変幻自在に住みこなす実験住宅「Make Full」完成 住協×大月敏雄氏×齋藤隆太郎氏
「Make Full」
住協ホールディングスは7月1日、「住みこなせる家/住みこなせる町」をテーマに、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授・大月敏雄氏、東北工業大学講師・東京大学客員研究員でDOG一級建築士事務所代表取締役・齋藤隆太郎氏とコラボレーションして開発した実験住宅「Make Full」のメディア向け完成お披露目会を開催した。
「Make Full」は、家族構成、年齢、働き方に応じて柔軟に対応できる変幻実在の家を実現したもので、〝make full use of…(つかいこなす)〟の意が込められている。子育てを終えて居室が空いた場合などには自宅兼事務所、家庭文庫、レンタルスタジオ、音楽教室、アトリエ、ネイルサロン、レンタルスペース、自宅兼美容室、ホームシアターへの転用も可能だという。(1低層ではあるが50㎡以下であればこれらの用途利用も可能)
お披露目会で同社取締役・宇野健一氏は「大月先生とは10年前かご縁があり、コロナ禍などの環境変化にも対応でき、住みこなし、使いこなせる住宅をテーマに昨年1月から共同研究を行ってきた。その成果として今回の建物を完成させた」と述べた。
大月氏は「20年前から戸建て団地の研究を行ってきた。子育て世代が10年後、20年後、30年後も長期にわたって住みこなせ、街とつながっていける新しい戸建てが開発できないかと住協さんと共同研究してきた」と話した。
設計など実務を担当した齋藤氏は「建築家の独り歩きではなく、デザインなど意匠も含めて住協さんのルールに基づいて設計した。大月先生、住協さんとは階段のカラーリングや屋上、断熱性、シャッターは必要か不必要化など細部まで徹底して論議した」と語った。
物件は、西武池袋線「大泉学園」駅からバス11分バス停徒歩4分、都営大江戸線「光が丘」駅からバス10分バス停徒歩4分、練馬区大泉町1丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)に位置する全4戸。分譲対象は3戸(残り1戸は同社がモデルハウスとして当分利用する予定)で、土地面積は110.48~111.42㎡、建物面積は88.05~89.43㎡、価格は6,380万~6,580万円。建物は完成済み。
全4棟のうちB号棟(土地面積110.48㎡、建物面積92.2㎡)がモデルハウスに充てられており、1階がLDK、トイレ、洗面、浴室など、2階が主寝室(7帖)、居室(5.25帖)、トイレ、スタディルーム、収納など。このほか主な特徴は①屋内エレベーター(他の住戸は内階段方式)②外階段③2階にキッチンなど水回りを設置できる下地処理-など。
左から齋藤氏、大月氏、宇野氏
大月氏(左)と齋藤氏
〝構造梁で懸垂ができるのではないか〟と話したら齋藤氏はやってのけた(2階の主寝室、天蓋もいいかも)
◇ ◆ ◇
同社の分譲戸建てを見学するのは「グランシア三芳」(364区画)以来約20年ぶりだ。現地に着いたとき、その外観を見て面食らった。分譲戸建てだろうということはすぐわかったが、4棟ともエントランスに外階段がついていた。そして、4棟とも2階建てでああるのに搭屋のようなものが突き出ていた。二世帯住宅か賃貸併用住宅かと思った。
実際は上段に紹介したとおりだ。コンセプトが見事に具現化されている。建具・家具はドアノブを含めて白で統一、床のフローリングは挽板、外階段は金属音が響かないように下地にモルタルを使用し、色落ちしない仕上げにしているとか、搭屋は〝行燈〟をイメージして窓の形状を変えるなど細部にわたってこだわりがみられる。設備仕様面では、窓には敢えてシャッターを設けないなどコストの抑制も図っている。難点といえば、建ぺい率が50%であるからか、建物面積がやや狭く、窮屈な感じがすることだ。
この種の戸建て住宅は他にあるか考えた。小田急バスとブルースタジオの賃貸コラボ施設「hocco(ホッコ)」を思い出した。
さて、ここで同社と大月先生に提案だ。100年後も住み続けられる、住みこなせる「実験住宅」がコンセプトなのだから、これはもう大月先生が有償か無償かはともかく、1~3年はB号棟に住み、賃借人は社会人だろうが学生だろうが、何の制約も設けず応能家賃制にして賃借人と同居していただきたい。「セーフティネット住宅」の要件を満たすかどうかは分からないが、賃料を安くする代わりに執事、あるいは弟子(齋藤氏は教え子)、書生、家政婦として酷使し、たまには酒席を設け「住みこなし」について蘊蓄を垂れるというのはどうか。希望者が殺到するのではないか。そして、その顛末を論文として発表していただきたい。〝一石三鳥〟ではないか。
大月先生は7月3日に行われる国土交通省などの「住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討会」(第1回)の座長を務める。「Make Full」については触れないと思うが…。
現地の西側は神社に隣接
一次取得層に訴求「ちびまる子ちゃん」ZEH・商業施設隣接・大型 NTT都市開発他
「ウエリス八千代村上」
エヌ・ティ・ティ都市開発など5社が7月中旬に分譲開始するZEHマンション「ウエリス八千代村上」を見学した。大手町に直通約1時間、大型商業施設に隣接した、八千代市最大級の規模。イメージキャラに「ちびまる子ちゃん」を起用した注目物件だ。坪単価は190万円台に落ち着く模様で、販売動向が注目される。
物件は、東葉高速鉄道村上駅から徒歩3分、八千代市村上南1丁目の近隣商業地域に位置する敷地面積約23,292㎡、15階建て全967戸((Ⅰ工区:593戸、Ⅱ工区:374戸)。第1期(戸数未定)の専有面積は54.90~91.85㎡、予定価格は2,700万円台~6,400万円台(最多価格帯3,900万円台)、坪単価は190万円台になる模様。売主は同社(事業比率50%)のほか名鉄都市開発(同20%)、西日本鉄道(15%)、関電不動産開発(同10%)、東方地所(同5%)。建物竣工予定はⅠ工区が2025年2月上旬、Ⅱ工区が2027年3月下旬。駐車場は787台(市の付置義務)。設計・施工は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。
現地は、駅前のイトーヨーカ堂、ユニクロなどが出店している45店舗からなる大型商業施設「Fululu GARDEN八千代」(5階建て延床面積 15,415坪)に隣接。敷地西側は国道16号線に面しているが、南側、東側はほとんどが道路を挟んで1低層のエリア。その幅は約29m。今回分譲対象の建物の1工区の建物はコの字型で、南向きが中心。住戸プランは67㎡、73㎡、70㎡の3プランで75%を占め、他は65㎡台の2LDKと84㎡~の4LDK。
主な基本性能・設備仕様は、ZEH-M Oriented認定、直床、リビング天井高2500ミリ、ディスポーザー、床暖房、Low-E複層ガラスなど(食洗機、浴室タオル掛けはなし)。共用施設はロビーラウンジ、カフェラウンジ、プライベートガーデン、ワークルーム、フィットネスルーム、キッズルーム、パーティルーム、ゲストルームなど。
年明けにホームページを開設し、これまでのエントリー数は約1,400件。5月13日にモデルルームを開設して以降の来場者は約300組。
同社住宅事業部事業推進部営業推進担当部長・松木拓史氏は「ZHEマンションは関西圏で実績がありますが、首都圏では当社初。資料請求に対するモデルルーム来場者の歩留まり率が高く、関心をもっていただけている。価格は近く正式に決めますが、坪200万円を切り、190万円台になんとか抑えたい」と語り、ちびまる子ちゃんの起用については「これだけの規模ですので、集客力をたかめるため、結婚したての女優さん数人も検討しましたが、メインターゲットのファミリー層への訴求力を考えて起用しました」と語った。
販売事務所エントランス(左からたまちゃん、まるちゃん、花輪くん)
販売事務所外観
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これまでも記事にしたように、記者はこの「ちびまる子ちゃん」マンションと、大和ハウス工業「プレミスト昭島 モリパークレジデンス」(481戸、この他全体で約850戸)、ポラス「ルピアグランデみずほ台(トレジャータウンプロジェクト)」(304戸)・東京建物他「Brillia City ふじみ野」(708戸)の郊外大型3物件に注目している。施工は長谷工コーポレーションで、東京までの距離(時間)は約1時間と言うのが同じだからだ。3物件合わせると戸数は2,829戸にも達する。常識的に考えたら、全物件が完売するまで最低5年はかかりそうだが…。
単価は、大和ハウスは強気で坪単価は250万円くらいを予定しており、「みずほ台」は180万円台の半ばになるようだ。「ちびまる子ちゃん」は当初210万円くらいかと読んでいたが、それより安くなるのに納得した。ここで比較するのは控える(「昭島」と「みずほ台」の記事を読んでいただきたい)。
この物件もZEH-Mだが、パンフレットもホームページもそれほど大きく扱っていない。東葉高速で初のZEH-Mのはずだ。もっとアピールすべきだ。
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記者の関心事はもう一つあって、人気アニメの効果だ。最近はなくなったが、以前は人気タレントを起用したマンションがたくさん供給された。
記者が今でも鮮明に覚えているのはオードリー・ヘップバーンを起用した有楽土地「ティアラシティ」で、そのことを話したら、松木氏は関西の物件でわたせせいぞう氏のイラストを起用して成功した実績があると話した。そして、ジャン・レノを起用した東京建物「Brilliaタワー東京」が印象に残っているとも話した。
ただ、人気アニメとなると、記者は「アルプスの少女ハイジ」がリゾートマンションで起用されたのしか知らない。
実存の著名人は広告料も高く、不祥事を起こすリスクもあるから、人気アニメは効果が大きいのではないか。ちびまる子ちゃんの契約は1年間だそうだから、継続するのかそれとも変更するのか。
「Fululu GARDEN八千代」
建設現場(「Fululu GARDEN八千代」2階から写す)
イメージキャラに「ちびまる子ちゃん」 NTT都市など5社JV「八千代村上」(2023/1/14)
セーフティネット住宅 登録件数が激増 制度の前進と受け止めていいのか
国土交通省などは7月3日、「住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討会」(第1回)を開催する。視聴を申し込んだのだが、その前に「セーフティネット住宅」の登録件数を調べたら、この1年間で10万件くらい増加し、2023年3月末で全国の登録住宅戸数は848,846戸となっている。都道府県別では愛知県がトップで66,524戸。2位は東京都の5,1039戸、3位は埼玉県の50,748戸。
「セーフティネット住宅」については、摂南大学現代社会学部教授・平山洋介氏(当時、神戸大学 人間発達環境学研究科教授)は「世界」(岩波書店、2021年5月号)の「これが本当に住まいのセーフティネットなのか」と題する論文の中で「『住宅セーフティネットとは大東建託物件のこと』といっても、それほど過言ではない」とし、住宅確保要配慮者のみを対象とする専用住宅は登録住宅全体のわずか1.3%しかないと指摘。「住宅セーフティネットは-少なくとも現在の制度では-住宅困窮への対応に関し、ほとんど役に立ちそうにない」と述べている。
この指摘は「検討会」でも話題になるのか、登録件数の激増はセーフティネット住宅制度の前進と受け止めていいのか、近傍同種家賃は質を担保できるのか、愛知県が都道府県別でトップなのは大東建託の発祥の地であることと関連はあるのか、しっかり視聴したい。
週刊全国賃貸住宅新聞の「2022年 管理戸数ランキング1083社」(2022年8月15日発行号)では、大東建託グループの2022年3月末の居住用管理戸数は120万2,245戸となり、26年連続トップという。
首都圏 単身者タイプ(25㎡)の賃貸坪賃料は1万円以上 長谷工ライブネット調査(2019/10/26)
激増セーフティネット住宅 1年で政府目標の2.8倍 大東建託がけん引/必読の平山論文(2021/7/21)
要諦は「名前」を覚えること 「推しの木図鑑」と「5本の樹」計画に期待
野村不動産と埼玉大学の共同研究・開発の成果でもある「推しの木図鑑」に関連することだが、記者は積水ハウスの「5本の樹」計画を以前から注目している。2001年に始まったもので、〝3本は鳥のため、2本は蝶のために、地域の在来樹種を〟という思いを込め、地域の気候風土・鳥や蝶などと相性の良い在来樹種を中心とした植栽にこだわった庭づくり・まちづくりの提案だ。
この「5本の樹」計画は、同社と琉球大学理学部久保田研究室・シンクネイチャーが2021年に発表した「ネイチャー・ポジティブ方法論」に結実した。同社が20年間に植栽した樹木本数・樹種・位置情報の蓄積データを分析し、定量的な実効性評価を可能にしたもので、生物多様性の劣化が著しい三大都市圏の在来種は約10倍に、鳥の種類は約2倍に、蝶の種類は約5倍に増加したことが確認できたというものだ。そして、1977年の三大都市圏の樹木・鳥・蝶の種数、多様度指数、個体数を100%とし、今後日本で新築される物件の30%に「5本の樹」計画が採用された場合、その回復効果は84.6%まで上昇すると予測している。
同社に問い合わせたら「5本の樹」計画による植樹本数は2022年度(2023年1月31日現在)、累計1,900.3万本、植栽プレートは672,700枚(約67万枚)とのことだ。
植樹本数の多さは、わが国の街路樹本数が約670万本(高木)ということと比較してもいかに多いかが分かる。植栽プレートの植樹樹木に対する設置比率3.5%をどう評価するかだが、国内で唯一「植物名称の基準書」に準拠したラベルメーカー・アボック社のホームページには「植物名ラベル納品実績 全国500万枚」とあるように、積水ハウスの実績は少なくないといえるのではないか。
野村不動産・埼玉大学の「推しの木図鑑」も積水ハウスの「5本の樹」計画も〝全国区〟になることを期待したい。その要諦・肝は涌井史郎氏が言った「木の名前と虫の名前と鳥の名前を覚えると、一歩、歩くごとに人生3倍楽しくなる」-つまり名前を覚えることにあるような気がしてならない。
読みだすと止まらない あらゆる関係者にお勧め 野村不&埼大「推しの木図鑑」(2023/6/24)
ネガティブにならざるをえない 無残な街路樹 ネイチャー・ポジティブを考える(2021/11/27)
田舎の原風景を見た 積水ハウス「新・里山」(2010/4/8)
読みだすと止まらない あらゆる関係者にお勧め 野村不&埼大「推しの木図鑑」
授業風景(流山市立北小学校6年生)
野村不動産と埼玉大学が、持続可能な街づくりの取り組みとして共同開発した、小学生向け授業プログラムとそれをもとに行った授業の成果を1冊の本にまとめた「推しの木図鑑」のデータを同社から送ってもらって読んだ。子どもの想像力、発想力の豊かさが溢れており、読みだしたら止まらない。下手な小説よりずっと面白い。お父さんやお母さん、地域の人たちだけでなく、文科省、都市公園や道路などの行政担当者も読んでいただきたい。
授業プログラムは、同大学教育学部生活創造講座技術分野・浅田茂裕教授の指導のもと、同大学の教育学部1年生が開発したもので、流山市立北小学校6年生3クラス122名を対象にプログラムに基づき授業を実施した。同社は2022年7月から約半年間支援してきた。
「推しの木図鑑」は、A4判150ページにわたるもので、それぞれ生徒の「推しの木」を1ページに収め、写真付きの「推しの木Profile」として紹介している。
「推しの木Profile」には「名称」のほか「レア度」、「発見者」、「出現場所」、「年齢(推定)」、「性格(推定)」、「5角形の特徴レーダーチャート(評価項目は自由記載)」、「3つの推しポイント」、「10年後への期待、「推しの木からのひと言」が手書き文字で掲載されている。いくつかを紹介する。( )は記者の感想。
まず、名称「弱そうで強い、ウッディくん」。発見者は「バズ・ライトイヤー」、出現場所は「庭」、年齢は19才、性格は「おだやか」。3つの推しポイントは「①弱そうで強いところ②葉がチクチクする③色がきれい」、10年後への期待は「この木1本で地球を支えられるくらい酸素を出してほしい。身長8m、体重660㎏」、推しの木のひと言は「大きくなっても切らないでね。木登りOK。早くお酒を飲みたい」だ。
(写真を見ても木の名前は分からないが、庭木としてよく植えられる木だ。年齢は19才とあるが、発見者は生まれていないはずなので、築後19年が経過しているのかもしれない。推しの木は「早く酒を飲みたい」と言っているが、ひょっとしたら、酒を飲みたいのは木ではなく発見者自身ではないか。記者は小学生のころから酒を飲んでいた。お父さん、飲ませてやって)
発見者「すぎやなんぼー」の名称「イケメンな、伝説の神樹ザ broly」。出現場所は「公園」、性格は「残虐無慈悲」。推しの木のひと言は「キハハハハハ…。お前たちが戦う意思を見せなければ、オレはこの星を破壊し尽くすだけだ!」と警告を発している。(日和見の記者の胸にぐさりと突き刺さった)
発見者「自身」の名称「木木樹木木」。出現場所は「この広い世界の中」、年齢は60才前後、性格は「コミュカおばけ」。3つのポイントは「①夏にさくきれいな花②子犬のようにもふもふ③あふれる包容力」とある。10年後への期待は「死ぬときも病めるときもずっと、ずーっと、愛し続けてね☆」、推しの木からのひと言は「オレの愛は重いぜ★」だ。
(6年生と言えば恋が芽生えるころだ。「自身」は女の子か、推しの木はお父さんか、それとも未来の夫か。「愛は重いぜ」が肺腑をえぐる)
発見者「ミカン」の名称「家族のように並ぶポン次郎」。年齢は17才、性格は「母性がある」。推しの木のひと言は「来年大学受験(木のみ)なのでがんばります。ちなみに、家族の長男は停太朗。バス停のところに立っています」とある。
(「ポン」は、記者のような愚か者の意味を持つ〝アンポンタン〟を思い出させ、「ミカン」は「未完」を連想させる。木に「母性」を見いだす感受性が鋭い。「停太朗」と「バス停」も何かを暗示させる)
名称「長樹」(長寿にかけているのだろう)の推しポイントは「①いつも葉がある②デカイ③いつでも見れる」とあり、10年後への期待では「記おく回ふく薬が発明されるかも? 」とあり、推しの木からのひと言は「長生きの秘決(訣)? 『それは動かないことじゃ』」。
(写真から判断してクスノキであるのは間違いない。記者の大好きな木で、この木を見ると条件反射のように葉っぱをちぎって臭いをかぐ。鎮静剤だ)
発見者「うしろの人」の名称「教科書」(理科)。出現場所は「家or学校」、年齢は2才、性格は「きらわれ者」。レーダーチャートは「きらわれ度」と「先生による好まれ度」が最大の5点、「厚さ」は4点、「好かれ度」と「使用ひんど」は最低の1~2点。3つのポイントは「①テストのはん囲がわかる②ノートをとらなくても分かる③ふく習ができる」、10年後への期待は「多分もう新しくなっている。捨てる」、推しの木からのひと言は「もっと使って」だ。
(教育関係者が読んだら驚愕するのではないか。痛烈な皮肉が込められている。花の命と同様、教科書は2年で捨てられ、好かれるのは先生だけか…先生もかわいそうではないか)
もっと書きたいのだが、きりがないのでこのあたりでやめる。
巻末で野村不動産は、「街に新しい環境をつくる仕事をしています。私たちがつくる環境が、多くの人から大切に慕われそれぞれの『私の風景』になっていくためにどんなことをすればいいかを考え続けています。
「今回の授業では、街の未来を担う小学生の目に映る、街の風景を切り取って集めてきてもいました。
推しの木を通して、小学生だからみえる街の姿、小学生だから聞こえる街の声、それぞれが大切にしている『私の街の風景』を、教えてもらうことができました」とし、浅田氏は「今度、推しの木の近くを通り過ぎるときは、ちょっと声をかけてみてください。もっと木や森が、そして街が、身近に、そして誇れるものに感じられるかもしれません」と結んでいる。
授業対象が埼玉県でなく千葉県の流山市の小学校というのも興味深い。記者は、井崎義治氏が市長に当選したとき、井崎氏がデベロッパーに興味を示されたので、街づくりに熱心なデベロッパーとして野村不動産を紹介したことがある。
その流山市にある江戸川大学の講師として環境倫理学を教えていた法政大学教授・吉永明弘氏はその著「歳の環境倫理」(勁草書房、2014年刊)で、学生に大学周辺を歩いてもらってアメニティとディスアメニティを地図上に書き込んでもらい、アメニティマップを作製することが、地域の歴史や文化、地形や生態系の情報を得るのに有効であると著している。
右が「推しの木図鑑」1ページ分
◇ ◆ ◇
「推しの木Profile」を読んでいて、気になったことが一つある。全122の「推しの木」には、具体的な木の名前はゆず、夏みかんなど数えるほどしかないことだ。写真も添付されているので、専門家ならすぐ木の名前を当てられるだろうが、記者はほとんど分からなかった。
例えば、発見者「サンタさん」のコピーライターが付けそうな、デベロッパー顔負けの名称「ザ・ツリー・マンションズ」。レア度は★三つのうち1つ、出現場所は「マンションの裏の公園」、年齢は43(?)才、性格は「少し気が荒れている」、3つの推しポイントは「①マンションの人は有名でだれもが知っている②木のぼりで遊べる③なにげなし木がきれい」、10年後への期待は「マンションの公園にもっとふえてくれ!」、推しの木のひと言は「やぁ、こんにちは!ぼくは、ふつうの木」だ。
(写真は夜間に撮ったようで、名称、発見者などからモミノキかと思ったが、樹形からしてそうではなく、ケヤキ類かと思ったが、ケヤキは登れないし、真冬でも葉っぱが茂っていることから常緑樹のカシ類か)
ことほど左様に木の名前は杳としてしれないものばかりだ。
そこで、なぜなのかを考えた。小学生の理科の教科書には動植物はたくさん出てくるが、樹木に関しては光合成の仕組みや年輪、板目・正目などの材の特徴は掲載されていても、木の名前などは習った覚えがない。このことと関連があるのではないかと。
そこで、学習指導要領を読んだ。理科については、「人の生活が環境に及ぼす影響を少なくする工夫や、環境から人の生活へ及ぼす影響を少なくする工夫、よりよい関係をつくりだす工夫など、人と環境との関わり方の工夫について考えるようにする」(この日本語はおかしい。人と環境は双方が影響を及ぼしあうものだ)などとあるが、森林の果たす役割などは一言も触れられていない。
文科省にも問い合わせた。けんもほろろ。教科書に盛り込まなければならない木の名前などはなく、教科書を発行している出版社に聞いてほしいということだった。
仕方がない。小学生向け理科の教科書を発行している大日本図書と一般社団信州教育出版社に問い合わせた。大日本図書は3年生:ウルシ、ツツジ、4年生:サクラ、ハナミズキ、5年生:サザンカ、6年生:掲載なし。信州教育出版社は4年生の教科書にアカマツ、イチョウ、カエデ、クヌギ、クス、サクラ、サンショウ、シラカシ、ツタ、ヌルデなどを掲載しているとのことだった。
これで、「推しの木Profile」に具体的な樹木の名前が出てこない理由がわかった。学校では教えていないのだ。理科などの理数系の教科書を発行しているのは両社を含めて6社で、母語の「国語」や「社会」は3社のみということも分かった。
記者小学生のころ、「松風騒ぐ丘の上…」(1954年、三橋美智也「古城」)、「一本杉の石の地蔵さん…」(1955年、春日八郎「別れの一本杉」)、「柿の木坂は駅まで三里…」(1957年、青木光一「柿の木坂の家」)などを歌って木と親しくなったものだ。
図書館も同じだ。ある区立図書館の本棚に並んでいる子ども向け図書を調べた。文学、伝記、昔話、地球、科学、恐竜、魚、鳥、昆虫、環境、料理、乗り物、スポーツ、哲学、宗教…などは豊富で、SDGsやユニバーサルデザイン、プログラマーに関する書籍もあるのに、森林・林業は一番目立たない、探すのが容易でない最下段に収められていた。冊数も10冊くらいしかなかった。
そのうち記者が名著だと思ったのは、七尾純著「森といのち 生命をはぐくむ森」(あかね書房 2004年刊)だ。字を小さくし、ルビを振らず情報量を増やしたら大人向けにもなる。
物の序で。小学校で学ぶ漢字を調べた。文科省の学年別漢字配当表の漢字は1,026字あり、うち木篇漢字は34字だ。学年別(木篇)に見ると1年生80字(木、本、林、森、校、村)、2年生160字(ゼロ)、3年生200字(横、植、根、橋、相、柱、板、様)、4年生202字(機、械、極、材、札、松、標、栃)、5年生193字(桜、格、検、構、枝)、6年生191字(株、机、権、樹、棒、枚、模)だ。
この良し悪しはともかく、どうして「栃」(トチノキ)が「松」とおなじ4年生なのか。これには大した理由はない。都道府県名の漢字を小学4年生までに教えることにしたためで、「栃木県」の「栃」が木篇であるからに過ぎない。国樹として親しまれている「桜」はなぜ5年生なのか、学名が「Cryptomeria japonica」=隠された日本の財産を意味する「杉」や「桧」「梅」「桃」「柿」「桐」はどうして対象外なのか、理由は明確ではない。みんなご都合主義によるものだ。ここに人文系と理数系の分断・断絶をみた。
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以下は、同社を通じてお願いした今回の取り組みについてのコメント。
■同社担当:野村不動産 エリアマネジメント部横川大悟氏 街づくりに携わる事業者として、ただマンションを作って終わりということではなく、シビックプライドの醸成や街の魅力向上が大事だと考え、今回の授業実施に至りました。
今回の授業を通じて、子どもたちには、木への関心や街への関心を持ってもらい、この機会をきっかけに自分の住む町にもっと誇りをもって貰えればと考えています。
子どもたちが、色々な場所で自分の住む街について話す機会が増えることで、住民や来街者を巻き込んで街への愛着を育んでいってもらえるよう願っております。
■授業を実施した先生(大学生) 子どもたちがとても真剣に取り組んでくれて、沢山の時間をかけて準備をしてきて良かったと思いました。
近くの友達と色々話し合って楽しそうにプロフィールを完成させている生徒の皆さんの姿がとても印象的でした。
私たちに積極的に話しかけてくれたり、質問してくれたりする生徒さんもいて嬉しかったです。
今回の授業が、街の木に興味をもつきっかけになればと思います。
実際に授業をするまで、真剣に取り組んでくれるだろうか? と心配だったのですが、全員が一生懸命推しのプロフィールを書いてくれてとても嬉しくなりました。
完成したプロフィールを友達同士で見たり、どこにあるの? と話している姿も見かけたりして、この時間を楽しんでいるのだなと感じ、実施できてよかったです。
それぞれのシートには個性や見どころが詰まっていると思います。
■小学校の先生のコメント 推しの木探し、そして、プロフィール作りを通して、子ども達が楽しそうに取り組んでいる姿を見ることができ、とても嬉しくなりました。
また、それだけでなく推しを選んできただけに、「自分の選んだ木や木材が1番」と、自信満々に言う児童の様子から、身近なものに愛情をもてるというのは、とても素敵なことだと感じました。
この経験を通して、木や木材だけでなく、地域にある様々なものにも「愛」をもち、愛情溢れる地域を作っていってほしいと思いました。
今回の授業をきっかけに改めて木材の良さに気付き木材の良さを生かした卒業制作を行うことができました。
子どもたちが今後も木材に触れ親しむとともに、保護者の方にもこの取組みを直で見ていただけると今後さらに内容が発展していくと思いました。
「推しの木図鑑」巻末
野村不&埼玉大学 持続可能な街づくりへ 小学生向け授業プログラム開発・授業(2023/6/1)
顧客の“感性”を住まいに映し出す新デザイン「life knit design」始動 積水ハウス
「6つの感性フィールド」
積水ハウスは6月20日、顧客の“感性”を住まいに映し出す新デザイン提案システム「life knit design」を「インテリア提案」「エクステリア提案」として6月30日から全国で始動すると発表した。
「インテリア提案」では、従来の流行に合わせたテイスト提案を脱却、空間における色や素材、カタチなどから受ける印象を言語化し導き出した独自の「6つの感性フィールド」(「静」「優」「凛」「暖」「艶」「奏」)へ変革。顧客と“感性”を共有し、的確な提案へと導く「インテリアコミュニケーションツール」を新たに開発、“感性”に響く住まいがデザインされる場として「life knit atelier」を全国84か所でオープンする。
「エクステリア提案」では、従来の「和」「洋」「モダン」の3つのテイスト提案から、「日本カラーデザイン研究所と共同研究で日本及び海外の約150 シーンの美しいまちなみを構成する色や四季の植栽の色を分析。日本の景観や樹木と調和する色を特定し、外壁色に落とし込み、また、美しい景観に共通してみられる色の明るさの法則〝明度グラデーション〟に着目」し、一棟の建物としても、建ち並ぶ街並みとしても上品で優しいグラデーションを実現する提案に変革する。
「life knit design」を体現したモデルハウス「HUE(ヒュー)」を「駒沢シャーウッド展示場 HUE」でオープンする。
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上段は同社のニュース・リリース(A4判4ページ)のコピペだ。記者もそうだが、読者のみなさんもなんのことやらさっぱり分からないはずだ。
そもそも「感性」なるものは、人間が持って生まれた生得的な五感のほか、それぞれの地域の歴史・文化などによって体得される後天的な側面を持つ。例えば「美しい」。リリースには8回この言葉が出てくる。記者は草花のドクダミが大好きで美しいと思うのだが、これを美しいと感じる人は圧倒的少数派のはずだ。美しいとされるシンメトリーの建築物は、時には「悪の権化」に見える。いったい何が美しくて醜いか。これは永遠の課題・テーマだ。
モデルハウス見学を同社にお願いし、レポートする。同社のグローバルビジョン「『わが家』を世界一幸せな場所にする」はどのような形で具現化されているのか興味津々だ。
建て替えより改修のほうがライフサイクル脱炭素に有効 住友不・東大・武蔵野大
住友不動産、東京大学大学院新領域創成科学研究科(清家剛教授)、武蔵野大学工学部サステナビリティ学科(磯部孝行講師)の3者は6月15日、省資源・省CO2工事を施した住宅改修は、戸建ての新築建て替えよりもライフサイクル脱炭素を早く達成可能であるとする研究成果を発表した。
研究は、2050年カーボンニュートラル達成、家庭部門における脱炭素実現のためには、新築より省エネ性能が劣る物件が大半を占める既存住宅の改修に伴う環境評価手法の確立が欠かせないとし、部分リフォームからまるごとリフォーム(全面改修)まで幅広い施工実績を有する同社の協力のもと、2021年12月から両大学が開始していた。
2022年6月に発表した第1フェーズの研究成果では、戸建住宅の施工時資源投入量・廃棄物排出量に係るCO2排出量を、「建て替え」と「改修」で比較した場合、改修の排出量は47%削減されることを実証している。
今回の発表した第2・3フェーズでは、断熱等級4、ZEH相当の設備性能太陽光パネル約7.5kWを積載した全面改修は、約35年でライフサイクル脱炭素を達成することが可能で、新築建て替えより約10年早いことを証明した。
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古屋を壊すには解体コストは馬鹿にならず、建て替えより全面改修のほうがライフサイクル脱炭素を早く達成するというのはなんとなく理解できるが、今回はそれを科学的に実証したのが凄いではないか。
記者はいま、それなりにZEH化が進んでいる持家の着工戸数が対前年同月比で17カ月も連続して減少し、一方でZEH比率は数%しかない、価格が圧倒的に安い分譲戸建てが市場を席巻しているのに複雑な気持ちを抱いている。一言でいえば、住宅購入検討者は良質住宅を選ぶ余裕がないのが現実だ。
もう一つ、3者に聞きたいことがある。省エネ性を高め、ZEH化を図った全面改修のほうが脱炭素の面から有効であるのはよく分かった。ただ、敷地が狭く、猫の額ほどの庭(緑)もない狭小住宅などは改修しても居住環境は全然よくならないではないか。敷地の緑化・緑(庭木)の人体への影響も含む価値の可視化や、性能が劣る住宅が建設されることによる経済的損失も研究していただきたい。
「新築そっくりさん」建替えよりCO2排出量47%削減 東大×武蔵野大×住友不(2022/6/16)
1階天井高2800ミリ、30㎡のルーフテラス付き9戸 日本エスコン「茅ヶ崎東海岸」
「レ・ジェイド茅ヶ崎東海岸南」
先に紹介した「レ・ジェイド新横浜」に続いて「レ・ジェイド茅ヶ崎東海岸南」。地元の人にはよく知られている「SPORTIFF」のカフェ跡地の低層マンションで、1階住戸のリビング天井高を2800ミリとし、3階は30㎡のルーフテラス付きとした商品企画が素晴らしい。
物件は、JR茅ヶ崎駅から徒歩15分、茅ヶ崎市東海岸南2丁目の第1種住居地域、第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域(建ぺい率63.18%、容積率131.76%)に位置する3階建て全31戸。専有面積は56.95~120.19㎡、坪単価は320万円。設計・監理はコモン・リンク一級建築士事務所。施工は鉄建建設。竣工予定は2023年11月下旬。販売代理は大和地所レジデンス。
1月にホームページを開設し、これまでのエントリー数は1,000件、4月10日からオープンしたモデルルーム来場者は150~160組、20戸が成約・申し込み済み。
敷地は、地元によく知られた、「キング・カズ」こと三浦知良氏の奥さん三浦(旧姓・設楽)りさ子さんがモデルになっているカジュアルブランド「SPORTIFF」のカフェ跡地。
建物は内廊下方式で、1階は店舗と南向き・南西角住戸6戸と北西角の1戸、2~3階は南向き・角住戸の7戸と北向き・角住戸の5戸。3階の9住戸は約30㎡のルーフテラス付き。2階は最大奥行き2300ミリのバルコニー付き。
主な基本性能・設備仕様は、直床、リビング天井高2800ミリ(1階)、2450ミリ(2階)、2500ミリ(3階)、2200ミリハイサッシ、フィオレストーンキッチン天板、食洗機など。
同社開発事業本部首都圏企画販売部チーフ・望月洸氏は「『ボールパーク』効果も大きい。来場者の約6割は茅ヶ崎、藤沢市居住の地元の方ですが、いずれ湘南に住みたいと考えていらっしゃる都内居住者の方も多く、販売は順調。浸水ハザードマップに該当しないのもアピールポイントです。100㎡超の7戸も2戸が成約済みで、他も商談中。高額だからといって悲観はしていません。販売代理に大和地所レジデンスさんをお願いしたのは、湘南での販売実績が豊富だから。今後は当社単独で販売できるよう体制を整えています。戸数は追わず質を確保していきたい」と語った。
モデルルーム
モデルルーム
モデルルーム ギャラリー
モデルルーム
2階バルコニー
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販売事務所は、大和地所レジデンスがモデルルームとしていた「ヴェレーナグラン茅ヶ崎東海岸」と同じ場所で、建物の外観もほぼ同じ。内装は日本エスコンの物件に採用しているものと同じにするため模様替えされていた。
モデルルームは間口8750ミリ、専有面積95㎡のスクエアタイプ。小家族居住を想定して2LDKとして提案したものだが、カラーリング、デザインが素晴らしい。1億円超でも検討者を納得させる提案であるのは間違いない。
他の住戸も間口は最低でも7150ミリ確保し、アルコーブ・玄関をゆったりとっているのも目を引いた。坪単価320万円は安くないと思うが、納得させるプランだ。
これまで供給された大和地所レジを含めた「茅ヶ崎」の高額物件を研究した結果だろう。
約30㎡のルーフテラス(居室ではないが、広さは都心部の3,000万円のワンルーム分もある)
市の環境設計制度の適用受ける 坪単価340万円で販売好調 日本エスコン「新横浜」
「レ・ジェイト新横浜」
日本エスコンが分譲している「レ・ジェイト新横浜」「レ・ジェイド茅ヶ崎東海岸南」のモデルルームを見学した。「新横浜」は、市の市街地環境設計制度の適用を受けており、「茅ヶ崎東海岸」は第一種低層住居専用地域に位置する低層マンション。前者は立地、後者は環境に恵まれている。
まず「新横浜」から。物件はJR・横浜市営地下鉄ブルーライン・相鉄・東急新横浜線「新横浜駅」から徒歩9分、横浜市港北区新横浜1丁目の商業地域(建ぺい率80%、容積率600%)に位置する15階建て190戸(このほか店舗・事務所・地域開放集会室)。先着順で分譲中の第1期1次(59戸)の専有面積は30.10~77.68㎡、価格は2,760万~8,490万円、坪単価340万円。竣工予定は2025年2月。設計・監理・施工はファーストコーポレーション。売主は同社(事業比率85%)のほかファーストコーポ(同15%)。
敷地南東側は6車線の環状二号線、北東側は市道にそれぞれ接道。従前はパチンコ屋。建物は内廊下方式で、標準階の住戸プランは南東向きファミリータイプが6戸、北東向き単身者・DINKSタイプが8戸。
横浜市市街地環境設計制度の適用を受け、建物は敷地境界線から約5m(道路舗道を含め約10m)セットバックさせて建築し、地域住民に開放する集会室を設けることなどから、高さ規制11階建て(30m)から15階建て(45m)の緩和を受けている。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2450ミリ、ディスポーザー、食洗機、Low-Eガラス、全戸備蓄倉庫など。共用部には地域住民に開放する集会室のほか、様々な防災対策を施している。
これまでエントリー数は約2,000件、3月4日に開設したモデルルーム来場者は約350件。5月末に供給した第1期50戸のうち契約済みは40戸で、他もほぼ申し込み済み。販売は好調に推移している。
同社開発事業本部首都圏企画販売部チーフ・山﨑泰史氏は「来場者の約3割が地元港北区で、広域から集客できているのが特徴です。相鉄・東急新横浜線の開業も後押ししています。1LDKタイプは資産性を重視したセカンド・投資需要もあります。私は『ボールパーク』の第1期販売を担当していますが、その効果は『新横浜』にも表れています。当社の認知度は飛躍的に高まっています」と語っている。
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モデルルームを見学する前、坪単価はボトムで350万円とはじいた。幹線道路に面し、後背地にラブホテルがあるのは難点だが、相鉄・東急新横浜線の開業で利便性が高まり、新幹線を利用すれば東京駅まで16分(乗車券510円+自由席870円)だ。在来線より料金は倍以上だが、時間は往復で1時間くらい短縮できる。時給に換算するとお釣りが出る。座れるかどうかは分からないが、喫煙室もある。最近の人は〝タイパ〟を重視されるようだから、これは魅力だ。(4年前、ナイスの『新横浜』を取材しているが、坪単価は270万円だった)
実際は340万円。予想より低かったが、欲をかかないということだろう。ラブホテルだが、新横浜北部地区まちづくり協議指針に基づきエリア一帯は「商業住宅複合ソーン」に指定されており、風俗施設などは新たに建てられない。マンション化が進むとみられる。駅南側の再開発計画も進行している。
横浜市市街地環境設計制度について。同制度は、敷地内に歩道や広場(公開空地)を設けるなど、総合的な地域貢献を図ることを条件に、建築物の高さや容積率を緩和する制度で、昭和48年に導入されてからこれまで約500件(令和4年12月現在)が認定されている。約50年で約500件だから、年間10件程度(うち共同住宅は8割くらいか)。同制度の適用を受けたマンションを何件か取材しているが、総じてレベルは高い。
モデルルーム
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山﨑氏は、同社の記念碑的マンション「レ・ジェイドつくばStation Front」と「レ・ジェイド北海道ボールパーク」の販売を担当したと語ったので、ネットで検索したら、You Tubeで山﨑氏の動画が紹介されていた。同社の販売担当で3本指に入る実績を上げたのが評価され、最年少でチーフに昇格した若手のホープのようだ。
なるほど。説明がとても丁寧で誠実さが伝わってきた。のちに紹介する「茅ヶ崎東海岸南」担当の望月洸氏も素晴らしいコメントを残した。同社は、自社のみで販売できる体制を目指すそうだ。
全戸に防災備蓄庫が設けられている(記者はこのような大きなものを初めて見た。先日は「防災」をテーマにしたポラスの分譲戸建てを見学したが、このようなニーズはあるのか)
購入者の4割が道外 日本エスコン 日ハム新球場に隣接マンション118戸完売(2022/9/21)
坪235万円でも7割近い144戸成約100㎡超58戸も人気 日本エスコン「つくば」(2021/4/24)
駅1分の利便性・資産性受けたか 県外が5割 日鉄興和「羽沢横浜国大」好調スタート(2022/6/25)
ナイス 免震「新横浜」 好調スタート 第一期35戸完売へ(2019/10/31)
「大変厳しい」会長・副会長が連発…悲観することはない 2×4協会 会見・懇親会
池田氏(都市センターホテルで)
日本ツーバイフォー建築協会(会長:池田明・三井ホーム代表取締役社長)は6月15日、2023年度定時総会を開催し、2022年度事業報告と収支決算、2023年度事業計画と収支予算を可決し、総会後に記者会見・懇親会を行った。
池田会長は懇親会で、「昨年度のツーバイフォー住宅の着工戸数は92,000戸、シェアは10.7%。全体ではシェアは低下したが、利用関係別では、持家のシェアが上昇しこれまでの最高値を更新し11.7%となった。また、施設系のツーバイフォーは年々増加傾向にあり、会員向け調査によると、昨年度の着工件数は前年度比で約1割増加した。耐震性、耐火性を始めとするツーバイフォーの優れた性能面や、環境に優しい木の建築に対するユーザーの評価が一定の成果に繋がっていると感じている。
カーボンニュートラルの実現を目指すわが国においては、最終エネルギー消費量の約3割を占める住宅・建築分野における省エネルギー化、脱炭素化に向けた取り組みの更なる強化が必要。CO2を吸収・固定化し、炭素を蓄える働きを持つ木材を構造材とし、建築時や建物利用時のCO2排出量の少ないツーバイフォー建築の供給を通じてカーボンニュートラルの実現、脱炭素社会の構築に貢献することを重要な使命と認識し、引き続き普及、発展に努めていく」と語った。
懇親会
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記者会見では、メディアから住宅着工、とくに持家の減少について質問が飛んだ。以下、その回答を紹介する。
池田会長 持家は17か月連続の前年比マイナスで大変厳しいマーケットが続いている。当社は非住宅の施設系や賃貸の受注増がかさ上げしたことにより、受注量は若干増加した。ただ、専用住宅は大変厳しく受注量は約7%減少した。内訳で見ると4,000万円以上は何とか踏ん張っているが、2,000万円台から3,000万円台のむボリュームゾーンが大きく落ち込んでいる。今後も厳しい状況が続くのではないか
副会長・細谷惣一郎氏(三菱地所ホーム代表取締役社長) 今年度に入って受注の足は鈍っている。ゴールデンウィークの住宅展示場への客足はかなり落ち込んだ。WEBなとの新たな集客手法に期待している
副会長 蓮井美津夫氏(イワクラホーム代表取締役社長/北海道支部長) 総じて厳しい。2割、3割落ちている。建売住宅は在庫の山。他の地域より厳しい
副会長・倉田俊行氏(ウイング代表取締役社長)マンション向けの出荷は増えているが、世界マーケット的には赤字を垂れ流し、生産調整に入る意向を示すところが増えている
こどもエコ住まい支援事業についても質問が飛んだ。同事業は、令和4年度補正予算で1,500億円が計上された、2050年カーボンニュートラル実現に向けた施策の一つ。ZEH住宅の新築と一定のリフォームが対象で、子育て世帯・若者夫婦が新築する場合氏は100万円/戸、住宅の省エネ、バリアフリーなどのリフォーム工事には最大45万円/戸(子育て・若者夫婦以外は30万円/戸)の補助金を給付するもの。5月現在、予算額に対して42.9%の進捗。
これに対して、細谷氏は「継続してやって頂かないと厳しい」と時限立法では効果は限定的と語った。
左から細谷氏、蓮井氏、倉田氏
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記者は、高が1割くらい受注が減ったくらいで、慌てふためくことなどないと思うが、4氏からは「厳しい」「非常に厳しい「「鈍い」「落ちている」のフレーズが連発された(経営者とはそういうものか)。肝心の苦境脱出策については、改正省エネ法やこどもエコ支援事業のほか、として新たな集客手法としてWebに期待する声が聞かれた。
記者はもちろんカーボンニュートラル実現は喫緊の課題であり、ZEH住宅などに対する支援は欠かせないと考えているが、前途は厳しいとみている。
注文住宅は大手ハウスメーカーを中心に進んではいるが、分譲戸建て、共同住宅は遅々として進んでいない。年間約4万戸を販売する分譲戸建て最大手の飯田グループHDの2023年3月期の平均価格は土地代を含めて約3,000万円だ。100万円の補助金を受けても、その倍以上のコストをどうするのか。コスト増を吸収する余力はないはずで、価格にオンしたら売れるのか。極めて難しい問題だ。悲観的にならざるを得ない。
まあ、しかし、「大変厳しい」とか「落ちている」というのは2~3年前の数値と比較するからそうなるのであって、現在の市況が〝当たり前〟だと考えれば、そんなに悲観することはないと思うがどうだろう。いまが「ゼロ=スタート」だ。「木の時代」の追い風もあるではないか。経営者のかじ取りが試される。
左から三菱地所執行役常務・加藤博文氏、細谷氏(「木質化に向けた先行投資をかなり行った。今後5年間が勝負の年。全館空調の外販を進め、三菱地所レジデンスの物件への搭載を増やす」加藤氏)
左が理事の新昭和取締役・神﨑智氏(右の方は同社の方だが、名刺交換を忘れたのでどなたか分からない)お二人は「(今後のパワービルダーは)お互い首を絞めることになる可能性もある」と話した。同社の2022年3月期決算は売上高457億円で、粗利益率は23.1%と高い。
左から倉田氏、カナダ林産業審議会 市場開発部本部長・ケビン j・ビューズ氏、加藤氏(ケビンj・ビューズ氏の奥さんは日本人とか。懇親会の冒頭、来賓のカナダ大使館の方は、100年前の関東大震災で被害を受けたわが国に木材を供給したのが貿易の始まりと語った)
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