泊にも対応するもので、1人当たりの宿泊料金を抑えるのが特徴だ。
「先進国ではごく普通にあるタイプです。わが国でも4~5人のグループが泊まれる需要は顕在化しています。東京圏と京都・大阪圏で一挙に増やします。量的にはこの領域ではメジャーになれると考えています。民泊などと差別化も図っていきます」
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南氏は、デベロッパーに入社しようと考えている学生や、業界の若い建築担当の社員に対して次のようなアドバイスをする。
「マンション事業などはいま企画しているものが完成するまで2~3年、再開発は5年、10年の時間がかかります。多様化しているマーケットはより広がっていきます。住宅分譲が拡大するかどうかは不透明ですが、何十年たっても色あせないその時代に合わせられる柔軟性に富んだ企画が求められています。
一方で既存住宅の再生が大きな課題になっています。当社のスタッフもただのリフォームでいいのか、壁にぶち当たっています。来期はこの課題解決にひた走るつもりです。売るのは最低限のスタートライン。数十年の先に繋げていくことがデベロッパーの仕事です。
われわれの建築・設計の仕事は、締め切りも予算の制約もあります。しかし、それでは潤沢の時間があればできるかといえばそうではない。わたしは30年くらいやってきましたが、これが完璧という仕事は未だない。それが原動力となり、次の仕事につながっていきます(同感。記者も40年間記事を書いてきたが、満足できる記事は1本もない)」
これからの仕事についても言及した。
「最近は、設計の事業部と組んで他社のマンションとかビル、ホテルなどの企画の仕事が増えています。物量的にはわたしの部署ではむしろ他社の仕事の割合のほうが高くなっています」
「そのうちアンチエイジング住宅、住みながら鍛えていくようなものが出てきます。バリアフリーもいいですが、マンションに階段を設ければカロリーの消費につながります。〝マンションは階段を使って帰ろうよ〟というような企画を会議に出すとみんなから無視されるんですが(笑)。たまには発散し、楽しいものが出てくるようにしないといけない」
南氏は振り返る。「以前、『リーマン・ショックでリストラもしているのにCOCOLABOを続ける意味はあるのか』という取材を受けたことがあります。社員も3分の2くらいが退社を余儀なくされた危機的な状況でした。それでも同業や銀行などから『御社を破綻させてはならない』と声を掛けていただいた。COCOLABOを継続してやってきたことの意味・回答をようやく少しずつですが、世の中に返せるようになってきました」
そして締めくくった。
「いま当社の社員は活気がみなぎっていますが、その生かされた意味が何だったのか、深く考え、がんばってほしい」と。
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南氏を取材することになったのは、昨年末、同社の取締役常務執行役員・渡邉典彦氏(東大卒。高校は静岡高校。静高は頭がいいだけでなく、野球が強いから始末が悪い。記者の出身、三重県勢は東海大会において最近ことごとく跳ね返させられる)や、RBA野球で活躍した同社の元社員TさんやFさんらと歓談したときだ。商品企画の話になり、「うちには知らない人はいない身長190センチ(実際は187センチ)の大男の南がいる」と紹介され、その場でインタビューを申し込んで実現した。
冒頭の写真を見ていただきたい。関係者は「美男子」とは言わなかったが、憎たらしいほど「フェイス」もいい。コーデュロイ(だったと思う)のスーツがぴったりだった。
同社には非常勤取締役・髙井基次氏(大和ハウス工業常務執行役員)がいるが、身長は南氏といい勝負だ。顔は言わずもがな(双方が俺のほうがいいと思っているはず)。
顔だけではない。〝大男総身に知恵が回りかね〟(記者は〝小男の総身の知恵も知れたもの〟だが)という諺があるが、南氏には全然当てはまらない。語りも実に穏やかで、一語一語にこれまで30年近くにわたって成し遂げ、背負ってきた仕事の重みがある。手垢にまみれた〝波乱万丈〟などという言葉は使いたくないのだが、ボキャブラリ不足の記者はこれしか浮かばない。
インタビューをしたのが2月上旬だった。こうして記事にまとめるまで1カ月が経過している。これほどまでに遅れたのは、読んですぐゴミ箱に捨てられる記事にしたくなかったのが最大の理由だ。時間がかかったのは、何度も書き直し、校閲もしたからだ。
同社の卓越した商品企画がどうして生まれるのか。南氏が語った言葉にヒントがある。400字原稿用紙にして13枚強。べらぼうに長いが、若い方に少しでも学んでいただきたいという気持ちを込めた。
コスモスイニシア 「武蔵新城」見学会 改めて企画の大事さ学ぶ(2015/7/27)
地主の意向を反映 古民家の緑を残す 月内完売したコスモスイニシア「松陰神社前」(2018/8/8)
コスモスイニシア「イニシア西新井」 都の「子育て支援住宅」で初のマンション認定(2016/11/9)
Wリビングの提案がいい コスモスイニシア「イニシアクラウド渋谷笹塚」(2016/10/24)
モデルルームの出来が出色 コスモスイニシア「イニシア草加高砂」(2016/4/5)
コスモスイニシア 新ブランド第一弾「イニシアクラウド二子玉川」公開(2015/8/25)
意匠・デザインが秀逸 コスモスイニシア「イニシア大井町」(2015/3/30)
敷地の難点を逆手に取る手法ヒット コスモスイニシア「ザ・ロアハウス杉並高井戸」(2014/4/18)
商品企画いい大和ハウス+コスモスイニシア「豊洲」(2013/4/25)
「自在の家」を見た コスモスイニシア「イニシア横濱鶴見」(2010/3/18)
価格に見合う価値あり コスモスイニシア「グランフォーラム石神井公園」(2016/12/3)
公園に近接 電線地中化、2階リビング天井高3.8m コスモスイニシア「光が丘公園」(2016/11/7)
パーク・コーポとコラボ 空間デザイン秀逸 コスモスイニシアの戸建て「練馬田柄」(2017/11/7)
〝骨太ニッチ〟アパートメントホテルで独走 コスモスイニシア第一弾「上野」開業(2018/2/2)
コスモスイニシア リノベ新シリーズ「INITIA ID」もなかなかいいデザイン(2017/1/17)
コスモスイニシア 仲介店舗の概念を変えるリノベーション特化型店舗 表参道に新設(2016/9/16)
三井不動産 台湾で2件目の直営ホテルに事業参画
三井不動産は3月7日、台湾で2件目となるホテル「(仮称)中山忠孝ホテル」に参画すると発表した。
台北駅から徒歩3分の地上18階、地下5階建て(ホテル部分は1階の一部と6~18階)、客室数約350室。金毓泰股份有限公司が開発する建物の一部を三井不動産グループが賃借、ホテルとして運営する。アッパーグレードの宿泊主体型ホテル。開業は2022年の予定。
同社グループの台湾での事業は、2016年1月に「三井アウトレットパーク 台湾林口」をオープンしたのをはじめ、2018年に2施設目の「(仮称)三井アウトレットパーク 台湾台中港」、2020年には台湾初のホテル事業「(仮称)忠孝新生ホテル」、2021年には「(仮称)三井ショッピングパーク ららぽーと台湾南港」がそれぞれ開業予定。
今後も2016年に設立した現地法人(台湾三井不動産 股份有限公司)を拠点として台湾各地で商業施設、ホテルのほか、住宅事業、物流施設、複合開発事業などの展開を目指している。
ホテル事業は、全国で23施設5,841室運営しており、今年6 月には「三井ガーデンホテル大手町」と「三井ガーデンホテル五反田」が開業予定で、今秋には「(仮称)三井ガーデンホテル日本橋プレミア」の開業も控えている。
長谷工ライブネット 賃貸マンション開発事業強化
「Live Casa本町計画」
長谷工ライブネットは3月7日、自社賃貸マンションブランド「Live Casa(ライブカーサ)」シリーズを本格展開し、自社開発事業を強化すると発表した。
2017年3月末までに10棟606戸の開発実績があり、今年3月には2棟が竣工予定で、さらに4棟の計画が進行中。計画中を含め18件850戸となる。
今後は、同社が拠点を有する東京・大阪・名古屋・福岡・仙台・札幌・広島を中心に年間4~6棟の自社開発事業を目標としている。
現在、大阪で建設中の「Live Casa本町計画」56戸は自社長期保有第1号マンションとなる。
日本の子どもには自立・自律の機会がないか 住宅新報のコラムを読んで
3月6日付「住宅新報」のコラム「子どもの自立と空間テーマに 旭化成ホームズがフォーラム開く」の記事に目が点になった。次のようにあった。
「欧米では▷個を認める▷子の責任を問う▷(子どもは)不満でも親に従う▷親子の信頼関係を築く▷(親が)子の心に寄り添う▷ひとり寝-を指摘。一方、日本では▷親子密着▷子の責任は問わない▷(子どもは)不満なら従わない▷親は子を見守る・世話をする▷子のプライバシーない▷川の字就寝-と分析。日本の子どもには自律(立の間違いか)の機会がないという」
講師の大阪市立大学名誉教授で、子どもと住文化研究センター理事長を務める北浦かほる氏の講演をまとめた記事だ。
記者は子育てに失敗した。語る資格はない。欧米の住文化もまったくしらない。しかし、記事だけを読むと、わが国の住文化が全否定されたような嫌な気分になった。
わが社の男女数人の社員に感想を聞いた。「文面からすると、子ども部屋を設けなさいと取れるが、子ども部屋と自立(または自律)は別問題」「これが日本の文化」という声があり、「このフォーラムって、一部屋多く売ろうとしているんじゃないですか」という女性の鋭い指摘もあった。一方では「アメリカでは小さいころからひとり寝をさせる」と、欧米の住文化を肯定的にとらえる者もいた。
記者は、子ども部屋の有無・大小と自立・自律は別問題だと考えている。先日も、半分冗談だが「子ども部屋は2畳大でいい」なんて書いた。記者などは小さいころ、子ども部屋なんか与えられなかった。
これは事実だ。囲炉裏で父親が書く漢字を書き順通り覚え、計算も学んだ。灰に字を書くのだから紙はいらない。寄合というものがあって、近所の人たちが集まって、稲の出来具合、政治の話から猥談まで、祖母の膝の上に座って経済、文化を学んだ。世の中は貧富の差が大きいことを知った。進駐軍がなにをしたかも聞いた。先日、京阪電鉄不動産の「小川」の記事でも書いたが、たき火は情報収集源だった。
いまはなくなったかもしれないが、6畳一間に住む家族が、父親が酔っぱらってか寝相が悪かったからか、太ももで赤ちゃんの子どもの鼻をふさいで死亡させるというような新聞記事も読んだことがある。
北浦氏が子ども部屋を設けなさいというのは結構だ。しかし、いまでも満足に子どもに部屋を確保できない貧しい人たちはたくさんいるはずだ。都内のファミリー賃貸は家賃が20万円以上するのではないか。
北浦氏の説に従えば、貧乏人の子どもはみんな自立・自律できない人間に育つということか。
記者はそうではないと思う。記者は田の字型のマンションプランをやめるべきとずっと昔から主張してきた。子ども部屋は小さくていいとも、夫婦の部屋を大きくすべきとも書いてきた。居住環境が人間の成長に大きな影響を与えるのは否定しないが、それが全てではない。環境に順応し、工夫をするのが人間だ。
子ども部屋の有無ではなく、社会(コミュニティ)や家族そのものが壊れてしまいそうないまの社会に問題がある。そちらのほうが深刻だ。北浦氏は「個」というが、記者は「孤」に置き換えて考えないといけないと思う。
プラン・デザイン秀逸 地所レジ、住友に勝てるか モリモト「ディアナコート用賀」
「ディアナコート用賀」完成予想図
モリモトが5月に一般分譲する「ディアナコート用賀」を見学した。用賀駅から徒歩1分で、敷地面積が約1,700㎡という規模のマンションは24年振りの供給という。デザイン監修はいつもの今井敦氏で、インテリアデザインは鬼倉めぐみ氏。坪単価500万円をはるかに突破しても売れると読んだ。
物件は、東急田園都市線用賀駅から徒歩1分、世田谷区用賀2丁目の第1種住居地域に位置する6階建て全52戸。専有面積は37.90~107.36㎡、価格は未定。竣工予定は平成31年2月下旬。設計・監理はIAO竹田設計。デザイン監修はアーキサイトメビウス。施工は森本組。
現地は、低中層のビルなどが建ち並ぶ2方道路の角地(敷地北側に一部私道あり)。
建物は、同社が得意とする中廊下方式のワイドスパンが特徴。南向きの住戸のスパンは65㎡でも9,800ミリあり、72㎡で11,200ミリ、80㎡で9,200ミリ、最上階の115㎡では15,950ミリ。外壁には一部織部を採用。
設備仕様は、イタリア・マラッツィ社の大判タイルと挽板フローリングが無料選択制になっている。
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今井氏のデザインはたくさん見ているが、これもまたいい。完成予想図を見ていただきたい。実に美しい。用賀駅東側のシンボルのとなるのは間違いない(道路を隔てた南側は雑居ビルなどが建ち並ぶが)。
そして、鬼倉氏のインテリアデザインだ。同氏がデザインを担当したマンションは「パークコート千代田富士見」「東京ミッドタウン・レジデンス」「ディアナコート本郷弓町」「ドゥ・トゥール」「パークコート赤坂檜町ザ タワー」があるが、今回も最高にいい。
玄関に入ったとたん、あのイタリア・マラッツィ社の大判タイルに魅入られる。タイルは廊下、リビング、収納、洗面、トイレなど全面(主寝室はカーペット)に張られており、うっとりしてしまうほどだ。担当者によると「女性の評価が特に高い」そうだ。
同氏のデザインにどうして惚れこむのか。その理由が分からないのだが、美醜を分かつ眼力がすこしは身についているからか。一度取材を申し込もうかしら。
これは美醜と関係ないのだが、校正について。記者は自分のミスは気が付かないのだが、他人の書いた文章のミス、誤字脱字を探すのに結構自信がある。誤字・脱字が〝わたしを見つけて〟と呼び掛けてくる感覚があるのだ。莫言の850ページもある「豊乳肥臀」(平凡社)では、20年間誰も気が付かなかった重大な日本語訳のミスを発見したし、最近ではある著名な作家(名前はいえない)の新刊本で10カ所以上の誤字脱字などのミスを指摘してやったこともある。
肝心なことを忘れていた。坪単価だ。モデルルームをみてすぐ、競合すると思われる住友不動産「シティタワー駒沢大学」と、三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス二子玉川 碧の杜」と比較した。双方とも坪500万円(住友の物件は当初450万円だったが、500万円くらいなっているはず)を突破しているが、モリモトの物件は同じ単価でも負けないと思う。
同社が高値追究するかどうかは分からない。北向きのコンパクトは当然500万円以下だから申し込みが殺到するかもしれない。「ディアナコート目黒」は今一つ読めないが、こちらは自信がある。
72㎡で11,200ミリのプラン
曰く言い難し 三条実美の邸宅跡地 価格はいくらか モリモト「ディアナコート目黒」(2018/3/2)
住友不動産 どんぴしゃり坪450万円 「シティタワー駒沢大学SC」各層から支持(2017/9/6)
「音がしない」「静か」 三菱地所レジ エリア最高値「二子玉川碧の杜」に高い評価(2017/10/13)
あっぱれ!モリモト 階数を2層分減らし天井高2.7m確保「本郷弓町」(2014/5/23)
江戸の「粋」と「エスプリ」を融合 「パークコート千代田富士見ザ タワー」(2012/11/8)
働き方改革に欠かせない裁量労働制 残念でならない一連の出来事
本日(3月4日)、「裁量労働制を全社的に違法に適用し、昨年末に厚生労働省東京労働局から特別指導を受けた不動産大手、野村不動産の50代の男性社員が過労自殺し、労災を認定されていたことがわかった。男性は裁量労働制を違法適用された社員の一人だった」(朝日新聞)などとメディアが一斉に報じた。
残念でならない。業界紙の記者として、ご本人のご冥福をお祈りしご遺族にお悔やみ申し上げます。
裁量労働制について政府与党は、今国会に提出する働き方改革関連法案に裁量労働制の拡大に関する部分を削除することを先に決めた。
きっかけとなったのは、厚生労働省の2013年度労働時間等総合実態調査で、一般労働者の「1カ月で最も長く働いた日の残業時間」と、裁量労働制で働く人の労働時間を比較して、裁量労働制で働く人のほうが労働時間は短いというデータを安倍総理に発言させたことだった。
これには記者も唖然とした。国のシンクタンクである官僚がこんな単純ミスを犯すはずはない。経団連の榊原定征会長も「ミスは非常に残念で、あってはならないことだ」(日経新聞)とコメントした。
ここで大きな疑問が一つ。そもそも労働時間等総合実態調査は、大学教授をはじめとする公益代表、労働者代表、使用者代表など20名以上が参加する労働政策審議会労働条件分科会に報告されているはずで、メディアの傍聴・資料配布もあったはずだ。どうして中学生や高校生だってわかる前提条件の違いを見逃したのか。審議会メンバーやメディアの責任も問われるべきだ。
それでも記者は、働き方改革に裁量労働制の拡大は欠かせないと思う。
記者の仕事でいえば、弊社は記者に対して〝さぼっていい〟とは言わないが、一切制約を求めない。「RBA野球の取材をすれば、あとは何を書いてもいい」というのが記者に与えられたミッションだ。
なので、これまで書いた記事に対して「ノー」と言われたことはほとんどない(読者のクレームで削除した記事はいくつかあるが)。どこに取材に行こうが問われない(取材源の秘匿は記者の生命線でもある。最近はそのような取材はやっていないが)。みなし労働が全面的に認められている。
労働時間はどうか。これも会社から強制されたことは一度もない。RBA野球の取材は炎天下で8時間くらい食事もとらず駆けずり回っている。こうしていま記事を書いているが、これは記者が自主的に判断して書いている。労働時間という認識はまったくない。子育てや家事に関する時間が「労働時間」に入らず、専業主婦に「労働」はなく「無職」なのと一緒だ。確か農業も労働時間規制外だ。子育て、家事、農家に労働時間制を採用したら、みんな8時間労働に違反になる。
その代わり、疲れたら休む。そうしないと商品としての労働力の再生産ができなくなり、結局は資本にも大打撃(与えないか)となるからだ。自己管理は自分なりにやっているつもりだ。会社からは「酒を控えたほうがいい」と言われるが、これも自己責任。酒を飲もうがタバコを吸おうが、これは基本的人権の問題だ。
住宅・不動産業界には、裁量労働制が認められる建築士、不動産鑑定士も多いし、商品企画担当、インテリアコーディネート、コンサルティングなどの「専門業務型」「企画業務型」労働も少なくない。宅建士、マンション管理士などは適用外だが、レベルの高い仕事をしている宅建士は多い。適用の対象となる時代がやってきてほしい。
「現行法制下での労働時間管理は、創造性と裁量性を有する労働者の能力を存分に発揮する環境を用意できず、生産性の高い働き方、さらには労働者のワーク・ライフ・バランスの実現を困難なものにしている」とする経団連の「労働者の活躍と企業の成長を促す労働法制」(2013年)を支持する。
制度を悪用する企業に問題がありそうだが、これは資本主義経済の宿命なのか。明大教授・飯田和人氏は著書「市場と資本の経済学」(ナカニシヤ出版)で次のように指摘する。
「終わりなき自己増殖(無限の余剰価値の追求と獲得)、生産のための生産、蓄積のための蓄積、そして運動それ自体の継続性の確保という、資本の論理…資本内部のヒトとヒトとの関係は、彼らによって、独特の支配-従属関係からなる賃労働-資本関係として組織化されることになる。彼らが資本内部の上下的な秩序関係からなる階層的組織の頂点に立ち、これを資本の論理にしたがって不断に締め上げ規律づけることで、資本内部の人的組織すなわち独特の支配-従属関係からなる賃労働-資本関係は成り立つ」「労働者に与えられる賃金が増えれば、資本の獲得すべき余剰価値が減り、逆の場合にはまた逆の結果になる関係」-資本と労働者は相反関係に置かれていると。
苦役を喜びに転化させることは不可能なのか。労働者側からこの問題に積極的にアプローチすべきではないか。
ヴィンテージマンションとは何か 三井不リアルティ「リアルプラン営業部」新設
「広尾ガーデンヒルズ」
三井不動産リアルティが4月1日付で組織改正すると発表した。流通業務本部、首都圏流通営業第一本部、首都圏流通営業第二本部、地域流通営業本部を再編し、リテール売買仲介事業を担う流通業務本部、首都圏流通営業第一本部、首都圏流通営業第二本部、地域流通営業本部を統合し「リテール事業本部」とする。
これに伴い、首都圏流通営業第一本部と首都圏流通営業第二本部の各営業部を「流通営業一部」「流通営業二部」「流通営業三部」「流通営業四部」「流通営業五部」「流通営業六部」「流通営業七部」「流通営業八部」「流通営業九部」に改称する。同時に、富裕層を中心に都心の不動産売買仲介に特化する組織として「リアルプラン営業部」を新設する。
また、事業用、投資用不動産市場におけるソリューションサービスの強化するため、各営業本部を統合し「ソリューション事業本部」とする。
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不動産流通のことはよく分からないのだが、意思決定が迅速に伝達され、なおかつきめ細かなサービスが提供されるための組織改編だろう。
記者が注目したのは「リアルプラン営業部」の新設だ。同社は他社に先駆け、1985年にリアルプランセンターを立ち上げた。その後、バブル崩壊を経験しながらも店舗数を増やしてきた。現在では都心の5店舗だが、一時は9店舗くらいあったはずだ。
富裕層向けビジネスは間違いなく拡大する。国内だけでなく海外富裕層の投資需要も見込める。もちろんリテール事業部との連携は必要だが、通常のアプローチではケタ違いの富裕層に対応できないと思う。時々刻々と変わる生きものとしての不動産の実相はプロしか伝えられないのではないか。
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さて、そこで「リアルプラン営業部」が取り扱ういわゆる「ヴィンテージマンション」について考えてみた。
まず、定義。そもそも「ヴィンテージ」は、ワインの年代物・名品に付される代名詞か冠詞のようなものだ。記者は日本酒や焼酎、泡盛、紹興酒、モンゴル酒の古酒は飲んだことがあるが、ワインやウィスキーはほとんど飲んだことがない。
日本酒の古酒は高級ワインのようにすっきりしているし、泡盛の古酒を飲んだら他の酒など飲めないくらい美味しい。しかし、経験したことがないものを中古マンションにたとえることなどできない。記者は億ション中の億ションと理解している。御三家をあげれば、三井不動産レジデンシャル「麻布霞町パークマンション」、三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス千鳥ヶ淵」(三井「千鳥ヶ淵」もいいが)が東西の横綱で、住友不動産、三井不動産、三菱地所、第一生命保険の「広尾ガーデンヒルズ」が名誉会長のような存在だ。「パークマンション檜町公園」はシートがかかった外観しか見ていないので評価のしようがない。
三井リアルがどう定義付けしているかわからないが、東京カンテイは2016年のリポートで、「少なくとも築10年以上(2015年12月時点)を経過していること。専ら住宅地(≒住居用途地域)に所在していること。物件の平均専有面積が100㎡前後であること(少なくとも90㎡以上であること)。物件から発生する中古流通事例の90%以上が坪300万円以上であること」とし、その数は237物件としている。
これには同意できるものも同意できないものもある。築年数は関係ないと思う。確かに時を経ても資産性が保たれているという意味では「築10年」は一応の説得力があるが、分譲開始の時点で将来にわたりその価値が維持されるであろうと思われる物件はある。
「専ら住宅地に所在」もどうか。確かにバブル発生前は〝億ション〟といえばほとんど100%近く住居系エリアに所在した。商業系や準工地域で億ションが分譲されるようになったのはバブルの最盛期のころからだ。今では、タワーマンションを含め商業系エリアのほうが多いくらいだ。
富裕層の選好基準も変化している。「専ら住宅地」に限定するのは適当ではない。三井レジの「赤坂」「青山」(これをヴィンテージと呼べばだが)は商業立地のタワーだ。
「物件の平均専有面積が100㎡前後」はまずまず同意できる。これを絶対条件とするには疑問もあるが、コンパクトマンションをヴィンテージと呼ぶには抵抗がある。
「坪300万円」も根拠が希薄だ。「広尾ガーデンヒルズ」だって坪3,000万円を突破したこともあるし、リーマン・ショック後は坪300万円まで下落したこともある。坪単価は重要な基準ではない。郊外エリア№1の物件も該当するようにすべきだと思う。
同社の定義で欠落しているのは、基本性能・設備仕様、住環境・居住性能だ。これらの価値は自ずと坪単価に反映されるが、定義として外すわけにはいかない。絶対条件だ。売主や施工会社のブランドも加えるべきだ。そうすればランク外になる物件は続出する。
ここまで書いてくると、「ヴィンテージマンション」なるものはあるようでないともいえる。前提条件が異なれば、結果は全く違ったものになるということの証左だ。
本物の億ションは、東京カンテイが示している237物件のうち半分は減り、一方で加えるべき物件も増えるのではないか。
そこで、不動産流通各社に提案だ。自社の基準を設け(設けているはずだ)、それこそランキングとして公表したらどうか。なによりも物件の特性、価値を知っているのは流通会社だからだ。それぞれ評価が異なったら面白い。ヴィンテージマンションを事業主に順位付けするのもいい。三井レジが3~4割を占めるのか。
野村不動産パートナーズ 新社長に野村不動産専務・福田明弘氏
福田氏
野村不動産ホールディングスは3月2日、グループ各社の人事異動を発表。野村不動産パートナーズの新しい社長に野村不動産取締役兼専務執行役員で野村不動産ホールディングス執行役員の福田明弘氏が就任し、代表取締役社長兼社長執行役員・黒川勇治氏は退任し、同社顧問に就任する。また、野村不動産アーバンネット取締役会長・宮島青史氏は退任する。いずれも4月1日付。
福田氏は1959年5月13日生(58歳)、東京都出身。1984年(昭和59年)3月慶應義塾大学経済学部卒業、同年4月野村不動産入社。住宅カンパニー戸建事業部長、執行役員、常務執行役員などを経て、2016年から現職。
曰く言い難し 三条実美の邸宅跡地 価格はいくらか モリモト「ディアナコート目黒」
「ディアナコート目黒」完成予想図
モリモトが4月に分譲する「ディアナコート目黒」を見学した。東京建物「目黒」とは反対側、駅から徒歩5分の落ち着いた雰囲気がある第1種中高層住居専用地域の一角。敷地は三条実美の邸宅跡地の一部。いったいいくらになるのか、普段は口が軽い(失礼、正確には自信たっぷり)同社関係者も口をつぐんでいる。
物件は、JR山手線目黒駅から徒歩5分、目黒区目黒1丁目に位置する敷地約2,392㎡の7階建て(建基法では地下2階地上5階建て)全89戸。専有面積は32.04~87.07㎡、価格は未定。竣工予定は2019年8月下旬。設計・監理はIAO竹田設計。デザイン監修はアーキサイトメビウス。施工は東亜建設工業。
敷地は南北軸が細長い長方形で、西下がりの傾斜地。敷地東側はホテルプリンセスガーデンに隣接。道路を隔てた南側には2000年の募集時に入居希望者が殺到した賃貸マンション「アクティ目黒」(234戸)が、北側には目黒合同庁舎がある。同社が取得したのはホテルの敷地の一部で元駐車場。
建物のデザイン監修は、同社の〝定番〟ともいえるアーキサイトメビウスの今井敦氏で、南側の正面は黒御影石とライムストーンの縦と横ラインを強調した端正な表情が特徴。
住戸は内廊下方式の西向きと東向き。西向きは間口7.7~11.3mのワイドスパンで、最上階は20.40m(194㎡)と18.25m(164㎡)。
専有部のインテリアデザインは、「ディアナコート浜田山」も担当した西山建築デザイン事務所・西山広朗氏。床は敢えて凹凸を出したタイルを採用。壁はオークの突板、リビングドアはオリーブウォールナット。玄関扉も木製。
◇ ◆ ◇
敷地が三条実美の邸宅跡地であることは、記事を書く段階で分かった。現地を見たときは、ホテルの真後ろ(西側)で敷地が真っ二つに切られていたので、ホテルが敷地の一部を売却したのだろうということは容易に想像がついた。
そのホテルの敷地は見事だったが、エントランスの案内表示は一部壊れており、廃業でもしたのかと思える風情だった。コーヒーでも飲もうかと入ったが、そのようなサービスはされていなかった。
ホテルとモリモトのマンション敷地を一体として再開発したら間違いなく坪1,000万円でも売れると思った。
どうして三条実美の邸宅跡地に〝プリンセス〟などの名がついているのか不思議に思い調べた。人様の記事を引用するわけにはいかないが、フジモリ大統領、亀井静香、ライベックスなどが登場する。曰く言い難し、そのものだ。
さて、肝心の坪単価だが、これが読めない。建物の正面には7階建てのマンションが建っており、全8スパンのうち3スパンくらいは影響を受けそうだ。これはマイナス材料だ。また、東向き住戸は日照が確保できないことなどを考慮すると平均単価は650万円がアッパーと見たがどうだろう。最上階は坪2,000万円でも安いかもしれないが、同社はそんな高値を追求しないのではないか。
高値で始まった年初の株価からそのまま都心部は突っ走ると予想したが、その後、株価が急落し、変調を来した。各社とも値付けに慎重になっているようだ。森本浩義社長も頭を悩ましているのではないか。
10.2mスパンで専有面積は74.52㎡
野村不動産 恵比寿の駅近再開発着工 マンションは88戸、ホテルはプリンス
完成予想図
野村不動産が2月22日、恵比寿の旧国家公務員宿舎跡地の再開発プロジェクトを着工した。
「2020年に開催される国際競技大会時等の観光客の増加に伴い不足する都市部の宿泊施設の整備」と「高齢者・子育て支援施設整備」という国の定める条件を満たして選定された事業。
物件は、JR恵比寿駅から徒歩5分、渋谷区恵比寿南3丁目に位置する敷地面積約4,035㎡、11階建て延床面積約16,078㎡。主要用途はマンション(88戸)、ホテル(82室)、介護施設(デイサービス)、保育施設。設計は日建ハウジングシステム、鴻池組。施工は鴻池組。マンションの入居開始は2020年3月下旬。
マンションは、駅近と高台立地を活かし、敷地面積の約21%を緑地とするほか、重厚感のあるファサードデザイン、オーダーメイド対応とする。併設するホテル、介護施設、保育施設とのサービス連携も行う。専有面積は約60~200㎡。
ホテルは、プリンスホテルの次世代型宿泊特化ホテルブランド「プリンススマートイン」として開業する。
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記事をアップするのが遅れたのは忙しかったこともあるが、どうしても単価予想をしたかったからだ。
いま、恵比寿駅圏では住友不動産が分譲中で坪単価は700万円。順調に売れているそうだ。三菱地所レジデンスも分譲を開始した。取材を申し込んでいる。坪単価は700万円を切っているようだ。モリモトがこれから目黒駅5分で分譲する。坪単価は600万円を下回らないと思う。パナホームが代官山で分譲するが、こちらは読めない。900万円はあるかどうか。取材を申し込む予定。
さて、これらと比較すれば、野村不動産のマンションは立地条件を考慮すれば坪単価800万円以下はあり得ないと思う。では900万円はどうかといえば自信がない。三井不動産レジデンシャルの青山を超えることはないと見たが、敢然と挑戦する可能性は否定できない。同社は代官山や六本木で味を占めた。