従来のHEMSと一線画す 世界に通用する「HOMETACT」体験施設開設 三菱地所
「playground大手町」
三菱地所は12月7日、同社の総合スマートサービス「HOMETACT(ホームタクト)」を体験できる「playground大手町」を12月8日にオープンし、mui Labと共同開発したスマートホームでの新たなエネルギーマネジメント体験「HOMETACT Energy Window」を公開すると発表した。
「HOMETACT」は、同社が独自開発したスマートホームサービスで、専用アプリやスマートスピーカーでエアコンやテレビ、照明、カーテンといった複数メーカーの幅広いIoT機器をまとめてコントロールするもの。「おはよう」「行ってきます」といった「シーン」機能や、時間や位置情報などを実行条件とする「自動モード」の活用で、複数のIoT機器をまとめて動かし、設定どおりの住空間の制御が可能。2021年11月、三菱地所レジデンスの賃貸マンション「ザ・パークハビオ」シリーズに導入して以降これまで3棟に導入済み。もう1棟に導入することが決まっている。
この種のサービスを行っているところがないことから、同業他社や賃貸管理会社、インフラ事業者など幅広い企業からの引き合い・相談を受けており、施設・システムを公開することで、ワンストップで課題解決に結びつけるのが狙いだ。
「HOMETACT Energy Window」は、三菱地所とスタートアップ企業であるmui LabがHEMS技術の共同研究や新サービス開発に向けた協業を推進するため2023年8月に資本業務提携したのに伴い提供するもの。従来の住設機器・家電の制御に加え、電気・ガス・水道をはじめとした家庭内でのエネルギー使用量の「見える化」を図っているほか、Tips機能(節電アドバイス)により「行動の習慣化促進」と節電につながる仕掛けを施しているのが特徴。
記者発表会に臨んだ同社住宅業務企画部 新事業・DX ユニット 統括・橘嘉宏氏は「今までのHEMSとは一線を画す。ZEHにも対応し、Tips機能は世界的に見てもチャレンジできる」と語った。
「playground大手町」は、東京メトロ大手町駅他直結の「大手町ビルヂング」1階の56㎡。営業時間は平日(土・日・祝日休業)10:00~18:00(予約制)。
内観
左から橘氏、廣部氏、大木氏
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HEMS、EMS、CEMS 、MEMS 、スマートタウン、スマートハウス、ZEH…取材先でいつも聞かされる耳にタコができるフレーズだ。同社の「HOMETACT」は、最初に導入した「ザ・パークハビオ 麻布十番」を取材しているので、どのような機能が盛り込まれているかはわかっており、今回のメディア向け見学会で発表された、消費者の省エネ行動を促そうという狙いの新機能の「HOMETACT Energy Window」もとてもいいと思った。
ところが、施設について説明した橘氏や共同開発をしたMui Lab代表取締役社長CEO・大木和典氏、同社Creative Director・廣部延安氏からは、「麻布十番」でもそうだったが、わが国の後進性が改めて指摘された。〝ヘムスを開発したメーカーは撤退しつつある〟〝家庭に導入しても使われなくなる〟というものだ。
HEMSなどが普及しない理由はなんとなくわかる。三菱地所レジデンスが2013年12月、他社に先駆けマンションの各住戸のエネルギー消費量をコスト(燃費・円)に置き換えて「見える化」した冊子「マンション家計簿」を今後首都圏で販売する全ての新築マンション購入検討者に配布すると発表したときに、小生は次のように書いた。
「記者はこれだけでは不十分だと思っている。単に電気やガスの消費量の見える化だけでなく、日常生活におけるすべての二酸化炭素(CO2)排出量を『見える化』『見せる化』しなければならない。
ガソリンから上下水道、生ごみ、食品、酒・たばこ、耐久消費財、旅行・レジャー、医療、交通移動手段などすべての消費財・サービスも含めてCO2の排出量を提供できるようにし、低炭素社会を構築すべきだ」
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あれから10年だ。三菱地所レジは追跡調査を行っていないようだが、「マンション家計簿」の発行部数は数十万冊に達しているはずだ。この取り組みが「HOMETACT」の開発に繋がったのだろう。
そこで、家計簿について考えてみた。かつて専業主婦が圧倒的多数を占めていた時代は、主婦向け雑誌は年末になると別冊付録の「家計簿」を販促につなげた。いま主婦向け雑誌がどうなっているか分からないが、ネットで調べた。ある社の360人を対象とした調査では、約6割の人が家計簿をつけており、うち女性は74%、既婚は63%、子育て世帯は37%で、お金を管理しているのは「自分」が71%という結果が出ている。立派というほかない。男性の人は正直に申告しているのだろうか(小生は領収書を受け取ることはほとんどない。そんなものをかみさんに渡したら、どこでどれだけ酒を飲んだか全て捕捉されるではないか)。
ただ、子育て世帯は37%しかないことに注目する必要がありそうだ。家計簿をつける余裕などないのだ。一昨日の三井不動産レジデンシャルの記者発表会でも時間に追われている子育て世代(とくに女性)の実態が報告された。代わりにバーコードやQRコードをかざせば自動的に収入、支出項目ごとに記録されるようにすればいいと思うが…もう実用化されているか。そのデータをAIが解析し、アドバイスできるようにすれば生活は劇的に変わる。
それはともかく一つ提案がある。アレクサはいいとは思うが、「おはよう」「行ってきます」「ただいま」「お休み」と声を掛けても、合成語とすぐわかる、小生のかみさんと一緒、どこかトゲのある「分かりました」としか答えない。その時々の雰囲気、様子によってもっと感情を露わにすべきだ。昔、夜中というより朝まだき、家に帰ったら「お父さん、今日も朝帰り」と息子に言われたことがある。金輪際酒など飲まないという誓いは1か月くらい持続した。
これがアレクサだったら効き目はない。それより、鬼より怖いかみさんとか子どもにすべきで、起床の音楽はボレロがお勧めだ。小生は独身のとき、朝起きて身支度をし、出勤するまでの約15分間、この曲を聴くのを日課としていた。ぴったり15分間だ(朝食は会社の傍にあった喫茶店)。化粧に1時間くらい割く女性もいるそうだが、これは時間の無駄。多くの男性は女性の心を見ている。
お休みの曲は、小生の記憶をたどると♪ねんねんころりよおころりよ~♪に勝るものはない。
子どもの個室などない薪炭の時代だ。いつも祖母と一緒に寝ており、この童謡を聴きながら、しわくちゃのおっぱいをまさぐると、焼きもちを焼いた雄の飼い猫が布団に潜り込んできて、祖母と小生の間に入り、すぐゴロゴロと寝息を立てた。三人・匹が川の字になって眠りに落ちた。朝は、雄鶏のけたたましい〝コケコッコー〟で叩き起こされた。
アレクサに頼っていては、いつまでたってもAmazonの支配から抜けだせない。高畑充希さんが「次に行こう」と呼び掛けているではないか。
スマホ一つで住設機器・家電など操作・ 管理 三菱地所 スマートホームサービス開始(2021/11/4)
三菱地所グループ 「マンション家計簿」が地球温暖化防止活動環境大臣賞(2015/12/2)
三菱地所レジデンス 「マンション家計簿」全マンションに導入(2013/12/19)
Well-Being叶える「クロスオーバーデザイン3.0)」発表 三井デザインテック
綱町三井倶楽部
檜木田氏
三井デザインテックは12月5日、綱町三井倶楽部でプレスセミナー&懇親会を開催し、パンデミックによる社会の大きな変化を受け、価値観が反転したNew Normal社会が日常化した現在のWell-Beingを叶える「クロスオーバーデザイン3.0(2023年)を発表した。
セミナーの冒頭、同社代表取締役社長・檜木田敦氏は「セミナーは2019年11月以来4年ぶりの開催。この間、価値観、ライフスタイルは大きく変化した。当社は2020年7月、三井不動産リフォームと統合し、新生デザイン会社として事業領域を広げていく。今回発表する『クロスオーバーデザイン3.0(2023年)』」はWell-Beingつながる価値観を提案するもの」と挨拶し、懇親会では「クロスオーバーデザイン3.0によってどんどん出番が増える」と乾杯の音頭を取った。
続いて登壇した同社フェロー・見月伸一氏は、2015年の空間の融合を具現化した「クロスオーバーデザイン1.0」、2016年のアナログ要素のポテンシャルを引き出した「身体性伴う情緒的な体験」提供する「クロスオーバーデザイン2.0」を振り返り、今回の「クロスオーバーデザイン3.0」について次のように説明した。
パンデミックを経て価値観が反転したNew Normal社会が日常となり、SDGsの社会通念化とAIが急速に普及しつつある現代において、ダイバーシティ&インクルージョンがますます重要性を増し、自分らしく居られるWell-Beingな環境を創造することが求められている。
そのためには、既成概念にとらわれない「UNCONVENTIONAL」の発想で、リトリート・コミュニティ・イマーシブの3つの掛け離れた要素を融合し、化学反応を起こす「CROSSOVER INNOVATION」を当社は推進していく。
トークセッションでは、世界的なフラワーアーティスト ニコライ・バーグマン氏、見月氏、同社ワークスタイルデザイン室 コンサルティング第1グループ長・酒井慎太郎氏がWell-Beingな社会などについて語り合った。
見月氏
トークセッション(左から見月氏、ニコライ氏、酒井氏)
ニコライ氏の作品(左上がもう一つのターナー、右上がローレンスの作品)
懇親会(大食堂)
◇ ◆ ◇
同社のこの種のセミナーほど楽しい取材はない。何か楽しいかと言えば、何の資格もない〝記者〟と名乗るだけで、ジョサイア・コンドルによる歴史的建造物の「綱町三井倶楽部」の敷地内に堂々とただで入れることだ。
完成は大正2年だから110年が経過する。その間、関東大震災では大きな被害を受け、戦後も米軍に撤収されたようだが、現在もほぼ原形をとどめている。その美しさに圧倒され、畏怖すら覚える。
同社もホテル関係者も鷹揚なもので、自由に動き回って館内の絵画や家具・調度品を撮ろうとおとがめは一切なし。今回も新しい発見があった。地階「BAR」の横に据えられている幅1.5m、高さ2mもある螺鈿仕上げの大鏡。値段を聞いたが「値はつけられない」代物だという。
明治末期の作品だという英国Mappin社製のスプーンセットもケースの中に収められていた。ネットで調べた。同社は1897年にビクトリア女王から「王室御用達」の認定を受け、今でもMappin&Webbの職人が英国王室のクラウンジュエラー(王冠を作成する職人)として任命されているとか。
クロスも調べた。張り替えられたように見えたが、ビニールクロスではなく紙か布クロスのようだった。
肝心のセミナーはどうか。同社が手掛けたマンションやホテル、とくにマンションは数えきれないほど見学しており、その卓越したそのデザイン力に感服している(RBAホームページで「三井デザインテック」を検索すると2013年以降の約40件がヒットする。トータルするとアクセス数は約20万件)。
しかし、小生は自分が見たものだけしか信じない質で、座学は苦手で、セミナーの中身を理解したかと問われれば、正直よく分からない部分もあった。「クロスオーバーデザイン3.0(2023年)」は、デザインとアート・音環境などを多用したインタラクディブな空間を創造するのだろうと解した。
食べ放題&飲み放題の懇親会では、バランタインファイネストをかなり飲んだ。100年物のワインやウイスキーもあるようだが、われわれメディアには供されなかった。札幌から2時間くらいのホテルが1泊75万円(120㎡)と聞いたが、坪単価は2万円強だ。△△△ホテルだって坪2,000円超だ。ありえない話ではない。マンションの今後のデザインについて話を聞けなかったのは残念だった。
檜木田社長も触れた、様々なアワードを受賞した東銀座の新社屋はコロナ禍で見学は断られたが、改めてお願いしレポートしたい。
階段室
大鏡
螺鈿文様
スプーンセット
クロス(左)と床の文様
小生が買っている記者が食べたデザート…こんな甘いものを食べるから記事も甘くなるんだ(小生はひとかけら食べただけで気持ちが悪くなる)
小生も頂いたコーヒー(茶器は自宅にはないが、たくさん見たことがある)
もう一つのターナーを見た 三井デザインテック 綱町三井倶楽部でセミナー&懇親会(2019/11/20)
ターナー発見 椿姫 乾杯の歌に「ブラヴォー」 三井デザインテック セミナー・懇親会(2017/12/4)
デザインが企業・経営者、住宅を変える三井デザインテックが第2回セミナー(2016/10/20)
日曜日定休トライアル 2割のマンション販売センターで実施へ 三井不レジ
﨑山氏(東京ミッドタウン八重洲で)
三井不動産レジデンシャルは11月5日、メディア向け「住まい探しのシン常識」説明会を開催し、分譲マンション・戸建ての販売拠点での日曜日定休トライアルを実施し、顧客満足度の向上だけでなく、同社スタッフの働き方改革にも貢献する多様な商品・サービスを提供すると発表した。説明会で同社取締役執行役員・﨑山隆央氏が話した概略は次の通り。
まず、データから見る社会・同社の現状では、女性の就業者数は年々増加し、2022年の共働き世帯は専業主婦世帯(430万世帯)の約3倍(1,191万世帯)に達し、首都圏マンション契約者における共働き世帯比率は20年前の1.6倍(57.4%)に増加するとともに、契約者の平均世帯年収は15年で1.4倍の1,034万円に上昇している。
一方で、子育て中の共働き世帯の女性の45.3%は「子どもに対しての時間が取れない」悩みごとを抱えており(男性は38.1%)、共働き夫婦の女性の76.4%が「自由な(追われない)時間」を欲しいと願っている。
同社の首都圏マンション契約者の世帯年収は2018年度比126%で、年代では20・30代は51%と過半に上っている(このうち共働き世帯は45%)。
これまでの「住まい探し」は、情報収集からエントリー-来場予約-来場を数回繰り返し-登録申し込みという販売センター対応が中心で、この間の時間的負担は少なくない現状があり(下段で詳報)、この従来型顧客対応には、デジタルネイティブ、タイパ志向、多様性の意識が高いミレニアル・Z世代の価値観とのミスマッチが生じている。
これらの課題に対応するため、同社はウェブセミナー、オンライン個別商談、商談ツール共有などを駆使して、販売センターへの来場階数・時間を削減した。ウェブセミナー参加者の97%から満足度が得られており、バーチャルとリアルを融合させた「三井の住まい 池袋サロン」を新設した。
これからの「住まい探し」は、1回の来場のみで完結する手法に切り替えるため、日曜日定休トライアルを2021年に都心マンション4物件(水曜・日曜定休、第1期販売含む)に、2022年に都心マンション3物件(日曜・月曜定休、第1期除く)にそれぞれ実施。段階的に検証した結果、平日や土曜日にオンライン商談時間を多用することで、顧客満足度は同社全体の顧客満足度と変わらず、契約進捗も概ね計画比を上回った。
同社スタッフを対象としたトライアル実施者アンケートでも、「家族・友人と過ごせる時間が増やせる」(77%)「育児中・介護中の社員に対して有効」(62%)「ワークライフバランスに寄与する」(57%)「営業における働き方の柔軟性が増す」(48%)「多様な人材が活躍できる組織づくりに寄与する(48%)などの好意的なコメントが寄せられた。
﨑山氏は、これらの結果を踏まえ、日曜日定休トライアルを約2割の物件に採用する意向を示した。
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配布された資料には、スタイルポートの2022年8月22日付プレスリリース「モデルルーム見学に関する実態調査」が紹介されており、それによるとマンション購入時に同時にモデルルームを見学する物件は「3~4件」がもっとも多く51.4%で、以下「1~2件」21.6%、「5~6件」12.6%、「7件以上」も11.7%ある。
購入したマンションのモデルルームを見学した回数は「3~4回」が最多の49.5%、以下、「1~2回」が24.4%、「5~6回」が13.5%、「7回以上」が9.9%だ。
1回当たりのモデルルーム見学時間は、「2時間程度」がもっとも多く41.4%、「1時間程度」が35.1%、「30分未満」が10.9%、「3時間程度」が3.6%、「4時間以上」が6.3%となっている。
マンション購入時にたくさん物件を見学し、何度もモデルルームを訪れ、滞在時間も長い人が多いというのは話に聞いていたが、これほど多く長いとは驚いた(小生は3度売買契約の経験があるが、ほとんど一発。年間100~200件見学すると、各デベロッパーの特徴が分かり、物件概要を読むと物件の特徴の6~7割、モデルルーム見学では数分で物件のレベルがわかる)。その時間と経費を夫婦と子ども2人を想定して考えてみた。
時間は、件数(3~4件)×回数(3~4回)×見学時間(2時間)=18~28時間となり、これに自宅からの往復時間を2時間として足すと36~56時間となる。1日8時間労働とすると夫婦で8~14日分に該当する。子どもの遊び・学習時間も考慮すると半月分はモデルルーム見学に費やしていることになる(小生は、契約を済ませ、いざ入居の直前に「お父さん、友だちと別れたくない。引っ越し嫌だ」と子どもに泣かれ手付を放棄したことがある。その後、バブルが発生した)。
経費は、人それぞれだろうが、夫婦で月額100万円とすると約50万円、これに交通費、食事代もかさむから70~80万円といったところか。
これに対するデベロッパーの顧客対応はどうか。〝個人情報をすべて記入しないと見せないぞ〟と言わんばかりの顧客を丸裸にする慇懃無礼なアンケートを強要し、マイナス要素、ネガティブ情報をひた隠し、パンフレットに記載されている〝特長〟しか話さない担当者が圧倒的に多いのではないか。まれに床を突板仕上げにしているのに、その木の名前を知らない。しかも、来場御礼とかいう、価格にオンされるすずめに涙ばかりの商品券を押し付ける…もう何をかいわんや。
物件販売の広告宣伝費は2~3%くらいだろうが、値が値だから億円単位の物件も少なくない。それだけお金を注いでも来場者に対する契約者の割合(歩留まり)は2割あれば御の字という業界だ(かつて日本ランデックのマンションは歩留まり率50%という驚異的な数値を記録したことがある。台風の影響もあり、本当に欲しい人しか申し込まなかったのだが、商品企画が勝利した)。それでもマンションの粗利益率はかなり高いのはご同慶の至りだ。
なせ、マンション購入検討者もデベロッパーもこのような時間とお金を無駄遣いしているのか。購入者にしてみれば、一生に1回か2回の買い物だから慎重になるのは理解できる、問題なのはやはりデベロッパーの対応だ。
その最大の問題点は、肝心要の価格を「未定」とし、なかなか明らかにしないことだ。価格を開示するのはエントリーを受け付けてから数か月間後というのが多数ではないか。
これほど消費者を馬鹿にした行為はないと記者は思う。マンションに限らずあらゆる商品・サービスは価格があるから成り立つ。「価格未定」のまま顧客を誘引しようとする姿勢は改めないといけない。
この「価格未定」については、それを容認する〝評論家〟(その実は広告塔=金の力で評論家を抱き込むデベロッパーにも問題がないとは言えないが)をはじめメディア側にも責任の一端がある。プレスリリースでもメディア向け見学会でも「価格未定」とあればそのまま記事にする。食い下がろうとしない。目は泳いでおり、価格が公表されても価格に見合う価値があるかどうかを判断する目利き力があるとは思えない素人記者が多すぎる。一目瞭然とはこのことを言う。
しかし、まともに消費者に向き合うデベロッパー、物件はないわけではない。2015年分譲の大成有楽不動産「オーベルグランディオ吉祥寺II」がその一つだ。当時は〝新価格〟ラッシュで、各社は予定価格を公表するのにナーバスになっていたが、同社は早々と公開し、早期完売に結び付けている。
最近の事例では三井不動産レジデンシャル「パークタワー西新宿」がある。同社は昨年11月、「オンライン上と実空間を連動させたハイブリッド型マンション販売拠点」の「コンセプトサロン」を開設したが、その際に「パークタワー西新宿」を紹介し、予定価格もプランごとに公開した。大英断だと思った。
「価格に見合う価値」についてもう少し触れたい。価格と専有面積は不可分だし、価格には性能(基本性能・設備仕様・居住性能)が含まれる。だから坪単価が重要であり、天井高、スパン、廊下幅、キッチン天板、床・壁仕上げ、トイレ、浴室、バルコニー、ドアノブ…などをチェックしないといけないのにスルーし、見ても書かない記者が多い…こんなことを書くと天に唾するようだが、〝月を指せば指を認む〟という言葉もある。小生が何を言いたいかを記者の方々も理解していただきたい。
価格暴騰の裏で、最近はコストを抑制するため=利益を確保するため基本性能・設備仕様レベルを落とすデベロッパーが激増している。端的な例が浴室のタオル掛けとトイレだ。小生は最近、浴室のタオル掛けを必ずチェックするようにしている。これまでは2か所ついているのが当たり前だったが、1つどころかまったくつけていない物件も散見する。たかが1つ2万円と見くびってはいけない。100戸の物件だったら200万円だ。タンクレスが主流だったトイレも最近はタンク付きに逆流した。これでも1つ10万円くらいのコストダウンになるはずだ。クロスもいいものと劣るものでは坪1,000円くらいの差があるはずで、専有全体では馬鹿にならない価格になる。
小生がモデルルームのリアルを大事にしているのはこのためだ。オンライン・バーチャルは結構な取り組みだと思うが、デベロッパーには消費者にしっかりと性能について説明していただきたい。
何を書いているのか分からなくなった。このあたりでやめるが、日曜日定休トライアルは大賛成だ。閑古鳥が鳴く販売センターも多いだろうが、〝昼食をとる暇もない〟ほど顧客対応に追われる販売スタッフを救わないといけない。
予定価格を公表したのに好感 「コンセプトサロン」 三井不レジ「西新宿」(2022/11/21)
グロス価格はやや張るが坪単価は〝旧価格〟 大成有楽「吉祥寺Ⅱ」(2015/1/27)
「ビニール(フェイク)はよくない」フラワーアーティスト ニコライ・バーグマン氏
この日、会場に展示されたニコライ・バーグマン氏の作品
ニコライ氏
「ビニール(フェイク)はよくない」-世界的なフラワーアーティスト、ニコライ・バーグマン氏は12月5日、綱町三井倶楽部で行われた三井デザインテック主催のセミナー後の懇親会で世にはびこるフェイクグリーンを強く批判した。
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この日(12月5日)は、かつては4日に1本空けていたバランタインの12年物ではなく普及版の〝ファイネスト〟をかなり飲んだので、これ以上書けないが、〝フェイクグリーンをやめよ〟としつこく書いてきた甲斐があった。
バークマン氏は、昨年末に完成した三井不動産他「Otemachi One Garden」の開園イベントでフラワーライブパフォーマンスを演じ、つい先日に開業した「麻布台ヒルズ」にも「Nicolai Bergmann Flowers & Design・NOMU」を出店した。日本語はぺらぺら、日本人より日本人らしく、と同時に外からも日本人を捉えられるから、生け花のような流儀にとらわれない想像力が圧倒的な支持を得ているのだろうと理解した。
だからこそ、今回の三井デザインテックのセミナー「クロスオーバーデザイン3.0(2023年)」のテーマである、かけ離れた要素を融合し、化学反応を起こすという「UNCONVENTIONAL」(既成概念を超えた)発想と合致し、トークセッションの主役に招かれたのだろう。
「ビニール(フェイク)はよくない」をどう受け止めるかは、デベロッパー、ハウスメーカーの担当者だし、消費者のみなさんだ。「麻布台ヒルズ」にはフェイクグリーンなど1本もない。〝貧乏人はフェイクでいい〟は絶対に間違っていると記者は思う。
作品(部分)作品に用いられている主な花はグロリオサ、アジサイ、アンスリウム、アランダ、シンビジウム、モカラ、オンシジウム、ユーフォルビア、ムサラキシキブ
ターナーの作品(綱町三井倶楽部にはこの種の著名なアーティストの作品がさりげなく飾られている。小生は飲むのも目的だが、しっかり事前にチェックしている)
皇居と大丸有の緑のネットワーク形成 物産・三井不「Otemachi One Garden」完成(2022/12/17)
メタボ増えたが、あらゆるデータが向上 三菱地所「本社オフィス体験・懇親会(2023/11/12)
日本エスコン・FSE・DeNA スポーツ&エンターテイメントに特化した新会社設立
日本エスコンは12月4日、ファイターズ スポーツ&エンターテイメント(FSE)、ディー・エヌ・エー(DeNA)の3者共同出資によるスポーツを含むエンターテイメントに特化した新会社「株式会社エスコンスポーツ&エンターテイメント」を12月1日付で設立したと発表した。
同社は、FSEの掲げるボールパーク構想に賛同・参画し、Fビレッジ内において新規分譲マンション「レ・ジェイド北海道ボールパーク」(2023年3月引渡済)、シニアレジデンス「マスターズヴェラス北海道ボールパーク」(2024年3月完成予定)、球場近接地でのホテル開発を進めるなど、FSEとともに球場を核とするまちづくりに取り組んでいる。
新会社は、同社の不動産・まちづくり企画開発力、FSEのボールパークの知見・ナレッジならびに運用ノウハウ、DeNAのスポーツを核としたまちづくりへの取り組み実績およびインターネットとAIを含むデジタル領域を組み合わせることにより、スポーツを含むエンターテイメントをより身近に感じる社会・まちづくりの実現を目指す。
新会社の住所は東京都港区虎ノ門二丁目10番4号 オークラプレステージタワー20F。出資比率は日本エスコン51%、FSE 34%、DeNA15%。取締役会長には同社代表取締役社長・伊藤貴俊氏、代表取締役社長には同社執行役員北海道支店長・加藤嘉朗氏が就任した。
世界的潮流か 大河のようなウェーブ、アール形状が美しい 森ビル「麻布台ヒルズ」
麻布台ヒルズ外観(ⒸDBOX for Mori Building Co., Ltd. - Azabudai Hills)
森ビル「麻布台ヒルズ」を見学した。その開発規模もさることながら、70万円の万年筆、200万円台のソファ、100万円台の椅子、2,000円の耳かきほどの小さじ、5,000円のブラシ、10,000円の化粧石鹸、7,000円のお椀などに目を回し、1,000で10円のお釣りが出たグラスワイン1杯を飲んだだけで一挙に酔いが回った。
最大の収穫は、ウェーブを多用した低層部のファサードデザインだ。ロンドンオリンピックの聖火台を手掛けたトーマス・ヘザウィック氏(英国)によるもので、商業エリアのデザイナーとして参画している藤本壮介氏らによる内観もアール形状を多用していた。ウェーブ、アール形状は建築物の世界的潮流ではないかと強く感じた。
施設は、東京メトロ神谷町駅(直結)と六本木駅(2~3分)とをつなぐ開発区域面積約8.1ha、敷地面積約63,900㎡、延床面積約861,700㎡、オフィス面積約214,500㎡、緑化面積約2.4ha、住宅戸数約1,400戸。用途は事務所、住宅、店舗、ホテル、文化施設、インターナショナルスクールなど。就業者数約20,000人、居住者数約3,500人、想定年間来街者数2,500~3,000万人。施工は清水建設、三井住友建設、大林組他。2023年11月24日(金)に開業した。
スケールは約6.9haの東京ミッドタウン六本木を上回り、約12haの六本木ヒルズに匹敵する。64階建て「森JPタワー」の高さ約330mは、現在建設中の62階建て三菱地所「トーチタワー」の385mに次ぐわが国2番目の高さとなる。
(プレス・リリースより)
桜麻通り(ⒸDBOX for Mori Building Co., Ltd. - Azabudai Hills)
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もっとも驚いたのは、トーマス・ヘザウィック氏のわが国初の〝作品〟という低層部ファサードデザインだった。アシンメトリックな曲線美を強調しているようで、部分的には伝統的なシンメトリックな技法を用いている。全体として大河のような、あるいは交響曲のような印象を受けた。外観だけでなく、壁や柱、内観デザインもアール加工が施されている。
神谷町から六本木一丁目までの緩やかな傾斜地のヒルトップに位置する64階建ての「森JPタワー」、54階建ての「レジデンスA」、64階建ての「レジデンスB」も圧迫感をそれほど感じさせないのは、低層部のデザインや足元のせせらぎを配した植栽計画にあるのではないか。稜線美が屹立している山の印象を和らげている富士山がそうだ。
このウェーブ、アール形状は建築物の世界的潮流ではないかと上段で書いたが、ここ数年、記者は曲線美を強調したマンションやオフィス・商業ビルをたくさん見学しているからだ。主だった記事を添付する。
もう一つ、気になるのはレジデンスだ。取材を申し込んだが断られた。森ビルはクローズドで販売するのだろう。記者はこれまでマンションの坪単価の最高峰は東京駅の坪3,000~5,000万円(建設されればだが)だと予想してきた。今回、麻布台ヒルズを見学して同クラスに格上げする。「うめきた2期」が上回る可能性があるが、街並みの美しさは現段階ではここが一番ではないか。
ガーデンプラザ外観(ⒸDBOX for Mori Building Co., Ltd. - Azabudai Hills)
GREEN_麻布台ヒルズアリーナ(ⒸDBOX for Mori Building Co., Ltd. - Azabudai Hills)
中央広場外観(ⒸDBOX for Mori Building Co., Ltd. - Azabudai Hills)
フードマーケット(ⒸDBOX for Mori Building Co., Ltd. - Azabudai Hills)
まさに紙わざ ヒントは「6」 坂茂氏が設計した芝浦工大のレストラン&カフェ(2022/10/25)
目がくらむ白17か所目の藤本壮介氏「西参道」 日本財団「THE TOKYO TOILET」PJ(2022/3/31)
第1期211戸を半年で販売済み 三井不レジ「神宮北参道」全体の坪単価は900万円弱(2021/11/10)
三菱地所 常盤橋PJの街区名称「TOKYO TORCH(トウキョウトーチ)」に決定(2020/9/17)
あの「青山」の美しい流線形 今度は「銀座築地」 大和ハウスがエリア最高峰(2019/11/8)
日比谷の新しい顔曲線美に震えた三井不動産「東京ミッドタウン日比谷」竣工(2018/1/30)
マンションはアートだ 三井不レジ「パークコート青山 ザ タワー」竣工(208/4/11)
非日常の極み 三井不レジ「パークコート青山 ザ タワー」は坪単価950万円(2016/10/18)
三菱地所ホーム 山梨県北杜市などと「森林整備協定」 社員も森林・林業体験
山梨県北杜市須玉町 森林整備活動現地 (左)企業の森づくり活動呼称
三菱地所ホームは11月30日、山梨県北杜市、金ヶ岳山外二字恩賜林保護財産区、有限会社藤原造林との間で「森林整備協定」を11月21日に締結し、同社社員による森づくり活動「三菱地所ホームの青空オフィスYAMANASHI BASE」を始動したと発表した。
同社はこれまでも、FSC認証を受けた山梨県産材の供給を受けており、新築注文事業での構造材に占める国産材比率は平均80%を超えている。
今回の協定では、同市須玉町の山林2haで同社社員が植林や下刈りなどの森林整備活動を行い、カーボンニュートラルや国内林産業や木材産業に関する課題認識や知見を深める講演や研修を実施する。
「三菱地所ホームの青空オフィスYAMANASHI BASE」の活動期間は2023年11月21日~2029年3月31日まで。植林、下刈り、森林・林業体験を行う。
「森林整備協定」締結式
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記者はこれまで4度、北杜市に取材で訪れている。とても楽しい取材ばかりで、なによりも田園風景がきれいで、空気と水と酒「丸の内」が美味しいのに身も心も洗われたのを思い出す。取締役会長・吉田淳一氏(当時常務執行役員)も参加されたイベントでは、お互い田んぼの肥溜めに落ちたことなどを話し合い大笑いもした。
この日(11月21日)の協定書締結については同社から取材の案内が届いていたのだが、別の取材が入っており取材できなかった。「YAMANASHI BASE」はいい取り組みだ。メディア向け見学会はやらないのだろうか。
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伊藤忠ハウジング 買取再販(リノベマンション)好調 事業の柱の一つへ拡大
「ライオンズマンション渋谷道玄坂」
伊藤忠ハウジングのリノベーションマンション「ライオンズマンション渋谷道玄坂」を見学した。同社が本格的に買取再販事業に参入してから3年が経過するが、都心物件に絞り込んでいる戦略が奏功し、来期は予算を倍増し、将来的には同社の販売事業と共に事業の柱の一つに育てる意向だ。
物件は、JR渋谷駅から徒歩9分・半蔵門線渋谷駅から徒歩7分・京王井の頭線神泉駅から徒歩3分、14階建て全99戸で、竣工は1999年5月。分譲住戸は最上階北西角住戸の専有面積65.33㎡、価格は11,980万円(坪単価605万円)。2023年10月にリフォーム完了済み。
同社流通グループ長補佐兼アセットソリューション部長・杉山準氏は、「買取再販部門のアセットソリューション部を創設してから5年、本格的に事業展開し始めてから3年が経過した。親会社・伊藤忠商事の意向もあり、当社の主力である販売部門と共に事業の柱に育てたい。来期は今期の倍増を予定している。大手の同業他社との競争は避け、仕入れ物件は7,000万円台から1億円台前半の都内23区を中心とする首都圏にターゲットを絞っている。販売も好調で、販売を開始してからほぼ3か月で完売している。この『道玄坂』も近く契約する予定」と語った。
今後分譲するマンションは「雪谷」「池袋」「御殿山」「高田馬場」「三軒茶屋」「浦和」など。
キッチンから写す(左側が西、右側が北方向。眺望が開けているのが特徴。いわゆる嫌悪施設はない)
伊藤忠ハウジング アセットソリューション部 初の大型案件「上十条」販売開始(2019/10/5)
リブランディングのヒントあり「大京ライフスタイルスタジオ」
「DAIKYO LIFESTYLE STUDIO(大京ライフスタイルスタジオ)」 エントランス
大京グループの本社1階にある「DAIKYO LIFESTYLE STUDIO(大京ライフスタイルスタジオ)」を見学した。10月下旬に開設したもので、同社とグループ会社が提供する様々なサービスを映像やパネル展示などで体感できる情報発信拠点だ。同社は今年4月、分譲マンションブランド「ライオンズマンション」を「THE LIONS」へリブランドすると発表したが、「THE LIONS」がどのようなものになるのかを探るのが目的だった。ヒントはいくつも隠されていると感じた。
エントランスには横6m×縦3mの巨大LEDパネルを設置し、ウェルカムムービーを表示する。
プロローグ(通路)には1968年に分譲されたシリーズ第一号物件「ライオンズマンション赤坂」から、2023年竣工の大規模複合開発「ライオンズタワー札幌」の歴史がパネルに展示されている。
ウェビナースタジオは、販売物件のオンライン説明会やお客さま向けセミナーなどの配信を行うスペース。
シアタールームは、正面・左右・床面の4面を使ったVRモデルルームを体験することができる。
インタラクティブウォールは、7か所のタッチポイントに手をかざすと、快適な暮らしをサポートする管理会社の機能などについてアニメーションが表示され、入居後の「貸す・借りる」「リフォーム」「売る」など様々な場面での同社グループが提供するサービス、サポートが紹介されている。
ウェルカムムービー
プロローグ(通路)
ウェビナースタジオ
シアタールーム
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「プロローグ(通路)」スペースに入った途端、同社の55年の歴史のうち40年くらい取材してきた記憶が走馬灯のようによみがえった。マンションの〝イロハ〟を学んだのも、分譲住宅取材の面白さに引き込まれるきっかけになったのも同社だ。これまで同社とグループ会社のマンション見学は200件をくだらないはずだ。以下にパネルに展示されている歴史などに若干手を加えた事象・マンションを列挙する。
・1960年 大京商事設立
・1968年 シリーズ第一号「ライオンズマンション赤坂」発売
・1978年 初の分譲トップシェア
・1984年 東証1部上場
・1988年 毎年1万戸超の発売 累計契約10万戸を達成
・1998年 敷地面積が約7.4haの「エルザタワー55」(650戸)
・2001年「環境共生」第1号「グリーンティアラ星が丘」
・2002年 環境共生住宅認定「フォレストレイクひばりが丘」(総戸数381戸)
・2005年 オリックスとの資本提携
・2005年 大京パワー〟を引き継ぐのはどこか(2005/3/11)
・2005年 〝拠点回帰〟実証した大京「ライオンズプラザ多摩センター」(2005/9/30)
・2005年 地域親和の大切さ教えてくれた大京の環境共生マンション「月島」(2005/11/25)
・2007年 累計6,000棟記念プロジェクト 「ザ・ライオンズ上野の森」(2007/2/8)
・2007年 扶桑レクセルのハイグレードマンション「新越谷」が人気(2007/12/12)
・2008年 時は金なり スピード感に欠ける 大京の経営・マンション事業(2008/11/7)
・2009年 1回では書ききれない魅力 「たまプラーザ 美しが丘」(2009/4/23)
・2014年 URコミュニティ社長に就任して10カ月 黒住昌昭氏に「再生」を聞く(2014/6/24)
・2014年 モデルルーム販売手法は大京が初 メディア向けニュースレター(2014/12/11)
・2015年 パッシブとスマートを融合した「港北ニュータウン」完成(2015/8/21)
・2017年 〝再配達ゼロ〟宅配ボックス発表会に記者殺到 大京・フルタイムシステムが新商品(2017/4/10)
・2018年 わが国初の大京NearlyZEHマンション 坪単価は東急「芦屋」の3分の1(2018/7/29)
・2019年 オリックスが大京の全株式を取得(上場廃止)
「アレ」を「暗黒社会」「ファッショ」に置き換えた…千代田区の仮処分申立書
神田警察通り第Ⅰ工区のイチョウの落ち葉(11月30日写す)
昨日(12月1日)行われた「神田警察通りの街路樹を守る会」緊急記者会見から一夜開けたこの日(2日)、会見を報じたメディアは2段見出しの東京新聞(50行はあったか)とベタ扱いの朝日新聞(20行くらいか)のみ。日経も読売も毎日も(産経は確認しなかった)1行もなし。記者会見と同じ日に選ばれた今年の「新語・流行語大賞」の「アレ」を「仮処分申立書」=「暗黒社会」「ファッショ」「テロ」に置き換えて考えてみた。
申立書の趣旨には「(工事現場の)土地について、午後8時ないし翌日午前6時までの間、債務者自ら又は債務者と意を通じた第三者をして、座込み、自動車の駐車その他の方法により、立ち入り、又は、立ち入らせてはならない」とあり、「申立ての理由」には「債務者らは工事に反対し、たびたび工事を妨害するため、工事が実施できていない」とある。
小生はこの文言に震え上がった。「債務者ら」とあるように、「ら」抜きではなく「ら」付きであることに注意する必要がある。文脈からすれば、現在の債務者10人にとどまらず「債務者と意を通じた第三者」もまた債務者に転落(イチョウの側からすれば名誉市民に昇格か)する危険性をはらむ。昨日も書いたように「工事妨害」の定義はないので、現場付近をぶらつくだけで「工事妨害」とみなされ、酔っぱらいを含め「工事に反対する」全ての人が「公務執行妨害者」の烙印を押されかねない。これはもう戒厳令下の赤の広場か天安門広場だ。
小心者の小生は「債務者と意を通じた第三者」になりうるか、大城弁護士に訪ねたのだが、大城氏は否定も肯定もしなかった。
何度も書いているが、小生は「イチョウの味方」-つまりイチョウは道路の付属物だから区の財産でもある。広義にとらえれば、小生の言動・記事は千代田区だけでなく全国の自治体の利益につながるはずだ。もう一人の小生が〝もっと書け〟と背中を押している。
ついでに、わが多摩市の対応について紹介する。市は令和3年、市議会で議決されたレンガ坂のユリノキ伐採工事説明会を開いた。伐採しないでほしいなどの声が寄せられたことから、市は計画を変更し、約100本のうち19本を残すことにした。工事については、安全性の観点から夜間工事はありうるとしながら、夜間工事はコストもかかることから、ユリノキの伐採は昼間に行ったはずだ。
また、図書館の新設に伴う中央公園内の樹木を伐採する際の令和3年4月、には、市は小学生などを対象に「樹木伐採起工式」を行い、阿部市長と藤原マサノリ多摩市議会議長の挨拶、多摩グリーンボランティア森木会(かつて内閣総理大臣賞を受賞)の川添会長の指示のもとで、参加者は樹木伐採作業を体験した。
千代田区が行っているのは真逆だ。住民をだまし討ちにし、人間にすれば志学の15歳か、破瓜の16歳か、芳紀の18歳か、伸び盛りのイチョウの死刑を執行しようとしている。人倫にもとる蛮行だ。「たびたび工事を妨害」とあるが、工事を行う場合は事前に住民に告知する約束ではなかったのか。約束をほごにしたから住民が行動を起こした。今回の騒動の責任は全て行政にある。
曲がりなりにも憲法でわが国民は、基本的人権は侵すことのできない永久の権利として保障され、思想、信条、宗教、集会、結社、言論、行動を含む一切の自由を有するわれわれが、突如として「公務執行妨害者」とみなされることになりかねないことを、申告書は示している。権力が〝怪しい〟と判断したら、債務者は365日24時間監視される社会になる。
千代田区長、この仮処分申告書を即刻取り下げていただきたい。申告が受理されたら全国に燎原の火のごとく広がる。貴殿はごく一部の「権力」の英雄に祭り上げられるかもしれないが、長い歴史で考えれば「全体主義へ道を開いた男」へ転落する危険性もある。千代田区民もまた歴史的選択を迫られている。自由かファッショか。
神田警察通り第Ⅰ工区(イチョウは残された)
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反社勢力と何ら変わらない「公務妨害者」の烙印を押された債務者の方々には酷だが、書かざるを得ない。刑法第59条には「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する」と明示されている。債務者10人の方は、この公務執行妨害罪に問われる可能性がある。怪我をさせたら傷害罪に問われることにもなりかねない。
区は用意周到。イチョウがどうなろうと全然考えていない。皆さんを陥れることしか考えていないことを申告書は証明している。例えば、「令和5年4月11日の妨害工事」には次のようにある。
「債務者●●●は、同日午前4時32分頃、作業帯内付近を警備していた訴外シンティ警備の警備員の胸ぐらをつかむ暴行に及んだ…その後、債務者●●●が、千代田通り側に急に走り出し、規制帯の端にたどり着くと、カラーコーン及びバーを取り外して作業帯内に突入した。そして、そこにいた訴外大林道路の作業員により制止されるや、同作業員を突き飛ばし、同作業員の背後にいた債権者の職員を転倒させる暴行に及んだ(証拠資料として診断書)。これにより債権者の職員は、腰椎椎間板ヘルニアの急性増悪等により6か月の療養を要する見込みの傷害を負った(証拠の診断書)」
申告書の記述は具体的だ。証拠資料としてはほぼ完ぺきに揃っている。区は4月17日付で神田警察署に被害届を提出し受理された。産経も含めてマスコミはこれを報じだ。公務執行妨害、暴行、傷害罪に問われたようだ。(メディアの怖いところだ)
この件だけでなく、申告書の債務者の言動、行動は、建築物の監理業務でかなり普及している音声付き高感度カメラで詳細に記録されているはずだ。債務者の方が「写真撮影は、工事を妨害しているという証拠づくりとしか思えない」と話したが、その通りだと思う。小生が行政担当だったら間違いなくそうする。その道のプロを雇い、債務者の一部始終を記録する。無謬の「公務」だから犯罪に問われることはない。顔認証も普及しているので、債務者の行動はその後も追尾されている可能性がある。申告書が受理されたら、工事が終わるまで追跡される。区は債務者が日常生活に支障をきたすことなど考えていないはずだ。
そこで債務者の皆さんに提案だ。これまでの活動に全国670万本の街路樹になり代わってお礼申し上げる。しかし、体が心配だ。〝わび状〟を一筆入れるのも一法だと思うがいかがか。〝泣く子と地頭には勝てぬ〟を実証する絶好の機会だ。イチョウが見事に死刑執行されるのを晴着を着て、日の丸の小旗を振って〝日本帝国万歳!〟の拍手・万歳三唱でもって見届けようではないか。みんな死ぬために生きているのだから。
神田警察署前の道路工事
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