「沖縄への熱い思い」 関東沖縄経営者協会会長・新垣進氏が講演 OSI研究会

新垣氏
人材派遣会社オールビズチャンネルの代表取締役社長で一般社団法人関東沖縄経営者協会の9代目会長を務めている新垣進氏(70)は先月、MPO法人OSI研究会(代表:松岡嘉幸氏)の勉強会で「沖縄への熱い思い」をテーマにした講演を行った。新垣氏は沖縄県東風平町(八重瀬町)で生まれ、生後3か月で川崎市に移住したが、ウチナーンチュ(沖縄県出身者)の意識が強く、約160社が加入する同協会の活動に力を注いでいる。OSIは明治大学名誉教授・百瀬恵夫氏らが中心になり2003年6月に設立されたNPO法人。沖縄の自然保護、環境保全及び自然と人間との調和が全てに優先することを基本理念に掲げ、様々な活動を行っている。
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記者は、別の取材と重なり勉強会には出席できなかったのだが、内容は2021年1月から6月まで13回にわたって琉球新報の連載コラム「南風」に掲載された新垣氏によるものと変わらないはずなので、記者の感想などを交えながら、講演内容を紹介する。
コラムの掲載が始まったのは、コロナ禍が真っ最中にあった2021年1月。それから最終回の6月まで全13回すべて「沖縄万歳!」で締めくくられている。沖縄礼賛コラムでもある。コラムは大きな反響を呼び、手紙がたくさん寄せられたという。
だが、しかし、ウチナーンチュはもちろん「ナイチャー」(沖縄県外出身者)は、これを単なる底抜けの楽観主義と受け取るわけにはいかない。
戦争では本土の生贄になり、終戦後も本土復帰が実現した1972年まで27年にわたって米国の支配下に置かれ、今もなお経済を基地、公共事業、観光に依存していることから3Kと揶揄されている現状を考えると、〝沖縄万歳〟にはもっと深い意味が込められている。
いったいこの深い意味が込められている楽観主義はどこから来るのか。それは新垣氏の叔父の故・古波津英興氏(1907-1999年)の影響が大きい。2001年に発刊された「民権の火よ永遠に: 古波津英興追悼集」(沖縄民権の会)を新垣氏から借りて読んだのだが、多くの方が古波津氏の楽観的なものの考え方に触れている。古波津氏もまた同郷の社会運動家・謝花昇(1865-1908年)の影響を強く受けている。
謝花-古波津-新垣を結びつけるのは東風平町(八重瀬町)出身ということだ。ここに通底しているのは、一言でいえば反骨精神ではないか。厳しい現実を直視し、それでもなんとか現状を打破しようとする前向きな考え方が根底にある。次のような記述がそうだ。
「かれこれ25年前の41歳の時にはどん底。半年間はため息ばかり、多分一生分のため息をついていたかな。輝いていた目も死んだ魚の目のようになっていったんだ」(5月13日付「南風」)「人間ね人生の途中では何があっても最後に笑えばいいんだよ」(同)
「このコロナ禍で沖縄は今大変だよね。こういう時は無理せず身をかがめ、今できることに集中し、元気に嵐が過ぎるのを待つんだ。沖縄には切り札の観光があるからね。観光の力は日本一、コロナが終息したら必ず一番に復活する県になるよ。国際通りは人で一杯になりどこのホテルも満室、飛行機も満席。もちろん離島も含めどこの観光地もにぎわうよ」(同)
コロナが終息したいま、沖縄は新垣氏が予想した通りになりつつある。別表は、令和7年の地価公示で、バブル期の1990年と比較可能な755市町村のうち、住宅地の変動率が100以上の市町村を示したものだ。わずか12道県49市町村しかない。トップは沖縄県の北中城村で、坪13.2万円から31.9万円と約2.4倍に上昇している。
この他、沖縄県は9位に糸満市、10位に与那原町、13位に宜野湾市、18位に沖縄市、19位に那覇市、41位に石垣市が入っており、49市町村の実に8市町村にのぼる。

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新垣氏の反骨精神が見事なまでに表現されているのは次の記述だ。
「私の中学卒業の文集に寄せた題名は『差別』。子供ながら真剣に考え、書いたその文章は力作だった。生涯、差別と向き合って生き抜いた叔父の古波津英興の影響が大きい。小学生の頃に東京で開かれた叔父の講演会に行き、差別をテーマにした話を聞いたときの経験が骨の髄までしみ込んでいた。
『差別』の題名は中学の先生には衝撃的で、大問題になった。2度にわたり職員会議で議論された。理科と社会科の一部の女性教師からは『新垣君の卒業文集を読んだよ。いろいろ考えさせられたし勉強になったわ』と褒められた。だが、そんな先生ばかりではなかった。国語の授業で50代後半の男性教師は、『新垣、立て! あの文章はなんだ。誰が差別しているんだ』とめちゃくちゃ怒られた。
そんなことがあって、私の文章は卒業文集には載せないことが職員会議で決まり、他のテーマに変えるよう指導された。頭に来ていた私は、卒業文集にはあの国語の先生の似顔絵を描いた。テーマは『こんな大人にはなりたくない』と。同級生は、私の度胸にびっくりしていた。
私自身は強かったから差別された記憶はないが、同じクラスの沖縄出身の女の子はいじめにあった。私は、うまくかばってあげることができなくて、その後悔の気持ちが強くなって卒業文集に書いたのだ。差別はいけないと仲間には分かってもらいたくて。
本土に移り住んだウチナーンチュじゃなかったら分からない経験だ。でも、あの悲惨な戦争から立ち直り、差別した人でさえファンにしてしまうウチナーンチュはすごい。さすが大交易時代を築いた琉球王国の末裔。だからコロナにも絶対負けないよ。卒業文集にあの教師の似顔絵を描いた中学3年生の自分に万歳!本土の人を差別からファンに変えた沖縄県民万歳!」(4月15日付)
新垣氏が中学3年のときだから、1969年だ。沖縄が日本国に変換された1972年(昭和47年)の3年前だ。新垣氏は2月18日付「南風」でも「小学4年の時、自己紹介で、沖縄で生まれたと言ったら先生に外国人呼ばわりされショックを受けたよ」とも書いている。「本土に移り住んだウチナーンチュじゃなかったら分からない経験」がずしりと響く。
実は、記者にも新垣氏と似た経験がある。「差別」ではなく、アメリカコンプレックスだ。昭和24年生まれの記者は、小さいころ、日本軍の中国や朝鮮に対する蛮行の話と同時に、ヒロシマ・ナガサキ、駐留米国軍人の悪逆非道の行為を大人から聞かされていた。
中学1年の最初の英語の時間だ。英語の先生が級長の私に向かっていきなり〝Stand Up〟と命令した。かっとなった私は無視して起立しなかった。先生は激怒した。英語が嫌いになったのはそのときからだ。

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新垣氏のコラムは〝なるほど〟と合点がいくものばかりだが、どうしてもわからないことが一つある。次の記述だ。
「私の趣味は沖縄。毎朝シークワーサーを飲み、沖縄の新聞を読み、お酒はオリオンビールと泡盛、居酒屋の大半は沖縄料理店…」(4月21日付)
「わかるかな~。沖縄に行くとき羽田空港で缶コーヒーのジョージア買うんだ。当たり前だけど120円の味なんだ。でも那覇空港に降り立って飲むジョージアは千円の味に跳ね上がるよ。さらに車を飛ばし、田舎の東風平に着いてジョージアを飲むと3千円のうまさに跳ね上がるんだ。嬉しくて気分が高揚しているからなあ。わからないだろうなあ、ずっと沖縄に住んでいるウチナーンチュには(笑い)」(同)
沖縄に住んでいるウチナーンチュでもわからないのだから、ナイチャーの記者がわかるはずはないのだが、先にStand Upのことを書いた。コカ・コーラの清涼感には抗えなかったが(いまは全く飲まない)、アメリカ産のハンバーガー、ケンタッキーなどは今でもほとんど食べない。駐留軍の横暴な振る舞いは骨の髄までしみ込んでいる…ジョージアは何だろう。
新垣氏は昨年、沖縄の子ども食堂を支援する「毎月千円子ども支援プロジェクト」を立ち上げた。「できることから、できる範囲で」の発想で、法人でも個人でも毎月一律千円を口座から引き落とすもの。新垣氏は「私は決して無理強いしない。点を線としていきたい。千人集まれば年間1000万円。多くの人が貧困問題を意識し、賛同してくれればと願っている」と話している。

3月26日に行われた講演会後のOSI懇親会
OSIには百瀬氏や元住友商事社員で現理事長の松岡氏、元東洋経済「会社四季報」編集長の篠原氏をはじめ、沖縄海洋墓標会の真言宗僧侶、離婚騒動はやりたくないそうだが民事も刑事も手掛ける弁護士、河東碧梧桐研究の第一人者で「河東碧梧桐全集」(発行・短詩人連盟 発売・蒼天社)を著した來空(1931~2019年)の奥さんで書道家、現役の美人建築家、以前は掃き溜めに鶴だった元ANA社員…多士済々、豪華絢爛の方々が加入している。
入場者 1週間に約300人モデルルームではなく百瀬氏&篠原氏「絵画&墨書」絆展(2020/10/19)
書評日本のお弁当文化知恵と美意識の小宇宙権代美重子著(2020/5/8)
息つく暇なし津田三佐雄「南極(難局)物語」百瀬・明大名誉教授ら凍りつく(2020/1/15)
日本原産の作物は10種類程度秋草学園短大・中村教授 OSIで〝目からうろこ〟の講話(2019/2/26)
地域との共生・協創目指す 持続可能な物流拠点 IHI・野村不「Landport 横浜杉田」
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「Landport 横浜杉田」
IHIと野村不動産は4月18日、地域との共生・協創もテーマの一つになっている大規模物流施設「Landport 横浜杉田」が竣工したのに伴うオープニングイベントを開催。〝幻の梅〟と呼ばれる地域の象徴である「杉田梅」の植樹式が行われたほか、キッチンカ―による防災食体験、消防・警察車両の乗車体験、物流施設見学、紙芝居などが行われ、多くの地域住民も参加した。
オープニングイベントで横浜市金沢区長の齋藤真実奈氏は「安心・安全の『防災協定』を締結していただいたのがとてもうれしい。このエリアは1,300社、3,600人が就業する市内随一の産業団地。区内には住宅、商業施設が集積し、歴史資産も残っています。居住者の永住志向も強く〝自慢の区〟です」と挨拶。
地域を代表して登壇した横浜市金沢団地協同組合理事長・榎本英雄氏は「50年前に埋立地に日本有数の団地が誕生したが、住環境は予想を上回るペースで変化した。交通問題への対処とともに、避難施設にしていただき大変ありがたいと」語った。
「杉田梅」普及の第一人者であり、「幻の杉田梅林 賑い復興“梅のまち杉田” 実行委員会」副会長の市原由貴子氏は「横浜杉田はかつて梅で栄えた街でした。その光景は歌川広重が描いております。大火、近年の宅地化などで梅の木は消えてしましましたが、その歴史、文化、名前は妙法寺の樹齢450年の杉田梅が示すように残っています。歴史・文化を継承していただくのは大変うれしい」と述べた。敷地内には樹齢10年超の成木が3本(接ぎ木)、苗木が30本植えられている。
主催者のIHI常務執行役員・二瓶清氏は「当社の旧会社・石川島播磨が飛行機などの工場として操業を開始したのは昭和12年(1937年)。2019年に閉鎖後は、地域貢献にも資するよう跡地利用を検討してきた。今後も継続して活動していく」と語った。
また、野村不動産取締役専務執行役員・黒川洋氏は「地域にとって思い入れの強い場所であることから、地域のために何ができるか考えてきた。施設は防災拠点とし、コミュニティ広場の整備、屋上菜園の整備、梅をイメージしたデザインなど、当社の物流施設ブランド『Landport』シリーズを代表する施設」と話した。
物件は、横浜シーサイドライン南部市場駅から徒歩4分(首都高速湾岸線杉田出入口680m)、横浜市金沢区昭和町に位置する敷地面積約71,034㎡、4階建て延床面積約163,409㎡。竣工は2025年3月末。設計・施工は五洋建設。満床稼働した。
施設は「オープン・シェア型物流施設」がコンセプトに、施施設利用者の×地域関係者×地域社会が豊かになることを目指す。敷地内に地域住民も利用可能な広場を整備し、区との協定による防災拠点を締結し津波避難施設とし、屋上菜園を設置している。
建物は免震構造を採用、BCP対策として72時間運転可能な非常用発電機、防災備蓄庫の設置など、サステナビリティの取り組みとして屋上の太陽光発電システムによるZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)の最高ランクを取得予定。

左から齋藤氏、榎本氏、市原氏

左から二瓶氏、黒川氏
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植樹式(左から五洋建設・清水琢三社長、齋藤氏、榎本氏、二瓶氏、黒川氏、IHI物流・川田基浩社長、市原氏)

イベント風景

イベント風景
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物流施設を見学する機会は多くはないが、物流業界は2024年問題(時間外労働規制)への対応、アナログ的な商習慣の改善が喫緊の課題だとされている。
この日、メディアに配布された資料「持続可能な物流拠点の未来」(流通経済研究所)には、物流業界が抱える問題点を指摘し、「トラックドライバーは、2027年には24万人不足」「2030年には物流需要の約34%が運べなくなる」「ドライバーの賃金は、2030年には2022年比で27%、輸送費は同34%それぞれ上昇」し、「何も手を打たなければ、現状の物流体制は維持できなくなる懸念」が示されている。
他方で、「Landport 横浜杉田 ファクトブック」には、「物流施設への嫌悪施設イメージ」として「(多くのデベロッパーが)『地域共生型の施設開発』に目を向け始めているが、地域とのトラブルを避けるためのある種のカモフラージュ的な地域連携に留まっており、まだその成功事例はごく少数であり、その型化・横展開は道半ば」とある。(赤字は資料のまま)
そして、記者が取材するごとに考えるのは〝物流施設は嫌悪施設〟かどうかだ。〝嫌悪施設〟は法律で決まっているわけではなく、定義もない。不動産流通促進センターが地域などとのトラブルを未然に奉仕するためガイドラインで示したものだ。この問題について、関係者は考えないといけない。
いわゆる嫌悪施設と呼ばれるものは、われわれが生きていくために不可欠なものばかりで、働く人はエッセンシャルワカーと呼ばれる-この矛盾、不条理に対して「何も手を打たなければ、現状の物流体制は維持できなくなる懸念」が現実のものとなるのは必至だ。
今から7年前の2018年、三井不動産常務執行役員ロジスティクス本部長・三木孝行氏(当時)が「もはや、後発ではない。嫌悪施設ではない」と語ったのを忘れない。

成木の杉田梅を背景に記念写真

成木の杉田梅(みがたくさんなっていた。実は大きく酸味が強いので梅干しに最適とか)
都内最大級の物流施設 23区希少の工専立地三井不・日鉄興和不「東京板橋」竣工(2024/10/3)
「物流施設」=「嫌悪施設」=「倉庫」なのか三井不ロジスティクス記者説明会(2024/7/12)
3月の訪日外客数 前年同月比13.5%増の約350万人 3月としては過去最多
日本政府観光局(JINT))は4月16日、2025年3月の訪日外客数の動向をまとめ発表。外客数は3,497,600人で、前年同月比13.5%増となり、3月として過去最高だった2024年の3,081,781人を大きく上回り、同月過去最高を記録するとともに、3月までの累計では10,537,300人となり、過去最速で1,000万人を突破した。
国別では、最多は韓国の691,700人(前年同月比4.3%増)で、以下中国661,700人(同46.2%増)、台湾522,900人(同7.9%増)、米国342,800人(同18.2%増)の順。このほか前年同月比でインドネシア、マレーシア、インド、タイなどの増加が目立ち、香港、フィリピン、ベトナムなどは減少した。
工事原価上昇続く2025年3月 前年同月比4.7%増 建築物価調査会
建設物価調査会は4月10日、2025年3月の建設物価建築費指数(東京2015年平均=100)をまとめ発表。工事原価は136.0(暫定)で前月比0.4%増(0.5ポイント(以下,p)、前年同月比4.7%増(+6.1p)となった。純工事費では137.1(暫定)で前月比0.4%増(+0.6p)、前年同月比4.7%増(+6.1p)となった。
共働き子育て世帯の「住みたい駅」1位は品川 都心部が上位独占 オープンハウス

須藤氏
オープンハウスは4月10日、子育て中の共働き世帯の「住みたい駅・路線ランキング2025」を発表。首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)に住む20~40代の男女697人に聞いたもので、人気駅ランキングトップは品川で、目黒、五反田、横浜が同じ56ptで2位。ベスト10のうち都内が8駅を占めた。東京以外では2位の横浜と8位の川崎がランクインした。
首都圏駅ランキングは、64ポイント(1人5駅が選択できる)を獲得した品川駅がトップで、以下、目黒・五反田・横浜(各56pt)、恵比寿(52pt)、東京(46pt)、新宿(44pt)、大崎(41pt)、川崎(40pt)、代々木(38pt)の順でベスト10。
都県別では、東京都はこのほか9位池袋(37pt)、10位渋谷(36pt)がベスト10入り。神奈川県は横浜、川崎に次いで新横浜(30pt)かベスト3。埼玉県は大宮(37pt)、浦和(21pt)、和光市(14pt)、千葉県は千葉・柏(11pt)、西船橋(10pt)の順でベスト3。千葉・柏は埼玉県東川口駅と同じ。人気のなさが浮き彫りになった。
人気の路線ランキングは、山手線(512pt)、JR東海道本線(204pt)、JR中央線※(138pt)がベスト3。JRが上位8路線を独占し、民間は9位の小田急線(102pt)、10位の東武東上線(81pt)のみ。
※( )書きで(快速)とある。中央線各駅停車駅を含めると3位以下になるという意味か。私鉄は特急、急行、快速などがある。京王線特急は特別料金なしで、数分置きから10分置きに新宿発がある。
家を購入する際に重要視するのは、自宅から駅まで徒歩15分以内、土地の地形・形状(戸建て検討者か)、住居の向き・採光状況、教育環境、商業施設が上位にランクされた。住宅設備では耐震性・耐火性がもっとも重視され、金額の条件では住宅ローンの月々の支払金額が現在住んでいる居住費より+3万円なら許容できるとしている。
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記者は、この種の調査は信じないことにしているが、根拠を示せば問題ないし、住宅購入検討者が何を考えているかの参考にもなる。同社の発表会は、ランキングを発表した同社開発事業部営業推進部長・須藤光輝氏の話がとても面白い(SBIアルヒの「本当に住みやすい街大賞」を徹底して批判したのは、何の根拠もないのに根拠がありそうに装ったからだし、メディアもそれに乗っかったからだ)。
今回の取材も面白かった。須藤氏は大崎の自社マンションを買って住んでおり(購入時は坪420万円か)、本社のある東京駅JPタワーまでドアツードアで36分(奥さんは1時間)。〝便立地〟〝好立地〟だったら中古でも坪600万円はするはずだ。笑いが止まらないのではないか。大崎が7位に入ったのを喜んでいた(記者は高輪ゲートウェイ、浜松町を上位にするが)。
須藤氏は昨年に引き続き〝穴場駅〟(記者はそのような駅はないと思う)として赤羽、東北沢、板橋、新綱島、登戸、橋本、戸田公園、新浦安、海浜幕張を取り上げた。子育てにふさわしい駅とは思えないが、これも須藤氏の勝手。記者はコメントなどしない。
それより気になったことがいくつかある。最たるものは、調査項目の「居住環境で重視するもの」には「緑環境」がないことだ。共働き子育て世帯が「緑環境」を考慮しないはずはない。調査項目に「緑環境」を入れたら結果はまったく別のものになるのではないか。
もう一つは、アンケートの設問そのものだ。〝住みたい〟駅・路線、つまり単なる〝願望〟に過ぎないので、それはそれで結構なのだが、上位10駅はマンションの坪単価にして1,000万円以上のところばかりだ(須藤氏が住む大崎はそこまでしないと思うが)。10坪でも億ションとなる。紹介された東京・神奈川・埼玉・千葉のそれぞれ上位各10駅(全体で40駅)のうち坪300万円以下の駅は5~6駅しかない。皆さん、あまりにも楽観的にすぎるのではないか。もう少し現実的な選択はできないものか。
さらにもう一つ、同社グループが現在扱っている〝穴場〟の新築戸建て住宅の安さだ。条件は駅から徒歩15分以内、家族3人(子ども一人)で75㎡というものだ。例えば北区赤羽。平均価格は6,380万円で、住宅地の地価公示価格も示されており坪571万円だ。記者はこの安さに驚愕した。土地が20坪でも1億円を突破する。3階建てでも75㎡を確保するとなると、住宅地の建ぺい率、容積率を考えると土地面積は最低15坪は必要だ。15坪で8,565万円だ。
現在、同社にこのような物件はあるのか確認してもらっている。なければ大きな問題になる。〝おとり広告〟として公取協から摘発されかねないし、われわれメディアのチェック能力も問われる。
「空き家」直接買取り首都圏で年間6,000~7,000棟オープンハウスグループ(2024/9/10)
オープンハウス「これから家を買うなら…」新築戸建て一都三県駅圏ランキング(2024/8/2)
〝めっちゃ〟10連発井上咲楽さん LIFULL HOME'S「住みたい街ランキング」発表(2024/1/31)
ターゲットは不動産業界も IAMリーディングカンパニー ドキュサイン 日本市場に注力

竹内氏(右)と同社シニア・プロダクトマーケティングマネージャー寺村翔氏
インテリジェント契約管理(Intelligent Agreement Management、以下IAM)のリーディングカンパニーであるドキュサイン・ジャパンは4月9日、「2025年度事業戦略説明 および『Docusign IAM for CX』」発表会を開き、日本市場に特化した「Docusign IAM for CX」を4月30日から本格ローンチすると発表した。
Docusign IAMは、AIを活用して契約書の作成をスピードアップし、交渉を強化し、契約ポートフォリオを管理するための戦略的洞察を提供することで、シームレスな契約書の準備、締結、活用を実現する。
Docusign IAM for CXは契約業務における顧客体験(CX)の向上に特化したサービスで、①コンバージョン率の向上(エラーを減らし、スピードを上げる)②面倒さの解消(基幹システムとのデータ連携もノーコードで可能にする)③信頼性の提供(公的身分証を利用した本人確認を契約プロセスの中で実施可能)などにより、契約ライフサイクルの一元管理を民主化する。
会見で同社取締役社長の竹内賢佑氏は「Docusign IAMは契約管理プロセスを刷新し、企業が煩雑なプロセスをシームレスで効率的、なおかつ安全に遂行できるよう支援します。また、この度、顧客体験(CX)の向上に特化したDocusign IAM for CXを日本市場に導入できることを大変嬉しく思います。これにより、企業は業務の効率化を進め、顧客満足度をさらに向上させるための強力なツールを手に入れることが可能になります。今後も、お客様のニーズを満たし、ビジネス上の課題を解決するソリューションの提供に努めてまいります」と語った。
米国Docusign, Inc.は、180か国以上、160万社以上の顧客と10億人を超えるユーザーが同社のソリューションを利用しているIAMのリーディングカンパニー。ドキュサイン・ジャパンは日本法人。

竹内氏(左)と寺村氏
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取材の案内が届いたときは、取材対象外で、門外漢の記者が話を聞いてもちんぷんかんぷんだろうとは思ったが、誘いがあればNOと言わないのが記者のモットーだ。ひょっとしたら何かが得られると考え取材を申し込んだ。上段はほとんどプレス・リリースのコピペ。何を書いているのかさっぱりわからない。
分からないけれども、竹内社長が会見で切り出した「ビジネスの世界ではすべて契約で成り立っている。お金の動きがあるところには必ず契約がある。わが国では長らく口約束がたくさん存在していたが、ここ20年くらい前からようやく紙などできちんと締結しようというようになってきた。ゆるぎない信頼はきちんとした契約がないと得られない」-これが全てだと理解した。ビジネスだけでなく、世の中は契約=約束で成り立っている。
竹内氏は「注力市場は日本など8か国」「ターゲットは中小企業」などと語り、具体的な業種として「不動産業界」を名指ししなかったが、頭の中には〝アナログの代表格〟と目されている不動産業界や物量業界があるのは間違いない。国土交通省によると、不動産業の売上高は43.4兆円(全産業に占める割合は2.8%)、不動産業の法人数は32.9万社(同11.5%)、従業員数は133.7万人(同2.7%)だ。中小企業が多数を占める全宅連の会員数は約10万社。コンビニよりはるかに多い。宝の山かもしれない。
ただ、不動産会社の社長の平均年齢は62.6歳(帝国テータバンク調査)で、全業種でもっとも高い。古い社長の頭を変えるのは容易でないとも思う。どう攻略するのか。
そしてまた、住宅・不動産業界の記者も頭を切り替えないといけない。観る目がない記者、聞く耳を持たない記者、そしてそれを表現する技術がない記者は生き残れない。生成AIにとってかわられる。絶滅危惧種である自覚が足りないような気がする。

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同社がターゲットにしていると思われるわが不動産業界。記者は、いわゆる全宅連などの街の不動産会社を取材したことはほとんどなく、自身の賃貸借契約も40年以上経験していない。友人・知人のアパート契約に立ち会ったときは、契約は賃貸人と賃借人は対等で、仲介業者も公平であるべきなのに、オーナーの立場、仲介業者の利益しか考えない対応に腹が立ったので、オーナーに直談判して賃貸借契約を改めさせたことがある。
一方、令和4年5月の宅建業法の改正によって、宅地建物取引士による記名・押印の必要がなくなり、重要事項説明書などの書面も電磁化が可能になり、オンライン相談も含めマンションデベロッパーなどは当たり前になっているはずだ。顧客一人当たりの対応時間は少なくとも数時間(もっとか)短縮できているはずだ。
ところが、2025年2月25日付の不動産流通推進センターのプレス・リリースによると「国土交通省の令和5年度調査によれば、宅建業者の取引オンライン化の導入状況は、書面電子化で11%、IT重説で18%にとどまっています」とある。
記者は30年も40年も昔から「不動産近代化センター」の名称を改めよと主張してきた。現在の不動産流通推進センターの名称に変更になったのは今から10年前だ。国交省のデータは、いまだに〝アナログ体質〟から抜け出せない、時代遅れの商習慣から脱却できない業界の現状を浮き彫りにしている(3%+6万円を保障している法律に問題はないのか)。
雲散霧消した不動産流通推進センターに対する積年の疑問 「嫌悪施設」取材(2024/10/24)
唯一残っていた「近代化」が消える 不動産流通近代化センターが名称変更(2014/11/4)
最後の多機能施設「グラスロック」開業 開発着手から14年 「虎ノ門ヒルズ」全体完成

「グラスロック(Glass Rock)」
森ビルは4月7日、開発を進めてきた「虎ノ門ヒルズステーションタワー」の多機能施設「グラスロック(Glass Rock)」が4月9日に全面開業するのに伴うメディア向け内覧会を開催した。2011年に虎ノ門エリアの再開発組合が設立されてから14年、わが国を代表する複合タウン「虎ノ門ヒルズ」が完結することになる。関心が高いのか、約200人のメディア関係者が駆けつけた。
「Glass Rock」は、「つながる」場、「まなぶ」仕掛け、「ひろげる」発信の3つの機能を提供するもの。企画・運営には慶應義塾大学の宮田裕章教授も「アドバイザー」として参画する。4階には法人パートナーと共創パートナーが利用する「Partners Lounge」(約569㎡)、地下1階にはすべてのカテゴリーの会員のための「Members Lounge」(約258㎡)と会員の取り組みを可視化する「Gallery」(約63㎡)を設置している。
2階・3階は丸善ジュンク堂書店の新業態の書店「magmabooks」が入居し、会員以外の人にも学びの機会を広げるプログラムを展開。会員企業と省庁・自治体、NPO・NGO・アカデミアなどとのワークショップも開催する。1階には「TULLY'S COFFEE &TEA」の旗艦店などが入居している。
施設は、東京メトロ虎ノ門ヒルズ駅直結、虎ノ門一・二丁目地区第一種市街地再開発事業A-2 街区に位置する敷地面積約2,445㎡、地下3階地上4階建て延床面積約8,800㎡。着工は2019年11月、竣工は2024年8月。デザイナーはOMA。施工は鹿島建設など。
「虎ノ門ヒルズ」は2011年4月、「環状第二号線新橋・虎ノ門地区第二種市街地再開発事業」の一環として「虎ノ門ヒルズ 森タワー」(竣工2014年)が着工されてから、「虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」(同2020年)「虎ノ門ヒルズ レジデンシャルタワー」(同2022年)「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」(同2023年)に続き、今回の「Glass Rock」が加わり、区域面積約7.5ha、延床面積約80万㎡の複合施設が完成したことになる。

「虎ノ門ヒルズ」全景
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〝新業態〟という触れ込みの「magmabooks」に入ったときは、新刊本や芥川賞、直木賞受賞作などが山積みされており、どこにでもある本屋と一緒だと思ったが、すぐ普通の本屋とは異なることが分かった。ジャンルごとに書籍が並べられているのは他と同じだが、案内フラッグが棚の上部に設けられており、「来た道を振り返る」「都市と地球と私たち」「日本という方法」「どの道を行く? 」「私たちの現在地」「国家と民主主義」「生きづらさを感じたら」…などのフレーズが付いていた。
この種の案内フラッグを見るのは初めてだった(似たものはあるかもしれないが)。「国家と民主主義」のコーナーには日本地図があったりして(間違いではないが)苦笑してしまうものもあるが、都市問題や住宅問題のコーナーにはコルビュジエやガウディなどの古典のほか聞いたこともない建築家や都市計画とは関係がなさそうな本もあり、選書の工夫が見て取れた。
プレス・リリースには「本を読む前(読前)から読む最中(読中)、そして読み終わった後(読後)となる書店。コンセプトは『知は熱いうちに打て』」とあるが、その通りだと思う。
店舗のカラーリングは深緑か群青色に統一されている。これも実にいい。黄緑やライトブルーでは具合が悪い。天井高も約4mと高い。
これだけではなかった。筆者がもっとも印象に残ったのは2階と3階をつなぐ階段室だ。幅は2mくらいあり、壁の色も先に紹介した深緑か群青色。壁には、著名な日本人作家などの作品から引用・切り取ったと思われるフレーズが短冊状に並べられていた。
しばし眺めた。数を数えたらざっと30人。写真も撮った。髙村光太郎、八木重吉、九鬼周三、中原中也(2作)、田中英光、宮本百合子、永井荷風、竹久夢二、牧野富太郎、柳田国夫、梅崎春生、日野葦平、中島敦、小川未明、高浜虚子、梶井基次郎、岸田劉生、亀井勝一郎、古川緑波、太宰治、正岡子規…22人。あと8人が分からない。きちんと撮るべきだったか。
なぜ、現代作家はいないのか。版権が切れた死後70年以上経過しているのが味噌だ。小説は大半読んでいるはずなのに、フレーズは初めて聞くようなものばかりだった。その中で、もっとも好きなのは太宰治の「恥の多い人生を送って来ました」(人間失格)だ。自分自身のことだ。もう一つは、岸田劉生の「美は外界にはない。人間の心の喪にある」(想像と装飾の美)だ。本当にそう思う。さらに宮本百合子の「飼鳥になっては堪らない。そういう心持がした」(伸子)も、宮本百合子が生きた時代を考えると、よくわかる。
さりげなく展示しているのもいい。各地の公園や博物館、図書館などの公共建築物には立派な虚像(どうしてわがパソコンはこんな悪戯をするのか)が建ち、これまた高価な自然石に名句が刻まれている。まあ、これはこれで結構なのだが、これ見よがしなのが鼻につく。
このアイデアは他の書店も真似るといい。特許も実用新案申請もされていないはずだ。見学者の一人は「しおりにしたらいい」と話した。

「magmabooks」

他なの上部にはたくさん案内フラッグが設けられている

都市計画関係の書棚

階段室

階段室
◇ ◆ ◇
4階の「Partners Lounge」は見学するのを忘れたのだが、地下1階の「Glass Rock」の「Members Lounge」(約258㎡)では、オカムラの大容量のポータブルバッテリーがとてもいいと思った。容量はノートパソコンで3.5回分、スマートフォンで14回分充電が、同時に3台のパソコン利用がそれぞれ可能。隣り合う人同士でシェアして使用するのを想定しているそうだ。
驚いたのは、「妄想ボード」だった。この「妄想」は、三井不動産の植田俊社長が、社長就任会見で「大切にしているのは『妄想』『構想』『実現』という言葉」と話したので、記者はこれを見出しにした記事を書いた。3,000件超のアクセスがあった。
どうしてここに「妄想ボード」があるのか。森ビル関係者によると、同社のコミュニティマネージャーが何かの打ち合わせで呼びかけたものだという。主旨は植田氏と同じだ。植田氏が知ったら、してやったりとほくそ笑むのではないか。「妄想」⇒「構想」⇒「実現」が慣用句になるかもしれない。

4階の「Partners Lounge」

ポータブルバッテリー

妄想ボード

ホワイトボードには何を書いてもいいそうだ
◇ ◆ ◇
主催者の見学推奨ルートに従って最初に見学したのは1階の「TULLY'S COFFEE &TEA」だった。記者はカフェを利用するのはコーヒーを飲むより、タバコを吸うのが目的なので、TULLY'Sはあまり利用しない。専ら喫煙室があるドトールだ。「DOU TOR」のロゴが目に入ると〝パブロフの犬〟になる。取材の行きと帰りに2度利用することが多い。
「TULLY'S」の天井高は4mくらいあり、〝旗艦店〟とあるように広い。人だかりがしていた。素晴らしい店舗だとは思ったが、緑はすべてフェイク(本物を置いているカフェは皆無だが)。利用者に感想を聞いた。美しいか醜いか、本物か偽物かを見分けるのが仕事のはずのアートが専門の女性は「フェイク? 全然わからなかった。素晴らしいフェイク」と意に介さなかった。隣にいた不動産が専門だという女性は「(あなたは)5,000円もするチョコバー(記者はチョコ入りの酒かと思った)を売る店は本物のグリーンを置くべきと言いたいの」と話した。
半分当たりで半分外れ。マンションなどの高額商品はもちろんだが、あらゆる施設の緑は本物にすべきというのが記者の持論だ。
併設されている「ローズギャラリー」はよくわからなかったが、生産者の愛と心が込められた1本1,000円のバラの価値を理解する人は少なくないと思った。

気にしない人もいるのだろうが、記者はフェイク・グリーンがとても気になった

1つ5,000円以上する商品もたくさんあった

無料で供されたジュース類(税込みで700円台か)

「ローズギャラリー」
人・人・人…開設以来の大賑わい? Park-PFI活用の「多摩中央公園」5日開園

「多摩中央公園」人だかりの遊具
Park-PFI制度を活用した多摩市の「多摩中央公園」が4月5日、リニューアルオープンした。午前10時に行われた記念式典には地元鶴牧中学校吹奏楽部の演奏と鶴牧小学校生徒の合唱が披露され、阿部裕行市長をはじめ関係者が出席し、開園を祝った。11時からの「第5回パークライフショー」には市内外から多くの人が詰めかけ、大賑わいとなった。主催者は週明けにも来園者数を公開するが、昭和62年の開園以来の人数になりそうだ。
式典の冒頭、阿部市長は「私は今、感激で胸がいっぱいです。ここに至るまでの道のり、本当に大変でした。心からお礼申し上げます。いま多摩ニュータウンは再生とともに新たな挑戦の入り口に立っています、人口減少、少子化、高齢化などの様々な課題を一つひとつクリアしてきました。一昨年開館した市立図書館は年間100万人の方が訪れる施設となりました。健康寿命は東京都トップです。この多摩中央公園は昭和62年にオープンしました。今回のリニューアルオープンは、Park-PFI制度を活用した事業ですが、当時、この規模においては全国初の事業として着手しました。今日に至るまで、公園整備の選定委員会の委員長を務めてくださった町田誠さん、Park-PFI物林さんをはじめとするTAMAセントラルパークJV9社の皆さん、そして一緒になって汗を流していただいた市民の皆さん、心から感謝申し上げます。今後も、子どもたちからお年寄りまでみんなで楽しめる多摩中央公園をつくっていきたい」とあいさつした。

公園のシンボル大池からセレモニー会場臨む

テープカットセレモニー

阿部市長
◇ ◆ ◇
3歳児から87歳の人まで約40人(14組)に声を掛けた。この「こだわり記事」の読者の方は、記者のマンション価格予想がことごとく的中していることをご存じのはずだが、この日声を掛けた方の年齢はことごとく外れた。20代と思われる方は30代、30代は40代、40代は50代…極めつけは、イベントのライブショーで〝春の小川〟を歌っていた、どう見ても記者(76)より年上と思われる女性3人組。
「私と同じ70代では」声を掛けたら「80代ですけどみんな20代と思っている。永山(多摩センターの隣駅)のキャンディーズよ。老人会じゃないわよ、地域の熟年会でも歌っているの」と笑わせた。この3人の方も含めほとんどの来園者は「広い」「緑が美しい」「遊具やカフェがいい」「図書館など文化施設も整っている」などと話した。以下、主な声を紹介する。( )内は記者。
・2年生と年長の子ども連れの30代の女性と50代の母親 川崎市からです。インスタで観て初めて来ましたが、広くて緑も多くとてもきれい。図書館もあるのがいい。どの季節もよさそう
・84歳の男性 もう42~43年前から都立桜ヶ丘公園に隣接した聖ヶ丘に住んでいます。どのような公園になるか楽しみにしてきました。駅に近く図書館があるのがいいですし、カフェや遊具を新設したのに魅力を感じます。民間が入るので儲かるかどうか。このほかでは、聖蹟桜ヶ丘の河川敷もいいですよ(「聖蹟桜ヶ丘かわまちづくり」が国土交通省の令和6年度「かわまち大賞」を受賞した)。多摩市は若い人を呼び込むのが課題ですが、住宅だけじゃつまんない。私が住んでるところもそうですが、森の中の住宅地ばかりなのが市のいいところ(この方とは新設されたカフェで一緒になり、建築設計の仕事をされていたとかで意気投合。40分くらい話し合った)
・77歳の女性と87歳の伯母 川崎市から来ました。あと3年で90歳ですよ。(えっ、それじゃ戦争を経験されている? )終戦の日、小学1年生のときでしたね。すずちゃん(三井のすずちゃんではなく友だち)と一緒に学校に行くとき、戦闘帽をかぶりゲートルをまいた軍人3人が学校に入ってきたのを覚えています。玉音放送? うちにラジオはありましたが、聞いた記憶はありません。ここの公園? 人が多いのにびっくりしました
・5歳の子ども連れの40代夫と30代妻 家は公園の反対側の八王子です。歩いてこられるし、遊ぶのに一番いい公園
・小学5年と年長組の子供二人の40代夫婦 僕は松戸出身。10年前に結婚して白山神社のそばに住んでます。多摩市は公園がいっぱいあっていい(ご主人)。私は生まれも育ちもここです(奥さん「隣はいかがわしい施設ですよね」と話したら、小学5年の僕が「ママ、いかがわしいって何? 」と聞いてきた。どぎまぎした記者は「僕は知らなくていいの」と答えた)
・Books散歩社(小さな古本屋さん) 落合のスーパー三徳近くで活動しています。大人向け? こっちのコーナーです(帚木蓬生はほとんど読んでますので…これ、西加奈子さんください。いくらですか)100円です。私も西加奈子にはまっています
・明治大学おくやまぜみ みんなの公園ミニ・ロゲイニング 地域活性化の一つとしてエントリーしました(えっ、政経学部? こだわり記事と百瀬恵夫で検索してみてください。たくさん記事がヒットします)



旧富澤家

明治大学おくやまぜみ みんなの公園ミニ・ロゲイニング

焼きパンコーナー(丈は本物)

◇ ◆ ◇
一つ残念に思ったことがあった。グリーンライブセンターの水琴窟だ。メディア向け見学会で従前の場所から移設されていたのを知っていたので、試しに鳴らしてみた。うんともすんともいわなかった。記者の後から試みていた人も同じ結果だった。
不具合が生じたのだろうが、それならそれで〝故障中〟とでも表示すべきだ。それをしないのは、引き続いて管理・運営する市はどうでもいいことだと考えたのか。とても不愉快だった。(従前も鳴らないことがあった)
水琴窟がどのようなものかご存じない方はネットなどで調べていただきたい。似たような音は簡単に体験することができる。湯を張った浴槽に風呂おけ・洗面器を逆さにして浮かべると、水滴が湯面に落ちる音がする。同じ理屈だ。

グリーンライブセンター

水琴窟

東側法面には、土留めの金物がたくさん埋め込まれていた
Park-PFI活用した多摩中央公園4月5日オープンカフェなど整備し回遊性高める(2025/3/31)
総戸数は微増 分譲戸建ては28か月連続減少 令和7年2月 住宅着工
国土交通省は3月31日、令和7年2月の住宅着工統計をまとめ発表。総戸数は前年同月比2.4%増の60,583戸となり、10か月ぶりの増加となった。内訳は持家16,272 戸(前年同月比0.2%減)で2か月連続の減少、貸家25,744戸(同3.2%増)で先月の減少から再びの増加、分譲住宅18,213戸(同5.1%増)で10か月ぶりの増加。分譲住宅の内訳はマンション8,422戸(同12.5%増、2か月連続の増加)、一戸建住宅9,628戸(同0.8%減、28か月連続の減少)。
首都圏マンションは3,995戸(同4.2%減)で、都県別は東京都2,413戸(同8.5%増)、神奈川県552戸(同37.6%増)、埼玉県717戸(同17.4%減)、千葉県313戸(同63.0%増)。一戸建て住宅は4,282戸(1.3%減)で、都県別は東京都1,401戸(同1.1%減)、神奈川県1,120戸(同11.4%増)、埼玉県1,030戸(同12.5%減)、千葉県731戸(同0.9%減)。
Park-PFI活用した多摩中央公園4月5日オープン カフェなど整備し回遊性高める

「ケヤキハウス」
多摩市は3月30日(日)、Park-PFI制度を活用した「多摩中央公園」のリニューアル工事完了に伴い、メディア向け内覧会を実施した。カフェや遊具を新設することで既存の公園内施設との連携を図り、「誰もが楽しめる賑わいある公園」として生まれ変わる。グランドオープンは4月5日(土)。当日は午前10時から午後8時までマルシェ、飲食キッチンカ―、物販、LIVEなど様々なセレモニー、イベントが行われる。
多摩中央公園は、京王・小田急多摩センター駅から徒歩5分、多摩市落合2丁目に位置する面積約112,900㎡。開設年は昭和62年10月。開設から30年以上が経過し、一部施設の老朽化が進んでおり、最近の公園ニーズに対応するためPark-PFI制度を活用。令和3年10月に公募し、応募があった2グループのうち、市の事業費総額約30億円に対して約27億円の提案を行った物林株式会社を代表企業とするTAMAセントラルパークJV9社が事業者として選ばれた(落選グループは約30億円)。国の補助事業として15.7億円の社会資本整備総合交付金を活用する。事業期間は令和25年3月末までの20年間。
新たな施設として「ケヤキハウス」「エディブル&フラワーガーデン」などを整備。老朽化したカスケード、大池のろ過・浄水設備の更新を行った。
また、公園内のパルテノン多摩、中央図書館(2023年開館)、グリーンライブセンター(G.L.C)、旧富澤家住宅の4つの特定施設との連携を強化し、回遊性を高めるため舗道を整備している。
この他、幼児~小学生向け遊具広場、車いす利用者も楽しめるウェルビーイング遊具広場、運動用具が収納できる自由広場、BOOKパーク、きらめきの広場、大池前テラスなどが新設されている。
公園内の植栽計画では、ナラ枯れ、東側法面の土砂崩壊対策、整備事業による伐採樹木は全体の2割以上の1,125本となったが、広島市から寄贈された原爆二世アオギリが植樹され、サクラもたくさん新植されている。
内覧会のナビゲーターで公園の改修整備・運営事業者JVグループ統括責任者・室橋智氏(物林営業本部長)は「既存の施設を設計、施工した会社からもヒアリングを行った。難しい事業ではあったが、コストを抑える工夫もし、国産材の木を使い、周辺環境との親和性を重視した」と説明した。

多摩中央公園(市のホームページから)

パルテノン多摩「きらめきの広場」

「足るを知る」がコンセプトの水盤

大池

「エディブル&フラワーガーデン」

遊具広場

ウェルビーイング遊具広場

原爆二世のアオギリ

手前は新植されたと思われるサクラ

室橋氏

自由広場(室橋氏の背後は運動用具などを収納できる小屋。右側は隣接する桜美林大学の敷地だが、公園との垣根は設けられていない)
◇ ◆ ◇
小生は公園の緑や街路樹をかなり見てきたが、Park-PFIによる公園整備事業は三井不動産「MIYASITA PARK」、積水ハウス・三菱地所他「海の中道海浜公園官民連携推進事業」、東京建物「都立明治公園」、大和リース「鳥居崎海浜公園」、東急不動産グループ「代々木公園Park PFI」しか知らない。
なので、今回の以下の記事が正鵠を射ているかどうかの自信はない。さらにまた、多摩市民として利用してきたこともあり、市民だから贔屓目に見ようとする自分と、市民だからこそ厳しい目で見ようと考えるもう一人の自分がいた。取材中の2時間、双方がせめぎ合いをしたが、贔屓目に見る必要はそれほどなく、厳しい目で見ても「合格点」が付けられると結論付けた。第三者が厳しい目で評価しても同じ結論に達するのではないか。
とくに評価したのは3点。第一は公園運営事業者の管理センターとトイレが併設されている「ケヤキハウス」だ。木造平屋建てのカフェは外壁のスギ材のほか、内装にも本物の木がたくさん採用されており、ペット同伴利用も可能(一部除く)。
第二は、リニューアルオーブンされるグリーンライブセンターだ。これまでは植物鑑賞が中心だったが、市民参加するセンターへと生まれ変わる。コナラとサクラの巨木の萌芽更新は興味深いし、水琴窟は移設して残されている。シンボルツリーのカツラは見事な自然樹形を描いており、高さは20mくらいある。また、センターの維持管理にかかわってきた恵泉女学園大学が最後の活動として植えた草花もオープンに彩を添えている。同大学はアダプト制度による多摩センター駅周辺の美化に大きな役割を果たした。
第三は、豊かな緑と4つの特定施設の回遊性を高めた遊歩道の新設だ。公園内の回遊性が飛躍的に向上した。
市はこれまで公園利用者数をカウントしてこなかったが、これを機にカウントするという。Before Afterはわからないが、利用者が大幅に増加するのは間違いない。

ペット同伴可能の「ケヤキハウス」テラス席(天井高が2400ミリくらいで低いとは思ったが、座って利用するので問題ないか。右側は広場が展開する)

よく見えないかもしれないが、手前の建物は事業者が整備した管理センター、その奥は市が費用負担したトイレ(軒裏は手前はケミカル製品、億は本物の木。このあたりにも事業者がコストを抑制した努力がうかがわれる)

新設された旧富澤家への遊歩道

旧富澤家

土砂崩壊対策として樹木は伐採され、全面芝生が植えられた東側法面。背後はグリーンライブセンター(芝生の管理は大変だが、費用は事業者の収益から充当するので市の負担増はないという)

萌芽更新のトライ(手前はサクラ、奥はコナラ)

水琴窟

シンボルツリーのカツラ

伐採木は総理大臣賞を受賞したNPO多摩グリーンボランティア森木会などが再利用する)
木調ルーバー多用した施設デザイン抜群東急不など「代々木公園 Park PFI」(2025/2/25)
Park-PFI活用「都立明治公園」来園者240万人突破東京建物/公園を考える(2025/2/7)
「うめきた公園」事業者は自画自賛でも大阪市の指定管理者評価の評点は77点(2024/9/4)
「多摩中央公園改修」の疑問氷解樹木5000本うち伐採予定1125本の8割は実生木(2023/10/21)
三菱地所・積水ハウスなど国営公園初のPark-PFI「海の中道海浜公園官民連携事業」(2021/5/17)

