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いつもこのように賑わう「さくらカフェ」(NPO法人さくら茶屋にししば・阿部氏提供)

 今年1月23日付の当欄記事「第2回『』住宅団地再生連絡会議』」で、「8つの先進事例で一番面白かったのはNPO法人さくら茶屋にししば・岡本溢子氏(74)と阿部茂男氏(68)の報告だった」「必ず取材してレポートする」と書いた。約束通り、先週の木曜日(8日)、その活動拠点「さくら茶屋」と「さくらカフェ」を訪ねた。

 「さくら茶屋」は、京浜急行金沢文庫駅から徒歩15分、横浜市金沢区の西武不動産(当時)が昭和40年代に開発した「西柴団地」(約1,700区画)のヒルトップに位置している。2階建て木造の1階部分の空き店舗を利用したものだ。広さは20坪くらいか。

 横浜市の「まち普請」コンペに当選し2005年にオープンして以来、様々な活動を展開し、2006年には国土交通省の「街づくり功労賞」を受賞し、メディアにもしばしば取り上げられている。

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以上、阿部氏提供

◇       ◆     ◇

 この種の昭和40~60年代にかけて分譲された首都圏近郊の大規模団地がバブル崩壊と加速する少子高齢化の波に飲み込まれ、コミュニティの維持が困難になり、瀕死の状態に陥っているところもある。5年前、ある「限界集落」をレポートしたときは、影響が怖くて団地名を伏せたほどだ。

 「西柴団地」を中心とするこの地域の高齢化率は、区の高齢化率27.7%(横浜市全体は23.6%)を超えるのは間違いない。にもかかわらず、困難をもろともせず「終の棲家としてこの街を愛し心豊かに楽しく暮らせることを願って」(NPOホームページ)活動している。

 取材の目的はただ一つ-その元気はどこから湧いてくるのか-それを自分の目で確かめることだった。

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「さくら茶屋」(左)と「さくらカフェ」

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レンタルボックス

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 午後1時過ぎ。「さくらカフェ」はお年寄りであふれかえっていた。恒例の「朗読会」で、参加者は約20名。川崎洋、井上ひさし、谷川俊太郎、河合酔茗、茨城のり子などの作家、詩人の名作をみんなで朗読するのだそうだ。(特養や老人ホームのお遊戯とはまったく異なるはず)

 「さくらカフェ」は満席なので、すぐ近くにある「さくら茶屋」に場を移して、取材目的の一つである人気ランチを食べることにした。地元の白ワイン1杯と日替わり中華ランチを注文した。1,080円。

 隣の席では、かつては小野小町か大和撫子かともてはやされたに相違ない女性二人が同じランチを食べていた。西宮市出身のAさん(84)と北海道出身のBさん(88)だ。(記者は嘘を言わない。お二人の顔はさくら色に輝いていた)

 早速、声を掛けた。岡本さんに仲介役になっていただき、写真を撮らせてもらうことにも成功した。以下、二人の会話。記者は、麺がのびるのもお構いなしに二人の会話にほとんど口を挟まず聞いた。

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岡本さんがお勧めの地ワイン「おっぱまワイン」

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記者が食べた「中華ランチ」600円(これに仲間が作ったスモークチーズを頂いた)

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 「ここを買ったのは昭和54年。西武不動産が高級住宅地という触れ込みで建て売りで分譲したの。当時、久我山の社宅に住んでいて、磯子プリンスホテルで抽選があるというので夫は朝4時半に起きて、並んで当選したの。土地が75坪。確か1,000万円くらいだった。バブルのころは1億円以上の値が付いたけど…。不動産屋が売ってくれって言ったけど、買ったらまた同じくらいの値段がするから同じことよね。今? 売らないわよ。不動産さん屋に聞くと、土地が広すぎて値段が高くなるから売れないんだって。でも、ここは温かい、気持ちが。喧嘩などしない。海も近いし、公園もある。夫が死んでから18年かしら。息子が1人いるけど、住んでいるのはわたし一人」

 「わたしの夫は銀行員。25歳で札幌から出てきたのよ。若かったわね。最初に日吉に住んで、そして目黒の社宅だったわよ。うちは74坪。安かったよね。子どもは2人。息子が5年生、下の娘は2歳半のときよ。娘は日航。だから飛行機はただ。北海道? もう親も死んじゃったし、帰ることはないわね。そう、いまは息子夫婦と住んでるの。息子? 今年61歳になるのかしら」

 「Bさんは苦労してるよね。でも若い。ビンビン」

 「…49歳で未亡人になっちゃった。そう、(夫は)病気で死んだの。銀行だったから、保障されてたし、生活は困らなかったわね。わたしね、洋裁をやっていてね、三越の養成所で学んだの。だから、結構繁盛して、次々に注文が舞い込んだの。紳士服も作ったわよ。ほら、ここの椅子のカバーも布は寄付だけど、わたしが拵えたの。いま着ているセーターも自分で編んだのよ。ここはいいわよ、誰かに会える。毎日来てるわよ。時間無制限。食事して、コーヒーを飲んで、馬鹿言って。これからまたお友だちのところへ行くの」

 隣の八百屋の主人(73)にも話を聞いた。「実はわたしは脱サラ。40年やっている。当時は魚屋、米屋、肉屋…何でもあったが、どんどんなくなって。豆腐も地元の手作りのものを置いているし、魚も変なものは売れない。みんな知ってるから。吟味している。花も置いているが、結構売れる。そう、さっきも5,000円の注文があった。後継者? わたしの息子は継がないが、仲間の息子さんがよくやってくれている」

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Aさん(左)とBさん(いわゆる取材用の〝さくら〟じゃありません。たまたま居合わせたさくら色のお二人です)

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 記者が「奇跡の街」と呼ぶ街がある。山万の「ユーカリが丘」だ。このユーカリが丘の開発が始まったのも昭和46年だ。山万はその後、他の事業を捨て、自ら退路を断ってこの街とともに生きていくことを決めた。掲げるスローガンは「千年優都」だ。(「奇跡の街」と「ユーカリが丘」で検索したら、どこかのライターが同じ「奇跡の街」と書いていた。最近だ。村上龍氏もそう呼んだらしいが、これはいかがなものか。気安く呼んでほしくない。ずっと街を見続けているから言えるのだ。記者は10数年前からこう呼んでいる。見出しにも魂を込める)

 この街もまた居住者自らが主導する「奇跡の街」だ。神輿を担ぐ人も乗る人も見る人もみんな〝身内〟だ。〝一人はみんなのために、みんなは一人のために〟-もはやこの言葉は死語かと思っていたが、どっこい生きている。

 平成28年度のNPO法人さくら茶屋にししばの事業報告書には、サロン事業でのランチ提供件数は10,222食で過去最高、歌の集いなどの夜話参加者は延べ403名、認知症カフェ参加者は244名、体操教室には274名、認知症予防のぼたんの会参加者は171名、買い物支援件数は176件、ポールウォーキングには377名、2,800世帯を対象にした毎月発行の広報誌発行には20人が携わり、朝7時30分から8時までの小学生の登校前の朝塾には5名が従事しているなどの数字が並ぶ。収益約1,450万円に対し費用は約1,314万円。人件費はゼロ。ほとんどがボランティアによって賄われている。

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「西柴団地」のメインストリート

「さくら茶屋にししば」など全国先進事例を報告 第2回「住宅団地再生連絡会議」(2018/1/23)

奇跡の街〟山万「ユーカリが丘」「電気バス社会実験」出発式(2009/4/24)

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「Business-Airport Kanda」エントランス 

 東急不動産は2月13日、会員制会員制サテライトオフィス「Business-Airport」の6店舗目となる「Business-Airport Kanda」を3月30日に開業すると発表した。

 東京メトロ銀座線神田駅から徒歩1分、千代田区神田鍛冶町三丁目に位置する約710㎡。サービスオフィス27室、シェアワークプレイス、ミーティングルームなど。運営は同社の100%子会社ライフ&ワークデザイン。賃料はシェアワークプレイス会員のプライベート会員9,000円/月(利用時間8:00~10:00、17:00~20:00のみ利用可)、マスター会員30,000円/月、アドレス会員60,000円/月。サービスオフィス会員100,000円~/月。

 同社はこれまで会員制会員制サテライトオフィス「Business-Airport」を「青山」「品川」「東京」「丸の内」「六本木」に開設している。

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青木氏の退官記念講演会(首都大学東京 南大沢キャンパスで)

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青木氏

 「リファイニング建築」の考案者である首都大学東京特任教授・青木茂氏が平成30年3月末で退官するのを記念する講演会が2月10日、同大学南大沢キャンパスで行われた。大学の関係者のほか設計、不動産、建築、金融機関など幅広い分野から定員いっぱいの約200名が集まり、青木氏の最後の講演に耳を傾けた。

 青木氏は、「首都大学での10年を振り返って」と題し、約1時間30分にわたり、リファイニング建築を中心にこれまでの波乱万丈を語った。

 一級建築士の資格を取得し事務所を開設して間もないころ、転機となった安藤忠雄氏との出会いについて、「車を買うために貯めていた100万円を、妻の了解を得て、安藤氏が企画したヨーロッパ旅行に注ぎ込んだ。旅行中、安藤氏からは『お前、なにも知らんなぁ、阿保やなあ』と言われ続けた。この前、お会いしたとき初めて褒められた。この間35年間を要した」などと会場を笑わせた。

 最後は、「リファイニング建築はマニュアルや指針はまだ日本にはない。調査・企画・再生設計・工事監理の一連の流れと、金融機関との資金調達の枠組みは構築できた。優秀なスタッフも育っており次の世代へつなげたい」と締めくくった。

 退官後にやりたい仕事については、「分譲マンションの再生に取り組みたい。合意形成など大きな壁があるが、行政を巻き込んでスムーズに再生できるようにしたい」と語った。

 記念講演後は南大沢駅近くで退職記念祝賀会を盛大に行った。参加者には全員、青木氏の近著「リファイニング建築が社会を変える」(建築資料研究社)がプレゼントされた。

 青木氏は1948年生まれ、69歳。大分県出身。1971年、近畿大学九州工学部建築学科卒。1977年、アオキ建築設計事務所設立。1990年、青木茂建築工房に組織変更。2006年、首都大学東京大学院工学研究科非常勤講師。2007年、東京大学工学博士号取得、同年、東京事務所開設。2008年、同大学戦略研究センター教授(~2012年)。2013年、同大学特任教授、現在に至る。グッドデザイン賞、日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)など多数受賞。著書は「再生建築 リファイニングで蘇る建築の生命」(2009年、総合資格)など多数。

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青木氏について語る上野学長

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吉川氏(左)と関係者による花束贈呈

以下、主な参加者のコメント。順不同

 首都大学東京教授・吉川徹氏 先生は耐震偽装の時にデビューされ、その後、八面六臂の活躍をされた(メインは青木氏であることを弁えてか、いつもの軽妙な発言はなかった)

 首都大学東京学長・上野淳氏 当時、深尾先生と相談し、世界で一流だったらということで通常の特任教授の採用枠を超えて青木先生を招いた。なによりみんなを元気にしてくれた。わたしと青木先生、深尾先生は同学年の同期(上野氏と青木氏は今年70歳・古希を迎える)

 首都大学東京名誉教授・深尾精一氏 (すごいですね、最近の国土交通省の難しい問題はすべて先生が長として解決されているが)〝困ったときの深尾だよ〟(まんざらでもなさそうだった)僕はまだ68歳だよ

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〝われら同期同学年の古希トリオ〟左から深尾氏(僕はまだ68だよ)、11月に70になる青木氏、8月で古希を迎える上野氏

 都市環境研究所・平嵜大地氏(平成27年3月卒) 先生は学生が圧倒されるエネルギーがある。金融機関と連携することまで仕組みをつくられた。今のコンサルの仕事に役立っている。タイでのワークショップで椙山女学園大の彼女と知り合い、今春結婚することになったが、先生が仲人のようなもの。感謝しかない

 環境未来フォーラム代表理事・前田武志氏(元国土交通大臣) 〝青木ファン〟の一人。わたしは〝コンクリから人へ〟がスローガンだった民主党政権の時に国交大臣になったが、旧耐震などのコンクリ建築物を再生するという、持続可能な国づくりを進めるには青木先生以外にないと思った。この先2025年問題など難しい問題が山積している。先生のリファイニングを何とかシステム化できないか 

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前田氏

 林製作所総務部長・林博之氏  父(78)が「林マンション リファイニング工事」のオーナー。わたしは3代目。あそこにずっと住んでいた

 軽石実一級建築事務所・軽石実氏 わたしは構造が専門。建築全体の中で構造は2~3割。先生は総合的に把握されているからものすごく楽

 建築家・難波和彦氏(東京大学名誉教授)青木先生の博士号論文はわたしが主査として審査した。「住みながら再生」というハードルがもっとも高いテーマを選ばれた。天職といってもいいいが、青木先生は誰も真似ができないリノベーションに関する暗黙知のようなものを持っておられるように思う。僕も71歳だが、青木先生にはあと10年は頑張っていただきたい

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難波氏

 ミサワファイナンシャルサービス社長・田中博臣氏 今度3月1日にも富士見2丁目ビルのリファイニングが竣工する

 三井不動産ソリューションパートナー本部レッツ資産活用部部長・井上純氏 分譲マンションは区分所有法の壁があるので…しかし、ワンオーナーの賃貸はこれからも継続して先生にお願いしたい

 太陽エコブロックスAM営業推進部副部長・大谷卓也氏 当社の社長は先生と30年来のお付き合い。昭和61年に竣工した本社屋は安藤忠雄先生の設計・監理

 コプラス設計部マネージャー・永久正浩氏 これからメディアに発信できる案件がいくつかある

◇          ◆     ◇

 記者は最後列で聴きながら、参加者の様子もしっかり眺めていた。定員いっぱいの会場は、席を立つ人は言うまでもなく、それこそ水を打ったように静まり返った。しわぶき一つ聞こえず、舟をこぐ不届き者など一人もいなかった。青木氏の最後の講義を聴き逃すまいと耳をそばだてていたに違いない。

 時々、少なくとも5回は青木氏が発するジョークに対する笑い声が漏れた。それは建築の専門家でなくては理解できないような隠語ではなく、今年古希を迎える青木先生の活舌に問題があるわけでもなく、素人の記者でも理解できる内容だと思ったが、安藤氏との出会いのくだり以外はさっぱり聞き取れなかった。相当耳が遠くなったことを自覚させられた。

 講義が始まって1時間20分が過ぎた頃か。講演などを聴くのは1時間が限度の記者は〝いつまで続くのだろうか〟と考えていたら、だしぬけに、咳がこみ上げてきた。これ幸いと、そっと会場の外に出た。

 寒い外では学生さんらしきスタッフが受付を行っていた。「さすがですね、首都大学は。居眠りする人など誰一人いない」と声を掛けたら、「好きなことをしゃべり、聴いているだけですから」とこともなげに答えた。

 ついでにタバコを吸おうと思い、喫煙室を尋ねたら「うちの大学は喫煙室は多いほう」とそのスタッフは喫煙室近くまで案内してくれた。学内での全面禁煙を実施する大学は増えているが、さすが首都大学東京だ。

 タバコをゆっくり吸い終えて会場に戻ったら、ちょうど講義が終わった時だった。拍手喝采が会場を満たした。花束贈呈に間に合ってよかった。

「多摩NTにおける人的不良在庫」 吉川徹・首都大教授が軽妙発言(2016/6/6)

三井不&青木茂建築工房 築52年の市場性ない共同住宅をリファイニングで再生(2017/10/16)

 

 

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総合受付(3階)

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吉田社長

 三菱地所は2月9日、新本社ビル「大手町パークビルディング」のオフィスを報道陣に公開した。吉田淳一社長自らがプレゼンし、社員が仕事中にも関わらず担当者が案内し、劇的にファシリティが向上し、社員の士気が高まったことをアピールした。社員食堂では試食会も行った。

 他のチームメンバーと同様、スタジアムジャンパーに身を包んだ吉田社長は、移転の背景・経緯などについて説明。「オフィスを取り巻く環境の急激な変化を先取りし、われわれ自身がオフィス空間の情報を発信し、働き方を変えたりアイデアを伝える必要性が高まっている」と移転の理由を語った。

 そのため「以前は役員が個室の中に閉じこもり、部長が窓際に君臨していた昔ながらの形状」ではなく「物理的にも心理的にも壁をなくした。新本社のコンセプトであるBorderless!Socializing!from MEC PARK、あらゆる境界をなくし、本当の意味で人と人とが繋がり力が発揮できる空間を実現した」と強調。「AIやIoTを取り込みながら生産性の向上、ビジネスモデル革新、ワークライフバランスの向上、人材の確保などこれまで以上にダイバーシティ、働き方改革を進め、好循環を生み出し、実証実験などを通じて街づくりへと展開していきたい」と力を込めた。

 新しいオフィスは大手町駅に直結。皇居に隣接する29階建て延べ床面積約151,700㎡の3~6階部分で広さは約3,600坪。「大手町ビルヂング」から今年1月5日に移転した。

 全体の面積は約2割狭くなったが、共有スペースは面積ベースで2倍に増やし、オフィス全体の3分の1を占めるように設計。画一的な空間ではなく、社員は、その日の業務スタイルによって好きな場所を選べるグループアドレスを採用。役員個室もなくした。

 平面だけでなく縦方向の交流を生み出すためフロア間の境界をなくしているのも特徴。2カ所に配置した「内部階段」は、蹴上を約15㎝、踏み面を約30㎝確保している。

 制度改革では、従来から実施しているフレックス制度(コアタイムは10時から16時)に加え、テレワーク、仮眠、インターバル勤務制度などを導入。

 ビルのテナントでもあるLiquidとコラボし、指紋によるセキュリティと、日本初の指認証と個人口座を連携した社内カフェテリアで利用できる決済システムも導入。将来、街全体で展開することも視野に入れている。

 パナソニックの協力のもと、役員も含めた社員の社内位置情報システムも採用。誰が、どこにいるかも把握でき、カフェテリアや共用スペースの混雑度も一目で確認できる。

 3階の総合受付では、日立製作所のサービス支援ロボット「EMIEW3」が来客者を会議室まで案内する。

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右から吉田社長、久保氏、竹本氏

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多目的に利用できるラウンジ

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職務スペース

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 昨年2月、大手町パークビルが竣工したとき、本社をここに移転する話を聞いていた。どれほど素晴らしいビルであるかは、添付した記事を参照していただきたい。

 他の業界、会社のことは知らないが、社員が仕事中の本丸オフィスを報道陣に公開する会社はあるのだろうか。さすがに社長室の位置は公表せず、皇居方面や仕事中の社員の写真は不可だったが、記者が知る社員から声を掛けられる場面もあり、その鷹揚さに驚愕した。移転の効果がてき面であることは、様々な数字・データが証明している。

 「大手町ビル他」では約4,500坪(うち共用スペース約10%)が7フロアに分散していたが、「大手町パークビル」では約3,600坪(同約30坪)が4フロアに集約された。この結果、紙出力枚数は約50%、キャビネ本数は約70%削減されたという。

 本社移転に伴うファシリティに対する社員アンケート結果がまたすごい。90%の社員の満足度がアップし、88%が「偶発的なコミュニケーションが増えた」と答え、86%が「企業風土は変わる」と回答。「会議は効率化された」と思う人は89%に達し、「ペーパーストックの取り組みにより業務は効率化されたと思う」人は65%にのぼっている。

 慣れないためか「上司とのコミュニケーションがとりにくくなった」とする回答が27%あった。これについて久保人司総務部長は「問題だとはとらえていない。メンター制を向上させればカバーできる」と話した。

 機能が一新され、社員の士気が高まったことを、執務中の湯浅哲生常務が端的に語った。

 「これまではここより1.5倍くらい広い(6畳大くらいか)の個室で、今回はやや狭くなった(4畳大くらいか)が、壁が取っ払われてスタッフの声が聞こえ、お互いの交流も見えるようになり〝開放〟された印象。機密漏洩? 大事な話は防音室に移るから問題ない」

 社員は上司に近づこうが避けようが、きれいな女性(イケメンの男性)の近くに座ろうと自由だというから驚きだ。「わたし(記者)のような嫌われ者は誰も隣に座らないのではないか」と質問したら、総務部ユニットリーダー兼ファシリティマネジメント室長・竹本晋氏は「大丈夫。席が余るような配置にはしていない」と話した。

 サービス支援ロボット「EMIEW3」は、記者が大きな声を出したためか、西日が目に入ったためか機嫌を損ね、ガラスの壁に激突しそうになり、スタッフが慌てて制する場面もあった。

 「内部階段」を報道陣も3階から6階まで一挙に駆け上がったが、音を上げた記者はいなかったはずだ。

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湯浅常務

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「PERCH」

⑪フロア間をつなぐ内部階段.jpg ⑭指紋認証_認証の様子.jpg
内部階段(左)と指紋認証セキュリティ

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 2時間をかけた盛り沢山のプレゼンやオフィス内覧を終えてから、社員食堂「SPARKLE」での試食会が行われた。

 記者はタニタ社員食堂を利用したことがないが、ホテル・旅館のバイキングや役所、図書館、大学の食堂などは何度も利用している。そのレベルはわかっている。「SPARKLE」を運営するノンビの取締役ケータリング事業部事業部長・荒井茂太氏が「ホテルに負けない」と話したときも、半信半疑で聞いていた。

 しかし、朝から何も食べていなかったし、物は試しだ。供された「チェリートマト」10個くらいとサラダを食べた。トマトだけは自信があるからだ。カロリーを抑え、血液と同じ記事をさらさらと書ける効果もあると信じているので、ほとんど毎日食べている。「キャベツ500円は高い」とぼやくかみさんとも、トマトだけは「1個200円の価値はある」と意見が一致する。

 そんな口が悪いが舌が肥えた記者が言うのだから間違いない。この愛知県産のチェリートマトは最高に美味しい。名前の通り佐藤錦の新種かとも思ったほどだ。荒井氏の「ホテルに負けない」言葉に嘘はない。アメーラと比べるとやや酸味に欠けるが、甘さは抜群だ。

 ここでは朝の7時から8時半までは無料で朝食が食べられる。毎日100食を用意しているが、残ることはないという。

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「SPARKLE」

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チェリートマト(中央)

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荒井氏

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 注文が1つ。各フロアに設置された「止まり木」を意味する「PERCH」。広さ10畳大はあっただろうか。ふんだんに本物の木が使われ、各種飲料やスナックも用意されていて素晴らしいスペースだ。ところが、本物の木にまとわりついている観葉植物は一目見てフェイク(まがいもの)だと分かった。これは興ざめ。なくすか本物を用いるべきだ。社員の諸々の作品を展示するギャラリーもいいのではないか。

 お願いも一つ。勤務中のアルコール禁止について。トイレや仮眠室、シャワー室に閉じこもり、タバコを吸いに何度も席をはずそうと、メタボの社員が何を食べようが何のお咎めがない(60分以上勤務エリアから外れると外出扱いになるという)のに、職務中は酒を飲んではならないという社内規則があるという。

 これが解せない。記者の個人的見解を言わせていただければ、砂糖やらその他の怪しげな甘味料にまみれたスナック、飲料のほうが危険だと思う。「酒は百薬の長」というではないか。

 これこそ実証実験の対象にして、社会に情報を発信していただきたい。酒を少し飲んだからと言って生産性が落ちるとは思えない。逆に能率を上げる潤滑油か触媒のようなものだ。

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靴を脱いでくつろげる小上がりスペース

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 本社では約800名が勤務するというから単純に3,600坪で割ると一人当たり勤務スペースは約4.5坪になる。ビルの賃料は公開されていないが、まず坪45,000円は下らない。同社が賃借するとすれば一人当たり20万円だ。効果が現れる来年度の決算が楽しみだ。RBA野球部は大丈夫か。

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サービス支援ロボット「EMIEW3」(ちょっと西日がきついよ) 

皇居に隣接 最高級Sクラスの「大手町パークビルディング」竣工(2017/2/14)

 小田急不動産は2月9日、取締役・金子一郎氏が代表取締役社長に就任すると発表した。代表取締役・雪竹正英氏は退任する。いずれも4月1日付。

 金子氏は1955年生まれ62歳。神奈川県出身。1979年3月、慶応義塾大学法学部卒、同年4月、小田急電鉄入社。広報部長、取締役執行役員総務部長などを経て現在、常務取締役執行役員生活創造事業本部長。同社には2012年、監査役に就任、2016年6月から取締役を務める。

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「LIFORK 大手町」

 NTT都市開発は2月9日、新たなワークスタイル&ライフスタイルを実現するシェアオフィス事業「LIFORK(リフォーク)」を立ち上げ、同社の旗艦ビル「大手町ファースト スクエア」と「秋葉原UDX」内に「LIFORK 大手町」「LIFORK 秋葉原」を4月にオープンし、施設内に企業主導型保育園「ワイナKids 保育園」を順次開園すると発表した。

 「LIFORK」は、多様な働き方が浸透する中、一人ひとりがより自由に、スマートに、場所・時間を選び、自分らしく働き、そして自分らしく人生を過ごすことができるようサポートする。

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 記者が勤務する丸の内北口ビルの2階にはポピンズが運営する東京都の第1号「コンソーシアム型」事業所内保育施設「ポピンズ ナーサリースクール丸の内」が入居している。

朝夕、小さいお子さん連れのお父さんやお母さんを見かける。施設の中に入ったことはないが、他のポピンズの保育施設は見たことがある。

 「育・職近接」は結構なことだ。街とは、赤ちゃんも子どもも大人も、金持ちも貧乏人も、いろいろな階層の人が群れて住むのが本来の姿だ。子どもを抱えた会社員の姿を東京のど真ん中で見ることができると、とても幸せな気分になれる。

 問題は朝夕のラッシュだ。電車が混んでいるときは一つ乗り過ごすことになるのだろうが、そんなことをしていたらいつまでたっても乗れない。「女性専用」もいいが、父親でも母親でも乗車できる「親子専用」車両も設けるべきだ。あとは駅のバリアフリー化だ。小さなお子さんをバギーカーに乗せた若い女性が、エレベータ・エスカレータがない駅の階段前で立ち往生しているのを見たことがある。(手伝わない記者がいた)

 わが国はユニバーサルデザインの視点が決定的に欠けている。

 

 リンナイは2月8日、世界の共働き夫婦の家事事情を探るため、日本(東京)、共働き夫婦が少ない韓国(ソウル)、ナニー(乳母)文化が浸透しているアメリカ(ニューヨーク)、共働きが主流のドイツ、ワーク・ライフ・バランス先進国であるデンマーク5カ国の30~49歳の男女計500名を対象に「共働き」に関する意識調査を実施した。立命館大学産業社会学部教授・筒井淳也氏のコメント付き。

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 プレース・リリースを興味深く読んだ。諸外国と比べ日本の男性は家事労働に参加しない・消極的であることはこれまでも度々指摘されていることだが、改めて報告されると悲しくなる。

 労働時間が9.19時間と5カ国のなかでもっとも長く、夫婦の時間が韓国の1.5時間を下回る1.31時間だ。労働時間はもっとも少ないアメリカの6.68時間より2.51時間長く、夫婦の時間はトップのデンマークの3.19時間より1.88時間も短い。

 家事を男女が分担している比率も、わが国は5か国平均の79.4%を下回る56.0%だ。配偶者(パートナー)の家事に対する協力度を100点満点で問う項目では、日本男性の女性に対する点数は79.9%と5カ国でもっとも高い一方で、女性の男性に対する評点は55.84しかない。アメリカはともに60%台の後半で、差がない。

 悲しい調査結果はまだある。家事スキルを問う項目では、わが国は男女とも自分の評点も相手からの評価も最下位だ。

 家事効率化のための工夫では、アメリカは「機能性の高い家電を使う」が75.0%に達しているのに、日本は38.0%しかなく、「余分なものは買わない」が52.0%となっている。

 これが重要なのだが、配偶者(パートナー)を好きかという設問では、家事を分担しているアメリカでは95.7%が好きと答え、わが国は家事分担しているほうでも67.9%しかなく、分担していないほうは40.9%(韓国も悲惨で30.8%)と半数以上が「好き」ではないと回答している。

 また、家政婦やベビーシッターの利用については、アメリカは61.4%が普段利用しており、「利用したことがある」を合わせると8割以上に達する。わが国は1割に過ぎない。

 育児休暇の取得率も、アメリカの男性は87.8%が利用した経験があるのに、日本の男性は9.7%しかない。一方で、女性の利用度はわが国がもっとも高い61.5%となっている。

◇       ◆     ◇

 記者は主夫を約10年間やっているので、家事労働について書こうと思えばいくらでも書ける。また、一番大事な「愛」「ハグ」が欠けていたのが子育てに失敗した原因であることも承知しており、忸怩たる思いがこみ上げてくる。後の祭りだ。

 ここでは最小限にとどめる。まず「夫婦の時間」。皆さんはこの夫婦の時間をどのように考えるか。調査ではまったく触れられていない。

 記者などは、外で結構しゃべるので家ではあまりしゃべらない。野球の話ならいいが、政治やらもろもろの社会的事象、事件などについてしゃべるとボロが出るからだ。「あなたは変人」としか返ってこない。女性、とくに若い女性に関することも禁句だ。あらぬ疑いをかけられる。

 わが国には糟糠の妻(糟糠の夫はないが「玉の輿」「逆玉」はある)という言葉がある。まさに空気のように何も話さないでも、わが国の男性はみんな配偶者(パートナー)を口に出さずとも「愛している」と思う。これは希望的観測が過ぎるか。

 「夫婦の時間」を「夫婦の会話」と解釈すれば、デンマークは3.19時間も本当にしゃべりあっているのだろうか。白夜もあるからなのか。子どもがいればまず学校に行くまでの朝の時間と、子どもが自室にこもるか寝るまでの時間は「夫婦の時間」にならない。そうなると、文字通り夫婦だけの時間で3時間を確保するとなると、夜中から翌日の1時過ぎだ(川の字に寝たら夫婦の時間など皆無だ)。それでも睡眠時間は6.71時間だから、起きるのは8時になる。これに労働時間7.64時間、家事労働1.81時間(分担もあるが)などを差し引くと残りは4.65時間。これが独りの時間ということなのか。通勤時間はどうなのか、食事の時間はどうか。

 気になるのは夫婦交合の時間だ。これは「夫婦の時間」に入るのか入らないのか。同じ部屋に寝るのは入るのか入らないのか、同床異夢はどう判断するのか、これこそ生か死か死活問題だ。所詮、アンケートなどというものは当てにできないということか。

 筒井氏のコメントについて。筒井氏は「最も重要なことは、完璧な家事をしない・求めない、ということです。効率化の最優先事項は『必要度の低い作業を省く』ということです。…男性も女性も、家事の要求水準をもっと下げましょう。『洗濯物を干すときは、完全にそろえて並べる』『カーペットの上の髪の毛一本までとらないと我慢ならない』『ガスレンジを使ったら、必ず毎度拭き上げる』。こんな家事の品質は、専業主婦家庭か、あるいはお手伝いさんのいる家庭でないと求めるのは難しい…共働き夫婦では『毎日やっていた作業を2~3日に一度にする』『(食洗機や掃除ロボットの利用など)自動化できるところは、初期費用が多少かかっても自動化する』といった割り切りは、『仕方がない』というよりも『必須』なのです」と指摘する。

 同感! 洗濯物は乾かすのが目的だから干し方などどうでもよい。たたむのも同じ。干したままの形でいいではないか。掃除などしなくても死にはしない。まとめてやればいい。布団のシーツなど多少汚れていたっていいではないか。バスタオルは夫婦一緒でいい(こんなことを言うから嫌われる)。食洗機は必須家電だ。家事労働の価値をお金に換算したことがある。月30万円とはじいた。安月給のサラリーマンは家政婦だって雇えない。全ての女性に感謝!

いまどきの30代夫、完璧に家事こなすのは3割 旭化成ホームズが調査(2014/7/12)

 

 

 

 書かなきゃならない原稿が5本あるのだが、読んでしまったからにはこちらを優先せざるを得ない。先週も書いた住宅新報のコラム「不動産屋の独り言 賃貸現場の喜怒哀楽」だ。前回は1月23日号で、今回は2月6日号だ。

 コラム冒頭には「率直に言って、障害があって生活保護を受けている入居者は大きく3通りに分けられると思う。高齢で身寄りもなく働くこともできない人、身体に障害のある人、そして精神疾患で他の人と十分なコミュニケーションが取れずに働けない人」とあった。

 これだけ読んで、コラム氏の言葉を借りれば「率直に言って、頭にきた」。生活保護制度については疎いが、これは憲法で保障された国民の基本的人権を保障するための制度であり、生活困窮者になった経緯、例えば歳を取ったとか身体に障害があるとか犯罪歴があるとかは問われないはずだ。コラム氏は知ってか知らずか、高齢者、あるいは障がい者=生活保護者であるかのように誘導する。これは極めて偏向した思想だ。

 まあ、コラム氏がどのような思想の持主であろうとどうでもいいことだが、次の、おそらく本人が一番言いたいことなのだろうが、ここがまた問題だ。

 要約すると、「精神疾患ということで生活保護を受けている」入居者から「会社に鍵を忘れてきたみたいでどうすればいいか」との連絡を受けた。コラム氏は「隣に住んでいる家主さんがマスターキーをお持ちだから、それを借りてください」と答えた。すると入居者は「入居してから私が鍵を替えていて、家主さんにはマスターキーを渡していない」と言った。コラム氏は「そんな入居者は初めてである」と書く。

 入居者が家主の承諾なしで鍵を交換する話は聞いたことがあるが、コラム氏は初めてだったようだ。それよりも「精神疾患ということで生活保護を受けている」と、ここでも精神疾患=生活保護と結び付けている。

 改めて言うが、生活保護の申請理由は、働けない理由は説明しなければならないのだろうが、今現在お金があるとか資産があるとか働く意欲があるとかなどのほうが重要視されるはずだ。

 コラム氏もご存じのはずだ。「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする」法律(障害者差別解消法)が施行されて5年が経過する。なにを書こうと勝手だろうが、差別を助長するような発言は慎んだほうがいい。

 記者などは、「障害」は小学校の運動会や競馬のレースのようにまっとうに走る(生きる)のを阻む社会的制度のほうがむしろ大きいのではないかとも考える。

 「障害」は戦前までは「障碍」と書いた。「碍」はストレートに「害」に結びつく言葉ではなかったはずだし、「害」と「者」をくっつけたのがいけなかった。日本碍子は昭和61年から社名表記を日本ガイシに変更した。「日本害子」では具合が悪いからだろう。

 同じように「障害者」も変更してはどうか。一から出直すつもりで、英語は嫌いだが、それもいいかも。競馬、ゴルフは「ハンデキャップ戦」がたくさんある。ゴールに一緒にたどり着けるように強い馬には負担重量を課す。これって合理的ではないか。

 断っておくが、記者はこのコラムを読むのは2回目だ。今回で通算438回目だというから、これまで何を書いてきたか想像するだけで空恐ろしくなる。業界に問題があるのか、新報のチェックが甘いのか…。

本末転倒 傲慢なのは賃貸会社社長のコラム氏ではないか 「住宅新報」の記事(2018/1/29)

ポラス、障がい者中心の新会社設立 越谷市初の特例子会社(2015/3/30)

 

 

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「仮称)銀座2丁目プロジェクト」

 東京建物は2月7日、都市型ホテル「仮称)銀座2丁目プロジェクト」と「(仮称)大宮駅西口ホテルプロジェクト」のホテルオペレーターがそれぞれ決定したと発表した。

 「銀座」は、地下鉄有楽町線銀座一丁目駅から徒歩1分の敷地面積約480㎡、16階建て延床面積約5,700㎡の全182室。2018年秋に開業予定。ホテルオペレーターは、国内47カ所、海外1カ所、総計7,304室の運営実績がある「ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ」が決定した。

 「大宮」は、大宮駅から徒歩6分の敷地面積約2,250㎡、14階建て延床面積約10,100㎡の全321室。2019年夏に開業予定。ホテルオペレーターは、「カンデオ ホテルズ東京六本木」を含め全国17カ所でホテルを運営している「カンデオ・ホスピタリティ・ マネジメント」が予定されている。

 同社はこのところ都市型ホテル事業に力を入れており、昨年10月に開業した「カンデオホテルズ東京六本木」(149室)のほか、2018年秋開業予定の「(仮称)ホテルズグレイスリー浅草」(125室)、2019年春開業予定の「(仮称)ザ・ビー大阪心斎橋」(309室)の工事を進めている。

 立地によりホテルオペレーター・複合用途をベストミックスし、事業性の最大化を企図しているのが特徴。

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「(仮称)大宮駅西口ホテルプロジェクト」

 旧木下工務店の創業社長で日本ハウスビルダー協会理事長、日本住宅建設産業協会(現全国住宅産業協会)の理事長を務めた木下工業会長・木下長志(きのした・ながし)氏が1月11日、急性心不全のため死去したとWeb業界紙「R.E.port」が報じた。享年92歳。

 2月28日12時より京王プラザホテルで「お別れ会」が開催される。

◇       ◆     ◇

 訃報に接したとき、しばし言葉を失った。あれほどの功績を残した方が死亡し1カ月が経つまでなぜ報じられなかったのかということだ。地元の中日新聞などはすぐに訃報を伝えている。

 と同時に、昭和50年代から60年代にかけた建売住宅業界がもっとも輝いた時代がそれこそ走馬灯のようによみがえった。

 いま手元に、前職の「週刊住宅」の記者時代に書いたバブルが崩壊後の「週刊住宅」平成4年3月19日号がある。首都圏マンションと建売住宅の同年2月の販売動向を伝えるもので、「マンション市場に〝春一番〟」の大見出しと「供給増え、郊外の売れ行き回復」とのサブタイトルが付いている。

 建売住宅は46物件717戸が供給され、月内に494戸が成約となり月間契約率は69.4%となっている(マンションの月間契約率は64.4%)。木下工務店は「オークきおろしヴィレッジ」15期10戸を最多価格帯4,900万円台で販売し、最高12倍、平均4.2倍で即日完売したとある。

 このほか、三井不動産、三菱地所、西武不動産、積水ハウス、大和ハウス工業、ミサワホーム、中央住宅、平和不動産、京成電鉄、スターツなどのほか日本新都市開発、エルカクエイ、秋田県木造住宅などの懐かしいデベロッパーの名前もある。

 記者は約20年間、このマンションと建売住宅の販売動向調査を続けた。「〇〇(調査機関)の調査によれば」と他人のふんどしで相撲を取りたくなかったからだ。自分こそが情報の発信者という無分別というか若気の至りというか、驕りもあったと思う。

 なぜ、この記事を持ち出したかといえば、このように毎月1回、マンションばかりでなく建売住宅の販売動向を記事にしていたことを、当時、〝建売住宅の雄〟の地位を確立した木下社長は評価してくださった。「他紙は全然市場を伝えない」と。

 建売住宅は供給物件を捕捉するのが難しく、今現在も詳細なデータはどこも持ち合わせていないはずだ。

 木下社長を好きだった理由はほかにもある。長野県の農村(現在は飯田市)の出身だったからだ。三重県の寒村出身の記者は若いとき「農村文学」に夢中になり、信州を舞台にした小説なども片っ端から読んだ。戦前戦後もずっと国の犠牲になり搾り取られたにも関わらず、教育に熱心(そうせざるを得なかった事情があるのだろうが)で、いかがわしい店舗を認めずギャンブル(競馬、競輪、競艇がないのは長野くらい)もご法度の、記者とは真逆のまじめな県民性に敬意を表してきた。

 戦後の小説家ではやはり長野県出身の丸山健二氏こそが他社の追随を許さない最高峰で、ノーベル文学賞ものだと信じている(しかし、氏の小説を海外向けに翻訳できる人もまずいない。言外の意味を伝えるのは困難)。

 木下氏には、10年くらい前に日住協の会合でお会いしたのが最後だった。「いつでもどうぞ」と長野の取材を快く承諾されたのに行かなかったのが悔やまれる。

 92歳といえば大往生だろうと自分を納得させるしかない。長生きされたのは一般庶民に質の高い住宅を供給しようという高い信念・哲学を掲げ、本社があった住友ビルの10数階のオフィスまでエレベータを使わず階段を上り下りするなど身体を鍛えてきたからだと思う。

 どんどん昭和が消えていく。木下さん、安らかにお眠りください。

 

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