伊藤忠ハウジング 買取再販(リノベマンション)好調 事業の柱の一つへ拡大
「ライオンズマンション渋谷道玄坂」
伊藤忠ハウジングのリノベーションマンション「ライオンズマンション渋谷道玄坂」を見学した。同社が本格的に買取再販事業に参入してから3年が経過するが、都心物件に絞り込んでいる戦略が奏功し、来期は予算を倍増し、将来的には同社の販売事業と共に事業の柱の一つに育てる意向だ。
物件は、JR渋谷駅から徒歩9分・半蔵門線渋谷駅から徒歩7分・京王井の頭線神泉駅から徒歩3分、14階建て全99戸で、竣工は1999年5月。分譲住戸は最上階北西角住戸の専有面積65.33㎡、価格は11,980万円(坪単価605万円)。2023年10月にリフォーム完了済み。
同社流通グループ長補佐兼アセットソリューション部長・杉山準氏は、「買取再販部門のアセットソリューション部を創設してから5年、本格的に事業展開し始めてから3年が経過した。親会社・伊藤忠商事の意向もあり、当社の主力である販売部門と共に事業の柱に育てたい。来期は今期の倍増を予定している。大手の同業他社との競争は避け、仕入れ物件は7,000万円台から1億円台前半の都内23区を中心とする首都圏にターゲットを絞っている。販売も好調で、販売を開始してからほぼ3か月で完売している。この『道玄坂』も近く契約する予定」と語った。
今後分譲するマンションは「雪谷」「池袋」「御殿山」「高田馬場」「三軒茶屋」「浦和」など。
キッチンから写す(左側が西、右側が北方向。眺望が開けているのが特徴。いわゆる嫌悪施設はない)
伊藤忠ハウジング アセットソリューション部 初の大型案件「上十条」販売開始(2019/10/5)
リブランディングのヒントあり「大京ライフスタイルスタジオ」
「DAIKYO LIFESTYLE STUDIO(大京ライフスタイルスタジオ)」 エントランス
大京グループの本社1階にある「DAIKYO LIFESTYLE STUDIO(大京ライフスタイルスタジオ)」を見学した。10月下旬に開設したもので、同社とグループ会社が提供する様々なサービスを映像やパネル展示などで体感できる情報発信拠点だ。同社は今年4月、分譲マンションブランド「ライオンズマンション」を「THE LIONS」へリブランドすると発表したが、「THE LIONS」がどのようなものになるのかを探るのが目的だった。ヒントはいくつも隠されていると感じた。
エントランスには横6m×縦3mの巨大LEDパネルを設置し、ウェルカムムービーを表示する。
プロローグ(通路)には1968年に分譲されたシリーズ第一号物件「ライオンズマンション赤坂」から、2023年竣工の大規模複合開発「ライオンズタワー札幌」の歴史がパネルに展示されている。
ウェビナースタジオは、販売物件のオンライン説明会やお客さま向けセミナーなどの配信を行うスペース。
シアタールームは、正面・左右・床面の4面を使ったVRモデルルームを体験することができる。
インタラクティブウォールは、7か所のタッチポイントに手をかざすと、快適な暮らしをサポートする管理会社の機能などについてアニメーションが表示され、入居後の「貸す・借りる」「リフォーム」「売る」など様々な場面での同社グループが提供するサービス、サポートが紹介されている。
ウェルカムムービー
プロローグ(通路)
ウェビナースタジオ
シアタールーム
◇ ◆ ◇
「プロローグ(通路)」スペースに入った途端、同社の55年の歴史のうち40年くらい取材してきた記憶が走馬灯のようによみがえった。マンションの〝イロハ〟を学んだのも、分譲住宅取材の面白さに引き込まれるきっかけになったのも同社だ。これまで同社とグループ会社のマンション見学は200件をくだらないはずだ。以下にパネルに展示されている歴史などに若干手を加えた事象・マンションを列挙する。
・1960年 大京商事設立
・1968年 シリーズ第一号「ライオンズマンション赤坂」発売
・1978年 初の分譲トップシェア
・1984年 東証1部上場
・1988年 毎年1万戸超の発売 累計契約10万戸を達成
・1998年 敷地面積が約7.4haの「エルザタワー55」(650戸)
・2001年「環境共生」第1号「グリーンティアラ星が丘」
・2002年 環境共生住宅認定「フォレストレイクひばりが丘」(総戸数381戸)
・2005年 オリックスとの資本提携
・2005年 大京パワー〟を引き継ぐのはどこか(2005/3/11)
・2005年 〝拠点回帰〟実証した大京「ライオンズプラザ多摩センター」(2005/9/30)
・2005年 地域親和の大切さ教えてくれた大京の環境共生マンション「月島」(2005/11/25)
・2007年 累計6,000棟記念プロジェクト 「ザ・ライオンズ上野の森」(2007/2/8)
・2007年 扶桑レクセルのハイグレードマンション「新越谷」が人気(2007/12/12)
・2008年 時は金なり スピード感に欠ける 大京の経営・マンション事業(2008/11/7)
・2009年 1回では書ききれない魅力 「たまプラーザ 美しが丘」(2009/4/23)
・2014年 URコミュニティ社長に就任して10カ月 黒住昌昭氏に「再生」を聞く(2014/6/24)
・2014年 モデルルーム販売手法は大京が初 メディア向けニュースレター(2014/12/11)
・2015年 パッシブとスマートを融合した「港北ニュータウン」完成(2015/8/21)
・2017年 〝再配達ゼロ〟宅配ボックス発表会に記者殺到 大京・フルタイムシステムが新商品(2017/4/10)
・2018年 わが国初の大京NearlyZEHマンション 坪単価は東急「芦屋」の3分の1(2018/7/29)
・2019年 オリックスが大京の全株式を取得(上場廃止)
「アレ」を「暗黒社会」「ファッショ」に置き換えた…千代田区の仮処分申立書
神田警察通り第Ⅰ工区のイチョウの落ち葉(11月30日写す)
昨日(12月1日)行われた「神田警察通りの街路樹を守る会」緊急記者会見から一夜開けたこの日(2日)、会見を報じたメディアは2段見出しの東京新聞(50行はあったか)とベタ扱いの朝日新聞(20行くらいか)のみ。日経も読売も毎日も(産経は確認しなかった)1行もなし。記者会見と同じ日に選ばれた今年の「新語・流行語大賞」の「アレ」を「仮処分申立書」=「暗黒社会」「ファッショ」「テロ」に置き換えて考えてみた。
申立書の趣旨には「(工事現場の)土地について、午後8時ないし翌日午前6時までの間、債務者自ら又は債務者と意を通じた第三者をして、座込み、自動車の駐車その他の方法により、立ち入り、又は、立ち入らせてはならない」とあり、「申立ての理由」には「債務者らは工事に反対し、たびたび工事を妨害するため、工事が実施できていない」とある。
小生はこの文言に震え上がった。「債務者ら」とあるように、「ら」抜きではなく「ら」付きであることに注意する必要がある。文脈からすれば、現在の債務者10人にとどまらず「債務者と意を通じた第三者」もまた債務者に転落(イチョウの側からすれば名誉市民に昇格か)する危険性をはらむ。昨日も書いたように「工事妨害」の定義はないので、現場付近をぶらつくだけで「工事妨害」とみなされ、酔っぱらいを含め「工事に反対する」全ての人が「公務執行妨害者」の烙印を押されかねない。これはもう戒厳令下の赤の広場か天安門広場だ。
小心者の小生は「債務者と意を通じた第三者」になりうるか、大城弁護士に訪ねたのだが、大城氏は否定も肯定もしなかった。
何度も書いているが、小生は「イチョウの味方」-つまりイチョウは道路の付属物だから区の財産でもある。広義にとらえれば、小生の言動・記事は千代田区だけでなく全国の自治体の利益につながるはずだ。もう一人の小生が〝もっと書け〟と背中を押している。
ついでに、わが多摩市の対応について紹介する。市は令和3年、市議会で議決されたレンガ坂のユリノキ伐採工事説明会を開いた。伐採しないでほしいなどの声が寄せられたことから、市は計画を変更し、約100本のうち19本を残すことにした。工事については、安全性の観点から夜間工事はありうるとしながら、夜間工事はコストもかかることから、ユリノキの伐採は昼間に行ったはずだ。
また、図書館の新設に伴う中央公園内の樹木を伐採する際の令和3年4月、には、市は小学生などを対象に「樹木伐採起工式」を行い、阿部市長と藤原マサノリ多摩市議会議長の挨拶、多摩グリーンボランティア森木会(かつて内閣総理大臣賞を受賞)の川添会長の指示のもとで、参加者は樹木伐採作業を体験した。
千代田区が行っているのは真逆だ。住民をだまし討ちにし、人間にすれば志学の15歳か、破瓜の16歳か、芳紀の18歳か、伸び盛りのイチョウの死刑を執行しようとしている。人倫にもとる蛮行だ。「たびたび工事を妨害」とあるが、工事を行う場合は事前に住民に告知する約束ではなかったのか。約束をほごにしたから住民が行動を起こした。今回の騒動の責任は全て行政にある。
曲がりなりにも憲法でわが国民は、基本的人権は侵すことのできない永久の権利として保障され、思想、信条、宗教、集会、結社、言論、行動を含む一切の自由を有するわれわれが、突如として「公務執行妨害者」とみなされることになりかねないことを、申告書は示している。権力が〝怪しい〟と判断したら、債務者は365日24時間監視される社会になる。
千代田区長、この仮処分申告書を即刻取り下げていただきたい。申告が受理されたら全国に燎原の火のごとく広がる。貴殿はごく一部の「権力」の英雄に祭り上げられるかもしれないが、長い歴史で考えれば「全体主義へ道を開いた男」へ転落する危険性もある。千代田区民もまた歴史的選択を迫られている。自由かファッショか。
神田警察通り第Ⅰ工区(イチョウは残された)
◇ ◆ ◇
反社勢力と何ら変わらない「公務妨害者」の烙印を押された債務者の方々には酷だが、書かざるを得ない。刑法第59条には「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する」と明示されている。債務者10人の方は、この公務執行妨害罪に問われる可能性がある。怪我をさせたら傷害罪に問われることにもなりかねない。
区は用意周到。イチョウがどうなろうと全然考えていない。皆さんを陥れることしか考えていないことを申告書は証明している。例えば、「令和5年4月11日の妨害工事」には次のようにある。
「債務者●●●は、同日午前4時32分頃、作業帯内付近を警備していた訴外シンティ警備の警備員の胸ぐらをつかむ暴行に及んだ…その後、債務者●●●が、千代田通り側に急に走り出し、規制帯の端にたどり着くと、カラーコーン及びバーを取り外して作業帯内に突入した。そして、そこにいた訴外大林道路の作業員により制止されるや、同作業員を突き飛ばし、同作業員の背後にいた債権者の職員を転倒させる暴行に及んだ(証拠資料として診断書)。これにより債権者の職員は、腰椎椎間板ヘルニアの急性増悪等により6か月の療養を要する見込みの傷害を負った(証拠の診断書)」
申告書の記述は具体的だ。証拠資料としてはほぼ完ぺきに揃っている。区は4月17日付で神田警察署に被害届を提出し受理された。産経も含めてマスコミはこれを報じだ。公務執行妨害、暴行、傷害罪に問われたようだ。(メディアの怖いところだ)
この件だけでなく、申告書の債務者の言動、行動は、建築物の監理業務でかなり普及している音声付き高感度カメラで詳細に記録されているはずだ。債務者の方が「写真撮影は、工事を妨害しているという証拠づくりとしか思えない」と話したが、その通りだと思う。小生が行政担当だったら間違いなくそうする。その道のプロを雇い、債務者の一部始終を記録する。無謬の「公務」だから犯罪に問われることはない。顔認証も普及しているので、債務者の行動はその後も追尾されている可能性がある。申告書が受理されたら、工事が終わるまで追跡される。区は債務者が日常生活に支障をきたすことなど考えていないはずだ。
そこで債務者の皆さんに提案だ。これまでの活動に全国670万本の街路樹になり代わってお礼申し上げる。しかし、体が心配だ。〝わび状〟を一筆入れるのも一法だと思うがいかがか。〝泣く子と地頭には勝てぬ〟を実証する絶好の機会だ。イチョウが見事に死刑執行されるのを晴着を着て、日の丸の小旗を振って〝日本帝国万歳!〟の拍手・万歳三唱でもって見届けようではないか。みんな死ぬために生きているのだから。
神田警察署前の道路工事
うろつくだけで工事妨害!? 暗黒社会へ突入千代田区イチョウ守る会を犯罪扱い(2023/12/2)扱い
〝やめてくれよ区長さん千代に千代田のイチョウが泣いている〟30日夜の無法地帯(2023/12/1)
メディアは信頼できるか 「事実(ファクト)」とは何か 読売報道に想う(2023?11/25)
「多摩中央公園改修」の疑問氷解 樹木5000本 うち伐採予定1125本の8割は実生木(2023/10/21)
うろつくだけで工事妨害!? 暗黒社会へ突入 千代田区 イチョウ守る会を犯罪扱い
「極めて異例」「極めて疑問」「極めて異常」大城弁護士(東京高裁司法記者会で)
千代田区の「神田警察通りの街路樹を守る会」は12月1日、緊急記者会見を開き、先に千代田区が行った債務者10人を対象とした、神田警察通りⅡ期道路工事区間の歩道・車道への午後8時から朝6時までの立入禁止を求める仮処分申し立ては反対者の表現活動を禁止するものであり、住民に対する執拗な写真撮影は、民主主義、住民自治に著しく反する行為と区側の対応を批判した。
会見に臨んだ「守る会」の代理人弁護士・大城聡氏は約1時間の会見時間中に「極めて異例」「極めて疑問」「極めて異常」と「極めて」を3度も用い、仮処分申し立ては住民自治を根幹から揺るがすものと語り、「本日(1日)も工事が強行されるかもしれない。ぜひ現場を取材していただきたい」とメディアに訴えた。
このほか会見で住民代表は「わたしたちは工事自体には反対していない。イチョウ並木を残してほしいと訴えているだけ。今回の仮処分申し立ては住民同士の溝を拡大するもの」「写真撮影は、工事を妨害しているという証拠づくりとしか思えない」と話し、元区議も「悔しくてしようがない。議会決議には瑕疵がある。工事強行には断固反対する」と語った。
◇ ◆ ◇
この千代田区神田警察通りの街路樹であるイチョウ伐採に関しては数えきれないほど記事にしてきた。仮処分申し立ては昨日初めて知った。
この日(1日)配布された申立書を読んで驚愕した。申立書は38ページにわたるもので、債権者は道路所有者の千代田区で、債務者は千代田区神田地域に住む住民8人と区議会委員2人の合計10人。具体的な「工事妨害」行為の証拠資料も添付されている。
百歩譲って工事が合法とすれば、工事現場の立ち入りを禁止するのは当たり前だ。ところが、今回は妨害予防請求権なるものを根拠に「工事妨害者」を特定し、その人の道路通行を禁止するものだ。昨日も書いたが、これは反社会的勢力と同じ扱いだ。反社勢力だって公道を通ることは禁止されていない。これはもう魔女狩り、赤狩り、ホロコーストと本質的に変わらない。
「妨害行為」とは何か、大城氏にその定義を訪ねたが何もないということだった。そこで、申立書に記載されている具体的な妨害行為について読んだ。中には「警備員引き倒す暴行」「債権者の職員を転倒させる暴行」などと、事実であれば行き過ぎた妨害行為と受け止められるかもしれないが、記者が知る「守る会」の人たちは圧倒的に女性が多く、年齢も60歳以上が大半だ。屈強な警備員を引き倒す力があるとはとても思えない。わが国には伝統的な大岡裁きもあるではないか。
これらの事例はともかく、見逃せないのは、定義などないからそうなのかもしれないが、「妨害行為」かどうかの判断は区側に委ねられていることだ。区=善、祷民=悪の構図のもとに申立書は作成されているということだ。行政の無謬主義は改めるべきだと思う。
具体的事例をいくつか紹介する。「債務者●●●は、本件工事区域の作業帯付近をうろつき工事を妨害した」「債務者●●●は、作業帯付近にいて、『なんで住民をいじめるんですか』などと大声で主張した」「債務者●●●は、作業帯付近をうろつき、債権者職員や作業員に対し、文句を言うなどの行為に及んだ」「債務者●●●は、債権者の職員や訴外大林道路の作業員等を自らの携帯電話のカメラ機能により撮影していた」「債務者●●●は、債権者の職員の行動を携帯電話で執拗に撮影していた」…。
みなさん、いかがか。記者は昨夜、「撮影班」の背番号を付け、住民らを撮影してる人に取材目的である旨を告げ「わたしも同じように撮影していいか」と尋ねた。写真は債権者も債務者も区別なく撮影したが、「工事妨害」に該当するのかしないのか。
これに関連することだが、記者は公務上の公務員には肖像権は存在しないという説に賛成だ。とくに今回のような事案では、むしろ公務員の行き過ぎた行動を監視する意味で写真撮影は有効だと思う。
次にメディアについて。この日の緊急記者会見に出席していたのは小生を含め数人しかいなかった。裁判所データブック2023によれば、令和4年の全裁判所の新受全事件数は3,375,246件・人だ。一方、日弁連によると、2020年3月31日現在で弁護士は 42,164 人だ。全ての裁判に弁護士がつくかどうかは分からないが、1人当たり792件の計算になる。
このような数字を見ると、今回の事案などはメディアも無視するのかもしれないが、大城弁護士が「極めて」を3度も口にしたように、民主主義、地方自治の根幹を揺るがす問題だと思う。会見で記者の方が〝回り道もある〟と行政側の考えを紹介したが、問題はそんなことではない。住民を犯罪者扱いすることの是非が問われている。
これが通れば民主主義は死に(とっくに死滅したか)、ファシズムは床下あたりまで侵入していると考えたほうががいい。気がついたときは手遅れだ。
〝やめてくれよ区長さん千代に千代田のイチョウが泣いている〟30日夜の無法地帯(2023/12/1)
〝やめてくれよ区長さん 千代に千代田のイチョウが泣いている〟30日夜の無法地帯
11月30日20:00ころの神田警察通りの道路
11月30日20:00前後の千代田区神田警察署前の出来事だった。「来た!」という声が聞こえた。振り返ると、工事車両と思われる数台の車が車道を封鎖した。記者より体重が2倍もありそうな交通整理のおまわりさんでもない、何と呼べば分からない制服姿の一団と、それを取り巻く制服組がどたどたと駆けつけてきた。そして、だしぬけに「作業の妨げになります。大変危険です。離れてください。作業帯に入らないでください。ご協力をお願いします。通行者の皆さんは立ち止まらないでください。足元に気を付けて通行してください」とハンドマイクでがなり立てた。
何度も修羅場を潜り抜けてきた記者だが、権力の牙城である警察署の目の前で起きたこの出来事に思考力が停止した。二・二六事件もかくや。
寒さのせいか空腹と酒が切れた禁断症状か、手足口が震え、恐怖と怒りがこみ上げてきた。それでも記者の端くれだ。必死でメモを取ることにしたのだが、真っ暗なせいで何を書いているやらさっぱりわからなかった。
闇夜ではメモることはできないことを知った。口は達者なほうなので、「記録班」「撮影班」の背番号をつけた人に片っ端から声を掛けた。取材であることを告げ、「皆さんが撮影しているように、わたしも撮影していいか」と。誰も答えてくれなかった。らちが明かないので「責任者の方と話したい」と頼んだ。ようやく口を開いた方は「わたしの判断では(記者が撮影することについて)いいともダメともいえない」と話した。
取材については、別の方が「(取材に来ていることを)報告しなければならない」とのことだったので、その義務はないとは思ったが、記者は名刺を渡し、「誰に報告するのか」とただしたが、返事はなかった。これはアンフェアだ。
この間約10分。押し問答を繰り返しても何の収穫も得られないと考えた記者は、徒歩で10分くらいの区役所に向かった。ダメもとだとは思ったが、「責任者」にこの日の事態について説明を聞くためだ。
案の定、門前払いを喰らった。担当部署と思える庁舎内の灯りはついていたが、警備員によると、22:00まで開館している図書館を除き、17:00以降の一般の人の立ち入りは禁止とのことだった。「ドアの外で退館する人に声を掛けるのはどうか」と聞いたら、「(声を掛けられた人から)『怪しい人がいる』と通告が入ったら、不法侵入の疑いがあると、警察に連絡します」とのことだった。当然だ。
そこで、また現場に戻った。21:00ころか。工事の後片付けが行われていた。イチョウを伐採することはできなかったようだ。
「作業の妨げになります。大変危険です。離れてください」(危険なのは区だ)
道路をふさぐ車両
担当部署と思われる区庁舎5~6階の灯りはついていた(30日20:30ころ)
◇ ◆ ◇
上段は、今朝(30日)、「神田警察度通りの街路樹を守る会」の方からの「また伐られた」との一方で現場に駆け付けた顛末だ。
もうくどくどと書かない。全ての責任は樋口高顕・千代田区長にある。どうして文字通り闇討ち作業を強行するのか。令和4年3月17日に行われた区議会企画総務委員会でも嶋崎委員長は「そうだね。それは、協議会の合意が必要だよね…そこのところの知恵出しというか、やり方というか…多少瑕疵があったのかもしれない…」と議会議決には瑕疵があったと認めたではないか。どうして区民同士の分断を助長するのか。「過ちて改めざる是を過ちという」諺があるではないか。
この日(30日)の作業開始の手順にも問題がある。だしぬけに「作業の妨げになります。大変危険です。離れてください」はありえない。〝千代田区役所です〟〝神田警察署です〟(これはないと思うが)とどうして名乗れないのか。責任者も立ち合い、きちんと説明すべきだし、撮影班が周りの人を撮影する法的根拠を示すべきだ。
もう一つ、重大なことがある。「守る会」は11月30日付で千代田区長宛て「抗議書兼要望書」を提出した。その文書には「本件に関連し、千代田区から、神田警察通りの街路樹を守る会のメンバーに対し、午後8時から午前6時までの間、工事区間付近の道路への立ち入り、通行を禁止することを求める仮処分の申し立てがなされています」とある。
記者は仮処分申請書を読んでいないが、これでは「守る会」は反社会的勢力と同じではないか。仮に法的根拠があるとすれば、どのようにして「守る会」のメンバーを特定するのか。記者のような区の敵でも「守る会」の味方でもないニュートラルのイチョウの味方はどう扱われるのか。道路の附属物としてごみ箱か豚箱に捨てられるのか。
もう一度区長へ。来年早々に80歳になるというお母さんがこの夜もイチョウの傍に座っていた。貴殿はそれでも男か。〝やめてくれよ区長さん 千代に千代田のイチョウが泣いている〟。
端っこで成り行きを見守っていた21歳のガードマンは「ここに来いと言われてやってきただけ。どうなっているのか全然分からない」と話した。どこかで聞いたセリフだ。そうだ、ロシア兵だ。上段の美しい女性も「テロだ」と吐き捨てた。
「約束を反故。許せない」住民怒る 健全木のイチョウ 新たに4本伐採 千代田区(2023/2/7)
健全な街路樹を「枯損木」として処分問われる住民自治千代田区の住民訴訟(2022/11/12)
「苦汁」を飲まされたイチョウ 「苦渋の決定」には瑕疵 続「街路樹が泣いている」(2022/5/14)
民主主義は死滅した千代田区のイチョウ伐採続またまた「街路樹が泣いている」(2022/5/13)
千代田区の主張は根拠希薄イチョウの倒木・枯死は少ない「街路樹が泣いている」(2022/5/12)
「南船橋」駅直結の商業施設開業/再開発「日本橋」の次は「水道橋」か 三井不動産
「三井ショッピングパーク ららテラス TOKYO-BAY」
三井不動産は11月29日、千葉県船橋市で開発を進めてきたライフスタイル型商業施設「三井ショッピングパーク ららテラス TOKYO-BAY」をオープンした。開業に先立つ11月28日、プレス向け説明会・内覧会を行い、一般向けにプレオープンした。船橋市の「JR南船橋駅南口市有地活用事業」の事業者公募に同社が選定されたもので、公民連携による商業施設と分譲住宅の開発を推進する。
施設は、JR京葉線南船橋駅直結、船橋市若松2丁目に位置する敷地面積約16,740㎡、鉄骨造地上2階建て延床面積約11,200㎡。店舗数36店舗。基本設計は東急設計コンサルタント、実施設計・監理・施工は三井住友建設。運営・管理は三井不動産商業マネジメント。
関東初出店のタイ最大のコーヒーチェーン「Café Amazon」など36店舗が出店するほか、ドッグランや遊具広場を備え、フードフェスやスポーツのパブリックビューイングなどのイベントも実施する約5,000㎡の広場空間「MIXI FUN PARK(LaLa terrace Green Park)」を整備した。事業地内には三井不動産レジデンシャルの15階建てマンション「パーク・ホームズ南船橋」(212戸)と「パークリュクス南船橋」(133戸)が建設中。
案内会で主賓として出席した松戸徹・船橋市長は「周辺では、千葉ジェッツのホームアリーナが令和6年春にオープン予定であり、南船橋エリアに新しいまちのデザインが誕生する大きな流れがあります。船橋の新しい魅力を感じることができるこのまちに、皆様もぜひお越しください」と挨拶した。
主催者の同社常務執行役員 商業施設本部長・若林瑞穂氏は「南船橋は特別な思い入れがある場所。1981年にオープンしたららぽーと第一号店『ららぽーとTOKYO BAY』、物流施設『MFLP船橋』のほか、収容人数1万人の『(仮称)LaLa arena TOKYO-BAY(ららアリーナ 東京ベイ)』も来春に開業する。今回の施設は『南船橋』のケートウエイとして位置づけ、施設単独で年間売上高40億円、年間来館者200万人を目指し、エリア全体の売上高は1,000億円を見込む」と語った。
また、同社商業施設本部 リージョナル事業部長・肥田雅和氏は、施設の特徴として①駅直結②敷地の三分の一が広場③日常使い店舗のラインアップ④施設の約12%の電力をカバーする太陽光発電搭載、国土交通省の「グリーンインフラ活用型都市構築支援事業」認定事業-などをあげた。
南船橋駅周辺では、開業から40年以上の歴史をもつ国内最大規模の商業施設「ららぽーとTOKYO-BAY」や「ビビット南船橋」、物流施設などのほか、2024年春開業予定の大型多目的アリーナ「ららアリーナ 東京ベイ」の開発が進められており、船橋競馬場も2023年度末にリニューアル工事が完了する。
左から肥田氏、松戸市、若林氏
広場と「パーク・ホームズ南船橋」
◇ ◆ ◇
取材の目的の一つは、東大野球部出身でかつての同社野球部のエース&主砲の肥田氏(52)がどのような姿を見せるかを確認することだった。あの相手の打者や投手を震え上がらせたぎょろ目の鋭い眼光はすっかり影を潜め、すっかり中年おじさんに変わり果てていたが、体形は全然変わっていなかった。「野球? もう年で体がついていけない」と話した。体・容貌が真逆だった同窓後輩の溝口の近況については、「溝口? 彼はいまマレーシア」と語った。同社は現在、マレーシアで物流施設事業を推進中。
取材では思いがけない収穫もあった。同業の記者の方が、「三井不動産といえば『日本橋』。『南船橋』も『橋』がつく」と若林氏に語り掛けた。傍にいた小生はそのような切り口もあるのかと驚き、頭をフル回転させ「橋」のつく地名を探した。「水道橋」を思いつくまではものの1分もかからなかった。
すかさず、「橋といえば水道橋。次の〝東京ミッドタウン〟は水道橋ではないですか」と若林氏にビーンボールを投げた。
若林氏は微笑を浮かべただけでさらっと交した。代わって同社広報担当者が「東京ドームには愛着があります」と、また別の担当者は「後楽園もあります」とはぐらかした。
ン…「後楽園」。調べたら、東京ドームを含む「都市計画公園後楽園」(22.1ha)には「未供用」面積が2.83ha存在する。公園街づくり制度の適用要件である「未供用区域の面積が2.0ha以上」に合致する。この制度を活用して東京ドームを含む「水道橋」か「後楽園」がそう長くない将来再開発されるのは間違いない。
「南船橋」マンションは坪単価275万円のようで、これは安い。大楽勝だろう。
肥田氏
男子用トイレ(△△ハウスロゴに似ていないか)
記者が特別に作ってもらった白菜の具が甘くておいしい「どうとんぼり神座」のお子様ラーメン500円(このほかから揚げジュースが付く)
頂門の一針、蜂の一刺しにならないが アルヒ「本当に住みやすい街大賞」批判(2021/12/12)
三井不動産 総延べ床面積70万㎡の「MFLP船橋」全体完成(2021/6/30)
〝地域工務店が主役〟は達成された JAHBnet(ジャーブネット)25年の歴史に幕
「JAHBnet経営者ファイナルカンファレンス~勝どきを上げる会~」(ホテル インターコンチネンタル 東京ベイで)
宮沢氏
AQ Group(宮沢俊哉社長)が主宰するわが国最大の工務店ネットワークJAHBnet(ジャーブネット)は11月28日(火)、25年間活動を続けてきた活動の目的が達成されたとし、2023年12月末日をもって解散すると発表した。同日、全国の会員会社代表ら約100人が参加して、最後の会合となる「JAHBnet経営者ファイナルカンファレンス~勝どきを上げる会~」を開催した。
JAHBnetは1998年設立(当時「アキュラネット」)。「地域工務店・木造住宅を主役に」「日本の住まいを安くする」をミッションに掲げ、加入会員は最大で631社、現在でも100社を超えるわが国最大のネットワークで、累計販売棟数は16万棟を突破している。
ファイナルカンファレンスでJAHBnetの主宰を務める宮沢氏は約45分間にわたりJAHBnetを立ち上げた背景、狙い、活動、成果、今後の課題などについて語った。
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これから本格的に〝木造の時代〟が始まると思っていた木造ファンの記者にとって寝耳に水のイベントだった。宮沢氏は約45分間にわたって熱弁をふるった。会場に充てられた「ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ」に集まった北は北海道から南は沖縄まで約100人の会員からはしわぶき一つ聞こえなかった。
メディア席は最後列だったために、記者はどうでもいい「AQらめていない」などのジョークはよく聞き取れたのだが、肝心のどうして解散するのか、今後どうするかは宮沢氏も明言を避けたためさっぱり分からなかった。
しかし、〝目的は達成されました、はいさようなら〟には絶対ならないことだけは理解した。報道陣をシャットアウトして行われた同ホテル内での「勝どきを上げる会~祝勝会~」こそ、新たな活動のキックオフイベント、決起集会のはずだ。
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イベントが始まってから終わるまで約1時間。メディア席に用意されたのはたった〝1杯の水〟のみ。質疑応答もなし。このままでは引き下がれないと考えた記者は、「わたしの故郷・三重県からの出席者もいるはず。コメントを聞きたい」とスタッフにお願いしたら、肩書に「アキュラホーム津庄田店店長 ナカケンホーム」とある中川直樹氏(49)を紹介された。
中川氏は「わたしは大工。父も兄も大工、大工一家。直近の1年間で14棟を建てた。JAHBnetの解散は寂しいですが、新たにFCも始まりましたから…三交ホームさんに負けたくない」と話していたところに、だしぬけに別のメディアの方が3人も割って入り、記者を無視して名刺交換をした。
無礼な振る舞いに記者はカッとなったが、記者の方たちは、このナカケンホームがAQ Group のFC第一号店であることを宮沢氏か聞きだしたようで、それを了とした。
これが今後の活動の最大のヒントだ。(記者は、トイレのために会場から出る出席者に片っ端からインタビューしようと思ったが、スタッフから断られたので断念した。宮沢氏の話はテープにも収めた。改めて書く)
中川氏
全て流通材、組子格子耐力壁を現しで表現 AQ Group「8階建て純木造ビル」見学会(2023/8/26)
〝豊かな暮らし〟とは何か ジャーブネットが第18回全国大会&シンポジウム(2017/7/26)
狩猟型から農耕型へ 第15回ジャーブネット全国大会に500名超が参加(2014/7/4)
ステップアップしたジャーブネット 地域連携強化(2013/7/13)
寡占か群雄割拠か 分譲戸建て市場 大和ハウス 7,000戸体制へ拡大の波紋
どこに割って入るのか分からないのだが、大和ハウス工業取締役常務執行役員住宅事業本部長・永瀬俊哉氏は先日、2027年度までに木造を中心に分譲戸建て事業を7,000戸に拡大するとぶち上げた。市場規模を約14万戸とするとその5%だ。成長産業ならいざ知らず、加速度的に進む人口減少、爆発的に増える空き家などの社会的背景を考えると至難の業で、しかも、この業界は〝建売御三家〟が市場の4割近くを占めているが、見方によっては大手中小が入り乱れ、群雄割拠の市場と見えなくもない。同社が投じた一石は大きな波紋を巻き起こす可能性がある。同業他社は戦々恐々なのか、あるいは高みの見物を決め込むのか興味津々。分譲戸建て市場を概観した。
まずは、コロナ禍の〝追い風〟が止み、アゲインストに変わっても2022年3月期は41,534戸を計上したガリバー企業の飯田グループホールディングス。先に発表した2024年3月期第二四半期決算によると、販売棟数は18,700戸(同3.3%減)、1棟単価は3,017万円(同1.1%増)だ(参考までに紹介すると、積水ハウスの2022年12月期の分譲住宅の建物のみの1棟単価は3,247万円、坪92.6万円)だ。
同社は1棟単価の土地原価・建物原価・粗利益の構成比をグラフで公表しており、そのグラブ幅から推測して土地原価は約50%の1,509万円、建物原価は約36%の1,086万円、残りの14%が粗利益だ。また、敷地面積は平均100㎡、建物面積は平均95㎡くらいのはずで、建物原価は約38万円だ。
この建物原価38万円はどのような意味を持つか。2023年4月の住宅着工統計によると、木造分譲住宅の着工戸数は11,877戸(前年同月比4.5%減)で、1坪当たり工事予定額は52.8万円(前年同月比ゼロ)だ。
飯田グループの建物は全国平均より14.8万円/坪も安い。しかも、同社発表の全国市場占有率27.5%からすると、同社を除いた坪単価は58.1万円となる。つまり坪単価にして20万円、1棟につき約585万円も安い。同社の最大の強みだ。
なぜそこまで安くできるか。地域業者との連携によって用地取得費を抑え、徹底したシステマティックな商品企画にあるはずだ。外構・植栽コストを極端に抑えているのが特徴だ。(それをよしとする消費者がいるということ)
飯田グループの凄いのは、そこまで原価を抑えながら、かつ2025年の「ZEH水準比率100%」(飯田グループホールディングスTCFDレポート2023)を実現する目途を付けたことだ。同社は今後、この「ZEH水準100%」を最大の〝売り〟にして攻勢をかけるはずだ。
記者は専門的なことはよく分からないので深入りしないが、極論すれば、建物面積を小さくし、出隅・入隅をなくし、窓面も少なくした総2階の経済設計の戸建てが究極の「ZEH水準100%」ということだ。
飯田グループには戸数こそ圧倒的な差を付けられている業界第2位のオープンハウスグループはどうか。2023年9月期決算は売上高11,484億円(前期比120.6%)、営業利益1,423億円(同119.2%)、純利益920億円(同118.2%)と、中期経営計画で掲げていた「行こうぜ1兆!2023」を大幅に上回って達成した。昨年11月には三栄建築設計を完全子会社化し、今期も大幅増収を見込む。
戸建事業については、売上高5,903億円(同114.3%)、営業利益631億円(同100.3%)、営業利益率10.7%(同1.5ポイント減)と厳しい市場環境を反映したが、建売住宅の販売棟数はオープンハウス・ディベロップメントが4,929棟(1棟単価:4,320万円)、ホーク・ワンが2,403棟(同:4,710万円)で、合計7,332棟を計上した。
飯田グループより単価はかなり高いが、これは全国展開している飯田グループに対して、同社は地価水準の高い首都圏、名古屋圏、関西圏、福岡県に事業エリアを絞り込んでいる結果だ。建物原価は飯田とそれほど変わらないはずだ。
〝建売御三家〟のもう一社のケイアイスター不動産はどうか。2024年3月期第二四半期決算は、売上高1, 254億円(前年同期比21.3%増)、営業利益464億円(同55.2%減)と大幅増収、大幅減収となった。減収要因は市場変化、競争激化による在庫整理によるものだ。
分譲住宅事業の売上高1,214億円(同22.9%増)を販売棟数3,410棟(同18.9%増)で割った1棟単価は3,562万円。飯田グループより約500万円高く、オープンハウスより約800万円低いが、これは事業エリアの違いを反映したものだ。創業の地である埼玉県の着工戸数に占める割合は8.0%だが、隣接の群馬、栃木、茨城は10%を超え、九州の福岡、佐賀、熊本も10%を超えている。M&Aにより営業拠点を増やし、地域有力工務店とパートナー契約を結んでいるのが続伸の要因だ。パートナー企業は4,952事業者に上っている。
この先の展開で注視したいのは、同社をここまで成長させた最大の功労者である、ポラス出身の取締役常務執行役員・瀧口裕一氏が2023年9月30日付で退任したことだ。その影響はあるのかないのか。
このほか、分譲戸建ての計上戸数を公表しているところはポラスグループ2,792戸、積水化学工業(セキスイハイム)3,150戸、積水ハウス2,219戸、大和ハウス工業1,571戸、タマホーム1,247戸、フジ住宅623戸、三井不動産420戸、住友林業380戸、野村不動産353戸、アグレ都市デザイン319戸、ナイス246戸(注文含む)などのほか、数値は公表していないがパナソニック ホームズ、トヨタホーム、ミサワホームなどを傘下に持つプライム ライフ テクノロジーズ、一条工務店、各電鉄(系)会社、兼六ホーム、細田工務店、新昭和、創建…など年間数百戸の規模でコンスタントに販売している会社はたくさんあるはずだ。
考えてみれば、数百社あったマンションデベロッパーはリーマン・ショック後には数十社に激減した。一方で、建売住宅事業者のデータはないが、総務省のデータなどから類推すると数十社どころか百単位ではないか。大和ハウスが底引き網漁で捕捉するのは可能のようにも思えてくる。
住宅性能評価の分譲戸建てシェア74% 飯田GHは「ZEH化50%」に舵切り(2023/8/28)
ポラスグループ2023年3月期決算 増収減益/営業力の低下=取材力の退行を考える(2023/7/3)
メディアは信頼できるか 「事実(ファクト)」とは何か 読売報道に想う
今朝(11月25日)の読売新聞の記事を読んでいて「新聞・テレビ『信頼』68%」という見出しが目に留まった。スマートニュースメディア研究所などが行ったメディア価値観全国調査結果を伝えていた。
〝そんなはずはない〟と思い、同研究所の調査結果資料を取り寄せた。その通りだった。同紙の報道は正確ではなかった。68%という数値は平均値を示したもので、同研究所は年代別にかなり詳細な調査をしており、「とても信頼している」は18~39歳で4%、40~59歳で6%、60歳以上で11%となっている。「まあ信頼している」がそれぞれ52%、65%、70%となっており、同紙は双方を合わせて『信頼』と括った結果だ。一方で、調査では「全く信頼していない」層はそれぞれ8%、6%、3%となっている。
これをどう読むかだ。記者は18~39歳の層の「とても信頼している」が4%であるのに対し、「全く信頼していない」人は8%に達していることに注目した。
同じような記事をつい先日(2023年11月5日付)、朝日新聞の論説主幹代理・沢村亙氏による「(日曜に想う)偶然を楽しむ、人生が広がる」を読んでいたからだ。少し長くなるが、以下に引用する。
「4年前の本紙オピニオン欄で、作家の真山仁さんが、高校生21人とジャーナリズムをテーマに議論する企画があった。
毎朝、新聞を読んでいたのは1人だけ。『新聞が信用できない』に挙手したのは7人。ここまでは想定できた。
ショックだったのは、その理由だ。人が書く記事は主観が入るので正しい情報ではない。つまり『人が伝えること』への不信である。人工知能(AI)が記事を書くことに『良い方法です』という反応もあった。
不信の源流と、その後の変化を知りたくて、企画を発案した池田遥さん(21)に会った。
『原発事故からジャニーズ問題まで、メディアは何か大事なことを隠している、都合よく誘導しているという感覚が、私たちの世代に染みついている』との指摘は耳に痛い」
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「メディアは何か大事なことを隠している、都合よく誘導している」-これに、記者は耳が痛いどころかグサリと肺腑をえぐられ、息が詰まった。
上段の同研究所もまた2022年5月31日、メディアに手厳しい調査報告書を紹介している。桜美林大学リベラルアーツ学群教授・平和博氏の「ジャーナリズムの価値観は2割の支持層にしか受け止められていない、その信頼を広げる方法とは」がそれで、同氏は米国の「メディア・インサイト・プロジェクト」の調査報告を次のように紹介している。
「『(メディアは)意図的に人々を欺こうとしている』との回答が、『自国の政府のリーダー』『企業のリーダー』に比べて『ジャーナリストや記者』が最も多く、27カ国平均で67%、日本では52%だった。
さらに『政府』『企業』『NGO/NPO』『メディア』について、『社会を統一する勢力』か『社会を分断する勢力』かを尋ねた設問では、対象24カ国の平均で『分断する』が『統一する』を上回ったのは『政府』(48%と36%)と『メディア』(46%と35%)だった。
メディアの機能に対する評価を重ね合わせるため、『権力監視(Oversight)』『ファクト重視(Factualism)』『社会批判(問題の指摘、Social Criticism)』『弱者の代弁(Giving voice to the less powerful)』『透明性(Transparency)』というジャーナリズムの5つの基本原則についても尋ねている。このうち過半数の支持が得られたのは『ファクト重視』の67%のみ。5つの原則すべてを支持する、と答えたのは全体の11%にすぎなかった」
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記者は、このメディアが「社会を分断する勢力」には同意しかねる。そもそも全世界は「分断社会」ではないのか。「分断社会」の「事実(ファクト)」を伝えるのはメディアの役割ではないのか、「統一」する手段などメディアは持ち合わせていない(ペンの力は馬鹿にできないとは思うが)。
それより考えないといけないのは、「事実(ファクト)」とは何かだ。これは永遠のテーマだ。小説家は「嘘」をいかに事実であるように書くのが商売だが、メディアは「嘘」を暴き、「事実」を報じるのが使命だ。表層的な「事実」を追っていたら、いつまでたっても「真実」にたどり着けない。自戒の念を込めて読売新聞の記事を紹介した。
基本性能・設備仕様は素晴らしいが…課題も 大和ハウス「セキュレア西大宮V」
「セキュレア西大宮V」のモデルハウス
大和ハウス工業が11月21日に行った「戸建住宅事業 計画説明会の第二部の現地見学会となったのは、今年5月に発売した木造戸建住宅新商品「xevo BeWood(ジーヴォ ビーウッド)」初の実棟「セキュレア西大宮V」のモデルハウスだった。基本性能・設備仕様レベルは間違いなくトップレベルだが、様々な課題も見つかった。
物件は、JR川越線西大宮駅から徒歩16分~17分、さいたま市西区西大宮二丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)に位置する全23戸。現在分譲中の住戸(7戸)の敷地面積は142.19~146.10㎡、建物面積は98.71~104.98㎡、価格は5,980万~6,580万円。建物は令和5年7月完成済。構造は軽量鉄骨2階建て。
モデルハウスはZEH仕様、最大天井高2.9m、床はオーク材の突板仕上げ、天井はオウシュウカラマツの現し、幅4間(7280mm)の大開口、サッシ高2400mm、坪庭付き、外壁は塗り壁仕上げなどが特徴。
現地は、土地区画整理事業により整備された面積約115.5ha、計画戸数4,010戸の住宅地の一角。2017年からデベロッパー、ハウスメーカーなどにより戸建て分譲が開始された。地区計画により土地の最低面積は135㎡以上と定められている。
リビング
リビング
分譲中の住棟
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この住宅地は過去2度、ポラスグループの分譲戸建ての取材で訪れている。駅前には何もなく閉口したが、居住者の多くは西大宮バイパスを利用するようで、生活利便施設には不自由しないようだ。
第一部で永瀬氏が語った、現在は同社の分譲戸建て比率は7%しかない木造を「分譲は全て(7,000戸)木造にしたい」を記者は半信半疑で聞いていた。分譲戸建て市場はマンションと異なり、全国規模にわたって大手中小が入り乱れて激しい競争が展開されており、それに伍するには2倍、3倍のエネルギーを注ぎ込む必要があると考えたからだ。
毎年の分譲戸建ての全国着工戸数は14万戸くらいか。そのうち、記者が〝御三家〟と呼ぶ飯田グループ、オープンハウス、ケイアイスター不動産の市場占有率は4割近い。圧倒的な価格の安さが〝売り〟で、価格は3,000~4,000万円台が中心だ。
一方で、三井不動産レジデンシャル、野村不動産などの大手デベロッパーはこれら御三家とは一線を画し、大都市圏にエリアを絞り込でいる。数年前にはそれぞれ年間800~900戸に達したが、その後は400~500戸に減らしている。用地取得が難しいからだろう。
面白いのがポラスグループだ。自社プレカット工場を持ち、埼玉県の越谷を本拠にその周辺エリアに特化し、年間3,000戸近くをコンスタントに販売している。エリアの市場占有率は突出している。いわゆるパワービルダーより価格は500~1,000万円くらい高いが、各グループ会社が商品企画で競い合うことでユーザーの支持を得ている。
ハウスメーカーのことはよく分からないのだが、同業の積水ハウスは数年前までは木造「シャーウッド」の伸び率は鉄骨系をはるかに上回っており、記者はその伸び率からして鉄骨系を超える時代が来るのではないかと予想したが、最近は平行線のままだ。その理由は分からない。最近、同社は地域パートナー企業と連携する「SI(エス・アイ)事業」を開始した。
大和ハウスはどうか。全国の分譲戸建てをランキングで示せばベスト10に入るかどうかだろう。そんな同社が4年後に7,000戸に増やし、しかも「木造」比率を飛躍的に伸ばすという。
ブランド力は他を圧する同社だから、本気を出せば年間7,000棟は難しくないかもしれない。「セキュレア西大宮Ⅴ」のモデルハウスの基本性能・設備仕様は間違いなく御三家などを蹴散らす。そもそも比較すること自体が失礼だ。
しかし、課題もいくつか見つかった。同社に頑張ってほしいから敢えて指摘する。
まず、外構・緑被率。外構は寂しい。緑被率を現場担当者に聞いたら20%もないということだった。これは同社に限ったことではないが、もっと真剣に緑被率をあげることに関心を払うべきだ。国も一定程度の緑被率を確保した住宅にインセンティブを与えるべきだ。積水ハウスの「5本の樹」計画は全国区になりつつある。
緑と関連することだが、同社は11月21日から俳優・松坂桃李さんを起用した分譲住宅「Ready Made Housing.」の新TVCM「いいとこどり」篇を公開した。説明会でも紹介された。いきなり樹海が展開された。記者は松坂さんの名前を初めて聞いたが、とてもいいと思った。あの同社のCM「物流×AI」を思い出した。
次に、細かいことだが、浴室には壁にタオル掛けがついていたが、ドアには一つもなかった。ZEH仕様だから冬場は寒くはないだろうが、ドアにも付けるべきだ。ユーザーはこのような些細なことに感動を覚える。ポラスは天井高2.7mだけでなく、細やかな配慮がユーザーの心をとらえている。
尺モジュールの階段も気になった。積水ハウスはずっと前からメーターモジュールを標準にしている。マンションではトイレの把手を壁面まで後退させるユニバーサルデザインを採用している。
話を元に戻す。「西大宮V」の分譲住宅は全23区画のうち13棟で、今年6月から販売を開始しており、6棟が成約済みだ。残っている7棟のうち5棟は敷地南側に「保存林」が広がる6,000万円以上の住棟だった。
その理由を瞬時に理解した。庭先の保存林までは数メートル。柵で遮られていた。樹高は住棟より高い。つまり、真昼はともかく、日照がほしい冬場の昼は日が当たらないのがネックだし、価格も市場価格より数百万円は高い。
しかし、また考えた。敷地真南に新CMと同じような樹海が広がる-これほど恵まれた分譲戸建てなど首都圏はおろか、全国のどこを探してもないのではないか。保存林の所有者と交渉して入会権とか地役権を設定して、自由に往来できるようにしたらどうか。たくさんの動植物が生息しているはずだ。夏場の気温は間違いなく2、3度は低い。毎日森林浴ができる価値は数百万円どころでない。1,000万円の価値がある。竣工して4か月も残っているのは、この「緑環境」のよさを訴え切れていないからではないか。
これは余談。各住戸の敷地内には赤い実をたくさんつけていた樹木が植えられていた。毒がある樹木を植えるわけがないと思い、一つ食べてみた。ぶつぶつがあり美味しくはないが、懐かしいグミかヤヤモモの味がした。担当者に何の木か聞いたが、誰一人答えてくれなかった。図鑑で調べた。初夏に可憐な花が咲くヤマボウシのはずだ。お客さんにはきちんと説明できているのだろうか。
敷地南側の保存林
北側道路から写す
ヤマボウシ
浴室
大和ハウス分譲戸建強化 4年後に4.5倍増の7000戸「木造」へも舵切り(2023/11/23)
「物流」に「AI」 ドライバーに「愛」 大和ハウス&日立物流 コンテスト説明会(2022/12/1)
大和ハウスの新TVCM 「物流×AI」が最高に面白い(2018/1/5)