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 国土交通省は1月31日、マンション標準管理規約の見直しについて検討する第4回「標準管理規約の見直し及び管理計画認定制度のあり方に関するワーキンググループ」(座長:齊藤広子・横浜市立大学国際教養学部教授)を開催した。

 改正「マンション標準管理規約」について、第19条に追加される専有部分の貸与について委員の方が、「『区分所有者は、その専有部分を第三者に貸与する場合には、この規約及び使用細則に定める事項をその第三者に遵守させなければならない』とあるが、反社勢力などへの譲渡を防ぐためにも、譲渡も含めるべきではないかと」質問した。

 これに対して別の委員は「業者との売買契約には反社を排除する項目があるから必要ないのではないか」とする旨の発言があった。

 確かに不動産業者を介した売買契約なら反社勢力は排除できるだろうが、反社勢力に譲渡しようと考える人は、果たして不動産業者を介するだろうか。

 記者は、この19条には「不動産会社を介さないで直接第三者に譲渡する場合」などを加えるべきだと思う。

 この点については、同法第67条(理事長の勧告及び指示等)には「区分所有者若しくはその同居人又は専有部分の貸与を受けた者若しくはその同居人(以下「区分所有者等」という。)が、法令、規約又は使用細則等に違反したとき、又は対象物件内における共同生活の秩序を乱す行為を行ったときは、理事長は、理事会の決議を経てその区分所有者等に対し、その是正等のため必要な勧告又は指示若しくは警告を行うことができる」とある。

 これはこれで結構だが、意図的に反社勢力に譲渡とした人の罪は問われない。いかがなものか。

 「管理計画認定制度」については議論百出した。

 同制度は、令和4年4月からスタートしたもので、マンション管理適正化推進計画を作成した地方公共団体が一定の基準を満たすマンションを認定するもの。令和5年12月末現在、認定実績は378件(国土交通省が把握しているもの)となっている。地方自治体別の認定実績は神奈川県が90件、東京都が82件のほかは、埼玉県、愛知県、大阪府、兵庫県が20件台で続き、認定実績がない自治体は8割に達している。記者はこの「管理計画認定制度」をよく知らないし、多いか少ないか判断もできないが、多くの委員からは「認定基準のハードルが高すぎる」「管理組合、居住者にとってインセンティブがない」「行政のマンパワー不足」などの声が聞かれた。

 ここに割って入り、快刀、乱麻を断ったのが、戎正晴委員(弁護士)だった。戎氏は「自治体が推進計画を作成するのは義務付けるべき。マンションの実態を把握するのは義務ではないか。全てのマンションに管理の実態を届けるようにし、一定水準以上を認定すればいい」と話した。この意見に賛成なのか反対なのか分からなかったが、齊藤座長は「届け出制にしろということですか」と答えた。

 記者も、戸建て居住者との公平性をどう担保するかだが、基本的には戎氏の意見に賛成だ。どこにどのようなマンションを含む共同・集合住宅が建っているのか実態を把握できていなかったら、災害時の対応などできないではないか。(登録が伸びないのは、災害時に公助など受けられないとみんな思っているからではないか)

 今後どうするかだが、マンション管理業協会の「マンション管理適正評価制度」と連携すべきだと思う。同管理協の登録件数は2千件を突破した模様で、今年度中に1万件登録を目指している。★5つの〝優等生〟だけでなく、★一つや二つの〝劣等生〟にも「ここをこうすればランクが上がる」などと希望を持たせているのが味噌だ。こんなことは言いたくないが、行政主導で物事がうまくいったためしがない。新築を対象とした予備認定制度も組み合わせるべきという意見には大賛成だ。

 ワーキンググループではこのほか、修繕積立金の3つの「段階増額積立方式」について論議された。記者は「適正な修繕積立金」がいくらなのかさっぱりわからない。

マンション管理適正評価制度の〝見える化〟へ 個社データの公表にも期待(2023/9/15)

 


 

 

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中山氏(左)と井上さん(同社本社で)

 不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME'S」を運営するLIFULL(ライフル)は1月31日、恒例の「2024年LIFULL HOME'S みんなが探した!住みたい街ランキング(首都圏版)」を発表した。ベスト3は、「買って住みたい街」が「勝どき」「平塚」「大宮」、「借りて住みたい街」が「本厚木」「葛西」「八王子」となった。当日は、タレントの井上咲楽さんが出演し、LIFULL HOME'S総研副所長・チーフアナリストの中山登志朗氏や人気上昇している「浦安」「橋本」エリアの地域不動産会社社長らとトークセッションを行った。発表会のメディア参加者は約40人。

 冒頭、LIFULL 代表取締役社長・伊東祐司氏は「当社はサービスの拡充と情報の発信に力を入れており、サービスの拡充では住宅弱者など社会課題にも取り組んでいる。情報の発信では今回の『住みたい街ランキングが最大』。ユーザーの年間を通じての生の声を反映したもの」と挨拶。

 続いて中山氏は、今回の結果について「『買って住みたい街』」で5年連続トップとなった『勝どき』は圧倒的な規模と価格の安さなどが評価された。このほか準都心部も上位に進出するエリアが多い一方、子育て世代を中心に利便性が高い割に価格がそれほど上昇していない郊外・準郊外も安定して上位を維持しているように、二極化がみられる。『借りて住みたい街』も同様に、都心回帰がみられるものの、生活や交通利便性などのバランスが良好な郊外部も評価されている」と分析した。

 このあと、井上咲楽さんと中山氏、橋本エリア代表の落合不動産代表取締役・落合健氏、浦安エリア代表の明和地所代表取締役・今泉向爾氏とのトークセッションが行われた。

 18歳で上京し、池上、西小山、荻窪など7~8回引っ越ししたという井上さんは「めっちゃ楽しい」「めっちゃ面白い」「めっちゃいい」「めっちゃめっちゃ大事」「めっちゃめっちゃ便利」など〝めっちゃ〟を10連発。「部屋で大事なのはテレビ用コンセント」と話した。

 落合氏は、橋本はリニア新幹線停車駅であることが人気急上昇の要因だが、海や山、豊かな自然も近くにあることから〝オンとオフ〟の切り替えができる街だと強調し、今泉氏は、「『浦安』は千葉県でもっとも面積が小さい市だか2キロ四方に約2,000戸のマンションが建っており、しかも100㎡超も多く、みんな広い」と〝狭くて広い〟浦安(新浦安)をアピールした。

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伊東氏

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井上さん

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井上さん

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左から今泉氏、落合氏、井上さん、中山氏

◇        ◆     ◇

 この種の街や住宅地を対象とした「○○ランキング」は5つも6つもある。その一つ、過去7年にわたり住宅評論家やタレントなど起用して年末に賑々しく発表されてきたSBIアルヒ「本当に住みやすい街大賞2025年版」は年を越してもまだ発表されていない。理由も公表されていない。〝街や住宅を笑いものにし、自社の広告宣伝に利用するのはいかがなものか〟といささか腹を立てている。LIFULLの今回のイベントに取材申し込みしたのは、消費者をミスリードする内容であれば、一言苦言を呈しようと考えたからだ。

 結果はそうではなかった。元データは、消費者のアンケートでも投票でもなく、同社の独自判断でもなく、あくまでもこの1年間の不動産物件サイトに寄せられた問い合わせ、反響などの件数を駅圏ごとに落とし込んだものであることの説明があった。その件数は非公表だったが、「買って住みたい街ランキング」トップの「勝どき」が100%であるのに対し、その比率は2位の「平塚」が44.1%、3位の「大宮」が42.2%、10位の「五反田」が32.3%と公表されていた。

 「借りて住みたい街ランキング」も同様に、近くに大規模マンションの分譲があったり、都心へのアクセスの割には賃料が低いままであったりすることが消費者に評価されているのだろう。

 「LIFULL HOME'S 注目の街」では、「北綾瀬」「橋本」「浦安」「八街」「大宮」「蕨」がリストされているが、これは選ぶのは同社の勝手だ。「橋本」を取り上げるのは当然だろう。それは分かるのだが、ならばわが多摩センターについても触れてほしかった。恵泉女学園が廃校となり、京王プラザホテルも閉店となり地盤沈下は甚だしいが、緑環境、歩車分離の街づくりは首都圏のどこの街にも負けない。このほか、京王線は「住みたい街」も「借りたい街」も「調布」「千歳烏山」「笹塚」くらいしかなく、割り負け感がぬぐえない。

 まあ、愚痴はこれくらいにしておく。今回の発表会で嬉しかったのは、最後の中山氏の締めだ。中山氏は今年4月から省エネ住宅性能表示制度が変更になり、住宅の質を重視して選択して欲しいと呼びかけたことだ(発表会はメディア向けだから、メディアがきちんと消費者に伝えるかどうかは別問題)。

 取材して得た結論は、同社だけでなくどこのランキングもデベロッパーの大規模開発が行われているところが上位に進出し、つられてその駅周辺の割安感がある住宅地などか浮上するということだ。ランク下位、または圏外に住む人は悲観などする必要はさらさらなく、上位との差は僅差で、つまり五十歩百歩、住めば都ということだ。記者がイベント担当なら向こうを張って「住みたい街 圏外ベスト100」を企画し、大真面目に論議する。

越年しても発表されないSBIアルヒ「本当に住みやすい街大賞」なぜか(2024/1/13

 

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「断熱最高等級7の家」

 住友不動産は1月30日、注文住宅の新商品「断熱最高等級7の家」を2月1日から販売開始すると発表した。

 「断熱最高等級7の家」は、「2×6工法」、「内外壁のダブル断熱」、「高断熱樹脂トリプルガラス」の組み合わせにより断熱等級7を実現。UA値(外皮平均熱貫流率)は、平成28年省エネ基準の0.87の3倍以上の0.25となる。

 国は2025年には全ての新築住宅に断熱等性能等級4以上を義務化、2030年には断熱等級5を最低基準として引き上げるなど、住宅市場全体の高品質化を進めている。同社は国の基準を上回る商品を開発することで、住宅市場の高住宅性能のスタンダードを断熱等級6・7基準へと引き上げていくことを目指す。
 

 

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左から渡部氏、堀江氏、清水建設土木東京都支店 千葉土木営業所外環京葉Gランプ作業所公務主任・石﨑裕大氏、大垣氏、セーフィー企画本部IoTソリューション部プロダクトグループ・中田恵吾氏

クラウド録画サービスシェアNo.1のセーフィーは130日、記者発表会を開き、電源のみですぐに利用でき、屋外設置可能なLTE搭載クラウド録画型カメラ「Safie GO 360(セーフィー ゴー サンビャクロクジュウ)」を202421日から提供開始すると発表した。発表会では、顧客のアイダ設計建設本部部長・堀江久幸氏、清水建設建築総本部生産技術本部 生産技術開発センター デジタルマネジメントグループ主査・大垣博氏らが同社営業本部第2ビジネスユニット部長・渡部郁巴氏とトークセッションを行った。発表会には約40名のメディアが参加した。

Safie GO 360」は現場の全景を俯瞰して撮影できることに加え、狭小地の撮影でも、焦点距離が近い対象物を歪みがなく明瞭に映し出すことが可能。過去の映像を振り返った時にも360°の上下・左右自由に動かせる画角により映像の隅々まで取り逃しがないことも特徴。また、現場監督や作業員自身が簡単に設置でき、都度の取り外しの手間やコストの削減にも繋がり、工程の進捗確認、順序の遵守有無などを遠隔から確認でき、現場訪問時間を大幅に削減できる。重さは約3.95㎏(金具含む)。

セーフィーは2014年設立のベンチャー企業。2017年にLTE搭載クラウド録画型カメラ「Safie GO」第一号を提供開始しており、テクノ・システム・リサーチ社の「ネットワークカメラのクラウド録画サービス市場調査(2022)」によると、この種のカメラ登録台数ベースシェアは56.4%のトップとなっている。

会見で渡部氏は「『Safie GO』は建設業界向けに数万台提供しており、スタンダードになっている。今年は2024年問題がスタートする。6月からは建設業などの時間外労働時間制限80時間/月が施行される。また、法令1万件のアナログ規制一掃に向けたデジタル化の取り組みも加速しており、マーケットは当社にとって追い風になっている。今回の商品はAIとの連携を視野に入れたデジタル化の入り口になるプロダクト」と語った。

堀江氏は、「導入時に7社製品と比較したが、クラウドで見ることができるのが決め手となった。現在では120拠点で採用している。戸建て現場は工期34か月で現場を訪問する機会は3045回くらいある。電話でのやり取りが多くその無駄を省くことができ、全体分析もできるので効率化も図れる。職人さんなどは〝見られている〟という意識はあるだろうが、いたずらなどの抑止力にもなる」と話した。

大垣氏は、「『Safie GO 360』により従来製品では困難だった上下・左右の全方向映像を収めることができ、遠隔での現場確認をより効率的に進めることが可能になった。仕上げ工事中の天井や床下などの施工状況を1台のカメラで遠隔確認ができ、生産性向上に繋がることが期待できる」と語った。

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Safie GO 360(セーフィー ゴー サンビャクロクジュウ)」
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ドローンにも対応できる機器

        ◆     ◇

 アナログ人間そのものの記者は話を聞きながら、この人間味など全くない不気味な魚の眼が省力化・省人化・生産性向上につながるのはよく分かった。法令1万件のアナログ規制撤廃は待ったなしだ。

同社は提供目標については非公表としているが、マーケットは年間12万台のようだ。

課題の一つは重さではないか。大垣氏は、現場担当者のヘルメットに装着すると話したが、重さ4キロ前後のカメラを頭に付けたら記者など1時間ももたない。慣れれば平気なのだろうか。

もう一つは、大垣氏も指摘したが、膨大な量の画像データを人が分析したら担当者の時短にはつながらないのではないか。AIとの連携が必至だ。そうすればほとんど瞬時に知りたい情報を得られのではないか。

社員・職人を監視することの懸念について質問したメディアの方もいたが、やろうと思えばできるだろうが、本末転倒だ。労使でそうならないようにしっかり契約すべきだろうし、そもそも社員・職人を信用できないような社長や上司は鼎の軽重が問われる。AIには経営陣の指示が適切かどうかを判定する権限を付与すべきだと思う。

記者は、法令違反・施工不良を防止することにつながるかどうか質問したが、大垣氏は「データは残るので、品質向上にはつながる」と答えた。

この意味はみんな考えないといけない。カメラは「事実」を正確に伝える。それを「是」とするのか「非」と判断するのか、問われるのはわれわれ人間の「視力」だ。

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清水建設活用イメージ 

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清水建設活用イメージ

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アイタ設計活用イメージ

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アイダ設計活用イメージ

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アイダ設計活用イメージ

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日本エスコン代表取締役社長・伊藤貴俊氏(左)とヤマガタデザイングループ代表取締役・山中大介氏

 日本エスコンは1月29日、山形県鶴岡市のヤマガタデザインの子会社ヤマガタデザインリゾート(YDR)、東京都小金井市の有機米デザイン(YMD)とともに、「農」をコンセプトとするホテル「(仮称)SUIDEN RESORT」を全国で開発すると発表した。

 YDRは2018年、「田園風景」をテーマにした宿泊施設「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE」を開業。朝食バイキングの食材の地産地消率を80%以上とし、年間6万人の宿泊客を呼び込んでいる。

 YMDは、水田の除草作業を省力化するロボ開発や有機米の流通、未利用資源の有用資源化、有機農業の実践などを通じて、全国の農業従事者の生産性向上、収益改善に貢献している。

 日本エスコンは2024年2月、完全人工光型植物工場の建設・運営を行う会社を設立し、食や農業分野の課題解決に向けた事業に取り組んでおり、今回の連携により、「(仮称)SUIDEN RESORT」 を日本全国に展開していく。業務提携契約を締結し、YMDへ2億円を出資し、同社社員1名がYMDの社外取締役に就任予定。

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「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE」

 

 

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女性用更衣室・パウダールーム

 東京建物と東京建物リゾートは1月29日、新たな都市型スパブランド「TOTOPA」を立ち上げ、2024年3月下旬に東京都初のPark-PFI事業「都立明治公園」内に第一号店を開業すると発表した。

 「TOTOPA」は、東京建物グループのスーパー銭湯「おふろの王様」の運営で培ってきたノウハウを生かしたもので、都心部を中心にコンパクトかつユニークなリラクゼーション体験ができる施設として開発・運営するもの。ブランド名は「ととのえる」+「SPA」から「TOTOPA」としたもの。

 第一号店「TOTOPA 都立明治公園店」は「都立明治公園」のA棟2階、3階に設置。女性用フロア(2階)では、薬草スチームに包まれながら、乾燥による肌や髪へのダメージを抑制し、デトックスができる蒸し湯体験を提供するほか、蒸し湯、サウナ、水風呂、お風呂も完備。男性用フロア(3階)は、3つのユニークなサウナ空間に加え、水深約160cmの水風呂を含む2種類の水風呂、外気浴を中心とした3つの休憩スペースを完備し、18通りの「ととのい」体験を実現する。

 「おふろの王様」は1999年に第一号として「光が丘店」をオープンしてから、2024年1月現在、10店舗を運営している。

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男性用浴室

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男性用水深約160cmの水風呂

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 風呂は大嫌いだが、「おふろの王様 多摩百草店」を仲間と一緒に宴会目的で一度利用したことがある。あまりにも大きく、様々な施設があるのに驚いた。都市公園内の「風呂」はPark –PFIによる三菱地所など「海の中道海浜公園」で見学したことがある。「脱衣室及び浴室は、屋外から見通せない構造とすること」とする市の条項に抵触することから、海に面した風呂場はシートで覆われていた。

過去の記憶蘇る 東京都初のPark-PFI活用した「都立明治公園」完成(2023/11/4)

公園が旅の目的になる わが国初のPFI事業 三菱地所他「光と風の広場」開業(2022/3/11)

 

 大和ハウス工業は1月27日、主催:高齢者住宅財団・高齢者住宅協会の共催として「団地再生シンポジウム」を奈良県にある同社グルーフみらい価値共創センター「コトクリエ」で開催した。住宅団地の現状と課題を明確にし、住民、有識者、企業人による対話を通じて、持続可能な住宅団地の実現を目指した解決の糸口を探るのが目的。オンライン視聴者310人を含む約630人が参加した。記者はオンラインで視聴した。

 講演会の冒頭、国土交通省近畿地方整備局長・見坂茂範氏がわが国の住宅団地は約3,000団地あり、全人口の15%が居住しており、多くが50年を経過し建物と居住者の高齢化が進み、空き家も発生していることから、行政、有識者、産業界が連携して団地再生に取り組むことが重要と挨拶した。

 この後、国土交通省大臣官房審議官(住宅局担当)・宿本尚吾氏と、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授・大月敏雄氏、大和ハウス工業リブネスタウン事業推進部東日本統括グループ長・作田千佳氏がそれぞれ講演。

 宿本氏は、「大和は奈良県だからと思っていましたが、そうではなかった。ネオポリス幼稚園もあった」などと、自ら奈良市学園大和町生まれであることを紹介。住宅団地の現状については、少子高齢化の影響が顕著に表れており、用途規制が厳しいことなどの課題があると話した。住宅市場の現状と課題、方向性については、住宅団地はインフラが整っているところが多く、二地域居住、テレワークなど新しい住まい方、多様な働き方、新技術、DX、リフォーム、・リノベーションなどを触媒として化学変化を起こすことに期待したいと述べた。地域再生法により資金面の応援も行っていくと語った。

 大月氏は、住宅生産振興財団主催の「住まいのまちなみコンクール」の審査委員を第4回から務めており(第16回から現在の19回まで審査委員長)、表彰を100回、その数倍のインタビューをこなしてきた経歴を示し、具体的事例として2017年から関わっている八王子市めじろ台の再生を紹介。団地憲章からマスタープラン作成、多世代交流拠点、コミュニティカフェなどの居場所の開設などを支援してきたことを話した。今後は企業にも働きかけていく予定だという。

 作田氏は、同社が過去に開発した60か所の大規模住宅団地「ネオポリス」の団地再耕に向けた「リブネスタウンプロジェクト」を2014年から8団地で行っていることを紹介した。

 講演会の後では、同社代表取締役社長・芳井敬一氏も参加して「ネオポリスサミット2024~ネオポリスの再耕に向けて~」が開かれ、翌日28日には「コトクリエ」見学会も行われた。

◇        ◆     ◇

 八王子市めじろ台は何度か取材したことがある。京王不動産が中心となって開発した100ha以上の京王線めじろ台駅周辺に広がるニュータウンだ。市内では昭和40年代から60年代前半にかけて大規模住宅開発がたくさん行われていたが、駅から徒歩圏の住宅地はここしかなかったことから人気を呼んだ。バブル期には価格は1億円を超えたのではなかったか。現在は、65歳以上の高齢者の人口比率は4割を超え、他の団地と同様の様々な課題を抱えているようだ。大月氏の講演は団地再生に関わる関係者にとても参考になったのではないか。

 作田氏の講演では、「最初は(話を持ち込んでも)戸惑いを見せる方も多く、何度も足を運び、現地に泊まったり住むようにしたりするうちに心を開いてくれるようになった」旨の話をしたのが気になった。

 なぜか。居住者に戸惑いを覚えさせる理由がある。デベロッパーの〝顧客優先〟は空念仏で、〝事業離れ〟という言葉が業界にあったように、どれだけ多くの戸数をどれだけ短期間に販売するかが問われた時代だった。居住者にしてみれば、手助けをしてほしいときには何もしてくれず、もう先が短い年寄りを相手にまた一儲けを企んでいるのかと疑心暗鬼に陥るのは当然だ。

 もう一つ、喫緊の課題であるはずの団地再生が進まないのは、支援体制が整っていないからだ。国土交通省の報告によると、「住宅団地」は、管理組合のようなまち全体の様々な課題を考える主体がなく、再生に向け動き出すきっかけづくりが難しいことなどから、何らかの再生の取り組みを実施している100ha以上の大規模住宅団地(全国496件)は約2割(95団地)しかないことが報告されている。業界内では平成10年あたりから再生の取り組みが必要と言われていた。

 だが、リブネスタウンプロジェクトは始まったばかりだ。苦労は伴うだろうが、粘り強く訴えれば、いつかは心を開いてくれるはずだ。全国の団地再生モデルになるよう頑張ってほしい。

 それにしても他のデベロッパーはどうしているのだろう。約3,000か所の住宅団地の事業主体はUR都市機構(旧日本住宅公団)や都道府県住宅供給公社などの公的機関が約半数、残り半数は民間だ。記者は同社以外に団地再生に名乗りを上げている企業を寡聞にして知らない。SDGsの目標12の「つくる責任 つかう責任」はどこにいったのか。等閑視などしていられないはずだが…。

 再生モデルはある。記者が「奇跡の街」と呼ぶ山万の「ユーカリが丘」だ。京成上野駅から約1時間、開発面積約250ha(予定含む)、世帯数約8,100世帯、人口約19,000人の街だ。1971年に開発を着手してから53年を迎えたが、まだまだ発展途上。人口は増え続けている。〝千年優都〟をテーマに掲げ、この先50年を見据えた新たな約100万坪の「ミリオンシティ構想」を打ち出している。

 同社は、大阪発祥の総合繊維卸売業だが、昭和39年に本社を東京に移転したときから退路を断ち、開発業に専念している。他のエリアでマンションなどを分譲することもあるが、年商102億円(令和4年)はほとんど「ユーカリが丘」のはずだ。社員122人(同)の相当数が「ユーカリが丘」に住んでいるとも聞いた。

 大月氏は「来年も…」などと話した。どうやら毎年「コトクリエ」で団地再生サミットを同社は開催するようだ。今回は真冬なので取材を断念した。開催時期は爛漫の春か、万葉集に詠まれている秋の七草などが花咲く秋にしていただければ参加するのだが…。

〝夜明け〟はやってくるのか〝再耕〟は可能か 大和ハウス 団地再生勉強会(2021/8/31)

10年の活動を綴った「さくら茶屋物語」発刊 団地再生目指す全ての人に薦めたい(2021/2/8)

大和ハウス芳井社長「これほど心がこもった祝詞聞いたことがない」祝詞全文紹介(2019/11/2)

郊外住宅団地の再生モデルへ 大和ハウス「上郷ネオポリス」コミュニティ施設完成(2019/10/30)

〝奇跡の街〟ユーカリが丘で昭和30年代の住宅分譲(2007/4/16)

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「B/N戸田公園」

 ポラスグループのポラスマイホームプラザは1月26日、AI型空調とスマートホームシステムを搭載した分譲住宅「B/N戸田公園」(全10棟)を1月26日(金)から販売開始したと発表した。同日、メディア向け見学会を行った。国土交通省の先導的なIoT 住宅の実用化に向けたリーディングプロジェクト「次世代住宅プロジェクト2023」に採択されたもので、今後1年間かけて実証実験を行い、結果を公表する。

 物件は、JR埼京線戸田公園駅から徒歩16分、戸田市新曽南4丁目の準工業地域(建ぺい率60%、容積率200%)に位置する全10棟。土地面積は100.49~132.77㎡、建物面積は95.81~104.54㎡、価格は7,480万~8.980万円。完成予定は2024年1月末。

 「B/N」の「B」は「BASIC(ベーシック)」、「N」は「NATURAL(ナチュラル)」と「NEUTRAL(ニュートラル)」の頭文字からとった同社の7つあるブランドの一つ。白を基調としたシンプルなデザイン、2380ミリのハイドア、15ミリのスマート窓枠・巾木などが特徴。

 昨年9月からホームページを開設し、これまで160件の問い合わせがあり、モデルハウス事前案内会には50~60組の来場があるという。この日(26日)に1件の申し込みがあった。

 プロジェクトは、ポラスグループのIoT・スマートホーム技術と、LIXILの「建材・住設」(スマートホームシステム用ホームゲートウェイ「ライフアシスト2」)を組み合わせたもの。起床・帰宅前に自動でエアコン、床暖房を起動させ、人がいる時間の室温を快適になるように制御し、室温度が規定値を超えた場合は自動で採風窓を開けたり閉めたりすることが可能。

 太陽光発電システムと蓄電池を装備(標準搭載はモデル2棟のみ)、断熱等性能等級5、一次エネルギー消費量等級6をクリアし、「長期優良住宅」「ロングサポート60」を取得。一般的な「次世代省エネ住宅」基準より年間約14万円の電気・ガス・水道・光熱費の削減を実現する。このほか、戸田市初の「埼玉県子育て応援分譲住宅認定」(戸建て)を取得している。

 また、ポラス暮し科学研究所が開発したポカリッチ(蓄熱式床暖房システム)の併用により、24時間冷暖房を行う全館空調の年間冷暖房費44,488円(試算)を35,400円(同)に抑えることが可能であることを実証する。

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モデルハウス(10号棟)

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モデルハウス(9号棟)

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 「全館空調」は1995年、三菱地所ホームと三菱電機が共同開発した「エアロロック」が第一号で、現在ではハウスメーカーの数だけあり、定義も「家中を快適な湿温度に保つ」ということしかなく、統一的な基準はない。マンションでは、「エアロテック」が大手デベロッパーの物件に採用されており、野村不動産は独自に開発した「床快full(ゆかいふる)」を自社マンションに採用している。記者は「エアロテック」モデルハウスに一泊しているのでその素晴らしさはよく分かっている。

 問題は価格だ。〝快適性〟を価格に換算したら安いとは思うが、イニシャルコストは100万円~300万円超で、ランニングコストも一般的な住宅の冷暖房費より年間にして3~4割高になる。

 全館空調を装備した分譲戸建ては首都圏でどれほど供給されているか分からないが、今回のプロジェクトは、「全館空調よりも導入費用、冷暖房費を抑えながら温熱環境の満足度を得られる」(同社資料)というのがポイントで、この種の商品企画の物件は今回が初だと思われる。

 ポラス暮し科学研究所の蓄熱式床暖房システム「ポカリッチ」を体験するのは2度目だったが、これまで体感したどこの床暖房より暖かかった。同研究所住環境G係長・福代昇一氏は「どこの全館空調にも負けない」と自信を見せた。

 分譲価格だが、同社によると同駅圏の分譲戸建ての相場は土地が20坪で5,000万円台が中心というから、今回の物件はかなり高い。「AI型全館空調」のよさをアピールできるかどうかがポイントになる。仮に駅近のマンションを分譲したら坪単価は300万円を突破する。20坪で6,000万円だ。これもヒントにはなる。

 現地は、容積率200%の準工地域で、中層も建つエリアだが、周囲には嫌悪施設(嫌な言葉だが)は目視した限りではなかった。

 今回の物件に搭載されているスマートスピーカーは「Amazon Alexa(アレクサ)」だった。5歳くらいの女の子に設定している「OK Google」音声より年長には聞こえたが、「おはよう」と呼び掛けても「分かりました」としか答えない。これは改善の余地あり。

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巾木(左)やドアノブにもこだわりがあるのが特徴

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 積水ハウス住生活研究所は1月25日、全国の20~60代の男女500人を対象にした「入浴に関する調査(2023)」をまとめ発表した。

 調査の結果、冬に心身の不調を感じた人は「肌が乾燥する」44.5%、「身体が冷える」37.2%、「身体がだるい」33.2%、「眠気がとれない」31.0%、「下痢・便秘」31.0%などと続き、冬に心身の不調を感じる「冬バテ」という言葉を認知している人は23.4%しかいないことが分かった。

 冬の体調管理で行っていることでは、「うがい・手洗いを徹底する」57.4%、、「マスクを着用する」51.6%などに続き、「入浴をする(湯船につかる)」が5位にランクされた。効果実感率は「入浴をする(湯船につかる)」が73.5%ともっとも高い結果になった。

 季節を問わず風呂時間が好きな人は68.0%で、この層の人が毎回湯船に浸かる割合は冬場が49.2%、夏場が27.0%。

 季節に関わらず風呂時間が「嫌い」の人は10.8%で、「どちらかというと嫌い」の人も含めたの理由は、「風呂に入るまでが面倒」「体や髪を洗うのが面倒」「風呂後のドライヤーが面倒」「浴室内が寒い」「脱衣場が寒い」など。

 風呂時間を快適にするための工夫を男性は約5割、女性は約7割が行っていると回答。「入浴剤・バスボムを使う」49.8%、「好きなシャンプー・トリートメントなどをそろえておく」33.7%、「シャワーヘッドにこだわる」16.8%をはじめ、音楽や動画などの設備が目立った。

 快適に過ごすために洗面室や脱衣所に工夫しているかの問いでは、半数以上が特に何もしていないと回答。工夫をしていることでもっとも多かったのは「こまめに掃除する」43.5%、「換気扇をつける」27.6%、「ものを減らす」27.2%、「収納を整理する」25.1%など。洗面室で4人家族のものを並べてみると約3畳分もあることが分かったと。

 これらの結果から、同研究所は「調光・調色のできる照明を取り入れる」「バスルームに置ける観葉植物やバスライトを持ち込む」などの提案を行っており、同社フェローR&D本部・河﨑由美子氏は「私は、お湯にどっぷりと入浴すると疲れてしまうことが多く、冬でもシャワー派です。椅子に座って、少し熱めのお湯を2~3分ゆっくり浴びると、シャワーの音や刺激も心地良く、心身の疲れが解けていくのを感じます」とメッセージを寄せている。

◇        ◆     ◇

 記者は、季節に関わらず風呂時間が「(大)嫌い」の10.8%に該当する一人だ。なぜ嫌いなのか。第一の理由は「重労働」だ。昔の民家はどこもトイレも浴室も別棟。毎日のように、井戸から10メートル近く離れた風呂場までバケツで水を運ばされた。五右衛門の浴槽を満たすのは相当の時間がかかった。風呂焚きもやらされた。薪炭の時代だ。火吹竹を吹くと煙が襲ってくる。むせ返り涙があふれる。家父長制は徹底されており、風呂に入る順番も決まっており、よく言えばルノワールの描く農婦、悪く言えば縄文の土偶のような母親と一緒に入ることはほとんどなかった。母親は風呂から上がってもタオルなどで身を隠すことなどしなかった。桃色に染まった全身から湯気が昇った。今でも忘れない。

 結婚してからは、風呂場担当になったが、掃除が大変、いつも水浸しになった。いまのように自動ではなかったから水の量、温度に神経を使った。沸騰させたこともしばしばあった。

 今も風呂嫌いは同じだ。かみさんに任せっぱなしなので掃除からは解放されたが、掃除の大変さが分かるから、寒くても「湯を張ってくれ」とはなかなか言えない。風呂好きな人は湯船に浸かり舟歌だか鼻歌を歌うのだろうが、記者は歌も大嫌いだし、たまに湯船に入ると寝込むのが常で〝死んじゃうわよ〟の罵声が飛んでくる。そのたびに、知人の子どもが湯船に転落して溺死した悲劇が思い出される。

 なので、冬場でもシャワーで済ませる。浴室に入る前にシャワーを全開にし〝ぬるめの燗〟より高めの40度に設定するのだが、「糖尿の体に良くないわよ」と、またかみさんに怒られる。

 時間も〝烏の行水〟だ。ほんの数分しか入らない。だから温まらない。出るとき、ドアを細目に開けて素早くバスタオルを取り込むのだが、洗面・脱衣場の寒気が一挙になだれ込む。あったまった分だけ寒くなる。

 ここまで書けば小生がどうして風呂が嫌いか分かってもらえるはずだ。冬場でも飲むのはビールと焼酎。体は氷のように冷たくなるが、「肌が荒れる」症状は全くないのは幸いだ。

 馬鹿馬鹿しいことを書いたが、同社に一つ提案だ。同社は戸建てもマンションもほとんどZEH仕様た。冬季でも洗面・脱衣場の温度は15~17度あるのではないか。アンケートはZEH仕様とそうでない住宅に分けて行ったら、ZEH住宅に住む人は冬季でも入浴が苦にならない人が絶対的多数を占めるのではないか。

 洗面・脱衣室が必ずしも居心地のいい場所になっていないのは、供給サイドにも問題がある。注文住宅は分からないが、分譲住宅は総じて狭い。コストカットの対象にもなっている。タオルウォーマーを標準装備しろなどとは言わない。せめて浴室ドアにはタオル掛けを2つ付けてほしい。

 

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ナイス「新春経済講演会」(グランドプリンスホテル新高輪で)

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杉田氏

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 ナイスは1月17日、グランドプリンスホテル新高輪に約1,100人の聴衆を集め「新春経済講演会」を開催し、第三部では物流、弁護士、シンクタンク、木材、建設、住宅設備メーカーによるトークセッション「どうなる!?2024」を行った。

 冒頭、コーディネーターを務めたナイス代表取締役社長・杉田理之氏は「昨今は不確実、不透明、非連続性の時代と言われ、見通しを立てるのが難しくなっている。そんな中で本日は3つのテーマで論議を進めていただきたい。一つ目(Ⅰ)は2024年の経済・景気の動向について、二つ目(Ⅱ)は法改正への対応とその課題について、三つ目(Ⅲ)はカーボンニュートラルの取り組みについてで、皆さんのご意見を伺いたい」と挨拶した。以下、社名・団体名五十音順に意見を紹介する。

ドル・円相場は130円 ゼロ金利政策は持続

シンクタンク 安藤範親近氏(農林中金総合研究所主任研究員)

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安藤氏

Ⅰ 中国経済は不動産を中心に景気は減速する見込み。米国は労働市場とサプライの人不足、経済活動の正常化とインフレの鈍化が同時進行している。労働市場では直近の求人倍率が1.3倍になっており、景気は緩やかな回復傾向をたどるのではないか。欧州は景気減速が予想される。東南アジアは、中国や世界的な経済状況に左右されるが、2025年に向け緩やかに回復する。日本はコロナ後のサービス、インバウンド需要は一段落し、緩やかな成長率の中、為替は米国の利下げと日銀の利上げ要因からドル・円相場は円高に向かい130円くらいになると予測する。ゼロ金利政策は賃金・物価動向からして持続するのではないか。

 世界の景気変動、紛争、気候変動、環境規制などで需給がひっ迫し、ウッドショックはありうる。

悲観することない着工減 住宅の資産価値向上に取り組む

住宅設備メーカー 山田昌司氏(パナソニック ハウジングソリューションズ代表取締役 社長執行役員)

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山田氏

 2023年の住宅着工は約83万戸で、前年比3.9%減。2024年もほぼ同じ水準ではないか。棟数は減少しているが、住宅投資額は17兆円レベルをキープしており、それほど悲観する必要はない。住宅の省エネ化、カーボンニュートラルへの取り組みなど住宅の資産の維持・向上への政策に向き合うことが必要。業界構造変化では、いわゆるパワービルダーへ需要がシフトし、地域の注文住宅を中心とするビルダーは苦しくなる。一方で、大手メーカーによる地域工務店への支援によって新しいビジネスモデルが生まれる。リフォーム、リニューアルは堅調に推移し、非住宅は改修期を迎えているものが多く、市場は拡大する。

Ⅱ 物流に関しては、必要な時に届けてもらえなくなってきている。運んでもらえないことも発生しており、深刻な問題。サプライチェーンはこれからの課題で、資材を運ぶことが住宅建設工程の計画の一部であるという考え方に転換しないと物流問題は解決しない。

 パナソニックグループは2050年までに現在の世界のCO2総排出量の「約1%(3億トン)」の削減を目指しており、「Panasonic GREEN IMPACT」と称する3つ取り組みを行っている。一つは、自社工場など28の拠点でCO2排出量をゼロにする「OWN IMPACT」で、これはすでに達成済み。二つ目は、既存の水素、省エネ、再エネ技術、廃材利用などの「CONTRIBUTION IMPACT」、3つ目は新しい技術で進める「FUTURE IMPACT」。着実に進めていく。

2024年問題は織り込み済み 工期延長にはならない

建設 熊野聡氏(長谷工コーポレーション取締役専務執行役員)

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熊野氏

 東京のマンション価格が1億円を突破したなどとショッキングな報道がなされたが、これは一部を切り取った情報。都心部で高級マンションが供給されたためで、23区の平均価格は8,424万円と前年比で30%上昇した。それ以外の平均は5,300万円で、そんなに大幅に上昇したという印象は持っていない。近畿圏の市場はほぼ横ばい。超高級マンションは経営者など富裕層、スタートアップなどの需要が旺盛で、実需も伴っておりバブルではない。今年は金利先高観による買い急ぎはあるかもしれないが、底堅い市場に支えられ、それほどぶれないと予想している。

 2024年問題は工期に大きな影響はない。ゼネコンでは4週8休は取り込み済み。運送コスト上昇による価格上昇への影響はある。現場技術者の残業を減らすDX、IT、職人の働きやすい環境をつくる、ロス少なくするなど生産性を高める取り組みを進めていく。

Ⅲ 当社も木造推進委員会を設けて研究している。すでに23件の共用部分の木質化を行っており、賃貸マンションの上層階の木造化も行っている。分譲でも生かせないか考えている。

残業規制は労働者の人権 脱法行為はありえない

法律 秋野卓生氏(弁護士 匠総合法律事務所 代表社員)

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秋津氏

Ⅱ 最近は、人不足により残業時間制限720時間の上限を超えてしまうという相談が増えている。このような質問には、立法趣旨を説明する。月80時間以上残業すれば過労死する危険性があり、残業規制は労働者の人権を守ることで、法律を守らないということはありえないと。一方で、労基法は1日8時間、100%の力で働くことを経営者は労働者の要請していい法律。これを実践しているか、残業代が生活費の一部になっていないか、これをチェックする必要があると提案している。

 DXで働き方改革が実現できるのであれば、建設業法、労働安全衛生法などの法律を改正すべき。デジタル臨調でもそのような論議がなされた。2027年度の全国展開を目指す国土交通省のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)確認申請にも注目している。現場三次元の取り組みも加速させる必要がある。

長距離輸送に理解を 再配達は有料に

物流 馬渡雅敏氏(全日本トラック協会副会長)

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馬渡氏

 残業制限は建設業などは720時間となっているが、トラック業界は960時間。われわれの業界の長距離輸送は3~4割占める。法令を守れないから撤退する、あるいは長距離を受けないというところも出てきている。また、厚労省の法律も今年4月からより厳しくなる。住宅関連では、持ち帰り、転送などが多々ある。再配達でも1回分の配達料金しかいただけない。再配達は有料にするなど改善しないといけない。国土交通省の商習慣の見直しのガイドラインでもそのような方向性が示されるはずだ。

 国内のCO2排出量の2割が運輸部門。その中でわれわれのみどりナンバーの営業用はその2割、全体の4%がトラック業界。2030年までに2005年比で3割削減を目標に掲げているが、大型トラックはEVもハイブリッドもわが国では開発されていない。再配達とか物理的な無駄をなくしていくほかない。軽くて頑丈な国産材のパレットを開発していただきたい。プラパレばっかり。

用材自給率80%へ 熱を逃がす窓、ドアの木造化急げ

木材 鈴木信哉氏(ノースジャパン素材流通協同組合理事長)

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鈴木氏

 いま木材自給率は50%を超えつつある。今後は山の中から丸太をどのように下すのが最大のポイントとなるが、林道の整備が進んでいない。おろすまで3時間も4時間もかかる。林道整備とともに、中間ストックヤードを設けることも必要。納入するのに20台、30台も並ばなければならないようなことをなくさないと、残業時間を減らすことができない。受け入れ時間を長くし、かつての日本通運のような大型の事業体が出現することに期待したい。川下、川中、川上が連携して安定的な発注システムを構築しなければならない。

 10年後の用材自給率は80%まで伸びるのではないか。問題は梁桁。レッドウッド、ベイマツの集成材からどうやって奪い取るか。国産集成材に頑張ってもらう必要がある。木造のきれいな公共建築物を見ると、唯一木が見えないのがサッシとかドアの開口部。アルミと木材の熱伝導率は3600倍違う。寒いところで熱を逃すために造っているようなもの。これは10年間で木に変えないといけない。バス、トイレ、キッチンにどうやって木を使っていくか。クオーター契約の導入も必要。

「超競争時代リーダーは人間らしくあれ」元ソニー社長・平井一夫氏ナイス講演会(2024/1/23)

 

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