3階のコンセプトが最高 「東京ミッドタウン日比谷」 プレス内覧会に1,000人超
エントランスホール
「東京ミッドタウン日比谷」を3月29日にグランドオープンする三井不動産は、開業に先立つ22日、報道陣向けに施設内覧会を開催した。1,000人を超える報道陣が駆け付ける見込み。
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マンションの見学会にはこの10分の1も集まらないのに、どこからそんなに記者が湧いてくるのか不思議でしょうがない。商業ビルのことはよくわからない。ビルの美しさは竣工時の記者見学会でも紹介したので、そちらを参照していただきたい。
次の「東京ミッドタウン」はどこかについて探りを入れ、おおよその見当はついたが、「書かないで」という約束なので書かない。
6階エレベータホール(無垢材がふんだんに使用されている)
4~5階吹き抜け
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株式会社アルファのクリエイティブディレクター・南貴之氏がコーディネートした3階の7つの異なるショップで構成される「HIBIYA CENTRAL MARKET」のコンセプトが最高に素晴らしい。
そのうちの一つ、理容「ヒビヤ」の3代目の店主・藤井実氏(50)は、「昭和のレトロな店構えだけでなく、昭和の時代には普通にあった憲法25条の理念そのもの、国のありようの根幹をなす公衆衛生の向上・増進をここで実践する。昭和の安心・安全をリスペクトする」と話した。床屋で憲法が学べるなんて最高にうれしい。床屋が大嫌いで、髪が相当伸びている。29日まで待つか。床屋はここに決めた。
記者は憲法第25条に何が書かれているか知らなかった。いま紹介すると「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とある。
有隣堂の「AND COFFEE ROASTERS」がまたいい。237坪のフロアに書籍だけでなく、雑貨や日用品を販売する「Fresh Service」、居酒屋「一角」、イベントスペース「Tent gallery」もあり、全体が昭和のデザインで統一されている。京王線に住む記者が利用するのは沿線にたくさんある有隣堂だが、酒も飲めるのに仰天した。「ここで酒が飲めるんですか」と馬鹿な質問をしたら、同社専務取締役・松信健太郎氏は「死ぬほど飲める」(ただとは言わなかった)と語った。
藤井氏
理容「ヒビヤ」(昔は椅子の肘掛けの部分に灰皿が付いていた。さすがに禁煙とか)
有隣堂(看板はまさに昭和)
一角
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地下1階の「BOSTON OYSTER&CRAB」の前を通ったら、真正面に美味しそうなカキが並べられていた。カキが大好きな記者はまさにパブロフの犬、食べずにはいられない。メニューをみたらわが故郷三重が誇れる世界ブランドの的矢のカキがあるではないか。さっそく1個450円のカキを注文した。(本当は3個くらい注文したかったのだが、この日はタダだったので遠慮した)3個もついてきた。的矢のカキと豊前一粒カキ、兵庫の坂越カキだった。
みなさんは的矢のカキをご存じないかもしれないので少し説明すると、的矢のカキはそん所そこらのカキとはレベルが違う。一言で言えば芳紀まさに18歳、鬼も十八番茶も出花、垂れ乳(垂乳根ともいう)の乳母桜か。小粒で身がしまっておりとても甘い。この前、広島に取材に行って食べたカキとは値段は同じでも雲泥の差だ。ついでながら、他の2つも的矢と甲乙つけがたい味だった。みんな美味しいということだ。
1階の「LEXUS MEETS」には黒山の人だかりができていたが、車にうとい記者はまったく理解できず。赤い車は1,450万円ということだった。高いのか安いのか、カキと違い比較のしようがない。
※この点について、ある同業の記者から「(住宅と自動車は)経済波及効果はいい勝負なのに、どうして住宅ジャーナリストは数が少ないのか? これは我々の問題でもあり、ジャーナリズムを育んでこなかった住宅・不動産業界の問題でもありそうです」とメールを頂いた。近々、自己批判を含めて業界紙について書く予定。
「BOSTON OYSTER&CRAB」左から三重・桃こまち、三重・的矢、豊前一粒カキ、的矢、兵庫・坂越
「LEXUS MEETS」(赤い車は1,450万円とか)
日比谷の新しい顔 曲線美に震えた 三井不動産「東京ミッドタウン日比谷」竣工(2018/1/30)
東急リバブル 女性活躍推進法に基づく「えるぼし」最高ランク取得
東急リバブルは3月20日、「女性の職業 生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」に基づき、厚生労働大臣より「えるぼし」最高位の“三段階目”の認定を受けたと発表した。
「えるぼし」認定は、2016年4月1日に施行された女性活躍推進法により、一般事業主行動計画の策定と届出を行った企業のうち厚生労働省が示す基準を満たし、女性の活躍推進に関する状況が優良な企業に対して厚生労働大臣が認定する制度。
同社は、「採用」「継続就業」「労働時間等の働き方」「管理職比率」「多様なキャリアコース」の5つの評価項目すべてで最高評価の認定を取得した。
このほか、住宅・不動産業界ではヒューリックと東急コミュニティーが最高評価認定を受けている。
「暮らしを変える『コミュニティ』の条件」とは アキュラホーム シンポに300名
「暮らしを変える『コミュニティ』の条件」(すまい・るホールで)
京大名誉教授・京都美術工芸大学教授の髙田光雄氏を代表とする「これからの住宅地を考える会」が3月16日、シンポジウム「暮らしを変える『コミュニティ』の条件」を開いた。満席の約300名が参加した。関心の高さがうかがえた。
パネリスト・登壇者は髙田氏のほか、アルセッド建築研究所所長・三井所清典氏、市浦ハウジング&プラニング社長・川崎直宏氏、アーバンセクション代表・二瓶正史氏、横浜市立大学教授・齊藤広子氏。総合司会はアキュラホーム住生活研究所所長・伊藤圭子氏。住宅金融支援機構、都市住宅学会、JAHBnet、アキュラグループが後援した。
「考える会」は、コミュニティ形成が図られ、美しい景観と優れた住環境を維持することができる住宅地開発を促進させるため、住宅地における中間領域(コモン)の整備や管理組合設立、コミュニティ支援の取り組みなどを基礎・事例・実証研究をおこなう目的で設置された有志の会。
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「コミュニティ」は、東日本大震災以後のマンションや戸建て開発、さらにはマンション管理の最大のテーマになっている。記者もこの種のシンポや国交省の会合、マンション・戸建ての記者発表・見学会などに数えきれないほど参加している。数十回に上るはずだ。
それでも飽きることなく参加しているのは、「コミュニティ」とは何かがいま一つ理解できず、大テーマであるはずなのに、企画意図通りに成功した事例に出会えた機会が少ないからだ。その成功事例を見つけるのが記者のいまの取材テーマの一つだ。
一つだけ、その成功事例を紹介する。大震災より7年前も前に〝家族の絆〟をテーマにした2004年分譲の三井不動産レジデンシャル他「パークシティ東京ベイ新浦安」がそれだ。全701戸の専有面積が平均120㎡という圧倒的な広さがあり、様々な提案を行ったのがヒットし、9,000組の来場者を集めわずか3カ月で完売した。
時代が異なると言ってしまえばそれまでだが、いまは強烈な心を揺り動かすような商品企画のマンションや戸建てが少ない。かなり後退していると言わざるを得ない。
なぜか。どうも「コミュニティ」の概念が不明確で、みんな上滑りしていると思えてならない。そもそも「コミュニティ」(コモン)などと英語でしか語られないのが理解できない。コミュニティは海外から持ち込まれた概念だろうが、わが国にも少なくともエネルギー革命が起きた昭和40年までは〝ムラ社会〟〝絆〟は健在だった。「寄合」「講」「無尽」「隣組」などの言葉がそうだ。昔に戻れと言っているのではない。新しい〝ムラ社会〟を分かりやすい言葉で語ってほしい。
今回のシンポでも「コミュニティとは何か」についてはあまり論じられなかった。
パネリストについても感想を率直に述べる。髙田氏、三井所氏、齊藤氏はそれぞれ少なくとも数回は講演などを聴いているので、どのような話をされたかはおおよそ理解できた。
二瓶氏は宮脇檀建築研究室に17年間勤務されており、「高幡鹿島台」「柏ビレジ」「プレステージ21」「シーサイドももち」「季美の森」などを担当されたと聞き、なつかしさがこみ上げてきた。アキュラホーム「若葉台」のランドスケープなどについてアドバイスされているそうだ。
全体的には、今回に限ったことではないが、パワーポイントによる図式などが次々と目まぐるしく展開されるとめまいを起こす。1時間30分にわたり5氏が入れ代わり立ち代わり講演されたので疲れた。どのような状態だったかを紹介する。
-赤くてかわいらしい金魚の口元から、まるでヒバリの愛のさえずりのような美声が発せられると、真綿で耳朶をくすぐられ三半規管に異常を来し、がらくたで満たされた左脳が攪拌され、何を話されたのかさっぱり意味が分からず、右から左へ、左から右へと子守歌のように素通りしていった-(筒井康隆「現代語裏辞典」によると「パネラー」とは「声を出すパネル」とある)
まあ、こんな具合だ。いかに優れた高説であっても、速射砲のように投げかけられると記者のような凡人は消化不良を起こすということだ。
ちあきなおみさんの「四つのおねがい」も多い。せいぜい三つ、できれば一つにしていただければ頭の中にストンと収まるはずだ。大学3年生の女性参加者も「難しすぎて…」と感想をもらしていた。
左から伊藤氏、三井所氏、二瓶氏
左から齊藤氏、川崎氏、髙田氏
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記者は、同社が近く分譲開始する、京王線若葉台の分譲戸建て「ヒルサイドテラス若葉台」のランドスケープデザインやコミュニティ支援の取り組みなどについても言及されることを期待していた。
プロジェクトは、京王相模原線若葉台駅から徒歩17分、稲城市若葉台4丁目に位置する全51区画。土地面積は174.33~247.75㎡、建物面積は90.26~120.27㎡。建物は4月下旬に一部が完成する。売主はアキュラホーム。建物は木造軸組工法2階建て。施工は同社のほか、イトーピアホーム、細田工務店、小田急ハウジング。街の中央に幅員6メートルの曲線道路を通しているのが特徴の一つだ。
シンポジウムの主催は「これからの住宅を考える会」で、構成メンバーが大学教授、建築家などだし、後援に住宅金融支援機構も加わっているので、民間のこれから分譲されるプロジェクトについて触れるのはためらわれるかもしれないが、参加者のうち約8割は一般の方だった。この日、各氏が話したことがどれだけ盛り込まれているのか、あるいはまた実現できなかったこと、課題は何かなどについて意見を交わすのは問題がないはずで、一般の方にも参考になるはずだ。
まあ、しかし、この「若葉台」はいずれ記者見学会も行われるはずだからしっかり取材したい。もう20年も前か、この「若葉台」に近接する戸建ての第1期分譲にはお客さんが殺到し、細田の施工物件は確か数十倍(100倍くらいだったか)の申し込み倍率がついたはずだ。
全701戸が平均120㎡ テーマは「家族の絆」来場者9000組 3カ月で完売「パークシティ東京ベイ新浦安」
〝宮脇檀さんにまた会えた〟 積水ハウス「コモアしおつ」(2013/9/14)
東京都初の子育て支援認定マンション コスモスイニシア「西新井」竣工
「イニシア西新井」
コスモスイニシアは3月20日、新築分譲マンションとして初めて「東京都子育て支援住宅認定制度」の認定を受けた「イニシア西新井」(81戸)が竣工したのに伴う報道陣向け見学会を行った。
「東京都子育て支援住宅認定制度」は2016年2月から運用開始された制度で、子育てにふさわしい立地や、共用・専有部分に関する必須62項目のほか、全選択31項目のうち12項目に適合した優良な住宅を顕彰するもの。これまで認定された新築マンションは同社の物件のみで、同物件は74項目の基準をクリアしている。
「みんなで楽しく備える防災」を中心に据え、アウトドアは「Snow Peak(スノーピーク)」と、コミュニティ形成は「HITOTOWA INC.」とそれぞれコラボして様々な活動を展開していく。
2017年度の第11回キッズデザイン賞「子どもたちを産み育てやすいデザイン」部門で受賞している。
共用部の取り組みとしては、共用廊下の幅員1,200㎜以上、エレベーターの出入り口800㎜、共用廊下の手すり高1,100㎜、屋上の手すり高1,800㎜などの安全性に配慮。芝生敷きの屋上庭園「スカイテラス」、中庭「モミジパティオ」、遊歩道「トネリコウォーク」などコミュニティ創出の場を設置した。
専有部分では、壁の面取り、ドアや引き戸の指はさみ防止、ベビーカー置き場、トイレ・居室ドア把っ手の壁面までの後退、幅員750㎜のドアなどユニバーサルデザインに配慮している。
1階の「mu.su.bi.ホール(エントランスホール)」は、多彩な交流を生み出す共用空間として、ラウンジの壁面に設けた棚やベンチ下収納にはアウトドア用品を備え、キャンプやバーベキューなどの際に貸し出すほか、万一の防災備品としての役割も担う。
「トネリコウォーク」
「モミジパーク」
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このマンションについては、昨年2月の分譲開始時にモデルルームを見学して記事にもしているので、そちらを参照していただきたい。「都の高いハードルを乗り越えた極めてレベルが高いマンションであるのは間違いない。トイレドアの幅を750ミリ確保しているマンションはそうない」と書いた通りだ。
完成した建物は、遊歩道「トネリコウォーク」や「mu.su.bi.ホール(エントランスホール)」がとてもよくできていた。
西新井駅から徒歩9分、坪単価210万円のマンションが1年経過して約9割の進捗というのは健闘していると評価できると思うが、都に対しては注文がある。
認定制度に対するお客さんの反応について、販売担当者は「プラスアルファーとして、かなり高い評価を受けた」と語った。
確かにそうなのだろう。
しかし、認定制度の運用が始まって未だに認定物件はこの1物件しかないというのはどういうことか。ハードルが高すぎるような気がしないではないが、やはり〝認定のお墨付き〟だけではデベロッパーも敢えて挑戦しようとは考えないし、ユーザーもまた魅力に乏しいのではないか。〝お上のお墨付き〟に飛びつく消費者はいない。それだけの権威はない。
やはり、実利が得られるよう子育て購入者には固定資産税や都市計画税などの減免措置を行うべきだ。財政を圧迫するようなことはないはずだ。
認定を受ければ、総合設計制度などを活用して容積率の緩和を受けられるということだが、そもそも総合設計制度のハードルも高い。二つの高いハードルを越えるためにデベロッパーがどれほど苦労するかも考えてほしい。マンションの環境性能評価制度と同じようにランク付けし、ランクに応じて容積緩和を図るのが現実的ではないか。
チャイルドロック付きガスコンロ(左)と浴室の侵入防止ロック
玄関ドア
「mu.su.bi.ホール(エントランスホール)」
画竜点睛を欠く〝世界のトヨタ〟の豊田市営「樹木住宅」に樹木は3本のみ
「市営樹木住宅」
ナイスは3月19日、愛知県初のPPP(Public Private Partnership)方式による豊田市の「市営樹木住宅」が完成したのに伴う見学会を報道陣向けに行った。
物件は、名鉄豊田市駅から徒歩15分の高台に位置する敷地面積約8,032㎡、延床面積約2,826㎡の全11棟48戸。建物は木造軸組工法(パワービルド工法)で、専用面積40㎡の平屋建て3棟14戸、55㎡の2階建てメゾネット8棟34戸。4月1日から入居が始まる。
同社が提案した「市営樹木住宅」は、「森でつながる街~豊田市産材~スマートウェルネス住宅」がコンセプト。耐震等級3の耐震性を備えるなど基本性能を高め、市の中心部を流れる矢作川の流域材や愛知県産材のスギ約120立法メートルの木材を内装に使用し、地元の三州瓦を採用したプランが高く評価された。
また、コミュニティ形成を支援するため街の中心部に「樹木広場」を設置、多世代が交流できるような仕掛けも施している。
居室の壁に張られた愛知県産材のスギ
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片道約3時間、わざわざ取材した甲斐があった。画竜点睛を欠く-この言葉がぴったりの市営住宅だ。
素晴らしい出来だ。京都「建仁寺」の庭をほうふつとさせる簡素な佇まいが何とも言えない。美しい石庭そのものだ。敷地は建蔽率60%、容積率200%の地域だが、物件は建蔽率20%、容積率30%しか消化していない。敷地面積を単純に戸数で割ると1戸当たり50坪もある。家賃も2~3万円くらいだから、入居者にとってはありがたいはずだ。
ところが、敷地内に植えられている樹木は樹高にして1~2mくらいのシマトネリコの3本しかない。
敷地の法面などに芝生が植えられてはいるが、あとはコンクリート洗い出しと、防草シートが張られた砂利が敷地全体を覆っている。「樹木団地」に樹木がない、洒落にもならないではないか。仮に1戸100㎡として8,000㎡なら80戸の戸建てが建つ計算だ。ここに3本しか樹木が植えられていない-こんな住宅地は絶対ない。
この落差は何か。貧困な植栽計画はなぜか。工事を担当した同社の社員は「木と住まいを標榜する当社としては…下っ端のわたしには答えようがない」と言葉を濁した。
なので、この疑問をストレートに事業を管轄する同市都市整備部定住促進課課長・岡田茂克氏にぶつけた。岡田氏は次のように語った。
「この住宅は一団地認定を取得しており、その認定基準である緑化率3%を法面に芝生を張り巡らすことで6.2%まで高めている。(シンボルツリーが少なく、防草シートを埋め込んでいることについては)入居者の負担を軽くするために管理費を抑えるようにした」
完璧の答えが返ってきた。
いうまでもないことだが、豊田市は〝世界のトヨタ〟が本社を構える企業城下町だ。平成28年度の収入約1,954億円のうち約62%にあたる1,278億円が固定資産税、法人住民税、個人住民税などだ。もちろん財政力は愛知県トップで、全国でもトップクラスにある。市が作成したパンフレット「豊田で暮らそう」には、子育て・住民サービスなどが他と比べ充実していることが書かれている。
そんな全国の模範となるべき自治体の市営住宅の「樹木住宅」に樹木が3本しかないというのはどういうことか。隣接地には「樹木神社」があり、たくさんの巨木が植わっており、また、寺の竹林の借景が美しい。しかし、四囲に緑があるから、団地内はなくてもいいということにはならないはずだ。
専用の駐輪場がまた素晴らしい
隣接する「樹木神社」(奥に市営住宅が見える)と駐車場の奥の竹林の借景
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「市営樹木住宅」の狙いはもう一つある。岡田氏によると、同市は若年層の人口は流入するが、25~40歳の人口が流出傾向にあり、それを食い止めるため、市営住宅には10年間の定期借家制度を導入して「家族形成期支援住宅」20戸を盛り込んだ。家賃は年収条件にもよるが最低22,800円で、最高でも45,800円だ。
ところが、現段階で空きがある11戸のうち9戸がこの「家族形成期支援住宅」だ。岡田氏は「入居開始時に100%の入居率を目指したが、募集を開始したのが1月で、子育て世代には遅すぎたかもしれない。これから検証する」と話した。
〝世界のトヨタ〟がある豊田市でどうして25~40歳の人口が流出するのか。これまた不思議だ。地価が暴騰してトヨタの社員が住めなくなる-ということではないような気がする。
豊田市駅の線路沿いにある遊歩道の水路では、産卵のためか大きなおなかをした鯉が横になっていた。隣は雄の鯉か。老いらくの鯉は成就したのか
〝楽しかった そだねー〟 ポラス+大妻女子大ら「オランジェの春の運動会」に160名
「オランジェの春の運動会」
ポラスグループの中央住宅は3月17日、NPO法人越谷市住まい・まちづくりセンター、同集住グリーンネットワーク、大妻女子大学環境教育学研究室(甲野毅准教授ゼミ)と連携して松戸市新松戸で「オランジェの春の運動会」を開催。49世帯約160名が参加した。参加者は「楽しかった」と口々に感想を語った。
「オランジェ新松戸」は、松戸市の小学校、中学校跡地の有効活用事業として公募型プロポーザルで選定された街で、「小学校跡地」は若い世代を呼び込む街として38戸が、「中学校跡地」は永住をテーマにした街として61戸の合計99戸がそれぞれ2016年に分譲された。入居後も街のコミュニティを育むためにワークショップをそれぞれの分譲地で開催してきたが、NPOや同研究室の提案を受け、双方のコミュニティを醸成するのに運動会がもっともふさわしいとして実施するもの。
この日は、「中学校跡地」の松戸市民交流会館グラウンドに集まり、ラジオ体操から父母も参加するクイズや玉入れ、綱引き、お父さんリレーなどを行った。
「オランジェ新松戸」は分譲時に取材している。その記事を参照していただきたい。ランドスケープデザインが優れ、戸建てプランもよくできており、無垢材をふんだんに用いた内装が際立っていた。
あれから3年。東京でサクラの開花が宣言されたとはいえ、まだ肌寒いこの日に全99世帯のうち半数に達する49世帯が参加するなど信じられない多さだった。
関係者の努力に頭が下がるが、それぞれの居住者が自主的に運動会を選択したことに価値があると思う。秋にも景観木の剪定を兼ねたイベントを行う予定だという。
甲野ゼミは同社の蔵を生かした越谷市の街づくりに関わった縁から今回の企画に参画。甲野氏は「地域環境、社会環境を学び持続可能な社会を実現するための企て、問題提起をするのが目的」と話した。
参加したゼミ生は3年生の12名。「初めて経験したので最初は戸惑いもあったが、とても楽しかった」「私の住むマンションにはこのような活動はない」「こういう街なら住んでもいいかも」などと話した。
(皆さんは役者だ。進行役の方は「初めて」だったようだが、ラジオ体操では片手にマイクを握り、「あれ、次何だっけ」と間違って見せ、綱引きでは1歳の子どもを抱えた女性も加わるほどの盛り上がりを演出した。どこかで聞いたような声だと思ったら、あの北海道北見市のカーリング女子そのものだった。「みなさんは北見市出身」と聞いたら「多くは埼玉県」だそうで、図に乗って「そだねー」を連発していた。座学では絶対学べない多くのものを学んだのは間違いない)
同大学はてっきりわが多摩ニュータウンにあるものだと思っていたが、マンションの坪単価が700万円を突破する千代田区三番町の一等地に千代田キャンパスがあることをすっかり忘れていた。甲野ゼミも千代田キャンパスにある。
ラジオ体操
玉入れ
綱引き
甲野ゼミの皆さん(前列右端が甲野氏)
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記事の本旨は「オランジェ春の運動会」だが、以下の坂川放水路の土手に咲いていた雑草の名前もぜひ覚えていただきたい。
左は、書くのもはばかられる「オオイヌノフグリ」、右は記者も知らなかった「ハキダメギク」だそうだ。
オオイヌノフグリは、この時期、どの雑草より早く芽を出し春を告げ。花はマメ粒しかなく、花芯は白く外周に向かって淡いコバルトブルーの色に変わる。1日でしぼむ、実に可憐な花だ。
なのにどうしてこんな可哀そうな名前が付けられたのか。種子が犬の〇〇〇に似ているからだそうだが、まあ、言われてみるとそうかもしれない。
ハキダメギクは、最初見たときヨモギだと思った。わが多摩センターのヨモギとはやや姿かたちが異なっていたが、松戸の固有種だろうと勝手に解釈して、茎を摘んで参加者に教えてやった。「俺はこれでヨモギ餅を作ったんだ」と。
ところが、ポラスの広報マンが「これはヨモギじゃない。タンポポの種類だ」と異議を唱えた。
たまには正鵠を得る鋭い指摘をするこの広報マンの指摘に記者の自信が崩れた。噛んでみた。確かにあの独特の香味はなかった。そこで、いかにも田舎育ちと思える近くにいたおじさんに聞いた。「そう、これはヨモギと仲間のキク科。ハキダメギク。食べられる? 食べないほうがいい」「えっ」すぐ吐き出した。
それから数時間。いま、腹痛も神経マヒも起こっていないので、無害なのだろう。トリカブトの仲間でないのは間違いない。
ネットで調べた。「植物学者の牧野富太郎氏が、世田谷の経堂の掃きだめでこの花を見つけ、『掃きだめ菊』と名づけた。チッ素分の多いごみ捨て場や、空き地、道ばたなどに生える」とあった。チッ素と言えば水俣病だ。「食べないほうがいい」といったおじさんは造園が本職のNPO関係者だった。年齢は70歳。さすがだ。名前を聞いたが、教えてくれなかった。残念。
傍にいた美しい女性は奥さんで、「雑草には詳しくない」と言いながら「ルリカラクサのよう」とのたもうた。これもネットで調べた。奥さんが言ったのは「オオイヌノフグリ」の別名で、はしたない言葉を口にしたくなかったのだろう。「ルリ」は「瑠璃」に違いない。
松戸の子どもたちよ、街に出よう。野原には記者のような感性豊かな人間に育ててくれる自然がある。毎日新しい発見がある。
そして考えてほしい。どうしてあの可憐な花に「〇〇〇」などと汚らわしい名前を付けたのか、牧野富太郎ともあろうものがハキダメギクなどと可哀そうな名前を付けたのか-記者は「〇〇〇」を見るにつけ、人間の想像力、表現力の貧しさを思い知らされる。
よく見ると、ハキダメギクは確かに若葉にしては乙女のような恥じらいも溌溂さもない、くすんだ色をしている。これも考えてみれば、犬の〇〇〇と共生し、なおかつ牛馬に食いちぎられないようまずそうな色形になる自己防衛策かもしれない。
オオイヌノフグリ(左)とハキダメギク
大和ハウス 三井レジと組んで湾岸戦争〝回避〟 「プレミスト有明ガーデン」
「プレミスト有明ガーデン」
大和ハウス工業は3月16日、臨海副都心の都市型住宅ゾーンとして計画されている有明北地区に位置するマンション「プレミスト有明ガーデン」の報道陣向け内覧会を行い、モデルルームを3月17日にオープンすると発表した。
物件は、東京臨海新交通臨海線(ゆりかもめ)有明テニスの森駅から徒歩2分、江東区有明一丁目に位置する15階建て全258戸。専有面積は55.90~82.60㎡、予定最多価格帯は6,500万円台~7,500万円台、坪単価は320~330万円台。竣工予定は2020年3月下旬。設計・施工・監理は長谷工コーポレーション。販売代理は三井不動産レジデンシャル。分譲開始は6月中旬。
現地は、東京都の「有明アリーナ」を核とした「有明レガシーエリア」として位置づけられているエリアの一角で、住友不動産が建設を進めているマンション1,539戸の「シティタワーズ東京ベイ」をはじめ都内最大級の約10.7haの商業・住宅複合開発プロジェクトに近接。
ほぼ四角形の敷地面積約6,213㎡に板状型の建物をV字形に配し、文節設計とすることで趣を持たせ、敷地南側と中庭に設けた大きな庭をコミュニティ共用施設でつなぐ設計にしているのが特徴。V字形建物の結節点に壁面緑化を施し、3層ごとにオープンスペースを設けている。
デザイン監修に光井純氏を起用し、世界で活躍するデンマークの著名なクリエーターを起用し、デンマークのライフ スタイル「Hygge(ヒュッゲ)」の考え方を取り入れた心地良いつ ながりを生む、空間やインテリアを提案している。
内覧会で同社東京本店マンション事業部第二事業部事業部長・永井壮氏は「湾岸エリアにはタワーマンションが多く、非日常をテーマとしたスペックありきの物件が多いが、板状型として『コト』をテーマにして新しいライフスタイル、暮らし方を提案する」と話した。
「つなぐラウンジ」
アクティブガーデン(左)とリラックスガーデン
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内覧会が終わる直前まで、見出しは〝大和ハウスと三井不動産レジデンシャルがダッグを組んで住友不動産に挑戦状 湾岸戦争激化〟にしようと考えていた。販売代理は長谷工グループの長谷工アーベストではなく、湾岸で住友と競合している三井であることや、三井のマンションを多数手がけている光井純氏を起用していること、ひょっとしたら坪単価は350万円くらいになるのではないかという情報が耳に入ったからだ。(光井氏の起用実績は大和ハウスもあるが)
単価が350万円になったら、好戦的姿勢を強める一方の世界情勢にふさわしいお互いがっぷり四つの激戦になるのは必至で、傍観者としての記者にとっては願ってもいない消耗戦に発展すると読んだ。
しかし、〝湾岸戦争〟などと手垢にまみれた陳腐化した見出しをまたつけていいのか、お前はどっちの味方だ、軽挙妄動を慎めとささやくもう一方のわたしがいた。
核か(どうしてパソコンは勝手に「核」に変換するのか。先に「湾岸戦争)などと書いたためか)書かないか、踏ん切りがつかないまま帰ろうとしたとき、「戦争ではない。むしろ『回避』。差別化を図り独自性を発揮する」と、同社の長川勇気氏がつぶやいた。名刺をもう一度確認した。確かに「勇気」と書かれていた。
この「勇気」に迷いは消えた。見出しは「大和ハウスと三井不動産レジデンシャルがダッグを組んで湾岸戦争回避〟に決めた。
坪単価は住友を上回らないことを確認できた。価格を抑え、タワーマンションを嫌う需要層に訴え、家族のゆったりした生活に価値を認めるデンマークの〝Hygge(ヒュッゲ)〟というワードに思いを込めたマンションだと理解した。
販売事務所やモデルルームのつくりもよくできている。ナチュラルな無垢材を思わせる面材・建具を多用しているのは支持を得られるはずだ。観葉植物に本物を使用しているのもいい。ただ、販売事務所のフェイクは本物にしてほしかった。積水ハウスの「品川シーサイド」を見ていただきたい。
モデルルーム 玄関正面の緑はドライフラワー
販売事務所 デンマークのデザイナーがコーディネート
一部はフェイク
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〝Hygge(ヒュッゲ)〟をはじめとする北欧のデザインが流行している。ここ数カ月でもタカラレーベン、三井ホーム、三菱地所ホーム、ポラス、大和ハウス工業などのマンションや戸建てで見学している。
これに異論はない。しかし、こうも各社が採用しだすとやや食傷気味だ。いっそのこと8,000万部以上を売り上げたスウェーデンを舞台にした小説「ミレニアム」にあやかり、同社のマンションブランド「プレミスト」、さらには「ミレニアル」「プレミアム」なども加えて気の利いた造語はないのか。
ゲストルーム
好スタート 第1期は330戸 住友不「シティタワーズ東京ベイ」 プラン秀(2017/8/17)
呉越同舟効果 「5本の樹計画」の本領発揮 積水「品川シーサイド」1期207戸!(2017/3/24)
さすが三菱 神戸の歴史的建物保存・復元「神戸タワー」 過去最高峰の坪単価266万円
「ザ・ パークハウス 神戸タワー」
三菱地所レジデンスは3月15日、JR西日本不動産開発、三菱倉庫、安田不動産とともに開発を進めている兵庫県神戸市中央区の「景観形成重要建築物等」に指定されている「旧ファミリアホール」の一部を保存・復元する制振タワーマンション「ザ・ パークハウス 神戸タワー」のプロジェクト発表会・モデルルーム内覧会を行った。
物件は、JR東海道本線神戸駅から徒歩5分、神戸市中央区相生町1丁目に位置する33階建て全352戸。専有面積は42.29~155.03㎡、予定価格は2,800万円台~2億4,800万円台、坪単価は266万円。施工は大林組。竣工予定は2019年11月下旬。
従前の建物は、1900年(明治33年)に完成したジョサイア・コンドルの指導のもと、建築家の曽禰達蔵が設計した「三菱合資会社神戸支店」で、その後、地元の呉服店・ファミリアホールとして利用されてきた。市の都市景観条例に基づく「景観形成重要建築物等」に指定され、神戸の街並みのシンボルとして親しまれてきたことから、今回の建て替えに当たって基壇部の一部を保存・復元することにしたもの。
保存・復元するのは高さ15m(一般的なマンションの5階相当)で、5,327点に及ぶ部材を保管し、 新築時に組み直す「生け捕り」という手法を採用して、外観のほか、旧三菱銀行時代の金庫扉や半円アーチをエントランスホールなどにも用い、クラシカルな空間を再現する。総合設計制度の適用を受けているが、市の条例では容積緩和を受けていない。
同社執行役員関西支店長・加治屋倫浩氏は神戸市のマンション市況とプロジェクトについて、「職住近接、利便性、資産性を重視する傾向が高まっており、市場は堅調に推移している。当プロジェクトは、市の条例では保存・復元を義務付けているわけではないが、東洋のウォール街と呼ばれ、銀行や鈴木商店などの企業が集積していた当地の歴史的な価値だけでなく、市民のシンボルとして100年以上愛されてきた建物を継承したいということから一部を保存・復元することにした」と語った。
昨年6月に物件ホームページを開設し、これまで約2,700件の問い合わせがあり、今年1月からのモデルルーム事前案内会には約500組の来場がある。分譲開始は4月上旬。
加治屋氏
基壇部(完成予想図)
◇ ◆ ◇
わざわざ神戸まで取材に行った価値があった。さすが三菱地所だ。この種のマンションは、大和ハウス工業「D’グラフォート横浜Cruising Tower」、オリックス不動産「グランサンクタス淀屋橋」があるが、5,327点にも及ぶ部材を手作業で保存し、洗浄したり修復したりして再現する「生け捕り」手法は珍しいと聞いた。いったいこの「価値」はいくらか。これは後述するとして、記者発表会に記者は感動した。
冒頭、販売を担当する関西出身らしい三菱地所レジデンス関西支店販売第三グループ リーダー・花房豪氏は「坪単価266万円」と明かした。
メディアが質問をしないのに単価を明らかにする東京のデベロッパーは総合地所以外ない。聞いてもうやむやに答える。お客さんの反応をうかがいながら値を上げたり下げたりするためだ。
地元メディアの方は「坪266万円」の意味が分かったはずだが、記者はなにしろ神戸駅に降りるのは初めて。右も左もわからない。神戸牛と神戸大くらいは知っているが、前川清「そして神戸」と渡辺真知子「ハーバーランド」しかイメージにない。(「あのカモメが飛んだはハーバーライト、彼女は横浜出身」と、家に帰ってからかみさんに言われた)
そこで聞いた。「わたしは266万円といわれても、神戸の市況が全く分かりません。高いのか安いのか」と。
この質問に答えたのが同社執行役員関西支店長・加治屋倫浩氏だった。「大阪の中心部は坪300万円を超えており、坪400万円を突破するところがここ1年以内に出てくる。兵庫県では芦屋は坪400万円を突破するが、中央区は震災の影響もあり(再開発などが)遅れている。坪266万円は過去最高」と。
簡にして要を得る-これほど分かりやすい説明はない。単価を聞かない記者も問題だが(聞いてもその価値が理解できない記者も多いが)、デベロッパーは進んで単価を公表すべきだ。スーパーがダイコンを「価格未定」と表示したら、翌日からお客さんは一人も来ないはずだ。
単価と設備仕様については首都圏と比較しても意味がないので、あまり書かないが、物件を見学する前までは「坪300万円もあるかも」と考えていた。
住友不動産などが神戸港開港150年プロジェクトとして、敷地面積約34,000㎡の「新港突堤西地区再開発事業」を行うことになっており、27階建ての約350戸のツインタワー2棟700戸を建設することを聞いていたからだ。着工はこれからで、同社は具体的なことは何も話していないが、記者は坪単価300万円を突破すると読んだ。
なので、三菱もあるいはと考えたのだが、建設地は三方を高さ20mくらいの建物に囲まれているので、昨年末見た東急不動産「心斎橋」と同じ260万円くらいではないかとはじいた。当たらずとも遠からずだ。
全体の設備仕様は高いと思う。2重床・2重天井は神戸ではよく採用されるそうだ。155㎡のモデルルームは2億4,800万円台になりそうで、これは東京のどこの億ションと比較してもそん色ない。
解体作業
金庫扉
石造りの半円アーチ
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ジョサイア・コンドルが建設に関わっていると聞いてびっくりした。同社関西支店計画第二グーループリーダー・高橋隆治氏によると、コンドルは建物を設計した曽禰達蔵の師匠で、コンドルは建設時に工事現場で曽禰にアドバイスし、しばらく神戸に逗留したそうだ。
コンドル彼が設計し、現存している建築物は、御茶ノ水のニコライ堂と三田綱町の三井倶楽部くらいだ。現在、コンドルが居住した六本木の敷地が東急不動産ほかの億ションとして建設されている。
それにしても5,000点を超える石などを保存し・復元するという大変な作業を行うものだ。いくらかかるか聞いたが、当然答えは返ってこなかった。この価値はものすごく高いと思う。
石は江戸城にも使用されているという山口県の黒髪島で採石された花崗岩だ。販売事務所に見本が置かれているのを触った。
蛇足。「ファミリア」は神戸の老舗呉服屋で、かつて三井不動産が第一次取得者層向けに分譲していた「パーク・ファミリア」とは全然関係ないそうだ。
現場
93㎡の5LDKはいい 坪単価は160万円台 三菱地所レジ「津田沼前原」
「ザ・パークハウス 津田沼前原ガーデン」完成予想図
三菱地所レジデンスが4月上旬に分譲する「ザ・パークハウス 津田沼前原ガーデン」のモデルルームを見学した。UR都市機構の「前原団地」のマンション建て替え事業5物件の中で最大規模プロジェクトで、「ザ・パークハウス」初の5LDKを盛り込むなど多世代・多様なニーズに対応しているのが特徴。坪単価は160万円台になる模様だ。
物件は、JR総武本線津田沼駅からバス7分・バス停下車徒歩2分、または新京成電鉄前原駅から徒歩7分、船橋市前原西6丁目に位置する6階建てA街区(105戸)と8階建てB街区(73戸)の合計178戸。専有面積は66.28~105.00㎡、予定価格は2,800万円台~6,200万円台(最多価格帯3,700万円台)、坪単価は160万円台になる模様。竣工予定は2019年2月中旬。施工は不二建設。
現地は、UR都市機構の「前原団地」の一角で、建て替えマンション事業として建設されるもの。過去、フージャースコーポレーション「デュオヒルズ津田沼」(132戸)、三井不動産レジデンシャル「パークホームズ津田沼前原の丘」(115戸)、近鉄不動産「ローレルコート津田沼」(70戸)、三菱地所レジデンス「MUJI VILLAGE パークハウス 木々 津田沼前原」(152戸)の4件のマンションが2010年までに建設されている。
今回の物件は、ゲストルーム付きの別棟の3階建て共用棟「ブルームヒルズ」を整備。平均専有面積約76㎡で、「近居」「同居」などのニーズに応えるため「ザ・パークハウス」としては初の約93㎡の5LDKタイプ(4戸)を盛り込んでいるのが特徴。このほか「トランクルーム」を全戸に設置したほか、「専用駐車場」「横入り玄関」「大型ポーチ」など多彩なプランを用意している。
2016年度の「いきもの共生事業所認証(ABINC認証)」を取得している。
「ブルームヒルズ」
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現地は見ていないが、6年前に野村不動産が4,000万円台の後半から5,000万円台の後半の全61戸を3カ月で完売した戸建て「プラウドシーズン津田沼前原」を取材しているのでおおよその場所は分かる。
これまでマンションは4物件469戸が供給されており、どこまで需要が蓄積されているか、枯渇していないか心配な面もあるので、高値追究はないと読んだ。
それでも建築費の高止まりで、坪単価160万円以下はないと思った。170万円くらいだと予想したが、外れた。何と160万円台という(記者は最低160万円台半ばだと思う)。
設備仕様レベルは、他の沿線の郊外型とほぼ同じだろう。同社が標準装備としてきた浴室の上下可動式2フック付きスライドバーもついていなかった。(皆さんはどうでもいいことと考えるかもしれないが、これはスグレモノ。夫婦、子どもと一緒でも別でも、スライドバーが1つできつく固定されていると濡れた手だとなかなか調整できない)
さて、93㎡の5LDK。ナイスが70㎡台の4LDKを採用してヒットした。子ども部屋など個室を確保したいというニーズは間違いなくある。親子同居のニーズもある。
今回は93㎡でそれを実現したことに意味がある。キッチンは3.1畳大とやや狭いが、主寝室は7畳大確保されており、洗面は2ボウル、浴室は1620で、各洋室は5.0~5.7畳大で同じ広さだ。兄弟姉妹喧嘩をしない工夫か(トイレは1カ所しかないが大丈夫か)。
記者の個人的見解だが、子ども部屋は5畳大もいらない。3畳大くらいでいいのでは。そうすれば専有面積を圧縮できるし、圧縮しない場合はその他の用途に充てられる。
子ども部屋の大小が成長にどのような影響を与えるか与えないか-大小は関係ないと思う。育て方だし、夫婦、親子関係をどう築くかが大事なはずだ。間取りの可変性はとてもいいことだと思う。
野村不動産「プラウドシーズン津田沼前原」 全61戸が3カ月で完売へ(2012/7/24)
用地取得から10年 アンビシャスが満を持す「南柏」 南面に42万㎡の麗澤大学の森
「アンビシャス南柏」
アンビシャスが分譲を開始した「アンビシャス南柏」を見学した。リーマン・ショックの直前に用地を取得した物件で、紆余曲折を経て、難局を乗り切って満を持して分譲するものだ。建物は2月末に完成した。
物件は、JR常磐線・東京メトロ千代田線南柏駅から徒歩15分、流山市向小金四丁目に位置する6階建て全58戸。専有面積は66.17~88.94㎡、第1期(28戸)の価格は4,180万~4.860万円、坪単価は195万円。設計はアクシス環境デザイン。監理はアートプランニング。施工は住協建設。建物は平成30年2月末に完成済み。
現地は、麗澤大学の約42万㎡の森に隣接している住宅地の一角で、戸建て住宅街とは比高差にして約4m高いヒルトップ。
建物は東西に長いコの字型で、南面は麗澤大学の森、西側は小学校、東側は道路を挟んで小公園と麗澤大学の学生寮などに隣接。東側のエリアは同社のマンションが建築確認を取得したあと、条例により高さ12m規制が施行されている。
住戸プランは、間口6.4~6.6mの70㎡台のファミリー型が中心で、両面バルコニー、ワイドスパン、多面採光、専用庭付き、ビューバス、ベイウィンドウ、出窓付きなど多彩な25プラン。
基本性能・設備仕様では二重床・二重天井、リビング天井高2,500ミリ、天然大理石玄関床など。
販売を担当する同社営業第一部第三課課長・鈴木好美氏は「これから本格的に販売する。目標は半年で完売」と話した。
麗澤大学の森(左)と浴室から写した森
リビングダイニング
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この物件は、リーマン・ショックのすぐあと、同社関係者から存在を知らされた。商品化は難しいだろうと思っていた。何と10年後のいま分譲されるとは夢にも思わなかった。
現地のモデルルームを見学して、同社の商品企画は健在であることを確認した。ベイウィンドウ、出窓付きは建築費の高騰でほとんど姿を消したが、同社が得意とするものだった。窓などの開口・採光部が6~9カ所ある住戸は17戸、ビューバス付は9戸ある。
感心したのは、敷地南側の奥行約20m×幅約60mが空き地になっていることで、麗澤大学に依頼して実現したのだという。樹木が植わっていたら少なくとも4階あたりまではまず日照を確保することが難しかったはずだ。
坪単価について。195万円が高いか安いか、これは市場が判断することだからあまり書かないが、いま読んでいる小説、箒木蓬生著「悲素」(新潮文庫)には「法医学では、異常値だと騒いだところで、何と比較して異常な値なのか明確にしない限り、相手にされない」とある。
なので、少し書くと、少なくともいま首都圏郊外で分譲されている一次取得層向けマンションよりはるかにプランが優れており、住宅地から4m以上の高台立地、東側は高さ12m規制、南側は約42万㎡の麗澤大の森-この価値を考慮すれば決して高くないと思う。
グロスが張るので販売は容易ではないかもしれないが、こうした商品企画で勝負する以外、中堅デベロッパーの生き残る道はないと断言できる。
室内からの眺め
マンションの敷地南側(写真左側)は空き地になっている
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同社の安倍徹夫社長とは、記者が駆け出しのころ、安倍氏が大京(当時大京観光)の東京支店長を務めていた時だから40年近くのお付き合いになる。書きたいことは個人的なことを含めて山ほどあるのだが、記者が大好きな獺祭と生ガキとアメーラ、刺身などを前に「個人的なことは書かない」と約束させられたので書かない。ついでだが、酒を飲む前に「絶対二日酔いしない」ともらった薬を飲んだが、これは全く効果がなかった。
一つ二つ、これは個人的なことではないので紹介する。リーマン・ショックで多くのデベロッパーが破綻したことは周知の通りだが、同社が生き残ってきたのは、「弊社の営業哲学を理解して購入していただいたお客様、弊社を応援していただいた取引先、そして汗を流し懸命に働いてきた弊社幹部と社員のお蔭」と安倍氏は話すが、記者は安倍社長のパッションが取引先など関係者の心に響いたのだろうと思う。
実需向けのマンション事業一筋で、商品企画にこれほどこだわる社長はまずいない。
首都圏初の低床バス採用、バルコニー、外廊下の両側のアウトフレーム設計、建築基準法の改正に伴う外廊下の容積不算入部分の活用、タイヤメーカーと組んだ強化ゴムを活用した二重床(浮床)工法の採用、安全性を強化した立駐機の開発、環境共生住宅認定第1号マンションの開発などはいずれも安倍氏が大京の専務時代から扶桑レクセル社長時代に企画してきたものだ。
〝大京の7人の侍〟(記者がこう呼ぶ)の中で現在も経営トップとして活躍されているのは安倍氏のみだ。
そして今、ピーク時には120億円もあった借入金などの負債は今期末には15億円に圧縮するという。