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「WORK×ation Site 北海道ボールパークFビレッジ」オフィス(完成予想図)

 三菱地所は12月8日、北海道日本ハムファイターズの新球場「北海道ボールパークFビレッジ」内にワーケーションオフィス「WORK×ation Site 北海道ボールパークFビレッジ」を来年3月に開設すると発表した。施設は和歌山県・南紀白浜、長野県・軽井沢、静岡県・熱海、静岡県・下田、神奈川県・箱根に続く「WORK×ation プロジェクト」6拠点目。

 施設は、北海道北広島市Fビレッジの新球場「ES CON FIELD(エスコンフィールド)HOKKAIDO」のレフトスタンドに位置する「TOWER 11(タワー・イレブン)」の延床面積82.8㎡。構成はパークサイド1室(46.7㎡)、フィールドサイド1室(36.1㎡)の2部屋。各部屋にWi-fi、プロジェクター、ホワイトボード、ディスプレイ、OAタップ、文具などを設置する。

 同社は、フレキシブルなワークスタイルに対応する商品・サービスを提供するため2018年8月からワーケーション事業を展開しており、今回の施設はFビレッジ内での野球観戦をはじめとした様々なアクティベーションとのコラボレーションにより「イノベーション創出体験」「新たな観戦体験」を創造する。

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 球場内でのこの種の施設は、三井不動産などが東京ドーム内のプレミアムラウンジをワークスペースとしてワークスタイリング会員向けに提供するのを取材している。アンチ巨人の記者だが、素晴らしい施設だと思った。横浜スタジアムにもあると聞いた。

 北海道日本ハムファイターズの新球場「ES CON FIELD HOKKAIDO」では、徒歩1分の日本エスコンのマンション「レ・ジェイド北海道ボールパーク」全118戸が分譲開始からわずか8か月で完売し話題となった。

 また、デベロッパーの野球がらみの話題では、ヤクルト村上選手が三冠王を達成したことから、トップスポンサーである〝好立地、ぞくぞく〟のオープンハウスが「東京の家 3億円」をプレゼントして、3億円を超える広告・宣伝効果(記者の予想)をあげた。

購入者の4割が道外 日本エスコン 日ハム新球場に隣接マンション118戸完売(2022/9/21)

東京ドームをワークスペースとして提供 通年利用検討か 三井不動産ほか(2022/4/20)

村神様 祝56号!三冠王も確定 オープンハウス「1億⇒3億円の家」に大幅増額(2022/10/4)

 

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PALLET HOUSE JAPANのブース

 12 月7日(水)~12月9日(金)の3日間、東京ビッグサイトで開催されている日本経済新聞社主催「SDGs Week EXPO 2022」を半日かけて見学取材した。会場の広さは約26,000㎡、出展ブースは350くらいあったか。一通り回った中でもっとも印象に残ったのは、産業廃棄物でもある木製廃パレットや建築足場古材をヴィンテージ家具に変貌させる事業を展開しているPALLET HOUSE JAPANのブースだった。

 素晴らしい作品が展示されていた「WOOD DESIGN AWARD 2022」のコーナーを見た後だった。一見して廃材を利用したものであることが分かるテーブルに目が吸い寄せられた。「いいデザインですね」と声を掛けたら、大町浩社長は、記者が尋ねもしないのに次のようにまくし立てた。

 「このような廃材を利用して家具を製作しているのは世界に2つ(もう一つはどこか話さなかった)。釘などが残っているので製品にするのは結構難しい。珍しい事業であることからテレビなどメディアで取り上げられるようになり、今年は11本。時間にしたら2時間超。昨年からだと18本。関西企業ではうちがもっとも露出度が高いでしようね。わたしは『吉本』出身で、坂田利夫の2番弟子(1番ではなかったようだ)」

 肝心の値段を聞いた。「このテーブル? 15万円くらい。10年間使ってくれたら半額で、20年間なら売った値段で買い戻す特約付き。こんなことをしているのは世界中でもうちしかない。もともと廃材なので、全額で買い取っても再販できる自信がある」

 なるほど。さすがもと芸人だ。落ちもある。「(会社が)潰れたらごめんね」

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大町氏(こんなポーズを記者は注文したわけではない。念のため)

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PALLET HOUSE JAPANのブースは日本ウッドデザイン協会のブースの隣にある

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 同社のホームページで調べた。創業は2014年3月。「誰もやらない、誰もやれない」を理念に、世界的インテリアブランドを目指すという。本社所在地は大阪府東大阪市水走3-3-7、TELは072-966-8010、営業時間は年中無休(AM10:00 〜PM6:00)。

 「坂田利夫」と言われても、あああの人かとしか思い浮かばない記者だが、日本だけではなく「世界初」の企業と巡り合うことができた。これも何かの縁か。現場取材はこれだから楽しい。「SDGs Week EXPO 2022」は3日間で6万人の来場者を見込んでいる。

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吉田氏(左)と日比野氏(提供:三菱地所)

三菱地所と東京藝術大学は126日、包括連携協定を125日に締結したと発表。産学連携を強化することで、大手町・丸の内・有楽町エリア(大丸有)で、アートが有する力を介することで企業・個人のクリエイティビティを高め、ビジネスアイディアの発見と新しい産業の創出を促進するのが目的。

今後、大丸有エリアでの「藝大アートセンター」構築に向けて、双方のリソースを活用し、ビジネスセンターに求められるアートの役割について研究し、社会人・学生向けプログラムを研究・提供する寄附講座を開講する予定。

両者は2007年以来「藝大アーツイン丸の内」を開催しており、様々なアートイベントでの連携を深めてきた。

三菱地所執行役社長・吉田淳一氏は「藝大との協業をより一層強化し、双方の知見・ノウハウを活用すると共に、アートを触媒として、大丸有エリアに立地する企業や近接するアカデミアとの連携・協業を推進することで、日本の豊かな未来を創造していく」とコメントしている。

東京藝術大学学長・日比野克彦氏は「三菱地所と藝大の目指す社会は、イメージする力を基盤に構築していくという共通したところがある。三菱地所が持つまちづくりの知見を元に、丸の内地域でのアートアクションの実践や、アート×エコビジネスによるアート・リーディングプログラムを作り、社会的課題の解決へ、そして未来の地球へ貢献していく。アートは個々の違いをそれぞれの特性として認識し、その差異がひとりひとりの心を動かすことができるもの。すべての人たち、すべての領域を滲ませることができるのがアート」とコメントしている。

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「都市の生物多様性フォーラム」(左からアナウンサー木佐彩子氏、八木氏、菊池市、河村氏、仲井氏、村松氏、今森氏、河口氏=神田スクエアで)

 積水ハウスが11月30日に開催した「都市の生物多様性フォーラム」をアーカイブで視聴した。12月7日(日本時間8日)にカナダで開幕するCOP15(生物多様性条約第15回締約国会議)第2部を見据えた基調講演やディスカッションが行われた。同フォーラムは昨年11月の第1回に続く第2回目。

 基調講演では、積水ハウス代表取締役社長執行役員兼CEO・仲井嘉浩氏は、同社「5本の樹」計画と琉球大学のビッグデータシステムを共同検証し、世界初の都市の生物多様性の定量評価システム「ネイチャー・ポジティブ方法論」をオープンデータ化してから1年経過したことを踏まえ、「この1年間で予想外の嬉しい取り組みが3つあった。一つは都市緑化機構さんと連携して企業緑地の生物多様性評価を強化すること、二つ目は教育分野への展開、三つ目は東京大学とのウェルビーイングの共同研究が始まったこと」などと同社の生物多様性の取り組みが前進していることを報告した。

 これを受け、国際自然保護連合日本委員会事務局長・道家哲平氏は、多くの国・団体から「情報開示義務がなければ、政府も企業(金融)も、目隠しして空を飛ぶようなもの」との声があることを紹介し、COP15では企業の生物多様性の取り組み状況を開示し、義務化すべきという論議が行われる可能性を示した。

 このほか、環境省大臣官房 総合政策課 環境教育推進室長・河村玲央氏は同省の環境教育プログラムについて、都市緑化機構企画調査部主任研究員・菊池佐智子氏は同機構の「SEGES(シージェス)」の「育てる」「都市オアシス」「計画(つくる緑)」についてそれぞれ報告した。

 このあと行われた、積水ハウスESG経営推進本部環境推進部スペシャリスト・八木隆史氏が司会役とする、写真家・今森光彦氏、千葉大学非常勤講師でNPO法人生態教育センター理事、生態計画研究所主席研究員・村松亜希子氏、立教大学特任教授で不二製油グループ本社CEO補佐・河口眞理子氏3氏によるディスカッションでは、生物多様性の取り組みは点から線へ、さらに面的に広げなければならないことが強調された。

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仲井氏

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 フォーラムの全てを紹介する余裕はないが、出身地・大津市の45年間も管理が放棄された、シカやイノシシも避けて通る山林や耕作放棄された農地を取得し、自ら農業も行っている写真家の今森氏が興味深いことを話されたので紹介する。

 今森氏は写真を撮るときは被写体と距離を置き、冷静な目で俯瞰的、鳥瞰的に眺め、そしてその被写体の中に入り込むようにして、中から見える世界を切ると話した。そうすると自然と人間の関係性がよく分かるのだという。

 記者が好きな作家・丸山健二氏は、同じようなことを語っている。丸山氏は、小説を書くうえでもっとも大事なのは人間やものを徹底して観察することだとし、例えていえばカメラだと話している。サングラスをかけているのは、目を保護するためでもあるが、じろじろ眺めていることが相手に悟られないからだという。丸山氏の小説には、人間だけでなく動植物、あるいは無機物を主人公にしたものが多い。

 生物多様性を考えるとき、今森氏や丸山氏のような視点が必要だと思う。人間と自然界の関係性をしっかり捉えることだ…小生などは自分の物差しでしかものごとを測れないが…。

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 演壇に飾られていた樹木がまた素晴らしい。同社に樹種を聞いた。シラカシ、アオキ、コナラ、イスノキ、ナンテン、サツキツツジ、ユズリハ、ハクサンボク、アセビ、タブノキ、カクレミノ、ソヨゴ、アオダモ、アカマツ、ドウダンツツジ、シャリンバイだそうだ。

画期的 世界初の生物多様性定量化システム公開 積水ハウス&琉球大学(2021/11/17)

ネガティブにならざるをえない 無残な街路樹 ネイチャー・ポジティブを考える(2021/11/17)

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「パークホームズ文京本駒込」

 三井不動産レジデンシャルが分譲中の「パークホームズ文京本駒込」を見学した。駒込駅から徒歩5分の全88戸で、入居者の読み終えた本を貸し出す「循環ライブラリ」のほか、ワークスペース、ピアノ・楽器の練習ができる防音室を備えているのが特徴で、第1期44戸が完売。好調なスタートを切った。

 物件は、山手線駒込駅から徒歩6分、東京メトロ南北線駒込駅から徒歩5分、文京区本駒込5丁目の商業地域・第一種住居地域(建ぺい率96.55%、容積率566.57%)に位置する14階建て全88戸。第1期2次(4戸)の登録受付は2022年12月9日(金)~12月9日(金)、抽選日は12月9日(金)。価格は1億458万円~1億4,758万円、専有面積は65.43㎡(1戸)・74.67㎡(2戸)・77.80㎡(1戸)。入居予定は2024年4月上旬。施工は村本建設。

 物件ホームページを7月に立ち上げ、案内は10月にスタート。11月25日に分譲した第1期44戸(専有面積57.83~90.52㎡、価格9,058万~20,858万円)が完売。第1期の坪単価は560万円。購入者は子育てファミリーが中心。これまでの反響は2,000件超。

 現地は、イチョウ並木が美しい敷地南側の不忍通りに接道しているほか、西側、北側、東側(一部)に接道。建物は内廊下方式で、標準階の住戸は6~7戸、最上階は5戸。

 主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2500ミリ、ディスポーザー、食洗機、キッチン・洗面フィオレストーン天板、食器棚、床タイルなど。

 同社都市開発二部事業室・中村信介氏は、「小学校の通学校が文京区内でも人気が高い『3S1K』(昭和小・誠之小・千駄木小・窪町小)の昭和小学校という立地に対する子育てファミリーの評価が高く、電子ピアノを備えた防音室や『循環ライブラリ』などの共用部施設も支持されています。競合物件は多くありません」と語った。

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基壇部の外観デザイン

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 ワークスペースや防音室、「循環ライブラリ」の共用施設がアッパーミドルの子育てファミリーに受けているのだろう。坪単価からして大半は1億円超の価格だが、凄い売れ行きだ。

 インター・プロデュースの澤村正人氏による三層構成のデザインがいい。とくに書架に蔵書が並ぶシーンをモチーフにした基壇部がとても印象的だ。また、1戸1戸のプランもよく練られているのも人気の要因の一つだと思う。ワイドスパンが中心で、北向きだが57㎡のプランでも間口は7770ミリ。よくある田の字型はひとつもない。

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循環ライブラリ

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現地(クレーンの立っている部分)

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 三井日本橋タワー5階に設けられている同社の日本橋サロンを訪ねるのは初めてだったが、同業他社の常設モデルルームと比較して勝るとも劣らないのは間違いない。

 全体の広さは数百坪ありそうで、受付カウンターは江戸切子のデザインがあしらわれており、ラウンジ正面には「三井」の象徴でもある越後屋の店章(家紋)が染められた幅5mはありそうな暖簾が目を射た。日本橋を中心に忠実に再現したジオラマも目を引く。床も突板仕上げ。接遇スペースのテーブルは本物の原木で、椅子も本革張り。

 これだけで来場者を圧倒するはずだが、74㎡のコンセプトルームの基本スペックも価格に見合うレベルだし、華美でないカラーリング・デザインも優れている。

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「三井の住まい 日本橋サロン」

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接遇スペース

入居者の読み終えた本を貸し出す「循環ライブラリ」 三井不レジ「文京本駒込」(2022/8/6)

会話ができ、音も香りも風も吹く 日本橋「未来ののれん展」11/11まで開催(2019/11/2)

 


 

 

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 全て疑ってかかれ-メディア(記者)の基本だ。マス・メディアであろうと個人がSNSを通じて発信する情報であろうと、その情報は発信者によって編集され、そこには何らかの意図・企みが隠されており、受け手は発信者が企図するものを読み取り、批判的に読み取らなければならない-メディア・リテラシーの原則だ。

 なぜ、こんなことに触れるか。デベロッパーもメディアも評論家も、マンション市場を語るとき、その論拠に必ずと言っていいほど不動産経済研究所(不動研)のマクロデータを利用し、受け手もまたそのマクロデータを無批判に受け取っているのではないかという疑問を小生はずっと抱いているからだ。

 断っておくが、不動研のデータを鵜呑みにするなと言っているのではない。同社のデータは、マンション市場を把握するにはとても貴重な資料だ。ただ、同社のデータは全体像の一部を捉えたもので、全てではないことをわれわれは忘れてはいけない。

 それがいいか悪いかはさておき、同社の調査対象は専有面積が30㎡以上で、30㎡未満のワンルーム・投資向けマンションや1棟売り、最近増加している再開発物件の地権者住戸などは調査対象外になっている。(同じような調査は、不動研のほかに東京カンテイ、工業市場研究所なども行っており、東京カンテイは30㎡未満も調査対象に加えており、工業市場研究所は最近はほとんど供給されなくなった公的機関のマンションなども対象にしている)

 別表・グラフを見ていただきたい。国土交通省の首都圏マンション着工戸数と不動研の首都圏マンション供給戸数の推移を比較したものだ。国交省の調査は着工時点での数字で、その後、賃貸用に用途変更されたり、確認申請が取り消されたりしたものまで追跡調査していない。一方で、不動研は上述したような条件を付しており、着工と分譲開始には1~3年くらいのタイムラグが生じるので着工=供給という意味ではない。

 それにしても、戸数の乖離率(着工を100とした場合の不動研のカバー率)が著しいと皆さんは感じないだろうか。例えば、2013年。着工戸数は約6.8万戸であるのに対し、不動研は約5.6万戸(カバー率83.0%)だ。

 それ以降のカバー率はほとんど50~60%台で推移しており、2020年は着工約5.4万戸に対して不動研は約2.7万戸で、カバー率は50.5%となっている。当時、メディアは不動研のデータをそのまま報じ、マンション低調・退潮イメージを拡散した。2010~2021年で見ると、着工戸数約73万戸に対して、不動研は約48万戸で、約25万戸の差(カバー率65.3%)がある。

 しかし、マンションの着工戸数は減少しているが、分譲戸建てが増加したため分譲住宅はそれほど減少していない。中古マンションの成約件数も最近は新築を上回っている。

 ここに注目する必要がある。情報発信者も受け手も分譲戸建てや賃貸市場を含めたもっと広い視野で眺めないといけない。消費者の視点からすれば、本来は新築であろうと中古であろうと、マンションであろうと戸建てであろうと、あるいは賃貸であろうと、自らのライフスタイル・ステージにふさわしい住宅を自由に選択できるのが理想的な姿だ。それを阻んでいるのは何かも考えたほうがいい。

 着工戸数と不動研の供給戸数の乖離については、2022年9月の記事で次ぎのように書いた。

 「記者は、当初分譲予定だったのをリートなどに1棟で売却する戸数は年間3,000~5,000戸、地権者向け・事業協力者向け住戸は年間7,000~10,000戸、30㎡未満のコンパクト・投資用は7,000~9,000戸、合計年間17,000~24,000戸くらいあるとみており、この数字を加えるとほぼ住宅着工戸数と一致する」

 メディア・リテラシーの基本に立ち返る必要性を最近強く感じているので書いた。

マンションの質の退行・劣化、着工戸数の捕捉率、新築・中古の価格などを考える(2022/9/5)
 

 

 国土交通省は11月30日、2022年10月の新設住宅着工戸数をまとめ発表。総戸数は76,590戸(前年同月比1.8%減)で3か月ぶりの減少。利用関係別内訳は持家21,834戸(同18.7%減)で11か月連続の減少、貸家31,996戸(同7.3%増)で20か月連続の増加、分譲住宅21,841戸(同4.8%増)で3か月連続の増加。分譲住宅の内訳はマンション9,298戸(同10.2%増)で3か月連続の増加、一戸建住宅12,462戸(同1.4%増)で18か月連続の増加となった。

 首都圏マンションは4,633戸(前年同月比37.9%増)で、都県別では東京都3,359戸(同62.5%増)、神奈川県344戸(同33.1%減)、埼玉県274戸(同60.6%減)、千葉県656戸(同690.4%増)。

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 記者が注目しているのは、持家と分譲住宅の着工戸数だ。1~10月では持家は212,008戸(前年同期比10.7%減)で、分譲住宅は214,645戸(同5.6%増)となっており、分譲住宅が2,637戸上回っている。残り2か月。分譲住宅が持家を上回れば2006年(平成18年)以来16年ぶりとなるが…。

 もう一つの注目点は近畿圏とその他地方のマンションの着工戸数だ。今年1~10月では、近畿圏は20,704戸(前年同期比16.0%増)で、その他地方は20,591戸(同19.4%増)と拮抗している。

 その他地方の着工戸数が近畿圏を上回ったのは平成20年以降で平成20年、同29年、令和3年の3度ある。今年はどうなるか。

 

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「住宅事業スモールミーティング」(新宿野村ビルで)

 野村不動産ホールディングスは11月30日、メディア向け「住宅事業スモールミーティング」を実施し、野村不動産取締役兼専務執行役員 住宅事業本部長・中村治彦氏と同社常務執行役員 住宅事業副本部長・吉村哲己氏が最近の住宅市場や同社の事業などについて約1時間半にわたり説明した。

 全般的なマンション市場については、民間調査機関のデータを示しながら好調に推移していると話した。野村不動産HDの2023年3月期第2四半期決算でも、分譲住宅の契約戸数は2,446戸(前年同期比+400戸)となり、計上予定売上高2,800億円程度(前期は2,840億円)に対する契約進捗率は93.8%と好調に推移していることを裏付けた。

 同社の顧客動向では、首都圏マンション購入者の平均年齢が38.8歳に対し、同社は41.7歳で、世帯年収1,200万円超の世帯が増加傾向にあるとし、とくに「1億円超などの高予算顧客」が増えているとした。1~1.5億円の購入者は、会社員で5割、30・40代で6割、共働きは4割となっており、高額住戸が多い同社2物件でみると7割が駐車場を希望しない「堅実層」が目立つという。

 顧客ニーズの傾向では、テレワークの二極化により、「エリア」「駅距離」「広さ」などの趣向性が多様化しているという。

 住宅購入マインドは、首都圏の7割が取得に前向きであるとしながら、エリアによっては支払い余力に差が出始めており、注視が必要とした。環境配慮型住宅への意識は8割が持っているが、予算オーバーでも購入する層は約6%にとどまっていると説明した。

 今後の展開については、全国で年間4,000~5,000戸供給を継続し、住まいの総合サイトの開設、販売センターの拠点化を進める。来年1月には新宿に販売センターを開設する。

 今後の住宅市場動向では、価格動向、建築費動向、金利動向、住宅ローン控除の改正、コロナによるニーズの変化、ライフスタイルの多様化に注目しており、富裕層が増加していることから高額物件専門の部署を設けたことを明らかにした。

 脱炭素の取り組みでは、ZEH仕様の「プラウド向ヶ丘遊園」、低炭素住宅認定の「浦安市日の出四丁目Ⅱ計画」などを来年に分譲する。

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 歳をとったせいか、コロナの影響か、どうも最近の小生の記事はキレがなく、冗長・冗漫に流れると自覚しているのだが、その舌の根も乾かぬうちにその愚痴から。

 同社のマンションや分譲戸建ては「コープ野村」の時代を含めて40年以上、年間少なくとも10物件は見学してきたのだが、今年は5物件くらいしか見ていない。旧聞のマクロデータを示されたって〝そうなの〟と頷くほかなかった。

 やはり〝プラウド〟は他社とどこがどう違うのかをもっと話してほしかった。全館空調「床快Full」と樹脂サッシを採用した「亀戸」は市場を激変させたように、同社のマンションは絶えず市場をリードしてきた。同社もまたメディア向け見学会を頻繁に行ってきたではないか。

 まあ、愚痴はこれくらいにして、記者は高額物件専門の部署を新設したことに注目している。野村総研のデータによると、2019年の純金融資産保有額1億円以上5億円未満の世帯は124万世帯で、全体の2.30%を占め、純金融資産保有額5億円の世帯は8.7万世帯で、全体の0.16%となっている。数字は年々上昇している。

 2020年以降のデータは示されなかったが、記者は毎年、東京都港区の課税標準額が1億円以上の納税者の推移を調べており、今年度は前年度比241人、23.9%増の1,250人となり、この層の所得割額総額も前年度比65.8%増の約280億円となり、高額納税者数、所得割額とも過去最多だった2020年水準を大幅に更新した。アッパーミドル層も漸増している。

 同社は具体的にどの程度の層をターゲットにしているか明らかにしなかったが、記者は坪単価にして1,000万円以上、30坪として3億円以上を視野に入れているのではないかと想像する。高額マンション市場では、同社は三井不動産レジデンシャルや三菱地所レジデンスの後塵を拝している。沓掛英二社長は地団太を踏んでいるのではないか。

 もう一つ注目しているのは地方展開だ。同社はこれまで東京圏、関西圏、中部圏を中心に展開してきたが、最近は首都圏に近い政令指定都市や中核都市での供給を増やしており、今期計上予定戸数4,300戸のうち地方は800戸を予定している。同業他社も地方での攻勢を強めているが、同社としては〝プラウド〟のプライドが許さないはずだ。地方でもトップブランドを目指すとみた。

 ミーティングで質問することを一つ忘れた。マンションだけでなくオフィス事業などでJR各社とのJVを増やしていることだ。JR各社も鉄道事業が伸び悩むのは間違いなく、今後は社有地の活用や駅ビル再開発など加速させるためにはデベロッパーとの連携は欠かせないはずだ。同社とJR各社の動向に注目したい。

億万長者の人数&所得割額が激増 過去最多 アッパーミドルも漸増 東京都港区(2022/11/26)

天井高2700ミリ 全戸ワイドスパンに高い評価 野村不・JR東日本都市開発「目黒」(2022/7/24)

単価の安さに驚愕 立地よく設備仕様レベル高い 駅圏最大級の野村不他「金沢」287戸(2022/7/30)

街のポテンシャル 劇的に変えた 野村不の商業施設「KAMEIDO CLOCK」4月28日開業(2022/4/26)

 

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「(仮称)まちなかMARE世田谷代沢」

 大和ハウス工業は12月2日、木造&RC混構造の最高級戸建住宅商品「Wood Residence MARE-希-(マレ)」の実棟モデルハウス「(仮称)まちなかMARE世田谷代沢」を2022年12月3日にオープンすると発表。同日、メディア向け現地見学会を行った。

 物件は、京王井の頭線池ノ上駅から徒歩5分、世田谷区代沢2丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率150%)に位置する敷地面積約165㎡(50坪)、地下1階・地上2階建て延べ床面積約238㎡(72坪)。

 「MARE」のコンセプトである「木のぬくもり」を感じられる外観・デザイン・設備仕様にしているのが特徴。最大3500ミリの敷地の高低差を利用し、地下1階をRC造、地上1~2階を木造の混構造とし、和モダンを演出するため小間返し、坊主貼、格子戸、荒組障子、吊収納などわが国の伝統的工法を採用し、素材も尾鷲ヒノキ、天竜スギ、大谷石、トチの原木などをふんだんに用いている。2階~3階の階段・廊下幅は1150ミリ。システムキッチンはkitchenhouse。

 当面はモデルハウスとして公開し、土地価格を含め5億円超で販売する予定。

 見学会で同社東京本店木造住宅事業部長・長谷聡志氏は「わが国の住宅着工件数は11が月連続して前年同月比マイナスとなるなど厳しい状況にあるが、当社の住宅事業は2023年3月期第2四半期決算では前年同期比23.8%増と堅調。木造は400棟販売し、1棟単価が上昇。高額の伸び率は平均を大きく上回っている。『MARE』のモデルハウスがある『駒沢』の住宅展示場の来場者は40組/月」と述べた。

 同社住宅事業本部設計推進部ZIZAIデザイン室長・櫻井恵三氏は「本当にいい家とは何かがコンセプト。第一種低層住居専用地域の南下がりの敷地で、道路制限、斜線制限など厳しい条件の中で、地階は車2台駐車を確保し、1~2階は道路側からの視線を遮り、かつ光と風を取り込む工夫を凝らした。『MARE』はこれまで11棟40億円を受注したが、うち1棟は15億円なので1棟平均単価は約3億円。今後も新千里、軽井沢、箕面、川崎などで積極的に展開していく」と語った。

 また、同デザイン室デザイナー主任技術者・笹井賢次氏は「素材にこだわり、三重県の尾鷲ヒノキのほか、天竜スギ、トチの原木、大谷石、漆喰壁などをふんだんに用い、わが国の伝統的な工法を採用した。今後もわが国の優れた材料を積極的に取り入れていく」と話した。

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エントランス

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リビング

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左から笹井氏、長谷氏、櫻井氏

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 玄関に入った途端、トチの原木のベンチや美しいヒノキと思われる格子戸、白那智の石、収納下の大谷石などが目に飛び込んできた。照明計画も見事で、「駒沢」とは比較にはならないが、「まちなか」のリアルなモデルハウスとしては最高に素晴らしいと瞬時に判断した。

 感動を覚えたのは、笹井氏がわが三重県の速水林業を介して尾鷲ヒノキを採用したことを強調したことだった。尾鷲ヒノキは生育環境が厳しい分、肌理細やかな材質が特徴と言われている。

 読者の方々はご存じないかもしれないが、三重県桑名市は「日本の山林王」と称された諸戸財閥の発祥地で、現在も約2.800haの森林を保有する諸戸林業、約1,070haを所有する速水林業は日本有数の山持ち企業だ(トヨタ自動車も約1,630ha保有するが、主に諸戸林業から取得したもの)。

 価格についてメディアから質問がたくさん飛んだが、予定価格は妥当な値段だと思う。いま井の頭線沿線でマンションが分譲されたら最低で坪500万円、良好な住宅地なら坪700万円超になるはずだ。敷地が50坪で、建物が72坪なら5億円超になるはずだ。

 記者は、富裕層向けは伸びる余地がまだまだあるとみている。記事を添付したように、港区の今年度の課税標準額が1億円超の層は前年度から241人増の1,250人で、この層の所得割額総額も前年度比65.8%増の約280億円となり、人数、所得割額とも過去最多を記録した。都心の各区でも同じような傾向があるのは間違いない。所得の5倍が〝無理なく取得できる〟(庶民にとってだが)住宅価格とするならば、富裕層は10億円だ。かつてバブル期は10億円超のマンションが飛ぶように売れた。そんな時代が再び訪れるのはそう遠くないはずだ。

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リビング

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 難点は、全体的に天井高が低い(地階2220ミリ、1階2400ミリ、2階2340ミリ)ことだ。この日(12月2日)午前中に見学した三井ホームの「(仮称)MOCXIONモクシオン四谷信濃町」と同様、建築規制が厳しいエリア・立地条件であるためだ。

 見学会が始まってすぐ、担当者らに「天井高は高くない」と話したら、「天井高には触れないほうがいいよ」と近くにいた記者が〝忠告〟してくれた。何のことだかとっさには分からなかったのだが、先日行われた野村不動産のスモールミーティングの質疑応答で、小生が「最近のマンションの質の劣化が甚だしい。天井高も低くなっている」と発言したことへの反駁だろうと思い、「住宅の質にとって天井高はとても重要な要素」とやり返した。

 馬鹿馬鹿しくて書くのもためらわれるのだが、「天井高」と「高さ規制」について少し触れる。

 居住空間を豊かにするのが最大のテーマであるはずで、デベロッパーもハウスメーカーも、そしてわれわれ記者も天井高に関心を払わなくなったらおしまいだ。

 大和ハウスの「xevoΣ(ジーヴォシグマ)」だって、これまでの約2.7mを約2.8mに引き上げたではないか。同社グループのコスモスイニシアの分譲戸建てのリビングはほとんど3m以上だ。2億円前後の「グランフォーラム成城学園前」(4戸)は瞬く間に売れたが、2階リビングの最大天井高は3.7mだった。掃き出し窓をフラット化し、奥行き最大2.7mのバルコニーと一体利用できるのがヒットした。ポラスグループがどうして年間3,000戸以上の分譲戸建てを販売できるのかといえば、1階のリビング天井高は2700ミリを標準とし、差別化を図っているからだ。他社も追随するようになってきた。

 小生は一方で、建築物の絶対高さ規制は問題があり、公開空地を設けたり緑被率を高めたりした住宅は規制を緩和し、容積も割り増しすべきという主張を繰り返し行っている。「天井高」と「高さ規制」は表裏一体の問題でもある。

 2013年以降のRBAホームページから検索すると、「天井高」は561件、「高さ規制」は94件ヒットする。これをやめたら記者としての死を意味する。

 この記者の方へ一言。「ペンを捨てて現場へ出ろ」と。ユーザー目線に目をつぶり、業界に手すり足すりなどしていたらそのうち捨てられる。

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 以下は付録。取材を終え、食事をしようと池ノ上駅近くの間口2間くらいの小さな店に入った。先客が一人。

 何と店内の正面の壁にスペインの大きな地図が貼ってあり、棚や壁にはびっしりとアンティークな置物などが飾られているではないか。これはきっとスペイン好きのオーナーが経営している店で、〝ブラボー〟と発するのは危ないと判断し、恐る恐る「ご主人はスペインファン? 」と声を掛けたら、「いや、日本を応援しましたよ。サッカーはよく分からないが、スペインは昔、ギターを弾いていたので…置物はほとんどもらったもの」と話した。世田谷区には「沢」がつく地名が7つあることから「七沢」と呼ばれ、「池ノ上」はもっとも高台に位置し、かつての繁華街だったことも聞いた。

 店の名前は「ペキーノ イ アミーゴ(pequeño y amigos)」。御主人は80歳とか。ワイン3杯とチョリソーでお勘定は2,000円。1時間半も歓談させてもらったのでものすごく安い。何かにつけ意見は一致した。改めて行ったら、アランフェス協奏曲などを弾いてもらえるかもしれない。了解を得られたので店舗内の写真を紹介する。

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スペインが優勝したときのメンバーとか

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店内

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パピルスで描かれた絵画

「希」に見る設計依頼1か月で来場100組超 大和ハウス 富裕層向け「MARE」(2021/6/2)

億万長者の人数&所得割額が激増 過去最多 アッパーミドルも漸増 東京都港区(2022/11/26)

一頭地を抜く コスモスイニシアの都市型戸建て「田園調布 桜坂」「成城」(2018/4/20)

大日本山林会 「これからの『林業政策』を問う」シンポジウム(2014/3/14)

今年は「国際森林年」主要32社の社有林 所有・利用状況(2011/1/24)

林経協が総会 森林・林業再生へ流通・需要拡大部会設置(2011/5/12)

 

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「(仮称)MOCXIONモクシオン四谷信濃町」

 三井ホームは12月2日、木造賃貸マンション「(仮称)MOCXIONモクシオン四谷信濃町」のメディア向け構造現場見学会を実施した。昨年11月に竣工した「MOCXION INAGI(モクシオン稲城)」に続く、同社設計・施工の東京23区内で上棟した初の物件。

 物件は、東京メトロ丸の内線四谷三丁目駅から徒歩7分、新宿区須賀町7に位置する第一種中高層専用地域(建ぺい率60%、容積率300%=道路・斜線・日影規制で実質183%)に位置する敷地面積約262㎡(80坪)、4階建て延べ床面積約593㎡(180坪)の全16戸。専用面積は21.66~31.52㎡。構造は木造枠組壁工法。設計・施工は三井ホーム。工期は2022年6月着工~2023年5月竣工(予定)。

 現地は、幅員約4mの南道路と西道路に接道。道路、斜線、日影規制などから実質容積率は183%しか確保できなかったが、様々な工夫を凝らしレンタブル比率を高め、また、大型クレーンの設置が厳しい施工条件に対しては小型のクレーン車を利用することで、工期も予定より約1か月短縮できたという。

 基本性能ではZEH-M(Oriented)を取得する予定で、一次エネルギー消費量を20%以上低減する。また、住宅性能表示制度の「劣化対策等級」で最高等級の3を取得することで、建物の75~90年の耐久性を実現するほか、同社独自の「高性能床遮音システムMuteミュート」を採用することで鉄筋コンクリート造と同等クラスの遮音性能を確保する。

 見学会で同社施設事業本部コンサルティング第一営業部・井上氏と依田氏は、建築主の個人オーナー企業は、同社の既存顧客で、収益物件として賃貸マンションを建設する目的で土地を取得。「稲城」も見学し、木造マンションのコンセプトに共感したことから事業化が決まったと話した。

 また、RC造と同等の減価償却期間(47年)の選択も可能になったことから、減価償却期間が22年の木造より家賃設定を高くし、償却後の利回り想定も高くなることなどから節税/収益、保有/売却の柔軟な運用提案ができるのも決め手になったと強調した。

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〝あなたはまだ現しでないといけないという呪縛、木造コンプレックスから抜け出せないのか〟と言われそうだが、美しいものは美しい

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現場

木造賃貸&ZEH-M 満足度は98% 三井ホーム「稲城」入居者アンケート(2022/12/3)

 

 

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